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  • 特開-ゴム組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127600
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20220824BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220824BHJP
   B29B 7/18 20060101ALI20220824BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220824BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B29B7/28
C08J3/20 CEQ
B29B7/18
C08L21/00
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020729
(22)【出願日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021025587
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 樹生
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA05
4F070AA06
4F070AC04
4F070AC14
4F070AC16
4F070AC18
4F070AC23
4F070AC40
4F070AC52
4F070AC53
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE09
4F070AE30
4F070FA03
4F070FB06
4F070FB08
4F070FC03
4F201AA45
4F201AB06
4F201AB07
4F201AB17
4F201AP05
4F201AR06
4F201AR07
4F201AR09
4F201AR11
4F201AR16
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC02
4F201BK01
4F201BK14
4F201BK26
4F201BK54
4F201BK74
4F201BK75
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC081
4J002DJ016
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD170
4J002FD310
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】練り終わりのゴム組成物の温度、粘度、生地の状態などにおけるバッチ間のバラツキを抑えることのできるゴム組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ロータRを備えた混練機2でゴム成分3と添加剤とをバッチ練りするものであり、(1)混練機に投入する直前のゴム成分の温度および外気温を測定する工程、(2)ロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、ゴム成分の温度に応じて変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、外気温に応じて変位すべき変位量R2および変位量T2を算出する工程、(3)R0、R1およびR2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、T0、T1およびT2に基づいて修正された混練時間TVを決定する工程、および、(4)修正されたRVおよび修正されたTVで、混練を実施する工程を含むゴム組成物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物の製造方法であって、
ロータを備えた混練機でゴム成分と添加剤とをバッチ練りするものであり、
(1)前記混練機に投入する直前のゴム成分の温度および外気温を測定する工程、
(2)少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、前記ゴム成分の温度に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、前記外気温に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出する工程、
(3)前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定する工程、および、
(4)前記修正されたロータ回転数RVおよび前記修正された混練時間TVで、混練を実施する工程
を含むゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記変位量R1が、前記ゴム成分の温度に応じて、以下の関係を満たし、
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、R1>0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、R1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、R1<0
前記変位量R2が、前記外気温に応じて、以下の関係を満たす、
外気温が20℃未満のとき、R2>0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、R2=0
外気温が35℃超のとき、R2<0
請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記変位量T1が、前記ゴム成分の温度に応じて、以下の関係を満たし、
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、T1<0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、T1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、T1>0
前記変位量T2が、前記外気温に応じて、以下の関係を満たす、
外気温が20℃未満のとき、T2<0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、T2=0
外気温が35℃超のとき、T2>0
請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)が、さらに、電力量について、予め設定した電力量の基準値W0から、前記ゴム成分の温度に応じて変位すべき変位量W1を算出し、かつ、前記外気温に応じて変位すべき変位量W2を算出する工程を含み、
前記工程(3)が、さらに、前記基準値W0、前記変位量W1および前記変位量W2から修正された電力量WVを決定する工程を含み、
前記工程(4)が、修正された電力量WVをさらに加味して、バッチ練りを実施する工程である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記添加剤がシリカを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記添加剤が加硫系薬品以外の薬品からなるものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
タイヤの製造方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法を含む製造方法により未加硫ゴム組成物を製造する工程、および、
前記未加硫ゴム組成物を用いて、常法により、タイヤを製造する工程
を含む製造方法。
【請求項8】
ゴム組成物をバッチ練りする混練装置であって、
ロータRを備えた混練機と、ゴム成分の温度の検出手段D1と、外気温の検出手段D2と、変位量を計算する演算手段Cと、混練機の運転を制御する運転制御手段Oとを備え、
前記検出手段D1は、前記混練機へ投入する直前のゴム成分の温度を検出し、検出した温度を電気信号として前記演算手段Cへ送信するものであり、
前記検出手段D2は、前記混練機へ投入する直前の外気温を検出し、検出した温度を電気信号として前記演算手段Cへ送信するものであり、
前記演算手段Cは、少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、受信した前記ゴム成分の温度に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、受信した前記外気温に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出し、前記各変位量に相当する電気信号を前記運転制御手段Oへ送信するものであり、
前記運転制御手段Oは、前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、前記ロータ回転数RVに相当する電気信号を混練機に送信し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定し、前記混練時間TVに相当する電気信号を混練機に送信するものであり、
前記混練機は、受信した前記ロータ回転数RVに相当する電気信号と前記混練時間TVに相当する電気信号に従い、混練を実施するものである混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム組成物の製造方法、タイヤの製造方法、および混練装置に関し、より詳しくは、ロータを備えた混練装置でゴム成分と添加剤とをバッチ練りするゴム組成物の製造方法、前記製造方法を含む製造方法により得られた未加硫ゴム組成物を用いてタイヤを製造する方法、および、混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム成分に各種添加剤を分散させて混練りするための混練機として、一般的に、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどが多用されている。このような混練機によりゴム組成物をバッチ練りする場合、バッチ間の性状(例えば、温度、粘度、薬品の分散状況など)のバラツキを最小限に抑えることが重要となる。特許文献1には、ゴムの混練りに際し、ゴム練り装置に供給する直前のゴムの温度をバッチ毎に検出し、当該温度に応じて、ゴム練り装置に供給する基準電力量および基準練り時間の少なくとも一方に対し修正を施し、ゴム練りを実施するゴム練り方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-24412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ゴム成分の混練りに際し、原料であるゴム成分の混練機への投入直前の温度が練り上がり後のゴム組成物の性状に影響を及ぼすことはそのとおりであるが、当該温度による調整だけでバッチ間のバラツキを十分に抑えることは困難である。また、調整の方法も、電力量と練り時間によるだけでは不十分である。このため、練り終わりのゴム組成物の温度、粘度、生地の状態などのバラツキを十分に抑えることができず、さらに改善できる方法が望まれている。
【0005】
特に、外気温が高い夏場には、混練終了時にゴム成分と各種添加剤との混練物の温度が高くなる傾向がある。とりわけ、ゴム成分にシリカとシランカップリング剤を配合して混練りする場合には、外気温が高い影響で、カップリング反応が過度に進行してゲル化が発生し、シート生地不良となる。
【0006】
本開示は、練り終わりのゴム組成物の温度、粘度、生地の状態などにおけるバッチ間のバラツキを抑えることのできるゴム組成物の製造方法、該製造方法により製造したゴム組成物を用いたタイヤの製造方法、および、該製造方法によりゴム組成物を製造する混練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、混練機に投入する直前のゴム成分の温度と外気温とを測定し、その結果をもとに予め設定しておいたロータ回転数の基準値および混練時間の基準値に対する変位量を算出し、該変位量を加味して修正されたロータ回転数および修正された混練時間で混練を実施すれば、混練り後のゴム組成物のバッチ間での性状のばらつきを抑えることができることを見出し、さらに検討を重ねて本開示を完成した。
【0008】
すなわち、本開示は、
[1]ゴム組成物の製造方法であって、
ロータを備えた混練機でゴム成分と添加剤とをバッチ練りするものであり、
(1)前記混練機に投入する直前のゴム成分の温度および外気温を測定する工程、
(2)少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、前記ゴム成分の温度に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、前記外気温に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出する工程、
(3)前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定する工程、および、
(4)前記修正されたロータ回転数RVおよび前記修正された混練時間TVで、混練を実施する工程
を含むゴム組成物の製造方法、
[2]前記変位量R1が、前記ゴム成分の温度に応じて、以下の関係を満たし、
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、R1>0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、R1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、R1<0
前記変位量R2が、前記外気温に応じて、以下の関係を満たす、
外気温が20℃未満のとき、R2>0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、R2=0
外気温が35℃超のとき、R2<0
上記[1]記載の製造方法、
[3]前記変位量T1が、前記ゴム成分の温度に応じて、以下の関係を満たし、
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、T1<0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、T1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、T1>0
前記変位量T2が、前記外気温に応じて、以下の関係を満たす、
外気温が20℃未満のとき、T2<0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、T2=0
外気温が35℃超のとき、T2>0
上記[1]または[2]記載の製造方法、
[4]前記工程(2)が、さらに、電力量について、予め設定した電力量の基準値W0から、前記ゴム成分の温度に応じて変位すべき変位量W1を算出し、かつ、前記外気温に応じて変位すべき変位量W2を算出する工程を含み、
前記工程(3)が、さらに、前記基準値W0、前記変位量W1
よび前記変位量W2から修正された電力量WVを決定する工程を含み、
前記工程(4)が、修正された電力量WVをさらに加味して、バッチ練りを実施する工程である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5]前記添加剤がシリカを含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法、
[6]前記添加剤が加硫系薬品以外の薬品からなるものである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法、
[7]タイヤの製造方法であって、
上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法を含む製造方法により未加硫ゴム組成物を製造する工程、および、
前記未加硫ゴム組成物を用いて、常法により、タイヤを製造する工程
を含む製造方法、
[8]ゴム組成物をバッチ練りする混練装置であって、
ロータRを備えた混練機と、ゴム成分の温度の検出手段D1と、外気温の検出手段D2と、変位量を計算する演算手段Cと、混練機の運転を制御する運転制御手段Oとを備え、
前記検出手段D1は、前記混練機へ投入する直前のゴム成分の温度を検出し、検出した温度を電気信号として前記演算手段Cへ送信するものであり、
前記検出手段D2は、前記混練機へ投入する直前の外気温を検出し、検出した温度を電気信号として前記演算手段Cへ送信するものであり、
前記演算手段Cは、少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、受信した前記ゴム成分の温度に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、受信した前記外気温に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出し、前記各変位量に相当する電気信号を前記運転制御手段Oへ送信するものであり、
前記運転制御手段Oは、前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、前記ロータ回転数RVに相当する電気信号を混練機に送信し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定し、前記混練時間TVに相当する電気信号を混練機に送信するものであり、
前記混練機は、受信した前記ロータ回転数RVに相当する電気信号と前記混練時間TVに相当する電気信号に従い、混練を実施するものである混練装置、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、練り終わりのゴム組成物の温度、粘度、生地の状態などにおけるバッチ間のバラツキを抑えることのできるゴム組成物の製造方法、該製造方法により製造したゴム組成物を用いたタイヤの製造方法、および、該製造方法によりゴム組成物を製造する混練装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態の混練装置についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一の実施形態は、ゴム組成物の製造方法であって、
ロータを備えた混練機でゴム成分と添加剤とをバッチ練りするものであり、
(1)前記混練機に投入する直前のゴム成分の温度および外気温を測定する工程、
(2)少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、前記ゴム成分の温度に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、前記外気温に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出する工程、
(3)前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定する工程、および、
(4)前記修正されたロータ回転数RVおよび前記修正された混練時間TVで、混練を実施する工程
を含むゴム組成物の製造方法である。
【0012】
前記変位量R1は、前記ゴム成分の温度に応じて、以下の関係を満たし、
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、R1>0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、R1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、R1<0
前記変位量R2は、前記外気温に応じて、以下の関係を満たすものであることが好ましい。
外気温が20℃未満のとき、R2>0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、R2=0
外気温が35℃超のとき、R2<0
【0013】
前記変位量T1は、前記ゴム成分の温度に応じて、以下の関係を満たし、
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、T1<0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、T1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、T1>0
前記変位量T2は、前記外気温に応じて、以下の関係を満たすものであることが好ましい。
外気温が20℃未満のとき、T2<0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、T2=0
外気温が35℃超のとき、T2>0
【0014】
前記工程(2)は、さらに、電力量について、予め設定した電力量の基準値W0から、前記ゴム成分の温度に応じて変位すべき変位量W1を算出し、かつ、前記外気温に応じて変位すべき変位量W2を算出する工程を含み、
前記工程(3)は、さらに、前記基準値W0、前記変位量W1および前記変位量W2から修正された電力量WVを決定する工程を含み、
前記工程(4)は、修正された電力量WVをさらに加味して、バッチ練りを実施する工程であることが好ましい。
【0015】
前記添加剤はシリカを含むことが好ましい。
【0016】
前記添加剤は加硫系薬品以外の薬品からなるものであることが好ましい。
【0017】
他の実施形態は、タイヤの製造方法であって、前記製造方法を含む製造方法により未加硫ゴム組成物を製造する工程、および、前記未加硫ゴム組成物を用いて、常法により、タイヤを製造する工程を含む、製造方法である。
【0018】
他の実施形態は、ゴム組成物をバッチ練りする混練装置であって、ロータRを備えた混練機と、ゴム成分の温度の検出手段D1と、外気温の検出手段D2と、変位量を計算する演算手段Cと、混練機の運転を制御する運転制御手段Oとを備え、前記検出手段D1は、前記混練機へ投入する直前のゴム成分の温度を検出し、検出した温度を電気信号として前記演算手段Cへ送信するものであり、前記検出手段D2は、前記混練機へ投入する直前の外気温を検出し、検出した温度を電気信号として前記演算手段Cへ送信するものであり、前記演算手段Cは、少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、受信した前記ゴム成分の温度に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、受信した前記外気温に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出し、前記各変位量に相当する電気信号を前記運転制御手段Oへ送信するものであり、前記運転制御手段Oは、前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、前記ロータ回転数RVに相当する電気信号を混練機に送信し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定し、前記混練時間TVに相当する電気信号を混練機に送信するものであり、前記混練機は、受信した前記ロータ回転数RVに相当する電気信号と前記混練時間TVに相当する電気信号に従い、混練を実施するものである混練装置である。
【0019】
理論に拘束されることは意図しないが、上記効果が発揮されるメカニズムとしては以下が考えられる。すなわち、本開示では、ゴム組成物の混練りに際し、ゴム成分を投入する直前のゴム成分の温度に加えて、外気温も測定している。外気温は、例えば、これが高い場合、ゴム成分や各種添加剤の混練中の温度上昇が速くなり、例えば、ゴム成分にシリカとシランカップリング剤を配合して混練りする場合には、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応が過度に進行し、架橋反応が生じてゲル化が発生するなど、バッチ間のバラツキを抑える上で重要なファクターである。また、本開示では、測定した温度情報を加味して、混練時間に加えて、混練の回転数をも調節している。混練の回転数は、例えば、ゴム成分と各種添加剤の混練り中の温度上昇を抑制するためにはこれを下げる必要がある一方で、ロータ回転数を下げすぎるとせん断エネルギーが小さくなるため、混練終了時のゴム成分と各種添加剤との混練が不十分になるので注意が必要である。本開示では、ゴム成分を投入する直前の温度の測定についてゴム成分の温度のみならず外気温も測定し、かつ、こうして得られた温度情報に基づいて、混練を実施するに際し、混練時間のみならず、混練の回転数をも調節しているが、これら測定と調節の組合せが思いのほか相性よく機能し、その結果、混練終了時のゴム組成物の性状についてのバッチ間のバラツキが、よく抑えられているものと考えられる。
【0020】
[ゴム組成物の製造方法]
本開示のゴム組成物の製造方法について、以下説明する。
【0021】
<ゴム成分>
ゴム成分は特に限定されず、従来、ゴム工業で用いられるものをいずれも好適に用いることができる。例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)およびフッ素化ブチルゴム(F-IIR)を含むハロゲン化ブチルゴムなどのブチル系ゴムがあげられる。これらのゴム成分は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。なかでも、シリカを配合して高性能なゴム組成物を得る観点から、SBRを含むことが好ましく、SBRおよびBRを含むことがより好ましく、SBR、BRおよびイソプレン系ゴムを含むことがより好ましく、SBR、BRおよびイソプレン系ゴムのみであることがさらに好ましい。
【0022】
(スチレンブタジエンゴム)
スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)などの変性SBRがあげられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性された変性SBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)などがあげられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。このようなSBRとして、例えば、JSR(株)製のもの、旭化成ケミカルズ(株)製のもの、日本ゼオン(株)製のもの、ZSエラストマー(株)製のものなどを用いることができる。これらのSBRは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。なかでも、シリカを配合して低燃費性やウェットグリップ性に優れたゴム組成物を得る観点から、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)が好ましく、変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)がより好ましい。本開示の混練工程を含む製造方法によれば、変性S-SBRにシリカを配合した場合でも、シラニゼーションが進行する温度域の混練り時間を十分に確保して効率的に混練りすることができるので、シラニゼーションの進行によりシリカの分散性が向上するという効果が得られる。
【0023】
SBRのスチレン含量は、ゴム強度やグリップ性能の観点から、15.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましい。また、スチレン含量は、低燃費性の観点から、40.0質量%以下が好ましいく、30.0質量%以下がより好ましい。なお、SBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される値である。
【0024】
SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、ゴム強度やグリップ性能の観点から、10.0%以上が好ましく、25.0%以上が好ましく、40.0%以上がより好ましい。また、ビニル含量は、低燃費性の観点から、80.0%以下が好ましく、75.0%以下が好ましく、70.0%以下がより好ましい。なお、SBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0025】
SBRのガラス転移温度(Tg)は、-90℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましく、-40℃以上がさらに好ましい。また、該Tgは、0℃以下が好ましく、-10℃以下がより好ましく、-15℃以下がさらに好ましい。なお、SBRのTgは、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定される値である。
【0026】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、20万以上が好ましく、30万以上がより好ましい。また、該Mwは、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましく、100万以下がさらに好ましい。なお、SBRのMwおよび後述する数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0027】
SBRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、SBRの含有量は、100質量%であってもよく、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。SBRの含有量を上記範囲内とすることにより、良好なシリカの分散性、良好な加工性が得られる傾向がある。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中のSBRの含有量とする。
【0028】
(ブタジエンゴム)
ブタジエンゴム(BR)としては、特に限定されず、この分野で通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。例えば、ローシスポリブタジエンゴム(ローシスBR)、ハイシスポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)などの各種BRを用いることができる。このようなBRとして、例えば、宇部興産(株)製のもの、日本ゼオン(株)製のもの、JSR(株)製のもの、ランクセス社製のもの、旭化成(株)のものなどを用いることができる。これらのBRは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0029】
ハイシスBRとは、シス含量(シス-1,4結合含有率)が90%以上のブタジエンゴムである。なかでも、シス-1,4結合含有率が93%以上のものが好ましく、94%以上のものがより好ましく、95%以上のものがさらに好ましい。ハイシスBRを含有することで低発熱性、引張強さや破断時伸び、耐摩耗性を向上させることができる。なお、BR中のシス-1,4結合含有率は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0030】
BRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、耐摩耗性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、BRの含有量は、加工性の観点から、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等ゴム工業において一般的なものを使用することができる。このうち、天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度化天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。なかでも、NRが好ましい。これらのイソプレン系ゴムは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0032】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等のゴム工業において一般的なものを用いることができる。
【0033】
イソプレン系ゴムを含有する場合のゴム成分中の含有量は、発熱抑制効果等の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、イソプレン系ゴムの含有量は、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
<添加剤>
本開示のゴム組成物は、上記したゴム成分に、ゴム組成物の製造に一般に使用される添加剤を含む。添加剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどこの分野で一般的に使用される充填剤の他、シランカップリング剤、オイル、樹脂、ステアリン酸、酸化亜鉛、無機カリウム塩、老化防止剤、ワックス、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤等を挙げることができる。
【0035】
充填剤は1種または2種以上を用いることができる。本開示においては、充填剤として、シリカを含有する場合が好ましい。充填剤としてシリカを含有する場合、通常、さらにシランカップリング剤も配合して混練りすることが多いが、この場合、シリカとシランカップリング剤とのカップリング反応が過度に進行するとゲル化が発生しシート生地不良となるので、ゴム組成物の練り上がりの温度をきめ細やかに調節することが重要となるからである。また、シリカ以外の充填剤としては、ゴム強度の観点から、カーボンブラックを含有することが好ましい。
【0036】
(シリカ)
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水ケイ酸)、湿式法により調製されたシリカ(含水ケイ酸)等があげられる。なかでも、表面のシラノール基が多く、シランカップリング剤との反応点が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカが好ましい。例えば、エボニックジャパン(株)、ソルベイ社、東ソー・シリカ(株)、(株)トクヤマ等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらのシリカは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0037】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、特に限定されないが、低燃費性、耐摩耗性の観点から、80m2/g以上が好ましく、110m2/g以上がより好ましく、140m2/g以上がより好ましく、170m2/g以上がさらに好ましい。また、シリカのN2SAは、シリカの分散性、加工性の観点から、500m2/g以下が好ましく、400m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下がさらに好ましい。なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0038】
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、特に限定されないが、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、シリカの含有量の上限は、特に限定されないが、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、110質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。シリカの含有量が上記範囲内の場合は、良好な分散性、良好な加工性が得られる傾向があり、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0039】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、ゴム工業において一般的なものを使用できる。例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0040】
カーボンブラックのN2SAは、特に限定されないが、十分な補強性および良好な耐摩耗性が得られる観点から、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、110m2/g以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、分散性に優れ、発熱しにくいという観点から、500m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、200m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0041】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲内の場合は、十分な補強性、ゴムへの良好な分散、良好な加工性が得られる傾向があり、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0042】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができる。そのようなシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、後述する下記式(1)で表される化合物、後述する下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系のシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系のシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系のシランカップリング剤等があげられる。なかでも、スルフィド基を有するシランカップリング剤が好ましい。このようなシランカップリング剤として、例えば、モメンティブ社製のもの、エボニックジャパン(株)製のものなどを用いることができる。これらのシランカップリング剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0043】
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量は、十分なシリカ分散効果が得られるという理由から、4.0質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましく、6.0質量部以上がより好ましく、7.0質量部以上がさらに好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、十分なカップリング効果やシリカ分散効果を効率的に得て補強性を確保するという理由から、20.0質量部以下が好ましく、15.0質量部以下がより好ましく、12.0質量部以下がさらに好ましい。
【0044】
(オイル)
オイルとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系プロセスオイル等のプロセスオイルがあげられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルがあげられる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates)(MES)、および重ナフテン系オイル等があげられる。なかでも、芳香族系プロセスオイルが好ましい。オイルは、例えば、H&R社、ENEOS(株)、出光興産(株)、三共油化工業(株)等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらのオイルは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0045】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、特に限定されないが、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、オイルの含有量は、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。オイルの含有量を上記範囲内とすることにより、ゴムの可塑化、シリカの分散向上の効果をより良好に発揮できる傾向があり、本開示の効果をより良好に発揮できる。なお、オイルの含有量は油展で使用されたオイルの量も含むものである。
【0046】
(樹脂)
樹脂としては、特に限定されず、芳香族系石油樹脂などの従来タイヤ用ゴム組成物で慣用される樹脂を用いることができる。芳香族系石油樹脂としては例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、アクリル樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などがあげられる。フェノール系樹脂としては、例えば、BASF社製、田岡化学工業(株)製のものなど、クマロンインデン樹脂としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、ENEOS(株)製のものなど、スチレン系樹脂としては、例えば、アリゾナケミカル社製のものなどを使用することができる。テルペン系樹脂としては、例えば、アリゾナケミカル社製、ヤスハラケミカル(株)製のものなどを使用することができる。ロジン系樹脂としては、例えば、ハリマ化成(株)製、荒川化学工業(株)製のものなどを使用することができる。これらの樹脂は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0047】
樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、樹脂の含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0048】
(ステアリン酸)
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの加硫速度を上げ、タイヤの生産性を上げるという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性の低下を防ぐという観点からは、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0049】
(酸化亜鉛)
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの加硫速度を上げ、タイヤの生産性を上げるという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性の低下を防ぐという観点からは、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0050】
(無機カリウム塩)
無機カリウム塩は、従来タイヤ工業で一般的に使用されるもの使用することができ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機カリウム塩としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムおよび四ホウ酸カリウムからなる群から選ばれる1種以上のカリウム塩等が挙げられ、これらのうち、四ホウ酸カリウムが好ましい。
【0051】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、キノリン系老化防止剤、キノン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤や、カルバミン酸金属塩等があげられる。なかでも、本開示の効果をより良好に発揮できるという理由から、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましい。フェニレンジアミン系老化防止剤としては、例えば、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)等があげられ、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)を用いることがより好ましい。老化防止剤は、例えば、大内新興化学工業(株)製のもの、川口化学工業(株)製のもの、住友化学(株)製のものなどを用いることができる。これらの老化防止剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0052】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、老化防止剤の含有量は、7.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。老化防止剤の含有量を上記範囲内とすることにより、老化防止効果を十分に得るとともに、老化防止剤がタイヤ表面に析出することによる変色を抑制することができる傾向がある。
【0053】
(ワックス)
ワックスとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックスなどがあげられる。なかでも、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等があげられる。ワックスは、例えば、大内新興化学工業(株)製のもの、日本精蝋(株)製のもの、パラメルト社製のものなどを用いることができる。これらのワックスは、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0054】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.3質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましく、0.8質量部以上がさらに好ましい。また、ワックスの含有量は、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。ワックスの含有量を上記範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0055】
(加工助剤)
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等があげられる。加工助剤は、例えば、ストラクトール社製のもの、テスコ(株)製のものなどを用いることができる。これらの加工助剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0056】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、加工助剤の含有量は、10.0質量部以下が好ましく、8.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましい。加工助剤の含有量を上記範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0057】
(加硫剤)
加硫剤としては、特に限定されず、公知の加硫剤を用いることができ、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤、樹脂加硫剤、酸化マグネシウム等の金属酸化物などがあげられる。なかでも、硫黄系加硫剤が好ましい。硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィド等を用いることができる。これらのなかでも、硫黄を用いることが好ましい。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などがあげられ、いずれも好適に用いられる。これらの加硫剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0058】
加硫剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、加硫剤の含有量は、4.0質量部以下が好ましく、3.5質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。加硫剤の含有量を上記範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0059】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、特に限定されず、公知の加硫促進剤を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤などがあげられる。なかでも、スルフェンアミド系およびグアニジン系を含むものであることが好ましく、スルフェンアミド系およびグアニジン系のみであることがより好ましい。これらの加硫促進剤は、1種または2種以上を組み合せて使用することができる。
【0060】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などがあげられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0061】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどがあげられる。なかでも、加硫時間の短縮の観点から、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0062】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤の含有量は、4.0質量部以下が好ましく、3.5質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。
【0063】
<バッチ練り>
本開示において、バッチ練りとは、所定配合での所定量の原料の混練りを複数回、繰り返し行う場合の、各混練りのことをいう。本開示の製造方法は、バッチ練りにおいて、得られるゴム組成物の、各バッチ間での性状のバラツキを抑えるものである。
【0064】
本開示において、当該バッチ練りは、上記ゴム成分と、上記添加剤のうち所望のものとを混練りするものであればよいが、当該添加剤は、加硫剤および加硫促進剤からなる加硫系薬品を含むものであってもよいし、加硫系薬品を含まないものであってもよい。
【0065】
通常、タイヤなどの加硫ゴム組成物を製造する場合、その混練り工程は、ゴム成分と加硫系薬品以外の添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫系薬品を添加して混練りする仕上げ練り工程とからなるが、本開示のバッチ練りは、当該ベース混練り工程のみに適用することができるし、さらに、加硫系薬品を添加し、密閉式混練機やオープンロール等を用いて混練りする仕上げ練り工程までも含めた工程にも適用することができる。
【0066】
ベース練りは、通常、排出温度135~165℃で1~10分間混練りするものであり、仕上げ練りは、通常、90~110℃で1~5分間混練りするものである。なお、ベース練りと仕上げ練りの間にリミル(再練り)を行ってもよい。
【0067】
<ロータを備えた混練機>
ロータを備えた混練機としては、従来からゴム工業で使用されている公知の混練機を用いることができ、例えば、密閉式混練機やオープンロール等が挙げられる。密閉式混練機は、一般に、混練室上にロータが設置されている。ロータは、その両端または片端に軸部を備え、軸部は、軸受けで回転可能に支持されており、その軸部が回転することにより、ロータが回転する。ロータは、二つを1対として、混練室内に設置されているのが一般的である。そして、混練室にゴム成分等の原料を投入し、混練室内のロータを回転することにより混練を行う。このような混練機としては、例えば、バンバリーミキサーやニーダー等が挙げられる。なかでも、作業性や生産性に優れるという理由から、バンバリーミキサーが好ましい。ロータの形状は、接線式、噛み合い式のいずれであってもよい。また、ロータは、2枚羽根ロータ、4枚羽根ロータ、6枚羽根ロータのいずれであってもよい。密閉式混練機の混練室の容量は特に限定されず、例えば、1.7~619Lの範囲の各種容量のものを用いることができる。
【0068】
<工程(1)>
工程(1)は、混練機に投入する直前のゴム成分の温度および外気温を測定する工程である。ここで、直前とは、まさにゴム成分を混練機に投入しようとしている時点をいう。例えば、ゴム成分が計量コンベアを経て混練機に投入される場合、当該計量コンベア上の混練機に投入される前の時点である。但し、測定したゴム成分の温度および外気温がほとんど変動しない間は、たとえ、温度測定時点とゴム成分投入時点とが時間的に多少離れていたとしても、当該温度測定時点を「混練機に投入する直前」と解して差し支えない。ここで、温度がほとんど変動しないとは、その変動幅が、±3%以内であることをいい、好ましくは±2%以内であり、より好ましくは±1%以内である。
【0069】
ゴム成分の温度測定手段は、混練機に投入するゴム成分の温度をバッチ毎に測定できる手段であれば、特に限定されず、いずれの手段をも採用することができる。例えば、人が温度計を用いてゴム成分の温度を直接測定することでもよいし、予め温度センサーを所定の位置に設置し、混練機に投入される直前のゴム成分の温度を機械的に測定することでもよい。但し、ゴム成分の温度とはゴム成分全体を代表し得る温度である必要があるので、ゴム成分の形状等によって、適切な温度測定手段が異なり得る。例えば、ゴム成分がシート状の場合には、ゴム成分の表面温度を測定することで、ゴム成分の温度とすることができる。一方、ゴム成分がベール状の場合には、ゴム成分の内部温度を測定して、ゴム成分の温度とすることが好ましい。ベール状のゴム材料の場合には、ゴム成分の表面温度と内部温度とが異なり得るところ、ゴム成分の内部温度の方がゴム成分を代表する温度として相応しいからである。
【0070】
ここで、シート状のゴム成分とは、例えば、厚さが5mm~20mm、幅が300mm~1000mmの形状のものである。また、ベール状のゴム成分とは、例えば、厚さが100mm~300mm、幅が100mm~500mm、長さが100mm~800mmのブロック状の形状のものである。
【0071】
ゴム成分の形状がシート状の場合において、ゴム成分の温度をその表面温度によって測定するときは、直接測定物に触れる必要がなく高温測定に適しているという理由から、非接触式温度測定機、例えば、赤外放射温度計による測定が好ましい。一方、ゴム成分の形状がベール状の場合には、接触式温度測定機、例えば、接触式温度計によって、直接、ゴム成分の内部温度を測定することが好ましい。
【0072】
外気温の温度測定手段は、ゴム成分を混練機に投入する際の外気温をバッチ毎に測定できる手段であれば、特に限定されず、いずれの手段をも採用することができる。ゴム成分の温度の測定の場合と同様、人が温度計を用いて直接測定することでもよいし、予め温度センサーを所定の位置に設置し、ゴム成分が混練機に投入される直前の外気温を機械的に測定することでもよい。なお、外気温とは、混練機が設置されている場所での、混練機外の気温である。
【0073】
<工程(2)>
工程(2)は、少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、ゴム成分の温度に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、前記外気温に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出する工程である。
【0074】
(R0、T0
回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0は、混練するゴム成分および添加剤の種類や量、ゴム成分の形状、混練機の種類、混練する場所等により変動し得る。ロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0は、例えば、予備実験等により定めておくことができる。例えば、好ましい値としては、ゴム成分がシート状の場合には回転数の基準値R0を30rmpとし、混練時間の基準値T0を145秒とすることなどが挙げられ、ゴム成分がベール状の場合には回転数の基準値R0を45rmpとし、混練時間の基準値T0を130秒とすることなどが挙げられる。
【0075】
(R1、R2
ゴム成分の温度に応じて変位すべき回転数の変位量R1および外気温に応じて変位すべき回転数の変位量R2は、混練するゴム成分および添加剤の種類や量、ゴム成分の形状、混練機の種類、混練する場所等により変動し得る。変位量R1および変位量R2は、例えば、予備実験等により定めておくことができる。当該変位量R1およびR2は、具体的には、それぞれ、例えば、ある温度を基準とし(基準温度)、ゴム成分の温度が基準温度と等しい場合に変位量ゼロとし、ゴム成分の温度が基準温度を下回る場合に正の値とし、ゴム成分の温度が基準温度を上回る場合に負の値とすることができる。また、当該基準温度は、ある所定の温度であってもよいし、所定の温度範囲に属する温度であってもよい(すなわち、この場合、ゴム成分の温度が当該所定の範囲に属すれば、変位量がゼロとなる)。
【0076】
さらに、ゴム成分の温度が基準温度を下回る場合の変位量R1(正の値)は、一の所定の変位量であってもよいし、基準温度を下回る度合いが大きくなるのに応じて、変位量の絶対値が多段階的に増加するものであってもよい。一方、ゴム成分の温度が基準温度を上回る場合の変位量R1(負の値)は、一の所定の変位量であってもよいし、基準温度を上回る度合いが大きくなるのに応じて、変位量の絶対値が多段階的に増加するものであってもよい。前記変位量R1(正の値)と前記変位量R1(負の値)の絶対値は同じであってもよいし、それに限定されず、互いに異なる値であってもよい。上記で説明したゴム成分の温度と変位量R1との関係は、外気温と変位量R2との関係にも同様に適用される。
【0077】
ゴム成分の温度や外気温が基準値よりも低い場合にロータ回転数を基準値R0より上げることが好ましいのは、ゴム成分と各種添加剤の混練り中の温度上昇を促進するためである。逆に、ゴム成分の温度や外気温が基準値よりも高い場合にロータ回転数を基準値R0より下げることが好ましいのは、ゴム成分と各種添加剤の混練り中の温度上昇を抑制するためである。
【0078】
ゴム成分の温度と変位量R1との関係の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、R1>0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、R1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、R1<0
【0079】
上記R1の値としては、例えば、R1>0のときの値を+2rpm、R1<0のときの値を-2rmpとすることが挙げられる。
【0080】
外気温と変位量R2との関係の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
外気温が20℃未満のとき、R2>0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、R2=0
外気温が35℃超のとき、R2<0
【0081】
上記R2の値としては、例えば、R2>0のときの値を+5rmp、R2<0のときの値を-5rmpとすることが挙げられる。
【0082】
(T1、T2
ゴム成分の温度に応じて変位すべき混練時間の変位量T1および外気温に応じて変位すべき混練時間の変位量T2は、混練するゴム成分および添加剤の種類や量、ゴム成分の形状、混練機の種類、混練する場所等により変動し得る。変位量T1および変位量T2は、例えば、予備実験等により定めておくことができる。当該変位量T1およびT2は、具体的には、それぞれ、例えば、ある温度を基準とし(基準温度)、ゴム成分の温度が基準温度と等しい場合に変位量ゼロとし、ゴム成分の温度が基準温度を下回る場合に負の値とし、ゴム成分の温度が基準温度を上回る場合に正の値とすることなどが挙げられる。また、当該基準温度は、ある所定の温度であってもよいし、所定の温度範囲に属する温度であってもよい(すなわち、この場合、ゴム成分の温度が当該所定の範囲に属すれば、変位量がゼロとなる)。
【0083】
さらに、ゴム成分の温度が基準温度を下回る場合の変位量T1(負の値)は、一の所定の変位量であってもよいし、基準温度を下回る度合いが大きくなるのに応じて、変位量の絶対値が多段階的に増加するものであってもよい。一方、ゴム成分の温度が基準温度を上回る場合の変位量T1(正の値)は、一の所定の変位量であってもよいし、基準温度を上回る度合いが大きくなるのに応じて、変位量の絶対値が多段階的に増加するものであってもよい。前記変位量T1(負の値)と前記変位量T1(正の値)の絶対値は同じであってもよいし、それに限定されず、互いに異なる値であってもよい。上記ゴム成分の温度と変位量T1との関係は、外気温と変位量T2との関係にも同様に適用される。
【0084】
ゴム成分の温度や外気温が基準値よりも低い場合に混練時間を基準値T0より短くすることが好ましいのは、上記のようにロータ回転数を上げる場合には単位時間当たりのせん断エネルギーが増加するので、その分混練時間によって、せん断エネルギーが多くなりすぎないように調整するためである。一方、ゴム成分の温度や外気温が基準値よりも高い場合に混練時間を基準値T0より長くすることが好ましいのは、上記のようにロータ回転数を下げる場合には単位時間当たりのせん断エネルギーが減少するので、その分混練時間によって、せん断エネルギーの減少を補うためである。
【0085】
ゴム成分の温度と変位量T1との関係の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
ゴム成分の温度が20℃未満のとき、T1<0
ゴム成分の温度が20℃以上35℃以下のとき、T1=0
ゴム成分の温度が35℃超のとき、T1>0
【0086】
上記T1の値としては、例えば、T1<0のときの値を-6秒、T1>0のときの値を+6秒とすることが挙げられる。
【0087】
外気温と変位量T2との関係の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
外気温が20℃未満のとき、T2<0
外気温が20℃以上35℃以下のとき、T2=0
外気温が35℃超のとき、T2>0
【0088】
上記T2の値としては、例えば、T2<0のときの値を-15秒、T2>0のときの値を+15秒とすることが挙げられる。
【0089】
<工程(3)>
工程(3)は、前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定する工程である。
【0090】
修正されたロータ回転数RVは、前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて演算を行うことで決定することができる。同様に、修正された混練時間TVは、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて演算を行うことにより決定することができる。これら決定は、人が行ってもよいし、運転制御手段が備える演算機能によって処理してもよい。
【0091】
<工程(4)>
工程(4)は、前記修正されたロータ回転数RVおよび前記修正された混練時間TVで、混練を実施する工程である。
【0092】
工程(4)におけるロータ回転数は、前記修正されたロータ回転数RVである。同様に、工程(4)における混練時間は前記修正された混練時間TVである。ロータ回転数RVおよび混練時間TVでの混練は、混練機を人が操作することにより実施してもよいし、あるいは、運転制御手段が相当する電気信号を混練機に送信し、これを受信した混練機が実施することでもよい。
【0093】
<電力量の調節>
前記工程(2)においては、さらに、電力量について、予め設定した電力量の基準値W0から、前記ゴム成分の温度に応じて変位すべき変位量W1を算出し、かつ、前記外気温に応じて変位すべき変位量W2を算出する工程を含むものであることが好ましい。この場合、前記工程(3)は、さらに、前記基準値W0、前記変位量W1および前記変位量W2から修正された電力量WVを決定する工程を含むものとなり、また、前記工程(4)は、修正された電力量WVをさらに加味して、バッチ練りを実施する工程となる。電力量の調節も、回転数および混練時間について上記したのと同様、人が行ってもよいし、人以外の手段によって実施してもよい。
【0094】
電力量は、混練の回転数との間では、混練の回転数が増えれば増加し、混練の回転数が減少すれば減少する関係にある。また、電力量は、混練時間との間では、混練時間が増えれば増加し、混練時間が減少すれば減少する関係にある。電力量の調節により、さらにきめ細やかなバラツキの抑制が可能となるが、電力量の調節幅は、上記に示した電力量と混練の回転数との関係、および、電力量と混練時間との関係を加味して、決定することができる。
【0095】
<ゴム組成物>
以上により、本開示にかかわるゴム組成物が得られる。当該ゴム組成物は、例えば、バッチ練りがベース練りである場合はベース練り後のゴム組成物であり、バッチ練りがベース練りと仕上げ練りとを含むものである場合は仕上げ練り後のゴム組成物である。
【0096】
こうして得られるゴム組成物は、温度、粘度、生地の状態などにおけるバッチ間のバラツキが抑えられたゴム組成物である。例えば、バッチ練りがベース練りとして実施される場合、各バッチ練りで得られるゴム組成物の排出温度は、最大値と最小値との差が、例えば、15℃以内であることが好ましく、13℃以内であることがより好ましく、11℃以内であることがさらに好ましく、9℃以内であることがさらに好ましく、7℃以内であることがさらに好ましい。ここで、ベース練りにおける排出温度とは、混練機から混練物が排出される時の混練物の温度である。また、各バッチ練りで得られるゴム組成物の粘度(ムーニー粘度ML1+4(130℃))は、最大値と最小値との差が、例えば、15以内であることが好ましく、11以内であることがより好ましく、7以内であることがさらに好ましく、5以内であることがさらに好ましい。また、各バッチ練りで得られるゴム組成物にはゲル化が観察されないことが好ましい。
【0097】
[タイヤの製造方法]
本開示のゴム組成物は、タイヤの製造に使用することができる。当該タイヤは、例えば、上記製造方法を含む製造方法により得た未加硫ゴム組成物を用いて、常法により、製造することができる。
【0098】
タイヤの製造方法としては、上記で得た未加硫のゴム組成物を所望のタイヤ部材の形状(例えば、トレッド、サイドウォール、カーカス被覆ゴム、クリンチ、チェーファー、ビード、ブレーカークッション、インナーライナーなど)に押出し加工して、当該タイヤ部材を得る工程、当該タイヤ部材を、タイヤ成型機上で、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、成型して未加硫タイヤを得る工程、および、当該未加硫タイヤを、加硫機中で、加圧加硫してタイヤを得る工程を含むものである。この場合の加硫条件は、特に限定されるものではないが、例えば、150~200℃で5~30分間加圧加硫するものである。
【0099】
本開示のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わないが、空気入りタイヤであることが好ましい。また、空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤなどの高性能タイヤ、ランフラットタイヤなど各種タイヤに用いることができる。
【0100】
[混練装置]
本開示の混練装置を、以下、適宜、図1を参照しながら説明する。
【0101】
本開示の混練装置は、上記本開示のゴム組成物の製造方法を実施するものである。したがって、上記ゴム組成物の製造方法に関する説明は、特に矛盾を生じない限り、すべて、当該混練装置に関する説明として解することができる。
【0102】
図1は、本開示の混練装置の一例である。図1の混練装置は、ロータRを備えたバンバリーミキサー2(混練機)、ゴム成分3の温度の検出手段D1、外気温の検出手段D2、演算手段C、および、バンバリーミキサー2(混練機)の運転を制御する運転制御手段Oを備えている。
【0103】
ゴム成分3の温度と外気温とは、それぞれ、D1とD2とで検出され、電気信号に変換された上で、D1とD2から、演算手段Cへと送信される。演算手段Cは、少なくともロータ回転数および混練時間について、予め設定したロータ回転数の基準値R0および混練時間の基準値T0に対して、受信した前記ゴム成分3の温度に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R1および変位量T1を算出し、かつ、受信した前記外気温に相当する電気信号に応じてそれぞれ変位すべき変位量R2および変位量T2を算出し、前記各変位量に相当する電気信号を運転制御手段Oへ送信する。運転制御手段Oは、前記基準値R0、前記変位量R1および前記変位量R2に基づいて修正されたロータ回転数RVを決定し、前記ロータ回転数RVに相当する電気信号を混練機に送信し、並びに、前記基準値T0、前記変位量T1および前記変位量T2に基づいて修正された混練時間TVを決定し、前記混練時間TVに相当する電気信号を混練機に送信する。バンバリーミキサー2(混練機)は、受信した前記ロータ回転数RVに相当する電気信号と前記混練時間TVに相当する電気信号に従い、混練を実施する。
【0104】
ゴム成分3の温度と外気温の検出手段D1とD2は、ゴム成分を混練機に投入する際のゴム成分の温度と外気温とをバッチ毎に測定できるのであれば、特に限定されず、いずれの検出手段をも採用することができる。このうち、ゴム成分3の温度の検出手段D1は、例えば、ゴム成分3がシート状の場合には、非接触式温度測定機、例えば、赤外放射温度計を好適に用いることができる。一方、ゴム成分3がベール状の場合には、ゴム成分の内部温度を測定すべく、接触式温度測定機、例えば、接触式温度計を好適に用いることができる。演算手段Cは、少なくともロータ回転数および混練時間について、受信した温度情報をもとに、それぞれ、基準値R0に対する変位量R1およびR2、並びに、基準値T0に対する変位量T1およびT2を算出し、前記各変位量に相当する電気信号を運転制御手段Oへ送信することができるのであれば、特に限定されず、いずれの演算手段をも採用することができる。運転制御手段Oは、基準値R0、変位量R1および変位量R2に基づいて、修正されたロータ回転数RVを決定し、ロータ回転数RVに相当する電気信号をバンバリーミキサー2(混練機)に送信し、並びに、基準値T0、変位量T1および変位量T2に基づいて、修正された混練時間TVを決定し、混練時間TVに相当する電気信号をバンバリーミキサー2(混練機)に送信することができるのであれば、特に限定されず、いずれの運転制御手段をも採用することができる。バンバリーミキサー2(混練機)は、受信したロータ回転数RVに相当する電気信号と混練時間TVに相当する電気信号に従い、混練を実施することができるものであれば、特に限定されず、いずれの混練機をも使用することができる。
【実施例0105】
実施例に基づいて本開示を具体的に説明する。本開示は、これら実施例に限定されない。
【0106】
<実施例および比較例で使用した各種原料>
SBR1:SE-0212(アミン系末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、スチレン含量:25質量%、ビニル含量:61.0%、Tg:-25℃、Mn:2.1×105、Mw:3.1×105、非油展、住友化学(株)から入手可能)
SBR2:下記製造例により合成した変性スチレンブタジエンゴム
BR:ASAPRENE N103(シス含量:38質量%、Mw:55万、旭化成(株)から入手可能)
NR:TSR20
カーボンブラック:ダイヤブラックN220(N2SA:115m2/g、三菱ケミカル(株)から入手可能)
シリカ:ウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g、エボニックジャパン(株)から入手可能)
シランカップリング剤:SI998(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、Nanjing Shuguang Silane Chemical社から入手可能)
ワックス1:ウルトラルーブ160(keim additec surface社から入手可能)
ワックス2:オゾエース0355(日本精蝋(株)から入手可能)
加工助剤:ウルトラフロー440(テスコ(株)から入手可能)
無機カリウム塩:四ホウ酸カリウム4水和物(K2B47・4H2O、米山薬品工業(株)から入手可能)
ステアリン酸:ビーズステアリン酸つばき(日油(株)から入手可能)
【0107】
製造例1(SBR2の製造)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性SBRを得た。
【0108】
1.ゴム成分がシート状の場合(実施例1、比較例1~2)
<ゴム組成物の製造>
(ベース練り工程)
表1に示す配合処方にしたがい、バンバリーミキサー(容量240L、2枚羽根ロータ)を用いて、混練りし、排出して混練物を得た。
【0109】
当該混練は、ロータ回転数の基準値(R0)を30rpm、および、混練時間の基準値(T0)を145秒とした上で、実施例1について、表2に示す条件の下、回転数および混練時間を修正して、実施した。
【0110】
すなわち、実施例1については、混練の回転数の基準値(R0)30rpm、および、混練時間の基準値(T0)145秒に対して、表2に示す条件の下、表4に示す投入時のゴム成分温度および外気温に応じて、ゴム成分温度による変位量(R1、T1)および外気温による変位量(R2、T2)を決定し、これを加味して混練の回転数および混練時間を修正し、こうして求めた回転数RV、および、混練時間TVによって、混練を実施した(表5)。なお、投入直前のゴム成分の温度は、非接触式の赤外放射温度計により測定した。
【0111】
比較例1については、混練の回転数の基準値(R0)30rpm、および、混練時間の基準値(T0)145秒に対して、表3に示す条件の下、表4に示す投入時のゴム成分温度のみに応じて、混練時間のみ修正し、混練を実施した(表6)。
【0112】
比較例2については、表7のとおり、投入時のゴム成分温度および外気温にかかわらず、混練の回転数も混練時間も、いずれも、基準値(R0:30rpm、T0:145秒)のまま実施した。
【0113】
<評価>
評価の方法は以下のとおりである。結果は表5~表7に記載した。
【0114】
(ムーニー粘度)
JIS K 6300-1に準拠し、各共重合体について、JIS K 6300「未加硫ゴムの試験方法」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の予熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、大ロータを回転させ、4分間経過した時点でのムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定した。
【0115】
(生地状態)
目視により、混練後のシート生地の状態を確認した。前記シート生地にゲル化が発生していなければ○、ゲル化が発生している場合には×とした。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
(結果)
排出温度について、実施例1では、142~148℃の範囲に収まっているのに対し、比較例1では139~155℃までのバラツキを示し、なんら修正を行っていない比較例2のバラツキ(136~157℃)と同程度である。ムーニー粘度について、実施例1では、79~83の範囲に収まっているのに対し、比較例1では76~94までのバラツキを示し、なんら修正を行っていない比較例2のバラツキ(79~96)と同程度である。生地の状態について、実施例1では、全くゲル化が発生しなかったのに対し、比較例1では1バッチにおいて、比較例2では2バッチにおいて、ゲル化が観察された。
【0124】
2.ゴム成分がベール状の場合(実施例2)
シート状のゴム成分に代えてベール状のゴム成分を用いたこと、ロータ回転数の基準値(R0)を30rpmに代えて45rpmとしたこと、混練時間の基準値(T0)を145秒に代えて130秒としたこと、投入時のゴム成分温度および外気温は表4ではなく下記表8であったこと、および、投入直前のゴム成分の温度は接触式温度計をベール状のゴム成分の中心部に挿入することにより測定したこと以外は、実施例1と同様に処理して、下記表9の結果を得た。
【0125】
【表8】
【0126】
【表9】
【0127】
(結果)
実施例2では、排出温度が138~145℃の範囲に収まり、ムーニー粘度が55~57の範囲に収まり、生地の状態についてもゲル化が発生しなかった。
【0128】
以上より、本開示の製造方法によれば、排出温度、ムーニー粘度、生地の状態に関して、バラツキを抑えたゴム組成物を得ることができる。
【符号の説明】
【0129】
1 混練装置
2 バンバリーミキサー
3 ゴム成分
C 演算手段
D1 ゴム成分の温度の検出手段
D2 外気温の検出手段
O 運転制御手段
R ロータ
図1