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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127379
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】エンジンの吸排気構造
(51)【国際特許分類】
   F01L 7/02 20060101AFI20220824BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20220824BHJP
   F02B 67/06 20060101ALI20220824BHJP
   F01L 1/02 20060101ALI20220824BHJP
   F01L 1/12 20060101ALI20220824BHJP
   F01L 1/26 20060101ALI20220824BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F01L7/02 C
F02B67/00 E
F02B67/00 F
F02B67/06 D
F01L1/02 C
F01L1/12 D
F01L1/26 Z
F02F1/42 A
F02F1/42 G
F02F1/42 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025497
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】森 正樹
【テーマコード(参考)】
3G016
3G024
【Fターム(参考)】
3G016AA02
3G016AA08
3G016AA10
3G016AA12
3G016AA19
3G016BA02
3G016BA06
3G016BA10
3G016BA28
3G016CA24
3G016CA28
3G016GA06
3G024AA09
3G024AA11
3G024DA06
3G024EA04
3G024FA13
(57)【要約】
【課題】エンジン等の小型化を図りつつ、エンジンへの吸入空気量を増加させる。
【解決手段】エンジンの前シリンダヘッド8において、吸気ポートに吸気通路部材を接続し、吸気ポートの入口部と排気ポートの出口部とを接続する接続通路42を設け、排気ポートに排気通路45を接続する。また、接続通路42を開閉する接続通路開閉バルブ47と、排気通路45を開閉する排気通路開閉バルブ51と、これらのバルブを駆動するバルブ駆動機構55を設ける。前シリンダヘッド8のカムシャフトは、吸気行程において吸気ポートおよび排気ポートを開き、排気行程において吸気ポートを閉じかつ排気ポートを開くように吸気バルブおよび排気バルブを駆動する。バルブ駆動機構55は、吸気行程において接続通路42を開きかつ排気通路45を閉じ、排気行程において接続通路42を閉じかつ排気通路45を開くようにバルブ47、51を駆動する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記エンジンの燃焼室に接続された吸気ポートと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記燃焼室に接続された排気ポートと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記吸気ポートを開閉する吸気バルブおよび前記排気ポートを開閉する排気バルブを駆動するカムシャフトと、
前記吸気ポートに接続され、燃料燃焼用の空気を前記吸気ポートに供給する第1の吸気通路と、
前記排気ポートに接続され、燃料燃焼用の空気を前記排気ポートに供給する第2の吸気通路と、
前記排気ポートにおいて、当該排気ポートと前記第2の吸気通路との接続位置よりも前記エンジンの排気ガスの排出方向において下流側の部分と、前記排気ガスを前記エンジン外へ排出するための排気管との間に接続され、前記燃焼室内から前記排気ポートを介して排出された前記排気ガスを前記排気管に送る排気通路と、
前記第2の吸気通路を開閉する第1のバルブと、
前記排気通路を開閉する第2のバルブと、
前記エンジンの外側に設けられ、前記カムシャフトの回転を前記第1のバルブおよび前記第2のバルブに伝達することにより前記第1のバルブおよび前記第2のバルブを駆動するバルブ駆動機構とを備え、
前記カムシャフトは、前記エンジンの吸気行程において前記吸気ポートおよび前記排気ポートを開き、前記エンジンの排気行程において前記吸気ポートを閉じかつ前記排気ポートを開くように前記吸気バルブおよび前記排気バルブを駆動し、前記バルブ駆動機構は、前記エンジンの吸気行程において前記第2の吸気通路を開きかつ前記排気通路を閉じ、前記エンジンの排気行程において前記第2の吸気通路を閉じかつ前記排気通路を開くように前記第1のバルブおよび前記第2のバルブを駆動することを特徴とするエンジンの吸排気構造。
【請求項2】
前記エンジンは車両に当該エンジンのクランクシャフトの伸長方向が前記車両の左右方向となるように設けられ、前記シリンダヘッドの右部または左部には、前記クランクシャフトの回転を用いて前記カムシャフトを駆動するカムシャフト駆動機構を収容する収容室が設けられ、前記バルブ駆動機構は前記シリンダヘッドにおいて前記収容室が設けられている側の反対側の部分の側方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気構造。
【請求項3】
前記カムシャフトとして、前記シリンダヘッドの後部に設けられ、前記吸気ポートを開閉する吸気バルブを駆動する吸気バルブ駆動用カムシャフトと、前記シリンダヘッドの前部に設けられ、前記排気ポートを開閉する排気バルブを駆動する排気バルブ駆動用カムシャフトとを備え、前記エンジンは車両に当該エンジンのクランクシャフトの伸長方向が前記車両の左右方向となるように設けられ、前記シリンダヘッドは前傾しており、前記車両の側面視において、前記第1のバルブは前記排気バルブ駆動用カムシャフトの後方に配置され、前記第2のバルブは前記排気バルブ駆動用カムシャフトの下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気構造。
【請求項4】
前記エンジンは車両に当該エンジンのクランクシャフトの伸長方向が前記車両の左右方向となるように設けられ、前記車両には前記エンジンを冷却する冷却液を冷却するためのラジエータが設けられ、前記バルブ駆動機構は前記ラジエータの下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気構造。
【請求項5】
前記エンジンは車両に当該エンジンのクランクシャフトの伸長方向が前記車両の左右方向となるように設けられ、前記車両の前面視で、前記排気ガスの排出方向において前記排気管の上流側部分は前記排気通路から右方または左方に傾斜しつつ下方へ伸長し、前記バルブ駆動機構は、前記シリンダヘッドの側方であって、前記排気通路から前記排気管の上流側部分が伸長する方向と左右反対の方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気構造。
【請求項6】
前記バルブ駆動機構は、
前記カムシャフトに接続された駆動プーリと、
前記第1のバルブに接続された第1の従動プーリと、
前記第2のバルブに接続された第2の従動プーリと、
前記駆動プーリ、前記第1の従動プーリおよび前記第2の従動プーリに掛け渡されたベルトとを備えていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの吸排気構造。
【請求項7】
前記カムシャフトとして、前記シリンダヘッドの後部に設けられ、前記吸気ポートを開閉する吸気バルブを駆動する吸気バルブ駆動用カムシャフトと、前記シリンダヘッドの前部に設けられ、前記排気ポートを開閉する排気バルブを駆動する排気バルブ駆動用カムシャフトとを備え、前記エンジンは車両に当該エンジンのクランクシャフトの伸長方向が前記車両の左右方向となるように設けられ、前記シリンダヘッドは前傾しており、前記車両の側面視において、前記第1の従動プーリの回転中心および前記第2の従動プーリの回転中心はいずれも前記排気バルブ駆動用カムシャフトの回転中心よりも後方に位置していることを特徴とする請求項6に記載のエンジンの吸排気構造。
【請求項8】
前記第1のバルブは、前記第2の吸気通路内に配置された第1の回転体を備え、前記第1の回転体は前記バルブ駆動機構により伝達された動力により一方向に連続的に回転し、前記第1の回転体には前記第1の回転体を貫通する第1の連通穴が形成され、
前記第2のバルブは、前記排気通路内に配置された第2の回転体を備え、前記第2の回転体は前記バルブ駆動機構により伝達された動力により一方向に連続的に回転し、前記第2の回転体には前記第2の回転体を貫通する第2の連通穴が形成され、
前記エンジンの吸気行程の間には、前記第2の吸気通路内において前記第1の回転体よりも前記空気の供給方向の上流側の部分と前記第2の吸気通路において前記第1の回転体よりも前記空気の供給方向の下流側の部分とが前記第1の連通穴を介して連通し、かつ前記排気通路内において前記第2の回転体よりも前記排気ガスの排出方向の上流側の部分と前記排気通路において前記第2の回転体よりも前記排気ガスの排出方向の下流側の部分とが前記第2の回転体により遮断され、前記エンジンの排気行程の間には、前記第2の吸気通路内において前記第1の回転体よりも前記空気の供給方向の上流側の部分と前記第2の吸気通路において前記第1の回転体よりも前記空気の供給方向の下流側の部分とが前記第1の回転体により遮断され、かつ前記排気通路内において前記第2の回転体よりも前記排気ガスの排出方向の上流側の部分と前記排気通路において前記第2の回転体よりも前記排気ガスの排出方向の下流側の部分とが前記第2の連通穴を介して連通することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のエンジンの吸排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃焼室への空気の供給および燃焼室からの排気ガスの排出を行うエンジンの吸排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力を向上させるために、エンジンの燃焼室への吸入空気量を増加させることが求められる。この吸入空気量を増加させる方法として、過給機を用いて吸入空気を圧縮する方法、ラムエア流量を増加させて吸気効率を高める方法等が知られている。下記の特許文献1には、過給機付きエンジンを備えた自動二輪車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-16330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、過給機を用いる方法によれば、エンジンの吸気経路の途中にコンプレッサを設けることにより、エンジンが大型化する場合がある。また、ラムエア流量を増加させる方法によれば、例えば開口面積が大きく、直線状に伸長したエアインテークダクトの採用により、エンジンが搭載された車両等が大型化する場合がある。
【0005】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、エンジンの小型化、またはエンジンが搭載された車両等の小型化を図りつつ、エンジンへの吸入空気量を増加させることができるエンジンの吸排気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のエンジンの吸排気構造は、エンジンのシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記エンジンの燃焼室に接続された吸気ポートと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記燃焼室に接続された排気ポートと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記吸気ポートを開閉する吸気バルブおよび前記排気ポートを開閉する排気バルブを駆動するカムシャフトと、前記吸気ポートに接続され、燃料燃焼用の空気を前記吸気ポートに供給する第1の吸気通路と、前記排気ポートに接続され、燃料燃焼用の空気を前記排気ポートに供給する第2の吸気通路と、前記排気ポートにおいて、当該排気ポートと前記第2の吸気通路との接続位置よりも前記エンジンの排気ガスの排出方向において下流側の部分と、前記排気ガスを前記エンジン外へ排出するための排気管との間に接続され、前記燃焼室内から前記排気ポートを介して排出された前記排気ガスを前記排気管に送る排気通路と、前記第2の吸気通路を開閉する第1のバルブと、前記排気通路を開閉する第2のバルブと、前記エンジンの外側に設けられ、前記カムシャフトの回転を前記第1のバルブおよび前記第2のバルブに伝達することにより前記第1のバルブおよび前記第2のバルブを駆動するバルブ駆動機構とを備え、前記カムシャフトは、前記エンジンの吸気行程において前記吸気ポートおよび前記排気ポートを開き、前記エンジンの排気行程において前記吸気ポートを閉じかつ前記排気ポートを開くように前記吸気バルブおよび排気バルブを駆動し、前記バルブ駆動機構は、前記エンジンの吸気行程において前記第2の吸気通路を開きかつ前記排気通路を閉じ、前記エンジンの排気行程において前記第2の吸気通路を閉じかつ前記排気通路を開くように前記第1のバルブおよび前記第2のバルブを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンの小型化、またはエンジンが搭載された車両等の小型化を図りつつ、エンジンへの吸入空気量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例のエンジンの吸排気構造が適用された鞍乗型車両の車体フレーム、エンジン、ラジエータおよび第1の吸排気構造等を前方から見た状態を示す外観図である。
図2図1中の車体フレーム、エンジン、ラジエータおよび第1の吸排気構造等を左方から見た状態を示す外観図である。
図3図2中の前シリンダ、前シリンダヘッド、前シリンダヘッドカバー、接続通路、排気通路およびバルブ駆動機構等を示す外観図である。
図4図3中の切断線IV-IVに沿って切断された前シリンダヘッド、接続通路、排気通路およびバルブ駆動機構等を図3における左上方から見た状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施例の第1の吸排気構造を示す斜視図である。
図6】本発明の実施例における吸気ポートおよびその周辺部分を示す斜視図である。
図7】本発明の実施例の第1の吸排気構造における接続通路開閉バルブ、排気通路開閉バルブおよびバルブ駆動機構を示す説明図である。
図8】本発明の実施例の第1の吸排気構造の動作を示す説明図である。
図9】本発明の実施例の第1の吸排気構造において、カーボン排出用の溝が追加された排気通路開閉バルブを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態のエンジンの吸排気構造は、エンジン(内燃機関)のシリンダヘッドと、シリンダヘッドに設けられ、エンジンの燃焼室に接続された吸気ポートと、シリンダヘッドに設けられ、エンジンの燃焼室に接続された排気ポートと、シリンダヘッドに設けられ、吸気ポートを開閉する吸気バルブおよび排気ポートを開閉する排気バルブを駆動するカムシャフトとを備えている。本実施形態のエンジンの吸排気構造におけるカムシャフトは、エンジンの吸気行程において吸気ポートおよび排気ポートを開き、エンジンの排気行程において吸気ポートを閉じかつ排気ポートを開くように吸気バルブおよび排気バルブを駆動する。
【0010】
さらに、本実施形態のエンジンの吸排気構造は、第1の吸気通路と、第2の吸気通路と、排気通路とを備えている。第1の吸気通路は、吸気ポートに接続され、燃料燃焼用の空気を吸気ポートに供給する通路である。第2の吸気通路は、排気ポートに接続され、燃料燃焼用の空気を排気ポートに供給する通路である。排気通路は、排気ポートにおいて、当該排気ポートと第2の吸気通路との接続位置よりもエンジンの排気ガスの排出方向において下流側の部分と、排気ガスをエンジン外へ排出するための排気管との間に接続され、燃焼室内から排気ポートを介して排出された排気ガスを排気管に送る通路である。
【0011】
さらに、本実施形態のエンジンの吸排気構造は、第2の吸気通路を開閉する第1のバルブと、排気通路を開閉する第2のバルブと、エンジンの外側に設けられ、カムシャフトの回転を第1のバルブおよび第2のバルブに伝達することにより第1のバルブおよび第2のバルブを駆動するバルブ駆動機構とを備えている。バルブ駆動機構は、エンジンの吸気行程において第2の吸気通路を開きかつ排気通路を閉じ、エンジンの排気行程において第2の吸気通路を閉じかつ排気通路を開くように第1のバルブおよび前記第2のバルブを駆動する。
【0012】
本実施形態のエンジンの吸排気構造において、エンジンの吸気行程の間には、吸気ポートおよび排気ポートが開き、第2の吸気通路が開き、かつ排気通路が閉じる。したがって、エンジンの吸気行程の間には、燃料燃焼用の空気が第1の吸気通路および吸気ポートを通って燃焼室内に流入し、これと同時に、燃料燃焼用の空気が第2の吸気通路および排気ポートを通って燃焼室内に流入する。
【0013】
一方、エンジンの排気行程の間には、吸気ポートが閉じ、排気ポートが開き、第2の吸気通路が閉じ、かつ排気通路が開く。したがって、エンジンの排気行程の間には、排気ガスが燃焼室内から排気ポートおよび排気通路を通って排気管へ排出される。エンジンの排気行程の間には第2の吸気通路が閉じるので、排気ガスが第2の吸気通路を介して燃料燃焼用の空気の供給経路の上流側(例えば、スロトッルボディまたはエアクリーナ等)へ流れることが防止される。
【0014】
このように、本実施形態のエンジンの吸排気構造によれば、吸気ポートおよび排気ポートの双方を介して燃料燃焼用の空気を燃焼室へ供給するので、燃焼室への吸入空気量を増加させることができ、エンジンの出力を向上させることができる。また、本実施形態によれば、エンジンの吸気経路の途中に過給機のコンプレッサを設けることなく、燃焼室への吸入空気量を増加させることができるので、エンジンの小型化を図ることができる。また、本実施形態によれば、ラムエア流量を増加させるための大型のエアインテークダクトを車両等に取り付けることなく、燃焼室への吸入空気量を増加させることができるので、車両等の小型化を図ることができる。
【0015】
また、本実施形態のエンジンの吸排気構造においては、バルブ駆動機構がエンジンの外側に設けられているので、バルブ駆動機構をエンジンの内部に設ける場合と比較して、エンジンを小型化することができる。また、本実施形態の吸排気構造においては、カムシャフトの回転を第1のバルブおよび第2のバルブに伝達することにより第1のバルブおよび第2のバルブを駆動するので、吸排気構造の各構成要素をシリンダヘッドの近傍にコンパクトに集約することができ、よって、エンジンおよび車両等の一層の小型化を図ることができる。
【実施例0016】
図面を用いて、本発明のエンジンの吸排気構造の実施例について説明する。以下の説明では、本発明のエンジンの吸排気構造の実施例として、鞍乗型車両に搭載されたエンジンの吸排気構造を例にあげる。また、鞍乗型車両、エンジンおよび吸排気構造について上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)および右(Rd)の方向を述べる際には、各図中の右下に描いた矢印に従う。
【0017】
(鞍乗型車両)
図1は鞍乗型車両1の車体フレーム2、エンジン5、前排気管13、ラジエータ16および第1の吸排気構造41等を前方から見た状態を示している。図2は、これら車体フレーム2、エンジン5、前排気管13、ラジエータ16および第1の吸排気構造41等を左方から見た状態を示している。
【0018】
図1に示すように、車体フレーム2は、鞍乗型車両1の前上部に配置されたヘッドパイプ3と、ヘッドパイプ3から左方および右方にそれぞれ拡開しつつ後方に伸長した2本のメインフレーム4とを備えている。
【0019】
図2に示すように、本実施例のエンジン5は水冷式・4サイクル・V型2気筒・DOHC(ダブルオーバーヘッドカム)・4バルブのエンジンである。エンジン5は横置きであり、鞍乗型車両1に、エンジン5のクランクシャフトの伸長方向が鞍乗型車両1の左右方向となるように設けられている。また、エンジン5は2本のメインフレーム4に懸架され、支持されている。また、エンジン5は、クランクケース6、前シリンダ7、前シリンダヘッド8、前シリンダヘッドカバー9、後シリンダ10、後シリンダヘッド11、および後シリンダヘッドカバー12を備えている。
【0020】
前シリンダ7、前シリンダヘッド8および前シリンダヘッドカバー9は、クランクケース6の前上部に配置され、前傾している。具体的には、前シリンダ7はクランクケース6の前上部に取り付けられている。前シリンダヘッド8は前シリンダ7の前上方に位置し、前シリンダ7に取り付けられている。前シリンダヘッドカバー9は前シリンダヘッド8の前上方に位置し、前シリンダヘッド8に取り付けられている。以下、前シリンダ7、前シリンダヘッド8および前シリンダヘッドカバー9からなる構造体を「前シリンダユニット」という。
【0021】
後シリンダ10、後シリンダヘッド11および後シリンダヘッドカバー12は、クランクケース6の後上部に配置され、後傾している。具体的には、後シリンダ10はクランクケース6の後上部に取り付けられている。後シリンダヘッド11は後シリンダ10の後上方に位置し、後シリンダ10に取り付けられている。後シリンダヘッドカバー12は後シリンダヘッド11の後上方に位置し、後シリンダヘッド11に取り付けられている。以下、後シリンダ10、後シリンダヘッド11および後シリンダヘッドカバー12からなる構造体を「後シリンダユニット」という。
【0022】
前排気管13および後排気管14はそれぞれ、エンジン5の排気ガスをエンジン5の外部へ排出するための管である。前排気管13は、前シリンダ7内に設けられたピストンと前シリンダヘッド8との間に形成される第1の燃焼室内からの排気ガスを排出する。後排気管14は、後シリンダ10内に設けられたピストンと後シリンダヘッド11との間に形成される第2の燃焼室内からの排気ガスを排出する。図2中の矢印A、Bは排気ガスの排出方向を示している。
【0023】
前排気管13の上流側端部(排気ガスの排出方向Aにおいて上流側の端部)は、前シリンダヘッド8に形成された排気ポート25(図4参照)に排気通路45を介して接続されている。図2に示すように、前排気管13は、排気通路45の下流側端部からクランクケース6の前方を下方へ伸長し、その後、エンジン5の左部の下方を後方へ伸長している。また、図1に示すように、前排気管13は、排気通路45の下流側端部から右方に傾斜しつつ下方へ伸長し、その後、曲がり部13Aにおいて左方に曲がり、エンジン5の左部の下方に至っている。
【0024】
後排気管14の上流側端部(排気ガスの排出方向Bにおいて上流側の端部)は、後シリンダヘッド11に形成された排気ポートに排気通路を介して接続されている。後排気管14は、排気通路の下流側端部から、図2に示すようにクランクケース6の後方を下方へ伸長し、エンジン5の下方に至っている。
【0025】
排気チャンバ15はエンジン5の後下方に配置されている。前排気管13の下流側端部および後排気管14の下流側端部は排気チャンバ15の流入口15Aに接続されている。また、図示を省略しているが、排気チャンバ15の流出口15Bにはサイレンサが接続されている。
【0026】
ラジエータ16は、エンジン5を冷却する冷却液を冷却する装置である。ラジエータ16は、2本のメインフレーム4の前部の下方、かつ前シリンダヘッドカバー9の前部の上方に配置され、2本のメインフレーム4の前部および前シリンダヘッドカバー9の前部にブラケット17を介して支持されている。
【0027】
なお、鞍乗型車両1は特許請求の範囲における車両の具体例である。前シリンダヘッド8は特許請求の範囲におけるシリンダヘッドの具体例である。前排気管13は特許請求の範囲における排気管の具体例である。
【0028】
(シリンダヘッド)
図3は、図2中の前シリンダ7、前シリンダヘッド8、前シリンダヘッドカバー9、接続通路42、排気通路45およびバルブ駆動機構55等を示している。図4は、図3中の切断線IV-IVに沿って切断された前シリンダヘッド8、接続通路42、排気通路45およびバルブ駆動機構55等の断面を図3における左上方から見た状態を示している。図5は前シリンダヘッド8、吸気バルブ駆動用カムシャフト28、排気バルブ駆動用カムシャフト29、接続通路42、排気通路45およびバルブ駆動機構55等を示している。図6は吸気ポート21およびその周辺部分を示している。なお、図6においては、吸気バルブ駆動用カムシャフト28を図示していない。
【0029】
前シリンダヘッド8は例えばアルミニウム合金等の金属材料により形成されている。また、前シリンダヘッド8は、図3に示すように、軸線Zを有する柱状に形成されている。前シリンダヘッド8において、軸線Z方向において前シリンダ7に近い側を基端側といい、軸線Z方向において前シリンダ7から遠い側を先端側というとすると、前シリンダヘッド8は、その先端側が基端側よりも前方に位置するように傾斜(前傾)している。
【0030】
前シリンダヘッド8の後部の左右方向中央部には、図6に示すように、吸気ポート21が設けられている。吸気ポート21は、鞍乗型車両1の外部から取り込んだ燃料燃焼用の空気を上記第1の燃焼室内へ流入させる通路であり、上記第1の燃焼室に接続されている。なお、燃料燃焼用の空気には混合気が含まれる。図4に示すように、吸気ポート21は、燃料燃焼用の空気が流入する1つの入口部21Aと、入口部21Aに流入した空気を分流させて上記第1の燃焼室内へ流入させる2つの出口部21Bとを有している。吸気ポート21の入口部21Aは前シリンダヘッド8の後面に開口している。吸気ポート21の各出口部21Bは上記第1の燃焼室内に開口している。
【0031】
また、図6に示すように、吸気ポート21の入口部21Aの端部には吸気通路部材取付部21Cが形成され、吸気通路部材取付部21Cには、図3に示すように、吸気通路部材22が取り付けられている。吸気通路部材22は、鞍乗型車両1の外部から取り込んだ燃料燃焼用の空気を吸気ポート21に供給する吸気通路として機能する部材であり、例えば、スロットルボディ、またはスロットルボディと吸気ポートとを接続するパイプ等である。なお、吸気通路部材22は特許請求の範囲における第1の吸気通路の具体例である。
【0032】
前シリンダヘッド8の前部の左右方向中央部には排気ポート25が設けられている。排気ポート25は、排気ガスを上記第1の燃焼室内から上記第1の燃焼室外へ排出する通路であり、上記第1の燃焼室に接続されている。図4に示すように、排気ポート25は、上記第1の燃焼室内の排気ガスが流入する2つの入口部25Aと、2つの入口部25Aに流入した排気ガスを合流させて排気通路45へ流入させる1つの出口部25Bとを有している。排気ポート25の各入口部25Aは上記第1の燃焼室内に開口している。排気ポート25の出口部25Bは排気通路45に接続されている。
【0033】
また、前シリンダヘッド8の外周側部分には、図4に示すように、前シリンダヘッド8を前シリンダ7またはクランクケース6に固定するための固定部材がそれぞれ挿入される複数の挿入穴27が形成されている。固定部材は例えばボルトであり、挿入穴27の個数は例えば4つである。4つの挿入穴27は、前シリンダヘッド8の軸線Zを中心とする円C上に例えば90度間隔に配置されている。前シリンダヘッド8をその先端側から見たときに、円Cは、上記第1の燃焼室の周囲に位置し、また、前シリンダ7の周壁部とほぼ重なり合っている。例えば、前シリンダ7の周壁部には、4つの挿入穴27にそれぞれ対応する4つのねじ穴が形成され、前シリンダヘッド8は、4本のボルトを、4つの挿入穴27に挿入し、前シリンダ7の4つのねじ穴に締着することにより、前シリンダ7に固定されている。あるいは、前シリンダ7の周壁部には、4つの挿入穴27にそれぞれ対応する4つの貫通穴が形成され、クランクケース6には、4つの貫通穴にそれぞれ対応する4つのねじ穴が形成され、前シリンダヘッド8は、4本のボルトを、4つの挿入穴27および前シリンダ7の4つの貫通穴に順次挿入し、クランクケース6の4つのねじ穴に締着することにより、クランクケース6に固定されている。
【0034】
また、図5に示すように、前シリンダヘッド8の先端側の後部には、吸気ポート21の2つの出口部21Bを開閉する2つの吸気バルブ、およびこれら吸気バルブを駆動する吸気バルブ駆動用カムシャフト28が設けられている。吸気バルブ駆動用カムシャフト28は左右方向に伸長している。また、吸気バルブ駆動用カムシャフト28は、2つの吸気バルブの開閉動作を制御するための2つのカム28Aを有している。各カム28Aのプロファイルは、一般的なエンジンと同様に、吸気行程において各吸気バルブにより吸気ポート21を開き、圧縮行程、膨張行程および排気行程において各吸気バルブにより吸気ポート21を閉じるように設定されている。なお、2つの吸気バルブ、および吸気バルブ駆動用カムシャフト28を前シリンダヘッド8に回転可能に支持する構造の図示は省略している。
【0035】
また、前シリンダヘッド8の先端側の前部には、排気ポート25の2つの入口部25Aを開閉する2つの排気バルブ、およびこれら排気バルブを駆動する排気バルブ駆動用カムシャフト29が設けられている。排気バルブ駆動用カムシャフト29は左右方向に伸長している。また、排気バルブ駆動用カムシャフト29は、2つの排気バルブの開閉動作を制御するための2つのカム29Aを有している。各カム29Aのプロファイルは、一般的なエンジンとは異なり、排気行程から吸気行程に亘って各排気バルブにより排気ポート25を開き、圧縮行程および膨張行程において各排気バルブにより排気ポート25を閉じるように設定されている。なお、2つの排気バルブ、および排気バルブ駆動用カムシャフト29を前シリンダヘッド8に回転可能に支持する構造の図示は省略している。また、吸気バルブ駆動用カムシャフト28および排気バルブ駆動用カムシャフト29は特許請求の範囲におけるカムシャフトの具体例である。
【0036】
また、エンジン5は、クランクシャフトの回転を利用して2本のカムシャフト28、29を駆動するカムシャフト駆動機構(図示せず)を備えている。本実施例においては、カムシャフト駆動機構としてタイミングチェーンまたはタイミングベルトが用いられている。また、前シリンダヘッド8の右部には、図4に示すように、このカムシャフト駆動機構を収容するカムシャフト駆動機構収容室31が設けられている。カムシャフト駆動機構収容室31は、前シリンダヘッド8において、4つの挿入穴27の外側(円Cの外側)に配置されている。
【0037】
一方、後シリンダヘッド11は、概ね、前シリンダヘッド8と点対称の構造および形状を有している。すなわち、後シリンダヘッド11は後傾しており、後シリンダヘッド11の前部には、上記第2の燃焼室に接続された吸気ポート、当該吸気ポートを開閉する2つの吸気バルブ、および各吸気バルブを駆動する吸気バルブ駆動用カムシャフトが設けられている。また、吸気ポートの入口側の端部には吸気通路部材が取り付けられている。また、後シリンダヘッド11の後部には、上記第2の燃焼室に接続された排気ポート、当該排気ポートを開閉する2つの排気バルブ、および各排気バルブを駆動する排気バルブ駆動用カムシャフトが設けられている。また、後シリンダヘッド11の外周側部分には、当該後シリンダヘッド11を後シリンダ10またはクランクケース6に固定するための固定部材がそれぞれ挿入される例えば4つの挿入穴が形成されている。また、後シリンダヘッド11の左部にはカムシャフト駆動機構を収容するカムシャフト駆動機構収容室が設けられている。
【0038】
(エンジンの吸排気構造)
エンジン5は2つの吸排気構造を備えている。第1の吸排気構造41は前シリンダユニットに設けられ、第2の吸排気構造は後シリンダユニットに設けられている。第1の吸排気構造41および第2の吸排気構造は互いに向きが異なるものの、それらの構造および形状は互いに同じである。したがって、以下、第1の吸排気構造41について詳細に説明し、第2の吸排気構造については簡略化して説明する。
【0039】
第1の吸排気構造41は、図4および図5に示すように、前シリンダヘッド8、並びに前シリンダヘッド8に設けられた吸気ポート21、排気ポート25、吸気バルブ駆動用カムシャフト28、排気バルブ駆動用カムシャフト29、吸気通路部材22、接続通路42、排気通路45、接続通路開閉バルブ47、排気通路開閉バルブ51およびバルブ駆動機構55を備えている。なお、接続通路42は特許請求の範囲における第2の吸気通路の具体例であり、接続通路開閉バルブ47は特許請求の範囲における第1のバルブの具体例であり、排気通路開閉バルブ51は特許請求の範囲における第2のバルブの具体例である。
【0040】
接続通路42は、上記第1の燃焼室の外側に設けられ、吸気ポート21の入口部21Aと排気ポート25の出口部25Bとの間を接続し、吸気ポート21に供給する燃料燃焼用の空気の一部を排気ポート25に供給する通路である。接続通路42は、鞍乗型車両1の外部から取り込んだ燃料燃焼用の空気を排気ポート25に供給する吸気通路として機能する。接続通路42は、図4に示すように、前シリンダヘッド8において、4つの挿入穴27の外側(円Cの外側)に配置されている。また、接続通路42は、前シリンダヘッド8において、カムシャフト駆動機構収容室31が設けられている側の反対側、すなわち、前シリンダヘッド8の左側に配置されている。
【0041】
また、接続通路42は前シリンダヘッド8に一体形成されている。接続通路42は、その全周が前シリンダヘッド8と同じ材料により包囲された管状またはトンネル状に形成されている。また、接続通路42は、前シリンダヘッド8の左側を上記第1の燃焼室を迂回するように概ね円弧状またはコ字状に伸長している。また、接続通路42の一端部には流入口42A(図6参照)が形成され、接続通路42の他端部には流出口42Bが形成されている。
【0042】
空気の供給方向において接続通路42の上流側は吸気ポート21の途中に接続されている。具体的には、接続通路42の流入口42Aは、図6に示すように、吸気ポート21の入口部21Aの内部の周面の一部に開口している。接続通路42の流入口42Aは吸気ポート21が2つの出口部21Bに分岐する部分に配置されている。
【0043】
また、空気の供給方向において接続通路42の下流側は排気ポート25の途中に接続されている。具体的には、接続通路42の流出口42Bは、図4に示すように、排気ポート25の出口部25Bの途中に接続されている。また、接続通路42の流出口42Bは、排気ポート25において2つの入口部25Aが合流する合流部25Cに接続されている。
【0044】
また、接続通路42は前シリンダヘッド8の軸線Zの伸長方向に直交する方向に伸長している。具体的には、接続通路42は、前シリンダヘッド8の後側を前シリンダヘッド8の左右方向のほぼ中央部から左方に伸長し、その後湾曲し、前シリンダヘッド8の左側を前シリンダヘッド8の後側から前側に向かって下方に傾斜しつつ前方に伸長し、その後湾曲し、前シリンダヘッド8の前側を前シリンダヘッド8の左側から右方に伸長している。
【0045】
また、接続通路42の伸長方向の中間部、具体的には、接続通路42において、前シリンダヘッド8の左側を下方に傾斜しつつ前方に伸長している部分には、接続通路開閉バルブ47を収容するための接続通路開閉バルブ収容部43が形成されている。接続通路開閉バルブ収容部43は、図5に示すように、左右方向に伸長し、右端部が閉塞された筒状に形成されている。また、図4に示すように、接続通路開閉バルブ収容部43の左端部には、接続通路開閉バルブ47を装着するための装着穴43Aが形成されている。また、接続通路開閉バルブ収容部43の周壁の後上部および前下部には、接続通路42において接続通路開閉バルブ収容部43よりも上流側の部分と接続通路開閉バルブ収容部43よりも下流側の部分とを接続して連通させる接続穴43Bがそれぞれ形成されている。
【0046】
排気通路45は、図1に示すように、排気ポート25と前排気管13との間に接続され、上記第1の燃焼室内から排気ポート25を介して排出された排気ガスを前排気管13に送る通路である。排気通路45は、前シリンダヘッド8の前部の左右方向中央部に配置されている。図4に示すように、排気通路45は管状に形成され、排気ポート25と一体化している。排気ガスの排出方向において排気通路45の上流側(流入口)は排気ポート25の出口部25Bと連通している。また、排気通路45は、排気ポート25において、当該排気ポート25と接続通路42との接続位置よりも排気ガスの排出方向において下流側の部分に接続されている。また、図3に示すように、排気通路45は、前シリンダヘッド8の軸線Zと直交する方向、具体的には、下方に傾斜しつつ前方に直線状に伸長している。また、排気ガスの排出方向において排気通路45の下流側の端部(流出口)には排気管取付部45Aが形成され、排気管取付部45Aには前排気管13が取り付けられている。
【0047】
また、排気通路45の伸長方向の中間部には、排気通路開閉バルブ51を収容するための排気通路開閉バルブ収容部46が形成されている。排気通路開閉バルブ収容部46は、図5に示すように、左右方向に伸長し、右端部が閉塞された筒状に形成されている。また、図4に示すように、排気通路開閉バルブ収容部46の左端部には、排気通路開閉バルブ51を装着するための装着穴46Aが形成されている。また、排気通路開閉バルブ収容部46の周壁の後上部および前下部には、排気通路45において排気通路開閉バルブ収容部46よりも上流側の部分と排気通路開閉バルブ収容部46よりも下流側の部分とを接続して連通させる接続穴46Bがそれぞれ形成されている。
【0048】
図7は、接続通路開閉バルブ47、排気通路開閉バルブ51およびバルブ駆動機構55を示している。接続通路開閉バルブ47は、接続通路42を開閉するバルブである。図4および図7に示すように、接続通路開閉バルブ47は回転体48およびバルブシャフト50を備えている。接続通路開閉バルブ47は、回転体48を一方向に連続的に回転させることによって接続通路42を開閉する連続回転式バルブである。
【0049】
回転体48はその外形が円柱状に形成されている。回転体48は、接続通路開閉バルブ収容部43の装着穴43Aから接続通路開閉バルブ収容部43内に装着されることにより、接続通路42内に配置されている。また、図4に示すように、回転体48はその軸線Pが左右方向となるように接続通路開閉バルブ収容部43内に装着され、接続通路42内において、軸線Pを中心として回転することができる。
【0050】
また、回転体48には、回転体48をその径方向に貫通する連通穴49が形成されている。連通穴49は、前シリンダユニットの吸気行程の間に、接続通路42において回転体48よりも上流側の部分と回転体48よりも下流側の部分とを連通させて、接続通路42を開くための穴である。なお、回転体48は特許請求の範囲における第1の回転体の具体例であり、連通穴49は特許請求の範囲における第1の連通穴の具体例である。
【0051】
バルブシャフト50は左右方向に伸長し、回転体48と同軸に配置され、バルブシャフト50の右端側は回転体48の左端部に固定されている。
【0052】
排気通路開閉バルブ51は排気通路45を開閉するバルブである。図4および図7に示すように、排気通路開閉バルブ51は回転体52およびバルブシャフト54を備えている。排気通路開閉バルブ51は、回転体52を一方向に連続的に回転させることによって排気通路45を開閉する連続回転式バルブである。
【0053】
回転体52はその外形が円柱状に形成されている。回転体52は、排気通路開閉バルブ収容部46の装着穴46Aから排気通路開閉バルブ収容部46内に装着されることにより、排気通路45内に配置されている。また、図4に示すように、回転体52はその軸線Qが左右方向となるように排気通路開閉バルブ収容部46内に装着され、排気通路45内において、軸線Qを中心として回転することができる。
【0054】
また、回転体52には、回転体52をその径方向に貫通する連通穴53が形成されている。連通穴53は、前シリンダユニットの排気行程の間に、排気通路45において回転体52よりも上流側の部分と回転体52よりも下流側の部分とを連通させて、排気通路45を開くための穴である。なお、回転体52は特許請求の範囲における第2の回転体の具体例であり、連通穴53は特許請求の範囲における第2の連通穴の具体例である。
【0055】
バルブシャフト54は左右方向に伸長し、回転体52と同軸に配置され、バルブシャフト54の右端側は回転体52の左端部に固定されている。
【0056】
また、本実施例においては、図4に示すように、接続通路開閉バルブ収容部43の装着穴43Aと排気通路開閉バルブ収容部46の装着穴46Aとが左右方向において同じ位置となるように、接続通路開閉バルブ収容部43および排気通路開閉バルブ収容部46のそれぞれの左右方向の長さが設定されている。また、本実施例においては、接続通路開閉バルブ47の回転体48の左端部と排気通路開閉バルブ51の回転体52の左端部とが左右方向において同じ位置となるように、接続通路開閉バルブ47の回転体48および排気通路開閉バルブ51の回転体52のそれぞれの左右方向の長さが設定されている。
【0057】
また、本実施例においては、図3に示すように、鞍乗型車両1の側面視において、接続通路開閉バルブ47は排気バルブ駆動用カムシャフト29の後方に配置され、排気通路開閉バルブ51は排気バルブ駆動用カムシャフト29の下方に配置されている。
【0058】
バルブ駆動機構55は接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動する機構である。バルブ駆動機構55は、前シリンダヘッド8の吸気行程においては接続通路42を開き、かつ排気通路45を閉じ、前シリンダヘッド8の排気行程においては接続通路42を閉じ、かつ排気通路45を開くように接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動する。また、バルブ駆動機構55は、排気バルブ駆動用カムシャフト29の回転を接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51に伝達することにより接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51をそれぞれ駆動する。また、バルブ駆動機構55は乾式のベルト駆動方式を採用している。バルブ駆動機構55は、駆動プーリ56、第1の従動プーリ57、第2の従動プーリ58およびベルト59を備えている。
【0059】
また、バルブ駆動機構55は、図2に示すように、エンジン5の外側に設けられている。すなわち、バルブ駆動機構55が設けられている場所は、クランクケース6の内部ではなく、前シリンダ7の内部でもなく、前シリンダヘッド8の内部でもなく、前シリンダヘッドカバー9の内部でもなく、これらの外部である。また、バルブ駆動機構55は、図5に示すように、前シリンダヘッド8においてカムシャフト駆動機構収容室31が設けられている側の反対側の部分の側方、すなわち、前シリンダヘッド8の左方に配置されている。また、図1に示すように、前排気管13において、その上流側端部から曲がり部13Aにかけての上流側部分13Bは、鞍乗型車両1の前面視において、排気通路45の下流側端部から右方に傾斜しつつ下方へ伸長している。バルブ駆動機構55は、前シリンダヘッド8の側方であって、排気通路45の下流側端部から前排気管13の上流側部分13Bが伸長する方向と左右反対の方向、すなわち、前シリンダヘッド8の左方に配置されている。また、バルブ駆動機構55は接続通路42の左方に配置されている。また、図2に示すように、バルブ駆動機構55はラジエータ16の下方に配置されている。また、バルブ駆動機構55はラジエータ16の前面よりも後方に配置されている。
【0060】
バルブ駆動機構55において、駆動プーリ56は、前シリンダヘッド8の外側において、排気バルブ駆動用カムシャフト29の左端部に接続されている。すなわち、前シリンダヘッド8の左前部には切欠き部8Aが形成されている。また、前シリンダヘッドカバー9の左前部において、前シリンダヘッド8の切欠き部8Aに対応する箇所にも切欠き部が形成されている。前シリンダヘッド8に前シリンダヘッドカバー9が取り付けられたとき、前シリンダヘッド8の切欠き部8Aと前シリンダヘッドカバー9の切欠き部とにより穴が形成される。排気バルブ駆動用カムシャフト29の左端部は、前シリンダヘッド8の切欠き部8Aおよび前シリンダヘッドカバー9の切欠き部により形成された穴を介して前シリンダヘッド8から左方に突出している。駆動プーリ56は、排気バルブ駆動用カムシャフト29において前シリンダヘッドカバー9から左方に突出した左端部に接続され、固定されている。
【0061】
また、第1の従動プーリ57は接続通路開閉バルブ47のバルブシャフト50の左端部に接続され、固定されている。また、第2の従動プーリ58は排気通路開閉バルブ51のバルブシャフト54の左端部に接続され、固定されている。
【0062】
ベルト59は、駆動プーリ56、第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58に掛け渡されている。ベルト59は乾式ベルトであり、例えば、ゴム、樹脂または金属により形成されている。また、ベルト59の内向きの面および各プーリ56~58の外周面のそれぞれに歯を設け、ベルト59の歯と各プーリ56~58の歯とを噛み合わせるようにしてもよい。
【0063】
図3に示すように、鞍乗型車両1の側面視において、第1の従動プーリ57の回転中心Eおよび第2の従動プーリ58の回転中心Fはいずれも排気バルブ駆動用カムシャフト29の回転中心Dよりも後方に位置している。
【0064】
また、本実施例においては、駆動プーリ56、第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58のそれぞれの直径はそれぞれ互いに等しい。それゆえ、排気バルブ駆動用カムシャフト29が1回転すると、接続通路開閉バルブ47の回転体48および排気通路開閉バルブ51の回転体52がそれぞれ1回転する。
【0065】
また、接続通路開閉バルブ47の回転体48の接続通路開閉バルブ収容部43に対する取付角度は、前シリンダユニットの吸気行程の間に、接続通路42において回転体48よりも上流側の部分と回転体48よりも下流側の部分とが連通穴49を介して連通し、前シリンダユニットの排気行程の間に、接続通路42において回転体48よりも上流側の部分と回転体48よりも下流側の部分とが回転体48により遮断されるように設定されている。例えば、接続通路開閉バルブ47の回転体48の接続通路開閉バルブ収容部43に対する取付角度は、前シリンダユニットの吸気行程の期間の開始時から当該吸気行程の期間のほぼ半分が経過したときに、接続通路開閉バルブ47の連通穴49の伸長方向が接続通路42の伸長方向とほぼ一致し、前シリンダユニットの排気行程の期間の開始時から当該排気行程の期間のほぼ半分が経過したときに、接続通路開閉バルブ47の連通穴49の伸長方向が接続通路42の伸長方向とほぼ直交するように設定されている。
【0066】
また、排気通路開閉バルブ51の回転体52の排気通路開閉バルブ収容部46に対する取付角度は、前シリンダユニットの吸気行程の間に、排気通路45において回転体52よりも上流側の部分と回転体52よりも下流側の部分とが回転体52により遮断され、前シリンダユニットの排気行程の間に、排気通路45において回転体52よりも上流側の部分と回転体52よりも下流側の部分とが連通穴53を介して連通するように設定されている。例えば、排気通路開閉バルブ51の回転体52の排気通路開閉バルブ収容部46に対する取付角度は、前シリンダユニットの吸気行程の期間の開始時から当該吸気行程の期間のほぼ半分が経過したときに、排気通路開閉バルブ51の連通穴53の伸長方向が排気通路45の伸長方向とほぼ直交し、前シリンダユニットの排気行程の期間の開始時から当該排気行程の期間のほぼ半分が経過したときに、排気通路開閉バルブ51の連通穴53の伸長方向が排気通路45の伸長方向とほぼ一致するように設定されている。
【0067】
接続通路開閉バルブ47の回転体48の取付角度および排気通路開閉バルブ51の回転体52の取付角度をこのように設定することにより、接続通路開閉バルブ47の連通穴49の伸長方向(開口方向)と排気通路開閉バルブ51の連通穴53の伸長方向(開口方向)とは、図7に示すように概ね90度異なる。
【0068】
図8は第1の吸排気構造41の動作を示している。エンジン5が作動を開始し、クランクシャフトが回転すると、クランクシャフトの回転がカムシャフト駆動機構により前シリンダヘッド8の吸気バルブ駆動用カムシャフト28および排気バルブ駆動用カムシャフト29にそれぞれ伝達され、これらカムシャフト28、29が回転する。これらカムシャフト28、29の回転数は、クランクシャフトの回転数の2分の1であり、これらカムシャフト28、29は、前シリンダユニットにおける吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる1サイクルごとに1回転する。
【0069】
そして、排気バルブ駆動用カムシャフト29と共に駆動プーリ56が回転する。駆動プーリ56の回転はベルト59により第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58に伝達され、第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58がそれぞれ回転する。鞍乗型車両1を左方から見たとき、図3に示すように、駆動プーリ56、第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58は反時計回り方向(図3中の矢印Kが示す方向)に回転する。そして、第1の従動プーリ57と共に接続通路開閉バルブ47の回転体48が回転する。また、第2の従動プーリ58と共に排気通路開閉バルブ51の回転体52が回転する。接続通路開閉バルブ47の回転体48および排気通路開閉バルブ51の回転体52は、前シリンダユニットにおける吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる1サイクルごとにそれぞれ1回転する。
【0070】
このように接続通路開閉バルブ47の回転体48および排気通路開閉バルブ51の回転体52がそれぞれ回転している状態において、前シリンダユニットの吸気行程の間には、図8(A)に示すように、接続通路42において接続通路開閉バルブ47の回転体48よりも上流側の部分と接続通路開閉バルブ47の回転体48よりも下流側の部分とが接続通路開閉バルブ47の連通穴49を介して連通することにより、接続通路42が開く。これと同時に、排気通路45において排気通路開閉バルブ51の回転体52よりも上流側の部分と排気通路開閉バルブ51の回転体52よりも下流側の部分とが排気通路開閉バルブ51の回転体52により遮断されることにより、排気通路45が閉じる。また、前シリンダヘッド8に設けられた排気バルブ駆動用カムシャフト29は、排気ポート25が前シリンダユニットの排気行程から吸気行程に亘って開くように各排気バルブを駆動するので、前シリンダユニットの吸気行程においては、吸気ポート21だけでなく、排気ポート25も開いた状態になる。これにより、鞍乗型車両1の外部から取り込まれた燃料燃焼用の空気は、吸気通路部材22から吸気ポート21の入口部21A内に流入し、この吸気ポート21の入口部21A内に流入した空気の一部は吸気ポート21の各出口部21B内を通って上記第1の燃焼室内に流入する。また、吸気ポート21の入口部21A内に流入した空気の他の一部は、接続通路42の流入口42A(図6参照)から接続通路42内に流入し、接続通路開閉バルブ47の連通穴49内を通り、続いて接続通路42の流出口42Bを通り、排気ポート25の出口部25Bにおける合流部25Cに流入する。このとき、排気通路開閉バルブ51により排気通路45が閉じているので、排気ポート25の合流部25Cに流入した空気は、排気ポート25の各入口部25Aを通って上記第1の燃焼室内に流入する。このように、前シリンダユニットの吸気行程の間には、燃料燃焼用の空気が吸気ポート21および排気ポート25の双方を通って上記第1の燃焼室内に供給される。
【0071】
また、前シリンダユニットの排気行程の間には、図8(B)に示すように、接続通路42において接続通路開閉バルブ47の回転体48よりも上流側の部分と接続通路開閉バルブ47の回転体48よりも下流側の部分とが接続通路開閉バルブ47の回転体48により遮断されることにより、接続通路42が閉じる。これと同時に、排気通路45において排気通路開閉バルブ51の回転体52よりも上流側の部分と排気通路開閉バルブ51の回転体52よりも下流側の部分とが排気通路開閉バルブ51の連通穴53を介して連通することにより、排気通路45が開く。これにより、排気ガスは、上記第1の燃焼室内から排気ポート25の各入口部25Aおよび出口部25Bを順次通って排気通路45内に流入する。排気通路45内に流入した排気ガスは、排気通路開閉バルブ51の連通穴53を通って前排気管13内へ排出される。このとき、接続通路開閉バルブ47により接続通路42が閉じているので、排気ガスが接続通路42および吸気ポート21の入口部21Aを介して吸気通路部材22へ流れることが防止される。
【0072】
なお、本実施例においては、前シリンダユニットの吸気行程の間だけでなく前シリンダユニットの膨張行程の間にも、接続通路42において接続通路開閉バルブ47の回転体48よりも上流側の部分と接続通路開閉バルブ47の回転体48よりも下流側の部分とが接続通路開閉バルブ47の連通穴49を介して連通することにより、接続通路42が開く。しかしながら、前シリンダユニットの膨張行程の間においては、前シリンダヘッド8に設けられた各吸気バルブおよび各排気バルブがいずれも閉じているので、この間に接続通路42が開くことはエンジン5の作動に影響しない。また、前シリンダユニットの排気行程の間だけでなく前シリンダユニットの圧縮行程の間にも、排気通路45において排気通路開閉バルブ51の回転体52よりも上流側の部分と排気通路開閉バルブ51の回転体52よりも下流側の部分とが排気通路開閉バルブ51の連通穴53を介して連通することにより、排気通路45が開く。しかしながら、前シリンダユニットの圧縮行程の間においては、前シリンダヘッド8に設けられた各吸気バルブおよび各排気バルブがいずれも閉じているので、この間に排気通路45が開くことはエンジン5の作動に影響しない。
【0073】
一方、第2の吸排気構造は、後シリンダヘッド11、並びに後シリンダヘッド11に設けられた吸気ポート、排気ポート、吸気バルブ駆動用カムシャフト、排気バルブ駆動用カムシャフト、吸気通路部材、接続通路、排気通路、接続通路開閉バルブ、排気通路開閉バルブおよびバルブ駆動機構を備えている。第2の吸排気構造は、第1の吸排気構造と概ね点対称の構造および形状を有している。また、第2の吸排気構造は、第1の吸排気構造と同様に動作する。なお、第2の吸排気構造は、第1の吸排気構造と概ね点対称である点を除き、第1の吸排気構造と同様に形成されているので、第2の吸排気構造については図示を省略している。
【0074】
以上説明した通り、本発明の実施例の第1の吸排気構造41は、前シリンダヘッド8に、接続通路42、排気通路45、接続通路開閉バルブ47、排気通路開閉バルブ51およびバルブ駆動機構55が設けられ、前シリンダユニットの吸気行程においては、吸気ポート21および排気ポート25を開き、接続通路42を開き、かつ排気通路45を閉じ、前シリンダユニットの排気行程においては、吸気ポート21を閉じ、排気ポート25を開き、接続通路42を閉じ、かつ排気通路45を開く構成を有している。この構成によれば、前シリンダユニットの吸気行程において、燃料燃焼用の空気を吸気ポート21および排気ポート25の双方を介して上記第1の燃焼室内へ供給することができる。したがって、上記第1の燃焼室への吸入空気量を増加させることができる。また、第1の吸排気構造41と同様の構造および形状を有する本実施例の第2の吸排気構造によっても、上記第2の燃焼室への吸入空気量を増加させることができる。このように、エンジンへの吸入空気量を増加させることによって、エンジン5の出力を向上させることができる。また、本実施例によれば、エンジン5の吸気経路の途中に過給機のコンプレッサを設けることなく、各燃焼室内への吸入空気量を増加させることができ、エンジン5の小型化を図ることができる。また、本実施例によれば、ラムエア流量を増加させるための大型のエアインテークダクトを鞍乗型車両1に取り付けることなく、各燃焼室内への吸入空気量を増加させることができ、鞍乗型車両1の小型化を図ることができる。
【0075】
また、本実施例の第1の吸排気構造41においては、接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動するバルブ駆動機構55がエンジン5の外側に設けられているので、接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動する機構をエンジン5の内部に設ける場合と比較して、エンジン5を小型化することができる。この点は、本実施例の第2の吸排気構造についても同様である。
【0076】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、バルブ駆動機構55は、排気バルブ駆動用カムシャフト29の回転を接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51に伝達することにより接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動する。この構成により、第1の吸排気構造41の各構成要素を前シリンダヘッド8にコンパクトに集約することができ、エンジン5および鞍乗型車両1の小型化を図ることができる。また、このように、エンジン5の作動により回転する単一のシャフトから、接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動する動力をとる構成であるので、第1の吸排気構造41が複雑化することを防止することができ、第1の吸排気構造41の組立工数および部品点数を削減することができる。また、カムシャフト29の回転を用いて接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を回転させることにより、接続通路開閉バルブ47による接続通路42の開閉、および排気通路開閉バルブ51による排気通路45の開閉を、エンジン5(前シリンダユニット)の4つの行程のサイクルに高精度に同期させることができる。本実施例の第2の吸排気構造においても、第1の吸排気構造41と同様に、第2の吸排気構造の各構成要素を後シリンダヘッド11にコンパクトに集約することができ、また、第2の吸排気構造が複雑化することを防止することができ、また、接続通路開閉バルブおよび排気通路開閉バルブの開閉動作をエンジン5(後シリンダユニット)の4つの行程のサイクルに高精度に同期させることができる。
【0077】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、バルブ駆動機構55は前シリンダヘッド8においてカムシャフト駆動機構収容室31が設けられている側の反対側の部分の側方に配置されている。この構成により、バルブ駆動機構55を前シリンダヘッド8においてカムシャフト駆動機構収容室31が設けられている側の側方に配置する場合と比較して、前シリンダヘッド8の片側の突出量を抑制することができ、エンジン5の大型化を抑制することができる。また、エンジン5の左右の重量バランスをとることができる。また、バルブ駆動機構55に走行風が当たり易くなり、バルブ駆動機構55の冷却効率を高めることができる。また、シリンダヘッドの片側の突出量を抑制することができる点、エンジン5の左右の重量バランスをとることができる点、およびバルブ駆動機構55の冷却効率を高めることができる点は、本実施例の第2の吸排気構造についても同様である。
【0078】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、鞍乗型車両1の側面視において、接続通路開閉バルブ47は排気バルブ駆動用カムシャフト29の後方に配置され、排気通路開閉バルブ51は排気バルブ駆動用カムシャフト29の下方に配置されている。この構成より、第1の吸排気構造41がエンジン5の前方に突出することを防ぐことができ、鞍乗型車両1の大型化を抑制することができる。
【0079】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、バルブ駆動機構55はラジエータ16の下方に配置されている。この構成により、ラジエータ16を上下方向において車体フレーム2とバルブ駆動機構55との間の空間に配置することができ、ラジエータ16をエンジン5の側に寄せることができる。これにより、鞍乗型車両1の大型化を抑制することができる。また、ラジエータ16からの排風がバルブ駆動機構55の上方を後方に向かって流れるので、ラジエータ16からの排風がバルブ駆動機構55に当たることを抑制することができる。これにより、ラジエータ16からの排風の熱によりベルト59等が早期に劣化するなどの熱害を防止することができる。
【0080】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、バルブ駆動機構55は、前シリンダヘッド8の側方であって、排気通路45から前排気管13の上流側部分13Bが伸長する方向と左右反対の方向に配置されている。この構成より、バルブ駆動機構55が前排気管13に干渉することを防止することができる。また、バルブ駆動機構55と前排気管13との間の距離を大きくすることでき、前排気管13からの熱によりベルト59等が早期に劣化するなどの熱害を防止することができる。
【0081】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、バルブ駆動機構55は、排気バルブ駆動用カムシャフト29に接続された駆動プーリ56と、接続通路開閉バルブ47に接続された第1の従動プーリ57と、排気通路開閉バルブ51に接続された第2の従動プーリと、駆動プーリ56、第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58に掛け渡されたベルト59とを備えている。この構成により、バルブ駆動機構55をギヤおよびチェーンを用いて形成する場合と比較して、バルブ駆動機構55の作動時の静粛性を高めることができる。また、バルブ駆動機構55をプーリ56~58およびベルト59を用いて形成することにより、グリスまたはオイルによる潤滑を不要にすることができる。それゆえ、グリスの飛散を抑制する構造や、バルブ駆動機構にオイルを供給する通路構造等をエンジン5に追加する必要がなくなるので、エンジン5の大型化を抑制することができる。また、バルブ駆動機構55の作動時の静粛性を高めることができる点、およびグリスの飛散を抑制する構造やバルブ駆動機構にオイルを供給する通路構造等をエンジン5に追加する必要がなくなる点は、本実施例の第2の吸排気構造についても同様である。
【0082】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、鞍乗型車両1の側面視において、第1の従動プーリ57の回転中心Eおよび第2の従動プーリ58の回転中心Fはいずれも排気バルブ駆動用カムシャフト29の回転中心Dよりも後方に位置している。この構成により、バルブ駆動機構55がエンジン5の前方に突出することを防止することができ、鞍乗型車両1の大型化を抑制することができる。
【0083】
また、本実施例の第1の吸排気構造41において、接続通路開閉バルブ47は、接続通路42内に配置された回転体48を備え、回転体48は、バルブ駆動機構55により伝達された動力により一方向に連続的に回転し、回転体48には当該回転体48を貫通する連通穴49が形成されている。また、排気通路開閉バルブ51は、排気通路45内に配置された回転体52を備え、回転体52はバルブ駆動機構55により伝達された動力により一方向に連続的に回転し、回転体52には当該回転体52を貫通する連通穴53が形成されている。接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51をこのような構成としたことにより、弁体を揺動または往復動させるタイプのバルブと比較して、バルブ駆動時の振動または騒音を抑制することができる。また、弁体を揺動または往復動させるタイプのバルブと比較して、バルブの駆動に要するエネルギーを小さくすることができるので、バルブ駆動時のエンジン5の負荷を軽減することができる。また、バルブ駆動時の振動または騒音を抑制することができる点、およびバルブの駆動に要するエネルギーを小さくすることができる点は、本実施例の第2の吸排気構造についても同様である。
【0084】
なお、図9に示すように、第1の吸排気構造41の排気通路開閉バルブ51の外周面において排気通路45に接近した部分に、カーボン排出用の溝61を形成してもよい。溝61は、複数形成し、排気通路開閉バルブ51の外周面の全周に亘って配列することが好ましい。また、各溝61は、排気通路開閉バルブ51の軸方向に伸長するように形成し、かつ、排気通路開閉バルブ51の軸方向において、排気通路45から遠い側の端部61Aよりも排気通路45に近い側の端部61Bが、排気通路開閉バルブ51の回転方向(図9中の矢印の方向)において後方となるように傾斜させることが好ましい。第1の吸排気構造41の使用を継続すると、排気ガスに含まれるカーボンが排気通路開閉バルブ51と排気通路開閉バルブ収容部46との間に入ることが考えられる。排気通路開閉バルブ51に溝61を形成することにより、排気通路開閉バルブ51と排気通路開閉バルブ収容部46との間に入ったカーボンを、溝61を介して排気通路45内に排出することができる。これにより、排気通路開閉バルブ51と排気通路開閉バルブ収容部46との間にカーボンが蓄積し、排気通路開閉バルブ51の回転時の摩擦抵抗が増大して排気通路開閉バルブ51が回転し難くなることを抑制することができる。また、第2の吸排気構造の排気通路開閉バルブにも同様の溝を形成してもよい。
【0085】
また、上記実施例では、第1の吸排気構造41において、駆動プーリ56、第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58のそれぞれの直径をそれぞれ互いに等くし、排気バルブ駆動用カムシャフト29が1回転すると、接続通路開閉バルブ47の回転体48および排気通路開閉バルブ51の回転体52がそれぞれ1回転する構成とした。しかしながら、本発明はこれに限定されない。駆動プーリ56の直径を第1の従動プーリ57および第2の従動プーリ58のそれぞれの直径の2分の1とし、排気バルブ駆動用カムシャフト29が2回転するごとに、接続通路開閉バルブ47の回転体48および排気通路開閉バルブ51の回転体52がそれぞれ1回転する構成としてもよい。この場合には、接続通路開閉バルブ47の回転体48の45度の回転によって接続通路42の開閉を切り替えることができるように回転体48の直径、連通穴49の開口面積、接続通路42の流路面積等を設定し、かつ排気通路開閉バルブ51の回転体52の45度の回転によって排気通路45の開閉を切り替えることができるように回転体52の直径、連通穴53の開口面積、排気通路45の流路面積等を設定する。第2の吸排気構造においてもこのような構成を採用することができる。
【0086】
また、上記実施例では、第1の吸排気構造41において、接続通路42を前シリンダヘッド8に一体形成したが、これに代え、接続通路42をホースまたはパイプ等により形成することも可能である。また、第1の吸排気構造41のバルブ駆動機構55において、ベルト59に代えてチェーンを用い、各プーリ56~58に代えてギヤを用いてもよい。第2の吸排気構造の接続通路およびバルブ駆動機構についてもこのような変更を行うことができる。
【0087】
また、上記実施例では、第1の吸排気構造41において、接続通路42の流入口42Aを吸気ポート21の入口部21Aに接続したが、接続通路42の流入口を、空気の供給方向において吸気ポート21よりも上流側に配置された吸気系の部材、例えば吸気通路部材22等に接続してもよい。
【0088】
また、上記実施例では、第1の吸排気構造41において、排気バルブ駆動用カムシャフト29の回転を接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51に伝達することにより接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動することとしたが、吸気バルブ駆動用カムシャフト28の回転を接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51に伝達することにより接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動してもよい。また、本発明はSOHC(シングルオーバーヘッドカム)にも適用することができる。この場合には、SOHCのカムシャフトの回転を接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51に伝達することにより接続通路開閉バルブ47および排気通路開閉バルブ51を駆動する。第2の吸排気構造についても、接続通路開閉バルブおよび排気通路開閉バルブを駆動する構成をこのように変更することができる。
【0089】
また、上記実施例では、本発明のエンジンの吸排気構造をV型2気筒のエンジン5に適用する場合を例にあげたが、本発明は単気筒のエンジンにも適用することができる。また、本発明は、例えば接続通路42、排気通路45、接続通路開閉バルブ47、排気通路開閉バルブ51およびバルブ駆動機構55等をシリンダヘッドの左右両側にそれぞれ設けることにより、並列2気筒のエンジンにも適用することが可能である。
【0090】
また、上記実施例の鞍乗型車両1の各部品の配置が左右逆である場合には、それに合わせて上記実施例の第1の吸排気構造41および第2の吸排気構造の各部品の配置も左右逆にする。
【0091】
また、本発明は、鞍乗型車両のエンジンに限らず、他の種類の車両のエンジン、または車両以外の乗り物、装置または機器のエンジンにも適用することができる。
【0092】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うエンジンの吸排気構造もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 鞍乗型車両(車両)
5 エンジン
8 前シリンダヘッド(シリンダヘッド)
11 後シリンダヘッド
13 前排気管(排気管)
13B 上流側部分
16 ラジエータ
21 吸気ポート
22 吸気通路部材(第1の吸気通路)
25 排気ポート
25A 入口部
25B 出口部
25C 合流部
27 挿入穴
28 吸気バルブ駆動用カムシャフト
29 排気バルブ駆動用カムシャフト
31 カムシャフト駆動機構収容室(収容室)
41 第1の吸排気構造(吸排気構造)
42 接続通路(第2の吸気通路)
45 排気通路
47 接続通路開閉バルブ(第1のバルブ)
48 回転体(第1の回転体)
49 連通穴(第1の連通穴)
51 排気通路開閉バルブ(第2のバルブ)
52 回転体(第2の回転体)
53 連通穴(第2の連通穴)
55 バルブ駆動機構
56 駆動プーリ
57 第1の従動プーリ
58 第2の従動プーリ
59 ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9