(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127478
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 85/165 20060101AFI20220824BHJP
H01H 85/10 20060101ALI20220824BHJP
H01H 85/06 20060101ALI20220824BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01H85/165
H01H85/10
H01H85/06
H01H37/76 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025651
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA09
5G502AA11
5G502AA13
5G502AA15
5G502AA20
5G502BA04
5G502BB01
5G502BB07
5G502BB08
5G502BB17
5G502BC07
5G502BC12
5G502BD03
5G502BE09
5G502BE10
5G502CC12
5G502CC33
5G502EE06
5G502JJ01
(57)【要約】
【課題】ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)する保護素子を提供する。
【解決手段】第1端部21から第2端部22に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメント2と、第1面がヒューズエレメント2に対向配置され、第2面が第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸33に接して配置された板状部を有し、ヒューズエレメント2から見た板状部の面積が、板状部と回転軸33との接触位置で分断されてなる第1面積と第2面積とで異なる遮蔽部材3と、ヒューズエレメント2と遮蔽部材3とが収納される収容部60が内部に設けられたケース6と、が備えられ、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第1面が押圧されて遮蔽部材3が回転軸33中心として回転し、遮蔽部材3によって収容部60内が分断される、保護素子100とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部から第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、
絶縁材料からなり、第1面が前記ヒューズエレメントに対向配置され、第2面が前記第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸に接して配置された板状部を有し、前記ヒューズエレメントから見た前記板状部の面積が、前記板状部と前記回転軸との接触位置で分断されてなる第1面積と第2面積とで異なる遮蔽部材と、
絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントと前記遮蔽部材とが収納される収容部が内部に設けられたケースと、が備えられ、
前記ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電による前記収容部内の圧力上昇によって、前記第1面が押圧されて前記遮蔽部材が前記回転軸を中心として回転し、前記遮蔽部材によって前記収容部内が分断される、保護素子。
【請求項2】
前記収容部の前記ヒューズエレメントとの対向面に、回転された前記遮蔽部材の一部が収容される遮蔽部材収容溝を有する、請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部との間に括れ部を有し、前記括れ部における前記第2方向の断面積が、前記第1端部および前記第2端部の前記第2方向の断面積よりも狭い、請求項1または請求項2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記括れ部における前記第2方向の幅が、前記第1端部および前記第2端部の前記第2方向の幅よりも狭い、請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
前記ヒューズエレメントが、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなる、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項6】
前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、
前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる、請求項5に記載の保護素子。
【請求項7】
前記ヒューズエレメントは、前記第1方向と交差する方向に沿って折り曲げられた屈曲部を有する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項8】
前記遮蔽部材と前記ケースの一方または両方が、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリフタルアミド樹脂から選ばれるいずれか一種の樹脂材料からなる、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項9】
前記樹脂材料が、耐トラッキング指標CTIが600V以上の樹脂材料で形成されている、請求項8に記載の保護素子。
【請求項10】
前記ナイロン系樹脂が、ベンゼン環を含まない樹脂である、請求項8に記載の保護素子。
【請求項11】
前記第1端部が、第1端子と電気的に接続され、前記第2端部が、第2端子と電気的に接続され、
前記第1端子および前記第2端子の一部が前記ケースから露出されている、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項12】
前記板状部の前記第2面に対して、前記遮蔽部材の回転方向に力を加える押圧手段が備えられている、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項13】
前記遮蔽部材が、第1遮蔽部材と、前記第1遮蔽部材と同形の第2遮蔽部材とからなり、
前記第1遮蔽部材と前記第2遮蔽部材とが、前記ヒューズエレメントの前記第1方向中心に対して前記第1方向に対称配置されている、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項14】
前記ヒューズエレメントが、前記第1端部と前記第2端部との間に切断部を有し、
前記第1遮蔽部材と前記第2遮蔽部材とが、前記切断部に対して前記第1方向に対称配置され、
前記第2遮蔽部材が、前記ヒューズエレメントの前記第1遮蔽部材との対向面と反対側の面に対向配置され、
前記第1遮蔽部材の回転方向と、前記第2遮蔽部材の回転方向とが、反対方向である、請求項13に記載の保護素子。
【請求項15】
前記ケースが、第1ケースと、前記第1ケースと同形の第2ケースとからなり、
前記第1ケースと前記第2ケースとが、前記ヒューズエレメントに対して対向配置されている、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項16】
前記ケースの一部がカバーに被覆され、
前記ケースの外面と前記カバーの内面とに囲まれた内圧緩衝空間が設けられ、
前記ケースが、前記ケースを貫通して前記収容部と前記内圧緩衝空間とを連通する通気孔を有し、
前記内圧緩衝空間の体積が、前記ヒューズエレメントの体積以上である、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項17】
前記回転軸が、前記収容部に形成された凹部内の段差からなり、
前記遮蔽部材が、前記板状部の前記第1面における前記第1方向両端のうち、前記回転軸から遠い端辺が前記ヒューズエレメントから遠ざかる方向に回転する、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項18】
前記板状部の前記第1面に、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱部材が設置されている、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の保護素子。
【請求項19】
前記発熱部材が、前記ヒューズエレメントと電気的に接続されたエレメント接続電極を備える、請求項18に記載の保護素子。
【請求項20】
前記発熱部材が、抵抗体からなる発熱部と、前記発熱部の中心を挟んで向かい合う両端部にそれぞれ電気的に接続された給電線電極とを備える、請求項19に記載の保護素子。
【請求項21】
前記発熱部が、絶縁基板上に設けられ、
前記発熱部上に絶縁層が設けられ、
前記エレメント接続電極が、前記絶縁層上の前記発熱部と少なくとも一部が重畳する位置に設けられている、請求項20に記載の保護素子。
【請求項22】
前記発熱部が、絶縁基板上に設けられ、
前記発熱部上に絶縁層が設けられ、
前記エレメント接続電極が、前記絶縁基板の前記発熱部と反対側の面上であって、前記発熱部と少なくとも一部が重畳する位置に設けられている、請求項20に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、例えば、電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヒューズに大きな過電流が流れて可溶体が金属蒸気化し、アーク放電が発生した際の大きい空間の圧力上昇を利用して大きい空間から小さい空間へ向かう方向に遮断部材を移動させ、前記遮断部材によって連結孔を塞ぐヒューズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高電圧用の保護素子において、ヒューズエレメントが溶断されると、アーク放電が生じ得る。アーク放電が発生すると、ヒューズエレメントが広範囲にわたって溶融し、蒸気化した金属が飛散する場合がある。この場合、飛散した金属によって新たな通電経路が形成されたり、飛散した金属が端子などの周囲の電子部品に付着したりするおそれがある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)する保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
【0007】
[1] 第1端部から第2端部に向かう第1方向に通電されるヒューズエレメントと、
絶縁材料からなり、第1面が前記ヒューズエレメントに対向配置され、第2面が前記第1方向と交差する第2方向に延びる回転軸に接して配置された板状部を有し、前記ヒューズエレメントから見た前記板状部の面積が、前記板状部と前記回転軸との接触位置で分断されてなる第1面積と第2面積とで異なる遮蔽部材と、
絶縁材料からなり、前記ヒューズエレメントと前記遮蔽部材とが収納される収容部が内部に設けられたケースと、が備えられ、
前記ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電による前記収容部内の圧力上昇によって、前記第1面が押圧されて前記遮蔽部材が前記回転軸を中心として回転し、前記遮蔽部材によって前記収容部内が分断される、保護素子。
【0008】
[2] 前記収容部の前記ヒューズエレメントとの対向面に、回転された前記遮蔽部材の一部が収容される遮蔽部材収容溝を有する、[1]に記載の保護素子。
【0009】
[3] 前記ヒューズエレメントは、前記第1端部と前記第2端部との間に括れ部を有し、前記括れ部における前記第2方向の断面積が、前記第1端部および前記第2端部の前記第2方向の断面積よりも狭い、[1]または[2]に記載の保護素子。
[4] 前記括れ部における前記第2方向の幅が、前記第1端部および前記第2端部の前記第2方向の幅よりも狭い、[3]に記載の保護素子。
【0010】
[5] 前記ヒューズエレメントが、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなる、[1]~[4]のいずれかに記載の保護素子。
[6] 前記低融点金属は、SnもしくはSnを主成分とする金属からなり、
前記高融点金属は、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる、[5]に記載の保護素子。
[7] 前記ヒューズエレメントは、前記第1方向と交差する方向に沿って折り曲げられた屈曲部を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の保護素子。
【0011】
[8] 前記遮蔽部材と前記ケースの一方または両方が、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリフタルアミド樹脂から選ばれるいずれか一種の樹脂材料からなる、[1]~[7]のいずれかに記載の保護素子。
[9] 前記樹脂材料が、耐トラッキング指標CTIが600V以上の樹脂材料で形成されている、[8]に記載の保護素子。
[10] 前記ナイロン系樹脂が、ベンゼン環を含まない樹脂である、[8]に記載の保護素子。
【0012】
[11] 前記第1端部が、第1端子と電気的に接続され、前記第2端部が、第2端子と電気的に接続され、
前記第1端子および前記第2端子の一部が前記ケースから露出されている、[1]~[10]のいずれかに記載の保護素子。
[12] 前記板状部の前記第2面に対して、前記遮蔽部材の回転方向に力を加える押圧手段が備えられている、[1]~[11]のいずれかに記載の保護素子。
【0013】
[13] 前記遮蔽部材が、第1遮蔽部材と、前記第1遮蔽部材と同形の第2遮蔽部材とからなり、
前記第1遮蔽部材と前記第2遮蔽部材とが、前記ヒューズエレメントの前記第1方向中心に対して前記第1方向に対称配置されている、[1]~[12]のいずれかに記載の保護素子。
[14] 前記ヒューズエレメントが、前記第1端部と前記第2端部との間に切断部を有し、
前記第1遮蔽部材と前記第2遮蔽部材とが、前記切断部に対して前記第1方向に対称配置され、
前記第2遮蔽部材が、前記ヒューズエレメントの前記第1遮蔽部材との対向面と反対側の面に対向配置され、
前記第1遮蔽部材の回転方向と、前記第2遮蔽部材の回転方向とが、反対方向である、[13]に記載の保護素子。
【0014】
[15] 前記ケースが、第1ケースと、前記第1ケースと同形の第2ケースとからなり、
前記第1ケースと前記第2ケースとが、前記ヒューズエレメントに対して対向配置されている、[1]~[14]のいずれかに記載の保護素子。
[16] 前記ケースの一部がカバーに被覆され、
前記ケースの外面と前記カバーの内面とに囲まれた内圧緩衝空間が設けられ、
前記ケースが、前記ケースを貫通して前記収容部と前記内圧緩衝空間とを連通する通気孔を有し、
前記内圧緩衝空間の体積が、前記ヒューズエレメントの体積以上である、[1]~[15]のいずれかに記載の保護素子。
【0015】
[17] 前記回転軸が、前記収容部に形成された凹部内の段差からなり、
前記遮蔽部材が、前記板状部の前記第1面における前記第1方向両端のうち、前記回転軸から遠い端辺が前記ヒューズエレメントから遠ざかる方向に回転する、[1]~[16]のいずれかに記載の保護素子。
【0016】
[18] 前記板状部の前記第1面に、前記ヒューズエレメントを加熱する発熱部材が設置されている、[1]~[17]のいずれかに記載の保護素子。
[19] 前記発熱部材が、前記ヒューズエレメントと電気的に接続されたエレメント接続電極を備える、[18]に記載の保護素子。
[20] 前記発熱部材が、抵抗体からなる発熱部と、前記発熱部の中心を挟んで向かい合う両端部にそれぞれ電気的に接続された給電線電極とを備える、[19]に記載の保護素子。
【0017】
[21] 前記発熱部が、絶縁基板上に設けられ、
前記発熱部上に絶縁層が設けられ、
前記エレメント接続電極が、前記絶縁層上の前記発熱部と少なくとも一部が重畳する位置に設けられている、[20]に記載の保護素子。
[22] 前記発熱部が、絶縁基板上に設けられ、
前記発熱部上に絶縁層が設けられ、
前記エレメント接続電極が、前記絶縁基板の前記発熱部と反対側の面上であって、前記発熱部と少なくとも一部が重畳する位置に設けられている、[20]に記載の保護素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明の保護素子では、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電による収容部内の圧力上昇によって、遮蔽部材の板状部における第1面が押圧される。それによって、ヒューズエレメントの通電方向と交差する方向に延びる回転軸を中心として遮蔽部材が回転し、ヒューズエレメントと遮蔽部材とが収納された収容部内が、遮蔽部材によって分断される。このことにより、切断もしくは溶断されたヒューズエレメントの切断面もしくは溶断面同士が遮蔽部材によって絶縁され、電流経路が遮断される。その結果、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る保護素子100の全体構造を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す保護素子100の全体構造を示した分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る保護素子100を
図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の一部を拡大して示した拡大断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の保護素子100の動作を説明するための図であり、
図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の一部を拡大して示した拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の保護素子100の一部を説明するための拡大図であり、ヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図8(a)は収容部側から見た斜視図であり、
図8(b)はヒューズエレメント側から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図9(a)はヒューズエレメント側から見た平面図であり、
図9(b)は収容部側から見た平面図であり、
図9(c)~(e)は側面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1ケース6aの構造を説明するための図面である。
図10(a)は外側から見た斜視図であり、
図10(b)および
図10(c)は収容部側から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1ケース6aの構造を説明するための図面である。
図11(a)は収容部側から見た平面図であり、
図11(b)は外側から見た平面図であり、
図11(c)~(e)は側面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の保護素子100の製造工程を説明するための図である。
図12(a)は第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6bを、収容部60となる側から見た斜視図であり、
図12(b)は第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6b上に、第1端子61および第2端子62と一体化されたヒューズエレメント2を設置した状態を示した斜視図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の保護素子100の製造工程を説明するための図である。
図13(a)は第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2を介して、第1ケース6aが設置された状態を示した斜視図であり、
図13(b)は第1ケース6aと第2ケース6bとを一体化させた状態で、カバー4に収容した状態を示した斜視図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の保護素子200を説明するための断面図であり、第1実施形態に係る保護素子100を
図1に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の保護素子200の動作を説明するための図であり、
図14に示す断面図に対応する位置の断面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の保護素子200に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図16(a)は収容部側から見た斜視図であり、
図16(b)はヒューズエレメント側から見た斜視図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の保護素子200に備えられた第1ケース6aを収容部側から見た平面図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る保護素子300の全体構造を示した斜視図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る保護素子300を
図18に示すB-B´線に沿って切断した断面図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態の保護素子300の動作を説明するための図であり、
図20に示す断面図に対応する位置の断面図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態の保護素子300に備えられた第1発熱部材51の構造を説明するための図面であり、
図22(a)はX方向から見た断面図であり、
図22(b)はY方向から見た断面図であり、
図22(c)は平面図である。
【
図23】
図23は、発熱部材の他の例を説明するための図面であり、
図23(a)は発熱部材52をX方向から見た断面図であり、
図23(b)は
図23(a)に示す発熱部材52のY方向中央部をY方向から見た断面図である。
図23(c)は発熱部材53をX方向から見た断面図であり、
図23(d)は
図23(c)に示す発熱部材53のY方向中央部をY方向から見た断面図である。
【
図24】
図24は、第3実施形態の保護素子300の一部を説明するための拡大図であり、ヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子と、発熱部材と、給電線と、給電引き出し線とを示した斜視図である。
【
図25】
図25は、第3実施形態の保護素子300に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図25(a)は収容部側から見た斜視図であり、
図25(b)はヒューズエレメント側から見た斜視図である。
【
図26】
図26は、第3実施形態の保護素子300の製造工程を説明するための図である。
図26(a)は第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2と、第1端子61と、第2端子62と、第1発熱部材51、第2発熱部材56、給電線54a、54b、55a、55bと、導電部材54d、55dとが一体化された部材を設置した状態を示した斜視図である。
図26(b)は第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2を介して、第1ケース6aが設置された状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
[第1実施形態]
(保護素子)
図1~
図11は、第1実施形態に係る保護素子を示した模式図である。以下の説明で用いる図面において、Xで示す方向はヒューズエレメントの通電方向(第1方向)である。Yで示す方向はX方向(第1方向)と直交する方向であり、Zで示す方向は、X方向およびY方向に直交する方向である。
【0022】
図1は、第1実施形態に係る保護素子100の全体構造を示した斜視図である。
図2は、
図1に示す保護素子100の全体構造を示した分解斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る保護素子100を
図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図4は、
図3の一部を拡大して示した拡大断面図である。
図5は、第1実施形態の保護素子100の動作を説明するための図であり、
図1に示すA-A´線に沿って切断した断面図である。
図6は、
図5の一部を拡大して示した拡大断面図である。
【0023】
本実施形態の保護素子100は、
図1~
図3に示すように、ヒューズエレメント2と、遮蔽部材3と、ヒューズエレメント2と遮蔽部材3とが収納される収容部60が内部に設けられたケース6と、ケース6のY方向およびZ方向側面を被覆するカバー4とを備えている。
本実施形態の保護素子100は、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、
図5および
図6に示すように、遮蔽部材3が回転軸33を中心として回転し、遮蔽部材3によって収容部60内が分断される。
【0024】
(ヒューズエレメント)
図7は、第1実施形態の保護素子100の一部を説明するための拡大図であり、ヒューズエレメントと、第1端子と、第2端子とを示した斜視図である。
図7に示すように、ヒューズエレメント2は、帯状であり、第1端部21と、第2端部22と、第1端部21と第2端部22との間に設けられた括れ部からなる切断部23とを有している。ヒューズエレメント2は、第1端部21から第2端部22に向かう方向であるX方向(第1方向)に通電される。
図3および
図7に示すように、第1端部21は、第1端子61と電気的に接続されている。第2端部22は、第2端子62と電気的に接続されている。
【0025】
第1端子61と第2端子62とは、
図7に示すように、略同形であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。第1端子61および第2端子62の厚みは、特に限定されるものではないが、目安を言えば、0.3~1.0mmとすることができる。第1端子61の厚みと第2端子62の厚みとは、
図3に示すように、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
図1~
図3、
図7に示すように、第1端子61は、外部端子孔61aを備えている。また、第2端子62は、外部端子孔62aを備えている。外部端子孔61a、外部端子孔62aのうち、一方は電源側に接続するために用いられ、他方は負荷側に接続するために用いられる。外部端子孔61aおよび外部端子孔62aは、
図7に示すように、平面視略円形の貫通孔とすることができる。
【0027】
第1端子61および第2端子62としては、例えば、銅、黄銅、ニッケルなどからなるものを用いることができる。第1端子61および第2端子62の材料として、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。第1端子61と第2端子62とは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
【0028】
第1端子61および第2端子62の形状は、図示しない電源側の端子あるいは負荷側の端子に係合可能な形状であればよく、例えば、一部に開放部分を有するつめ形状であってもよいし、
図7に示すように、ヒューズエレメント2と接続される側の端部に、ヒューズエレメント2に向かって両側に拡幅された鍔部(
図7において符号61c、62cで示す。)を有していてもよく、特に限定されない。第1端子61および第2端子62が鍔部61c、62cを有する場合、ケース6から第1端子61および第2端子62が抜けにくく、信頼性および耐久性の良好な保護素子100となる。
【0029】
図7に示すヒューズエレメント2は、厚み(Z方向の長さ)が略均一とされている。ヒューズエレメント2の厚みは、
図3に示すように、均一であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。厚みが部分的に異なっているヒューズエレメントとしては、例えば、切断部23から第1端部21および第2端部22に向かって徐々に厚みが厚くなっているものなどが挙げられる。このようなヒューズエレメントは、過電流が流れた時に切断部23がヒートスポットとなって、切断部23が優先的に昇温して軟化され、より確実に切断される。
ヒューズエレメント2の厚みは、例えば、0.03~1.0mmとすることができ、好ましくは、0.2~0.5mmとすることができる。
【0030】
図7に示すように、ヒューズエレメント2は、平面視略長方形の形状を有している。
図7に示すように、第1端部21におけるY方向の幅21Dと、第2端部22におけるY方向の幅22Dとは、略同じとされている。したがって、
図7に示すヒューズエレメント2のY方向の幅とは、第1端部21および第2端部22のY方向の幅21D、22Dを意味する。
【0031】
図1、
図3、
図7に示すように、ヒューズエレメント2の第1端部21は、第1端子61と平面視で重ねて配置されている。また、ヒューズエレメント2の第2端部22は、第2端子62と平面視で重ねて配置されている。
図7に示すように、第1端部21におけるX方向の長さは、第1端子61と平面視で重なる領域から切断部23側に延在している。また、
図7に示すように、第2端部22におけるX方向の長さは、第2端子62と平面視で重なる領域から切断部23側に延在している。
図7に示すヒューズエレメント2においては、第2端部22におけるX方向の長さと、第1端部21におけるX方向の長さとが、略同じとなっている。言い換えると、本実施形態では、切断部23が、ヒューズエレメント2のX方向中心に配置されている。
【0032】
図7に示すように、切断部23と第1端部21との間には、平面視略台形の第1連結部25が配置されている。平面視略台形の第1連結部25における平行な辺の長い方が、第1端部21と結合されている。また、切断部23と第2端部22との間には、平面視略台形の第2連結部26が配置されている。平面視略台形の第2連結部26における平行な辺の長い方が、第2端部22と結合されている。第1連結部25と第2連結部26とは、切断部23に対して対称となっている。このことにより、ヒューズエレメント2におけるY方向の幅は、切断部23から第1端部21および第2端部22に向かって徐々に広くなっている。その結果、ヒューズエレメント2に過電流が流れた時に、切断部23がヒートスポットとなって、切断部23が優先的に昇温して軟化され、容易に切断もしくは溶断される。
【0033】
図7に示すように、ヒューズエレメント2の切断部23におけるY方向の幅23Dは、第1端部21および第2端部22のY方向の幅21D、22Dよりも狭い。このことにより、切断部23のY方向の断面積は、ヒューズエレメント2の切断部23以外の領域の断面積よりも狭くなっている。それによって、切断部23は、切断部23と第1端部21との間の領域、および切断部23と第2端部22との間の領域よりも切断もしくは溶断されやすくなっている。
【0034】
本実施形態では、ヒューズエレメント2として、
図7に示すように、第1端部21および第2端部22のY方向の幅21D、22Dよりも、Y方向の幅23Dが狭い括れ部からなる切断部23を有するものを例に挙げて説明したが、ヒューズエレメントは、切断部のY方向の幅が第1端部および第2端部と同じであってもよく、切断部のY方向の幅が第1端部および第2端部よりも狭いものに限定されない。
例えば、
図7に示すヒューズエレメント2に代えて、Y方向の断面積が均一な線状または帯状のヒューズエレメントを設けることも可能である。この場合、ヒューズエレメントの切断部のY方向(第2方向)の断面積は、ヒューズエレメントの切断部以外の領域の断面積と同じである。
【0035】
図3および
図7に示すように、ヒューズエレメント2は、帯状部材がY方向に沿って略直角に2回折り曲げられた第1屈曲部24aおよび第2屈曲部24bからなる2つの屈曲部を有する。第1屈曲部24aは、第1端部21と第1端子61とが平面視で重なる領域の縁部に沿って、第1端子61の端面を覆うように形成された段差である。第2屈曲部24bは、第2端部22と第2端子62とが平面視で重なる領域の縁部に沿って、第2端子62の端面を覆うように形成された段差である。第1屈曲部24aおよび第2屈曲部24bは、X方向に延在するヒューズエレメント2の熱による膨張収縮に伴う応力を緩和し、ヒューズエレメント2の耐久性を向上させる。
【0036】
本実施形態では、
図3に示すように、第1屈曲部24aおよび第2屈曲部24bを有することにより、第1端子61の第1端部21が積層されていない側の面と、第2端子62の第2端部22が積層されていない側の面と、ヒューズエレメント2の中央部における一方の面(
図3における下側の面)とが略同一平面上に配置されている。
【0037】
本実施形態では、屈曲部として、
図7に示すように、帯状部材がY方向に沿って折り曲げられた第1屈曲部24aおよび第2屈曲部24bを例に挙げて説明したが、屈曲部を形成している帯状素材が折り曲げられている方向は、X方向と交差する方向であればよく、Y方向に限定されるものではない。
また、本実施形態では、屈曲部として、帯状部材が略直角に2回折り曲げられた第1屈曲部24aおよび第2屈曲部24bを例に挙げて説明したが、屈曲部を形成している帯状素材が折り曲げられている角度および回数は特に限定されない。
【0038】
また、本実施形態では、ヒューズエレメント2の第1端部21側に第1屈曲部24aが設けられ、第2端部22側に第2屈曲部24bが設けられている場合を例に挙げて説明したが、ヒューズエレメントに設けられている屈曲部の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよいし、ヒューズエレメントに屈曲部が設けられていなくてもよい。
【0039】
ヒューズエレメント2の材料としては、合金を含む金属材料など、公知のヒューズエレメントに用いられる材料を用いることができる。具体的には、ヒューズエレメント2の材料として、Pb85%/Sn、Sn/Ag3%/Cu0.5%などの合金を例示できる。
【0040】
ヒューズエレメント2は、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなるものであることが好ましい。このようなヒューズエレメント2は、ヒューズエレメント2に第1端子61および第2端子62をハンダ付けする場合に、ハンダ付け性が良好であり、好ましい。
ヒューズエレメント2が、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなるものである場合、低融点金属の体積が高融点金属の体積よりも多い方が、ヒューズエレメント2の電流遮断特性上好ましい。
【0041】
ヒューズエレメント2の材料として使用される低融点金属としては、SnもしくはSnを主成分とする金属を用いることが好ましい。Snの融点は232℃であるため、Snを主成分とする金属は低融点であり、低温で柔らかくなる。例えば、Sn/Ag3%/Cu0.5%合金の固相線は217℃である。
【0042】
ヒューズエレメント2の材料として使用される高融点金属としては、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属を用いることが好ましい。例えば、Agの融点は962℃であるため、Agを主成分とする金属からなる層は、低融点金属からなる層が柔らかくなる温度では剛性が維持される。
また、Agを主成分とする金属を外層として形成した場合、ヒューズエレメント2の抵抗値を効率良く低下させることができ、保護素子としての定格電流を高く設定できるため、好ましい。
【0043】
ヒューズエレメント2が、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなるものであって、第1端部21および第2端部22のY方向の幅21D、22DよりもY方向の幅23Dが狭い括れ部からなる切断部23を有する場合、切断部23のY方向の側面には、外層が形成されていてもよいし、外層が形成されていなくてもよい。
【0044】
本実施形態の保護素子100におけるヒューズエレメント2は、溶融温度が600℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましい。溶融温度が600℃以下であると、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電がより一層小規模となる。
ヒューズエレメント2は、1枚のみ使用してもよいし、必要に応じて複数枚積層して使用してもよい。本実施形態では、ヒューズエレメント2として、2枚積層したものを使用する場合を例に挙げて説明するが、1枚のみ使用してもよいし、3枚以上積層したものを使用してもよい。
【0045】
ヒューズエレメント2は、公知の方法により製造できる。
例えば、ヒューズエレメント2が、低融点金属からなる内層と、高融点金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなり、括れ部からなる切断部23のY方向の側面に、外層が形成されていないものである場合、以下に示す方法により製造できる。まず、低融点金属からなる金属箔を用意する。次に、金属箔の表面全面に、めっき法を用いて高融点金属層を形成し、積層板とする。その後、積層板を切断して括れ部からなる切断部23を有する所定の形状とする。以上の工程により、3層構造の積層体からなるヒューズエレメント2が得られる。
【0046】
ヒューズエレメント2として、上記積層体からなり、括れ部からなる切断部23を有し、切断部23のY方向の側面に、外層が形成されているものを製造する場合、例えば、以下に示す方法により製造できる。すなわち、低融点金属からなる金属箔を用意し、金属箔を切断して所定の形状とする。次に、金属箔の表面全面に、めっき法を用いて高融点金属層を形成し、積層板とする。以上の工程により、3層構造の積層体からなるヒューズエレメント2が得られる。
【0047】
(遮蔽部材)
遮蔽部材3は、
図1~
図6に示すように、第1遮蔽部材3aと、第1遮蔽部材3aと同形の第2遮蔽部材3bとからなる。本実施形態では、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとが同形であるので、同じ材料を用いて製造することにより、製造する部品の種類を少なくすることができ、好ましい。第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとは、異なる材料で形成されたものであってもよい。
本実施形態では、遮蔽部材3として、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bの2つを有する場合を例に挙げて説明するが、遮蔽部材3は、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bのうち、いずれか一方のみであってもよい。
【0048】
本実施形態では、遮蔽部材3として、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bの2つを有するため、ヒューズエレメント2の溶断時における収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転する。そして、第1遮蔽部材3aによって収容部60内が分断されるとともに、第2遮蔽部材3bによって収容部60内が分断される。このため、遮蔽部材3が、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bの2つを有する場合、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bのうち、いずれか一方のみである場合と比較して、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、より迅速且つ確実に消滅(消弧)される。
【0049】
本実施形態では、
図3および
図4に示すように、第2遮蔽部材3bは、第1遮蔽部材3aと、A-A‘断面のヒューズエレメント2のX方向中心を軸として点対象の位置に配置されている。すなわち、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとが、ヒューズエレメント2のX方向中心に対してX方向に対称配置されている。したがって、本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の溶断時における収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとが同時に回転しても互いに干渉せず、互いの回転移動に支障を来すことがない。したがって、収容部60内のX方向の2カ所で、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとによって、収容部60内がより確実に分断される。また、回転移動する前の第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bを、ヒューズエレメント2とともに、収容部60内の所定の位置に安定して配置できるため、信頼性に優れる保護素子100となる。
【0050】
しかも、本実施形態では、ヒューズエレメント2が、第1端部21と第2端部22との間に切断部23を有し、
図5および
図6に示すように、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転することにより、切断部23を挟む収容部60内のX方向の近接した2カ所で、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとによって収容部60内が分断される。その結果、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、より迅速且つ確実に消滅(消弧)される。
【0051】
本実施形態では、
図8および
図9を用いて、第1遮蔽部材3aの構造について説明する。第2遮蔽部材3bの構造については、第1遮蔽部材3aと同じであるので、説明を省略する。
図8は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図8(a)は収容部側から見た斜視図であり、
図8(b)はヒューズエレメント側から見た斜視図である。
図9は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図9(a)はヒューズエレメント側から見た平面図であり、
図9(b)は収容部側から見た平面図であり、
図9(c)~(e)は側面図である。
【0052】
図1~
図9に示すように、第1遮蔽部材3aは、板状部30を有する。板状部30は、平面視略矩形であり、
図4に示すように、ヒューズエレメント2に対向配置される第1面31と、ケース6の収容部60に対向配置される第2面32とを有する。
板状部30の第1面31は、ヒューズエレメント2と近接または接して配置され、
図3および
図4に示すように、ヒューズエレメント2と接して配置されていることが好ましく、第1面31の全面がヒューズエレメント2と接して配置されていることがより好ましい。第1面31とヒューズエレメント2とが接して配置されていると、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電がより一層小規模となる。
【0053】
板状部30の第2面32は、
図3および
図4に示すように、Y方向に延びる回転軸33に接して配置されている。本実施形態では、
図3および
図4に示すように、回転軸33は、ケース6の収容部60に形成された凹部68内の段差からなる。
【0054】
本実施形態では、
図4に示すように、
図8(b)および
図9に示す第1遮蔽部材3aの板状部30の第1面31におけるX方向両端のうち、回転軸33に近い第1端辺31aが収容部60のX方向内側に配置され、回転軸33に遠い第2端辺31bが収容部60のX方向外側に配置されている。
図6に示すように、第1端辺31aは、第1遮蔽部材3aが回転することにより、収容部60の内面に設けられた遮蔽部材収容溝34の底面上に押し付けられる。また、第2端辺31bは、第1遮蔽部材3aが回転することにより凹部68内に収容される。
【0055】
本実施形態では、
図4に示すように、
図8(a)および
図9に示す第1遮蔽部材3aの板状部30の第2面32におけるX方向両端のうち、回転軸33に近い第1端辺32aが収容部60のX方向内側に配置され、回転軸33に遠い第2端部に配置された第2端面32bが収容部60のX方向外側に配置されている。
【0056】
第1遮蔽部材3aは、
図9(a)に示すように、ヒューズエレメント2から見た板状部30の面積が、板状部30と回転軸33との接触位置33aで分断されてなる第1面積30aと第2面積30bとで異なる。本実施形態では、
図9(a)に示すように、回転軸33に近い第1端辺31a側に配置された第1面積30aが、回転軸33に遠い第2端辺31b側に配置された第2面積30bよりも狭い面積となっている。
【0057】
第1遮蔽部材3aは、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、
図5および
図6に示すように、第1面31が押圧されて回転軸33を中心として回転する。本実施形態では、収容部60内の圧力上昇による第1面31への押圧力は、
図9(a)に示す第1面積30aと第2面積30bのうち、面積の広い第2面積30bへの力が、面積の狭い第1面積30aへの力よりも相対的に強くなる。したがって、第1面31における第2端辺31b側への押圧力が、第1端辺31a側への押圧力よりも強くなる。このため、第1遮蔽部材3aは、
図6に示すように、収容部60のX方向外側に配置された第2端辺31b側がヒューズエレメント2から離れる方向(ヒューズエレメント2から遠ざかる方向)であって、収容部60のX方向内側に配置された第1端辺31a側がヒューズエレメント2に近づく方向に回転する。
【0058】
図8(a)および
図9に示すように、第2面32の第2端面32bにおけるY方向中心部には、凸部38が立設されている。凸部38は、四角柱状である。凸部38の側面のうち1つの面は、板状部30のX方向側面と連続した平面とされている。
凸部38は、
図5および
図6に示すように、ヒューズエレメント2の溶断時に、ガイド孔66に収容され、所定の位置に第1遮蔽部材3aを回転移動させるガイドとして機能する。したがって、第1遮蔽部材3aが凸部38を有することにより、ヒューズエレメント2の溶断時に、第1遮蔽部材3aが所定の位置に回転移動しやすいものなる。その結果、第1遮蔽部材3aが回転することによって、収容部60内がより確実に分断される。
本実施形態では、凸部38が第2面32の第2端面32bにおけるY方向中心部に配置されているので、ヒューズエレメント2の溶断時に回転移動する第1遮蔽部材3aの位置ずれが、より効果的に防止される。
【0059】
本実施形態では、
図8(a)および
図9に示すように、第2面32の第2端面32bが、凸部38のX方向の寸法に対応する幅で面取りされた傾斜面とされている。このため、
図6に示すように、第2面32の第2端面32bが、後述する凹部68の第2底面68dに当接されることによって、第1遮蔽部材3aの回転移動に伴う凸部38のガイド孔66への進入が妨げられることがない。したがって、ヒューズエレメント2の溶断時に、第1遮蔽部材3aが所定の位置に回転移動しやすいものとなる。また、第1遮蔽部材3aの回転移動に伴う凸部38と第2底面68dとの接触を避けるために、凹部68を深くする必要がないため、保護素子100を小型化できる。さらに、凹部68を深くする必要がないため、ケース6の厚みを確保でき、ケース6の強度を確保できる。
【0060】
凸部38の大きさは、
図3および
図4に示すように、第1遮蔽部材3aが回転する前の状態で、収容部60内に形成された凹部68に収容可能であって、
図5および
図6に示すように、第1遮蔽部材3aが回転したときに、凹部68内に形成されたガイド孔66に収容可能な寸法とされている。本実施形態においては、凸部38のX方向の寸法および第2面32から凸部38の頂部までの長さが、板状部30の厚さと略同じとされ、凸部38のY方向の寸法がX方向の寸法よりも長いものとされている。
【0061】
本実施形態では、凸部38として、上記の四角柱状のものが設けられている場合を例に挙げて説明したが、凸部の形状は、上記の四角柱状に限定されるものではなく、例えば、正四角柱状であってもよいし、Y方向の寸法がX方向の寸法よりも短くてもよい。また、凸部の形状は、例えば、円形状、長円形状、楕円形状、三角形状、六角形状などの断面形状を有する柱状のものであってもよい。
また、本実施形態では、凸部38が第2面32のY方向中心部に配置されている場合を例に挙げて説明したが、第2面32上における凸部のY方向の位置は、中心部でなくてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、遮蔽部材が凸部を有する場合を例に挙げて説明したが、凸部は、遮蔽部材が所定の位置に回転移動されやすくなるように、必要に応じて設けられるものであり、設けられていなくてもよい。遮蔽部材が凸部を有さない場合でも、凹部68内には、ヒューズエレメント2の溶断時にアーク放電によって発生した収容部60内の気体を内圧緩衝空間71に排出するために、ガイド孔66が設けられていることが好ましい。
【0063】
第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bは、絶縁材料からなる。絶縁材料としては、セラミックス材料、樹脂材料などを用いることができる。
セラミックス材料としては、アルミナ、ムライト、ジルコニアなどを例示でき、アルミナなどの熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bがセラミックス材料などの熱伝導率の高い材料で形成されている場合、ヒューズエレメント2の切断時に発生した熱を効率よく外部に放熱できる。したがって、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続がより効果的に抑制される。
【0064】
樹脂材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ナイロン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリフタルアミド(PPA)樹脂から選ばれるいずれか一種を用いることが好ましく、特にナイロン系樹脂を用いることが好ましい。
【0065】
ナイロン系樹脂としては、脂肪族ポリアミドを用いてもよいし、半芳香族ポリアミドを用いてもよい。ナイロン系樹脂としてベンゼン環を含まない脂肪族ポリアミドを用いた場合、ベンゼン環を有する半芳香族ポリアミドを用いた場合と比較して、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電によって第1遮蔽部材3aおよび/または第2遮蔽部材3bが燃焼しても、グラファイトが生成しにくい。このため、脂肪族ポリアミドを用いて第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bを形成することで、ヒューズエレメント2の溶断時に発生したグラファイトによって、新たな電通経路が形成されることを防止できる。
【0066】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66などを用いることができる。
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6T、ナイロン9Tなどを用いることができる。
【0067】
これらのナイロン系樹脂の中でも、脂肪族ポリアミドであるナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66などのベンゼン環を含まない樹脂を用いることが好ましく、耐熱性に優れるため、ナイロン46またはナイロン66を用いることがより好ましい。
例えば、保護素子100における遮蔽部材3、ケース6およびカバー4が、脂肪族ポリアミドであるナイロン66からなる場合、ベンゼン環を有する半芳香族ポリアミドであるナイロン9Tからなる場合と比較して、電流遮断後の絶縁抵抗が10倍~10000倍となる。
【0068】
樹脂材料としては、耐トラッキング指標CTIが、400V以上であるものを用いることが好ましく、600V以上のものを用いることがより好ましい。耐トラッキング性は、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
ナイロン系樹脂は、樹脂材料の中でも特に、耐トラッキング性(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が高く、好ましい。
【0069】
樹脂材料としては、ガラス転移温度の高いものを用いることが好ましい。樹脂材料のガラス転移温度(Tg)とは、軟質のゴム状態から硬質のガラス状態になる温度をいう。樹脂をガラス転移温度以上に加熱すると、分子が運動しやすくなり、軟質のゴム状態になる。一方、樹脂が冷えていくと、分子の運動が制限されて、硬質のガラス状態になる。
第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bは、公知の方法により製造できる。
【0070】
(ケース)
ケース6は、
図1~
図3に示すように、略円柱状である。ケース6は、第1ケース6aと、第2ケース6bとからなり、ヒューズエレメント2に対して対向配置されている。第1ケース6aと第2ケース6bとの間には、第1端子61および第2端子62の一部が挟持され、カバー4によって固定されている。
図1~
図3に示すように、第1ケース6aと第2ケース6bは、同形であり、略半円柱状である。本実施形態では、第1ケース6aと第2ケース6bとが同形であるので、同じ材料を用いて製造することにより、製造する部品の種類を少なくすることができ、好ましい。第1ケース6aと第2ケース6bとは、異なる材料で形成されたものであってもよい。
【0071】
本実施形態では、第1ケース6aと第2ケース6bとが同形であり、ヒューズエレメント2を介して対向配置されているので、ヒューズエレメント2の溶断時における収容部60内の圧力上昇による応力が、第1ケース6aと第2ケース6bとに均等に分散されて負荷される。よって、ケース6は、優れた強度を有し、ヒューズエレメント2の溶断時における保護素子100の破壊を効果的に防止できる。
【0072】
図1~
図3に示すように、ケース6の内部には、収容部60が設けられている。収容部60は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより形成されている。収容部60には、ヒューズエレメント2と、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bとが収納されている。
【0073】
収容部60内には、
図3に示すように、収容部60に開口する2つの挿入孔64がX方向に対向配置されている。2つの挿入孔64は、第2ケース6bと第1ケース6aとが一体化されることによって、それぞれ形成されている。
図3に示すように、2つの挿入孔64のうち一方には、ヒューズエレメント2の第1端部21が収容され、もう一方の挿入孔64には、ヒューズエレメント2の第2端部22が収容されている。
図1および
図3に示すように、ヒューズエレメント2に接続された第1端子61および第2端子62の一部が、ケース6の外部に露出されている。
【0074】
本実施形態では、
図10および
図11を用いて、第1ケース6aの構造について説明する。第2ケース6bの構造については、第1ケース6aと同じであるので、説明を省略する。
図10は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1ケース6aの構造を説明するための図面である。
図10(a)は外側から見た斜視図であり、
図10(b)および
図10(c)は収容部側から見た斜視図である。
図11は、第1実施形態の保護素子100に備えられた第1ケース6aの構造を説明するための図面である。
図11(a)は収容部側から見た平面図であり、
図11(b)は外側から見た平面図であり、
図11(c)~(e)は側面図である。
【0075】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aは、平面視でX方向を長辺とし、Y方向を短辺とする略長方形であり、X方向中心部のY方向の長さが短い形状を有している。
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aにおいて、第2ケース6bと一体化されることにより収容部60の内面とされる領域には、凹部68と、遮蔽部材収容溝34と、ヒューズエレメント載置面65とが設けられている。
【0076】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、凹部68は、平面視略矩形である。凹部68には、
図4に示すように、第1遮蔽部材3a(第2ケース6bの場合には第2遮蔽部材3b)が収容されている。本実施形態では、
図4、
図10(c)、
図11(a)に示すように、凹部68の内壁面のうち、第1ケース6aのX方向内側に配置された第1壁面68aが、第1ケース6aのX方向略中心に配置されている。したがって、第1壁面68aは、ヒューズエレメント2の切断部23と、Z方向に重なり合って配置されている(
図4参照)。
【0077】
図4に示すように、凹部68の底面は、第1遮蔽部材3a(第2ケース6bの場合には第2遮蔽部材3b)の板状部30における第2面32との対向面である。凹部68の底面は、
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1壁面68a側に配置された第1底面68cと、第1壁面68aと対向する第2壁面68b側に配置された第2底面68dとを有する。第1底面68cは、第2底面68dよりもZ方向においてヒューズエレメント2との対向面に近い位置に設けられている。このことにより、
図4および
図10(c)に示すように、第1底面68cと第2底面68dとの境界部分には、Y方向に延在する段差が形成されている。本実施形態においては、
図4および
図10(c)に示すように、第1ケース6aの凹部68内に形成されている段差が、第1遮蔽部材3aの回転軸33(第2ケース6bの場合には第2遮蔽部材3bの回転軸33)として機能する。
【0078】
図4および
図10(c)に示すように、第1ケース6aの凹部68内に形成されている段差(回転軸33)のX方向の位置は、第2壁面68bよりも第1壁面68aに近い位置とされている。これにより、
図9(a)に示すように、第1遮蔽部材3a(第2ケース6bの場合には第2遮蔽部材3b)のヒューズエレメント2から見た板状部30の面積のうち、板状部30と回転軸33との接触位置33aより回転軸33に近い第1端辺31a側に配置された第1面積30aが、回転軸33に遠い第2端辺31b側に配置された第2面積30bよりも狭い面積となっている。
本実施形態では、凹部68のX方向長さに対する第1底面68cのX方向長さの割合(第1底面68c/凹部68のX方向長さ)は、板状部30の面積と第1面積30aとの割合(第1面積30a/板状部30の面積)と略同じであり、0.5未満であり、0.2~0.49であることが好ましく、0.3~0.4であることがより好ましい。
【0079】
凹部68のX方向長さに対する第1底面68cのX方向長さの割合が、0.4以下であると、第1面積30aと第2面積30bとの差が十分に大きくなる。このことにより、収容部60内の圧力上昇による第1遮蔽部材3aの板状部30の第1面31への押圧力についても、第2端辺31b側と、第1端辺31a側との差が大きくなる。このため、収容部60内の圧力上昇による押圧力が、第1遮蔽部材3aを回転移動させる駆動力に効率よく変換される。その結果、第1遮蔽部材3aは、
図6に示すように、収容部60のX方向外側に配置された第2端辺31b側がヒューズエレメント2から離れる方向であって、収容部60のX方向内側に配置された第1端辺31a側がヒューズエレメント2に近づく方向に、十分な回転速度で回転する。そして、第1端辺31aが、収容部60の内面に設けられた遮蔽部材収容溝34の底面上に、強い力で押し付けられる。このことから、凹部68のX方向長さに対する第1底面68cのX方向長さの割合が、0.4以下であると、収容部60内が、板状部30の第1面31の第1端辺31aと、第2面32の回転軸33に接している部分と、板状部30の側面とによって、より確実に塞がれて分断される。
【0080】
凹部68のX方向長さに対する第1底面68cのX方向長さの割合が、0.3以上であると、第1底面68cの面積を十分に確保できる。このため、第1底面68cによって、回転移動する前の第1遮蔽部材3aを、第1ケース6a内の所定の位置により一層安定して保持できる。その結果、より信頼性に優れる保護素子100となる。
【0081】
本実施形態では、凹部68の第1壁面68a側に第1底面68cが配置され、第2壁面68b側に第2底面68dが配置されている場合を例に挙げて説明したが、凹部68の第1壁面68a側に第2底面68dが配置され、第2壁面68b側に第1底面68cが配置されていてもよい。この場合、第1ケース6aの凹部68内に形成されている段差(回転軸33)のX方向の位置は、第1壁面68aよりも第2壁面68bに近い位置となる。したがって、第1遮蔽部材3aの板状部30の第1面31におけるX方向両端のうち、回転軸33に近い第1端辺31aが収容部60のX方向外側に配置され、回転軸33に遠い第2端辺31bが収容部60のX方向内側に配置される。そして、第1遮蔽部材3aの回転方向が、本実施形態の保護素子100と反対方向となる。
【0082】
本実施形態では、凹部68の第1壁面68a側に第1底面68cが配置され、第2壁面68b側に第2底面68dが配置されているので、第1壁面68a側に第2底面68dが配置され、第2壁面68b側に第1底面68cが配置されている場合と比較して、収容部60内において、第1遮蔽部材3aによって塞がれるX方向の位置と、第2遮蔽部材3bによって塞がれるX方向の位置とが、近接するとともに、切断部23(ヒートスポット)に近くなる。このため、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電がより一層小規模となりやすく、好ましい。
【0083】
本実施形態では、凹部68のY方向の長さは、第1遮蔽部材3aの板状部30が凹部68の内壁面に接触しつつ凹部68内に嵌る形状であることが好ましい。この場合、ヒューズエレメント2の溶断時における収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aが回転可能である。しかも、第1遮蔽部材3aが回転することにより、収容部60内が、板状部30の第1面31の第1端辺31aと、第2面32の回転軸33に接している部分と、板状部30の側面とによって、より確実に塞がれて分断される。さらに、回転移動する前の第1遮蔽部材3aを、第1ケース6a内の所定の位置により一層安定して保持できる。具体的には、凹部68のY方向に対向する内壁面と板状部30との離間距離は、例えば、0.05~0.2mmとすることが好ましく、0.05~0.1mmとすることがより好ましい。
【0084】
図11(a)に示すように、凹部68の第2底面68dには、1つのガイド孔66と、2つの底面通気孔69とが設けられている。
図11(a)および
図11(b)に示すように、1つのガイド孔66および2つの底面通気孔69は、第1ケース6aをZ方向に貫通し、第2底面68dと第1ケース6aの外面とに開口している。
【0085】
ガイド孔66は、ヒューズエレメント2の溶断時に、アーク放電によって発生した収容部60内の気体を内圧緩衝空間71に排出する。ガイド孔66は、第1遮蔽部材3aの凸部38とともに、ヒューズエレメント2の溶断時に、所定の位置に第1遮蔽部材3aを回転移動させるガイドとしても機能する。ガイド孔66は、第1遮蔽部材3aが回転したときに、第1遮蔽部材3aの凸部38が、収容可能な寸法とされている。
【0086】
ガイド孔66は、平面視略矩形である。ガイド孔66のX方向外側の内壁面は、
図4、
図10(b)、
図11(b)に示すように、第2壁面68bよりもX方向外側の位置に配置され、
図4、
図10(b)に示すように、第2底面68dよりもヒューズエレメント2との対向面に近い位置にまで延在して形成されている。このため、ヒューズエレメント2の溶断時に第1遮蔽部材3aが回転移動して、ガイド孔66に凸部38が収容されても、ガイド孔66が遮蔽部材3によって閉塞されることがない。したがって、アーク放電によって発生した収容部60内の気体を確実に内圧緩衝空間71に排出できる。また、
図6に示すように、第1遮蔽部材3aが回転することにより、板状部30の第1面31の第2端辺31bが、ガイド孔66の内壁面に沿って、凹部68内に収容されやすい。しかも、第1ケース6aが第2壁面68bを有しているため、第1ケース6aは、回転移動する前の第1遮蔽部材3aを、第2壁面68bに沿って所定の位置に精度よく、より一層安定して保持できる。
【0087】
底面通気孔69は、略円筒形である。底面通気孔69は、ヒューズエレメント2の溶断時における凹部68内の圧力上昇を抑制して、アーク放電を抑制する。
本実施形態では、略円筒形の底面通気孔69が設けられている場合を例に挙げて説明したが、通気孔の形状は、略円筒形に限定されるものではなく、例えば、長円筒状、楕円筒状、多角形筒状などであってもよい。
2つの底面通気孔69は、
図11(a)に示すように、Y方向中心に対して対称に配置されている。このため、ヒューズエレメント2の溶断時に、収容部60内の気体が、2つの底面通気孔69を介して、収容部60の外に均等かつ速やかに排出されやすく、好ましい。
【0088】
本実施形態では、底面通気孔69が2つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、底面通気孔の数は、特に限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよく、底面通気孔69が設けられていなくてもよい。底面通気孔69が設けられていない場合、ガイド孔66および/または後述する側面通気口77を有することが好ましい。
【0089】
図3、
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aの収容部60側の面において、X方向略中心に対して平面視で凹部68と反対側には、遮蔽部材収容溝34が設けられている。遮蔽部材収容溝34は、平面視略矩形であり、底面の平坦な溝からなる。遮蔽部材収容溝34には、
図5および
図6に示すように、第1遮蔽部材3aが回転することにより、板状部30の一部が収容される。本実施形態では、遮蔽部材収容溝34のY方向の長さが、第1遮蔽部材3aのY方向の長さよりも長くなっている。このため、第1遮蔽部材3aが回転することにより、板状部30の第1面31における第1端辺31aの全てが、遮蔽部材収容溝34の底面上に接して配置される。
【0090】
本実施形態では、
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、遮蔽部材収容溝34のY方向に対向する縁部の外側は、第2ケース6bと接合される接合面70とされている。このため、第1ケース6aと第2ケース6bとを接合した状態で第1遮蔽部材3aが回転することにより、収容部60内が、板状部30の第1面31の第1端辺31aと、第2面32の回転軸33に接している部分と、板状部30の側面とによって、より確実に塞がれて分断される。
【0091】
遮蔽部材収容溝34の深さは、ヒューズエレメント2の厚みの0.5~2倍とすることが好ましく、0.5~1倍とすることがより好ましい。遮蔽部材収容溝34の深さが、ヒューズエレメント2の厚みの0.5倍以上であると、第1遮蔽部材3aが回転することにより、収容部60内をより確実に分断できる。また、遮蔽部材収容溝34の深さが、ヒューズエレメント2の厚みの2倍以下であると、遮蔽部材収容溝34のストッパーとしての機能により、第1遮蔽部材3aの回転移動する範囲が適正となる。このため、第1遮蔽部材3aの回転移動に伴う第1遮蔽部材3aと凹部68との接触を避けるために、凹部68の大きさを過剰に大きくして、保護素子100の小型化に支障を来すことがない。
【0092】
また、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電の継続を効果的に抑制するためには、ヒューズエレメント2の表面と収容部60の内壁とのZ方向の距離が近いことが好ましい。
図4に示すように、ヒューズエレメント2の表面とヒューズエレメント載置面65の底面とのZ方向の距離は、ヒューズエレメント2の表面と遮蔽部材収容溝34の底面とのZ方向の距離よりも近い。したがって、遮蔽部材収容溝34のX方向の長さを短くして、ヒューズエレメント2の表面のうち、ヒューズエレメント載置面65と対向する領域を多くすることが好ましい。
【0093】
遮蔽部材収容溝34の深さがヒューズエレメント2の厚みの2倍以下であると、遮蔽部材収容溝34のX方向の長さが短くても、第1遮蔽部材3aを過剰に回転移動させることなく、板状部30の第1面31における第1端辺31aを、遮蔽部材収容溝34の底面上に接して配置できる。したがって、ヒューズエレメント2の表面のうち、ヒューズエレメント載置面65と対向する領域の割合を多くでき、ヒューズエレメント2の切断時に発生するアーク放電を抑制できる。
【0094】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aの収容部60側の面において、遮蔽部材収容溝34の平面視でX方向外側には、凹部からなるヒューズエレメント載置面65が設けられている。ヒューズエレメント載置面65と、遮蔽部材収容溝34との境界部分、およびヒューズエレメント載置面65と、第2ケース6bと接合される接合面70との境界部分には、段差が形成されている。本実施形態においては、ヒューズエレメント載置面65を形成している凹部の深さは、ヒューズエレメント2の厚み寸法以下であることが好ましく、例えば、ヒューズエレメント2の厚みの半分の寸法することができる。
【0095】
ヒューズエレメント載置面65の底面は、ヒューズエレメント2と近接または接して配置され、
図4に示すように、ヒューズエレメント2と接して配置されていることが好ましい。ヒューズエレメント載置面65の底面とヒューズエレメント2とが接して配置されていると、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電がより一層小規模となる。
【0096】
本実施形態では、第1ケース6a(第2ケース6b)のヒューズエレメント載置面65の底面と、ヒューズエレメント2を介して対向配置された第2遮蔽部材3b(第1遮蔽部材3a)との間のZ方向の距離は、ヒューズエレメント2の厚みの10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましく、ヒューズエレメント2と、第1ケース6a(第2ケース6b)のヒューズエレメント載置面65の底面、および/または第2遮蔽部材3b(第1遮蔽部材3a)とが接していることが特に好ましい。上記のZ方向の距離が、ヒューズエレメント2の厚みの10倍以下であると、アーク放電により発生する電気力線の本数が少なくなり、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が小規模となる。また、上記のZ方向の距離が短いため、保護素子100を小型化できる。
【0097】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、ヒューズエレメント載置面65の底面におけるX方向外側の位置には、Y方向に延在するリーク防止溝35が設けられている。リーク防止溝35は、ヒューズエレメント2の溶断時に、溶融したヒューズエレメント2が飛散して、収容部60内に飛散物が付着した場合に、付着物によって形成される電通経路を分断して、リーク電流を防止する。
【0098】
リーク防止溝35のY方向の長さは、ヒューズエレメント2の第1端部21におけるY方向の幅21Dおよび第2端部22におけるY方向の幅22Dよりも長いことが好ましい。この場合、ヒューズエレメント2の溶断時に収容部60内に付着した飛散物が、第1端子61または第2端子62と電気的に接続されることをより効果的に防止でき、リーク電流の発生をより効果的に防止できる。
リーク防止溝35は、略一定の幅および深さで形成されている。リーク防止溝35の幅および深さは、リーク防止溝35によって、ヒューズエレメント2の溶断時に飛散した付着物によって形成される電通経路を分断し、リーク電流を防止できればよく、特に限定されない。
【0099】
本実施形態の保護素子100においては、リーク防止溝35が設けられていることが好ましいが、リーク防止溝35はなくてもよい。また、リーク防止溝35は、ヒューズエレメント載置面65の底面におけるX方向外側の位置にY方向に延在して設けられていることが好ましいが、ヒューズエレメント載置面65の底面上の他の位置であってもよいし、Y方向に延在していなくてもよい。
【0100】
図10(a)~
図10(c)、
図11(a)に示すように、凹部68のY方向に対向する縁部であって、X方向の位置が第2底面68dの形成されている範囲内である部分には、それぞれ凹部からなる側面凹部77aが設けられている。
図10(b)および
図10(c)に示すように、凹部68の縁部に配置された側面凹部77aと、第2ケース6bと接合される接合面70との境界部分には、段差が形成されている。
【0101】
図10(a)~
図10(c)、
図11(a)に示すように、ヒューズエレメント載置面65のY方向に対向する縁部であって、X方向の位置がリーク防止溝35よりも中心側である部分には、それぞれヒューズエレメント載置面65の底面から連続した平面からなる側面凹部77aが設けられている。
図10(b)および
図10(c)に示すように、ヒューズエレメント載置面65の縁部に配置された側面凹部77aと、第2ケース6bと接合される接合面70との境界部分には、段差が形成されている。
【0102】
第1ケース6aの凹部68の縁部に設けられている4つの側面凹部77aはそれぞれ、第2ケース6bと一体化されることにより、第2ケース6bに設けられている4つの側面凹部77aとともに、ケース6を貫通する4つの側面通気口77を形成する(
図1参照)。側面通気口77は、ヒューズエレメント2の溶断時における収容部60内の圧力上昇を抑制して、アーク放電を抑制する。
【0103】
本実施形態においては、凹部68の縁部に配置された2つの側面凹部77a、およびヒューズエレメント載置面65の縁部に配置された2つの側面凹部77aは、いずれも深さがヒューズエレメント2の厚みの半分の寸法とされている。また、凹部68の縁部に配置された2つの側面凹部77aと、ヒューズエレメント載置面65の縁部に配置された2つの側面凹部77aとは、同形であり、収容部60のX方向中心に対して対称に配置されている。このため、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより形成される4つの側面通気口77が、ヒューズエレメント2の溶断時に発生した収容部60内の気体を、収容部60の外に均等かつ速やかに排出されやすい位置に配置され、好ましい。
【0104】
本実施形態では、側面凹部77aの深さが、ヒューズエレメント2の厚みの半分の寸法である場合を例に挙げて説明したが、側面凹部77aの深さは、特に限定されない。また、本実施形態では、4つの側面凹部77aが同形である場合を例に挙げて説明したが、4つの側面凹部77aのうち、一部または全部が異なる形状であってもよい。
【0105】
本実施形態では、側面通気口77が4つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、側面通気口の数は、特に限定されるものではなく、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよく、側面通気口が設けられていなくてもよい。側面通気口77が設けられていない場合、ガイド孔66および/または底面通気孔69を有することが好ましい。
【0106】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aの収容部60側の面において、凹部68およびヒューズエレメント載置面65の平面視でX方向外側には、それぞれ凹部からなる挿入孔形成面64aが設けられている。各挿入孔形成面64aと、第2ケース6bと接合される接合面70との境界部分には、段差が形成されている。挿入孔形成面64aと接合面70との段差は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、第1端子61(または第2端子62)とヒューズエレメント2との積層部分を収容できる挿入孔64を形成可能な寸法とされている。
【0107】
挿入孔形成面64aのY方向の長さは、ヒューズエレメント2の第1端部21におけるY方向の幅21Dおよび第2端部22におけるY方向の幅22Dよりも長い。このため、ヒューズエレメント2の第1端部21および第2端部22の幅21D、22D方向全面が、挿入孔形成面64a上に配置されるようになっている。
【0108】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、2つの挿入孔形成面64aのX方向外側と、挿入孔形成面64aのY方向外側の一部を平面視で囲むように、それぞれ凹部からなる端子載置面64bが設けられている。端子載置面64bは、第1端子61および第2端子62の平面形状に対応する外形形状とされている。このことにより、第1ケース6aと、第1端子61および第2端子62とを容易に位置合わせできる。また、ケース6から第1端子61および第2端子62が抜けにくいものとなる。
【0109】
図10(b)および
図10(c)に示すように、端子載置面64bは、挿入孔形成面64aの表面よりもZ方向において、第2ケース6bと接合される接合面70に近い位置に設けられている。このことにより、端子載置面64bと挿入孔形成面64aとの境界部分には、段差が形成されている。また、端子載置面64bと、第2ケース6bと接合される接合面70との境界部分にも、段差が形成されている。端子載置面64bと接合面70との段差は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、第1端子61(または第2端子62)を収容可能な寸法とされている。
【0110】
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、2つの端子載置面64bのX方向外側の縁部におけるY方向中心部には、それぞれ略半円状の底面を有する凹部からなる切り欠き78aが形成されている。切り欠き78aはそれぞれ、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、X方向から見て略円柱状を有する第1接着剤注入口78(
図1および
図3参照)とされる。
【0111】
図10(a)~
図10(c)、
図11(a)~
図11(d)に示すように、第1ケース6aの第2ケース6bと接合される接合面70において、第1ケース6aの平面視四隅の位置には、それぞれ切り欠き76aが形成されている。切り欠き76aはそれぞれ、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、X方向から見て断面視半円形の柱状形状を有する中空の第2接着剤注入口76(
図1参照)とされる。
【0112】
図10(b)および
図10(c)に示すように、第1ケース6aの第2ケース6bと接合される接合面70に形成された4つの切り欠き76aのうち、凹部68側に形成された2つの切り欠き76aと、端子載置面64bとの間には、それぞれ平面視略円形の勘合凹部63が形成されている。
また、
図10(b)、
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aの第2ケース6bと接合される接合面70に形成された4つの切り欠き76aのうち、ヒューズエレメント載置面65側に形成された2つの切り欠き76aと、端子載置面64bとの間には、それぞれ平面視略円形の勘合凸部67が形成されている。各勘合凹部63は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、各勘合凸部67と嵌合される。
【0113】
図10(a)、
図11(b)、
図11(e)に示すように、第1ケース6aの外面には、第2ケース6bと接合される接合面70と反対側の面に形成された第1緩衝用凹部73が設けられている。また、
図10(a)~
図10(c)、
図11(a)に示すように、第1ケース6aのY方向両側面には、それぞれ第2凹部74が設けられている。第2凹部74は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、第2緩衝用凹部75(
図1参照)とされる。また、
図10(a)~
図10(c)、
図11(b)~
図11(e)に示すように、第1ケース6aの外面のX方向両端部にはそれぞれ、半円柱状の外形を有する端部材72が設けられている。端部材72は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより、円柱状の形状とされる。
【0114】
第1緩衝用凹部73および第2凹部74(第2緩衝用凹部75)は、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されてなるケース6の外面と、カバー4の内面とに囲まれた内圧緩衝空間71を形成している。内圧緩衝空間71は、カバー4のX方向中心部に、カバー4の内面に沿って円環状に設けられている。
本実施形態では、ヒューズエレメント2の溶断時における内圧緩衝空間71内の圧力上昇による応力に耐えうるように、端部材72におけるX方向の長さ(厚み)が十分に確保されている。具体的には、端部材72におけるX方向の長さは、例えば、カバー4の厚みの1~3倍とすることが好ましい。
【0115】
図11(a)および
図11(b)に示すように、第1緩衝用凹部73内には、第1ケース6aを貫通して収容部60と内圧緩衝空間71とを連通するガイド孔66および2つの底面通気孔69が開口している。また、
図1に示すように、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されてなる2つの第2緩衝用凹部75内には、それぞれ、第1ケース6aに設けられた側面凹部77aと、第2ケース6bに設けられた側面凹部77aとが一体化されることにより形成され、ケース6を貫通して収容部60と内圧緩衝空間71とを連通する2つの側面通気口77が開口している。
【0116】
内圧緩衝空間71には、ヒューズエレメント2の溶断時に発生した収容部60内の気体が、側面通気口77、ガイド孔66、底面通気孔69を介して収容部60内より流入される。このことにより、ヒューズエレメント2の溶断時における収容部60内の圧力上昇が抑制され、アーク放電が抑制される。内圧緩衝空間71の体積は、収容部60内の圧力上昇を効果的に抑制できるため、ヒューズエレメント2の体積以上であることが好ましく、ヒューズエレメント2の体積の100倍以上であることがより好ましく、ヒューズエレメント2の体積の1000倍以上であることがさらに好ましい。
【0117】
第1ケース6aおよび第2ケース6bは、絶縁材料からなる。絶縁材料としては、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bに使用できるものと同様のものを用いることができる。第1ケース6aおよび第2ケース6bと、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bとは、同じ材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。
第1ケース6aおよび第2ケース6bは、公知の方法により製造できる。
【0118】
(カバー)
カバー4は、
図1に示すように、ケース6のX方向に沿う側面を被覆するとともに、第1ケース6aと第2ケース6bとを固定する。カバー4は、
図1および
図3に示すように、第1端41から第1端子61の一部を露出させ、第2端42から第2端子62の一部を露出させている。
カバー4は、
図2に示すように、略均一な厚みの円筒形状を有し、
図3に示すように、第1ケース6aの端部材72と第2ケース6bの端部材72とが一体化された略円柱状の形状に対応する内径を有する。
図2および
図3に示すように、カバー4の開口部における内側の縁部は、面取りされた傾斜面4aとされている。
本実施形態では、ケース6の外面とカバー4の内面とによって、収容部60と内圧緩衝空間71とからなる空間領域が密閉されている。
【0119】
本実施形態では、カバー4が、円筒形である。このため、ヒューズエレメント2の溶断時におけるカバー4への圧力は、カバー4のX方向中心部にカバー4の内面に沿って円環状に設けられている内圧緩衝空間71と、カバー4のX方向縁部にカバー4の内面に沿って収容されている端部材72とを介して、カバー4の内面全面に略均等に分散されて負荷される。その結果、カバー4は、優れた強度を発揮し、ヒューズエレメント2の溶断時における保護素子100の破壊を効果的に防止する。また、カバー4は、円筒形であるため、容易に製造でき、生産性に優れる。
【0120】
カバー4は、絶縁材料からなる。絶縁材料としては、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3b、第1ケース6aおよび第2ケース6bに使用できるものと同様のものを用いることができる。カバー4と、第1ケース6aおよび第2ケース6bと、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bは、全て異なる材料からなるものであってもよいし、一部または全部が同じ材料からなるものであってもよい。
カバー4は、公知の方法により製造できる。
【0121】
(保護素子の製造方法)
次に、本実施形態の保護素子100の製造方法について、説明する。
本実施形態の保護素子100を製造するには、まず、ヒューズエレメント2と、第1端子61および第2端子62とを用意する。そして、
図7に示すように、ヒューズエレメント2の第1端部21上に第1端子61をハンダ付けすることにより接続する。また、第2端部22上に第2端子62をハンダ付けすることにより接続する。
【0122】
本実施形態においてハンダ付けに使用されるハンダ材料としては、公知のものを用いることができ、抵抗率と融点及び環境対応鉛フリーの観点からSnを主成分とするものを用いることが好ましい。
ヒューズエレメント2の第1端部21と第2端部22、および第1端子61と第2端子62とは、溶接による接合によって接続されていてもよく、公知の接合方法を用いることができる。
【0123】
次に、
図8および
図9に示す第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bと、
図10および
図11に示す第1ケース6aおよび第2ケース6bとを用意する。
そして、第1ケース6aの凹部68内に、第1遮蔽部材3aを設置する。このとき、
図4に示すように、第1遮蔽部材3aの板状部30における第2面32を、第1ケース6aの凹部68内に形成されている段差(回転軸33)に接して配置する。また、第2ケース6bの凹部68内に、第2遮蔽部材3bを設置する。このとき、
図4に示すように、第2遮蔽部材3bの板状部30における第2面32を、第2ケース6bの凹部68内に形成されている段差(回転軸33)に接して配置する。
図12(a)は、第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6bを、収容部60となる側から見た斜視図である。
【0124】
次に、
図12(b)に示すように、第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2と、第1端子61および第2端子62とが一体化された部材を設置する。本実施形態では、2つの端子載置面64bにそれぞれ第1端子61と第2端子62を載置することにより、第2ケース6bに対して、ヒューズエレメント2、第1端子61、第2端子62が位置合わせされる。
【0125】
本実施形態では、
図12(b)に示すように、第1端子61および第2端子62と、ヒューズエレメント2の第1端部21と第2端部22との接続部分における第1端子61および第2端子62側の面を、第2ケース6bに向けて設置する場合を例に挙げて説明するが、ヒューズエレメント2側の面を、第2ケース6bに向けて設置してもよい。
【0126】
次に、第1遮蔽部材3aの設置された第1ケース6aを、ヒューズエレメント2と、第1端子61および第2端子62とが一体化された部材と、第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6b上に設置する。このとき、第1ケース6aの有する勘合凹部63と、第2ケース6bの有する勘合凸部67とを嵌合させ、第1ケース6aの有する勘合凸部67と、第2ケース6bの有する勘合凹部63とを嵌合させる。このことにより、第1ケース6aと第2ケース6bとが位置合わせされる。
図13(a)は、第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2を介して、第1ケース6aが設置された状態を示した斜視図である。
【0127】
図13(a)に示すように、第2ケース6b上に第1ケース6aが設置されることにより、第2緩衝用凹部75、側面通気口77、第1接着剤注入口78、第2接着剤注入口76が形成される。また、
図3に示すように、一方の挿入孔64にヒューズエレメント2の第1端部21が収容され、もう一方の挿入孔64にヒューズエレメント2の第2端部22が収容され、ヒューズエレメント2に接続された第1端子61および第2端子62の一部が、ケース6の外部に露出された状態となる。
【0128】
次に、
図13(b)に示すように、第1ケース6aと第2ケース6bとを一体化させた状態で、カバー4に収容する。このことにより、ケース6のX方向に沿う側面を形成している端部材72と、第1緩衝用凹部73と、第2緩衝用凹部75とがカバー4によって被覆されるとともに、第1ケース6aと第2ケース6bとが固定される。
その後、カバー4の傾斜面4a、第1接着剤注入口78、第2接着剤注入口76に、それぞれ接着剤を注入する。接着剤としては、例えば、熱硬化性樹脂を含む接着剤を用いることができる。このことにより、カバー4内が密閉され、
図1および
図3に示すように、収容部60と内圧緩衝空間71とからなる空間領域が、ケース6の外面とカバー4の内面とによって密閉される。
以上の工程により、本実施形態の保護素子100が得られる。
【0129】
(保護素子の動作)
次に、本実施形態の保護素子100のヒューズエレメント2に、定格電流を越えた電流が流れた場合における保護素子100の動作について説明する。
本実施形態の保護素子100のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると、ヒューズエレメント2は、過電流による発熱によって昇温する。そして、ヒューズエレメント2の切断部23が、昇温により溶融すると、溶断もしくは切断される。このとき、切断部23の切断面もしくは溶断面同士の間にスパークが発生し、アーク放電が発生する。
【0130】
本実施形態の保護素子100では、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bのヒューズエレメント2から見た板状部30の面積のうち、回転軸33に近い第1端辺31a側に配置された第1面積30aが、回転軸33に遠い第2端辺31b側に配置された第2面積30bよりも狭い面積となっている。このため、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの有する板状部30における第1面31が押圧されると、
図5および
図6に示すように、第1遮蔽部材3aが回転軸33を中心として回転するとともに、第2遮蔽部材3bが回転軸33を中心として回転する。
【0131】
本実施形態では、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bは、
図6に示すように、収容部60のX方向外側に配置された第2端辺31b側がヒューズエレメント2から離れる方向であって、収容部60のX方向内側に配置された第1端辺31a側がヒューズエレメント2に近づく方向に回転する。そして、第1端辺31aが、収容部60の内面に設けられた遮蔽部材収容溝34の底面上に押し付けられる。また、第2端辺31bが、凹部68内に収容される。
【0132】
以上説明したように、本実施形態の保護素子100は、X方向に通電されるヒューズエレメント2と、絶縁材料からなり、第1面31がヒューズエレメント2に対向配置され、第2面32がY方向に延びる回転軸33に接して配置された板状部30を有し、ヒューズエレメント2から見た板状部30の面積が、板状部30と回転軸33との接触位置33aで分断されてなる第1面積30aと第2面積30bとで異なる第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bと、絶縁材料からなり、ヒューズエレメント2と第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bとが収納される収容部60が内部に設けられたケース6と、が備えられている。
【0133】
そして、本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの第1面31が押圧される。それによって、
図5および
図6に示すように、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転軸33を中心としてそれぞれ回転する。その結果、収容部60内は、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bによって、X方向の2カ所で塞がれて分断される。
【0134】
このとき、本実施形態では、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとに挟まれた空間が形成される。この空間は、遮蔽部材収容溝34の底面と、凹部68と、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bがそれぞれ有する板状部30の第1面31の第1端辺31aと、第2面32の回転軸33に接している部分と、板状部30の側面とによって囲まれている。
【0135】
したがって、本実施形態では、収容部60内が、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bによって分断されることにより、切断もしくは溶断されたヒューズエレメント2の溶断面もしくは切断面同士が絶縁されるとともに、収容部60に開口する2つの挿入孔64間が分離され、電流経路が遮断される。その結果、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【0136】
すなわち、本実施形態の保護素子100においては、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が小規模となる。したがって、本実施形態の保護素子100では、収容部60内の圧力上昇によって、収容部60が破壊されることを防止でき、安全性に優れる。
本実施形態の保護素子100は、例えば、100V以上の高電圧かつ100A以上の大電流の電流経路に好ましく設置でき、400V以上の高電圧かつ120A以上の大電流の電流経路にも設置できる。
【0137】
また、本実施形態の保護素子100は、絶縁材料からなり、X方向に通電されるヒューズエレメント2と電気的に接続された第1端子61および第2端子62の一部を露出させて、ヒューズエレメント2を収納するケース6と、筒状形状を有する絶縁材料からなり、ケース6のX方向に沿う側面を被覆し、第1端41から第1端子61の一部を露出させ、第2端42から第2端子62の一部を露出させるカバー4とを有する。したがって、本実施形態の保護素子100では、ヒューズエレメント2の溶断時におけるケース6内の圧力上昇による応力が、ケース6と、ケース6のX方向に沿う側面を被覆するカバー4とに負荷される。このため、例えば、カバー4を有さない場合と比較して、ケース6内の圧力上昇に対して優れた強度が得られる。よって、本実施形態の保護素子100は、ヒューズエレメント2の溶断時に破壊しにくく、優れた安全性を有する。
【0138】
本実施形態の保護素子100においては、ヒューズエレメント2が、SnもしくはSnを主成分とする金属からなる内層と、AgもしくはCu、またはAgもしくはCuを主成分とする金属からなる外層とが厚み方向に積層された積層体からなり、遮蔽部材3、ケース6およびカバー4が樹脂材料で形成されていることが、より好ましい。このような保護素子では、以下に示す理由により、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電がより一層小規模になるとともに、より一層の小型化が可能である。
【0139】
すなわち、ヒューズエレメント2が上記積層体からなる場合、ヒューズエレメント2の溶断温度は、例えば、300~400℃と低くなる。したがって、遮蔽部材3、ケース6およびカバー4が樹脂材料であっても、十分な耐熱性が得られる。また、ヒューズエレメント2の溶断温度が低いため、遮蔽部材3および/または収容部60の内面と、ヒューズエレメント2の切断部23とを接して配置しても、ヒューズエレメント2が短時間で溶断温度に達する。したがって、ヒューズエレメント2の機能に支障を来すことなく、遮蔽部材3および/または収容部60の内面と、ヒューズエレメント2との間のZ方向の距離を、十分に短くできる。
【0140】
しかも、このような保護素子では、ヒューズエレメント2の溶断に伴う熱によって、遮蔽部材3、ケース6およびカバー4を形成している樹脂材料が分解して熱分解ガスが発生し、その気化熱によって収容部60内が冷却される(樹脂によるアブレーション効果)。その結果、アーク放電がより一層小規模となる。これらのことから、ヒューズエレメント2が上記積層体からなり、遮蔽部材3、ケース6およびカバー4が樹脂材料で形成されている保護素子では、遮蔽部材3および/または収容部60の内面と、ヒューズエレメント2との間のZ方向の距離を短くして、より一層アーク放電を小規模にできるとともに、より一層の小型化が可能である。
【0141】
ヒューズエレメント2の溶断に伴う熱によるアブレーション効果が得られやすい樹脂材料としては、ナイロン46、ナイロン66、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。遮蔽部材3、ケース6およびカバー4を形成している樹脂材料としては、耐熱性および難燃性の観点から、ナイロン46またはナイロン66を用いることが好ましい。
【0142】
樹脂によるアブレーション効果は、収容部60の内面を形成している凹部68、遮蔽部材収容溝34、ヒューズエレメント載置面65のY方向の距離、および遮蔽部材3の第1面31のY方向の距離が、ヒューズエレメント2のY方向の長さ(幅21D、22D)の1.5倍以上である場合に、より効果的に得られる。これは、遮蔽部材3および/または収容部60の内面と、ヒューズエレメント2の切断部23とを接して配置した場合であっても、遮蔽部材3の表面積および/または収容部60内の表面積が十分に広いものとなり、ヒューズエレメント2の溶断に伴う熱による樹脂材料の分解が促進されるためであると推定される。
【0143】
これに対し、例えば、ヒューズエレメントがCuからなり、ケースがセラミックス材料からなる保護素子では、以下に示す理由により、小型化しにくい場合がある。
すなわち、ヒューズエレメントがCuからなる場合、ヒューズエレメントの溶断温度は、1000℃以上の高温となる。このため、ケースの材料として樹脂材料を用いると、ケースの耐熱性が不足する可能性がある。したがって、ケースの材料としては、耐熱性に優れる材料であるセラミックス材料が用いられる。
【0144】
この保護素子では、ヒューズエレメントの溶断温度が高いものであり、ケースの材料としてセラミックス材料を用いているので、ヒューズエレメントの切断部とケースの内面との距離を近くすると、切断部で発生した熱がケースを介して放熱されて、ヒューズエレメントが溶断温度に達しにくくなる。このため、切断部とケースの内面との間に十分な距離を確保する必要がある。よって、ヒューズエレメントがCuからなり、ケースがセラミックス材料からなる保護素子では、ケース内に広い収容部を設けなければならない。
【0145】
しかも、切断部とケースの内面との間に十分な距離を確保すると、アーク放電により発生する電気力線の本数が多くなるため、ヒューズエレメントの溶断時に発生するアーク放電が大規模なものとなる。このことから、アーク放電を迅速に消滅(消弧)させるために、ケース内の収容部に消弧剤を入れる必要が生じる場合がある。ケース内に消弧剤を入れる場合には、ケース内に消弧剤を収容するスペースを確保する必要がある。このため、ケース内により一層広い収容部を設けなければならなくなり、より一層小型化しにくくなる場合がある。
【0146】
[第2実施形態]
(保護素子)
図14は、第2実施形態の保護素子200を説明するための断面図であり、第1実施形態に係る保護素子100を
図1に示すA-A´線に沿って切断した位置に対応する断面図である。
図15は、第2実施形態の保護素子200の動作を説明するための図であり、
図14に示す断面図に対応する位置の断面図である。
図16は、第2実施形態の保護素子200に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図16(a)は収容部側から見た斜視図であり、
図16(b)はヒューズエレメント側から見た斜視図である。
図17は、第2実施形態の保護素子200に備えられた第1ケース6aを収容部側から見た平面図である。
【0147】
第2実施形態に係る保護素子200において、上述した第1実施形態に係る保護素子100と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図14に示す第2実施形態に係る保護素子200が、第1実施形態に係る保護素子100と異なるところは、2つのバネ81と、第1ケース6aおよび第2ケース6bにそれぞれ設けられたバネガイド穴82と、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bにそれぞれ設けられたバネ受け溝83(
図16参照)とが備えられているところである。
【0148】
図14において、第1遮蔽部材3aに接して配置されているバネ81は、第1遮蔽部材3aの有する板状部30の第2面32に対して、第1遮蔽部材3aの回転方向に力を加える押圧手段である。また、第2遮蔽部材3bに接して配置されているバネ81は、第2遮蔽部材3bの有する板状部30の第2面32に対して、第2遮蔽部材3bの回転方向に力を加える押圧手段である。
【0149】
本実施形態においては、押圧手段として、バネ81を用いる場合を例に挙げて説明したが、押圧手段としては、板状部30の第2面32に対して遮蔽部材の回転方向に力を加えることができればよく、弾性力を付与できる公知の手段を用いることができ、バネに限定されない。
【0150】
図14に示すように、第1遮蔽部材3aの回転方向に力を加えるバネ81は、第1ケース6aに設けられたバネガイド穴82内に、縮められた状態で収容されている。第2遮蔽部材3bの回転方向に力を加えるバネ81は、第2ケース6bに設けられたバネガイド穴82内に、縮められた状態で収容されている。
【0151】
バネガイド穴82は、平面視略円形であり、第1ケース6aおよび第2ケース6bの有する凹部68の第1底面68cにおけるY方向中心部に、それぞれ設けられている(
図17参照)。バネガイド穴82は、縮められた状態のバネ81の長さに対応する深さを有する。バネガイド穴82は、バネ81をバネガイド穴82の内壁面に沿って伸縮させて、バネ81をZ方向に高精度で伸縮させる。
【0152】
第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの有する板状部30の第2面32には、それぞれバネ81の伸縮方向端部が当接されるバネ受け溝83が設けられている(
図16(a)および
図16(b)参照)。バネ受け溝83は、半円とその直径を一辺とする矩形とを結合した平面形状を有する凹部であり、第2面32のX方向端辺32aにおけるY方向中心部に設けられている。
【0153】
バネ受け溝83の底面は、平坦面であってもよいし、第1遮蔽部材3aまたは第2遮蔽部材3bのX方向中心部に向かって徐々に深さが深くなっている傾斜面であってもよいし、平坦面と、平坦面と連続して形成された上記傾斜面とを有するものであってもよい。バネ受け溝83の底面が、上記傾斜面を有する場合、平坦面である場合と比較して、回転移動している第1遮蔽部材3aまたは第2遮蔽部材3bにおけるバネ受け溝83の底面が、Z方向に垂直な面に近くなる。このため、回転移動している第1遮蔽部材3aまたは第2遮蔽部材3bにおける板状部30の第2面32に対して、バネ81の復元力に起因するZ方向の押圧力を、より確実かつ十分に加えることができ、好ましい。
【0154】
(保護素子の動作)
次に、第2実施形態に係る保護素子200におけるヒューズエレメント2に、定格電流を越えた電流が流れた場合における保護素子200の動作について説明する。
本実施形態の保護素子200のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると、第1実施形態に係る保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2が溶断され、アーク放電が発生する。
【0155】
本実施形態の保護素子200では、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第1実施形態に係る保護素子100と同様に、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの有する板状部30における第1面31が押圧される。それとともに、本実施形態の保護素子200では、
図15に示すように、縮められていたバネ81の復元力によって板状部30の第2面32が押圧され、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの回転方向に力が加えられる。それにより、本実施形態の保護素子200では、第1実施形態に係る保護素子100よりも強い回転力で、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転軸33を中心として回転する。そして、第1実施形態に係る保護素子100と同様に、第1端辺31aが、収容部60の内面に設けられた遮蔽部材収容溝34の底面上に押し付けられる。また、第2端辺31bが、凹部68内に収容される。
【0156】
本実施形態の保護素子200では、第1実施形態に係る保護素子100と同様に、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの第1面31が押圧される。それとともに、本実施形態の保護素子200では、バネ81によって板状部30の第2面32が押圧され、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの回転方向に力が加えられる。それらの相乗効果によって、
図15に示すように、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転軸33を中心としてそれぞれ回転する。その結果、収容部60内は、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bによって、X方向の2カ所でより確実に塞がれて分断される。したがって、本実施形態の保護素子200では、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、より迅速に消滅(消弧)される。
【0157】
本実施形態の保護素子200においては、バネ81が2つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、バネ81はいずれか1つのみ設けられていてもよい。
また、本実施形態の保護素子200においては、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bに対して回転方向に力を加えるバネ81が1つずつ設けられ、1つのバネガイド穴82が凹部68の第1底面68cにおけるY方向中心部に設けられ、1つのバネ受け溝83が第2面32のY方向中心部に設けられている場合を例に挙げて説明したが、バネ81の数、バネガイド穴82およびバネ受け溝83の位置は、上記の例に限定されるものではない。例えば、第1遮蔽部材3aおよび/または第2遮蔽部材3bに対して回転方向に力を加えるバネが2つずつ設けられ、2つのバネガイド穴およびバネ受け溝が、Y方向中心に対して対称配置されていてもよい。この場合、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bにはそれぞれ、2つのバネから回転方向に力が加えられる。
【0158】
[第3実施形態]
(保護素子)
図18は、第3実施形態に係る保護素子300の全体構造を示した斜視図である。
図19は、
図18に示す保護素子300の全体構造を示した分解斜視図である。
図20は、第3実施形態に係る保護素子300を
図18に示すB-B´線に沿って切断した断面図である。
図21は、第3実施形態の保護素子300の動作を説明するための図であり、
図20に示す断面図に対応する位置の断面図である。
【0159】
第3実施形態に係る保護素子300において、上述した第2実施形態に係る保護素子200と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図18に示す第3実施形態に係る保護素子300が、第2実施形態に係る保護素子200と異なるところは、
図19に示すように、2つの発熱部材5と、給電線54a、54b、55a、55bと、給電引き出し線54、55とが設けられ、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bにそれぞれ発熱部材収容凹部36が設けられ、第1ケース6aおよび第2ケース6bにそれぞれ給電引き出し線54、55の設置される切り欠き76bが設けられ、カバー4に引出線用溝4bが設けられているところである。
【0160】
本実施形態では、
図20に示すように、第1発熱部材51と第2発熱部材56の2つの発熱部材5が設けられている場合を例に挙げて説明するが、2つの発熱部材5のうち、いずれか一方のみ設けられていてもよい。
【0161】
図20に示すように、第1発熱部材51は、第1遮蔽部材3aの板状部30の第1面31に設置されている。また、第2発熱部材56は、第2遮蔽部材3bの板状部30の第1面31に設置されている。
図20に示すように、第1発熱部材51および第2発熱部材56は、ヒューズエレメント2の切断部23に近接する位置に、それぞれ対向配置されている。かつ、第1発熱部材51と第2発熱部材56は、切断部23に対して、X方向に対称に配置されている。このため、第1発熱部材51および第2発熱部材56によって、効率よくヒューズエレメント2の切断部23が加熱される。
【0162】
次に、
図22を用いて、第1発熱部材51の構造について説明する。第2発熱部材56の構造については、第1発熱部材51と同じであるので、説明を省略する。
図22は、第3実施形態の保護素子300に備えられた第1発熱部材51の構造を説明するための図面であり、
図22(a)はX方向から見た断面図であり、
図22(b)はY方向から見た断面図であり、
図22(c)は平面図である。
【0163】
図22(a)~
図22(c)に示すように、第1発熱部材51は、板状部材である。第1発熱部材51のX方向の幅は、第1遮蔽部材3aのX方向の幅以下とされる。また、第1発熱部材51のY方向の幅は、ヒューズエレメント2のY方向の幅より広いことが好ましい。
本実施形態では、第1発熱部材51が板状部材である場合を例に挙げて説明したが、発熱部材は板状部材に限定されるものではなく、例えば、ミアンダパターン(蛇行パターン)状の配線であってもよい。
【0164】
第1発熱部材51は、絶縁基板51aと、発熱部51bと、絶縁層51cと、エレメント接続電極51dと、給電線電極51e、51fとを有する。第1発熱部材51は、ヒューズエレメント2の切断部23を加熱して軟化させる機能を有する。第1発熱部材51は、保護素子300の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電されて発熱する。また、ヒューズエレメント2が切断された後に給電線54a、54b、55a、55bが溶断すると、第1発熱部材51への給電が遮断され、第1発熱部材51の発熱が停止する。
【0165】
絶縁基板51aは、
図22(a)~
図22(c)に示すように、Y方向を長辺の延在方向とする平面視略長方形を有する。
絶縁基板51aとしては、公知の絶縁性を有する基板を用いることができ、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどからなるものが挙げられる。
【0166】
図22(a)~
図22(c)に示すように、発熱部51bは、絶縁基板51aのヒューズエレメント2と対向する表面(
図22(a)~
図22(c)における下面)上に形成されている。
図22(c)に示すように、発熱部51bは、平面視略長方形の絶縁基板51aの一方の長辺縁部に沿って、Y方向に延在して帯状に設けられている。発熱部51bのX方向およびY方向の幅は、ヒューズエレメント2の切断部23を効率よく加熱できるように、切断部23のX方向およびY方向の幅に応じて適宜決定される。発熱部51bは、給電線54a、54bを介して通電されることにより発熱する導電性材料からなる抵抗体であることが好ましい。発熱部51bの材料としては、例えば、ニクロム、W、Mo、Ruなどの金属を含む材料が挙げられる。
【0167】
図22(a)~
図22(c)に示すように、給電線電極51e、51fは、絶縁基板51aのY方向端部に設けられ、一部が発熱部51bの中心を挟んで向かい合う両端部51g、51gとそれぞれ平面視で重なる位置に設けられている。給電線電極51e、51fは、発熱部51bの両端部51g、51gとそれぞれ電気的に接続されている。給電線電極51e、51fは、公知の電極材料で形成できる。
【0168】
給電線電極51eは、給電線55a(
図19参照)を介して給電引き出し線55と電気的に接続されている。給電線電極51fは、給電線54a(
図19参照)を介して給電引き出し線54と電気的に接続されている。
給電線電極51e、51fは、保護素子300の通電経路となる外部回路に異常が発生し、通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって発熱部51bに通電するためのものである。
【0169】
図22(a)~
図22(c)に示すように、絶縁層51cは、発熱部51b上に設けられている。絶縁層51cは、発熱部51bと、発熱部51bと給電線電極51e、51fとの接続部とを覆うように、絶縁基板51aのY方向中央部に設けられている。絶縁層51cは、絶縁基板51aのY方向端部には設けられていない。このことにより、給電線電極51e、51fの一部は、絶縁層51cに被覆されておらず、露出されている。
絶縁層51cは、発熱部51bを保護し、発熱部51bの発熱した熱を効率よくヒューズエレメント2に伝えるとともに、発熱部51bとエレメント接続電極51dとの絶縁を図る。絶縁層51cは、ガラスなどの公知の絶縁材料で形成できる。
【0170】
図22(a)~
図22(c)に示すように、エレメント接続電極51dは、絶縁層51cを介して、発熱部51bと少なくとも一部が重畳する位置に設けられている。エレメント接続電極51dは、公知の電極材料で形成できる。エレメント接続電極51dは、ヒューズエレメント2と電気的に接続されている。
【0171】
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51では、平面視略長方形の絶縁基板51aの一方の長辺縁部に沿って、発熱部51bと、絶縁層51cと、エレメント接続電極51dと、給電線電極51e、51fとが設けられているが、これらは絶縁基板51aの両方の長辺縁部に沿って設けられていてもよい。この場合、例えば、第1発熱部材51と給電線54a、55aとを電気的に接続する際に、給電線電極51e、51fの設けられていない端部と、給電線電極51e、51fとを間違えることによる歩留まりの低下を防止できる。
【0172】
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51は、エレメント接続電極51d側の面をヒューズエレメント2と対向させて配置される。したがって、発熱部51bとヒューズエレメント2との間には、絶縁基板51aが配置されない。このため、発熱部51bとヒューズエレメント2との間に、絶縁基板51aが配置されている場合と比較して、発熱部51bで発生した熱が、効率よくヒューズエレメント2に伝えられる。
【0173】
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51は、例えば、以下に示す方法により製造できる。まず、絶縁基板51aを用意する。また、発熱部51bとなる材料と樹脂バインダとを含むペースト状の組成物を作製する。その後、絶縁基板51a上に、上記の組成物をスクリーン印刷して所定のパターンを形成し、焼成する。このことにより、発熱部51bが形成される。
【0174】
次に、給電線電極51e、51fを公知の方法により形成し、発熱部51bの両端部51g、51gとそれぞれ電気的に接続する。次に、絶縁層51cを公知の方法により形成し、絶縁層51cによって発熱部51bを覆うとともに、発熱部51bと給電線電極51e、51fとの接続部を覆う。
その後、絶縁層51c上に、公知の方法により、エレメント接続電極51dを形成する。
以上の工程により、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51が得られる。
【0175】
図23は、発熱部材の他の例を説明するための図面であり、
図23(a)は発熱部材52をX方向から見た断面図であり、
図23(b)は
図23(a)に示す発熱部材52のY方向中央部をY方向から見た断面図である。
図23(c)は発熱部材53をX方向から見た断面図であり、
図23(d)は
図23(c)に示す発熱部材53のY方向中央部をY方向から見た断面図である。
【0176】
本実施形態の保護素子300においては、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51(および/または第2発熱部材56)に代えて、
図23(a)および
図23(b)に示す発熱部材52が備えられていてもよい。
図23(a)および
図23(b)に示す発熱部材52において、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図23(a)および
図23に示す発熱部材52における各部材の平面配置は、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51の各部材の平面配置と同じである。
【0177】
図23(a)および
図23(b)に示す発熱部材52は、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51と同様に、絶縁基板51aと、発熱部51bと、絶縁層51cと、エレメント接続電極51dと、給電線電極51e、51fとを有する。
図23(a)および
図23(b)に示すように、発熱部51bは、絶縁基板51aのヒューズエレメント2と対向する表面と反対側の表面(
図23(a)および
図23(b)における上面)上に形成されている。
【0178】
図23(a)および
図23(b)に示すように、給電線電極51e、51fは、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51と同様に、絶縁基板51aのY方向端部に設けられ、一部が発熱部51bの両端部51g、51gとそれぞれ平面視で重なる位置に設けられている。給電線電極51e、51fは、発熱部51bの両端部51g、51gとそれぞれ電気的に接続されている。
【0179】
図23(a)および
図23(b)に示すように、絶縁層51cは、発熱部51b上に設けられている。絶縁層51cは、発熱部51bと、発熱部51bと給電線電極51e、51fとの接続部とを覆うように、絶縁基板51aのY方向中央部に設けられている。絶縁層51cは、絶縁基板51aのY方向端部には設けられていない。このことにより、給電線電極51e、51fの一部は、絶縁層51cに被覆されておらず、露出されている。絶縁層51cは、発熱部51bを保護する。
【0180】
図23(a)および
図23(b)に示すように、発熱部材52におけるエレメント接続電極51dは、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51とは異なり、絶縁基板51aの発熱部51bが設けられている側と反対側の表面上に形成されている。したがって、エレメント接続電極51dは、絶縁基板51aを介して、発熱部51bと対向して配置されている。エレメント接続電極51dは、発熱部51bと少なくとも一部が重畳する位置に設けられている。また、エレメント接続電極51dは、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51と同様に、ヒューズエレメント2と電気的に接続されている。
【0181】
本実施形態の保護素子300においては、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51(および/または第2発熱部材56)に代えて、
図23(c)および
図23(d)に示す発熱部材53が備えられていてもよい。
図23(c)および
図23(d)に示す発熱部材53において、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図23(c)および
図23(d)に示す発熱部材53のY方向中央部をY方向から見た断面における各部材の配置は、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51の各部材と同じである。
【0182】
図23(c)および
図23(d)に示す発熱部材53は、
図22(a)~
図22(c)に示す第1発熱部材51と同様に、絶縁基板51aと、発熱部51bと、絶縁層51cと、エレメント接続電極51dと、給電線電極51e、51fとを有する。
図23(c)に示すように、発熱部51bは、絶縁基板51aのヒューズエレメント2と対向する表面(
図23(c)および
図23(d)における下面)上に形成されている。
図23(c)に示すように、発熱部51bは、平面視略長方形の絶縁基板51aの一端から他端まで、一方の長辺縁部に沿ってY方向に延在して帯状に設けられている。
【0183】
図23(c)に示すように、発熱部51b上には、絶縁層51cが設けられている。絶縁層51cは、発熱部51bの両端部51g、51gを除く領域上を覆うように、絶縁基板51aのY方向中央部に設けられている。したがって、発熱部51bの両端部51g、51gは、絶縁層51cに被覆されておらず、露出されている。
図23(c)に示すように、給電線電極51e、51fは、絶縁基板51aのY方向端部に設けられ、発熱部51bの両端部51g、51gとそれぞれ平面視で重なっている。このことにより、給電線電極51e、51fは、発熱部51bと電気的に接続されている。
【0184】
図23(c)に示すように、エレメント接続電極51dは、絶縁層51c上の給電線電極51e、51fが設けられている領域を除く領域に設けられている。
図23(c)に示すように、エレメント接続電極51dは、給電線電極51e、51fと離間して配置されている。エレメント接続電極51dは、絶縁層51c上の発熱部51bと少なくとも一部が重畳する位置に設けられている。
【0185】
図24は、第3実施形態の保護素子300の一部を説明するための拡大図であり、ヒューズエレメント2と、第1端子61と、第2端子62と、第1発熱部材51と、第2発熱部材56と、給電線54a、54b、55a、55bと、給電引き出し線54、55とを示した斜視図である。
図24に示すように、第1発熱部材51は、給電線54a、55aと電気的に接続されている。また、第2発熱部材56は、給電線54b、55bと電気的に接続されている。
また、本実施形態では、
図24に示すように、給電線54aおよび給電線54bは、給電引き出し線54と電気的に接続され、給電線55aおよび給電線55bは、給電引き出し線55と電気的に接続されている。
【0186】
本実施形態では、給電線54aと給電線54bが、1つの給電引き出し線54に電気的に接続されている場合を例に挙げて説明するが、給電線54aと給電線54bは、それぞれ別の給電引き出し線に接続されていてもよい。また、給電線55aと給電線55bが、1つの給電引き出し線55に電気的に接続されている場合を例に挙げて説明するが、給電線55aと給電線55bは、それぞれ別の給電引き出し線に接続されていてもよい。
【0187】
本実施形態では、給電線54a、54b、55a、55bは、帯状であり、それぞれ、第1ケース6aと第2ケース6bとが一体化されることにより側面通気口77とされる側面凹部77aに設置されている(
図19参照)。給電線54a、54b、55a、55bは、公知の導電配線材料で形成できる。本実施形態では、給電線54a、54b、55a、55bが帯状である場合を例に挙げて説明したが、各給電線は帯状に限定されるものではなく、線状であってもよい。
また、給電引き出し線54、55は、断面視円形の導電配線材料で形成されている。給電引き出し線54、55は、ヒューズエレメント2に対して対称に配置されている。給電引き出し線54、55は、それぞれ曲げ加工されることにより、平面視コ字状に曲げられている。
【0188】
各給電引き出し線54、55の有する2カ所の曲げ加工部54c、55cは、それぞれ、第1ケース6aおよび第2ケース6bのX方向に沿う縁部に設けられた切り欠き76bに設置されている(
図19参照)。本実施形態では、各給電引き出し線54、55が、曲げ加工部54c、55cを有しているため、給電引き出し線54、55に外的応力が加えられても、外的応力が給電線54a、54b、55a、55bに伝達されて、第1発熱部材51または第2発熱部材56と給電線54a、54b、55a、55bとの電気的な接続が破壊される不具合を抑制できる。
切り欠き76bは、端部材72におけるX方向の長さ(厚み)全長に渡って形成されている。
【0189】
また、各給電引き出し線54、55の曲げ加工部54c、55cよりも端部側は、それぞれ、カバー4に設けられた引出線用溝4bに保持された状態で、カバー4から露出している(
図18および
図19参照)。引出線用溝4bは、カバー4の両側の開口部にそれぞれ、直径方向に対向して2つずつ形成されている。
引出線用溝4bにおけるカバー4の円周方向の幅は、給電引き出し線54、55の直径に応じて適宜決定できる。
【0190】
図25は、第3実施形態の保護素子300に備えられた第1遮蔽部材3aの構造を説明するための図面である。
図25(a)は収容部60側から見た斜視図であり、
図25(b)はヒューズエレメント2側から見た斜視図である。
第3実施形態の保護素子300に備えられた第1遮蔽部材3aは、発熱部材51が収容される発熱部材収容凹部36を有する。発熱部材収容凹部36は、
図25(b)に示すように、板状部30の第1面31に、第1端辺31aに近接して設けられている。
【0191】
発熱部材収容凹部36のX方向の幅は、発熱部材51のX方向の幅に応じて決定される。また、発熱部材収容凹部36のY方向の幅は、発熱部材51のY方向の幅に応じて決定される。
発熱部材収容凹部36の深さ(Z方向の長さ)は、発熱部材収容凹部36内に発熱部材51を設置した状態での、板状部30上と発熱部材51上とが同一平面となる深さとされている。第3実施形態の保護素子300では、
図20に示すように、板状部30の第1面31および発熱部材51がヒューズエレメント2に接して配置されていることが好ましい。このことにより、発熱部材51によって効率よく切断部23を加熱でき、短時間で電流経路を遮断できる。
【0192】
(保護素子の製造方法)
次に、本実施形態の保護素子300の製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態の保護素子300を製造するには、まず、第1実施形態に係る保護素子100と同様にして、ヒューズエレメント2と、第1端子61および第2端子62とが一体化された部材(
図7参照)を作成する。
【0193】
また、
図26(a)に示すように、給電引き出し線54となる直線状の導電部材54dを用意し、給電線54a、54bとを、それぞれハンダ付けすることにより接続する。また、給電引き出し線55となる直線状の導電部材55dを用意し、給電線55a、55bとを、それぞれハンダ付けすることにより接続する。
そして、第1発熱部材51の給電線電極51eに給電線55aをハンダ付けするとともに、給電線電極51fに給電線54aをハンダ付けする。また、
図26(a)に示すように、第2発熱部材56の給電線電極51eに給電線55bをハンダ付けするとともに、給電線電極51fに給電線54bをハンダ付けする。
【0194】
また、第1ケース6aの凹部68内に、第1遮蔽部材3aを設置する。また、第2ケース6bの凹部68内に、第2遮蔽部材3bを設置する。
その後、
図26(a)に示すように、第2遮蔽部材3bの設置された第2ケース6b上に、ヒューズエレメント2と、第1端子61と、第2端子62と、第1発熱部材51と、第2発熱部材56と、給電線54a、54b、55a、55bと、導電部材54d、55dとが一体化された部材を設置する。このとき、第2遮蔽部材3bの発熱部材収容凹部36内に第2発熱部材56を収容する。
【0195】
そして、
図26(b)に示すように、上記の一体化された部材の設置された第2ケース6b上に、第1遮蔽部材3aの設置された第1ケース6aを設置する。このとき、第1ケース6aの有する勘合凹部63と、第2ケース6bの有する勘合凸部67とを嵌合させ、第1ケース6aの有する勘合凸部67と、第2ケース6bの有する勘合凹部63とを嵌合させる。
【0196】
図26(b)に示すように、第2ケース6b上に第1ケース6aが設置されることにより、第2緩衝用凹部75、側面通気口77、第1接着剤注入口78、第2接着剤注入口76が形成される。このことにより、給電線54a、54b、55a、55bは、それぞれ側面通気口77を貫通して、ケース6の外に配置された導電部材54d、55dと接続された状態となる。また、
図20に示すように、一方の挿入孔64にヒューズエレメント2の第1端部21が収容され、もう一方の挿入孔64にヒューズエレメント2の第2端部22が収容され、ヒューズエレメント2に接続された第1端子61および第2端子62の一部が、ケース6の外部に露出された状態となる。
【0197】
次に、第1ケース6aと第2ケース6bとを一体化させた状態で、カバー4に収容する。このことにより、ケース6のX方向に沿う側面を形成している端部材72と、第1緩衝用凹部73と、第2緩衝用凹部75とがカバー4によって被覆されるとともに、第1ケース6aと第2ケース6bとが固定される。
【0198】
その後、導電部材54d、55dを、それぞれカバー4に設けられた引出線用溝4bに嵌め込み、外方に向かって略直角に曲げる。このことにより、導電部材54d、55dそれぞれに、2カ所の曲げ加工部54c、55c(
図24参照)が形成され、給電引き出し線54、55とされる。
【0199】
その後、カバー4の傾斜面4a、第1接着剤注入口78、第2接着剤注入口76に、それぞれ接着剤を注入する。このことにより、カバー4内が密閉され、収容部60と内圧緩衝空間71とからなる空間領域が、ケース6の外面とカバー4の内面とによって密閉される。
以上の工程により、本実施形態の保護素子300が得られる。
【0200】
(保護素子の動作)
次に、第3実施形態に係る保護素子300におけるヒューズエレメント2に、定格電流を越えた電流が流れた場合における保護素子300の動作について説明する。
本実施形態の保護素子300のヒューズエレメント2に定格電流を越えた電流が流れると、ヒューズエレメント2が自己発熱し、ヒューズエレメント2が溶断される。
【0201】
本実施形態の保護素子300では、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第2実施形態に係る保護素子200と同様に、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの有する板状部30における第1面31が押圧されるとともに、
図21に示すように、縮められていたバネ81の復元力によって板状部30の第2面32が押圧され、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの回転方向に力が加えられる。それにより、本実施形態の保護素子300では、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転軸33を中心として回転する。そして、第1端辺31aが、収容部60の内面に設けられた遮蔽部材収容溝34の底面上に押し付けられる。また、第2端辺31bが、凹部68内に収容される。
【0202】
本実施形態の保護素子300では、第2実施形態に係る保護素子200と同様に、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電による収容部60内の圧力上昇によって、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの第1面31が押圧されるとともに、バネ81によって板状部30の第2面32が押圧され、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの回転方向に力が加えられる。それらの相乗効果によって、
図21に示すように、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bが回転軸33を中心としてそれぞれ回転する。その結果、収容部60内は、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bによって、X方向の2カ所でより確実に塞がれて分断される。したがって、本実施形態の保護素子300では、ヒューズエレメント2の溶断時に発生するアーク放電が、迅速に消滅(消弧)される。
【0203】
また、本実施形態の保護素子300では、ヒューズエレメント2を加熱する第1発熱部材51と第2発熱部材56が、ヒューズエレメント2の切断部23に接して配置されている。したがって、保護素子300の通電経路となる外部回路に異常が発生して通電経路を遮断する必要が生じた場合、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電されて第1発熱部材51と第2発熱部材56が発熱し、効率よく切断部23が加熱され、短時間で電流経路を遮断できる。
また、ヒューズエレメント2が切断された後、第1遮蔽部材3aおよび第2遮蔽部材3bの回転と、第1発熱部材51および第2発熱部材56の発熱による給電線電極51e、51fのハンダ接続部の溶融とによって、給電線54a、54b、55a、55bが切断される。その結果、第1発熱部材51および第2発熱部材56への給電が遮断され、第1発熱部材51および第2発熱部材56の発熱が停止される。よって、本実施形態の保護素子300は、優れた安全性を有する。
【0204】
[他の例]
本発明の保護素子は、上述した第1実施形態および第2実施形態の保護素子に限定されるものではない。
例えば、上述した第1実施形態の保護素子100および第2実施形態の保護素子200では、切断部23が、ヒューズエレメント2のX方向中心付近に配置され、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bとが同形であり、第1ケース6aと第2ケース6bとが同形である場合を例に挙げて説明したが、切断部の位置は、ヒューズエレメントのX方向中心付近でなくてもよい。この場合、第1遮蔽部材3aと第2遮蔽部材3bは、X方向の長さが異なるものとされる。また、第1ケース6aは、第1遮蔽部材3aの形状に対応する収容部の形状を有するものとされ、第2ケース6bは、第2遮蔽部材3bの形状に対応する収容部の形状を有するものとされる。
【符号の説明】
【0205】
2 ヒューズエレメント
3 遮蔽部材
3a 第1遮蔽部材
3b 第2遮蔽部材
4 カバー
4a 傾斜面
4b 引出線用溝
5、52、53 発熱部材
6 ケース
6a 第1ケース
6b 第2ケース
21 第1端部
22 第2端部
23 切断部(括れ部)
24a 第1屈曲部
24b 第2屈曲部
25 第1連結部
26 第2連結部
30 板状部
33a 接触位置
30a 第1面積
30b 第2面積
31 第1面
31a、32a 第1端辺
31b 第2端辺
32 第2面
32b 第2端面
33 回転軸
34 遮蔽部材収容溝
35 リーク防止溝
36 発熱部材収容凹部
38 凸部
41 第1端
42 第2端
51 第1発熱部材
51a 絶縁基板
51b 発熱部
51c 絶縁層
51d エレメント接続電極
51e、51f 給電線電極
56 第2発熱部材
54、55 給電引き出し線
54a、54b、55a、55b 給電線
60 収容部
61 第1端子
61a、62a 外部端子孔
61c、62c 鍔部
62 第2端子
63 勘合凹部
64 挿入孔
64a 挿入孔形成面
64b 端子載置面
65 ヒューズエレメント載置面
66 ガイド孔
67 勘合凸部
68 凹部
68a 第1壁面
68b 第2壁面
68c 第1底面
68d 第2底面
69 底面通気孔
70 接合面
71 内圧緩衝空間
72 端部材
73 第1緩衝用凹部
74 第2凹部
75 第2緩衝用凹部
76 第2接着剤注入口
76a、76b 切り欠き
77 側面通気口
77a 側面凹部
78 第1接着剤注入口
78a 切り欠き
81 バネ
82 バネガイド穴
83 バネ受け溝
100、200、300 保護素子