(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012754
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】原材料シート、発泡性紙製容器及び発泡性紙製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/26 20060101AFI20220107BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220107BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220107BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20220107BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B41M5/26
B32B5/18
B32B27/00 H
B32B27/10
B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114812
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000152930
【氏名又は名称】株式会社日本デキシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】西橋 勝次
(72)【発明者】
【氏名】柴田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】才高 聖士
【テーマコード(参考)】
2H111
3E062
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA32
3E062AC07
3E062DA02
3E062DA09
3E062JB26
3E062JC10
3E062JD04
4F100AJ04C
4F100AK04D
4F100AK06A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DG10C
4F100DJ01A
4F100EJ61B
4F100GB16
4F100HB31B
4F100JA13A
4F100JA13D
4F100YY00A
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】発泡層にダメージを与えることなくレーザー印字が可能である、レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シート、これを用いた発泡性紙製容器及び発泡性紙製容器の製造方法の提供。
【解決手段】レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シートであって、前記原材料シートは、発泡層、レーザー印字層及び紙基材層をこの順で積層した積層体であり、前記発泡層の厚みは、0.02mm以上である、原材料シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シートであって、
前記原材料シートは、発泡層、レーザー印字層及び紙基材層をこの順で積層した積層体であり、
前記発泡層の厚みは、0.02mm以上である、原材料シート。
【請求項2】
前記発泡層の厚みは、1.0mm以下である、請求項1に記載の原材料シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原材料シートから構成される、発泡性紙製容器。
【請求項4】
胴部と底板部とを有する発泡性紙製容器の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の原材料シートから胴部を形成する工程と、
前記胴部との底部に底板用ブランクを固着して底板部を形成し、発泡性紙製容器を得る工程と、
前記発泡性紙製容器の胴部の外表面にレーザー光を照射し、レーザー印字層に印字する工程と、を備える、発泡性紙製容器の製造方法。
【請求項5】
前記レーザー光がYVO4レーザーである、請求項4に記載の発泡性紙製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料シート、発泡性紙製容器及び発泡性紙製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製容器に文字や意匠を印刷する方法として、一般的に油性インキもしくは水性インキを用いたフレキソ印刷、グラビア印刷が使用されている。油性インキもしくは水性インキを用いたフレキソ印刷、グラビア印刷によれば、美麗な印刷を大量に効率よく生産することができる。例えば、原紙ロール1本で、数10万個分の紙製容器を製造するための紙製容器用胴部材料を得ることができる。このため、同一の意匠の紙製容器を大量に生産する場合には、優れた方法である。
【0003】
一方で、油性インキもしくは水性インキを用いたフレキソ印刷、グラビア印刷は少量の生産ロットには対応しにくいという課題がある。油性インキもしくは水性インキを用いたフレキソ印刷、グラビア印刷の場合、印刷版の製造負担や、大量の製品在庫が発生するためである。このため、特定の意匠の紙製容器を少量生産したいという少量の生産ロットに対応できる、印刷方法が求められている。
少量の生産ロットに対応する印刷方法として油性およびUVインキを用いたオフセット印刷が挙げられる。しかし、油性およびUVのいずれのインキを用いた場合においても、乾燥によりインキ層が硬化するため、例えば発泡性紙製容器の製造には不向きである。
【0004】
印刷版を使用しない印刷方法として、レーザー光を利用して印刷対象物の表面を熱分解、気化又は剥離することにより、対象物に直接、文字、数字、登録商標、バーコード、ロット番号、賞味期限等の印字や、意匠を印字する方法がある(例えば特許文献1~3)。このようなレーザー印字方法によれば、印刷インキ、溶剤及びインキリボン等の消耗品が不要となる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-108003号公報
【特許文献2】特開平8-67068号公報
【特許文献3】特開2015-143019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、紙製品として発泡性紙カップの表面にレーザー光を利用して文字や意匠を印字する方法を試みた。その結果、例えば発泡性紙カップのポリエチレンラミネート下印刷品に、レーザーを照射すると、印刷層のインキが熱分解し、外表面の発泡層のダメージを与えることが確認された。これにより、発泡性紙カップの表面の外観が不良となり、さらに発泡層が剥離するという問題に直面した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、発泡層にダメージを与えることなくレーザー印字が可能である、レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シート、これを用いた発泡性紙製容器及び発泡性紙製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[5]を包含する。
[1]レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シートであって、前記原材料シートは、発泡層、レーザー印字層及び紙基材層をこの順で積層した積層体であり、前記発泡層の厚みは、0.02mm以上である、原材料シート。
[2]前記発泡層の厚みは、0.410mm以下である、[1]に記載の原材料シート。
[3][1]又は[2]に記載の原材料シートから構成される、発泡性紙製容器。
[4]胴部と底板部とを有する発泡性紙製容器の製造方法であって、[1]又は[2]に記載の原材料シートから胴部を形成する工程と、前記胴部との底部に底板用ブランクを固着して底板部を形成し、発泡性紙製容器を得る工程と、前記発泡性紙製容器の胴部の外表面にレーザー光を照射し、レーザー印字層に印字する工程と、を備える、発泡性紙製容器の製造方法。
[5]前記レーザー光がYVO4レーザーである、[4]に記載の発泡性紙製容器の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡層にダメージを与えることなくレーザー印字が可能である、レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シート、これを用いた発泡性紙製容器及び発泡性紙製容器の製造方法を提供することができる。
【0010】
本明細書において、「発泡層に与えるダメージが少ない」とは、レーザー照射前後での原材料シートの総膜厚を測定することにより評価する。具体的には、レーザー照射前後での原材料シートの総膜厚の差が0又は総膜厚が減少している場合には、「発泡層に与えるダメージが少ない」と評価する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<原材料シート>
本実施形態は、レーザー印字用発泡性紙製品に用いる原材料シートである。本実施形態の原材料シートは、発泡層、レーザー印字層及び紙基材層をこの順で積層した積層体である。以下、積層体を構成する各層について説明する。
【0012】
≪発泡層≫
本実施形態の原材料シートにおいて、発泡層は熱可塑性樹脂層を加熱して形成される。すなわち、発泡層は発泡した熱可塑性樹脂層(発泡熱可塑性樹脂層)である。
【0013】
発泡層(発泡熱可塑性樹脂層)の厚みは、0.02mm以上であり、0.021mm以上が好ましく、0.022mm以上がさらに好ましい。
レーザー印字層にレーザーが照射されると、レーザー印字層の印刷インキが熱分解し、発熱する。この熱は、レーザー印字層に接する層に伝播する。発泡層の厚みが上記下限値以上であると、レーザー印字層と発泡層との間に十分な空隙が存在し、発泡層の外表面まで熱が伝播しにくくなる。これにより、発泡層の外表面にダメージを与えることなく、レーザー印字層に所望の文字や意匠を印刷することができる。
【0014】
発泡層(発泡熱可塑性樹脂層)の厚さは、1.0mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下がさらに好ましい。
【0015】
本実施形態において、発泡層の厚みは、製造された原材料シートの断面をマイクロスコープにより観察することにより測定する。
【0016】
発泡熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、押出しラミネートが可能で且つ発泡可能であれば特に限定されず、結晶性樹脂、非結晶性樹脂のどちらの熱可塑性樹脂も使用することができる。
【0017】
結晶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、PPS樹脂等を挙げることができる。
【0018】
非結晶性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、変性PPE、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の融点としては、80℃以上120℃以下程度が好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は単一の樹脂を単層で使用しても、複数の樹脂を複層で使用してもよいが、発泡性の点から単層であることが好ましい。
【0019】
中でも、発泡熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、ラミネート適性、発泡性に優れることからポリエチレンが好ましい。ポリエチレンは、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンに区分される。
【0020】
密度としては、直鎖状低密度ポリエチレンは888kg/m3以上910kg/m3以下、低密度ポリエチレンは910kg/m3以上925kg/m3以下、中密度ポリエチレンは925kg/m3以上940kg/m3以下、さらに高密度ポリエチレンは940kg/m3以上970kg/m3以下である。
融点としては、直鎖状低密度ポリエチレンは55℃以上120℃以下、低密度ポリエチレンは105℃以上120℃以下、中密度ポリエチレンは120℃以上125℃以下、さらに高密度ポリエチレンは125℃以上135℃以下である。
【0021】
≪レーザー印字層≫
レーザー印字層は、紙基材層にインキを塗装することにより形成される。レーザー印字層にレーザーが照射されると、レーザー照射部のインキが熱分解し、退色又は変色する。レーザー未照射部分のインキは残存するため、文字や意匠を印刷することができる。
【0022】
本実施形態において、レーザー印字層は、全面を塗りつぶすいわゆるベタ印刷をすることが好ましい。
【0023】
本実施形態のレーザー印字層を形成するために用いられるインキは、乾燥状態のインキ塗装部の構成に溶剤を加えたものである。本実施形態に用いるインキは、油性インキであってもよく、水性インキであってもよい。本実施形態に用いる油性インキ又は水性インキは、着色剤、溶剤および任意のバインダー樹脂を含むものが好ましい。
【0024】
・着色剤
着色剤としては、無機系着色剤又は有機系着色剤が挙げられる。
無機系着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、カオリン、酸化クロム、シリカ、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)、紺青等が挙げられる。
【0025】
着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から、白色着色剤には酸化チタンが好ましく、さらに、顔料表面が塩基性である酸化チタンがより好ましい。アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0026】
硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、カオリンは体質顔料と呼ばれ、流動性、強度、光学的性質の改善のために増量剤として使用される。
一方、有機系着色剤としては、一般のインキ、塗料及び記録剤等に使用されている有機顔料や染料を挙げることができる。例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系等が挙げられる。その中で、カーボンブラック、紺青、フタロシアニン系、ジオキサジン系が熱分解、気化又は剥離させやすく好ましい。
【0027】
これら着色剤の含有量は、所望とするインキの色調等を考慮して適宜選択することができるが、一般的にインキの全重量を基準として、50重量%以下であればよく、前記上限値以下であることにより、必要な着肉濃度が得られる着色剤の含有量となる。
【0028】
・溶剤
本実施形態においてインキに含まれる溶剤としては、通常、水性又は油性の印刷インキ用の溶剤として使用できる公知の化合物であればよい。例えば、水性インキの場合には溶剤として水を用いる。
【0029】
油性インキの場合には、溶剤として例えばアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族炭化水素系有機溶剤、脂環族炭化水素系有機溶剤又は芳香族炭化水素系有機溶剤等が使用できる。
【0030】
アルコール系溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール等が挙げられる。
【0031】
ケトン系溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0032】
エステル系有機溶剤としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0033】
脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等が挙げられる。
【0034】
脂環族炭化水素系有機溶剤としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等が挙げられる。
【0035】
芳香族炭化水素系有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0036】
本実施形態において、インキの全質量を基準として、溶剤の含有量は、例えば、30質量%以上であればよい。
【0037】
インキは着色剤のほかにバインダー樹脂を含有していてもよい。バインダー樹脂は油性のグラビア用、水性のグラビア用、フレキソ印刷用、UVのオフセット印刷用であれば、特に限定されず、公知の材料が適宜使用できる。
【0038】
≪紙基材層≫
本実施形態の原材料シートに用いられる紙基材としては、例えば、木材より得られた化学パルプ、機械パルプを主体とし、これにケナフ、竹等の非木材パルプを必要に応じて配合し、通常の抄紙工程により抄造して得られる紙基材が挙げられ、これに限定されない。
【0039】
中でも、本実施形態の原材料シートに用いられる紙基材としては、化学パルプを含有するものであることが好ましい。化学パルプを含有するものであることにより機械パルプを使用する場合と比較して、密度を高くしやすく、光を長時間浴びた場合又は高温で長時間保管された場合に黄変を抑制することができ、さらに容器に使用することを想定した場合の強度、剛性が高くなる。
【0040】
紙基材に用いられる全原料パルプに対する化学パルプの配合率は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましい。
また、化学パルプは針葉樹由来の繊維を多く含む方が、発泡性が高いので好ましい。しかしながら、顕著な差ではないので、生産コストを削減する観点から、紙基材に用いられる全原料パルプに対する針葉樹由来の化学パルプの配合率は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0041】
紙基材の原紙坪量は、例えば25g/m2以上500g/m2以下であればよい。また、本実施形態の原材料シートを容器に使用する場合、紙基材の原紙坪量は、発泡性を考慮して例えば30g/m2以上400g/m2以下であればよい。
本実施形態の原材料シートの原紙坪量が上記下限値以上であることにより、発泡による断熱性及び意匠性付与に必要な水分量を充分に担保することができる。また、本実施形態の原材料シートの原紙坪量が上記上限値以下であることにより、発泡後に加工しやすく、紙基材のコストを適正な範囲内に抑えることができる。
【0042】
紙基材に用いられるパルプの濾水度(“Canadian Standard”freeness;CSF)は、150mL以上600mL以下であることが好ましく、200mL以上580mL以下であることがより好ましい。前記パルプのCSFが600mL以下である場合、紙基材内部を水蒸気が透過し難く、紙基材の端面から水蒸気が逃げ難くなるので、発泡厚さが大きくなる。前記パルプのCSFが200mL以上である場合、パルプを叩解して濾水度を下げるための消費電力が大きくならずコスト面で優れている。またパルプ叩解能力増強のための設備対応を緩和することができる。
【0043】
紙基材の密度は、0.6g/cm3以上であることが好ましく、0.7g/cm3以上であることがより好ましく、0.8g/cm3以上であることがさらに好ましい。
紙基材の厚さは、例えば、50μm以上500μm以下であればよい。
【0044】
紙基材の製造方法としては、一般的に、上記のパルプ、水、及び必要に応じて填料やその他薬品等を添加して調成した紙料を抄紙機のワイヤー上に噴射し、ワイヤーパートで脱水、プレスパートで搾水、ドライヤーパートで乾燥した後、また必要に応じて紙に強度や耐水性を付与するサイズプレスや、紙の表面の凹凸を整えるカレンダー処理を施して抄紙し、仕上がった紙を巻取り所定の巻取寸法に仕上げて完成される。また、紙に紙力や耐水性を付与するため、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、澱粉、表面サイズ剤等の薬品を単独で、又は適宜2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本実施形態における紙基材の製造はこれに限定されるものではない。
【0045】
≪任意構成:高融点熱可塑性樹脂層≫
本実施形態に原材料シートは、発泡層、レーザー印字層、紙基材層及び高融点熱可塑性樹脂層をこの順で積層した積層体であってもよい。
高融点熱可塑性樹脂としては、融点の高い中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、トリメチルペンテン等が用いられる。
【0046】
<その他の実施形態>
原材料シートの一実施形態は、部分発泡層、レーザー印字層、紙基材層及び高融点熱可塑性樹脂層をこの順で積層した積層体であってもよい。
本実施形態において部分発泡層は、レーザー印字をする部分に接する部分のみを発泡させた熱可塑性樹脂層である。
【0047】
≪原材料シートの製造方法≫
本実施形態の原材料シートの製造方法としては、例えば、以下に示す方法等により、製造することができる。
すなわち、一実施形態において、本発明は、紙基材の少なくとも片面にレーザー印字層を形成させるレーザー印字層形成工程と、前記レーザー印字層形成工程後の前記紙基材のうち、前記レーザー印字層が形成された面に、熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂層形成工程と、前記該熱可塑性樹脂層を発泡させて、発泡層を形成させる発泡工程と、を備える原材料シートの製造方法を提供する。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0048】
[インキ塗装部形成工程]
まず、紙基材の少なくとも片面にインキを塗布し、インキ塗装部を形成する。
インキとしては、上述の(インキ)に例示されたものと同様のものを使用すればよい。
インキを紙基材の上に塗布する方法としては、特別な限定はなく、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等が挙げられる。
【0049】
[熱可塑性樹脂層形成工程]
次に、レーザー印字層が形成された面に、熱可塑性樹脂層を形成させる。
熱可塑性樹脂層の形成方法としては、特別な限定はなく、例えば、押出しラミネート法、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等の予めフィルム状にしたものと貼合する方法を適宜使用して積層すればよい。中でも、熱可塑性樹脂層の形成方法としては、紙基材との密着性、発泡性等の点から、押出しラミネート法が好ましい。
【0050】
押出しラミネートは、例えば、紙基材の片面または両面に、Tダイから熱可塑性樹脂層を溶融樹脂膜の状態で押出し、クーリングロールとこれに対向するニップロールとの間で冷却しつつ圧着する方法である。押出しラミネートにおいて、樹脂の溶融温度、積層速度等の操業条件は、用いる樹脂の種類や装置によって適宜設定すればよく特に限定されないが、一般に、例えば、溶融温度は200℃以上350℃以下、積層速度は50m/分以上200m/分以下である。また、ニップロールとしては硬度70度以上(JIS K-6253)のものを用い、線圧は15kgf/cm以上で押圧及び圧着を行うことが好ましい。
【0051】
必要に応じて紙基材や熱可塑性樹脂の接着性を向上させるために、コロナ処理、オゾン処理等を行ってもよい。
【0052】
熱可塑性樹脂層(加熱前の発泡熱可塑性樹脂層)の厚さとしては、加熱後に発泡層(発泡熱可塑性樹脂層)を形成させたときに、発泡層の厚みが0.02mm以上となる厚さとする。
【0053】
[発泡工程]
次いで、熱可塑性樹脂層を加熱処理して、熱可塑性樹脂層を発泡させて、発泡層を形成する。
【0054】
加熱温度及び加熱時間は使用する紙基材及び熱可塑性樹脂の種類に応じて変化し、使用する熱可塑性樹脂に対する最適な加熱温度と加熱時間の組み合わせは適宜決定することができるが、加熱温度は発泡する熱可塑性樹脂の融点よりもやや高い温度(融点+5℃以上30℃以下の範囲)が適し、一般的に、加熱温度は110℃以上200℃以下、加熱時間は1分間以上6分間以下である。加熱手段は特に限定されず、例えば、熱風、電熱、電子線等、任意の手段を使用できる。コンベヤによる搬送手段を備えたトンネル内で、熱風又は電熱等によって加熱すれば、安価に大量生産することができる。
【0055】
<発泡性紙製容器>
一実施形態において、本発明は、上述の原材料シートから構成される発泡性紙製容器を提供する。
【0056】
本実施形態の発泡性紙製容器は、発泡層にダメージを与えることなく、レーザーにより印刷が可能である。このため、印刷版の製造が不要となり、小ロットの生産が可能となる。
【0057】
<発泡性紙製容器の製造方法>
本実施形態の発泡性紙製容器は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
まず、巻き取りロールから原材料シートを繰り出す。次いで、原材料シートから胴部材用ブランクと底板部材用ブランクを打ち抜き、常用のカップ成型機で容器の形に組み立てる。ここで、発泡熱可塑性樹脂層は、胴部材の外壁面側に存在すればよい。
【0058】
例えば、胴部材は発泡熱可塑性樹脂層が容器外側に、紙基材層又は高融点熱可塑性樹脂層が容器内側に向くようにして、組み立てる。底板部材は、紙基材の少なくとも容器内面側の片面に発泡していない熱可塑性樹脂層を設けたものが好ましく使用される。これは紙中への液体等の浸透防止のためである。底板部材に用いられる熱可塑性樹脂は、胴部材と同じであっても異なっていてもよく、積層方法も押出しラミネート法の他、ウェットラミネート法、ドライラミネート法等の予めフィルム状にしたものと貼合する方法が適宜使用できる。
【0059】
組み立てた発泡性紙製容器の胴部の外表面にレーザー光を照射し、レーザー印字層に印字する。具体的には、文字、数字、登録商標、バーコード、ロット番号、賞味期限等の印字や、意匠を印字する。
本実施形態において、レーザー印字層に照射するレーザーは、固体レーザーであることが好ましい。
固体レーザーとしては、レーザー媒質にイットリウム・アルミニウム及びガーネットといった鉱石(YAG)を用いたものや、イットリウム・バナデート結晶(YVO4)を用いたレーザー光が挙げられる。
【0060】
本実施形態において、レーザー光がYVO4レーザー又はYAGレーザー、FAYbレーザーが好ましく、YVO4レーザーがより好ましい。
YVO4レーザー又はYAGレーザー、FAYbレーザーを用いると、励起光が発泡層を通過し、レーザー印字層のみに印字することができる。前記3種類のレーザー光の波長は、いずれも1064nmである。
【実施例0061】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
215g/m2 (厚さ247μm、密度0.80~0.83g/cm3、化学パルプ100%、含水率7.8%)の紙基材の片面に、インキを塗布し、レーザー印字層を形成した。インキの組成は、油性とし、グラビア印刷により形成した。レーザー印字層の上に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 銘柄名:LC701、密度0.918g/cm3、融点106℃)を厚さ35μmで押出ラミネートした。
紙基材のレーザー印字層を形成した面とは反対の面には中密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:LW04-01、密度0.940g/cm3、融点131℃)を厚さ18μmで押出ラミネートした。
その後、オーブンに入れ、120℃で2分間加熱し、発泡させた。
実施例1の原材料シートにおいて、発泡層の厚みは0.062mmであった。
【0063】
実施例1の原材料シートの厚みは、0.327mmであった。
実施例1の原材料シートに対し、発泡層の面からレーザー印字層にYVO4レーザーを照射し、文字を印刷した。YVO4レーザーの照射条件は出力10Wの90%、Qスイッチパルス=10KHz、スキャンスピード500mm/sとした。
【0064】
YVO4レーザーを照射した後に原材料シートの厚みを測定したところ、0.323mmであった。レーザー照射前後で原材料シートの厚みが増大しなかったことから、発泡層にダメージを与えることなくレーザー印字が可能であると評価した。
【0065】
[実施例2]
215g/m2 (厚さ247μm、密度0.80~0.83g/cm3、化学パルプ100%、含水率7.8%)の紙基材の片面に、インキを塗布し、レーザー印字層を形成した。インキの組成は、油性とし、グラビア印刷により形成した。レーザー印字層の上に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 銘柄名:LC701、密度0.918g/cm3、融点106℃)を厚さ35μmで押出ラミネートした。
紙基材のレーザー印字層を形成した面とは反対の面には中密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:LW04-01、密度0.940g/cm3、融点131℃)を厚さ18μmで押出ラミネートした。
その後、オーブンに入れ、120℃で5分間加熱し、発泡させた。
実施例2の原材料シートにおいて、発泡層の厚みは0.410mmであった。
【0066】
実施例2の原材料シートの厚みは、0.675mmであった。
実施例2の原材料シートに対し、発泡層の面からレーザー印字層にYVO4レーザーを照射し、文字を印刷した。YVO4レーザーの照射条件は出力10wの90%、Qスイッチパルス=10KHz、スキャンスピード500mm/sとした。
【0067】
YVO4レーザーを照射した後に原材料シートの厚みを測定したところ、0.675mmであった。レーザー照射前後で原材料シートの厚みが増大しなかったことから、発泡層にダメージを与えることなくレーザー印字が可能であると評価した。
【0068】
[比較例1]
215g/m2(厚さ247μm、密度0.80~0.83g/cm3、化学パルプ100%、含水率7.8%)の紙基材の片面に、インキを塗布し、レーザー印字層を形成した。インキの組成は、油性とし、グラビア印刷により形成した。レーザー印字層の上に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 銘柄名:LC701、密度0.918g/cm3、融点106℃)を厚さ35μmで押出ラミネートした。
紙基材のレーザー印字層を形成した面とは反対の面には中密度ポリエチレン(東ソー株式会社製 銘柄名:LW04-01、密度0.940g/cm3、融点131℃)を厚さ18μmで押出ラミネートした。
【0069】
比較例1の原材料シートの厚みは、0.3mmであった。
比較例1の原材料シートに対し、熱可塑性樹脂層の面からレーザー印字層にYVO4レーザーを照射し、文字を印刷した。YVO4レーザーの照射条件は出力10wの90%、Qスイッチパルス=10KHz、スキャンスピード500mm/sとした。
【0070】
YVO4レーザーを照射した後に原材料シートの厚みを測定したところ、0.317mmであった。レーザー照射前後で原材料シートの厚みが増大したことから、発泡層がダメージを受けていると評価した。
【0071】
[比較例2]
215g/m2 (厚さ247μm、密度0.80~0.83g/cm3、化学パルプ100%、含水率7.8%)の紙基材の片面に、インキを塗布し、レーザー印字層を形成した。インキの組成は、油性とし、グラビア印刷により形成した。レーザー印字層の上に、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製 銘柄名:LC701、密度0.918g/cm3、融点106℃)を厚さ35μmで押出ラミネートした。
その後、オーブンに入れ、120℃で1分間加熱し、発泡させた。
比較例2の原材料シートにおいて、発泡層の厚みは0.047mmであった。
【0072】
比較例2の原材料シートの厚みは、0.312mmであった。
比較例2の原材料シートに対し、発泡層の面からレーザー印字層にYVO4レーザーを照射し、文字を印刷した。YVO4レーザーの照射条件は出力10wの90%、Qスイッチパルス=10KHz、スキャンスピード500mm/sとした。
【0073】
YVO4レーザーを照射した後に原材料シートの厚みを測定したところ、0.315mmであった。レーザー照射前後で原材料シートの厚みが増大したことから、発泡層がダメージを受けていると評価した。
【0074】
上記の通り、実施例1~2では、レーザーにより印字することが可能であり、かつ、外面の発泡層にはレーザー照射によるダメージがみられなかった。
本発明によれば、小ロットの発泡性紙製を低コストで短期間に製造することができることがわかった。