(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127342
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】モール状部保持体
(51)【国際特許分類】
D02G 3/42 20060101AFI20220824BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
D02G3/42
A47G27/02 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025433
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】593069897
【氏名又は名称】モリリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】片山 大二郎
【テーマコード(参考)】
3B120
4L036
【Fターム(参考)】
3B120AA42
3B120AB03
3B120AB05
3B120AB06
3B120EB14
3B120EB16
4L036MA05
4L036MA20
4L036MA37
4L036MA39
4L036RA25
4L036UA25
(57)【要約】
【課題】飾り糸の断面を、楕円形状にしたものと比較して、モール状部が倒伏しにくいモール状部保持体を提供する。
【解決手段】基部2と、該基部2に取り付けた複数のモール状部3を有し、該モール状部3は、中心糸4と、該中心糸4から径方向の外側方向に突出し、放射状に配設した多数の飾り糸5で構成され、前記飾り糸5を、その軸方向と直交する方向の断面の外形状が、3つの平面部5aと、周方向に隣り合う平面部5a,5aを連結する連結部5bとで構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、該基部に取り付けた複数のモール状部を有し、
該モール状部は、中心糸と、該中心糸から径方向の外側方向に突出し、放射状に配設した多数の飾り糸で構成され、
前記飾り糸を、その軸方向と直交する方向の断面の外形状が、3つの平面部と、周方向に隣り合う平面部を連結する連結部とで構成されていることを特徴とするモール状部保持体。
【請求項2】
前記飾り糸は、0.9乃至2.0デニールのフィラメントで構成されていることを特徴とする請求項1記載のモール状部保持体。
【請求項3】
前記飾り糸の軸方向と直交する方向の断面形状が、三角形形状であることを特徴とする請求項1又は2記載のモール状部保持体。
【請求項4】
前記モール状部保持体は、足ふきマットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモール状部保持体。
【請求項5】
前記飾り糸は、ポリエステル系繊維で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモール状部保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モール状部保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マットとして、吸水性を有しない単繊維の飾り糸を多数備えたモール状糸を、基布に対し上方に立設するように多数設けて構成するとともに、毛細管現象によりモール状糸に吸水力を備えるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記マットでは、飾り糸の表面積を増やし、吸水力を高めるために、飾り糸の断面を楕円形形状に形成している。
【0005】
飾り糸の断面を、楕円形状にしたことにより、その短径方向への曲げの力に対しては弱く、モール状糸が、倒伏しやすくなり、所定の吸水力を発揮できない恐れがあるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決したモール状部保持体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、基部と、該基部に取り付けた複数のモール状部を有し、
該モール状部は、中心糸と、該中心糸から径方向の外側方向に突出し、放射状に配設した多数の飾り糸で構成され、
前記飾り糸を、その軸方向と直交する方向の断面の外形状が、3つの平面部と、周方向に隣り合う平面部を連結する連結部とで構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
前記飾り糸は、0.9乃至2.0デニールのフィラメントで構成されていてもよい。
【0009】
前記飾り糸の軸方向と直交する方向の断面形状が、三角形形状であってもよい。
【0010】
前記モール状部保持体は、足ふきマットであってもよい。
【0011】
前記飾り糸は、ポリエステル系繊維で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飾り糸を、その軸方向と直交する方向の断面の外形状が、3つの平面部と、周方向に隣り合う平面部を連結する連結部で構成されていることにより、上記従来技術のものと比較して、曲げの力に対し強くするとともに復元力を高くすることができ、モール状部を、倒伏しにくくすることができるとともに、倒れたのちの復元力を高くすることができ、所定の吸水力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る足拭きマットの斜視図。
【
図3】本発明の実施例に用いる中心糸と基部との関係を示す縦断面図。
【
図4】本発明の実施例に用いるモール糸の横断面図。
【
図5】本発明の実施例に用いる飾り糸の横断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のモール状部保持体は、後述するモール状部を複数有していれば、任意の部材に適用することができ、例えば、バスマットや玄関マット等の足ふきマット、清掃用具、履物等に適用することができ、以下の実施例においては、本発明を足ふきマットに適用した例に基づいて説明する。
【0015】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る足拭きマット(以下、単にマットという)1の斜視図である。マット1は、
図1に示すように、任意の形状を有し、かつ、織布、不織布等の基布などで構成される基部2を有し、本実施例では、基部2を、上面形状が長方形状で、吸水性を有する織布で構成した。
【0016】
基部2には、
図1、
図2に示すように、モール状部3の一部が、基部2の一方の面2aから外側方向(
図2の上側方向)に向かって突出するように、多数取り付けられている。
【0017】
モール状部3は、
図2,
図4に示すように、中心部に配設した中心糸4と、この中心糸4から径方向の外側方向に突出するように、放射状に設けた多数の飾り糸5で構成されたモール糸7を有している。
【0018】
中心糸4は、モノフィラメント又はマルチフィラメント等で構成されている。中心糸4を、例えば、10乃至300デニールのモノフィラメント糸、紡績糸、マルチフィラメント撚糸等で構成する。なお、中心糸4を、熱融着糸で構成してもよい。また、中心糸4の素材として、例えば、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維等を用いることができる。
【0019】
飾り糸5は、モノフィラメントで構成され、例えば、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリアミド系繊維等で構成されている。なお、飾り糸5を、全単繊維又は一部の単繊維を捲縮フィラメント等の捲縮したものとしてもよいし、全単繊維又は一部の単繊維の全体又は部分に各種界面活性剤等により親水化処理を施したものとしてもよい。
【0020】
本実施例では、中心糸4として、吸水性の乏しいポリエステル系繊維のマルチフィラメントを用い、飾り糸5として、中心糸4より細く、吸水性の乏しいポリエステル系繊維のモノフィラメントを用いた。
【0021】
飾り糸5を、その軸芯方向と直交する方向の横断面形状の外形が、
図5に示すように、3つの平面部5aと、周方向に隣り合う平面部5a,5a間を連結する連結部5bで構成され、略三角形状に形成されている。本実施例では、
図5に示すような連結部5bを円弧状に形成した略三角形状に形成した。3つの平面部5aのうち、周方向の長さが最も長い面を基準面6とした場合、その基準面6の周方向の長さL1が、基準面6に対する高さL2よりも長くなるように形成し、L1÷L2を1より小さくするこが好ましい。
【0022】
また、飾り糸5は、0.9乃至2.0デニールのフィラメントであることが好ましい。飾り糸5を、0.9乃至2.0デニールのフィラメントで構成することにより、使用者が使用した際に、適度な変形性を有するとともに、適度な保持力と復元力を有し、使用者が快適に使用でき、かつ、高い吸水性を保持できる。飾り糸5が、0.9デニールより細い場合には、モール状部3が倒れやすくなり、所定の吸水力を発揮できない恐れがある。また、飾り糸5が、2.0デニールより太い場合には、使用者がごわつき感を感じ、快適に使用できない恐れがある。
【0023】
上記構造により、モール状部3は、
図1に示すように、外部からの力が作用していない状態では、略円筒状に形成されている。また、モール状部3は、
図4に示すように、径方向の外側から中心部に向かう程、単位体積当たりの密度が高くなり、毛細管現象により、水等を速やかに吸収できるようになっている。
【0024】
モール糸7を、
図2,
図3に示すように、基部2の他方の面(裏面)2b側から一方の面(表面)2a側へと貫通させて第1貫通部11を構成する。第1貫通部11に連続して、一方の面2a側から外側方向へと突出する第1突出部12を形成し、適宜高さにおいて、折り返して折り返し部13を形成した後に、第2突出部14を形成する。第2突出部14の端部を、一方の面側2a側から他方の面2b側へと貫通させて第2貫通部15を構成する。第1貫通部11、第1突出部12、折り返し部13、第2突出部14、第2貫通部15は一連に形成され、モール糸7の一部を構成する。
【0025】
第1突出部12と折り返し部13と第2突出部14のモール糸7により、
図2に示すように、モール状部3が構成され、第1突出部12と第2突出部14同士は、
図3に示すように、任意の方法で撚り合わされていることが好ましい。
【0026】
基部2の他方の面2b側において、モール糸7の中心糸4は、
図3に示すように、基部2の他方の面2bと略並行となるように配置されている。
【0027】
この第1貫通部11を、基部2における長手方向又は短手方向の端面と略並行となる直線状に、適宜間隔を有して略位置するように形成する。第2貫通部15も前記直線状に略位置するとともに、第1貫通部11の近傍に位置するようになっている。
【0028】
飾り糸5の横断面形状を、略三角形状に形成したことにより、上記従来技術の飾り糸の横断面形状が楕円形状のものと比較して、同じ断面積とした際に、飾り糸5の表面積が増え、吸水率を高めることができる。
【0029】
また、上記従来技術の飾り糸のが楕円形状のマットと比較して、同じ断面積とした際に、本実施例の飾り糸5を用いたマットは、そのモール状部3における単位断面積当たりの空隙を多くすることができ、保持できる水分量を多くし、吸水率を高めることができる。
【0030】
また、上記従来技術の飾り糸の横断面形状が楕円形状のものと比較して、同じ断面積で、かつ、楕円形の長径と、三角形の底辺L1を同じとした際に、本実施例の飾り糸においては、飾り糸5の高さL2をより高くすることができるために、三角形の横方向と縦方向への変形に対して、曲げの硬さ、高い復元力を有し、使用時において、モール状部3に対して外力が加わった際に倒れにくく、また、モール状部3が倒れ等の変形をした後での、元の形状への復元力が高く、所定の吸水性等を維持することができる。
【0031】
本発明の飾り糸5として、1.2デニールで、断面形状が底面の横方向の長さL1を15.4μm、底面に対する高さL2を8.7μmとする三角形状であるポリエステル繊維を用いたモール状部3のかさ高性(JIS L 1903(荷重94.3g)準用)は、31mm、かさ高性の圧縮回復性(日本羽毛製品協同組合 JDFA-TM015準用)は、圧縮率 (圧縮かさ高):67.7% (10mm)、 回復率 (回復かさ高) :64.5% (20mm)、反発率:200.0%であった。
【0032】
一方、従来技術の飾り糸として1.2デニールで、横断面形状が扁平率0.72の楕円形状であるポリエステル繊維を用いたモール状部のかさ高性(JIS L 1903(荷重94.3g)準用)は、28mm、かさ高性の圧縮回復性(日本羽毛製品協同組合 JDFA-TM015準用)は、圧縮率 (圧縮かさ高): 57.1% (12mm)、 回復率 (回復かさ高) :75.0% (21mm)。 反発率:175.0%であった。
【0033】
これらの実験結果からも、本発明の飾り糸5の横断面形状を略三角形状としたことにより、同じデニールを有する従来技術の横断面形状が楕円形状の飾り糸として用いたものに対して、嵩が高くなり、変形に対する復元力が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0034】
1 足ふきマット(モール状部保持体)
2 基部
3 モール状部
4 中心糸
5 飾り糸