(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127596
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20220824BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20220824BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
C08J5/18 CFH
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018203
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021025446
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】武笠 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑介
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 慶輔
【テーマコード(参考)】
4F071
5F136
【Fターム(参考)】
4F071AA67
4F071AB03
4F071AB18
4F071AB22
4F071AD01
4F071AD02
4F071AD06
4F071AE22
4F071AF19Y
4F071AF44Y
4F071AF54
4F071AG05
4F071AG26
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA09
4F071BB03
4F071BB06
4F071BB13
4F071BC01
4F071BC12
5F136BC04
5F136BC07
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA25
5F136FA53
5F136FA55
5F136FA63
5F136FA66
5F136FA82
5F136GA17
5F136GA35
(57)【要約】
【課題】簡易な工程で、低残留応力でありながらクリープ量が少なく、低熱抵抗値でタック性を有する熱伝導性シートを得る。
【解決手段】実施形態の熱伝導性シートは、炭素繊維と、無機フィラーとして窒化アルミニウム、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムのうち少なくともいずれかと、を含む熱伝導フィラーと、体積割合が30~45%の2液付加反応型シリコーンと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積割合が55~70%であり、炭素繊維と、無機フィラーとして窒化アルミニウム、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムのうち少なくともいずれかと、を含む熱伝導フィラーと、
体積割合が30~45%の2液付加反応型シリコーンと、
を含む熱伝導性シート。
【請求項2】
熱伝導率が10W/m・K以上である、
請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
厚さ0.35mm以下とした前記熱伝導性シートを、2.81kgf/cm2で加圧した際の熱抵抗値が0.20℃・cm2/W以下であり、
初期厚みの50%の厚さとなるように圧縮した時の残留応力が276kPa以下である、
請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
100kPaで1000時間加圧した際にシート面内のx、y方向の変形率が15%以下である、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
プレスした熱伝導性シートを5.1mmΦのプローブで2mm/秒で200gfで押し付けた後、10mm/秒で引き剥がした際のタック力が80gf以上である、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
炭素繊維と、無機フィラーとして窒化アルミニウム、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムのうち少なくともいずれかと、を含む熱伝導フィラーと、体積割合が30~45%の2液付加反応型シリコーンと、を混合して熱伝導シート組成物を作成する工程と、
前記熱伝導シート組成物を熱硬化して、ブロック体を成形する工程と、
前記炭素繊維が熱伝導シートの厚さ方向に配向するように前記ブロック体をスライスして前記熱伝導シートを作成する工程と、
を備えた熱伝導性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の更なる高性能化に伴って、半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。これに伴って、電子機器を構成する電子部品から発熱する熱をさらに効率よく放熱することが重要になっている。
【0003】
半導体素子は、効率よく放熱させるために、熱伝導性シートを介して放熱ファン、放熱板等のヒートシンクに取り付けられている。熱伝導性シートとしては、シリコーンに無機フィラー等の充填材を分散含有させたものが広く使用されている。
【0004】
このような放熱部材においては、更なる熱伝導率の向上が要求されており、一般には、高熱伝導性を目的として、マトリックス内に配合されている無機フィラーの充填率を高めることにより対応している。
【0005】
しかし、無機フィラーの充填率を高めると、柔軟性が損なわれたり、粉落ちが発生したりするおそれがある。このため、無機フィラーの充填率を高めることには限界がある。
【0006】
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、高熱伝導率を目的として、窒化ホウ素、黒鉛等の鱗片状粒子、炭素繊維等をマトリックス内に充填させることがある。これは、鱗片状粒子等の有する熱伝導率の異方性によるものである。
【0007】
例えば、炭素繊維の場合には、繊維方向に約600~1200W/mKの熱伝導率を有する。窒化ホウ素の場合には、面方向に約110W/mK、面方向に対して垂直な方向に約2W/mK程度の熱伝導率を有しており、異方性を有することが知られている。
このように炭素繊維、鱗片状粒子の面方向を熱の伝達方向であるシートの厚み方向と同じにする。即ち、炭素繊維、鱗片状粒子をシートの厚み方向に配向させることによって、熱伝導を飛躍的に向上させることができる。
【0008】
また、特許文献1には、繊維状フィラーを含む組成物のブロックからスライスして得たシートをプレス処理することで繊維状フィラー同士の接触が促進されることにより熱伝導性が改善されることが記載されている。
そしてプレス処理の結果、シート表面の平滑性が改善され、発熱体や放熱体との密着性が良くなる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、プレス技術を駆使することで放熱体との密着性が向上しフィラー同士の接触が促進される一方で、内部が密になっているプレス後のシートを更に圧縮するにはより大きな圧力を要するという課題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、簡易な工程で、低残留応力でありながらクリープ量が少なく、低熱抵抗値でタック性を有する熱伝導性シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、実施形態の熱伝導性シートは、炭素繊維と、無機フィラーとして窒化アルミニウム、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムのうち少なくともいずれかと、を含む熱伝導フィラーと、体積割合が30~45%の2液付加反応型シリコーンと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
実施形態の熱伝導性シートによれば、低残留応力でありながらクリープ量が少なく、低熱抵抗値でタック性を有する熱伝導性シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の熱伝導性シートの製造フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術が適用された熱伝導性シートの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
まず実施形態の熱伝導性シートについて説明する。
実施形態の熱伝導性シートは、熱伝導フィラーとして、体積割合が55~70%であり、炭素繊維、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムのうち、少なくともいずれかを含んでいる。
さらに熱伝導性シートは、体積割合が30~45%の高分子マトリックス成分としての2液付加反応型シリコーンを含んでいる。
【0016】
図1は、実施形態の熱伝導性シートの製造フローチャートである。
まず、所定比率で所定量の2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂を混合し調製する(ステップS11)。
【0017】
ここで、高分子マトリックス成分として、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂を用いている理由について説明する。
高分子マトリックス成分としては、熱硬化性ポリマーが用いられているが、熱硬化性ポリマーの中でも、成形加工性及び耐候性に優れるとともに、電子部品に対する密着性及び追従性の点から、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
シリコーン樹脂としては、様々な種類があるが、高分子マトリックス成分として2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂をもちいている理由は、シリコーン樹脂の中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるからである。
このためのシリコーン樹脂としては、付加反応型液状シリコーン樹脂が特に好ましいからである。
【0018】
ここで、液状シリコーン成分は、主剤となるシリコーンA液成分と硬化剤が含まれるシリコーンB液成分を有し、シリコーンA液成分とシリコーンB液成分とが所定の割合で配合されている。
これと並行して、一又は複数の熱伝導性フィラーの調製を行う(ステップS12)。
【0019】
この場合において、熱伝導性フィラーとしては、表面処理が施されたものを用いることができる。この表面処理としてカップリング剤で熱伝導性フィラーを処理すると、熱伝導性フィラーの分散性が向上し、ひいては、熱伝導性シートの柔軟性が向上する。
【0020】
ここで、熱伝導性フィラーとしては、炭素繊維、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムの少なくともいずれかが用いられる。
続いて2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂に調製した熱伝導性フィラーを添加して分散させ、シリコーン樹脂組成物(熱伝導性樹脂組成物)を調製する(ステップS13)。
【0021】
次に、得られたシリコーン樹脂組成物を、内壁に剥離処理した金型の中に押し出してシリコーン成型体を作成する(ステップS14)。
【0022】
得られたシリコーン成型体を所定温度で所定時間加熱処理し、シリコーン硬化物とする(ステップS15)。
続いて、得られたシリコーン硬化物を超音波カッターでスライス(切断)し、所定厚さ(例えば、0.33mm)の成型体シートを得る(ステップS16)。
【0023】
さらに得られた成型体シートを剥離処理PETフィルムで挟んだ後、所定厚さのスペーサを入れて所定圧力で所定時間プレス処理することにより所望の厚さ(例えば、厚さ0.30mm)の熱伝導性シートを得た(ステップS17)。
【0024】
熱伝導性シートは、炭素繊維と無機フィラーとバインダからなる混合物を成形し、スライスすることによって得た炭素繊維をシートの厚み方向に配向させている。
得られた熱伝導性シートによれば、実効熱伝導率は、10W/m・K以上であった。
さらに厚みが0.35mm以下の熱伝導性シートを2.81kgf/cm2で加圧した際の熱抵抗が0.20℃・cm2/W以下であり、また、シートを初期厚みから50%圧縮した時の残留応力が276kPa以下であった。
【0025】
さらに加えて100kPaで1000時間加圧した際にシート面内のx、y方向の変形率が15%以下であった。
【0026】
プレスした熱伝導性シートを5.1mmΦのプローブで2mm/秒で200gfで押し付けた後、10mm/秒で引き剥がした際のタック力が80gf以上であった。
【0027】
以上の説明のように、本実施形態の熱伝導性シートによれば、低残留応力でありながらクリープ量が少なく、高柔軟性及び高弾性を併せ持っていることがわかる。
さらに低熱抵抗であり、タック性も有していた。
【0028】
これらの結果、本実施形態の熱伝導性シートによれば、低残留応力の性質により圧力をかかってもIC等の発熱体を損傷するリスクが低減されることがわかる。
【0029】
また、本実施形態の熱伝導性シートは、クリープ量が少ないため、クリープにより生じうる回路の短絡を防ぐことができる。
更にタック性を有しているため、実装時の位置ずれを防ぐことが可能な熱伝導性シートとなっており、被着体との密着性も高くなる。
この密着性の高さにより、厚さ0.3mmほどの薄いシートで0.20℃・cm2/W以下という低熱抵抗を達成できた。
【実施例0030】
次に具体的な実施例と比較例について説明する。
[1]実施例[1.1]第1実施例
まず、第1実施例の熱伝導性シートの製造について説明する。
第1実施例では、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂36体積%を調整した。
【0031】
ここで、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂は、シリコーンA液を20体積%、シリコーンB液を16体積%の比率で混合したものである。
【0032】
これと並行して、熱伝導性フィラーとして、カップリング剤0.1体積%でカップリング処理した体積平均粒子径15μmの酸化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子、電気化学工業株式会社製)5体積%と、カップリング剤0.9体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの窒化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子、株式会社トクヤマ製)33体積%と、ピッチ系炭素繊維(熱伝導性繊維、平均繊維長120μm、平均繊維径9μm、日本グラファイトファイバー株式会社製)25体積%となるように調製した。
【0033】
続いて付加反応型液状シリコーン樹脂に熱伝導性フィラーを混合し、分散させて、シリコーン樹脂組成物(熱伝導性樹脂組成物)を調製した。
【0034】
次に、得られたシリコーン樹脂組成物を、内壁に剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼った直方体状の金型(50mm×50mm)の中に押し出してシリコーン成型体を成型した。
【0035】
得られたシリコーン成型体をオーブンにて、100℃で6時間硬化してシリコーン硬化物とした。
【0036】
続いて得られたシリコーン硬化物を超音波カッターで切断し、厚み0.33mmの成型体シートを得た。超音波カッターのスライス速度は、毎秒50mmとした。このとき、超音波カッターに付与する超音波振動は、発振周波数を20.5kHzとし、振幅を60μmとした。
【0037】
得られた成型体シートを剥離処理PETフィルムで挟んだ後、厚さ0.3mmのスペーサを入れてプレス処理することにより、厚さ0.30mmの熱伝導性シートを得た。プレス条件は0.5MPaの条件で、30秒とした。
本第1実施例によれば、合計フィラー含有率63[体積%]、平均シート厚み0.29[mm]、熱抵抗値=0.181[℃・cm2/W]、タック力83[gf]、x方向の変形率11[%]、y方向の変形率11%の熱伝導性シートが得られた。
【0038】
[1.2]第2実施例
次に第2実施例について説明する。
まず、第2実施例の熱伝導性シートの製造について説明する。
本第2実施例が第1実施例と異なる点は、まず、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂31体積%に、カップリング剤0.4体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの酸化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子:日本軽金属株式会社製)10体積%および体積平均粒子径4μmの酸化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子:電気化学工業株式会社製)8体積%と、カップリング剤0.6体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの窒化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子、株式会社トクヤマ製)25体積%と、ピッチ系炭素繊維(熱伝導性繊維、平均繊維長120μm、平均繊維径9μm、日本グラファイトファイバー株式会社製)25体積%とを分散させて、調製したシリコーン樹脂組成物(熱伝導性樹脂組成物)を用いた以外は、第1実施例と同様にして、第2実施例の熱伝導性シートを得た。
【0039】
なお、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂は、シリコーンA液を16体積%、シリコーンB液を15体積%の比率で混合したものである。
【0040】
[1.3]第3実施例
次に第3実施例について説明する。
-熱伝導性シートの作製-第1実施例において、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂30体積%に、カップリング剤0.5体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの酸化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子:電気化学工業株式会社製)20体積%と、カップリング剤0.5体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの窒化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子、株式会社トクヤマ製)24体積%と、ピッチ系炭素繊維(熱伝導性繊維、平均繊維長120μm、平均繊維径9μm、日本グラファイトファイバー株式会社製)25体積%とを分散させて、調製したシリコーン樹脂組成物(熱伝導性樹脂組成物)を用いた以外は、第1実施例と同様にして、第3実施例の熱伝導性シートを得た。
なお、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂は、シリコーンA液を16体積%、シリコーンB液を14体積%の比率で混合したものである。
【0041】
[1.4]第1比較例
次に第1比較例について説明する。
-熱伝導性シートの作製-第1実施例において、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂49体積%に、カップリング処理していない体積平均粒子径1μmの酸化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子:電気化学工業株式会社製)31体積%と、ピッチ系炭素繊維(熱伝導性繊維、平均繊維長120μm、平均繊維径9μm、日本グラファイトファイバー株式会社製)20体積%とを分散させて、調製したシリコーン樹脂組成物(熱伝導性樹脂組成物)を用いた以外は、第1実施例と同様にして、第1比較例の熱伝導性シートを得た。
なお、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂は、シリコーンA液を26体積%、シリコーンB液を23体積%の比率で混合したものである。
【0042】
[1.5]第2比較例
次に第2比較例について説明する。
-熱伝導性シートの作製-第1実施例において、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂28体積%に、カップリング剤0.5体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの酸化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子:電気化学工業株式会社製)22体積%と、カップリング剤0.5体積%でカップリング処理した体積平均粒子径1μmの窒化アルミニウム粒子(熱伝導性粒子、株式会社トクヤマ製)25体積%と、ピッチ系炭素繊維(熱伝導性繊維、平均繊維長120μm、平均繊維径9μm、日本グラファイトファイバー株式会社製)24体積%とを分散させて、調製したシリコーン樹脂組成物(熱伝導性樹脂組成物)を用いた以外は、第1実施例と同様にして、第1比較例の熱伝導性シートを得た。
なお、2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂は、シリコーンA液を14体積%、シリコーンB液を14体積%の比率で混合したものである。
【0043】
[1.6]実施例の効果
[1.6.1]シート厚さ
第1実施例~第3実施例の平均シート厚さは、0.29~0.32mmであり、実施例全体では、0.3mmであった。
一方、第1比較例と第2比較例の平均シート厚さはそれぞれ0.30mm、0.31mmであり、比較例全体では、0.31mmであった。
【0044】
[1.6.2]熱抵抗
第1実施例~第3実施例の熱伝導性シートを2.81kgf/cm2で加圧した際のシート熱抵抗値は、0.181~0.189℃・cm2/Wであり、厚さ0.3mmほどの薄いシートで0.20℃・cm2/W以下という低熱抵抗値を達成していた。
これらに対し、第1比較例の熱伝導シートの熱抵抗値は0.48・cm2/Wと高いものであった。
【0045】
[1.6.3]熱伝導率
第1実施例~第3実施例の熱伝導性シートの実効熱伝導率は、14.5~16.3W/m・Kであり、熱伝導性シートとして十分な熱伝導率であった。第1比較例の熱伝導シートの熱伝導率は3.5W/m・Kであり、熱伝導率は低いものであった。
【0046】
[1.6.4]残留応力
第1実施例~第3実施例の熱伝導性シートを厚さが初期厚みの50%の厚さとなるように圧縮した時の残留応力は、238~269kPaであり、熱伝導性シートとして十分な276kPa以下であった。
これらに対し、第2比較例の熱伝導シートを厚さが初期厚みの50%の厚さとなるように圧縮した時の残留応力は537kPaと高いものであった。
【0047】
[1.6.5]タック力
第1実施例~第3実施例の熱伝導性シートを5.1mmΦのプローブで2mm/秒で200gfで押し付けた後、10mm/秒で引き剥がした際のタック力は、83~93gfであり、十分なタック性(80gf以上)を有していた。
これらに対し、第1比較例と第2比較例の熱伝導シートを5.1mmΦのプローブで2mm/秒で200gfで押し付けた後、10mm/秒で引き剥がした際のタック力は、それぞれ49gfと40gfであり、タック力が不足していた。
【0048】
[1.6.6]シート変形率
第1実施例~第3実施例の熱伝導性シートを100kPaで1000時間加圧した際にシート面内のx方向の変形率は、4.8~11%、y方向の変形率は、5.1~11%であり、熱伝導性シートとして十分な15%以下を達成しており、クリープ量が少ないという結果が得られた。
これらに対し、第1比較例の熱伝導性シートを100kPaで1000時間加圧した際にシート面内のx方向の変形率は30%、y方向の変形率は33%であり、クリープ量が多いという結果が得られた。
【0049】
[1.6.7]まとめ
以上の説明のように、各実施例によれば、低残留応力でありながらクリープ量が少ないという高柔軟かつ高弾性を併せ持つ熱伝導性シートであり、低熱抵抗やタックといった性質も有する。低残留応力の性質により圧力をかかってもIC等の発熱体を損傷するリスクが低減される。
【0050】
また、クリープにより生じうる回路の短絡を防ぐことが可能な熱伝導性シートとなっている。
さらに実装時の位置ずれを防ぐタック性を持ち合わせたシートとなっており被着体との密着もよくなる。密着性の高さにより、厚さ0.3mmほどの薄いシートで0.20℃・cm2/W以下という低熱抵抗を達成した。