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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127420
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】床面殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220824BHJP
   A61L 2/20 20060101ALN20220824BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/20
A61L101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025569
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】398048615
【氏名又は名称】株式会社ジオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 公典
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058BB07
4C058BB09
4C058EE26
4C058JJ14
4C058JJ24
4C058KK02
4C058KK26
4C058KK28
(57)【要約】
【課題】より容易に効果的に殺菌できる床面殺菌装置をすること。
【解決手段】床面上を移動可能な床面殺菌装置であって、紫外線を照射する紫外線照射部と、送風する送風部と、内部に紫外線照射部と送風部を収容し、紫外線及び送風が床面に当たるように床面側に開口する本体部と、を有し、送風部は、送風に必要な気体を内部から取り込むように本体部内に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を移動可能な床面殺菌装置であって、
紫外線を照射する紫外線照射部と、
送風する送風部と、
内部に前記紫外線照射部と前記送風部を収容し、前記紫外線及び前記送風が前記床面に当たるように前記床面側に開口する本体部と、
を有し、
前記送風部は、前記送風に必要な気体を前記内部から取り込むように前記本体部内に配置される、
床面殺菌装置。
【請求項2】
前記紫外線照射部と前記送風部とは、前記床面に沿って並んで配置されている、
請求項1記載の床面殺菌装置。
【請求項3】
前記送風部において気体を取り込む取込口は、前記本体部の天面部に沿う方向に向けて配置される、
請求項1又は2に記載の床面殺菌装置。
【請求項4】
前記送風部において気体を取り込む取込口は、前記本体部の天面部に対向して配置される、
請求項1又は2に記載の床面殺菌装置。
【請求項5】
前記送風部において風を出力する送風口は、前記床面に向けて配置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の床面殺菌装置。
【請求項6】
前記本体部を前記床面上で移動可能に支持する移動支持部を有し、
前記紫外線照射部は、前記床面と平行し且つ移動方向と直交する方向に沿って延在して配置され、且つ、紫外光を発光する発光体を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の床面殺菌装置。
【請求項7】
紫外線照射部は、前記発光体を複数有し、
複数の前記発光体は、前記移動方向で互いに平行に離間して配置されている、
請求項6に記載の床面殺菌装置。
【請求項8】
前記送風部は、前記複数の発光体に対して、前記移動方向のうちの少なくとも一方側に配置されている、
請求項7に記載の床面殺菌装置。
【請求項9】
前記送風部は、複数の前記発光体のうちの2本の間に配置されている、
請求項7に記載の床面殺菌装置。
【請求項10】
床面上を移動可能な床面殺菌装置であって、
前記床面に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記紫外線照射部を上方から被覆する本体部と、
前記紫外線照射部を囲繞するように前記本体部から下方に延びて設けられ、可撓性を有するスカート状の可撓部と、
を有し、
前記可撓部は、その下端部が前記床面に接して、前記紫外線照射部を遮蔽する、
床面殺菌装置。
【請求項11】
前記本体部は、
前記紫外線照射部を囲む筐体と、
前記筐体を覆うように配置される遮光性を有するカバー部と、
を有する、
請求項10に記載の床面殺菌装置。
【請求項12】
前記筐体は、前記紫外線を反射する反射性を有する、
請求項11に記載の床面殺菌装置。
【請求項13】
前記本体部を前記床面上で移動可能に支持する移動支持部を有し、
前記可撓部は、前記本体部の移動に際し、前記可撓部の下端部が変形して前記床面に接した状態を維持する、
請求項10から12のいずれか一項に記載の床面殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の殺菌に用いられる床面殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロタウィルス、ノロウィルス、インフルエンザ等のウィルスの感染症を防止するために、不特定多数の人が利用する病院、介護施設、診療所(クリニック、医院)、公共施設、オフィス等の様々な施設の床面を殺菌することが考えられている。
【0003】
特に、病院、介護施設或いは診療所では、病人や老人などのようにウィルスに対する抵抗力の弱い患者等がいる場合があるため、例えば、ノロウィルスのように残存した状態で長期間生存するウィルスや病原菌の除去はより効果的である。
【0004】
床を殺菌する装置としては、例えば、特許文献1に示ように、昇温用パッドを床面に接触させかつ回転した状態で移動し、回転時に発生する床面との間の摩擦熱で床面を高温度(例えば、100℃以上)にして、熱によって床面を殺菌するものが知られている。
【0005】
この装置では、パットを床面に接触して回転させることにより床面を高温度にするので、作業者はパットを回転させながら、直進方向等の所望の方向へ移動させる。このため、作業者は、少なくとも回転力に抗して装置を移動させる力が必要であり、その操作が困難であり、殺菌作業に手間が掛かっていた。また、殺菌後、温度が下がるまで床面において回転するパットが接触しにくい個所、例えば、床面の隅部分等の殺菌を行いにくく、その作業に手間がかかるという問題もある。
【0006】
これに対して、手間をかけることなく、床面全面を効率よく殺菌する方法として、床に薬品を撒くことによって殺菌する化学的方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-290423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬品を用いた方法では、特許文献1と比較して、装置のパットの回転力に抗して装置を移動させる力は必要がなく、床面全面の殺菌を行うことができる。しかしながら、このような薬品を用いた方法では、人体や環境への配慮の観点から、薬品が人体や環境に蓄積されて悪影響を及ぼす可能性がある。また、薬品として次亜塩素酸ソーダが用いられる場合、塩素ガスが発生し、ステンレス等の劣化を促進するおそれが生じることがある。
【0009】
近年では、床面殺菌装置として、より容易に効果的に殺菌するものが望まれている。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、より容易に効果的に殺菌できる床面殺菌装置をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る床面殺菌装置の一態様は、
床面上を移動可能な床面殺菌装置であって、
紫外線を照射する紫外線照射部と、
送風する送風部と、
内部に前記紫外線照射部と前記送風部を収容し、前記紫外線及び前記送風が前記床面に当たるように前記床面側に開口する本体部と、
を有し、
前記送風部は、前記送風に必要な気体を前記内部から取り込むように前記本体部内に配置される構成を採る。
【0012】
本発明に係る床面殺菌装置の一態様は、
床面上を移動可能な床面殺菌装置であって、
前記床面に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記紫外線照射部を上方から被覆する本体部と、
前記紫外線照射部を囲繞するように前記本体部から下方に延びて設けられ、可撓性を有するスカート状の可撓部と、
を有し、
前記可撓部は、その下端部が前記床面に接して、前記紫外線照射部を遮蔽する構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より容易に効果的に殺菌できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の外観図である。
図2】本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の要部構成を模式的に示す側断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の要部構成を模式的に示す底面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の殺菌処理中における内部の気体の流れを模式的に示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の外観図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の要部構成を模式的に示す側断面図であり、図3は、本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の要部構成を模式的に示す底面図である。
【0017】
図1から図3に示す床面殺菌装置10は、本体部2内で床面Yに対して紫外線(UV)を含む光(以下、「UV光」という)を照射することにより、床面Yを好適に殺菌する。床面殺菌装置10は、床面Y上を移動可能であることが好ましく、自走式であってもよいが、本実施の形態では、図1に示すように、ハンドル部50を介して作業者により操作されることにより床面Y上を移動して、床面Yを殺菌する。
【0018】
床面殺菌装置10は、本体部2と、本体部2内に収容され床面YにUV光を照射するUV照射部30と、本体部2内に収容される送風部40と、移動支持部60(図2及び図3参照)とを有する。
【0019】
<本体部2>
本体部2は、床面Y上に配置され、下面側には、開口部21が設けられている。開口部21は、床面側と筐体20の内部20aとを連通させる。開口部21は、内部20aのUV照射部30が照射する紫外線(UV光)及び送風部40の送風が、床面Yに当たるように床面Y側に開口している。本体部2は、床面Y上に、床面Yで本体部2の開口を閉じるように配置される。
【0020】
本体部2は、紫外線照射部30を囲む筐体20と、筐体20を覆う本体カバー(カバー部)23とを有する。
【0021】
筐体20は、床面Yに照射されるUV光が外部に漏れないように、UV照射部30と床面YにおいてUV光が照射される特定範囲を被うものである。また、筐体20は、内部20aの気体を極力留めたり、内部20aの気体の循環を維持したりする。筐体20は、床側に開口する開口部21以外から外部と連通しないように、つまり、外部に光が漏れたり、気体が流れたりしないように構成されることが好ましい。
【0022】
筐体20は、例えば、方形の箱型である。筐体20は、内部20aに収容するUV照射部30或いは送風部40の形状に対応した形状を有してもよく、円柱状、円盤状、平面視多角形の外形を有する角柱状に形成されてもよい。
【0023】
筐体20は、床面Y上で、筐体20の下方の床面Y部分により筐体20の内部20aが密閉されるように配置されることが好ましい。筐体20は、例えば、床面Y上に、床面Yに対して極力隙間が無いように配置され、内部20aの気体が外部に漏洩しないように構成されることが好ましい。筐体20の外面側は、本体カバー23で覆われている。
【0024】
本体カバー23は、遮光性を有し、筐体20の内部20aから本体部2の外部へUV光が漏洩しないようにする。本体カバー23は、筐体20の内部20aのUV光を、本体部2の外部から一層、視認できないようにしている。本体カバー23は、樹脂等により構成される。
【0025】
本体部2の下面において筐体20の開口部21を囲む開口縁部には、下方に突出し、床面Yと筐体20の下面との間を覆うように目隠しする目隠し部(可撓部)70が設けられている。
【0026】
また、本体部2には、筐体20の内部20aのUV照射部30がUV光を照射していることを報知する報知部80が設けられている。報知部80は、例えば、本体カバー23の先端側に取り付けられたLED等の発光体である。発光体としての報知部80は、発光することにより床面殺菌装置10が床面殺菌中(UV光の照射中である)ことを報知する。発光体としての報知部80は、本体カバー23の前面部に設けられている。報知部80を発光体としたが、これに限らず、警告音、音声、音楽等の発音により報知するようにしてもよい。これにより、操作者或いは周囲の者に床面殺菌中を報知できるので、より安全にUVにより床面殺菌を行うことができる。
【0027】
<目隠し部70>
目隠し部70は、UV照射部30を囲繞するように筐体20から下方に延びて設けられている。目隠し部70の下端部が床面Yに当接することにより、目隠し部70は、内部20aのUV照射部30を遮蔽するとともに、オゾンを外部に漏洩しにくくして内部20aに留まるように保持する。
【0028】
目隠し部70は、筐体20の移動の際でも移動を阻害することなく、床面Yと接触可能となるように、可撓性を有することが好ましい。これにより、目隠し部70は、筐体20が移動中であっても、床面Yを損傷することなく、UV照射部30を遮蔽しつつ、内部20aにオゾンを保持できる。
【0029】
目隠し部70の下端部は、床面殺菌装置10、つまり、筐体20の移動に際し、変形して床面Yに接した状態で維持されて、目隠し部70が紫外線の光を遮蔽し、オゾンを保持するようにしてもよい。
【0030】
目隠し部70は、本実施の形態では、可撓性を有するブラシであり、筐体20の下面において、開口部21を囲むように、多数の毛部72が、開口部21の周縁部から床面Y側に向かって突設されている。毛部72は、長尺の基台74から一様に突出して設けられている。突出方向は、どのような方向でもよく、例えば、毛部72は、先端に向かって筐体20の外方に広がるように傾斜して設けられている。目隠し部70は、可撓性を有し、本実施の形態では、筐体20の下端部から下方に延びるスカート状に形成されている。
【0031】
毛部72は、床面Yを摺動して、筐体20の移動中においても内部20aの目隠しとして機能するものであれば、獣毛、合成樹脂、繊維、針金等、どのような材料で構成されてもよい。
【0032】
目隠し部70は、開口部21を四方で囲むように設けられているが、これに限らず、内部20aのUV光が外部から見えず、内部20aを密閉するように配置されていれば、どのように構成されていてもよい。
【0033】
目隠し部70は、筐体20の下端部に、突出方向に進退移動自在に設けられてもよい。この構成によれば、床面Yに対して適宜進退移動させて突出長を調整して、床面Yと筐体20との間の隙間を好適に覆うことができる。
【0034】
<UV照射部30>
UV照射部30は、UV光を床面Yに照射する構成であれば、その形状等はどのように構成されてもよい。UV照射部30のように、UV光を発光する機器は、UV光を照射する際に、副次的にオゾンを発生するが、オゾンへの対応については後述する。UV照射部30は、例えば、電源供給によりUV光を発光する発光体を有する。なお、電源供給については、床面殺菌装置10に内蔵若しくは外付けの電源装置を設け、この電源装置から電源供給を受けてもよいし、または電源コードを介して外部から電源供給を受けてもよい。
【0035】
UV照射部30は、照射対象となる筐体20で囲まれた床面Y部分の全面を照射するように床面Yに対向して配置されていることが好ましい。これにより、床面Yに対しUV光を一度に効率良く広い範囲を照射できる。UV照射部30は、例えば、筐体20の走行方向と直交する方向である筐体の幅方向に延在する照射部分を有する。
【0036】
UV照射部30は、内部20aにおいて、UV光を、下面、つまり、床面Yに向けて照射するように設けられている。例えば、UV照射部30が、放射方向にUV光を発光する円筒状の発光体を含む構成であれば、この発光体の上側と、必要に応じて外周面に対向する前後側の両側或いは一方側とを覆うように反射板を有し、これら反射板により、発光を反射して下方を照射するように構成される。
【0037】
本実施の形態では、筐体20の内部20aの内面が、入射するUV光を下方に反射する反射性を有する構成であることが好ましい。筐体20の内部20aの内面が、UV照射部30の発光を反射して下方に向けることで、下方の床面Yへの照度を上げるように構成されている。筐体20は、例えば、内部20aの内面に、UV光を下方に向けて反射する反射板を設けるように構成される。
【0038】
UV光は殺菌効果のある波長であることが好ましく、UV照射部30が照射するUV光は、紫外線の中でも除菌効果のあるUV-C(波長100~280nmの波長)の電磁波であることが好ましい。具体的には、UV照射部30が発行するUV光は、260nm付近(253.7nm)の波長のUV光であることが好ましい。更には、UV光は、例えば、260~280nmの波長であることが好ましく、更に、260~270nmの波長であることが好ましく、更に263~267nmの波長であってもよい。しかしながら、UV-Cの光は、人間の目や皮膚に傷害を与え、有機物で覆われた什器備品の表面を劣化させることもあることが知られており、その光は、筐体20の外部から視認できないように構成される。本実施の形態では、目隠し部70を設けることで一層外部への漏れを防止している。
【0039】
UV照射部30は、床面と平行し且つ移動方向と直交する方向に沿って延在して配置され、UV光を発光する発光体を有する。発光体のそれぞれは、筐体20の進行方向と直交する方向に沿って延在する。
【0040】
発光体は、例えば、円柱状に形成され、筐体20において、幅方向に向けて延在するように配置され、且つ、互いに進行方向である前後方向で離間して互いに平行に配置されている。発光体は、それぞれ下方に照射するように、一様に配設されている。
【0041】
UV照射部30は、内部20aにおいて、送風部40とともに、オゾンを含む気体が内部20a内で循環して床面Yの隅々まで行き渡ることが可能な位置に配置されることが好ましい。また、UV照射部30は、筐体20に対して、床面Yからの距離を調整可能に設けられてもよい。
【0042】
<送風部40>
送風部40は、図2及び図3に示すように、送風に必要な気体を筐体20の内部20aから取り込むように、本体部2(詳細には筐体20)内に配置される。送風部40は、UV光の照射中において、内部20aの気体が内部20a内で循環するように、気体を取り込んで風を送る。
【0043】
送風部40は、筐体20の内部20a内の空気を取り込んで、例えば、吸引して、内部20aに風を排出、つまり、送風し、内部20aの気体、つまり、オゾンを循環して内部20aの隅々まで行きわたらせる。
【0044】
送風部40は、UV光の発光により発生するオゾンが筐体20で覆われるすべての床面Yの隅々まで行き渡らせて付着させるとともに、内部循環することにより、その濃度を保持する。
【0045】
オゾンは、自然分解され、臭気と毒性を有するものの、ウィルスや細菌の核そのものに働きかけて破壊や分解を行うことによる殺菌効果を有することが知られている。
送風部40は、送風により、オゾンを床面Yに付着させて、効率良く床面Yの殺菌を行うことができる。これにより、床面殺菌装置10は、送風部40を介して、内部20aにおいてUV光が照射されにくい個所でも、好適に十分に殺菌できる。特にカーペット等、表面がパイル状となっている床面の場合、送風によりパイルの毛先だけでなく根元までオゾンを行き渡らせることが可能となり、殺菌効果を向上させることができる。
【0046】
送風部40は、筐体20の内部20aの気体を取り込み送風する機能を有するものであれば、どのように構成されてもよい。送風部40は、例えば長尺領域を送風口として、気体を送りだし、長尺領域を取込口として気体を吸引するクロスフローファンや、シロッコファン等どのような送風部としてもよい。
【0047】
本実施の形態では、送風部40は、筐体20内で、筐体20の一側面(ここでは先端面或いは後端面)に平行に配置される長尺体であり、その長手方向に沿う長尺の送風口42を有するクロスフローファンである。
【0048】
送風部40は、UV照射部30とともに、床面Yに沿って並んで配置されている。送風部40は、3本のUV照射部30の前後方向の一方側に、これらUV照射部30と平行に所定間隔を空けて配置されている。
【0049】
送風部40は、図2及び図3に示すように、筐体20の内部20aにおいて、送風方向を床面Yに向けて収容されている。送風部40は、内部20aで、送風口42を下方、つまり、床面Yに向けて配置されており、駆動して、床面に向かって風を送り出す。
【0050】
また、送風部40は、気体を取り込む取込口44を、本体部2(具体的には筐体20)の天面部に沿う方向に向けて、つまり、内部20aの上面の延在方向と平行な方向で、UV照射部30側に向けて配置されている。
【0051】
送風部40は、駆動することにより上面に沿って他側から一端側に向かって気体を取り込み(例えば、吸引し)、床面Yに向かって送風するように設けられている。これにより、送風部40は、本体部2の天面部に沿って特定方向から送風部40に近づくように流れてくる気体を効率的に取り込むことができ、内部20aのオゾンを含む気流の循環性が向上する。
【0052】
<移動支持部60>
移動支持部60は、筐体20を床面Y上で移動可能に支持する。移動支持部60としては、例えば、筐体20に取り付けられ、転動して筐体20を走行させるキャスター等の転動部が適用される。
【0053】
本実施の形態では、移動支持部60は、筐体20に、横方向に延在する回転軸を介して取り付けられ、回転して床面を転動することにより筐体20を移動させる転動部としている。なお、移動支持部60の回転軸は、前後方向に向くように変位自在に設けられてよく、これにより筐体20は前後方向に加えて左右方向にも移動自在にできる。
【0054】
また、移動支持部60は、床面殺菌装置10自体を移動させるものであれば、どのような部材でもよく、転動部に換えて、例えば、床面Y上に載置され、円滑に摺動する摺動部としてもよい。また、移動支持部60は、モータ等の駆動源とそれにより回転駆動して筐体20を走行させる車輪とを有する構成としてもよい。
【0055】
<床面殺菌装置の動作>
図4は、本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の殺菌処理中における内部の気体の流れを模式的に示す図である。
【0056】
床面殺菌装置10では、殺菌処理を行う場合、UV照射部30を駆動して、UV照射部30が対向配置された床面Yに向かってUV光を照射するとともに、送風部40を駆動して送風する。
【0057】
送風部40は、送風することにより、筐体20の内部20a内の気体を循環させる。ここでは、送風部40は、筐体20の内部20aにおいて、先端側の上部に配置された取込口44、具体的には、先端側の上部で後端側に向かって開口する吸引口により、後端側からの空気を吸引して、下方の床面Yに向かって送風している。
【0058】
これにより、図4に示すように、内部20aで気体が循環する。ここでは、筐体20の内部20aにおいて、床面Yに吹き付けられた気体は、床面Yに沿って後端側に移動し、後端壁部と床面Yとを密閉する目隠し部70の後端部70aに沿って垂直上方に移動し、筐体20の後端面、上面部を伝って先端側に移動する。
【0059】
後端側から先端側に移動する気体は、UV照射部30の外周面を伝い外周に付着したオゾンを剥がし、下方に落下させたり、先端側に運んだりする。取込口を介して取り込まれた気体は、送風口から床面Yに吹き付けられて、床面Yを伝って後端側に移動し、循環して再び取込口に取り込まれ、この循環動作を繰り返す。
【0060】
このように、床面殺菌装置10は、床面Yに向かってUV光を照射するとともに、床面Yにオゾンを吹き付けて、内部20aで気体を床面Yに沿って循環させる。循環する気体によりUV照射部30の発光部分に付着したオゾンは、発光部分から離脱して床面Yに付着する。これにより、UV照射部30によるUV光の照射でのみの殺菌作用に加えて、一層、オゾンにより殺菌を行うことができる。オゾンはUV光の至らない部分を殺菌することができる。
【0061】
<変形例>
図5は、本発明の実施の形態に係る床面殺菌装置の変形例を示す側断面図である。
図5に示す床面殺菌装置10Aは、床面殺菌装置10において、角柱状の送風部40を、平面視正方形の板状の送風部40Aに換えたものであり、その他の構成要素は、同様の構成要素であるので、同符号同名称を付して説明は省略する。
【0062】
床面殺菌装置10Aでは、筐体20の内部20aの中央部に送風部40Aが配置され、この送風部40Aを挟んで、先端部側と後端部側に、UV照射部30Aを構成する複数の発光体が配置されている。
【0063】
送風部40Aは、内部20aに、気体を取り込む取込口としての取込口44Aが、本体部(詳細には筐体20)の天面部に対向するように、配置されている。送風部40Aは、例えば、角柱状に形成されたシロッコファンであり、下方に送風する送風口42Aと、送風に必要な気体を上方(天面部側)から取り込む(吸引する)取込口44Aと、を有する。これにより、送風部40Aは、筐体20の天面部に沿って全方向から送風部40Aの真上に集まるように流れてくる気体を効率的に取り込めるので、筐体20の内部20aのオゾンを含む気流の循環性の向上を図ることができる。
【0064】
送風部40Aは、筐体20の内部20aでオゾンを循環して効率よく床面Yに付着させせるものであれば、どの位置に、いくつ配置されてもよい。一つのシロッコファンを有する場合、筐体を平面視正方形状、あるいは円状に形成して、筐体20の下端の外縁部から内部20aの中心部分までの距離が略同じ距離になるように構成することが好ましい。
【0065】
これにより、内部20a内において、中央部分から、下方に送風し、床面Y上を移動する気体は、筐体20の外周に沿って上方に移動し、上面を伝い、中央部分の送風部40Aに吸引される。すなわち、筐体20の内部20aでは、中央部から下方に流れ、放射方向に広がり外周部まで流れて上面を伝って中央部に戻るように循環する。よって、床面殺菌装置10Aは、効果的に、内部20aの気体を循環させて、UV光とともに、オゾンにより床面を効果的に殺菌できる。
【0066】
なお、本実施の形態の床面殺菌装置10、10Aでは、UV照射部30、30Aは、幅方向(短手方向)に延びる発光体を、走行方向で互いに平行となるように並べた構成としたが、筐体20の内部20a内で効果的に床面Yを殺菌できれば、どのように配置されてもよい。
【0067】
床面Yに対向する内部20aの領域において、内部20aの中央部に一つ以上のシロッコファン等の送風部を配置して、それを囲むように、多角形状、例えば、ひし形状等の矩形枠状、三角形状となるような位置、多角形状となるような位置に配置されてもよい。
【0068】
また、床面殺菌装置10、10Aは、内部20aの気体を浄化する浄化部を有してもよい。浄化部は、例えば、通過させたオゾンを分解し無害化するオゾンフィルターである。浄化部(オゾンフィルター)は、活性炭素式、触媒式等のどのタイプであってもよく、光照射、室内光及び自然光のうち少なくとも一つによりオゾンを分解する光触媒式のものであることが好ましい。光触媒式の浄化部(オゾンフィルター)によれば、常温(室温)またはそれ以下の温度域で触媒反応によりオゾンを酸素に分解でき、また、オゾン特有の臭気を抑制でき、オゾンの有害性を除去できる。特に、室内光や自然光による光触媒式の浄化部であれば、能動的に光を照射することなく、内部20aの気体を浄化、つまり、内部20aにおけるオゾンの有害性を除去できる。その場合、浄化部に室内光や自然光が届く構成、例えば、室内光や自然光が届く位置(例えば、目隠し部70等に配置)に浄化部を配置したり、また、浄化部に光が届くがUV光が外部に漏れないように、筐体20を部分的に透明にした構成としてもよい。
【0069】
よって、浄化部としてのオゾンフィルターが内部20aに配置されることにより、床面殺菌装置10、10Aでは、閉じた内部20aを循環するオゾンの無害化を図ることができる。また、浄化部は、内部2aを囲むように配置されたスカート状の目隠し部70の外周面或いは内周面に配置されてもよい。特に浄化部は、目隠し部70の内周面に、内部20aを囲むように設けられていることが好ましい。
【0070】
また、浄化部は、光を触媒にしてオゾンを分解する光触媒を目隠し部70に担持させることで構成されてもよい。例えば、浄化部は、毛部72をコーティングする酸化チタン等の光触媒により構成される。光触媒は、毛部72の一本一本毎、或いは、壁状に纏めた多数の毛部72の外周面、内周面などを覆うように、毛部72に添着されることにより、毛部72に担持される。浄化部は、内部20aを囲むように配置される。これにより、毛部72を有する目隠し部(ブラシ)自体が、オゾンフィルターの機能を兼ねる構成となる。
【0071】
床面殺菌装置10、10Aは、目隠し部70により、床面殺菌しつつ、内部20aでオゾンを分解して除去できるとともに、外部に気体が漏れた場合でも漏れた気体は無害であり、床面殺菌装置10、10Aの取扱、操作が容易となる。
【0072】
また、床面殺菌装置10、10Aは、送風部40、40Aとは別に、内部2aを負圧状体に維持し、且つ、オゾンフィルターを介してオゾンを分解しながら排気する別の送風部を設けてもよい。
【0073】
そして、この技術分野において通常の知識を有する者に明白な詳細な説明は開示しなくてもよい。本発明において、第1、第2などのような関係用語は、一つの存在を他の存在から区分するために用いることができ、実際の関係やそれらの順序に限定されるわけではない。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る床面殺菌装置は、より容易に効果的に殺菌できる効果を有し、病院、診療所(クリニック、医院)等の医療施設や、多くの人や物品が集まる商業施設、物流施設で適用されるものとして有用である。
【符号の説明】
【0076】
2 本体部
10、10A 床面殺菌装置
20 筐体
20a 内部
21 開口部
23 本体カバー(カバー部)
30、30A 紫外線照射部
40、40A 送風部
42、42A 送風口
44、44A 取込口
50 ハンドル部
60 移動支持部
70 目隠し部(可撓部)
72 毛部
74 基台
80 報知部
84 後端部
Y 床面
図1
図2
図3
図4
図5