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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127583
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ショット処理装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 3/32 20060101AFI20220824BHJP
   B24C 5/06 20060101ALI20220824BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B24C3/32 B
B24C5/06 Z
B24C5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004168
(22)【出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021024923
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 通章
(57)【要約】
【課題】ショット媒体の投射範囲よりも小さい被処理物を効率よくショット処理することができるショット処理装置を提供する。
【解決手段】ショット媒体Tを被処理物Wに投射し、衝突させて、被処理物の表面処理を行うショット処理装置は、ショット媒体Tを被処理物Wに向けて投射するショット機構3と、被処理物Wを挟んでショット媒体Tの流れの下流側に設けられ、ショット機構3から投射されたショット媒体Tを被処理物Wに反射させる反射板5と、を含み、反射板5は、ショット媒体Tの下流に向けて連続的に曲率が増加する凹曲面の反射面5bを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショット媒体を被処理物に投射し、衝突させて、被処理物の表面処理を行うショット処理装置であって、
前記ショット媒体を前記被処理物に向けて投射するショット機構と、
前記被処理物を挟んで前記ショット媒体の流れの下流側に設けられ、前記ショット機構から投射されたショット媒体を前記被処理物に反射させる反射板と、を含み、
前記反射板は、前記ショット媒体の下流に向けて連続的に曲率が増加する凹曲面の反射面を有する、ショット処理装置。
【請求項2】
前記反射板は、前記ショット機構からみて前記被処理物を挟んだ反対側に開口を有する、請求項1に記載のショット処理装置。
【請求項3】
前記ショット媒体の流れの下流側であって、前記ショット機構からみて前記反射板の開口部を通過した位置に、前記開口から流出する前記ショット媒体の通過を規制する通過規制部材を備える、請求項1又は2に記載のショット処理装置。
【請求項4】
前記反射板の反射面の縦断面形状は、前記被処理物の中心から前記ショット機構に向かう線をy軸正方向とし、前記被処理物の中心が原点となり、aとbが正である放物線y=ax-bで近似される、請求項1から3のいずれか1項に記載のショット処理装置。
【請求項5】
前記放物線y=ax-bにおいて、aは、0.001~0.009の範囲であり、bは、10~20の範囲であり、b/aは、1111~20000の範囲である、請求項4に記載のショット処理装置。
【請求項6】
前記放物線y=ax-bにおいて、aは、0.003~0.007の範囲であり、bは、13~17の範囲であり、b/aは、1857~5667の範囲である、請求項4に記載のショット処理装置。
【請求項7】
前記被処理物は線材である、請求項1から6のいずれか1項に記載のショット処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショット処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークのスケール落としやバリ取りや表面粗し等を行うショットブラスト加工、疲労強度向上等を行うショットピーニング処理、等の表面加工には、ショット材をワークの表面に投射または噴射してワークを加工するショット処理装置が用いられる。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2012/090531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショット媒体を投射機によって被処理物に投射し、ショット処理をする場合、ショット媒体の投射範囲内に位置する被処理物のショット処理領域、すなわちショット媒体が被処理物に衝突する範囲が、ショット媒体の投射範囲よりも小さい場合がある。このとき被処理物が存在する領域に投射されたショット媒体は、被処理物に衝突してショット処理が有効におこなわれる。しかし、ショット媒体が被処理物に衝突しない範囲に投射されたショット媒体は、ショット処理に寄与することがなく、余剰の投射である。また、これらのショット処理に寄与しなかったショット媒体がショット処理装置の筐体内に衝突するので、ショット処理装置筐体内の損耗の原因となる場合がある。さらに、筐体内に衝突したショット媒体の運動エネルギーは、熱に変換されることにより、装置内の温度が上昇し、装置が高温となる場合がある。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ショット媒体の投射範囲よりも小さい被処理物を効率よくショット処理することができるショット処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一側面は、ショット媒体を被処理物に投射し、衝突させて、被処理物の表面処理を行うショット処理装置である。このショット処理装置は、ショット機構と反射板とを含む。ショット機構は、ショット媒体を被処理物に向けて投射する。被処理物を挟んでショット媒体の流れの下流側に設けられる反射板は、ショット機構から投射されたショット媒体を被処理物に反射させる。反射板は、ショット媒体の下流に向けて連続的に曲率が増加する凹曲面の反射面を有する。
本発明によれば、ショット媒体の下流に向けて連続的に曲率が増加する反射面を有する反射板を備えるので、被処理物に衝突せず通過したショット媒体を被処理物に反射させることができるので、効率よくショット処理することができる。
【0007】
本発明の一態様では、反射板は、ショット機構からみて被処理物を挟んだ反対側に開口を有する。
この一態様では、反射板に開口を有するので、ショット媒体が反射板に滞留するのを防止することができる。
【0008】
本発明の一態様では、ショット媒体の流れの下流側であって、ショット機構からみて反射板の開口部を通過した位置に、開口から流出するショット媒体の通過を規制する通過規制部材を備える。
この一態様では、通過規制部材が開口から流出するショット媒体の通過を規制するので、ショット媒体がショット処理装置の筐体内部を損傷するのを防止することができる。
【0009】
本発明の一態様では、反射板の反射面の縦断面形状は、被処理物の中心からショット機構に向かう線をy軸正方向とし、被処理物の中心が原点となり、aとbが正である放物線y=ax-bで近似される。
この一態様では、反射板の反射面の縦断面形状は、放物線y=ax-bで近似され、被処理物の中心が近似式の原点に位置決めされるので、ショット媒体を適切な方向に反射させるための最適な曲面の反射板を形成することができる。
【0010】
本発明の一態様では、放物線y=ax-bにおいて、aは、0.001~0.009の範囲であり、bは、10~20の範囲であり、b/aは、1111~20000の範囲である。
この一態様では、反射板の反射面の断面形状を放物線に合致させた形状とし、ショット媒体を適切な方向に反射させるための最適な曲面の反射板を形成することができる。
【0011】
本発明の一態様では、放物線y=ax-bにおいて、aは、0.003~0.007の範囲であり、bは、13~17の範囲であり、b/aは、1857~5667の範囲である。
この一態様では、反射板の反射面の断面形状を放物線に合致させた形状とし、ショット媒体を適切な方向に反射させるための最適な曲面の反射板を形成することができる。
【0012】
本発明の一態様では、被処理物は線材である。
この一態様では、線材が、ショット媒体の投射範囲よりも十分に小さく、且つ断面形状が円形であるので、反射板により反射されたショット媒体が効率よく線材に衝突する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ショット媒体の投射範囲よりも小さい被処理物を効率よくショット処理することができるショット処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る、ショット処理装置の構成を示す模式図であって側面から見た図である。
図2図1のショット処理装置の平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る、ショット処理装置の要部の模式図である。
図4図3の矢印A方向から見た拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係る、反射板の平面図である。
図6】本発明の作用の説明のための図であって、図4の反射板付近の図である。
図7】本発明の実施例に係る図である。
図8】本発明の比較例に係る図である。
図9】本発明の比較例に係る図である。
図10】本発明の比較例に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態では、被処理物Wは、線状の形状を有し、断面形状が円形である、金属の線材である場合を例に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る、ショット処理装置1の構成を示す模式図であって側面から見た図である。図2は、図1のショット処理装置1の平面図である。
【0016】
なお、本明細書における「投射」とは、インペラ式のショット機構3を用いた場合のように羽根車による遠心力によってショット媒体Tを投射する場合、エア式のショット機構3を用いた場合のように圧縮空気や風力によってショット媒体Tを噴射する場合、のいずれもの態様を含む。
【0017】
ショット媒体は、被処理物に衝突させ被処理物をショット処理する材料のことである。ショット処理は、被処理物の表面処理を行うものであるが、この表面処理には、被処理物の表面のバリや錆やスケールを落とす研磨に類する処理や、被処理物表面の梨地加工、または被処理物の表面に対して塑性変形による加工硬化、圧縮残留応力の付与を図るピーニング処理等を含む。ショット媒体Tの材質は、金属(例えば、鉄、亜鉛、ステンレス)、セラミック(例えば、アルミナ、炭化ケイ素、ジルコン)、ガラス、樹脂(例えば、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂)、植物由来物(例えば、くるみ、ピーチ)など種々の材質から選択される。ショット媒体Tの形状は、球状、多角形状、円柱状など種々の形状から選択される。例えば、金属の粒子の場合、ショットと呼ばれる球状粒子、グリッドと呼ばれる鋭角部を有する多角形状粒子、カットワイヤと呼ばれる円柱形状または円柱形状の角部を丸くした粒子、を選択できる。様々な材質や形状から、ショット処理の所望の条件に基づいて、適宜選択して採用してよい。
【0018】
図1図2に示すように、ショット処理装置1は、投射室15内に、ショット媒体Tを被処理物Wに向けて投射するショット機構3と、被処理物Wを挟んでショット媒体Tの流れの下流側に設けられ、ショット機構3から投射されたショット媒体Tを被処理物Wに反射させる反射板5とを備える。即ち、ショット機構3、被処理物W、反射板5の順で配置される。投射室15の隣には、吹落とし室17が設けられている。被処理物Wは、搬入ローラ11により投射室15に搬入され、搬出ローラ13により吹落とし室より搬出され、直線経路を一方向に向けて進行する。本実施形態に係るショット機構3は、インペラであり、駆動モータ9にベルト(図示せず)を介してインペラを回転させてショット媒体を被処理物Wに投射している。
【0019】
図3は、本実施形態に係る、ショット処理装置の要部の模式図である。図3には、ショット機構3により、被処理物Wにショット媒体Tが投射されているところを模式的に示している。図4は、図3の矢印A方向からみた拡大図である。図4に示すように、本実施形態に係る反射板5は、ショット媒体Tの下流に向けて連続的に曲率が増加する反射面5bを有する。
【0020】
図5は、反射板5の平面図である。図4図5に示すように、反射板5は、ショット機構3からみて被処理物Wを挟んだ反対側に開口5aを有する。ここで開口5aの短手方向の幅は、被処理物Wの径の200%から50%(ただし≧5mm)であってもよい。また、図3図4に示すように、ショット機構3からみて反射板5の前方には、開口5aから流出するショット媒体Tの通過を規制する通過規制部材7を備えている。通過規制部材7は、ショット機構3から開口5aに向かう方向に対して傾斜をもって配置されている。図1図2では、拡大率の関係から、通過規制部材7が省略されている。
【0021】
図4に示すように、反射板5の反射面5bの曲面は、被処理物Wの中心oからショット機構3に向かう線をy軸とし、被処理物Wの中心が原点oとなり、aとbが正である放物線y=ax-bで近似される。ここでaは、0.001~0.009の範囲が適切であり、より好ましくは、0.003~0.007である。bは、10~20の範囲が適切であり、より好ましくは13~17である。また、b/aは、1111~20000の範囲が適切であり、より好ましくは、1857~5667である。本発明者は、種々の実験からこの好適な数値範囲を得た。
【0022】
次に、図1図2を参照して、ショット処理装置1の動作について説明する。被処理物Wは、投射室15に搬入され、吹落とし室17を経て搬出されるように、搬入ローラ11から搬出ローラ13に向けて、投射室15から吹落とし室17へその室内を連続的に搬送される。投射室15内には、水平左右方向からショット媒体Tを被処理物Wに投射するインペラ3a、3aと上下方向からショット媒体Tを被処理物Wに投射するインペラ3b、3bが設けられている。
【0023】
図2に示すように、搬入ローラ11により、投射室15に搬入された被処理物Wは、インペラ3aによって右からショット媒体Tを投射されてショット処理される。右からのショット処理が終了した被処理物Wは、さらに投射室15の奧(紙面左側)に搬送されてインペラ3aによって左からショット媒体Tを投射されてショット処理される。左右方向のショット処理が終了した被処理物Wは、次に図1に示すように、図1紙面上左側に搬送されて、インペラ3bによって上からショット媒体Tを投射されてショット処理される。上からのショット処理が終了した被処理物Wは、さらに投射室15の奧(紙面左側)に搬送されてインペラ3bによって下からショット媒体Tを投射されてショット処理される。
【0024】
上下左右の4方向のショット処理が終了した被処理物Wは、吹落とし室17に搬送され、図示しないブラシやスクレーパ、及び圧縮空気の吹き付け等により粉塵やショット媒体が分離され清浄な状態となり、搬出ローラ13によってショット処理装置1の外部に搬送される。なお、スクリューコンベヤやバケットエレベータ等によるショット媒体の循環装置や集塵機に係る機構については、従来と同等(例えば、特許文献1参照)であるのでここではその説明を省略する。
【0025】
図6は、反射板5の作用の説明のための模式図であって、ショット媒体Tが紙面上方から下方へ被処理物Wに向けて投射されている。図6に示すように、被処理物Wに直接衝突する軌道aをもつショット媒体Tの粒pは、被処理物Wに衝突してはね返る(軌道b)。このとき被処理物Wに対してショット処理が行われる。被処理物Wに衝突しない軌道cをもつショット媒体Tの粒qは、被処理物Wには衝突せずに、被処理物Wのわきを通り抜ける。被処理物Wのショット媒体Tの下流には反射板5が備えられている。反射板5の反射面5bは凹曲面である。反射面5bは、ショット媒体Tの流れの下流に向けてその曲率が連続的に増加するように形成されている。反射面5bの縦断面形状(即ち、ショット機構から被処理物Wに向かう方向に水平な断面)は、好適には、被処理物Wの断面の中心を原点とする、y=ax-bで近似されるように形成されている。したがって、反射面5bは、粒子qが反射面5bに衝突すると、粒子qが被処理物Wに向けて反射するように形成されている(軌道d)。反射面5bは、曲率が連続的に変化するように形成されている。したがって、被処理物Wに衝突しない領域を通過してきたショット媒体Tをそれぞれの軌道に対して被処理物Wの中心oに向けて反射するように反射軌道を調整することが可能となる。
【0026】
また、反射板5bには、ショット機構3からみて被処理物Wを挟んだ反対側に開口5aが形成されており、被処理物Wに衝突し、図上下方に向かった粒qは、開口5aからさらに下方に流出する(軌道e)。開口5aの前方には、通過規制部材7が、開口5aに垂直な方向に傾斜をもって配置されている。開口5aから下方に向かった粒qは、通過規制部材7に衝突しその軌道fで反射される。
【0027】
以上述べたように、本実施形態では、ショット機構3から投射されたショット媒体Tを被処理物Wに反射させる反射板5を備え、反射板5は、ショット媒体Tの下流に向けて連続的に曲率が増加する反射面5bを有し、好適には、被処理物Wの中心を原点とするy=ax-bで近似される。この近似式により、ショット媒体を適切な方向に反射させるための最適な曲面の反射板5を形成することができる。したがって、ショット媒体Tの投射範囲よりも小さい被処理物Wをショット処理する際に、被処理物Wに直接衝突しないショット媒体Tを反射板5で効率良く被処理物Wに反射させてショット処理を行うことができる。さらに、この近似式において、aは、0.001~0.009の範囲の範囲であり、bが10~20の範囲の範囲であり、b/aが1111~20000の範囲の範囲であると、ショット媒体Tを効率よく被処理物Wに向けて反射することができるので、ショット処理の時間を短くすることができる。
【0028】
本実施形態では、被処理物Wとして金属の線材をショット処理している。
線材はショット媒体の投射範囲より極めて細いため、従来の装置では線材に衝突しないでショット処理装置の筐体内に衝突するショット媒体が多数存在することになる。このショット媒体の筐体への衝突により、線材に与えられなかったエネルギーが装置筐体に与えられ、このエネルギーが装置温度の上昇の原因となる。また、一般に、線材をショット処理する装置は小型に形成されるので、大型の装置に比べて表面積が小さく、放熱性が低い。その為、ショット媒体が筐体内部に高いエネルギーで衝突することで発生した熱が、内部に蓄積されていくことで、さらに高温となる。高温となる装置では、作業者の火傷対策のため装置外面に断熱材を用いたカバーを設置したり、装置内の機構を熱で損傷しないために装置内の気流を制御したり、等いろいろな対策が必要となってくる。
【0029】
本実施形態におけるショット処理装置1は、上述した観点から、被処理物Wとして線材をショット処理する際に好適に使用することができる。すなわち、本実施形態では、反射板5を用いることにより、従来であれば線材に衝突しないショット媒体Tを反射板5で反射させて線材に衝突させ、ショット媒体Tに与えたエネルギーの損失を防止して、線材のショット処理を効率よく行うことができる。また、ショット媒体Tの筐体への衝突を防ぐことができるので、従来技術では、線材以外に衝突して消費していたエネルギーが低減されるため、ショット処理装置1の温度の上昇を防止することができる。さらに、反射板5の形状を前述のように最適化することで、ショット処理に要する時間を短縮することができるので、熱の累積による温度の上昇を抑制することができる。
【0030】
反射板5には、ショット機構3からみて被処理物Wを挟んだ反対側に開口5aが設けてあるので、反射板5上にショット媒体Tの滞留を防止することができる。開口5aの前方には、通過規制部材7が設けられているので、開口5aから流出するショット媒体Tの通過を規制してショット処理装置1の筐体内壁および装置自体の損耗を防止することができる。
本実施形態では、通過規制部材7は、開口5aの開口方向に対して一定の角度をもって配置された板状体であるが、これに限定されず、開口5aを通過してくるショット媒体Tの筐体への衝突を妨げるものであればその形状は問わない、例えば凸面形状、凹面形状を有する金属塊を通過規制部材7として採用してもよい。
【0031】
なお、上述の実施形態では、被処理物Wとして線材が選択されたがこれに限定されず、ショット媒体Tが被処理物Wに衝突せずに下流側に通過する場合に効果を奏する。例えば、棒状の長尺の形状を有する被処理物Wや、投射範囲より小さい被処理物Wにおいて、本願発明を有効に利用することができる。
【0032】
また、長尺の形状に限定されず、一般的な形状(例えば立方体で近似される形状)の被処理物を処理するために、反射板5として、例えばすり鉢状の形状を有してその断面形状が放物線で近似できるものを採用してよい。
【0033】
また、実施形態では、ショット機構3としてインペラを採用して説明したが、これに限定されない。例えば、ショット機構3としてショット媒体Tを圧縮空気と共に被処理物Wに向けて噴射するノズルや、風力によってショット媒体Tを吹き付けるブロアを採用した場合でも、本発明は効果を奏する。
また、本実施形態では、反射板5の反射面5bの断面形状が、放物線である場合について説明したが、この反射面5bの断面形状は、放物線以外であってもよく、ショット媒体Tの下流に向けて連続的に曲率が増加する凹曲面の反射面であればよい。
【0034】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上述の構成に対して、構
成要素の付加、削除又は転換を行った様々な変形例も含むものとする。
【実施例0035】
以下、図7から図10を参照して、本発明の実施例と比較例について説明する。図7から図10は、反射板の有無および反射板の形状による線材に対するショットの当たり具合を示す図である。投射条件は、すべて、以下の通りである。
<投射条件>:
ショット媒体:スチールショット、粒径:φ0.2、投射速度:73m/s、投射量2.8kg/min
【0036】
図7は、本発明の実施例に係る放物線で近似される凹曲面を有する反射板による実施例である。図7で示すように、Rで示す破線の領域にみえているショット媒体は、線材の上面に衝突して反射しているショット媒体である。このように、線材の上面の部分は有効にショット処理が行われる。破線Sで示す部分は、線材に直接衝突しなかったショット媒体が反射板の反射面で反射して線材の下面に向けて衝突している領域を表している。本発明に係る反射板は、このように本来ショット処理に寄与しないショット媒体を反射板で反射させて、線材の下面のショット処理に寄与することができる。図からわかるように、反射版は、対称に湾曲しているので、図上左側の領域Sだけでなく、右側の領域のショット媒体も、反射版で反射されて線材のショット処理に寄与していることがわかる。
【0037】
図8は、本発明の比較例に係る平坦な反射面を有する反射板が水平に配置された場合の図である。領域Rの部分は、図7と同等で、ショット処理に寄与したショット媒体が線材の上面に衝突して反射している。領域Sの部分は、線材に直接衝突しなかったショット媒体が反射板の平坦面で反射している。反射方向は、垂直となっているので、線材の下面に対してはショット媒体が衝突していないのがわかる。このことから単なる平坦な反射板を水平に配置しただけでは、本発明の効果が得られないことがわかる。
【0038】
図9は、本発明の比較例に係る平坦な反射面を有する反射板がショット媒体の投射方向に対して傾斜をもって配置された場合の図である。領域Rの部分は、図7と同等で、ショット処理に寄与したショット媒体が線材の上面に衝突して反射している。領域Sの部分は、線材に直接衝突しなかったショット媒体が反射板の平坦面で反射している。本比較例の反射版は、ショット媒体の投射方向に対して傾斜をもって配置されているので、ショット媒体は、反射版で反射して斜め上方に飛ぶが、これらのショット媒体が線材のショット処理に寄与することはない。このことから単なる平坦な反射板を傾斜をつけて配置しても、本発明の効果が得られないことがわかる。
【0039】
図10は、本発明の比較例に係る反射板が配置されていない場合の図である。領域Rの部分は、図7と同等で、ショット処理に寄与したショット媒体が線材の上面に衝突して反射している。領域Sの部分は、線材に直接衝突しなかったショット媒体がそのまま下方へ通過しており、これらのショット媒体は線材のショット処理に寄与しない。以上の実施例、比較例によって、本願発明の放物線で近似される凹曲面を有する反射板の効果である、従来ショット処理に寄与しないショット媒体をショット処理に利用できるということが明らかになった。
【符号の説明】
【0040】
1 ショット処理装置
3、3a、3b ショット機構(インペラ)
5 反射板
5a 開口
5b 反射面
7 通過規制部材
T ショット媒体
W 被処理物(線材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10