(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127236
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220824BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20220824BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20220824BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/002 105
A41D13/005 103
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025268
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】594149804
【氏名又は名称】カジナイロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 政隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆平
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 拓人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貫生
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
3B011AC02
3B011AC17
3B011AC21
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】従来よりも冷却効果が長続きするマスクを提供すること。
【解決手段】マスク100は、使用者Uの少なくとも口元を覆う本体部1と、本体部1が使用者Uの少なくとも口元を覆うように、使用者Uの頭部に装着される装着部2と、使用者Uが携帯するバッテリーBと接続可能であるとともに、冷却面311a,321aを有する熱電変換素子を備える冷却モジュール3と、冷却面311a,321aが使用者Uの顔に向けて配置可能なように冷却モジュール3を保持する保持部4と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の少なくとも口元を覆う本体部と、
前記本体部が前記使用者の少なくとも口元を覆うように、前記使用者の頭部に装着される装着部と、
前記使用者が携帯するバッテリーと接続可能であるとともに、冷却面を有する熱電変換素子を備える冷却モジュールと、
前記冷却面が前記使用者の顔に向けて配置可能なように前記冷却モジュールを保持する保持部と、を備える、
マスク。
【請求項2】
前記保持部は、前記本体部よりも熱伝導率の高い材料で形成されており、前記熱電変換素子を収容して保持する、
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記保持部のうち前記冷却面に対向する部分は、グラファイトシートから形成されている、
請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記熱電変換素子は、前記冷却面とは異なる放熱面をさらに有し、
前記保持部は、前記冷却面に対向する第一部分と、前記放熱面に対向する第二部分と、を備え、
前記第二部分を形成する生地は、前記第一部分を形成する生地よりも多くの空隙を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記保持部は、前記本体部の前記使用者に対向する面の下部に設けられ、
前記冷却面は、マスク装着時に前記使用者の口元の周辺部位に向けて配置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
前記冷却モジュールは、さらに、金属製の放熱部材と、ファンと、を有し、前記熱電変換素子と前記放熱部材と前記ファンとが、積層構造でこの順に配置されており、
前記放熱部材は、前記冷却面とは異なる放熱面に配置されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記ファンは、前記放熱部材とは反対側に向かって送風する、
請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
前記本体部には、前記冷却モジュールに対して前記バッテリーの電力を供給するための配線が固定されており、
前記配線は、伸縮性を有するとともに、前記冷却モジュールに対して着脱可能なコネクタ部を有している、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症拡大の予防対策の一つとして、マスクの使用が挙げられており、従来よりも季節に関わらず、マスクを着用する機会が増えてきている。
【0003】
例えば、夏でもマスクを着用する機会が増えてきているが、一方で、高温多湿の環境下でのマスク着用は、心拍数や呼吸数、血中の二酸化炭素濃度、または体感温度が上昇するため、身体に負担がかかることが懸念されている。
【0004】
そこで、例えば、接触冷感機能を有する生地を利用したマスクが製造販売されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のマスクは、着用後まもなくすると、生地が体温と同程度に上昇してしまい、冷却効果が長続きしない。
【0007】
そこで、本開示は、従来よりも冷却効果が長続きするマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための一態様に係るマスクは、
使用者の少なくとも口元を覆う本体部と、
前記本体部が前記使用者の少なくとも口元を覆うように、前記使用者の頭部に装着される装着部と、
前記使用者が携帯するバッテリーと接続可能であるとともに、冷却面を有する熱電変換素子を備える冷却モジュールと、
前記冷却面が前記使用者の顔に向けて配置可能なように前記冷却モジュールを保持する保持部と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、バッテリーのエネルギーを利用して熱電変換素子を駆動し続ける間、熱電変換素子の冷却面と対向する使用者の顔が冷却され続ける。このようにして、従来よりも冷却効果が長続きするマスクを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、従来よりも冷却効果が長続きするマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、使用者が本開示の一実施形態に係るマスクを装着している状態を例示する図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るマスクを例示する図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るマスクを例示する図である。
【
図4】
図4は、冷却モジュールの一例に係る模式図である。
【
図5】
図5は、保持部の第二部分を形成する生地の拡大図である。
【
図6】
図6は、保持部の第一部分を形成する生地の拡大図である。
【
図7】
図7は、使用者が本開示の一実施形態に係るマスクを使用している状態を上方から見たときの模式図である。
【
図8】
図8は、冷却モジュールの一例に係る模式図である。
【
図9】
図9は、冷却モジュールの一例に係る模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に例示する状態におけるマスク100について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0013】
初めに、
図1~3を参照しつつ、マスク100について説明する。
図1は、使用者Uがマスク100を装着している状態を例示する図である。
図2および
図3は、マスク100を例示する図である。
図1~3に例示するように、マスク100は、本体部1と、装着部2と、冷却モジュール3と、保持部4と、を備えている。本体部1は、使用者Uの顔の口元、鼻、頬、顎、頸動脈付近の首元等を覆うように構成されている。ただし、本体部1の形状や大きさは、少なくとも口元を覆うことができれば、特に限定されない。本体部1は、例えば綿、絹、麻等の天然繊維、化学繊維およびこれらの繊維を混合させてなる織物や、パルプ、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる不織布といった比較的軟質な素材で形成されている。またこれらの素材を複層にする場合には、異なる素材同士を組み合わせてもよい。さらに、本体部1は、上記の織物や不織布の他に、フィルタ性能や保湿性能を有する機能性シート材等を含んでいてもよい。
【0014】
装着部2は、本体部1に取り付けられており、使用者Uの頭部に装着されるものであって、ナイロンやポリエステル等からなる紐状またはベルト状のゴム部材等で形成される。なお、本明細書において「頭部」とは、頭のみならず、耳等の頭の近くにある部位も含む。装着部2は、本体部1の左右端部に取り付けられている。なお、装着部2を本体部1に取り付ける方法としては、例えば、装着部2を本体部1に縫着、接着、融着等することで取り付ける方法や、装着部2を本体部1の左右端部に形成された挿通部に挿通することで取り付ける方法等である。使用者Uは、例えば装着部2を使用者Uの左右の耳に係止させることで、マスク100を装着することができる。なお、使用者Uがマスク100を装着している状態において、マスク100の後面(裏面)は、使用者Uに対向している。
【0015】
図2に例示するように、冷却モジュール3は、第一冷却モジュール31と、第二冷却モジュール32と、を含む。
図2に例示する状態において、第一冷却モジュール31は本体部1の左側下方に配置されており、第二冷却モジュール32は本体部1の右側下方に配置されている。第一冷却モジュール31と第二冷却モジュール32は、第一配線61を介して電気的に接続されている。
【0016】
第一配線61は、例えば伸縮性を有する配線(伸縮配線)である。第一配線61の電気抵抗率は、例えば2~50Ω/mである。第一配線61は、本体部1の下部において、本体部1に固定されて配設されている。第一配線61は、伸縮性を有する絶縁シートと、前記絶縁シートに固定され、離間して並設される複数の導電糸と、前記複数の導電糸の間において前記絶縁シートに固定される複数の非導電糸と、前記複数の導電糸に積層される被覆シートと、を備えている。第一配線61の絶縁シートは、本体部1の素材よりも硬質な形状記憶素材により形成されている。形状記憶素材としては、例えばポリノルボルネン系、ポリウレタン系、トランスポリイソプレン系、スチレン-ブタジエン系のポリマー等である。
【0017】
図2および
図3に例示するように、第一配線61は、第一冷却モジュール31に対して着脱可能な第一コネクタ部611と、第二冷却モジュール32に対して着脱可能な第二コネクタ部612と、を有している。第一冷却モジュール31は、第三配線314と、第三コネクタ部315と、を備えている。第二冷却モジュール32は、第四配線324と、第四コネクタ部325と、を備えている。第三コネクタ部315は第一コネクタ部611に着脱可能であり、第四コネクタ部325は第二コネクタ部612に着脱可能である。第一配線61と第一冷却モジュール31は、第一コネクタ部611と第三コネクタ部315が接続されることで電気的に接続される。第一配線61と第二冷却モジュール32は、第二コネクタ部612と第四コネクタ部325が接続されることで電気的に接続される。
【0018】
図1~3に例示するように、第一冷却モジュール31は、第二配線62を介して、使用者Uが携帯するバッテリーBに電気的に接続されている。第一冷却モジュール31は第二配線62を介して、第二冷却モジュール32は第一配線61および第二配線62を介して、バッテリーBから電力が供給される。なお、バッテリーBは、例えばリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池等の何れかにより構成されている。本実施形態において、バッテリーBは、使用者Uが着用している衣服に設けられたポケットPに収容されている。ただし、バッテリーBの収容場所はポケットPに限られず、例えば使用者Uが携帯しているバッグの中等であってもよい。
【0019】
ここで、
図4を参照しつつ、冷却モジュール3の構成について詳細に説明する。
図4は、第一冷却モジュール31の模式図である。なお、第二冷却モジュール32の構成は、第一冷却モジュール31の構成と同様である。
図4に例示するように、第一冷却モジュール31は、ペルチェ素子(熱電変換素子の一例)311と、放熱部材312と、ファン313と、を有する。ペルチェ素子311と、放熱部材312と、ファン313と、は、積層構造であり、この順に配置されている。ただし、ペルチェ素子311、放熱部材312およびファン313の配置はこれに限られない。例えば、ファン313は、放熱部材312の側方に設けられてもよい。なお、使用者Uがマスク100を装着している状態のとき、ペルチェ素子311、放熱部材312、ファン313は、この順で使用者Uに近い。ペルチェ素子311と放熱部材312、および放熱部材312とファン313は、例えばネジ留めされることにより相互に取り付けられる。
【0020】
ペルチェ素子311の左右端部には、第二配線62または第三配線314を接続するためのコネクタ部(図示せず)が設けられている。ファン313の左端部には、第二配線62を接続するためのコネクタ部(図示せず)が設けられている。第三配線314は、ペルチェ素子311の右端部に接続されている。第二配線62は二股に分かれており、一方はペルチェ素子311の左端部に、もう一方はファン313の左端部にそれぞれ接続されている。第二配線62の左端部には、差込部63が設けられている。差込部63はバッテリーBのコネクタ部(図示せず)に接続可能である。差込部63がバッテリーBのコネクタ部に接続されることで、バッテリーBからペルチェ素子311およびファン313へ電力が供給される。
【0021】
ペルチェ素子311は、ペルチェ効果を発揮する板状の半導体素子から形成されており、略直方体形状である。なお、このような半導体素子は、例えば、ビスマス-テルル合金、鉛-テルル合金、シリコン-ゲルマニウム合金等から形成されている。また、ペルチェ効果をより良く発揮させる観点から、当該半導体素子においては、n型半導体素子にはアンチモンやインジウム等の添加物が、p型半導体素子にはセレン等の添加物がそれぞれ添加されていると好ましい。ペルチェ素子311には、第二配線62を介して、バッテリーBから電流が流れる。ペルチェ素子311に電流が流れると、直流電圧がペルチェ素子311に印加されるため、ペルチェ効果が生じる。ペルチェ効果とは、異なる二種類の金属の接合部に直流電流を流すと、一方の金属から他方の金属に熱が移動することである。したがって、ペルチェ素子311に直流電圧が印加されると、冷却面311aでは吸熱が起こり、冷却面311aの反対側に配置された放熱面311bでは放熱が起こる。本実施形態においては、使用者U側(
図4における後側)に配置された冷却面311aで吸熱が起こり、放熱部材312側(
図4における前側)に配置された放熱面311bで放熱が起こる。なお、電流の極性を逆転させると、冷却面と放熱面は逆転する。ペルチェ素子311の冷却面311aは、マスク100が使用者Uに装着されている状態において、使用者Uの口元の周辺部位に向けて配置されうる。口元の周辺部位とは、例えば使用者Uの例えば、頬、顎、首元等である。本実施形態では、ペルチェ素子311の冷却面311aは、使用者Uの口元の頸動脈付近の首元に向けて配置されている(
図1参照)。一方で、ペルチェ素子311の放熱面311bで生じた熱は、放熱部材312に向けて放射される。
【0022】
放熱部材312は、例えば窒化アルミニウム等を含む金属製部材やタルク等のフィラーを有する樹脂製部材等から形成されたヒートシンクである。放熱部材312は、ベース部材3121と、多数の放熱フィン3122と、を備えている。ベース部材3121は板状部材である。ベース部材3121は、その下部に例えば熱伝導性絶縁シートを備えており、当該熱伝導性絶縁シートを介して、ペルチェ素子311の放熱面311b上に配置されている。放熱フィン3122は、ベース部材3121に立設している。放熱フィン3122は、例えば、短手方向(
図4における前後方向)に延びる細長い板状部材である。ただし、放熱フィン3122は、棒状、ピン状等の他の形状であってもよい。放熱フィン3122は、放熱フィン同士の間隔を空けて、マトリックス状に配置されている。ペルチェ素子311から放熱部材312に伝わった熱は、放熱フィン3122に沿ってファン313や放熱フィン3122の周囲の空間に向けて放射される。
【0023】
ファン313は、ファンフレームと、ファンロータと、はね部材と、モータと、を備えている。ファンフレームは、略直方体形状で中空である。ファンロータは、モータの回転子と一体になって回転するように構成されている。はね部材は、例えばプロペラ型であり、所定の方向に風を送るように構成されている。モータは、例えばブラシレス直流モータ等である。ファン313は、放熱部材312とは反対側、すなわち使用者Uとは反対側(
図4における前側)に向かって送風する。これにより、放熱フィン3122からファン313や放熱フィン3122の周囲の空間へ送られてきた熱は、放熱部材312とは反対の方向に向けて、放熱される。したがって、ペルチェ素子311の放熱面311bで発生した熱は、マスク100の本体部1の外側へ移動する。
【0024】
図1~3に戻り、保持部4について説明する。保持部4は、例えば、超高分子量ポリエチレン繊維等から形成されている。保持部4を形成する繊維材料は、本体部1を形成する繊維材料よりも熱伝導率が高い。保持部4は、冷却モジュール3を内包することができる程度の大きさである袋状のものである。保持部4は、本体部1の裏面(マスク100が使用者Uに装着された状態において、使用者Uに対向する面)の下部に設けられている。保持部4は、第一保持部41と、第二保持部42と、を含み、第一保持部41は第一冷却モジュール31を、第二保持部42は第二冷却モジュール32を収容して保持するように構成されている。
【0025】
第一保持部41は本体部1の左側下方に設けられており、第二保持部42は本体部1の右側下方に設けられている。第一保持部41および第二保持部42は、略直方体形状である。第一保持部41は、左側面部に第一開口部411、右側面部に第二開口部412を有しており、第二配線62は第一開口部411を、第三配線314は第二開口部412を通る。第二保持部42は、左側面において第三開口部421を有しており、第四配線324は第三開口部421を通る。
【0026】
図4に例示するように、第一保持部41は、ペルチェ素子311の冷却面311aに対向する第一部分41aと、ペルチェ素子311の放熱面311bに対向する第二部分41bと、を備えている。第一部分41aと第二部分41bは、それぞれ異なる繊維材料から形成されている。
【0027】
ここで、
図5および
図6を参照しつつ、第一保持部41の第一部分41aおよび第二部分41bについて詳細に説明する。
図5は、第一保持部41の第二部分41bを形成する生地の拡大図である。
図6は、第一保持部41の第一部分41aを形成する生地の拡大図である。
図5に例示するように、第二部分41bは比較的大きな空隙を有する。一方で、
図6に例示するように、第一部分41aには空隙がほとんど存在しない、または第一部分41aの空隙の大きさは第二部分41bの空隙の大きさよりも微小である。このように、第二部分41bは、第一部分41aよりも多くの空隙を有する。これらの空隙は、気体を通過させることができるため、例えば第二部分41bは、第二部分41bが有する空隙を介して、放熱面311bから放射された熱を有する高温の空気を通過させることができる。なお、第二保持部42についても、第一保持部41と同様の第一部分および第二部分を有している。
【0028】
次に、
図7を参照しつつ、使用者Uがマスク100を装着しているときの状態について説明する。
図7は、マスク100を装着した使用者Uを上方から見たときの様子を例示する模式図である。本実施形態において、第一配線61は形状記憶素材により形成されており、本体部1は第一配線61よりも軟質な素材で形成されているため、本体部1は第一配線61の形状に応じて変形する。すなわち、使用者Uがマスク100を装着した状態において、本体部1と使用者Uの顔との間には空間Sができる。ペルチェ素子311,321の冷却面311a,321aは、空間Sにおいて、使用者Uの顔に向けて配置される。保持部4は熱伝導性に優れているので、ペルチェ素子311,321の冷却面311a,321aにより冷やされた空気が使用者Uの顔に触れる。このため、使用者Uは、冷却モジュール3が駆動している間、冷却効果を得ることができる。
【0029】
一方で、第一保持部41の第二部分41bや第二保持部42の第二部分は多数の空隙を有しており、かつファン313は使用者Uとは反対側に向かって送風するので、ペルチェ素子311,321の放熱面311b,321bから放射された熱は、効率的にマスク100の外側に向けて放熱される。したがって、放熱面311b,321bから放射された熱は、保持部4の内部や空間Sで滞留しない。
【0030】
上記構成に係るマスク100によれば、バッテリーBのエネルギーを利用して冷却モジュール3のペルチェ素子311,321を駆動し続ける間、ペルチェ素子311,321の冷却面311a,321aと対向する使用者Uの顔は冷却され続ける。したがって、マスク100は、従来のマスクよりも冷却効果を長続きさせることができる。
【0031】
また、上記構成に係るマスク100によれば、保持部4は本体部1よりも熱伝導率の高い繊維材料で形成されている。また、保持部4はペルチェ素子311,321を備える冷却モジュール3を収容しているため、ペルチェ素子311,321と使用者Uの顔とが直接接触することを抑制しつつ、使用者Uの顔に対する冷却効果を効率良く発揮させることができる。
【0032】
また、上記構成に係るマスク100によれば、例えば、第一保持部41の第二部分41bは第一保持部41の第一部分41aよりも多くの空隙を有するため、放熱面311bから放射された熱は第二部分41bの空隙を介して効率的に本体部1の外側へ排熱される。したがって、マスク100によれば、ペルチェ素子311,321の放熱面で発生する熱を、より効率的に本体部1の外側へ移動させることができる。
【0033】
また、上記構成に係るマスク100によれば、マスク100の装着時に、使用者Uの口元の周辺部位の付近、例えば、頬や頸動脈付近を中心に冷却することができる。
【0034】
限られたバッテリー容量で、熱電変換素子(ペルチェ素子)による冷却効果を効率よく発揮させるためには、熱電変換素子の放熱面から放射される熱を、効率よくマスク100の外側に逃がす設計が重要となる。本発明者は、上記の課題意識の下で、具体的に試行錯誤した。例えば発明者は、
図8に例示するような、ファン313を放熱部材312の側方に設けた設計についても検討した。
図8に例示する構成である場合、ペルチェ素子311の冷却面311aの温度は13℃であり、放熱部材312の温度は32℃であり、使用者Uの顔を冷却することは可能である。しかし、
図4で例示した積層構造である場合、ペルチェ素子311の冷却面311aの温度は11℃であり、放熱部材312の温度は30℃であった。この結果から、発明者はマスク用の冷却モジュールとしては、熱電変換素子と、放熱部材と、ファンとを、積層構造でこの順に配置し、放熱部材を熱電変換素子の放熱面に配置することがより有効であることを見出した。また本発明者は、冷却モジュールの構成が積層構造である場合、熱電変換素子の放熱面側での放熱効率もさらに向上し、その結果、ペルチェ効果をより一層高めることができることも見出した。このため、本実施形態では
図4で例示した積層構造が採用されている。したがって、上記構成に係るマスク100によれば、限られたバッテリー容量で、ペルチェ素子311,321の冷却効果を効率よく発揮させることができる。
【0035】
また、上記構成に係るマスク100によれば、ファン313は、放熱部材312とは反対側に向かって送風するため、マスク100の内外で空気が双方向に移動することを抑制しつつ、ペルチェ素子311,321の放熱面311b,321bで発生する熱を本体部1の外側へ移動させることができる。
【0036】
また、上記構成に係るマスク100によれば、使用者Uは、冷却モジュール3と第一配線61とを分離して扱うことができる上、第一配線61は伸縮性を有している。このため、例えばマスク100を洗濯する際に、容易に冷却モジュール3を取り外すことができ、またその後に冷却モジュール3をマスク100に取り付ける場合においても容易に当該取り付け作業を行うことができる。したがって、上記構成に係るマスク100によれば、冷却モジュール3を取り外したり、取り付けたりする手間を簡略化することができる。
【0037】
上記の実施形態は本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示を限定するものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されうる。
【0038】
上記の実施形態において、第一コネクタ部611と第三コネクタ部315を接続することで、第一配線61と第一冷却モジュール31は接続され、第二コネクタ部612と第四コネクタ部325を接続することで、第一配線61と第二冷却モジュール32は接続されているが、本開示はこれに限られない。例えば、第一配線61は、第一冷却モジュール31と第二冷却モジュール32のどちらか一方に対して着脱可能であってもよいし、各コネクタ部(第一コネクタ部611、第二コネクタ部612、第三コネクタ部315および第四コネクタ部325)を介さずに第一冷却モジュール31および第二冷却モジュール32に接続されていてもよい。
【0039】
上記の実施形態において、放熱部材312の長手方向(
図4における左右方向)における長さは、ペルチェ素子311およびファン313の長手方向における長さと略同じであるが、本開示はこれに限られない。本開示に係るマスクは、例えば
図9に例示するように、第一冷却モジュール31の代わりに、ベース部材3121Aと放熱フィン3122Aを含む放熱部材312Aを有する第一冷却モジュール31Aを備えていてもよい。つまり、本開示に係るマスクにおいて、放熱部材312Aの長手方向における長さは、ペルチェ素子311およびファン313の長手方向における長さより長くてもよい。また本開示に係るマスクは、第二冷却モジュール32の代わりに、第一冷却モジュール31Aと同様の構成の第二冷却モジュールを備えていてもよい。なお、このような構造を採用した場合、ペルチェ素子311の冷却面311aの温度は8℃であり、放熱部材312の温度は28℃であった。この結果から、発明者は、
図4、
図8および
図9に例示する各構成を比較すると、これらの中では
図9に例示する構造が最も冷却効果を効率良く発揮させつつ、排熱効率をより高めることができることを確認した。
【0040】
上記の実施形態において、第一配線61は、本体部1の素材よりも硬質な形状記憶素材により形成されているが、例えば、本体部1の素材よりも軟質な素材や非形状記憶素材により形成されていてもよい。
【0041】
上記の実施形態において、保持部4は、本体部1の裏面(マスク100が使用者Uに装着された状態において、使用者Uに対向する面)の下部に設けられているが、例えばクリップ等を介して間接的に、本体部1の裏面に装着されていてもよい。
【0042】
上記の実施形態において、ペルチェ素子311の冷却面311aは、マスク100が使用者Uに装着されている状態において、使用者Uの口元の頸動脈付近の首元に向けて配置されているが、例えば使用者Uの頬、顎等に向けて配置されていてもよい。
【0043】
上記の実施形態において、ファン313は、放熱部材312とは反対側、すなわち使用者Uとは反対側に向かって送風するが、ファン313は、例えば放熱部材312に向けて送風してもよい。
【0044】
上記の実施形態において、保持部4は、本体部1を形成する繊維材料よりも熱伝導率が高い繊維材料(超高分子量ポリエチレン繊維等)から形成されているが、保持部4は、例えば、高熱伝導率材料から形成されていてもよい。当該高熱伝導率材料は、例えば、グラファイトシートから形成される。この場合においても、保持部4を形成する材料は、本体部1を形成する繊維材料よりも熱伝導率が高い。またグラファイトシートから形成された高熱伝導率材料は、超高分子量ポリエチレン繊維等の繊維材料よりも熱伝導率が高い。したがって、保持部4の第一部分41aが、グラファイトシートから形成されている場合、冷却モジュール3による冷却効果をより効果的に発揮させることができる。なお、この場合、保持部4の第一部分41aはグラファイトシートから形成され、保持部4の第二部分41bは超高分子量ポリエチレン繊維等の繊維材料から形成されうる。
【0045】
上記の実施形態において、本体部1は、綿、絹、麻等の天然繊維、化学繊維およびこれらの繊維を混合させてなる織物や、パルプ、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる不織布から形成されているが、例えば、ポリウレタン等からなる繊維から形成されていてもよい。
【0046】
上記の実施形態において、装着部2は、ナイロンやポリエステル等からなる紐状またはベルト状のゴム部材等で形成されているが、例えば、ポリウレタン等からなる繊維から形成されていてもよい。
【0047】
上記の実施形態において、保持部4は、本体部1の裏面(マスク100が使用者Uに装着された状態において、使用者Uに対向する面)の下部に設けられているが、例えば、本体部1の表面の下部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1:本体部、2:装着部、3:冷却モジュール、4:保持部、31,31A:第一冷却モジュール、32:第二冷却モジュール、41:第一保持部、42:第二保持部、61:第一配線、62:第二配線、63:差込部、100:マスク、311,321:ペルチェ素子、311a,321a:冷却面、311b, 321b:放熱面、312,312A:放熱部材、313,313A:ファン、314:第三配線、315:第三コネクタ部、324:第四配線、325:第四コネクタ部、411:第一開口部、412:第二開口部、421:第三開口部、611:第一コネクタ部、612:第二コネクタ部、3121,3121A:ベース部材、3122,3122A:放熱フィン