IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -固定具 図1
  • -固定具 図2
  • -固定具 図3
  • -固定具 図4
  • -固定具 図5
  • -固定具 図6
  • -固定具 図7
  • -固定具 図8
  • -固定具 図9
  • -固定具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127211
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/18 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
F16B2/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025227
(22)【出願日】2021-02-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】599099294
【氏名又は名称】株式会社フジル
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀行
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022EA36
3J022EB14
3J022EC12
3J022EC22
3J022ED23
3J022FA02
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA17
3J022GA24
3J022GB15
(57)【要約】
【課題】取り付けられる対象である被固定部材から外れること、被固定部材に傷が付くこと、及び、摩耗することを抑止でき、小型の設計に資する固定具を提供する。
【解決手段】固定具2は、被固定部材1に取り付けられる本体部3と、この本体部3に支持されて回転する軸部材8と、この軸部材8に連結されて軸部材8を回転させる操作部18とを有し、軸部材8の偏心部10が偏心していることから、軸部材8の回転に伴って、偏心部10の弧状接触面が、把持孔4の内周面から開口部7を通じて把持孔4の内側に徐々に張り出し、被固定部材1を押さえ付ける。弧状接触面13は、被固定部材1の側面形状に倣った曲面であるため、被固定部材1の側面と周方向に渡って接触する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の被固定部材が通される把持孔が形成された本体部と、
前記把持孔と直交する方向を回転軸として回転する軸部材と、
前記軸部材を回転させる操作部と、を有し、
前記軸部材が、
前記本体部に支持された被支持部と、
前記被支持部と連接されると共に前記回転軸に対して偏心し、前記把持孔の内周面において露出した偏心部と、を有し、
前記偏心部に、前記被固定部材の側面と周方向に渡って接触する弧状接触面が形成され、
前記軸部材が回転することで、前記弧状接触面が、前記把持孔の内周面において前記被固定部材を押さえ付ける、
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記弧状接触面が、前記被支持部の外周面よりも内側に形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載された固定具。
【請求項3】
前記偏心部が、前記被支持部の外周面以内に形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された固定具。
【請求項4】
前記本体部が、
前記把持孔と直交すると共に前記軸部材が通された支持孔と、
前記支持孔と直交すると共に前記操作部が通された操作孔と、を有し、
前記操作部が前記軸部材の側面に連結された、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された固定具。
【請求項5】
前記操作孔が、前記本体部のうち、前記把持孔を軸とした外側面に形成され、
前記操作部が、前記本体部の外側に突出して前記把持孔の軸方向に動く、
ことを特徴とする請求項4に記載された固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定部材に取り付けられて固定される固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、薄い金属板や薄葉紙等は、ドラムや芯材(以下、「ドラム等」と記す。)に巻き付けられ、このドラム等は、円柱状の棒材に通されることで、自在に回転し、薄葉紙や薄い金属板等が引っ張り出されるところ、ドラム等が棒材から抜けることを防ぐ必要がある。そこで、棒材に取り付けられることで、ドラム等が棒材から抜けることを防ぐ部材として、例えば、下記特許文献1に記載された固定治具がある(以下、「文献公知1発明」と記す。)。
【0003】
文献公知1発明は、筒状本体に、棒材が通される中心孔が形成され、係止レバーが操作されることで、この係止レバーの先端が、中心孔の内側に突出し、棒材に係止する。係止レバーは、ピンを介して筒状本体に連結され、ピンを軸として回転する。係止レバーの先端である係止面は、ピンの回転軸に対して偏心しているため、係止レバーが回転することで、係止面が中心孔の内側に突出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-146909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、文献公知1発明の係止面は、ピンを中心とした円周に沿った湾曲面であり、一方で、棒材は、円柱状であることから、両者の接触箇所は、ほぼ点であるため、この一点のみにおいて係止された両者は、ズレやすい。また、点において係止された状態で両者がズレると、係止面と棒材との摩擦力が、接触個所である一点に集中し、棒材に傷が付く場合があるし、係止面が摩耗しやすい。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、取り付けられる対象である被固定部材から外れること、被固定部材に傷が付くこと、及び、摩耗することを抑止できる固定具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る固定具は、棒状の被固定部材が通される把持孔が形成された本体部と、前記把持孔と直交する方向を回転軸として回転する軸部材と、前記軸部材を回転させる操作部と、を有し、前記軸部材が、前記本体部に支持された被支持部と、前記被支持部と連接されると共に前記回転軸に対して偏心し、前記把持孔の内周面において露出した偏心部と、を有し、前記偏心部に、前記被固定部材の側面と周方向に渡って接触する弧状接触面が形成され、前記軸部材が回転することで、前記弧状接触面が、前記把持孔の内周面において前記被固定部材を押さえ付ける、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る固定具は、前記弧状接触面が、前記被支持部の外周面よりも内側に形成された、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る固定具は、前記偏心部が、前記被支持部の外周面以内に形成された、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る固定具は、前記本体部が、前記把持孔と直交すると共に前記軸部材が通された支持孔と、前記支持孔と直交すると共に前記操作部が通された操作孔と、を有し、前記操作部が前記軸部材の側面に連結された、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る固定具は、前記操作孔が、前記本体部のうち、前記把持孔を軸とした外側面に形成され、前記操作部が、前記本体部の外側に突出して前記把持孔の軸方向に動く、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る固定具は、棒状の被固定部材が通される把持孔が形成された本体部と、把持孔と直交する方向を回転軸として回転する軸部材と、軸部材を回転させる操作部とを有し、軸部材が、本体部に支持された被支持部と、被支持部と連接されると共に回転軸に対して偏心し、把持孔の内周面において露出した偏心部とを有し、偏心部に、被固定部材の側面と周方向に渡って接触する弧状接触面が形成され、軸部材が回転することで、弧状接触面が、把持孔の内周面において被固定部材を押さえ付けるものである。この構成により、被固定部材と偏心部との接触個所が面状となるため、固定具が被固定部材から外れ難い。そうであれば、両者がズレることで生じる被固定部材の損傷や弧状接触面の摩耗も抑止される。また、両者が面で接触することで、固定具が被固定部材に堅固に固定されることから、弧状接触面を被固定部材に押し付けるための弾性力を生じさせる部材等を、原則として要さず、その分、小型の設計が可能となる。さらに、このような部材等を要しない分、部品点数が少なくて済む。
【0013】
本発明に係る固定具は、弧状接触面が、軸部材における被支持部の外周面よりも内側に形成されている。この構成により、弧状接触面が被固定部材に押し付けられると、軸部材の回転軸が、被固定部材の外面に近づいた状態で、軸部材が被固定部材と交差する。すなわち、軸部材が被固定部材に近づく分、小型の設計が可能となる。
【0014】
本発明に係る固定具は、軸部材の偏心部が、被支持部の外周面以内に形成されている。すなわち、偏心部は、軸部材上において、被支持部の外周面と同一面上、または、この外周面よりも内側にあることから、偏心部は、偏心しつつも被支持部の外周面の外側に張り出していない。この構成により、固定具の設計において、被支持部の直径を、軸部材の直径とみなすことができ、設計や部材の組み付けが簡便である。
【0015】
本発明に係る固定具は、本体部が、把持孔と直交すると共に軸部材が通された支持孔と、支持孔と直交すると共に操作部が通された操作孔とを有し、操作部が軸部材の側面に連結されている。すなわち、軸部材と操作部とが、別個の孔に通されて連結されるため、構成が簡便である。また、操作部の動作と連動して、軸部材が回転するため、操作が簡便である。
【0016】
本発明に係る固定具は、操作孔が、本体部のうち、把持孔を軸とした外側面に形成され、操作部が、本体部の外側に突出して把持孔の軸方向に動くものである。この構成により、操作部の可動方向が、被固定部材の長手方向となるため、固定具が被固定部材に対して取り付けられ、移動させられる方向と、操作部の可動方向とが、同一方向に揃う。したがって、固定具の扱いが簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る固定具の使用状態の外観斜視図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る固定具の分解斜視図である。
図3図3は、図4のIII-III断面であって、本発明の第一実施形態に係る固定具における軸部材の側面断面図である。
図4図4は、図3におけるIV矢視であって、本発明の第一実施形態に係る固定具における軸部材の外観図である。
図5図5は、図3におけるV矢視であって、本発明の第一実施形態に係る固定具における軸部材の外観図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係る固定具の使用状態における解除状態を説明するための前面概略説明図である。
図7図7は、本発明の第一実施形態に係る固定具の使用状態における解除状態を説明するための側面概略説明図である。
図8図8は、本発明の第一実施形態に係る固定具の使用状態における固定状態を説明するための前面概略説明図である。
図9図9は、本発明の第一実施形態に係る固定具の使用状態における固定状態を説明するための側面概略説明図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態に係る固定具の使用状態の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第一実施形態に係る固定具を図面に基づいて説明する。図1及び2は、第一実施形態に係る固定具2が示されている。なお、以下の説明では、図1に示されているとおり、固定具2が固定される被固定部材1の長手方向を、前方(Forward)又は後方(Backward)とし、被固定部材1と直交する方向を、下方(Up)、下方(Down)、右方(Right Side)及び左方(Left Side)とする。
【0019】
図1に示されているとおり、固定具2は、円柱の棒状である被固定部材1に取り付けられて固定されるものであり、被固定部材1に通されたドラム等(図示省略。)が、被固定部材1から抜けることを防ぐものである。固定具2は、被固定部材1に取り付けられる本体部3と、この本体部3に支持されて回転する軸部材8と、この軸部材8に連結されて軸部材8を回転させる操作部18とを有している。
【0020】
図1及び2に示されているとおり、本体部3は、ほぼ直方体であり、本体部3の角は、適宜C面取り加工が施されている。本体部3は、被固定部材1が通される把持孔4と、軸部材8が通される支持孔5と、操作部18が通される操作孔6とが形成されている。把持孔4は、被固定部材1の側面形状に倣った円筒形であり、本体部3における前後外面の中心を前後方向に貫通している。支持孔5は、軸部材8に倣った円筒形であり、本体部3における左右外側面の上側寄りを左右方向に貫通し、把持孔4と直交すると共に把持孔4に通じている。すなわち、把持孔4と支持孔5とが重なることによって、各孔4,5の一部が開口し、開口部7が形成されている。開口部7は、把持孔4を形成する内周面のうち、上部分の一部を開口すると共に、支持孔5を形成する内周面のうち、下部分の一部を開口し、各孔4,5の境界を構成している。操作孔6は、前後方向に長い長孔であり、本体部3のうち、把持孔4を軸とした上外側面の右側寄りを、支持孔5に至って貫通し、支持孔5と直交すると共に支持孔5に通じている。
【0021】
軸部材8は、断面が円形の棒状であり、中央に偏心部10を有し、この偏心部10の両端に被支持部9が連接されている。偏心部10と被支持部9とは、直線上に連接されている。偏心部10の一部は、外周面が一周に渡って凹弧状に形成されている。右側の被支持部9は、操作部18と連結される被支持部側連結部15を有している。被支持部側連結部15は、被支持部9の側面に形成された雌ネジ穴である。軸部材8は、本体部3の支持孔5に通され、被支持部9が本体部3に支持され、偏心部10が開口部7に配置される。偏心部10は、把持孔4の内周面において露出する。軸部材8は、支持孔5において、把持孔4と直交する方向である左右方向を回転軸16として回転する。
【0022】
操作部18は、棒状であり、被支持部9と連結される操作部側連結部19を有している。操作部側連結部19は、操作部18の先端部に形成された雄ネジである。操作部18は、本体部3の操作孔6に通され、操作孔6の中で、軸部材8における被支持部9の側面に連結される。すなわち、操作部18の操作部側連結部19と、被支持部9の被支持部側連結部15とが、ネジ構造によって連結される。操作部18は、本体部3の外側に突出し、操作孔6の範囲において、本体部3における把持孔4の軸方向である前後方向に動く。したがって、操作部18が傾くことに連動して、軸部材8が回転する。
【0023】
ここで、軸部材8を図面に基づいて詳説する。図3ないし5は、軸部材8の外観及び断面が示されている。図3は、軸部材8の断面が示され、図4は、図3における矢印IVから視した外観であり、図5は、図3における矢印Vから視した外観である。
【0024】
図3ないし5に示されているとおり、軸部材8の回転軸16は、被支持部9の中心を通っている。偏心部10は、被支持部9と連接された基部11と、この基部11に連接されて基部11同士の間に配置された接触部12とから構成されている。基部11と接触部12とは、それぞれの中心を通る偏心軸17上に形成されている。偏心軸17は、回転軸16に対して偏心し、かつ、偏心部10は、被支持部9の外周面以内に形成されている。詳説すれば、偏心部10のうち、最も大きな円周である基部11の円周は、被支持部9の円周よりも小さく、かつ、回転軸16の軸方向から視した際の被支持部9の投影である投影円周P上に揃うか、投影円周Pよりも内側である。すなわち、偏心部10が回転軸16に対して偏心していることから、基部11が、投影円周Pから張り出す場合、基部11の外面のうち、投影円周Pから張り出した部分は、適宜研削されて投影円周Pに揃えられる(連接面14)。したがって、基部11は、偏心軸17を中心とすれば、真円ではなく、また、基部11の外面は、投影円周Pから張り出さない。
【0025】
接触部12は、両端から中央に向かうにしたがって、徐々に直径が小さくなり、接触部12の外周面は、一周に渡って凹弧状に形成された弧状接触面13を有している。弧状接触面13は、被固定部材1の側面形状に倣った曲面である。弧状接触面13は、被支持部9の外周面よりも内側に形成されている。すなわち、弧状接触面13は、投影円周Pよりも内側に形成されている。
【0026】
上記のとおり、本実施形態が形成されている。次に、本実施形態の効果を、作用と共に、図面を用いて説明する。図6ないし9は、固定具2の使用状態における概略が示されている。図6及び7は、固定具2が解除されて被固定部材1に着脱可能な状態(以下、「解除状態」と記す。)が示され、図8及び9は、固定具2が被固定部材1に固定された状態(以下、「固定状態」と記す。)が示されている。解除状態から固定状態への遷移を、仮固定状態と記す。
【0027】
図6及び7に示されているとおり、解除状態では、操作部18は、後方(図7における左方)に倒れている。操作部18に伴って、軸部材8の弧状接触面13は、開口部7に対して支持孔5の内側に配置されている。すなわち、弧状接触面13は、本体部3の把持孔4の内周面から把持孔4の内側に張り出しておらず、把持孔4の外側又は内周面上に在って、被固定部材1から離れ、接触していない。したがって、被固定部材1が把持孔4に通されることにより、固定具2は、被固定部材1の任意の位置に配置される。
【0028】
解除状態において、操作部18が、前方(図7における右方)に向かって徐々に倒されると、仮固定状態を経て、固定状態となる。図8及び9に示されているとおり、操作部18の動作に伴って、軸部材8が回転軸16を中心に回転し、軸部材8の弧状接触面13は、開口部7に対して支持孔5の外側に配置される。すなわち、偏心部10の偏心軸17が、回転軸16に対して偏心していることから、軸部材8の回転に伴って、偏心部10の弧状接触面13は、本体部3における把持孔4の内周面から、開口部7を通じて、把持孔4の内側に徐々に張り出し、被固定部材1を押さえ付ける。
【0029】
仮固定状態では、弧状接触面13が把持孔4の内側に徐々に張り出すのにしたがって、被固定部材1を押さえ付ける度合いが増し、徐々に被固定部材1が押さえ付けられる。すなわち、操作部18が前方に向って倒れ始めれば、被固定部材1は押さえ付けられ、操作部18は、解除状態での姿勢から、鉛直に起立した姿勢、この姿勢から前方に倒れた姿勢等、姿勢が解除状態から前方に向けて変化する都度、被固定部材1が堅固に押さえ付けられる。したがって、仮固定状態であっても、固定具2を被固定部材1に固定することができる。固定状態であれば、さらに堅固に固定具2を被固定部材1に固定することができる。
【0030】
弧状接触面13は、被固定部材1の側面形状に倣った曲面であるため、被固定部材1の側面と周方向に渡って接触する。被固定部材1と弧状接触面13との接触個所が面状となるため、固定具2は、被固定部材1から外れ難い。そうであれば、両者がズレることで生じる被固定部材1の損傷や弧状接触面13の摩耗も抑止される。また、両者が面で接触することで、固定具2が被固定部材1に堅固に固定されることから、弧状接触面13を被固定部材1に押し付けるための弾性力を生じさせる部材等を、原則として要さず、その分、小型の設計が可能となる。さらに、このような部材等を要しない分、部品点数が少なくて済む。
【0031】
固定具2では、軸部材8の弧状接触面13が、軸部材8における被支持部9の外周面よりも内側に形成されている。この構成により、弧状接触面13が被固定部材1に押し付けられると、軸部材8の回転軸16が、被固定部材1の外面に近づいた状態で、軸部材8が被固定部材1と交差する。すなわち、軸部材8が被固定部材1に近づく分、小型の設計が可能となる。
【0032】
固定具2では、軸部材8の偏心部10が、回転軸16に対して偏心し、かつ、被支持部9の外周面以内に形成されている。すなわち、連接面14によって、基部11が投影円周Pに揃えられていることから、偏心部10は、軸部材8上において、被支持部9の外周面と同一面上、または、この外周面よりも内側にあるため、偏心部10は、偏心しつつも被支持部9の外周面の外側に張り出していない。この構成により、固定具2の設計において、偏心部10の直径に依拠せずに、被支持部9の直径を軸部材8の直径とみなすことができ、設計や部材の組み付けが簡便である。
【0033】
固定具2の本体部3は、把持孔4と直交すると共に軸部材8が通された支持孔5と、この支持孔5と直交すると共に操作部18が通された操作孔6とが形成されている。すなわち、軸部材8と操作部18とが、別個の孔に通されて連結されるため、構成が簡便である。
【0034】
固定具2の操作部18は、操作孔6の中で、軸部材8における被支持部9の側面にネジ構造(被支持部側連結部15、操作部側連結部19)によって連結され、本体部3の外側に突出している。したがって、操作部18の動作と連動して、軸部材8が回転するため、操作が簡便である。
【0035】
固定具2の操作孔6は、前後方向に長い長孔であり、本体部3のうち、把持孔4を軸とした上外側面の右側寄りに形成され、操作部18は、操作孔6の範囲において、本体部3における把持孔4の軸方向である前後方向に動く。この構成により、操作部18の可動方向が、被固定部材1の長手方向となるため、固定具2が被固定部材1に対して取り付けられ、移動させられる方向と、操作部18の可動方向とが、同一方向に揃う。したがって、固定具2の扱いが簡便である。
【0036】
次に、本発明の第二実施形態に係る固定具を図面に基づいて説明する。図10は、第二実施形態に係る固定具202が示されている。なお、以下では、第一実施形態に係る固定具2と異なる構成が主に説明され、固定具2と同様の構成は、第一実施形態と同一符号が図示されることで、説明が適宜省略されている。
【0037】
図10に示されているとおり、固定具202は、弧状接触面13(図6ないし9参照。)を被固定部材1に押し付けるための弾性力を生じさせる部材として、コイルバネ21を有している。詳説すれば、固定具202の本体部3は、コイルバネ21が通されるバネ孔20が形成されている。バネ孔20は、コイルバネ21に倣った円筒形であり、本体部3における前後外面の右上寄りを前後方向に貫通し、操作孔6と直交すると共に操作孔6に通じている。コイルバネ21は、バネ孔20に挿入され、コイルバネ21が挿入された後のバネ孔20は、ネジ構造等を有する蓋部材22が取り付けられることで閉じられている。
【0038】
操作部18は、コイルバネ21の弾性力によって、前方に倒れる方向に押されているため、仮固定状態又は固定状態である。固定具202が、被固定部材1に取り付けられる際、操作部18が後方に倒されて解除状態となり、被固定部材1が把持孔4に通される。操作部18は、解放されると、コイルバネ21の弾性力によって自動的に前方に倒され、仮固定状態又は固定状態となる。したがって、操作部18が不本意に後方に倒されて解除状態となることを防ぐことができる。なお、コイルバネ21が操作部18を前方に押す力の程度は、コイルバネ21の自然長やバネ定数によって決定される。
【0039】
なお、本発明の他の実施形態では、本体部の形状は任意である。この実施形態では、本体部は、立方体、円柱、多角柱、糸面取り加工、R面取り加工が施されているもの、面取り加工が施されていないものが含まれる。
他の実施形態では、操作部は、軸部材を回転させる小型モーター及びこの小型モーターを稼働させるコントローラーによって実現する。
他の実施形態では、操作部は、本体部の前面又は外面に配置されている。すなわち、この実施形態では、操作孔は、本体部における前面又は後面に形成され、支持孔に至って貫通している。
他の実施形態では、操作部は、本体部の左右外側面の外側に配置されている。すなわち、この実施形態では、軸部材が、本体部の左右外側面から突出し、操作部は、本体部の外側において、軸部材の一端又は一端における側面に連結されている。なお、操作孔は無い。
他の実施形態では、軸部材が操作部を担っている。すなわち、この実施形態では、軸部材が、本体部の左右外側面から突出し、当該突出部分が操作部である。操作部の形状は任意である。
他の実施形態は、連接面を有していない。すなわち、偏心部が回転軸に対して偏心していても、基部が、投影円周から張り出さないのであれば、基部は投影円周内にあるため、連接面は形成されない。
【0040】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 被固定部材
2、202 固定具
3 本体部
4 把持孔
5 支持孔
6 操作孔
7 開口部
8 軸部材
9 被支持部
10 偏心部
11 基部
12 接触部
13 弧状接触面
14 連接面
15 被支持部側連結部
16 回転軸
17 偏心軸
18 操作部
19 操作部側連結部
20 バネ孔
21 コイルバネ
22 蓋部材
P 投影円周
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の被固定部材が通される把持孔が形成された本体部と、
前記把持孔と直交する方向を回転軸として回転する軸部材と、
前記軸部材を回転させる操作部と、を有し、
前記本体部が、
前記把持孔と直交すると共に前記軸部材が通された支持孔と、
前記支持孔と直交すると共に前記操作部が通された操作孔と、を有し、
前記操作部が前記軸部材の側面に連結され、
前記軸部材が、
前記本体部に支持された被支持部と、
前記被支持部と連接されると共に前記回転軸に対して偏心し、前記把持孔の内周面において露出した偏心部と、を有し、
前記偏心部に、前記被固定部材の側面と周方向に渡って接触する弧状接触面が形成され、
前記軸部材が回転することで、前記弧状接触面が、前記把持孔の内周面において前記被固定部材を押さえ付ける、
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記弧状接触面が、前記被支持部の外周面よりも内側に形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載された固定具。
【請求項3】
前記偏心部が、前記被支持部の外周面以内に形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された固定具。
【請求項4】
前記操作孔が、前記本体部のうち、前記把持孔を軸とした外側面に形成され、
前記操作部が、前記本体部の外側に突出して前記把持孔の軸方向に動く
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された固定具。