(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127442
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】位置を推定する装置および方法、機器を制御する装置および方法、ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
G01C15/00 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025600
(22)【出願日】2021-02-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) ウェブサイトの掲載日 2020年12月11日 ウェブサイトのアドレス https://www.ieice.org/ken/paper/20201215gCBD/ (全文PDFはpeatixにてHCGシンポジウム2020の参加者のみに公開) (その2) 開催日 2020年12月15日から2020年12月17日 集会名、開催場所 HCGシンポジウム2020(オンライン開催)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 光範
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光起
(57)【要約】
【課題】デバイスの位置を特別な機器を用いることなく容易に検出する。
【解決手段】ジャイロセンサ24を備えるデバイス2の位置を推定する情報処理装置3であって、基準点P1,P2,P3の空間座標を示す基準点座標情報D2を登録する座標情報登録部32と、デバイス2を前記位置から基準点P1,P2,P3の各々に指向させた時の、ジャイロセンサ24のアルファ角およびベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部33と、前記角度情報に基づいて、前記位置を算出する位置算出部34と、を備える情報処理装置3。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスの位置を推定する装置であって、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部と、
前記デバイスを前記位置から前記基準点の各々に指向させた時の、前記デバイスの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部と、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録部に登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記デバイスの前記位置を算出する位置算出部と、
を備える装置。
【請求項2】
前記基準点は3つである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基準点は、前記空間内の2次元平面上に配置されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記3つ以上の前記基準点のうち少なくとも2つは、前記2次元平面上の2隅付近である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記位置算出部は、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記アルファ角より構成される円と、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記ベータ角より構成される円と、
を用いて前記デバイスの前記位置を算出する、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記空間内の機器の空間座標を示す機器座標情報を登録する機器座標情報登録部と、
前記機器座標情報に基づき、前記デバイスが前記位置から指向する方向に位置する機器を特定する操作対象特定部と、
前記デバイスへの操作に応じて、前記特定された機器を制御する機器制御部と、
をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスの位置を推定する位置推定方法であって、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録ステップと、
前記デバイスを前記位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得ステップと、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録ステップにおいて登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記位置を算出する位置算出ステップと、
を備える位置推定方法。
【請求項8】
前記位置算出ステップでは、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記アルファ角より構成される円と、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記ベータ角より構成される円と、
を用いて前記デバイスの前記位置を算出する、請求項7に記載の位置推定方法。
【請求項9】
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスを用いて、機器を制御する機器制御方法であって、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録ステップと、
前記デバイスを前記デバイスの位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得ステップと、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録ステップにおいて登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記位置を算出する位置算出ステップと、
前記空間内の機器の空間座標を示す機器座標情報を登録する機器座標情報登録ステップと、
前記機器座標情報に基づき、前記デバイスが前記位置から指向する方向に位置する機器を特定する操作対象特定ステップと、
前記デバイスへの操作に応じて、前記特定された機器を制御する機器制御ステップと、
を備える機器制御方法。
【請求項10】
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスの位置を推定するプログラムであって、
コンピュータを、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部、
前記デバイスを前記位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部、および
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録部に登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記位置を算出する位置算出部、
として機能させる、プログラム。
【請求項11】
前記位置算出部は、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記アルファ角より構成される円と、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記ベータ角より構成される円と、
を用いて前記デバイスの前記位置を算出する、請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスを用いて、機器を制御するプログラムであって、
コンピュータを、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部、
前記デバイスを前記デバイスの位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部、
前記基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録部に登録された前記基準点とに基づいて、前記位置を算出する位置算出部、
前記空間内の機器の空間座標を示す機器座標情報を登録する機器座標情報登録部、
前記機器座標情報に基づき、前記デバイスが前記位置から指向する方向に位置する機器を特定する操作対象特定部、および
前記デバイスへの操作に応じて、前記特定された機器を制御する機器制御部、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの位置を推定する技術、および、デバイスを用いて機器を操作する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスの位置を測定する方法としてGPS(Global Positioning System)が一般に用いられている。しかし、屋内ではGPSは正確な位置を示さない場合がある。室内での測位技術としては、Wi-Fi測位、RFID測位、ビーコン測位、歩行者自立航法、IMES測位、地磁気測位などが考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、赤外線光を発する3つの光学ビーコンと光学ビーコンから入射する光の入射角度を算出する移動体とを結ぶ各方向線の相互間の角度を測定し、これら測定角度のうち、それぞれ2つの測定角度からなる複数の組合せを選定し、選定される組合せごとに、それぞれの測定角度および各光学ビーコンの既知の位置を用いて、移動体の位置を演算する技術が開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、スマートフォンに方位センサを接続し、部屋内の座標と方位が既知である複数の基準点へ端末を向けた際の値をもとにユーザの座標を推測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岩崎陽平,河口信夫,稲垣康善、“Azim:方向センサを用いたユビキタス位置情報サービス”、情報処理学会研究報告、vol.2003、no.115、pp.25-30、2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、光学ビーコンとして発光ダイオードを用いており、移動体が光学ビーコンから発する赤外線光の入射角度を検出するための特別な機器を必要とする。
【0008】
また、非特許文献1に記載の技術では、通常のスマートフォンに搭載されている方位センサを利用しているが、家電製品の配置の変化などで変動する磁場の分布によって方位センサの値が影響を受けるため精度が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、デバイスの位置を特別な機器を用いることなく容易に検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を含む。
項1.
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスの位置を推定する装置であって、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部と、
前記デバイスを前記位置から前記基準点の各々に指向させた時の、前記デバイスの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部と、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録部に登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記デバイスの前記位置を算出する位置算出部と、
を備える装置。
項2.
前記基準点は3つである、項1に記載の装置。
項3.
前記基準点は、前記空間内の2次元平面上に配置されている、項1または2に記載の装置。
項4.
前記3つ以上の前記基準点のうち少なくとも2つは、前記2次元平面上の2隅付近である、項3に記載の装置。
項5.
前記位置算出部は、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記アルファ角より構成される円と、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記ベータ角より構成される円と、
を用いて前記デバイスの前記位置を算出する、項1から4のいずれかに記載の装置。
項6.
前記空間内の機器の空間座標を示す機器座標情報を登録する機器座標情報登録部と、
前記機器座標情報に基づき、前記デバイスが前記位置から指向する方向に位置する機器を特定する操作対象特定部と、
前記デバイスへの操作に応じて、前記特定された機器を制御する機器制御部と、
をさらに備える、項1から5のいずれかに記載の装置。
項7.
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスの位置を推定する位置推定方法であって、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録ステップと、
前記デバイスを前記位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得ステップと、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録ステップにおいて登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記位置を算出する位置算出ステップと、
を備える位置推定方法。
項8.
位置算出ステップでは、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記アルファ角より構成される円と、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記ベータ角より構成される円と、
を用いて前記デバイスの前記位置を算出する、項7に記載の位置推定方法。
項9.
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスを用いて、機器を制御する機器制御方法であって、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録ステップと、
前記デバイスを前記デバイスの位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得ステップと、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録ステップにおいて登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記位置を算出する位置算出ステップと、
前記空間内の機器の空間座標を示す機器座標情報を登録する機器座標情報登録ステップと、
前記機器座標情報に基づき、前記デバイスが前記位置から指向する方向に位置する機器を特定する操作対象特定ステップと、
前記デバイスへの操作に応じて、前記特定された機器を制御する機器制御ステップと、
を備える機器制御方法。
項10.
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスの位置を推定するプログラムであって、
コンピュータを、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部、
前記デバイスを前記位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部、および
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録部に登録された前記基準点座標情報とに基づいて、前記位置を算出する位置算出部、
として機能させる、プログラム。
項11.
前記位置算出部は、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記アルファ角より構成される円と、
前記3つ以上の前記基準点から選択される2つの前記基準点と前記ベータ角より構成される円と、
を用いて前記デバイスの前記位置を算出する、項10に記載のプログラム。
項12.
空間内において、ジャイロセンサを備えるデバイスを用いて、機器を制御するプログラムであって、
コンピュータを、
3つ以上の基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部、
前記デバイスを前記デバイスの位置から前記基準点に指向させた時の、前記ジャイロセンサの上面に垂直な第1軸の周りのアルファ角、および、前記第1軸に垂直な第2軸周りのベータ角の角度情報を取得する角度情報取得部、
前記基準点の空間座標を示す基準点座標情報を登録する基準点座標情報登録部、
前記角度情報と、前記基準点座標情報登録部に登録された前記基準点とに基づいて、前記位置を算出する位置算出部、
前記空間内の機器の空間座標を示す機器座標情報を登録する機器座標情報登録部、
前記機器座標情報に基づき、前記デバイスが前記位置から指向する方向に位置する機器を特定する操作対象特定部、および
前記デバイスへの操作に応じて、前記特定された機器を制御する機器制御部、
として機能させる、プログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デバイスの位置を特別な機器を用いることなく容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムのブロック図である。
【
図2】デバイス、基準点表示部および機器が設けられている場所の概略図である。
【
図5】(a)は、基準点座標情報の一例であり、(b)は、機器座標情報の一例である。
【
図6】(a)は、
図2に示す場所を上方向から見た平面図であり、(b)は、
図2に示す場所を壁Wに向かって見た側面図である。
【
図7】基準点P1,P2を通り円周角がα
12である円の求め方の説明図である。
【
図8】デバイスの位置を算出する方法の説明図である。
【
図10】情報処理装置による演算処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例における、基準点および三脚(デバイス)の配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(システム構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る制御システム1のブロック図である。制御システム1は、デバイス2と、情報処理装置3(装置)と、基準点表示部4と、機器5とを備えている。本実施形態において、デバイス2、基準点表示部4および機器5は、建物内の部屋にある。
【0015】
デバイス2は、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの携帯端末でもよい。また、電話機能を有さない専用の機器でもよい。本実施形態では、デバイス2として携帯端末であるスマートフォンを用いて説明する。情報処理装置3は、デバイス2および機器5とインターネット等のネットワークNを介して通信可能である。情報処理装置3が設けられる場所は特に限定されないが、本実施形態では部屋の外(例えばクラウド上)に設けられる。ただし、デバイス2が情報処理装置3の機能を有していてもよい。制御システム1では、情報処理装置3によってデバイス2の空間における位置を推定することにより、デバイス2を介して機器5を制御することができる。
【0016】
図2は、デバイス2、基準点表示部4および機器5のある場所の概略図である。デバイス2は、部屋内のユーザによって保持されている。
【0017】
基準点P1,P2,P3は、空間内の2次元平面である壁W1上に配置される。より具体的には、基準点P1,P2,P3は、ユーザから向かって壁W1の右上から左下へ斜め方向にほぼ等間隔に配置されている。なお、壁W1は基準点表示部4として機能している。
図2では、基準点P1、P3は、2次元平面である壁W1(基準点表示部4)の2隅(右上と左下)の近傍に配置される。基準点P1,P2,P3の位置は、2次元平面上に限定されず、空間内の任意の位置と全ての基準点P1,P2,P3の位置を通る球面を持つ球を形成しない位置であればよい。
【0018】
なお、壁W1に平行な水平軸をx軸とし、x軸に垂直な水平軸をy軸とし、上下方向の軸をz軸とする。また、基準点P1,P2,P3を配置する態様は特に限定されず、紙を壁W1に貼付したり、プロジェクタによって壁W1に投影することにより、基準点P1,P2,P3を表示することができる。また、壁W1の代わりに、ディスプレイ装置に基準点P1,P2,P3を表示してもよい。基準点P1,P2,P3の形状は特に限定されないが、本実施形態では円形である。
【0019】
機器5は、ネットワークNを介して情報処理装置3と接続されたIoT機器である。機器5の種類および個数は、特に限定されないが、機器5はユーザが視認できる位置に設けられていることが好ましい。本実施形態では、機器5は、エアコンおよびテレビであるが、電灯や扇風機などでもよい。
図2に示すように、エアコンは壁W2に取り付けられており、テレビは壁W2の近傍に設けられている。
【0020】
(デバイスの構成)
図1に示すように、デバイス2は、読取部21と、入力部22と、レーザポインタ23と、ジャイロセンサ24と、角度情報生成部25とを備えている。
【0021】
読取部21は、QRコード(登録商標)を読み取るためのアプリケーションによって実現することができる。入力部22は、タッチパネルによって構成することができる。
【0022】
レーザポインタ23は、デバイス2の上側面に取り付けられており、デバイス2が指向する方向にレーザ光を出射する。ユーザは、ポインタを見ることによってデバイス2の指向方向を正確に把握することができる。
【0023】
ジャイロセンサ24は、デバイス2の回転角を検知するセンサであり、大部分の機種に搭載されている。具体的には、ジャイロセンサ24は、アルファ(α)角、ベータ(β)角およびガンマ(γ)角を検知することができ、本実施形態では、これらのうちアルファ角およびベータ角を用いる。
【0024】
図3(a)に示すように、アルファ角は、デバイス2の画面に垂直な軸周りの回転角度であり、0~360度の値で表現される。
図3(b)に示すように、ベータ角は、デバイス2の画面を横方向に貫く軸の周りの回転角度であり、-180~180度の値で表現される。すなわち、
図3(a)、(b)に示すXYZ座標において、アルファ角はZ軸まわりの回転角(デバイス2の上面に垂直な第1軸の周りの角)であり、ベータ角はX軸まわりの回転角(第1軸に垂直な第2軸周りの角)である。
【0025】
角度情報生成部25は、HTML5およびJavaScriptを用いて実装されるWebアプリケーションであり、読取部21が所定のQRコードを読み取ることにより起動する。角度情報生成部25は、JavaScriptのDevice Orientationイベントを用いてジャイロセンサ24のアルファ角およびベータ角を検知して角度情報を生成する機能を有している。
【0026】
具体的には、読取部21が所定のQRコードを読み取ると、Webアプリケーションが起動し、
図4に示す画面がデバイス2に表示される。このとき、Device Orientationイベントが初期化され、ジャイロセンサ24のアルファ角およびベータ角が0度に初期化される。なお、角度情報生成部25がWebアプリケーション以外のアプリケーションとしてあらかじめデバイス2にインストールされている場合は、QRコードの読み取りを省略してもよい。
【0027】
続いて、ユーザは、レーザポインタ23からレーザ光を出射させながらデバイス2を基準点P1に指向させ、ポインタが基準点P1に位置している時に、
図4に示す「P1」のボタンをタップする。入力部22がタップ操作を検知すると、角度情報生成部25は、ジャイロセンサ24からアルファ角およびベータ角を検知することにより角度情報を生成し、基準点の番号(P1)およびデバイスの端末IDとともに、角度情報を情報処理装置3に送信する。
【0028】
その後、ユーザは、デバイス2の中心位置を変えずに回転させることにより、デバイス2を基準点P2に指向させ、
図4に示す「P2」のボタンをタップする。これに応じて、角度情報生成部25は、ジャイロセンサ24のアルファ角およびベータ角を検知することにより角度情報を生成し、基準点の番号(P2)およびデバイスの端末IDとともに、角度情報を情報処理装置3に送信する。
【0029】
さらに、ユーザは、デバイス2を所定角度回転させることにより、デバイス2を基準点P3に指向させ、
図4に示す「P3」のボタンをタップする。これに応じて、角度情報生成部25は、ジャイロセンサ24からアルファ角およびベータ角を検知することにより角度情報を生成し、基準点の番号(P3)およびデバイスの端末IDとともに、角度情報を情報処理装置3に送信する。
【0030】
(情報処理装置の構成)
図1に示す情報処理装置3は、例えば汎用のコンピュータで構成することができる。情報処理装置3は、ハードウェア構成として、CPUやGPUなどのプロセッサ(図示省略)、SRAMやDRAMなどの主記憶装置(メモリ、図示省略)、およびHDDやSSDなどの補助記憶装置31を主に備えている。補助記憶装置31には、プログラムD1、基準点座標情報D2、機器座標情報D3などの各種データが記憶されている。なお、情報処理装置3を複数のコンピュータで構成してもよい。
【0031】
また、情報処理装置3は、機能ブロックとして、座標情報登録部32(基準点座標情報登録部、機器座標情報登録部)と、角度情報取得部33と、位置算出部34と、操作指示受付部35と、操作対象特定部36と、機器制御部37とを備えている。これらの機能ブロックは、情報処理装置3のプロセッサが、プログラムD1をメモリに読み出して実行することによりソフトウェア的に実現することができる。すなわち、プログラムD1は、プロセッサによって実行されることにより、情報処理装置3の座標情報登録部32、角度情報取得部33、位置算出部34、操作指示受付部35、操作対象特定部36および機器制御部37としてコンピュータを動作させる。
【0032】
プログラムD1は、通信ネットワークを介して情報処理装置3にダウンロードしてもよいし、プログラムD1を記録したCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体を介して、プログラムD1を情報処理装置3に供給してもよい。
【0033】
座標情報登録部32は、基準点P1,P2,P3の空間座標を示す基準点座標情報D2および機器5の空間座標を示す機器座標情報D3を登録する機能を有している。座標情報登録部32は、基準点P1,P2,P3および機器5が設置されたときに、システムの管理者等の操作によって、基準点P1,P2,P3の空間座標および機器5の空間座標を基準点座標情報D2および機器座標情報D3として補助記憶装置31に記憶させる。なお、座標情報登録部32は、特許請求の範囲に記載の基準点座標情報登録部および機器座標情報登録部の両方に対応する。
【0034】
図5(a)は、基準点座標情報D2の一例であり、
図5(b)は、機器座標情報D3の一例である。空間座標の原点は、部屋内の任意の位置に設定することができ、例えば基準点P3の位置を原点として設定することができる((P
3x,P
3y,P
3z)=(0,0,0))。
【0035】
図1に示す角度情報取得部33は、デバイス2の角度情報生成部25から、デバイス2の回転角を示す角度情報を取得する。角度情報には、デバイス2をユーザが保持している位置から基準点P1,P2,P3の各々に指向させた時の、ジャイロセンサ24のアルファ角およびベータ角が含まれている。
【0036】
位置算出部34は、角度情報取得部33によって取得された角度情報と、座標情報登録部32に登録された基準点座標情報D2とに基づいて、デバイス2の位置(空間座標)を算出する。本実施形態では、位置算出部34は、ユーザがデバイス2で基準点P1,P2,P3の各々を指向させた時のデバイス2の回転角をもとに三角測量を行うことにより、デバイス2の位置の候補となる点を求め、部屋の間取り図との整合性が保たれる位置をデバイス2の位置と推定する。以下、具体的な算出方法について説明する。
【0037】
図6(a)は、
図2に示す場所を上方向から見た平面図であり、便宜上、基準点P1,P2,P3は円で示されている。位置算出部34は、ジャイロセンサ24の主にアルファ角に基づいて、基準点P1を指向している時のデバイス2の方向の水平成分と、基準点P2を指向している時のデバイス2の方向の水平成分との角度α
12、および、基準点P2を指向している時のデバイス2の方向の水平成分と、基準点P3を指向している時のデバイス2の方向の水平成分との角度α
23を算出する。また、角度α
12と角度α
23との和を角度α
13とする。
【0038】
図6(b)は、
図2に示す場所を壁Wに向かって見た側面図であり、便宜上、基準点P1,P2,P3は円で示されている。位置算出部34は、ジャイロセンサ24の主にベータ角に基づいて、基準点P1を指向している時のデバイス2の方向の鉛直成分と、基準点P2を指向している時のデバイス2の方向の鉛直成分との角度α
12’、および、基準点P2を指向している時のデバイス2の方向の鉛直成分と、基準点P3を指向している時のデバイス2の方向の鉛直成分との角度α
23’を算出する。また、角度α
12’と角度α
23’との和を角度α
13’とする。
【0039】
続いて、位置算出部34は、基準点P1,P2,P3のうち2つの基準点Pa,Pbを通り、円周角がα
abおよびα
ab’(a、bは1~3の整数)である円を求める。
図7は、基準点P1,P2を通り円周角がα
12である円の求め方の説明図である(すなわちPa=P1、Pb=P2、α
ab=α
12の場合である)。
【0040】
まず、基準点P1,P2の垂直二等分線を引き、この垂直二等分線上で、基準点P1,P2の各々とを結ぶ直線のなす角度がα
12となる2つの点A,Bを余弦定理により求める。線分P1P2の中点をM、∠β=MP1Aとすると、△MP1A≡△MP2Aであるため、
【数1】
となる。
【0041】
ここで、△P1P2Aにおいて、余弦定理により辺P1Aの長さは、
【数2】
となる。よって点Aは、線分P2P1と線分AP1の成す角がβで、点P1からP1Aの距離にある点である。
【0042】
また直線P2P1の傾きmは、
【数3】
により求めることができる。ただしarctan2(y,x)は、arctan(y/x)を(-π,π]の範囲で求める関数である。ここで求めたmを、次式により[0,2π)の範囲に変換する。
【数4】
【0043】
以上より,点Aの座標(Ax,Ay)は,
【数5】
として求めることができ、点Bの座標(Bx,By)は、
【数6】
として求めることができる。
【0044】
続いて、基準点P1,P2と点Aを通る円O12、および基準点P1,P2と点Bを通る円O12’を求める。これらの2つの円O12,O12’が、基準点P1,P2を通り円周角がα12である円となる。同じ要領で、基準点P2,P3を通り円周角がα23である2つの円O23,O23’、および、基準点P1,P3を通り円周角がα13である2つの円O13,O13’を求める。
【0045】
続いて、
図8に示す平面図のように、3つの円O
12,O
23,O
13の交点Pc、および、3つの円O
12’,O
23’,O
13’の交点Pc’を求める。位置算出部34は、2つの交点Pc,Pc’のうち部屋の内部にある点(例えば、y座標が0以上の点)をデバイス2のxy座標とする。なお、2つの交点Pc,Pc’がいずれも部屋の内部に位置しない場合、位置算出部34は、2つの交点Pc,Pc’のうち部屋に近い点をデバイス2のxy座標とする。
【0046】
デバイス2のyz座標も、上記と同様に求めることができる。以上のように、位置算出部34は、角度情報に基づいてデバイス2の位置を算出することができる。
【0047】
図1に示す操作指示受付部35は、ユーザがデバイス2を介して機器5の操作を指示した場合に、デバイス2から操作指示を受け付ける。本実施形態では、位置算出部34によってデバイス2の位置が算出されると、操作指示受付部35は、
図9に示す受付画面をデバイス2に表示させる。ユーザは、デバイス2を所定角度回転させることにより、操作したい機器5にデバイス2を指向させ、「操作する」のボタンをタップする。これにより、操作指示受付部35は操作指示を受け付ける。
【0048】
図1に示す操作対象特定部36は、機器座標情報D3に基づき、ユーザが操作しようとする機器5を特定する。具体的には、操作対象特定部36は、操作指示受付部35が操作指示を受け付けた時のジャイロセンサ24の角度情報を取得し、デバイス2が指向する方向を算出する。続いて、操作対象特定部36は、位置算出部34によって推定されたデバイス2の位置(空間座標)を通り、デバイス2が指向する方向と平行な仮想的な直線を演算する。さらに、操作対象特定部36は、機器座標情報D3を参照して、前記直線上に位置する、または、前記直線と所定距離以内に近接する機器5が存在するか否か判定し、そのような機器5が存在する場合、当該機器5をユーザが操作しようとする機器5として特定する。そのような機器5が存在しない場合、操作対象特定部36は、ユーザが操作しようとする機器5を特定せず、例えば、「操作できる機器が見付かりません。」のようなメッセージを含む画面をデバイス2に表示させる。
【0049】
機器制御部37は、デバイス2が位置算出部34によって算出された位置から指向する方向に位置する機器5を制御する。具体的には、操作対象特定部36によってユーザが操作しようとする機器5が特定されると、機器制御部37は、特定された機器5を操作するための操作画面をデバイス2に表示させる。ユーザが操作画面を介して機器5に対する操作を行うと、機器制御部37は、操作内容に応じた制御信号を機器5に送信する。これにより、ユーザは、リモコンを操作するような感覚でデバイス2を介して直感的に機器5を操作することができる。
【0050】
なお、操作指示受付部35を省略して、操作対象特定部36は、ユーザがデバイス2を機器5のいずれかに指向させるだけで、自動的に当該機器5を特定してもよい。
【0051】
(小括)
以上のように、本実施形態では、ジャイロセンサを用いて、3つの基準点にデバイスをそれぞれ指向させたときの回転角に基づいて、デバイスの位置を算出している。ジャイロセンサは、通常のデバイスに搭載されている装置であり、方位センサとは異なり、帯磁パターンの変化に影響を受けない。また、基準点もユーザが視認できるものであれば設置態様は問わない。したがって、GPSが使用できない屋内のデバイスの位置を、特別な機器を用いることなく容易に検出することができる。
【0052】
さらに本実施形態では、部屋に設置される機器の配置場所を登録しておくことにより、ユーザはデバイスを用いて機器を操作することができる。また、操作ではデバイスの画面を用いるので、音声での操作に比べて複雑で高度な操作(例えば描画等)も可能である。
【0053】
(処理手順)
図10は、情報処理装置3による演算処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
座標情報登録ステップS1(基準点座標情報登録ステップ、機器座標情報登録ステップ)では、座標情報登録部32が、基準点P1,P2,P3の空間座標を示す基準点座標情報D2および機器5の空間座標を示す機器座標情報D3を登録する。
【0055】
角度情報取得ステップS2では、角度情報取得部33が、デバイス2をユーザが保持している位置から基準点P1,P2,P3の各々に指向させた時の、デバイス2のジャイロセンサ24のアルファ角およびベータ角の角度情報を取得する。
【0056】
位置算出ステップS3では、位置算出部34が、角度情報取得ステップS2において取得された角度情報と、座標情報登録部32が、座標情報登録ステップS1において登録した基準点座標情報D2とに基づいて、デバイス2の位置(空間座標)を算出する。
【0057】
操作受付ステップS4では、ユーザが操作したい機器5にデバイス2を指向させ機器5の操作を指示した場合に、操作指示受付部35が、デバイス2から操作指示を受け付ける。
【0058】
操作対象特定ステップS5では、操作対象特定部36が、機器座標情報D3に基づき、デバイス2が位置算出ステップS3において算出された位置から指向する方向に位置する機器5を特定する。
【0059】
機器制御ステップS6では、機器制御部37が、ユーザのデバイス2への操作に応じて、操作対象特定ステップS5において特定された機器5を制御する。
【0060】
(付記事項)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、基準点の数が3つであったが、基準点を4つ以上設けてもよい。また、デバイスは携帯端末等に限定されず、ジャイロセンサを備えるものであればよい。
【0062】
また、レーザポインタを利用しない場合の人間のポインティング動作には約9°の誤差があると報告されているが(R. Kang, A. Guo, G. Laput, Y. Li, and X. A. Chen、“Minuet: Multimodal Interaction with an Internet of Things”、Symposium on Spatial User Interaction、pp. 2:1‐2:10、2019)、空間の大きさや機器の数に応じて、多少の誤差が許容されるのであれば、デバイス2のレーザポインタ23を省略してもよい。
【実施例0063】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0064】
本実施例では、
図1に示す制御システム1による、デバイス2の位置の算出精度を測定する実験を行った。壁とパーティションによって区切られた4.35m×3.85mの空間を部屋に見立て、壁W1に3つの基準点P1、P2、P3を等間隔に設けた。
図11に示すように、基準点P1、P2、P3の間隔は、x方向に2.175m、y方向に1.925mであった。
【0065】
デバイス2は、基準点P1、P2、P3に順次指向させる間に中心位置が変化しないように、三脚に回転可能に固定した。三脚(デバイス2)を設置する位置を、
図11に示す地点S1~S9の9箇所で順次変えながら、制御システム1によってデバイス2の位置を算出した。角度情報はジャイロセンサ24のアルファ角のみ用いた。デバイス2は、Apple社製iPhone11を用いた。
【0066】
三脚を設置した各地点S1~S9の座標と、制御システム1によって算出された座標との誤差の距離を表1に示す。
【0067】
【0068】
各地点の座標と誤差との間に関連は見られなかった。また精度について、最も誤差が大きかった地点S7における誤差は0.088mであり、平均的な日本人の成人の手が届く範囲を大きく下回っていた。よって、制御システム1によって算出された座標の誤差は、ユーザの姿勢によって生じる誤差に比べ十分に小さく、IoT製品の操作を目的としたデバイスの位置推定手法として十分な精度を持つと考えられる。