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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127603
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】トランスミッション
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/06 20060101AFI20220824BHJP
   F16H 57/03 20120101ALI20220824BHJP
【FI】
B60K17/06 C
F16H57/03
B60K17/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022214
(22)【出願日】2022-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2021025013
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小玉 恭弘
【テーマコード(参考)】
3D039
3J063
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AB12
3D039AC14
3D039AC37
3D039AC40
3D039AC45
3D039AC65
3D039AC67
3D039AD26
3D039AD33
3D039AD39
3J063AA14
3J063AB02
3J063AC03
3J063AC16
3J063BB12
3J063BB44
3J063CA01
3J063CD45
3J063CD53
(57)【要約】
【課題】ミッションケースを軽量化しながら剛性を向上可能なトランスミッションを提供する。
【解決手段】トラクタのエンジンから後輪まで駆動力を伝達する走行伝動経路と、走行伝動経路を収容したミッションケース60と、を備えたトランスミッションにおいて、ミッションケース60は、アルミニウム製であり、エンジン側から後輪側に向けて順に連結された第1ケース11と、第2ケース21と、第3ケース31と、第4ケース41とを有し、第1ケース11と、第2ケース21と、第3ケース31と、第4ケース41とのうちの少なくとも2つを連結する連結フレーム91,92を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両のエンジンから走行装置まで駆動力を伝達する走行伝動経路と、前記走行伝動経路を収容したミッションケースと、を備えたトランスミッションにおいて、
前記ミッションケースは、アルミニウム製であり、前記エンジン側から前記走行装置側に向けて順に連結された第1ケースと、第2ケースと、第3ケースと、第4ケースとを有し、
前記第1ケースと、前記第2ケースと、前記第3ケースと、前記第4ケースとのうちの少なくとも2つを連結する連結フレームを備える、
ことを特徴とするトランスミッション。
【請求項2】
前記第2ケースは、前記第2ケースの内部空間を仕切るように取り付けられた第2仕切り壁を有し、
前記第3ケースは、前記第3ケースの内部空間を仕切るように取り付けられた第3仕切り壁を有し、
前記第4ケースは、前記第4ケースの内部空間を仕切るように取り付けられた第4仕切り壁を有し、
前記第2仕切り壁と、前記第3仕切り壁と、前記第4仕切り壁と、を貫通して、前記エンジンに駆動連結された主軸部と、
前記第2仕切り壁と、前記第3仕切り壁と、前記第4仕切り壁と、を貫通して、前記走行装置に駆動連結されたカウンタ軸部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション。
【請求項3】
前記連結フレームに取り付けられた周辺機器を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農業用のトラクタ等の作業車両に適用されるトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両において、エンジンの駆動力を車輪に伝達するトランスミッションを備えたものが普及している(特許文献1参照)。トランスミッションは、エンジンから車輪まで駆動力を伝達する走行伝動経路内に設けられ、例えば、主変速装置や、副変速装置や、前後進切替装置や、PTO(Power take-off)変速装置などといった収容装置をミッションケースに収容して構成されている。
【0003】
このトランスミッションでは、軽量化を図るためミッションケースはアルミニウム製であり、ミッションケースは前部、中間部、後部のように3分割されたケースが互いの連結部同士を連結することで構成されている。ここで、アルミニウムは鉄に比べて剛性が小さいので、ミッションケースの内外に補強リブを形成することで、ミッションケースの剛性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-203185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載したトランスミッションでは、ミッションケースは複数のケースが各連結部同士を連結することによって組み立てられているので、ミッションケースの内外にリブが設けられていても連結部の連結箇所の剛性を確保することは困難であった。このため、ミッションケースを軽量化しながら剛性を向上することが望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、ミッションケースを軽量化しながら剛性を向上可能なトランスミッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、作業車両(1)のエンジン(50)から走行装置(3)まで駆動力を伝達する走行伝動経路と、前記走行伝動経路を収容したミッションケース(60)と、を備えたトランスミッション(7,107,207)において、
前記ミッションケース(60)は、アルミニウム製であり、前記エンジン(50)側から前記走行装置(3)側に向けて順に連結された第1ケース(11)と、第2ケース(21)と、第3ケース(31)と、第4ケース(41)とを有し、
前記第1ケース(11)と、前記第2ケース(21)と、前記第3ケース(31)と、前記第4ケース(41)とのうちの少なくとも2つを連結する連結フレーム(91,92)を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
例えば図2図8図9を参照して、前記第2ケース(21)は、前記第2ケース(21)の内部空間を仕切るように取り付けられた第2仕切り壁(62)を有し、
前記第3ケース(31)は、前記第3ケース(31)の内部空間を仕切るように取り付けられた第3仕切り壁(63)を有し、
前記第4ケース(41)は、前記第4ケース(41)の内部空間を仕切るように取り付けられた第4仕切り壁(64)を有し、
前記第2仕切り壁と、前記第3仕切り壁と、前記第4仕切り壁と、を貫通して、前記エンジンに駆動連結された主軸部(70)と、
前記第2仕切り壁と、前記第3仕切り壁と、前記第4仕切り壁と、を貫通して、前記走行装置に駆動連結されたカウンタ軸部(80)と、を備える。
【0009】
例えば図6及び図7を参照して、前記連結フレーム(91,92)に取り付けられた周辺機器(93)を備える。
【0010】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明は、ミッションケースをアルミニウム製として、第1ケース~第4ケースのうちの少なくとも2つを連結する連結フレームを備えるようにしている。これにより、連結フレームを有さずに第1ケース~第4ケースをいずれもケース同士の連結部同士を連結することにより構成する場合に比べて、ミッションケースの軽量化を図りながらも剛性を向上することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明は、各ケースを仕切る各仕切り壁を主軸部及びカウンタ軸部が貫通して設けられているので、各ケース間の剛性を更に高めることができる。
【0013】
請求項3に係る本発明は、連結フレームに周辺機器を取り付けているので、ミッションケースの形状を簡素化でき、ミッションケースの更なる軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係るトラクタを示す側面図。
図2】第1の実施形態に係るトランスミッションを前後方向に沿って切断した状態を示す断面図。
図3】第1の実施形態に係るミッションケースを前後方向に沿って切断した状態を示す斜視図であり、(a)は後側から視た図、(b)は前側から視た図。
図4】第1の実施形態に係るミッションケースを示す分解斜視図であり、(a)は前側から視た図、(b)は後側から視た図。
図5】第1の実施形態に係るトランスミッションに連結フレームを取り付けた状態を示す斜視図。
図6】第1の実施形態に係る連結フレームにオイルクリーナを取り付けた状態を示す斜視図。
図7】第1の実施形態に係る連結フレームにオイルクリーナを取り付けた状態を拡大して示す斜視図。
図8】第2の実施形態に係るトランスミッションを前後方向に沿って切断した状態を示す断面図。
図9】第3の実施形態に係るトランスミッションを前後方向に沿って切断した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、図面に沿って、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の作業車両を適用したトラクタ1の側面図である。図1に示すように、本実施形態に係るトラクタ1は、走行装置の一例として左右一対の前輪2及び後輪3を有する走行機体4を備えている。走行機体4の前部には、走行機体4の走行部としての前輪2及び後輪3を駆動させる駆動源としての例えばディーゼルエンジンからなるエンジン50が収容されたボンネット5が設けられ、走行機体4の後部には、各種の作業機(図示せず) が選択的に連結されるよう構成された昇降リンク6が設けられている。尚、本実施形態では、走行装置として前輪2及び後輪3を適用しているが、これには限られず、例えばクローラなどの他の走行装置を適用してもよい。
【0016】
走行機体4の底部には、トランスミッション7が設けられている。トランスミッション7は、エンジン50から前輪2及び後輪3まで駆動力を伝達する走行伝動経路内と、エンジン50から作業機まで駆動力を伝達するPTO伝動経路内と、に設けられて、エンジン50の駆動力を前輪2及び後輪3と作業機にそれぞれ伝達する。本実施形態において、トランスミッション7は、複数の変速ギヤを備えた多段変速のミッションユニットとして構成されており、これら複数の変速ギヤの噛合状態を変更することによってエンジン50からの回転を変速して前輪2及び後輪3に出力可能に構成されている。即ち、走行伝動経路とPTO伝動経路は、エンジン50からの駆動力が、前輪2及び後輪3と作業機に、後述する軸部材や主変速装置22や副変速装置42などの変速ギヤにより伝えられる。また、走行伝動経路は、軸部材と変速ギヤ、前後進切替装置などの切替装置により構成され、PTO伝動経路は、軸部材と変速ギヤ、PTOクラッチなどの切替装置により構成される。尚、本実施形態では、後輪3は車輪の一例である。また、トランスミッション7の詳細については、後述する。
【0017】
また、走行機体4において、ボンネット5の後方には、作業者が着座してトラクタ1を操作する運転操作部8が設けられている。運転操作部8は、エンジン50が収納されたエンジンルームとは隔壁を挟んで仕切られており、この隔壁の後方には、操舵輪である前輪2を操舵するためのステアリングホイール9や、トラクタ1の走行速度、エンジン50の回転速度、作業機の状態などの車両状態を表示するメータパネルなどが設けられている。
【0018】
次に、トランスミッション7について、図2図7を用いて詳細に説明する。図2に示すように、トランスミッション7は、エンジン50側(前側F)から後輪3側(後側B)に向けて順に連結された第1ユニット10と、第2ユニット20と、第3ユニット30と、第4ユニット40とを備えている。第1ユニット10は、例えばクラッチユニットであり、第2ユニット20は、例えば前側ユニットであり、第3ユニット30は、例えば中間ユニットであり、第4ユニット40は、例えば後側ユニットである。
【0019】
第1ユニット10は、第1ケース11と、第1ケース11の後端部に設けられ、第2ユニット20に連結されたフランジ状の第1連結部51とを有している。第1ユニット10は、第1ケース11に設けられた支持部66と、支持部66に支持された軸受66aと、この軸受66aによって第1ケース11に回転可能に支持された第1主軸部71とを有しており、これらは第1ケース11に収容されて設けられている。第1ユニット10は、第1主軸部71に設けられたクラッチ12を有している。
【0020】
クラッチ12は、走行伝動経路内及びPTO伝動経路内に設けられ、走行伝動経路及びPTO伝動経路を接断可能に設けられている。第1主軸部71は、エンジン50に駆動連結されたエンジン50側の上流部と、第2ユニット20側の下流部と、に分割されている。第1主軸部71の上流部と下流部の間には、クラッチ12がこれら上流部と下流部とを接断可能に設けられている。クラッチ12としては、伝動経路を接断可能なものであれば、適宜な係合要素を適用することができる。
【0021】
第2ユニット20は、第2ケース21と、第2ケース21の前端部に設けられ、第1連結部51に連結されたフランジ状の第2連結部52と、第2ケース21の後端部に設けられ、第3ユニット30に連結されたフランジ状の第3連結部53とを有している。第2ユニット20は、第2ケース21の内部空間を連結方向に仕切る第1仕切り壁61及び第2仕切り壁62と、第1仕切り壁61に支持された第1主軸側軸受61a及び第1カウンタ軸側軸受61bと、第2仕切り壁62に支持された第2主軸側軸受62a及び第2カウンタ軸側軸受62bと、第1主軸側軸受61a及び第2主軸側軸受62aによって第2ケース21に回転可能に支持された第2主軸部72と、第1カウンタ軸側軸受61b及び第2カウンタ軸側軸受62bによって第2ケース21に回転可能に支持された第2カウンタ軸部82と、を有しており、これらは第2ケース21に収容されて設けられている。
【0022】
第2ユニット20は、第2主軸部72と第2カウンタ軸部82との間に介在された主変速装置22を有している。主変速装置22は、第2主軸部72の駆動力を変速可能に第2カウンタ軸部82に出力する。即ち、第2主軸部72は、主変速装置22に駆動力を入力し、第2カウンタ軸部82は、主変速装置22からの駆動力を出力する。
【0023】
主変速装置22は、第1仕切り壁61及び第2仕切り壁62の間において走行伝動経路内に設けられ、エンジン50の駆動力を、第2主軸部72を介して入力して変速可能に第2カウンタ軸部82を介して出力する。即ち、第1仕切り壁61及び第2仕切り壁62は、連結方向に関して主変速装置22の両側に配置されている。本実施形態では、主変速装置22として、例えば、4段変速の変速機を適用している。但し、4段変速の変速機には限られず、他の段数の有段変速機、あるいはHST(Hydraulic Static Transmission)のような無段変速機を適用してもよい。
【0024】
第3ユニット30は、第3ケース31と、第3ケース31の前端部に設けられ、第3連結部53に連結されたフランジ状の第4連結部54と、第3ケース31の後端部に設けられ、第4ユニット40に連結されたフランジ状の第5連結部55とを有している。第3ユニット30は、第3ケース31の内部空間を連結方向に仕切る第3仕切り壁63と、第3仕切り壁63に支持された第3主軸側軸受63a及び第3カウンタ軸側軸受63bと、第3主軸側軸受63aによって第3ケース31に回転可能に支持された第3主軸部73と、第3カウンタ軸側軸受63bによって第3ケース31に回転可能に支持された第3カウンタ軸部83と、を有しており、これらは第3ケース31に収容されて設けられている。
【0025】
本実施形態では、第3主軸部73は、互いに相対回転可能な内軸部73aと外軸部73bとを有している。内軸部73aは、中実の円柱軸状で、PTO伝動経路内に設けられている。外軸部73bは、内軸部73aの外周側に設けられた円筒軸状で、走行伝動経路内に設けられている。
【0026】
第3ユニット30は、第3主軸部73の外軸部73bと第3カウンタ軸部83との間に介在され、第3カウンタ軸部83の回転を第3主軸部73の外軸部73bに反転して伝達するカウンタ機構32を有している。カウンタ機構32は、第3主軸部73の外軸部73bと一体回転する第1ギヤ32aと、第3カウンタ軸部83と一体回転すると共に第1ギヤ32aと噛合する第2ギヤ32bとにより構成されている。
【0027】
第4ユニット40は、第4ケース41と、第4ケース41の前端部に設けられ、第5連結部55に連結されたフランジ状の第6連結部56とを有している。第4ユニット40は、第4ケース41の内部空間を連結方向に仕切る第4仕切り壁64及び第5仕切り壁65と、第4仕切り壁64に支持された第4主軸側軸受64a及び第4カウンタ軸側軸受64bと、第5仕切り壁65に支持された第5主軸側軸受65a及び第5カウンタ軸側軸受65bと、第4主軸側軸受64a及び第5主軸側軸受65aによって第4ケース41に回転可能に支持された第4主軸部74と、第4カウンタ軸側軸受64b及び第5カウンタ軸側軸受65bによって第4ケース41に回転可能に支持された第4カウンタ軸部84と、作業機に駆動連結されるPTO軸75と、を有しており、これらは第4ケース41に収容されて設けられている。
【0028】
本実施形態では、第4主軸部74は、互いに相対回転可能な内軸部74aと外軸部74bとを有している。内軸部74aは、中実の円柱軸状で、PTO伝動経路内に設けられている。外軸部74bは、内軸部74aの外周側に設けられた円筒軸状で、走行伝動経路内に設けられている。第4ユニット40は、第4主軸部74の外軸部74bと第4カウンタ軸部84との間に介在され、第4主軸部74の外軸部74bの駆動力を変速可能に第4カウンタ軸部84に出力する副変速装置42と、第4主軸部74の内軸部74aとPTO軸75との間に介在され、第4主軸部74の内軸部74aからの駆動力を変速可能にPTO軸75に出力するPTO変速装置43と、第4カウンタ軸部84に連結され、第4カウンタ軸部84からの駆動力を後輪3に伝達するディファレンシャル装置44と、第4カウンタ軸部84に連結され、第4カウンタ軸部84からの駆動力を前輪2に伝達する前輪伝動機構45と、を有している。即ち、第2主軸部72は、副変速装置42及びPTO変速装置43に駆動力を入力し、第2カウンタ軸部82は、副変速装置42からの駆動力を出力する。
【0029】
副変速装置42は、第4仕切り壁64及び第5仕切り壁65の間において走行伝動経路内に設けられ、主変速装置22から出力された駆動力を、第4主軸部74を介して入力して変速可能に第4カウンタ軸部84及びディファレンシャル装置44を介して後輪3に出力する。即ち、第4仕切り壁64及び第5仕切り壁65は、連結方向に関して副変速装置42の両側に配置されている。本実施形態では、副変速装置42として、例えば、前進2段、後進1段の変速機を適用している。但し、このような変速機には限られず、前進3段のような変速機を適用してもよい。
【0030】
PTO変速装置43は、PTO伝動経路内に設けられ、エンジン50の駆動力を、第4主軸部74を介して入力して変速可能にPTO軸を介して作業機に出力する。PTO変速装置43としては、適宜な変速機を適用することができる。ディファレンシャル装置44は、第4カウンタ軸部84からの駆動力を不図示のディファレンシャル機構を介して後輪3の車軸3aに伝達する。前輪伝動機構45は、第4カウンタ軸部84からの駆動力を接断可能に伝達し、前輪用プロペラ軸46(図1参照)を介して前輪2に伝達する。
【0031】
第1ケース11と第2ケース21とは、第1連結部51と第2連結部52とが連結されることにより連結されている。第2ケース21と第3ケース31とは、第3連結部53と第4連結部54とが連結されることにより連結されている。第3ケース31と第4ケース41とは、第5連結部55と第6連結部56とが連結されることにより連結されている。これにより、第1ケース11と、第2ケース21と、第3ケース31と、第4ケース41とは、順に連結され、ミッションケース60を形成している。即ち、ミッションケース60は、例えばクラッチケースである第1ケース11と、例えば前側ケースである第2ケース21と、例えば中間ケースである第3ケース31と、例えば後側ケースである第4ケース41とを、エンジン50側から後輪3側に向けて順に連結して構成されている。本実施形態では、ミッションケース60は、アルミニウム製であり、走行伝動経路とPTO伝動経路とを収容している。尚、第1ケース11の前端部は、エンジン50のケースに連結されている。
【0032】
第1主軸部71と、第2主軸部72と、第3主軸部73と、第4主軸部74とは、同軸上に位置するように順に連結され、エンジン50に駆動連結される主軸部の一例としての主軸ユニット70を形成している。主軸ユニット70は、第1仕切り壁61~第5仕切り壁65を貫通してミッションケース60に収容され、エンジン50に駆動連結されている。即ち、主軸ユニット70は、第1仕切り壁61~第5仕切り壁65を貫通して支持されることで、第1ケース11~第4ケース41において同位置に設けられている。本実施形態では、第1主軸部71と第2主軸部72とは、第1ジョイント76によって一体回転するように連結され、第2主軸部72と第3主軸部73の内軸部73aとは、第2ジョイント77によって一体回転するように連結されている。また、第3主軸部73の内軸部73aと第4主軸部74の内軸部74aとは、一部材で構成されることで一体回転され、第3主軸部73の外軸部73bと第4主軸部74の外軸部74bとは、一部材で構成されることで一体回転される。
【0033】
第2カウンタ軸部82と、第3カウンタ軸部83と、第4カウンタ軸部84とは、同軸上に位置するように順に連結され、前輪2及び後輪3に駆動連結されるカウンタ軸部の一例としてのカウンタ軸ユニット80を形成している。カウンタ軸ユニット80は、第2仕切り壁62~第5仕切り壁65を貫通してミッションケース60に収容され、後輪3に駆動連結されている。即ち、カウンタ軸ユニット80は、第2仕切り壁62~第5仕切り壁65を貫通して支持されることで、第2ケース21~第4ケース41において同位置に設けられている。本実施形態では、主変速装置22の出力側の軸と第2カウンタ軸部82とは、第3ジョイント86によって一体回転するように連結されている。第2カウンタ軸部82と第3カウンタ軸部83とは、一部材で構成されることで一体回転される。第3カウンタ軸部83と第4カウンタ軸部84とは、第4ジョイント87によって相対回転可能に連結されている。
【0034】
本実施形態では、第1ケース11~第4ケース41を仕切る第1仕切り壁61~第5仕切り壁65を主軸ユニット70及びカウンタ軸ユニット80が貫通して設けられている。このため、主軸ユニット70及びカウンタ軸ユニット80によって第1ケース11~第4ケース41同士の連結部分の剛性を高めることができる。
【0035】
第1連結部51と、第3連結部53と、第5連結部55とは、いずれも第2連結部52と、第4連結部54と、第6連結部56とのいずれにも連結可能な形状を有している。従って、本実施形態のように第1ユニット10と第2ユニット20と第3ユニット30と第4ユニット40とを順に連結したトランスミッション7を得るだけでなく、例えば、トランスミッションの仕様によっては、第3ユニット30を省略して、第1ユニット10と第2ユニット20と第4ユニット40とを順に連結したトランスミッションを得ることができる。即ち、主変速装置22と副変速装置42とPTO変速装置43とを基本構成とし、これらをエンジン50側の第2ユニット20と後輪3側の第4ユニット40とに配置したことにより、間の第3ユニット30を省略することができる。この場合、例えば、副変速装置42の仕様や、前後進切替装置の有無や、PTOクラッチの有無により、対応する各ユニットの収容装置を適宜変更する。これにより、異なる仕様においても、例えば主変速装置22が共通仕様であれば、第2ユニット20は共用することができる。このため、異なる仕様でトランスミッションの全てを組み立てる場合に比べて、トランスミッションのユニットの共用化によって部品コストと作業工程の簡易化によるコストの低減を図ることができる。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、ミッションケース60の内部において、第1仕切り壁61~第5仕切り壁65の仕切り壁が設けられている。このうち、第1仕切り壁61と、第3仕切り壁63と、第5仕切り壁65は、それぞれケースと一体形成されている。また、第2仕切り壁62と第4仕切り壁64とは、それぞれケースに対して着脱可能に設けられている。各仕切り壁の間には、動力系の潤滑や冷却を行うための潤滑油が貯留されている。このため、図2に示すように、第1仕切り壁61と第2仕切り壁62との間に設けられた主変速装置22や、第3仕切り壁63と第4仕切り壁64との間に設けられたカウンタ機構32や、第4仕切り壁64と第5仕切り壁65との間に設けられた副変速装置42は、それぞれ下部に貯留された潤滑油によって潤滑及び冷却される。
【0037】
図3に示すように、第2ユニット20に設けられた仕切り壁の一例である第2仕切り壁62は、主軸ユニット70の回転軸線方向(前後方向)に関して主変速装置22よりも第3ユニット30側において、第2ケース21の内部空間を前後方向に仕切っている。これにより、第2ケース21の第2仕切り壁62よりも後側Bの空間Sとして十分な大きさの空間を設けることができるので、空間Sに例えばPTOクラッチを搭載することができる。
【0038】
そして、図2に示すように、前後方向に関して、第2仕切り壁62から第2ケース21の第3ユニット30側の端部(後端部)までの長さを距離L1とする。また、前後方向に関して、第3ケース31の長さを距離L2とする。この場合に、距離L1と距離L2とを同等の長さになるように設定している。これにより、例えば、第3ユニット30を省略して第1ユニット10と第2ユニット20と第4ユニット40のみでトランスミッションを構成する場合に、第2ケース21の空間Sにおいて第3ユニット30の第3主軸部73を用いて主変速装置22と第4主軸部74とを連結できるようになる。このため、第3ユニット30を省略する場合でも第3主軸部73を有効に利用することができる。尚、本実施形態では、距離L1と距離L2とを同等の長さになるように設定しているが、これには限られず、距離L1と距離L2とは異なる長さであってもよい。例えば、距離L1を距離L2より長く設定することで、主変速装置22の入力側の軸が第2仕切り壁62よりも後側Bに突出している場合でも、第2ユニット20の空間Sにおいて第3主軸部73を用いて主変速装置22と第4主軸部74とを連結できるようになる。
【0039】
次に、図4図7を用いて、トランスミッション7の連結フレーム91,92について説明する。図4に示すように、第1ケース11と、第2ケース21と、第3ケース31と、第4ケース41とには、左右に連結フレーム91,92が設けられている。各ケース11~41は、互いに連結部において連結されているが、連結フレーム91,92によって連結されることにより、より強固に連結され、ミッションケース60としての剛性を高めることができる。各連結フレームには、複数のねじ孔が形成されている。このねじ孔を用いて、各ケースにねじ止めされたり、あるいは周辺機器が取り付けられる。
【0040】
図4(a)及び図5に示すように、左側の連結フレーム91は、ボルト91a,91bにより第1ケース11に締結され、ボルト91cにより第2ケース21に締結され、ボルト91dにより第3ケース31に締結され、ボルト91eにより第4ケース41に締結されている。一方、図4(b)に示すように、右側の連結フレーム92は、ボルト92a,92bにより第1ケース11に締結され、ボルト92cにより第2ケース21に締結され、ボルト92dにより第3ケース31に締結され、ボルト92eにより第4ケース41に締結されている。このように、第1ケース11~第4ケース41の全てのケースを連結フレーム91,92によって締結しているので、ミッションケース60の剛性を高めることができる。尚、本実施形態では、第1ケース11~第4ケース41の全てのケースを連結フレーム91,92によって連結した場合について説明しているが、これには限られず、第1ケース11~第4ケース41のうちの2つ、あるいは3つを連結フレームによって連結するようにしてもよい。この場合も、ミッションケース60の剛性を高めることができる。
【0041】
ここで、トラクタ1などでは、走行時や作業機による作業時に、上下方向に外力が加わりやすい。本実施形態では、ミッションケース60の左右に連結フレーム91,92が設けられている。このため、ミッションケース60に上下方向への外力が作用した場合であっても、連結フレームが座屈することなく、ミッションケース60の剛性を高く維持することができる。尚、本実施形態では、連結フレーム91,92をミッションケース60の左右に設けた場合について説明しているが、これには限られず、ミッションケース60の上下や他の位置に設けるようにしてもよい。この場合も、ミッションケース60の剛性を高めることができる。
【0042】
図6及び図7に示すように、左側の連結フレーム91には、周辺機器の一例として、例えばオイルクリーナ93が取り付けられている。オイルクリーナ93は、連結フレーム91のねじ孔を利用して、ねじ止めにより固定されている。連結フレーム91,92に取り付けられる周辺機器としては、例えば、潤滑油のフィルタや配管の他、適宜な部材を適用することができる。このように、連結フレーム91にオイルクリーナ93を取り付けているので、ミッションケース60の形状を簡素化でき、ミッションケース60の軽量化を図ることができる。また、連結フレーム91,92のねじ孔の数や位置は適宜調整することができるので、周辺機器をミッションケース60に直接取り付ける場合に比べて、周辺機器の取付位置の自由度を向上することができる。
【0043】
上述したように本実施形態のトランスミッション7によれば、ミッションケース60をアルミニウム製として、第1ケース11~第4ケース41を全て連結する連結フレーム91,92を備えている。これにより、連結フレーム91,92を有さない場合に比べて、ミッションケース60の軽量化を図りながらも剛性を向上することができる。
【0044】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図8を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、第2ユニット120に主変速装置22及びPTOクラッチ23を収容し、第3ユニット130に前後進切替装置33を収容し、第4ユニット140に変速段数2段の副変速装置142を収容した点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、トランスミッション107は、前側Fから後側Bに向けて順に連結された第1ユニット10と、第2ユニット120と、第3ユニット130と、第4ユニット140とを備えている。第1ユニット10については、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
第2ユニット120は、PTO伝動経路内に設けられ、PTO伝動経路を接断可能なPTOクラッチ23を有している。第2主軸部72は、第1ユニット10側の上流部と第3ユニット130側の下流部とに分割されている。PTOクラッチ23は、第2主軸部72の上流部と下流部との間に設けられ、上流部と下流部とを接断可能に設けられ、主変速装置22の入力側の軸と第3主軸部73の内軸部73aとを連結している。第3ユニット130は、走行伝動経路内に設けられ、主変速装置22から出力された駆動力を入力して正転又は反転させて出力する前後進切替装置33を有している。第3主軸部73の外軸部73bは、第2ユニット120側の上流部と第4ユニット140側の下流部とに分割されている。前後進切替装置33は、外軸部73bの上流部と下流部との間に設けられ、カウンタ機構32の第1ギヤ32aと第4主軸部74の外軸部74bとを連結している。第4ユニット140に収容されている副変速装置142としては、例えば、変速段数2段の変速機を適用している。本実施形態では、副変速装置142は、前後進切替装置33から出力された前進又は後進の駆動力を入力して、変速可能に後輪3に出力する。
【0047】
上述したように本実施形態のトランスミッション107によれば、ミッションケース60をアルミニウム製として、第1ケース11~第4ケース41を全て連結する連結フレーム91,92を備えている。これにより、連結フレーム91,92を有さない場合に比べて、ミッションケース60の軽量化を図りながらも剛性を向上することができる。
【0048】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を、図9を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、第4ユニット240に変速段数3段の副変速装置242を収容した点で、第2の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0049】
図9に示すように、トランスミッション207は、前側Fから後側Bに向けて順に連結された第1ユニット10と、第2ユニット120と、第3ユニット130と、第4ユニット240とを備えている。第1ユニット10については、第1の実施形態と同様であり、第2ユニット120及び第3ユニット130については、第2の実施形態と同様であるので、説明を省略する。第4ユニット240に収容されている副変速装置242としては、例えば、変速段数3段の変速機を適用している。
【0050】
上述したように本実施形態のトランスミッション207によれば、ミッションケース60をアルミニウム製として、第1ケース11~第4ケース41を全て連結する連結フレーム91,92を備えている。これにより、連結フレーム91,92を有さない場合に比べて、ミッションケース60の軽量化を図りながらも剛性を向上することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:トラクタ(作業車両)
3:後輪(走行装置)
7,107,207:トランスミッション
11:第1ケース
21:第2ケース
31:第3ケース
41:第4ケース
50:エンジン
60:ミッションケース
62:第2仕切り壁
63:第3仕切り壁
64:第4仕切り壁
70:主軸ユニット(主軸部)
80:カウンタ軸ユニット(カウンタ軸部)
91,92:連結フレーム
93:オイルクリーナ(周辺機器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9