(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127343
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】薄膜搬送用ターンバー
(51)【国際特許分類】
B65H 23/32 20060101AFI20220824BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B65H23/32
B65H27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025435
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 瞭
(72)【発明者】
【氏名】平山 琢哉
【テーマコード(参考)】
3F104
【Fターム(参考)】
3F104AA03
3F104FA01
3F104FA19
3F104GA01
3F104GA06
3F104GA08
3F104GA15
3F104JA01
3F104JA03
3F104JA08
3F104JB01
(57)【要約】
【課題】ロール状周面に不具合が生じた場合に不具合が生じた箇所のみが簡便に交換自在となる薄膜搬送用ターンバーを提供すること。
【解決手段】薄膜連続体Wに対して気体を噴出する気体噴出部が形成された円弧状のロール状周面112aを有する薄膜支持部材110と、2つの薄膜支持部材110を連結する継手部材120と、薄膜支持部材110と継手部材120とを締結する締結ボルト140とを備え、気体噴出部と連通して薄膜支持部材110の軸方向に延びる給気用貫通路111cと、締結ボルト140を挿通して軸方向に延びるボルト挿入孔111dと、締結ボルト140と螺合するネジ穴111eとが形成され、継手部材120に、薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと連通して軸方向に延びる通気用貫通孔121aと、締結ボルト140を挿通して軸方向に延びるボルト挿入孔122と、締結ボルト140と螺合するネジ穴123とが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜連続体に向けて気体を噴出する気体噴出部をロール状周面に形成した複数の薄膜支持部材と該薄膜支持部材を相互に同軸状に連結する継手部材と前記薄膜支持部材に前記継手部材を締結する締結部材とを備え、搬送中の薄膜連続体を気体により非接触浮上状態で支持して搬送方向を変更する薄膜搬送用ターンバーであって、
前記薄膜支持部材が、前記気体噴出部に連通して軸方向に延びる給気用貫通路部分と前記締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と前記締結部材と螺合するネジ穴部分とを有し、
前記継手部材が、前記薄膜支持部材の給気用貫通路部分に連通して軸方向に延びる通気用貫通孔部分と前記締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と前記締結部材と螺合するネジ穴部分とを有していることを特徴とする薄膜搬送用ターンバー。
【請求項2】
前記継手部材が、前記軸方向に沿って前記薄膜支持部材に内挿されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜搬送用ターンバー。
【請求項3】
前記薄膜支持部材と前記継手部材とを前記締結部材で締結させた際に前記薄膜支持部材の給気用貫通路部分と前記継手部材の通気用貫通孔部分との隙間を封止する封止部材が、前記継手部材と前記薄膜支持部材との間に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜搬送用ターンバー。
【請求項4】
前記薄膜支持部材と前記継手部材とが、前記締結部材を前記軸方向の一端側から前記薄膜支持部材または前記継手部材に挿通して締結されていることを特徴とする請求項1または請求項3のいずれか1項に記載の薄膜搬送用ターンバー。
【請求項5】
前記薄膜支持部材の締結用挿通孔部分とネジ穴部分とが、前記薄膜支持部材の端面において等間隔にそれぞれ配置され、
前記継手部材の締結用挿通孔部分とネジ穴部分とが、前記継手部材の端面において等間隔にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の薄膜搬送用ターンバー。
【請求項6】
前記薄膜支持部材および前記継手部材が、環状であり、
前記薄膜支持部材の端部開口部位を閉塞する閉塞部材が、前記薄膜支持部材と同軸状に配置され、
前記閉塞部材が、前記薄膜支持部材の中空部分と連通する通気孔部分を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の薄膜搬送用ターンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜連続体を気体により非接触浮上状態で支持して搬送方向を変更する薄膜搬送用ターンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、薄膜シート、薄膜フィルムなどの薄膜連続体を搬送する薄膜用搬送装置は、薄膜連続体の搬送方向を変化させるターンバーを備えている。
このようなターンバーとして、軸部材とこの軸部材の両端部にそれぞれ配置される2つの回転ローラーとこの2つの回転ローラーの間に配置される多孔質材料で形成された搬送部材とを備えて、多孔質材料から気体を溢出させて連続するウェブ状のワークを浮上させて搬送方向を変更しながら搬送するターンバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したターンバーにおいて、搬送部材は、ウェブ幅全体に亘って気体圧で浮上させるため、ウェブと少なくとも同幅のバー長手方向寸法を有するロール部材となっている。
したがって、搬送部材は、バー長手方向に延在する長尺体のロール部材となっているため、ウェブと対向する搬送部材のロール状周面の一部に目詰まりや破損などの不具合が生じた場合であっても搬送部材全体、すなわち、搬送部材自体を交換する必要があり、ターンバーのメンテナンス性には更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、ロール状周面に不具合が生じた場合に不具合が生じた箇所の部材のみが簡便に交換自在となる薄膜搬送用ターンバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、薄膜連続体に向けて気体を噴出する気体噴出部をロール状周面に形成した複数の薄膜支持部材と該薄膜支持部材を相互に同軸状に連結する継手部材と前記薄膜支持部材に前記継手部材を締結する締結部材とを備え、搬送中の薄膜連続体を気体により非接触浮上状態で支持して搬送方向を変更する薄膜搬送用ターンバーであって、前記薄膜支持部材が、前記気体噴出部に連通して軸方向に延びる給気用貫通路部分と前記締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と前記締結部材と螺合するネジ穴部分とを有し、前記継手部材が、前記薄膜支持部材の給気用貫通路部分に連通して軸方向に延びる通気用貫通孔部分と前記締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と前記締結部材と螺合するネジ穴部分とを有していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された薄膜搬送用ターンバーの構成に加えて、前記継手部材が、前記軸方向に沿って前記薄膜支持部材に内挿されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載された薄膜搬送用ターンバーの構成に加えて、前記薄膜支持部材と前記継手部材とを前記締結部材で締結させた際に前記薄膜支持部材の給気用貫通路部分と前記継手部材の通気用貫通孔部分との隙間を封止する封止部材が、前記継手部材と前記薄膜支持部材との間に配置されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項3のいずれか1項に記載された薄膜搬送用ターンバーの構成に加えて、前記薄膜支持部材と前記継手部材とが、前記締結部材を前記軸方向の一端側から前記薄膜支持部材または前記継手部材に挿通して締結されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された薄膜搬送用ターンバーの構成に加えて、前記薄膜支持部材の締結用挿通孔部分とネジ穴部分とが、前記薄膜支持部材の端面において等間隔にそれぞれ配置され、前記継手部材の締結用挿通孔部分とネジ穴部分とが、前記継手部材の端面において等間隔にそれぞれ配置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された薄膜搬送用ターンバーの構成に加えて、前記薄膜支持部材および前記継手部材が、環状であり、前記薄膜支持部材の端部開口部位を閉塞する閉塞部材が、前記薄膜支持部材と同軸状に配置され、前記閉塞部材が、前記薄膜支持部材の中空部分と連通する通気孔部分を有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の薄膜搬送用ターンバーは、薄膜連続体に向けて気体を噴出する気体噴出部をロール状周面に形成した複数の薄膜支持部材とこの薄膜支持部材を相互に同軸状に連結する継手部材と薄膜支持部材に継手部材を締結する締結部材とを備えていることにより、搬送中の薄膜連続体を気体により非接触浮上状態で支持して搬送方向を変更することができるだけでなく、薄膜支持部材および継手部材の数を増減させるだけで薄膜搬送用ターンバーの長さを容易に調整したり、気体の噴出量を薄膜搬送用ターンバーの長手方向で容易に調整したりすることができる。
そして、薄膜支持部材が、気体噴出部に連通して軸方向に延びる給気用貫通路部分と締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と締結部材と螺合するネジ穴部分とを有し、継手部材が、薄膜支持部材の給気用貫通路部分に連通して軸方向に延びる通気用貫通孔部分と締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と締結部材と螺合するネジ穴部分とを有していることにより、締結部材を薄膜支持部材の締結用挿通孔部分から挿入して継手部材のネジ穴部分と螺合させて薄膜支持部材と継手部材とが締結自在であると共に締結部材を継手部材の締結用挿通孔部分から挿入して薄膜支持部材のネジ穴部分と螺合させて薄膜支持部材と継手部材とが締結自在であるため、ロール状周面に目詰まりや破損などの不具合が生じた場合には、締結部材を薄膜支持部材および継手部材から取り外して薄膜搬送用ターンバーを解体することで、不具合が生じた薄膜支持部材のみを簡便に交換することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の薄膜搬送用ターンバーによれば、請求項1に係る発明の薄膜搬送用ターンバーが奏する効果に加えて、継手部材が、軸方向に沿って薄膜支持部材に内挿されていることにより、薄膜支持部材が薄膜連続体を支持しない継手部材に内挿される薄膜搬送用ターンバーに比べて、薄膜連続体に面給気する薄膜支持部材の表面積が大きくなるため、薄膜連続体をより均一に非接触浮上状態で支持することができる。
【0014】
請求項3に係る発明の薄膜搬送用ターンバーによれば、請求項1または請求項2に係る発明の薄膜搬送用ターンバーが奏する効果に加えて、封止部材が、薄膜支持部材と継手部材との間に配置されていることにより、薄膜支持部材と継手部材とを締結部材で締結させた際に薄膜支持部材の給気用貫通路部分と継手部材の通気用貫通孔部分との隙間が封止部材により封止されるため、薄膜支持部材の給気用貫通路部分と継手部材の通気用貫通孔部分との隙間から気体が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0015】
請求項4に係る発明の薄膜搬送用ターンバーによれば、請求項1または請求項3のいずれか1項に係る発明の薄膜搬送用ターンバーが奏する効果に加えて、薄膜支持部材と継手部材とが、締結部材を軸方向の一端側から薄膜支持部材または継手部材に挿通して締結されていることにより、締結部材を軸方向の両側から薄膜支持部材または継手部材に挿通して薄膜搬送用ターンバーを組み立てる場合に比べて薄膜搬送用ターンバーの組立工程が単純化されるため、薄膜搬送用ターンバーを効率よく組立または解体することができる。
【0016】
請求項5に係る発明の薄膜搬送用ターンバーによれば、請求項1乃至請求項4に係る発明の薄膜搬送用ターンバーが奏する効果に加えて、薄膜支持部材の締結用挿通孔部分とネジ穴部分とが、それぞれ薄膜支持部材の端面において等間隔に配置され、継手部材の締結用挿通孔部分とネジ穴部分とが、それぞれ継手部材の端面において等間隔に配置されていることにより、継手部材と薄膜支持部材とを締結部材で締結させた際の締結部材による締結力が周方向に対してほぼ均等に作用するため、継手部材と薄膜支持部材との当接面から気体が漏れ出ることをより確実に防ぐことができるだけでなく、締結部材による締結力に起因する歪みが薄膜搬送用ターンバーに生じにくくなり、薄膜搬送用ターンバーの真直度が向上して、薄膜連続体をより安定して搬送させることができる。
【0017】
請求項6に係る発明の薄膜搬送用ターンバーによれば、請求項1乃至請求項5に係る発明の薄膜搬送用ターンバーが奏する効果に加えて、薄膜支持部材および継手部材が、環状であり、薄膜支持部材の端部開口部位を閉塞する閉塞部材が薄膜支持部材と同軸状に配置され、閉塞部材が、薄膜支持部材の中空部分と連通する通気孔部分を有していることにより、薄膜支持部材の中空部分が外部と連通するため、薄膜搬送用ターンバーを組んだ状態で薄膜支持部材の中空部分の温度が高まって薄膜支持部材の中空部分に溜まった空気が膨張したとしても、この中空部分に溜まった空気を容易に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例である薄膜搬送用ターンバーを備えた薄膜用搬送装置の使用態様を示す斜視図。
【
図3】
図1に示す薄膜搬送用ターンバーの斜視分解図。
【
図4A】
図2に示す薄膜搬送用ターンバーのIVAから見た左側面図。
【
図4B】
図2に示す薄膜搬送用ターンバーのIVBから見た右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、薄膜連続体に向けて気体を噴出する気体噴出部をロール状周面に形成した複数の薄膜支持部材とこの薄膜支持部材を相互に同軸状に連結する継手部材と前記薄膜支持部材に継手部材を締結する締結部材とを備えた薄膜搬送用ターンバーであって、薄膜支持部材が、気体噴出部に連通して軸方向に延びる給気用貫通路部分と締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と締結部材と螺合するネジ穴部分とを有し、継手部材が、薄膜支持部材の給気用貫通路部分に連通して軸方向に延びる通気用貫通孔部分と締結部材を挿通して軸方向に延びる締結用挿通孔部分と締結部材と螺合するネジ穴部分とを有し、ロール状周面に不具合が生じた場合に不具合が生じた薄膜支持部材のみが交換自在となるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0020】
例えば、薄膜支持部材のロール状周面は、円弧状であれば、薄膜支持部材の全周に形成されていてもよいし、一部のみに形成されていてもよい。
したがって、薄膜支持部材の断面形状は、円形はもちろん、扇形であってもよい。
【0021】
例えば、薄膜支持部材の気体噴出部は、薄膜連続体に気体を供給できれば如何なる形態であってもよく、具体的には、薄膜支持部材に配設した多孔質材であってもよいし、薄膜支持部材のロール状周面に形成した微小孔であってもよい。
【0022】
例えば、薄膜支持部材の気体噴出部から噴出される気体は、空気であることが好ましいが、他の気体であってもよい。
【0023】
例えば、薄膜支持部材は、軽量化の観点から中空の筒状体であることが好ましいが、中実の柱状体であってもよい。
これは、継手部材についても同様である。
【0024】
例えば、締結部材は、薄膜支持部材に継手部材を締結でき、薄膜支持部材のネジ穴部分または継手部材のネジ穴部分と螺合自在であれば、いかなる部材であってもよい。
特に、一方向から薄膜支持部材または継手部材に挿入して薄膜支持部材に継手部材を順次締結できる部材であれば、六角穴部分を有する頭部とこの頭部より小径のネジ部とから形成される六角穴付きボルトが一例ではあるが、締結部材は六角穴付きボルト以外の部材であってもよい。
【実施例0025】
以下、
図1乃至
図6Bに基づいて、本発明の一実施例である薄膜搬送用ターンバーを説明する。
【0026】
<1.薄膜用搬送装置の概要>
まず、
図1に基づいて、本発明の一実施例である薄膜搬送用ターンバーを備えた薄膜用搬送装置の概要について説明する。
図1は本発明の一実施例である薄膜搬送用ターンバーを備えた薄膜用搬送装置の斜視図である。
【0027】
薄膜用搬送装置10は、薄膜連続体などを搬送する装置であり、
図1に示すように、ロールRに巻き付けられた薄膜連続体Wを巻き取る巻き取り機11と、巻き取り機11に巻き取られる薄膜連続体Wの状態を検査する検査器12と、搬送中の薄膜連続体を空気により非接触浮上状態で支持して搬送方向を変更する棒状の薄膜搬送用ターンバー100とを備えている。
【0028】
<2.薄膜搬送用ターンバーの概要>
次に、
図2乃至
図4Cに基づいて、薄膜搬送用ターンバー100の概要について説明する。
図2は、
図1に示す薄膜搬送用ターンバーの使用態様を示す斜視図であり、
図3は、
図1に示す薄膜搬送用ターンバーの斜視分解図であり、
図4Aは、
図2に示す薄膜搬送用ターンバーのIVAから見た左側面図であり、
図4Bは、
図2に示す薄膜搬送用ターンバーのIVBから見た右側面図であり、
図4Cは、
図4AのIVC-IVC断面図である。
【0029】
薄膜搬送用ターンバー100は、筒状の薄膜支持部材110と、2つの薄膜支持部材110を相互に同軸状に連結する筒状の継手部材120と、薄膜支持部材110と同軸状に配置されて薄膜支持部材110の端部開口部位を閉塞する閉塞部材130と、薄膜支持部材110と継手部材120または閉塞部材130とを締結する締結ボルト(締結部材)140とを備えている。
また、この薄膜搬送用ターンバー100は、薄膜支持部材110、継手部材120、閉塞部材130のそれぞれと締結ボルト140との間を介在する座金150と、薄膜支持部材110と継手部材120との間および薄膜支持部材110と閉塞部材130との間に配置されるOリング(封止部材)160とを備えている。
さらに、薄膜搬送用ターンバー100の閉塞部材130には、不図示の給気源と接続された空気配管に接続する給気ポート170が取り付けられている。
【0030】
締結ボルト140は、
図3に示すように、六角穴部分を有する円柱状の頭部と該頭部より小径のネジ部とから形成される六角穴付きボルトである。
そして、本実施例では、締結ボルト140として、ネジ部の短い短尺ボルト141と、ネジ部の長い長尺ボルト142とが用いられている。
なお、短尺ボルト141の頭部の直径と長尺ボルト142の頭部の直径とは、等しくなっている。
【0031】
【0032】
薄膜支持部材110は、
図3に示すように円筒状の部材であり、円筒状の金属製の基材111と、この基材111の外周に設けられた円筒状の多孔質材112とから構成されている。
【0033】
そして、この基材111には、
図5Bに示すように、両端面に凹状のフランジ用座部111aが形成されている。
さらに、このフランジ用座部111aの中央には、軸方向であるZ方向に延びて薄膜支持部材110を貫通する中空部分111bが形成されている。
フランジ用座部111aの直径Dは、継手部材120の直径とほぼ等しくなっている。
また、フランジ用座部111aの底面には、Z方向(軸方向)に延びて多孔質材112と連通する給気用貫通路(給気用貫通路部分)111cと、Z方向に延びて長尺ボルト142を挿通自在とするボルト挿入孔(締結用挿通孔部分)111dと、短尺ボルト141のネジ部と螺合するネジ穴(ネジ穴部分)111eとが形成されている。
【0034】
給気用貫通路111cは、
図5に示すように、Z方向に延びて薄膜支持部材110を貫通する貫通路本体111c1と、この貫通路本体111c1から側方に分岐した分岐孔111c2とから形成されている。
分岐孔111c2は、径方向に延びており、貫通路本体111c1と多孔質材112とを連通している。
【0035】
ボルト挿入孔111dは、
図5Cに示すようにZ方向に延びて薄膜支持部材110を貫通しており、六角穴付きボルトである長尺ボルト142が挿通自在となっている。
すなわち、ボルト挿入孔111dは、長尺ボルト142の頭部を収容する長尺ボルト142の頭部の外径より大径の大径部111d1と、長尺ボルト142のネジ部を挿通自在とする長尺ボルト142のネジ部の外径より大径で長尺ボルト142の頭部の外径より小径の小径部111d2とから形成されている。
この大径部111d1の中心は、小径部111d2の中心と一致している。
【0036】
このように形成された、給気用貫通路111c(貫通路本体111c1)の中心とボルト挿入孔111dの中心とネジ穴111eの中心とは、同一円周上に配置されている。
また、ボルト挿入孔111dおよびネジ穴111eは、
図5Aに示すように、それぞれ等間隔に配置されている。
【0037】
多孔質材112は、基材111と当接する面と最表面のロール状周面112aとが連通している。
これにより、基材111の分岐孔111c2から多孔質材112に対して供給された気体が、基材111と当接する面に流入し、ロール状周面112aから噴出する。
したがって、多孔質材112のロール状周面112aには、薄膜連続体に向けて気体を噴出する気体噴出部が形成されている。
また、給気用貫通路111cは、気体噴出部と連通しているということができる。
【0038】
<4.継手部材>
次に、
図3、
図4C、
図6A乃至
図6Bに基づいて、薄膜搬送用ターンバー100を構成する継手部材120について説明する。
図6Aは、
図2に示す継手部材の左側面図であり、
図6Bは、
図6AのVIB-VIB断面図である。
【0039】
継手部材120は、
図3に示すように環状の部材であり、
図4C等に示すように、Z方向に沿って薄膜支持部材110に内挿されている。
そして、この継手部材120の端面には、Oリング160が載置される凹状の封止部材用座部121と、ボルト挿入孔(締結用挿通孔部分)122と、長尺ボルト142のネジ部と螺合するネジ穴(ネジ穴部分)123とを有している。
【0040】
封止部材用座部121は、
図6Aに示すように、側面視において円形であり、
図6Bに示すように、継手部材120の両端面に形成されている。
また、封止部材用座部121の中心には、軸方向となるZ方向に延びて継手部材120を貫通する通気用貫通孔(通気用貫通孔部分)121aが形成されている。
【0041】
通気用貫通孔121aは、
図3に示すように薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと連通している。
この通気用貫通孔121aの中心は、封止部材用座部121の中心と一致している。
また、通気用貫通孔121aの直径は、
図6Aに示すように、封止部材用座部121の外径より小さくなっている。
したがって、封止部材用座部121には、Oリング160と当接する座面121bが形成されている。
【0042】
ボルト挿入孔122は、
図6Bに示すようにZ方向に延びて継手部材120を貫通しており、六角穴付きボルトである短尺ボルト141が挿通自在となっている。
すなわち、ボルト挿入孔122は、短尺ボルト141の頭部を収容する短尺ボルト141の頭部の外径より大径の大径部122aと、短尺ボルト141のネジ部を挿通自在とする短尺ボルト141のネジ部の外径より大径で長尺ボルト142の頭部の外径より小径の小径部122bとから形成されている。
この大径部122aの中心は、小径部122bの中心と一致している。
【0043】
このように形成された、通気用貫通孔121aの中心とボルト挿入孔122の中心とネジ穴123の中心とは、同一円周上に配置されている。
また、ボルト挿入孔122およびネジ穴123は、
図6Aに示すように、それぞれ継手部材120の端面において等間隔に配置されている。
【0044】
<5.閉塞部材>
次に、
図3乃至
図4Cに基づいて、薄膜搬送用ターンバー100を構成する閉塞部材130について説明する。
【0045】
閉塞部材130は、薄膜支持部材110の端部開口部位に配置される部材であり、薄膜搬送用ターンバー100の左側の端部となる左側閉塞部材130Lと、薄膜搬送用ターンバー100の右側の端部となる右側閉塞部材130Rとから構成されている。
左側閉塞部材130Lと右側閉塞部材130Rとは、共に、円盤状のフランジ部分131と、このフランジ部分131の中心付近からZ方向に突出した把持部分132とから形成されている。
【0046】
フランジ部分131の直径は、
図4A乃至
図4Cに示すように、薄膜支持部材110のフランジ用座部111aの外径とほぼ等しくなっている。
また、フランジ部分131には、薄膜搬送用ターンバー100の軸方向(Z方向)に延びて短尺ボルト141を挿通自在とするボルト挿入孔(ボルト挿入孔部分)131aと、給気ポート170と螺合自在な給気ポート取付孔(給気ポート取付孔部分)131bと、薄膜支持部材110の中空部分111bと連通する通気孔(通気孔部分)131cとが形成されている。
なお、左側閉塞部材130Lと右側閉塞部材130Rとでは、ボルト挿入孔131aの位置が異なっている。
【0047】
ボルト挿入孔131aは、軸方向にフランジ部分131を貫通しており、六角穴付きボルトである短尺ボルト141が挿通自在となっている。
すなわち、ボルト挿入孔131aは、短尺ボルト141の頭部を収容する短尺ボルト141の頭部の外径より大径の大径部と、短尺ボルト141のネジ部を挿通自在とする短尺ボルト141のネジ部の外径より大径で短尺ボルト141の頭部の外径より小径の小径部とから形成されている。
この大径部の中心は、小径部の中心と一致している。
【0048】
給気ポート取付孔131bは、軸方向にフランジ部分131を貫通しており、給気ポート170と螺合するために雌ねじが形成されていると共に、薄膜支持部材110側に向かってテーパが形成されている。
したがって、給気ポート取付孔131bは薄膜支持部材110側に向かって縮径している。
そして、給気ポート取付孔131bの中心とボルト挿入孔131aの中心とは、同一円周上に配置されている。
【0049】
通気孔部分131cは、把持部分132の近傍に設けられ、軸方向にフランジ部分131を貫通している。
そして、この通気孔部分131cの中心は、フランジ部分131の中心(すなわち、薄膜搬送用ターンバー100の軸方向中心)Oおよび給気ポート取付孔131bの中心と同一の直線上に配置されている。
【0050】
把持部分132の直径は、
図4Aおよび
図4B等に示すように、フランジ部分131の直径よりも小径となっている。
【0051】
<6.Oリング>
Oリング160の厚みは、継手部材120に設けた凹状の封止部材用座部121の深さよりも大きくなっている。
これにより、Oリング160は、薄膜支持部材110と継手部材120とを締結ボルト140で締結させた際に、Oリング160が潰れて、薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと継手部材120の通気用貫通孔121aとの隙間を封止できる。
【0052】
<7.薄膜搬送用ターンバーの組立>
次に、
図3に基づいて、薄膜搬送用ターンバー100の組み方について説明する。
【0053】
薄膜搬送用ターンバー100を組み立てるには、
図3に示すように、Oリング160を継手部材120の封止部材用座部121に載置した状態で、継手部材120を薄膜支持部材110に設けた凹状のフランジ用座部111aに挿入する。
そして、継手部材120の通気用貫通孔121aと薄膜支持部材110の給気用貫通路111cの貫通路本体111c1とを対向させた状態で、継手部材120のボルト挿入孔122に座金150、短尺ボルト141を挿入し、短尺ボルト141と薄膜支持部材110のネジ穴111eとを螺合させて、薄膜支持部材110と継手部材120とを締結させる。
この際、短尺ボルト141で薄膜支持部材110と継手部材120とを締結させたことにより、短尺ボルト141の頭部および座金150により継手部材120が薄膜支持部材110に押しつけられて軸方向の力(軸力)が発生し、この軸力によりOリング160が潰れて、薄膜支持部材110と継手部材120との隙間から空気が漏れ出ることが抑制される。
【0054】
Oリング160を継手部材120の露出している側の封止部材用座部121に載置した状態で、薄膜支持部材110に設けた凹状のフランジ用座部111aに継手部材120を挿入する。
そして、薄膜支持部材110の給気用貫通路111cの貫通路本体111c1と継手部材120の通気用貫通孔121aとを対向させた状態で、薄膜支持部材110のボルト挿入孔111dに座金150、長尺ボルト142を挿入し、長尺ボルト142と継手部材120のネジ穴123とを螺合させて、薄膜支持部材110と継手部材120とを締結させる。
この際、長尺ボルト142で薄膜支持部材110と継手部材120とを締結させたことにより、長尺ボルト142の頭部および座金150により薄膜支持部材110が継手部材120に押しつけられて軸力が発生し、この軸力によりOリング160が潰れて、薄膜支持部材110と継手部材120との隙間から空気が漏れ出ることが抑制される。
【0055】
以上の手順で所定の長さまで薄膜支持部材110と継手部材120とを締結ボルト140で締結させ、薄膜支持部材110の端部開口部位を閉塞部材130で閉塞する。
このとき、閉塞部材130の給気ポート取付孔131bと薄膜支持部材110の給気用貫通路111cの貫通路本体111c1とを対向させた状態で、閉塞部材130のボルト挿入孔131aに座金150、短尺ボルト141を挿入し、短尺ボルト141と薄膜支持部材110のネジ穴111eとを螺合させて、薄膜支持部材110と閉塞部材130とを締結させる。
【0056】
<8.薄膜搬送用ターンバー100が奏する効果>
以上説明した本実施例の薄膜搬送用ターンバー100によれば、薄膜連続体Wに向けて気体を噴出する気体噴出部をロール状周面112aに形成した複数の薄膜支持部材110とこの薄膜支持部材110を相互に同軸状に連結する継手部材120と薄膜支持部材110に継手部材120を締結する締結部材である締結ボルト140とを備えていることにより、搬送中の薄膜連続体Wを気体により非接触浮上状態で支持して搬送方向を変更することができるだけでなく、薄膜支持部材110および継手部材120の数を増減させるだけで薄膜搬送用ターンバー100の長さを容易に調整したり、気体の噴出量を薄膜搬送用ターンバー100の長手方向で容易に調整したりすることができる。
さらに、薄膜支持部材110に、軸方向であるZ方向に延びて気体噴出部と連通する給気用貫通路部分である給気用貫通路111cと、Z方向に延びて締結ボルト140を挿通自在とする締結用挿通孔部分であるボルト挿入孔111dと、締結ボルト140と螺合するネジ穴部分であるネジ穴111eとが形成され、継手部材120に、Z方向に延びて薄膜支持部材110の給気用貫通路部分111cと連通する通気用貫通孔部分である通気用貫通孔121aと、Z方向に延びて締結ボルト140を挿通自在とする締結用挿通孔部分であるボルト挿入孔122と、締結ボルト140と螺合するネジ穴部分であるネジ穴123とが形成されていることにより、締結ボルト140を薄膜支持部材110のボルト挿入孔111dから挿入して継手部材120のネジ穴123と螺合させて薄膜支持部材110と継手部材120とが締結自在であると共に締結ボルト140を継手部材120のボルト挿入孔122から挿入して薄膜支持部材110のネジ穴111eと螺合させて薄膜支持部材110と継手部材120とが締結自在であるため、ロール状周面に目詰まりや破損などの不具合が生じた場合には、締結ボルト140を薄膜支持部材110および継手部材120から取り外して薄膜搬送用ターンバー100を解体することで、不具合が生じた薄膜支持部材110のみを交換することができる。
【0057】
また、継手部材120が、Z方向に沿って薄膜支持部材110に内挿されていることにより、薄膜支持部材110が薄膜連続体Wを支持しない継手部材120に内挿される薄膜搬送用ターンバー100に比べて、薄膜連続体Wに面給気する薄膜支持部材110の表面積が大きくなるため、薄膜連続体Wをより均一に非接触浮上状態で支持することができる。
【0058】
また、封止部材であるOリング160が、薄膜支持部材110と継手部材120との間に配置されていることにより、薄膜支持部材110と継手部材120とを締結ボルト140で締結させた際に薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと継手部材120の通気用貫通孔121aとの隙間がOリング160により封止されるため、薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと継手部材120の通気用貫通孔121aとの隙間から気体が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0059】
また、薄膜支持部材110と継手部材120とが、締結ボルト140を軸方向の一端側から薄膜支持部材110または継手部材120に挿通して締結されていることにより、締結ボルト140を軸方向の両側から薄膜支持部材110または継手部材120に挿通して薄膜搬送用ターンバー100を組み立てる場合に比べて薄膜搬送用ターンバー100の組立工程が単純化されるため、薄膜搬送用ターンバー100を効率よく組立または解体することができる。
【0060】
また、継手部材120の端面に、通気用貫通孔121aより大径の外径を有する凹状の封止部材用座部である凹状の封止部材用座部121が形成され、この封止部材用座部121の深さが、Oリング160の厚みよりも小さいことにより、封止部材用座部121に封止部材を載置した状態で、薄膜支持部材110と継手部材120とを締結ボルト140で締結させるだけで薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと継手部材120の通気用貫通孔121aとの隙間が封止されるため、薄膜支持部材110の給気用貫通路111cと継手部材120の通気用貫通孔121aとの隙間を簡便に封止することができる。
【0061】
また、薄膜支持部材110のボルト挿入孔111dとネジ穴111eとが、それぞれ薄膜支持部材110の端面において等間隔に配置され、継手部材120のボルト挿入孔122とネジ穴123とが、それぞれ継手部材120の端面において等間隔に配置されていることにより、継手部材120と薄膜支持部材110とを締結ボルト140で締結させた際の締結ボルト140による締結力が周方向に対してほぼ均等に作用するため、継手部材120と薄膜支持部材110との当接面から気体が漏れ出ることをより確実に防ぐことができるだけでなく、締結ボルト140による締結力に起因する歪みが薄膜搬送用ターンバー100に生じにくくなり、薄膜搬送用ターンバー100の真直度が向上して、薄膜連続体Wをより安定して搬送させることができる。
【0062】
さらに、薄膜支持部材110のボルト挿入孔111dが継手部材120のネジ穴123と対向し、継手部材120のボルト挿入孔122が薄膜支持部材110のネジ穴111eと対向していることにより、薄膜支持部材110と継手部材120とをそれぞれ1種類用意するだけで、薄膜搬送用ターンバー100を形成することができる。
【0063】
<変形例>
以上、本発明の一実施例である薄膜搬送用ターンバー100について説明したが、本発明の薄膜搬送用ターンバーは、上述した実施例の薄膜搬送用ターンバー100に限定されるものではない。
【0064】
例えば、各々の薄膜支持部材の気体の噴出量は、すべて同一であってもよいし、長手方向において噴出量を調整するために、それぞれ異なっていてもよい。
【0065】
例えば、本実施例において、多孔質材112には樹脂を含浸させていたが、多孔質材に樹脂を含浸させなくてもよい。
また、自励振動を防止するために、多孔質材の表面を目詰まりさせてもよい。
【0066】
例えば、多孔質材112のロール状周面112aは、表面から粉塵が舞うのを防ぐために樹脂が含浸されていてもよい。
さらに、多孔質材112の両側面は、気体の溢出を防ぐために封孔処理がなされていることが好ましい。
【0067】
例えば、本実施例において、継手部材120のネジ穴123は、有底であったが、継手部材120を貫通していてもよい。
【0068】
例えば、本実施例においては、Oリング160が継手部材120の封止部材用座部121に配設されていたが、薄膜支持部材110側にOリング160を配設するための封止部材用座部を設けてもよい。
なお、薄膜支持部材110側に凹状の封止部材用座部を設けた場合であっても、封止部材用座部が薄膜支持部材110の給気用貫通路111cの直径より大径である。
【0069】
例えば、本実施例において、締結ボルト140は、短尺ボルト141と長尺ボルト142との2種類を用いていたが、継手部材の左右方向の長さや大径部の位置、継手部材の左右方向の長さや大径部の位置、閉塞部材のフランジ部分の厚さ等を調整して1種類のボルトにしてもよい。