(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127526
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】微生物駆除剤の散布システム及び微生物の駆除方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/10 20170101AFI20220824BHJP
A01N 59/00 20060101ALI20220824BHJP
A01P 15/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A01K61/10
A01N59/00 Z
A01P15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025723
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000214191
【氏名又は名称】長崎県
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】山田 真
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳奈
【テーマコード(参考)】
2B104
4H011
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104FA20
4H011AD01
4H011BB18
4H011DA02
4H011DD01
(57)【要約】
【課題】本発明は、水中の表層域のみならず、表層域よりも深い中層域から深層域の水域においても、有害となる微生物を長時間連続して駆除することが可能な微生物駆除剤の散布システム及び微生物の駆除方法に関する。
【解決手段】 水中に微生物駆除剤を散布する微生物駆除剤の散布システムであって、目開きが一様な材に包含させた前記微生物駆除剤を前記水中に生息する駆除対象とする微生物の生息域の深さに対応させて吊るし、該微生物駆除剤が、前記材の目開き部分を通過して該水中に拡散散布される微生物駆除剤の散布システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に微生物駆除剤を散布する微生物駆除剤の散布システムであって、
目開きが一様な材に包含させた前記微生物駆除剤を前記水中に生息する駆除対象とする微生物の生息域の深さに対応させて吊るし、該微生物駆除剤が、前記材の目開き部分を通過して該水中に拡散散布される微生物駆除剤の散布システム。
【請求項2】
前記微生物駆除剤がスメクタイトを含む、請求項1に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項3】
前記スメクタイトが、カルシウム型スメクタイト、ナトリウム型スメクタイト、及び活性化スメクタイトの少なくとも1種を含む、請求項2に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項4】
前記目開きが一様な材が網であり、前記微生物駆除剤が、前記網の目開き部分を通過して前記水中へと、10時間以上連続的に拡散散布される、請求項3に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項5】
前記微生物駆除剤は、スメクタイトの酸処理物、または、スメクタイトとアルミニウム源との混合物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項6】
前記微生物駆除剤は、乾燥状態の粉末であり、粒径がタイラーのふるいに基づく75%/200メッシュを通過するものを含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項7】
前記微生物駆除剤は、含水させて混錬したものである、請求項2~5のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項8】
前記微生物駆除剤は、必要に応じて形状を変えることができる、請求項7に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項9】
前記目開きが一様な材の該目開きは、70~510μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項10】
前記目開きが一様な材の該目開きは、400μm以上である、請求項7又は8に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項11】
前記微生物駆除剤を入れた前記材は、前記水中を移動可能に吊るされる、請求項1~10のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項12】
前記微生物駆除剤を入れた前記材は、前記微生物の日周鉛直移動に合わせて水深方向に移動可能に吊るされる、請求項11に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項13】
前記の微生物駆除剤の散布システムを、赤潮原因プランクトンの駆除のために用いる、請求項1~12のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システム。
【請求項14】
水中に生息する微生物の駆除方法であって、
目開きが一様な材に包含した微生物駆除剤を、前記水中の前記駆除対象とする微生物の生息域又はその近傍に吊るし、該微生物駆除剤を、前記材の目開き部分を通過させて前記水中へと拡散散布することを含む、微生物の駆除方法。
【請求項15】
前記駆除対象とする微生物の日周鉛直移動に合わせて、前記微生物駆除剤を水深方向に移動させる、請求項14に記載の微生物の駆除方法。
【請求項16】
魚介類の養殖方法であって、
請求項1~13のいずれか1項に記載の微生物駆除剤の散布システムを用いて、前記魚介類の養殖水域もしくは該養殖水域の周囲に、前記微生物駆除剤を拡散散布することを含む、魚介類の養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物駆除剤を水中に拡散散布する散布システム及び微生物の駆除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、八代海、有明海、瀬戸内海等の九州、中国、四国地方の海域で赤潮が発生している。赤潮は地方によって原因となる植物プランクトンが異なる。近年は、シャットネラ属、カレニア属、コクロディニウム属の3種類の植物プランクトンが主に問題視されている。
【0003】
植物プランクトンは、海面からの水深によって現れる種が異なる。また、同種の植物プランクトンであっても、時刻によっても現れる水深が異なる。例えばシャットネラ属やコクロディニウム属は日中、光合成のため、海面付近に現れる。カレニア属は日中水深5~7m付近に現れる。
例えば、シャットネラ属は、細胞の長さが50~130μmの植物プランクトンである。魚介類にとって有害な種であり、40cell/mL程度で魚を斃死させた例がある。
【0004】
植物プランクトンが表層(海面付近)に出現すると、植物プランクトンによる赤潮直下の水中が低酸素状態になる。このために、魚の斃死が生じる。そこで、赤潮等の原因となる植物プランクトンの有効な駆除が求められている。
【0005】
また、赤潮原因プランクトンの中には有毒プランクトンも存在する。例えば、アレクサンドリウム属やディノフィシス属がある。これらを貝類が海水と共に取り込み体内に蓄積されることで前者では麻痺性貝毒、後者では下痢性貝毒となる。これらのプランクトンに対しても有効な駆除が求められている。
【0006】
赤潮駆除剤としては、鹿児島県で産出される酸性白土(入来モンモリ(商品名))が使用されている。
酸性白土単体でも植物プランクトンの駆除効果はあるが、大量に散布しなければならず、ランニングコストが高くなるという問題点がある。また、酸性白土にミョウバンを添加することで酸性白土中のアルミニウムイオン(Al3+)を溶出させやすくし、駆除効果を高めることも行われている。しかしながら、ミョウバンのコストが高いことや現場で適切に配合することが難しいことが問題となる。いずれの方法でも散布した海洋表層でしか効果をなさない。
【0007】
特許文献1には、酸化マグネシウム(MgO)を散布することが、赤潮駆除に効果があると記載されている。この技術は酸化マグネシウム自体を赤潮発生区域に散布し、迅速に赤潮の原因プランクトンを除去するものである。しかし、金属マグネシウムや水酸化マグネシウムなどの一次原料を焼成して酸化マグネシウムに調整するプロセスが必要であるため、製造コストがかさむ問題点がある。また特許文献1の技術は、海洋表層に発生した赤潮の駆除が主たる目的である。
【0008】
特許文献2には、生簀周辺において発生する赤潮を駆除することで海洋中の酸素濃度低下による魚の斃死を防ぐことが記載されている。しかし、この技術においても主たる駆除対象となるプランクトンは海洋の表層域のプランクトンのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-55914号公報
【特許文献2】特開2008-239516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、水中の表層域のみならず、表層域よりも深い中層域から深層域の水域においても、水中に生息する有害微生物を長時間連続して駆除する微生物駆除剤の散布を可能とする微生物駆除剤の散布システムを提供する。また、水深の異なる表層域、中層域、深層域の各水域において、水中に生息する有害となる微生物を長時間にわたって持続的に駆除することを可能とする微生物の駆除方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決された。
[1]
水中に微生物駆除剤を散布する微生物駆除剤の散布システムであって、
目開きが一様な材に包含させた前記微生物駆除剤を前記水中に生息する駆除対象とする微生物の生息域の深さに対応させて吊るし、該微生物駆除剤が、前記材の目開き部分を通過して該水中へと拡散散布される、微生物駆除剤の散布システム。
[2]
前記微生物駆除剤がスメクタイトを含む、[1]に記載の微生物駆除剤の散布システム。
[3]
前記スメクタイトが、カルシウム型スメクタイト、ナトリウム型スメクタイト、及び活性化スメクタイトの少なくとも1種を含む、[2]に記載の微生物駆除剤の散布システム。
[4]
前記目開きが一様な材が網であり、前記微生物駆除剤が、前記網の目開き部分を通過して前記水中へと、10時間以上連続的に拡散散布される、[3]に記載の微生物駆除剤の散布システム。
[5]
前記微生物駆除剤は、スメクタイトの酸処理物、または、スメクタイトとアルミニウム源との混合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システム。
[6]
前記微生物駆除剤は、乾燥状態の粉末であり、粒径がタイラーのふるいに基づく75%/200メッシュを通過するものを含む、[2]~[5]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システム。
[7]
前記微生物駆除剤は、含水させて混練したものである、[2]~[5]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システム。
[8]
前記微生物駆除剤は、必要に応じて形状を変えることができる、[7]に記載の微生物駆除剤の散布システム。
[9]
前記目開きが一様な材の該目開きは、70~510μmである、[1]~[8]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システム。
[10]
前記目開きが一様な材の該目開きは、400μm以上である、[7]又は[8]に記載の微生物駆除剤の散布システム。
[11]
前記微生物駆除剤を入れた前記材は、前記水中を移動可能に吊るされる、[1]~[10]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システム。
[12]
前記微生物駆除剤を入れた前記材は、前記微生物の日周鉛直移動に合わせて水深方向に移動可能に吊るされる、[11]に記載の微生物駆除剤の散布システム。
[13]
前記の微生物駆除剤の散布システムを、赤潮原因プランクトンの駆除のために用いる、[1]~[12]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システム。
[14]
水中に生息する微生物の駆除方法であって、
目開きが一様な材に包含させた微生物駆除剤を、前記水中の前記駆除対象とする微生物の生息域又はその近傍に吊るし、該微生物駆除剤を、前記材の目開き部分を通過させて前記水中へと拡散散布することを含む、微生物の駆除方法。
[15]
前記駆除対象とする微生物の日周鉛直移動に合わせて、前記微生物駆除剤を水深方向に移動させる、[14]に記載の微生物の駆除方法。
[16]
魚介類の養殖方法であって、
前記[1]~[13]のいずれかに記載の微生物駆除剤の散布システムを用いて、前記魚介類の養殖水域もしくは該養殖水域の周囲に、前記微生物駆除剤を拡散散布することを含む、魚介類の養殖方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の微生物駆除剤の散布システムによれば、目開きが一様な材に包含させた微生物駆除剤を、駆除対象となる微生物の生息域の深さに対応させた水中に吊るして、微生物駆除剤(の微粒子)を水中に拡散散布することができる。このとき、微生物駆除剤を目開きから徐々に水中に拡散散布させることも可能になるため、長時間の散布が可能になる。例えば、24時間の連続的な散布が可能になる。このため、例えば、1日に1回、微生物駆除剤を補給すればよく、微生物駆除の作業効率を格段に向上させることができる。
本発明の微生物の駆除方法によれば、目開きが一様な材に包含させた微生物駆除剤を水中の駆除対象となる微生物の生息域に吊るして該微生物駆除剤の微粒子を水中に拡散散布し続けることができる。このため、駆除対象となる微生物の生息域に微生物駆除剤を長時間散布することが可能になり、微生物駆除剤の補給を、例えば、1日1回にすることができるため、微生物駆除剤の散布作業の効率を格段に向上させることができる。また、駆除対象となる微生物の生息域の水深に対応して微生物駆除剤を散布することが可能になるため、生息域に対して常に微生物駆除剤の散布が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る微生物駆除剤の散布システムの好ましい一実施形態を模式的に示した断面図である。
【
図2】人工海水中での酸性白土の拡散放出試験における拡散放出率と攪拌時間との関係を示したグラフである。
【
図3】人工海水中でのCa型モンモリロナイトの拡散放出試験における拡散放出率と攪拌時間との関係を示したグラフである。
【
図4】海水中での微生物駆除剤の各試料に対するカレニア・ミキモトイの駆除率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る微生物駆除剤の散布システムについて、好ましい一実施形態について以下に説明する。微生物駆除剤の散布システムは、目開きが一様(均一)な材に包含させた微生物駆除剤を水中の駆除対象となる微生物の生息域の深さに対応させて吊るし、該微生物駆除剤を該水中に散布するものである。以下、
図1等を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、微生物駆除剤の散布システム10は、目開きが一様な材である網11に包含させた微生物駆除剤21を、水中31の、駆除対象となる微生物の生息域32の深さに対応させて、例えばロープ15を用いて吊るし、該微生物駆除剤21の微粒子(図示せず)を材の目開きを通過させて該水中31に連続的に散布するものである。このロープ15の長さを調節することによって、微生物駆除剤を水深深く送り込むことも、水中の表層域に配することも可能になる。
【0016】
目開きが一様な材である網11は、例えばポリエチレン、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、等の耐水性、好ましくは耐海水性を有する樹脂製の網が用いられる。網は、例えば、袋状に構成されていることが好ましい。この袋の開口部は、開閉可能になされていることが好ましい。例えば、袋の開口部に、開口部を開閉可能にし、袋を閉じることができるチャックが配されることが好ましい。または、網を巾着袋のような形態に構成したものであってもよい。この場合、巾着袋の開口部を絞って縛ることによって、巾着袋を閉じることが好ましい。縛る手段としては、巾着袋の大きさにもよるが、海水によって浸食を受けにくい上記の樹脂製の紐、ロープ、鎖、輪ゴム(例えば、クロロプレンゴム製)、ジッパー等が挙げられる。
網の目開きは、全体にわたって一様であり、微生物駆除剤の微粒子の大きさ(例えば、粒径)にもよるが、微生物駆除剤にスメクタイト等の粘土鉱物の微粒子を用いた場合、300~600μmとすることができ、50~200μmとすることも好ましい。また、粉体の微生物駆除剤に対しては、網の目開きが90~280μmであることが好ましい。
上記のような目開きの網に対して微生物駆除剤は、乾燥状態で、以下の「開口率(%)/メッシュ」のタイラーのふるいを通過する粒径のものを好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むことが好ましい。すなわち、開口率(%)/メッシュが、75%/200メッシュのタイラーのふるいを通過する粒径のものを上記好ましい量で含むことが好ましい。また、70%/250メッシュのタイラーのふるいを通過する粒径のものを上記好ましい量で含むことが好ましい。また、80%/250メッシュのタイラーのふるいを通過する粒径のものを上記好ましい量で含むことも好ましい。また、80%/200メッシュのタイラーのふるいを通過する粒径のものを用いることも好ましい。上記乾燥状態とは、含水率が10質量%以下であることを意味する。
このような粒径のものを有する微生物駆除剤であれば、網の目開き部分を通過して水中へと徐々に微生物駆除剤の微粒子を拡散放出して散布させることができる。また網に入れる微生物駆除剤の量、性状等を制御することによって、微生物駆除剤の微粒子を長時間(例えば10時間以上、好ましくは15時間以上、さらに好ましくは20時間以上)連続して水中へ散布させることが可能になる。すなわち、微生物駆除剤を水中へと(網の内側から外側へと)、およそ一定の速度で連続的に拡散散布することが可能になる。
【0017】
上記の目開き及び開口率は、以下のようにして求めることができる。
目開きをA(mm)、メッシュ(Tyler)をM、網11を構成する糸や線材の線径をd(mm)、網11の開口部12の開口率をε(%)とすると、
目開き:A=(25.4/M)-d
開口率:ε=(A/(A+d))2×100(%)
と表すことができる。
【0018】
例えば、微生物駆除剤の24時間連続散布を可能にするには、例えば、微生物駆除剤21(例えば、スメクタイト)として、タイラーのふるいによる開口率%/メッシュとして75%/200メッシュのふるいを通過する粒径のものの所定量を、好ましくは目開きが70~510μmないし90~280μm程度の網に包含させて水中(海中)に吊り下げればよい。
【0019】
微生物駆除剤21は、含水した粘土鉱物(好ましくはスメクタイトを含み、より好ましくはモンモリロナイトを含む)を含水させて混練したもの(加水練りしたもの)が好ましい。例えば、微生物駆除剤の徐放性という観点から、粘土鉱物の含水率は30~50質量%が好ましく、35~45質量%がより好ましい。
このように加水練りした微生物駆除剤(例えば、含水率35~50質量%、)では、例えば、タイラーのふるいによる、75%/200メッシュ(開口率(%)/メッシュ)を通るスメクタイト粉末(スメクタイトを含有する粉末、例えばベントナイトや白土)を加水練りしたものであっても、拡散放出が抑制されるため、目開きが250μm以上、さらには300μm以上、さらには400μm以上、さらには450μm以上、さらには500μm以上(例えば(503μm程度)の目開きが大きな網11であっても使用可能になる。この場合、目開きは800μm以下が好ましく、650μm以下とすることも好ましい。また、加水練りした赤潮駆除剤の形態に関しては、球状やブロック状など用途に応じて変形することができる。
すなわち、上記のような加水練りしたスメクタイトを含む微生物駆除剤は、タイラーのふるいの目を通る加水練り前の微生物駆除剤の粉末よりもかなり大きな目開きの網であっても用いることが可能になる。例えば、タイラーのふるいの目を通る微生物駆除剤の粉末の粒径よりも、5倍~10倍程度の大きさの目開きの網であっても用いることが可能になる。
目開きが大きな網が使用可能になることにより、網地での粘土の目詰まりを防ぐことが可能となる利点がある。
【0020】
微生物駆除剤は、スメクタイトを含むことが好ましい。スメクタイトはモンモリロナイトを含むことが好ましく、モンモリロナイトであることがより好ましい。本発明では、スメクタイトないしモンモリロナイトとして、ベントナイト及び/又は白土を用いることが好ましく、ベントナイト及び/又は酸性白土を用いることがより好ましく、ベントナイトを用いることがさらに好ましい。微生物駆除剤中のスメクタイトの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上とすることもできる。微生物駆除剤中のスメクタイトの含有量の上限に特に制限はなく、100質量%でもよいし、通常は99質量%以下である。また、微生物駆除剤中のモンモリロナイトの含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上とすることもできる。微生物駆除剤中のモンモリロナイトの含有量の上限に特に制限はなく、100質量%でもよいし、通常は99質量%以下である。
【0021】
上記スメクタイトは、カルシウム型スメクタイト、ナトリウム型スメクタイト、及び活性化スメクタイトの少なくとも1種を含むことが好ましい。
Ca型スメクタイトは、カルシウム含量の多いモンモリロナイト:(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2Oであることが好ましい。
Na型スメクタイトは、ナトリウム含量の多いモンモリロナイト:(Na,Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2Oであることが好ましい。
活性化スメクタイトは、Ca型スメクタイトに対して数質量%の炭酸ナトリウムを加えて人工的にナトリウム型化したものである。
【0022】
微生物駆除剤21は、スメクタイトを酸で処理したもの(酸処理物)を含むことも好ましい。例えば、スメクタイトを塩酸や硫酸で処理したものを用いることができる。例えば、希塩酸を用いた処理では、15~30℃(好ましくは20~25℃)において、塩化水素0.2~3mol%水溶液(好ましくは0.5~2mol%水溶液)中に、スメクタイトを30~300分間(好ましくは50~200分間)浸漬した後、水で洗浄し、乾燥させることにより得ることができる。これによって、酸処理スメクタイトを得ることができる。
または、希硫酸を用いた処理では、15~30℃(好ましくは20~25℃)において、0.2~3mol%硫酸(好ましくは0.5~2mol%硫酸)中に、スメクタイトを30~300分間(好ましくは50~200分間)浸漬した後、水で洗浄し、乾燥させることにより得られる。
このようにして、酸処理スメクタイトを得ることができる。酸処理スメクタイトを用いることにより、スメクタイト中のアルミニウムイオン(Al3+)の溶出を促進するという効果が得られる。
【0023】
または、微生物駆除剤21は、スメクタイトに対しアルミニウム源(例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム(ミョウバンも含む)、ポリ塩化アルミニウム等)を混合させたもの(スメクタイトとアルミニウム源との混合物)を含むことも好ましい。例えば、スメクタイトに対し塩化アルミニウムを混合する場合、混合物中の塩化アルミニウム量を5質量%~50質量%とすることが好ましく、5質量%~30質量%とすることがより好ましく、10質量%~20質量%とすることがさらに好ましい。また、硫酸アルミニウムを混合する場合、混合物中の硫酸アルミニウム量を5質量%~50質量%とすることが好ましく、5質量%~30質量%とすることがより好ましく、10質量%~20質量%とすることがさらに好ましい。このようにアルミニウム源が混合されると、微生物駆除剤が水中に散布されたとき、水中でアルミニウムイオン(Al3+)が微生物(植物プランクトン)の細胞を破壊し、微生物駆除剤の微粒子が細胞を破壊された微生物を包み込み、水中に沈めることによって、所望の水中領域から駆除対象となる微生物を駆除することができる。
【0024】
本発明における微生物とは、植物プランクトン、動物プランクトン、細菌等を意味する。
具体的には、日本微生物生態学会によれば、微生物とは、細菌、菌類、ウイルス、微細藻類(植物プランクトン、動物プランクトン等)、原生動物(アメーバやゾウリムシなど)などが含まれるとされる。植物プランクトンは、色素を有し光合成を行うプランクトンであり、例えば、赤潮やアオコ等の発生原因となるプランクトンが挙げられる。動物プランクトンとは、摂食を行うプランクトンである。なお、本明細書においては、光合成と摂食の両方を行うプランクトンは植物プランクトンに含める。
【0025】
上記植物プランクトンには、赤潮原因プランクトンとして、例えば、シャットネラ属、カレニア属、コクロディニウム属が挙げられる。
シャットネラ属は、日中、光合成の為、海面付近に現れる。例えば、昼間は水深5m以浅の表層で光合成を行い、夜間は水深10mまでに移動して栄養塩類を吸収する日周鉛直移動を行うことが知られている。
カレニア属は、日中、光合成のため水深5~7m付近に現れて増殖する。夜間、水深10m~20m超の層まで達する顕著な日周鉛直移動を行うことが知られている。特に赤潮原因プランクトンである、カレニア・ミキモトイが知られている。
コクロディニウム属は、日中、光合成の為、海面付近に現れることが知られている。
なお、上記植物プランクトンのなかには、日中であっても、午後になると水深方向に下降を始めるものもあり、必ずしも走光性があるとは言えない。
【0026】
他の植物プランクトンとして、貝毒の原因プランクトンとなる、例えば、アレクサンドリウム属やディノフィシス属が挙げられる。これらを貝類が海水と共に取り込み体内に蓄積されることによって、前者は麻痺性貝毒となり、後者は下痢性貝毒となる。
【0027】
細菌としては、大腸菌、サルモネラ菌、等を挙げることができる。
【0028】
上記微生物の生息域である水中とは、海水中、汽水中、及び淡水中を含む意味である。いずれの水域においても、植物プランクトン起因の赤潮やアオコが発生している。本発明は、それらの駆除に効果的に用いることができる。
【0029】
本発明の微生物駆除剤の散布システムは、上記のような水中に生息する微生物の駆除に用いることが有効であり、特に、赤潮の駆除に用いることが有効である。
赤潮は、例えば、土砂崩れや大雨などによる天災で富養化した海洋において、上記した植物プランクトンの大量発生が原因となる。赤潮が発生すると、赤潮に覆われた水域(海水域のみならず、淡水域の場合、汽水域の場合もある)では、魚介類の大量死が発生することが多い。例えば、赤潮による養殖場の魚介類の大量死は、主に窒息死である。窒息死の原因は,大量発生した植物プランクトン自身の呼吸および死滅したプランクトンがバクテリア(細菌)により活発に分解される過程で、海水中に溶けている酸素が大量に消費されることによって起こる。したがって、赤潮を駆除するには、赤潮の原因となる植物プランクトンを駆除するのはもとより、駆除によって死滅した植物プランクトンを魚介類の生息域から除去することも重要である。
また、赤潮原因プランクトンは、沖から岸に向けて、また海底から海面に向かって来るため、本発明の微粒子駆除剤の散布システムを事前に設置することで、生簀周辺に到来する赤潮による影響を未然に防ぐことが可能になる。
【0030】
上記微生物駆除剤の散布システム10によれば、目開きが一様な材に微生物駆除剤を包含させたことにより、微生物駆除剤を水中に設置しても、微生物駆除剤が一気に水中に拡散放出することなく、微生物駆除剤を構成する微粒子が徐々に水中に拡散放出されるようになる。特に、上記した開口率及びメッシュを有する網11を用いることによって、微生物駆除剤21の微粒子が一定速度で水中に拡散放出して散布できるようになる。目開きが一様な網のメッシュ及び開口率を制御することによって、微生物駆除剤を水中へと徐放拡散させることができるようになる。すなわち、微生物駆除剤の、網からの単位面積当たりの放出量を制御することができる。
【0031】
このため、微生物駆除剤の散布時間を長時間化することが可能になり、例えば24時間、連続的に微生物駆除剤を水中に拡散放出し続けることができるようになる。このようにして、微生物駆除剤の水中散布時間を、例えば、24時間という長時間を確保することができる。この結果、微生物駆除剤の交換頻度が、例えば1日1回で済むようになり、作業効率を大幅に高めることが可能になる。
また、微生物の生息水深に合わせて微生物駆除剤を設置することが可能になるため、1日中、水中にて駆除対象となる微生物の駆除を行うことが可能になる。
また、例えば、微生物の駆除対象水域(例えば、生簀)の周囲に微生物駆除剤を設置する場合、潮の流れに対して、潮が流れ来る側に設置することが有効である。また、微生物駆除剤の水中における拡散領域を考慮して、生簀から平面視である程度離れた位置に設置することも有効である。
【0032】
また、微生物駆除剤が網に包含されて水中(例えば海水中)に吊るされることによって、日周鉛直移動する微生物に対して、微生物の生息水深に合わせて微生物駆除剤を移動して設置することが可能になり、1日中、微生物の駆除を行うことが可能になる。したがって、微生物の駆除効率を高めることができる。
【0033】
また、水深の深い位置に微生物駆除剤を配することによって、生簀の水深の深い部分から駆除対象となる微生物の侵入を防ぐことができる。このように、深層域から表層域にかけて、種々の水深に微生物駆除剤を配することによって、生簀内の水深全域にわたって駆除対象となる微生物から生簀全体を防御することが可能になる。これによって、生簀内の魚介類の安全性を高めることが可能になる。これによって、赤潮が例えば中層域で発生した場合に、それよりも深い水深に生簀を移動する必要がなくなり、赤潮が発生している水深で赤潮を防御することができるようになる。
上記説明では生簀について説明したが、筏式垂下養殖やかご垂下養殖の水域についても、それぞれの水深に対応して微生物駆除剤を配することによって、同様に駆除対象となる微生物を駆除することができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、スメクタイトのうち、モンモリロナイトのNa型、Ca型及び活性型に対し5~30質量%のアルミニウム源(例えば、塩化アルミニウム(ポリ塩化アルミニウムを含む)、ミョウバン、等)を均一に混和した微生物駆除剤を水中に散布する。これによって、Al3+イオンがプランクトンの細胞膜を破壊し、モンモリロナイトが、細胞膜が破壊されたプランクトンを捕集して沈殿させて駆除する。
このように沈殿することによって、細胞膜が破壊されたプランクトンを分解しようとするバクテリアが集まらなくなるため、バクテリアの活動による水中の酸素不足が起こらなくなり、生物化学的酸素要求量(水中の溶存酸素量)の減少が抑えられる。
また、モンモリロナイトは天然物のため、駆除剤コストを低く抑えることができる。
【0035】
次に、水中に生息する駆除対象となる微生物を駆除する本発明の微生物の駆除方法について、以下に説明する。
本発明の微生物の駆除方法は、目開きが一様な材に包含した微生物駆除剤を、水中の駆除対象となる微生物の生息域又はその近傍に吊るして、該微生物駆除剤の微粒子を該水中に拡散放出させる。例えば、駆除対象となる植物プランクトンがカレニア・ミキモトイであって、モンモリロナイトを主成分とするベントナイトに塩化アルミニウムを混和した微生物駆除剤を用いた場合、水中における微生物駆除剤の濃度が500~1000ppm程度で駆除効果を示す。この水中における微生物駆除剤の濃度は、500~8000ppmが好ましく、500~3000ppmがより好ましく、800~2000ppmとすることも好ましい。上記濃度を有することによって、駆除対象となる微生物を駆除することができる。上記濃度よりも薄すぎる場合には駆除効果が不十分になり得る。また、上記濃度よりも濃すぎる場合には、駆除効果は十分に得られるが、駆除コストが上昇する。
【0036】
また、本発明の微生物駆除剤の散布システムを用いることによって、駆除対象となる微生物の日周鉛直移動に合わせて、微生物駆除剤を水深方向に移動させることができる。微生物駆除剤の水深方向の移動は、微生物駆除剤を上記の袋状の網に入れ、それをロープ等に吊るして、手動で上昇および下降を行ってもよく、または、上昇および下降を時間制御できるウインチ等を用いて自動(例えば、電動)で行ってもよい。これによって、微生物駆除剤を駆除対象となる微生物の生息水域に対応する駆除水域に散布することができるようになる。すなわち、駆除対象となる微生物の移動水域にあらかじめ微生物駆除剤を散布することによって、その散布水域に駆除対象となる微生物が移動してきた際には、その微生物を駆除することができる。このように、駆除対象となる微生物の生息水域が表層域に限らず、中層域、深層域にあっても、駆除することが可能になる。
【0037】
次に、水中で魚介類を養殖する養殖方法について、以下に説明する。
通常、養殖水域は、生簀内の水域又は筏に貝類を吊り下げた水域である。これらの水域に対して、本発明の魚介類の養殖方法を適用することが好ましい。すなわち、上記説明した微生物駆除剤の散布システムを用いて、魚介類を養殖する養殖水域もしくは該養殖水域の周囲に、前記微生物駆除剤を散布することが好ましい。なお、養殖水域の周囲とは、養殖水域の潮流、風向き、等を考慮して、適宜決定されることが好ましい。
【0038】
従来は養殖生簀や養殖筏に赤潮が近づいてきたときに赤潮に向けて駆除剤を散布していた。しかし、本発明の微生物駆除剤の散布システムを用いることによって、赤潮発生予測が出た段階で、2~3日前に生簀の周りに微生物駆除剤を吊るすことによって、微生物駆除剤を生け簀の周囲に散布することが可能になる。しかも微生物駆除剤の徐放性を利用して、24時間以上、連続して水中の散布することが可能になる。そのため、生簀周囲に赤潮が流れ着いたときには、確実に生簀周囲から赤潮を駆除することができる。しかも、微生物駆除剤が水中に吊るされることから、水深方向に移動させることが可能になる。そのため、日周鉛直移動をする駆除対象の微生物(植物プランクトン)の日周鉛直移動に対応して微生物駆除剤を水深方向に移動させることによって、昼夜を問わず、水中の駆除対象の微生物の生息域に微生物駆除剤を散布することが可能になる。
【0039】
また、加水練りした微生物駆除剤を用いることによって、拡散放出量が穏やかになり、拡散放出量の制御がしやすくなる。また、網の開口率及びメッシュを適宜選択することによって、微生物駆除剤の拡散放出量を制御することができ、微生物駆除剤の徐放性を確保することができる。さらに加水練りした微生物駆除剤を用いることによって、微生物駆除剤の拡散放出が穏やかになり制御しやすくなる。
【0040】
本発明の魚介類の養殖方法によれば、本発明の水中微生物の駆除方法を適用することができる。例えば、目開きが300~500μmの網で構成した網袋内に、微生物駆除剤の有効濃度が1000ppm以上となるように微生物駆除剤を10~20kgを入れて閉じる。そして、好ましくは水深が1~20m、より好ましくは5~15m、さらに好ましくは5~10mに、上記微生物駆除剤を入れた網袋を2~5m間隔に吊るすのが効果的である。上記有効濃度とは、微生物駆除剤を入れた網袋の周囲1~2m以内の海水中の微生物駆除剤の濃度とする。
こうすることによって、生け簀周囲から赤潮等の有害微生物の駆除効果を長時間持続して得ることができる。このため、常時、赤潮の原因となる微生物を生け簀周囲から駆除することができるため、魚介類の養殖が赤潮等の脅威から逃れることが可能になる。これによって、養殖漁業の生産性の向上が図れる。
【実施例0041】
次に、本発明を下記の実施例に基づいて更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0042】
<試験例1>:人工海水中でのモンモリロナイトの拡散放出試験
図2及び3に本試験の結果を示す。
試験概要は次の通りである。攪拌容器には、容量が1Lの円柱形状の容器を用いた。容器内に人工海水(36g/L)を入れた。人工海水は、蒸留水1Lに、日本製薬社製海産微細藻類用ダイゴ人工海水SPを36g溶かして作製した。その結果、塩分濃度は3.6質量%であった。
微生物駆除剤には、含水率8~12%の酸性白土(タイラーのふるいにおいて80%/200メッシュを通る大きさの粒径)を無水質量換算で100gと、アルミニウム源となる硫酸カリウムアルミニウム(カリミョウバンともいう)10gとを混合した試料1を用意した。また、Ca型モンモリロナイト(タイラーのふるいにおいて75%/200メッシュを通る大きさの粒径)を無水質量換算で100gと、カリミョウバン10gとを混合した試料2を用意した。したがって、試料1及び2はいずれも110gであった。
試料1及び2をそれぞれ、目開きが503μm、280μm、90μm、76μmで当該目開きを一様に有する4種のポリエチレン(PE)製の各網で包み込んだ。網には一辺120~150mm角の四角形に裁断したものを用いた。その網を巾着状の袋にして、その中に試料を入れて、巾着状の網の開口部を輪ゴムで縛り閉じた。
さらに、上記試料1及び2に70gの水を加えて加水練りした試料(加水練)(含水率39%)も用意した。試料1については目開きが503μm、試料2については目開きが90μm及び503μmの、一辺120~150mm角の四角形に裁断したポリエチレン製の網を巾着状の袋にして、その中に加水練りした試料を180g入れて、巾着状にした網の開口部を輪ゴムで縛り閉じた。
それらを別々の人工海水中に袋全体が浸漬するように、網袋の上部が1Lの容器中の人工海水の水面から5~7cmの深さになるように吊り下げた。これは、撹拌機の回転羽根に試料が接しない深さである。撹拌機(新東科学工業社製、商品名:スリーワンモータ)を用いて、人工海水を海洋中の波を想定した30rpmの回転数で撹拌した。
そして、それぞれの試料について、攪拌時間に対する拡散放出率(%)を求めた。
その結果を
図2(試料1)及び
図3(試料2)に示す。試料1及び2を加水練りした試料の結果についても
図2(試料1)及び
図3(試料2)に合わせて示す。
【0043】
拡散放出率(%)は、100-(〔網に残った粘土質量(乾燥質量換算)〕/〔仕込み粘土質量(乾燥質量換算)〕)×100(%)で算出した。この場合の乾燥とは、含水率が1%以下であることを意味する。上記式における分母は網に依らず一定であるので、人工海水中に放出された粘土量が多いと拡散放出率は大きくなる。したがって、いずれの試料でも280μmより小さい目開きでは24時間(1日)水中においても50%以上、微生物駆除剤が網の内側に残ることがわかった。また、拡散放出量は
図2の様に目開きによって制御することが可能であることがわかった。
【0044】
また、事前に加水練り(粘土含水率39質量%)すると、503μmの目開きでもほどよい徐放性を実現でき、本試験では24時間は微生物駆除剤が供給し続けられることがわかった。
【0045】
<試験例2>:海水中でのカレニア・ミキモトイの駆除試験
中層域に生息するカレニア・ミキモトイに対する駆除効果を
図4に示し、表1に各試料内容を示す。試料3、4には、1~2mol/Lの塩酸又は硫酸にCa型ベントナイトまたは活性型ベントナイト(Ca型モンモリロナイトにソーダ灰を添加してNa型にしたもの(タイラーのふるいにおいて75%/200メッシュを通る大きさの粒径))を1時間以上浸漬し、それを濾過・乾燥して乾燥品(酸処理Ca-Bt)を得て、さらに蒸留水で洗浄した試料(水洗)を用いた。試料5には、上記の乾燥品(酸処理Ca-Bt)を1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和処理した試料(中和)を用いた。試料6~15には、混合試料は粉体のCa型ベントナイトと塩化アルミニウム6水和物を表1に記載した配合になるように秤量し、粉体同士を均一混和して各試料として用いた。
カレニア・ミキモトイを濾過海水(水温20℃)中に10000~30000cells/mLになるよう希釈した。濾過海水量に対し、濃度が500~5000ppmになるように微生物(赤潮)駆除剤を散布した。表1中の濃度は赤潮駆除剤の海水中の濃度を示す。
上記駆除率は下記式によって求めた。
[駆除率]={([赤潮駆除剤散布前の濾過海水1mL中のカレニア・ミキモトイ細胞数-[赤潮駆除剤散布後の溶液1mL中のカレニア・ミキモトイ細胞数])/[赤潮駆除剤散布前の濾過海水1mL中のカレニア・ミキモトイ細胞数]}×100%
上記カレニア・ミキモトイの細胞数は、以下のようにして測定した。
カレニア・ミキモトイの散布5分後に濾過海水の上澄みを1mL採取し、光学顕微鏡(OLYMPUS BX50)を用いてプランクトン計数板(マツナミ プランクトン計数板 MPC-2000)内の細胞数を計数した。
【0046】
【0047】
表1中、Ca-BtはCa型ベントナイトを表す。
【0048】
赤潮駆除剤による赤潮の駆除効果は
図4及び表1に示した通りであり、いずれの試料についても駆除効果が認められた。特に、塩化アルミニウム6水和物とCa型ベントナイトを組み合わせた試料では、赤潮駆除剤の濃度が低くても良好な駆除効果を得た。
これらの試料は適宜に加水練の状態で使用することにより、所望の長時間の連続散布が可能となった。