(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127620
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】磁力浮上保持体
(51)【国際特許分類】
G10K 1/26 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
G10K1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023595
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021025045
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392031790
【氏名又は名称】株式会社小泉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 俊博
(72)【発明者】
【氏名】堀越 渉太
(57)【要約】
【課題】物体を磁力の反発力にて浮上させた状態を安定保持でき、一方のマグネットを配設した基部と同極の他方のマグネットを配設した浮上本体部とを全体として一体化できる磁力浮上保持体の提供を目的とする。
【解決手段】N極面又はS極面を上面側にして配設したマグネットを有する基部と、前記基部側のマグネットと同極面を下面側にして配設した浮上本体部とを備え、前記浮上本体部側のマグネットと前記基部側のマグネットの反発力にて浮上した前記浮上本体部を前記反発力に抗して空中に保持するための保持部材を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N極面又はS極面を上面側にして配設したマグネットを有する基部と、
前記基部側のマグネットと同極面を下面側にして配設した浮上本体部とを備え、
前記浮上本体部側のマグネットと前記基部側のマグネットの反発力にて浮上した前記浮上本体部を前記反発力に抗して空中に保持するための保持部材を有することを特徴とする磁力浮上保持体。
【請求項2】
前記保持部材は複数本の屈曲性を有する線材からなり、
前記複数本の線材の上端側を前記浮上本体部に連結してあり、
前記複数本の線材の下端側を前記基部側に連結してあることを特徴とする請求項1記載の磁力浮上保持体。
【請求項3】
前記複数本の線材の浮上本体部側の連結間隔と基部側の連結間隔とは一方の間隔が他方の間隔より大きくなるように前記複数本の線材が多角錐状に配設してあることを特徴とする請求項2記載の磁力浮上保持体。
【請求項4】
前記複数本の線材は長さ又は太さが異なるものであることを特徴とする請求項2又は3記載の磁力浮上保持体。
【請求項5】
前記浮上本体部は発音体であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の磁力浮上保持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力の反発力を利用した磁力浮上保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁力は、同極同士に配置すると、相互に反発力が生じる。
この原理を利用して、物体を浮上させることができ、いろいろな分野にて活用されている。
例えば特許文献1には、物体を磁気反発力にて浮上させる、物体の非接触支持構造を開示する。
しかし、これまで提案されている物体の浮上構造は、いずれも物体の自重と磁気反発力とのバランスにて浮上されるものであり、浮上状態が安定しているとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、物体を磁力の反発力にて浮上させた状態を安定保持でき、一方のマグネットを配設した基部と同極の他方のマグネットを配設した浮上本体部とを全体として一体化できる磁力浮上保持体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る磁力浮上保持体は、N極面又はS極面を上面側にして配設したマグネットを有する基部と、前記基部側のマグネットと同極面を下面側にして配設した浮上本体部とを備え、前記浮上本体部側のマグネットと前記基部側のマグネットの反発力にて浮上した前記浮上本体部を前記反発力に抗して空中に保持するための保持部材を有することを特徴とする。
これにより、基部に対して磁力の反発力にて浮上本体部を空中に浮上させつつ、基部と浮上本体部との間に直接又は間接的に配設した保持部材により、この浮上本体部を基部と一体化でき、浮上状態を安定的に保持する。
【0006】
本発明における保持部材は、浮上本体部を基部から磁力の反発力にて浮上させたことによる空中保持の特性、例えば揺動性,振動性等を大きく阻害しないものがよい。
例えば、保持部材は複数本の屈曲性を有する線材からなり、前記複数本の線材の上端側を前記浮上本体部に連結してあり、前記複数本の線材の下端側を前記基部側に連結してあるのがよく、この場合に複数本の線材の浮上本体部側の連結間隔と基部側の連結間隔とは一方の間隔が他方の間隔より大きくなるように前記複数本の線材が多角錐状に配設してあるのがさらによい。
これは、上側の方が間隔の狭いテーパー状に配置したものと、下側の方が間隔の狭い逆テーパー状のどちらでもよい趣旨である。
また、複数本の線材は、それぞれが同じ長さである場合のみならず、複数本の線材のうち、1つ又は2つ以上が相互に異なる長さ、あるいは異なる太さに設定すると、浮上本体部が揺れた際の周廻りの揺動軌道に変化が生じる。
【0007】
ここで、屈曲性を有する線材とは、自由に曲げられる線材をいい、各種糸や紐のようなものが代表例として挙げられ、ワイヤーや細いパイプ状であってもよい。
また、線材は、ゴム紐のように伸び縮みする弾性材や、細長いコイルバネような弾性部材であってもよい。
【0008】
本発明における浮上本体部は、磁力の反発力と保持部材の引張力との作用により、揺動,振動可能に空中に保持されている点に特徴があり、各種装飾体でもよい。
特に浮上本体部は、鈴やベル等の発音体であると、振動が阻害されずに音が鳴りやすく、その余韻が長くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、浮上本体部が基部側との相互のマグネットの反発力により、空中に浮上した状態を保持部材で引張るように安定的に保持したので、全体として一体化された磁力浮上保持体となる。
これにより、従来の物体の自重と磁力反発力とのバランスのみで浮上させるのと相違し、一体として持ち運びもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る磁力浮上保持体の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る磁力浮上保持体の構造例を以下図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0012】
図1に実施例1を示す。
磁力浮上保持体は、基部側マグネット21を中央部に固定した基部20と、底部側に浮上マグネット11を固定した浮上本体部10を有する。
基部側マグネット21と浮上マグネット11とは、例えばネオジム磁石(ネオジウム磁石)等の磁石であってよく、基部側マグネット21の上面側と浮上マグネット11の下面側とがN極又はS極の同極になっている。
ここで、上面側,下面側と表現したのは、上面部や下面部が基部の表面や浮上本体部の表面から露出している場合のみならず、内部に埋め込んであってもよいことをいう。
【0013】
浮上本体部10は、浮上マグネット11と基部側マグネット21との同極反発力により、空中に浮上しようとする。
この場合に、基部側マグネット21の磁力中心と、浮上マグネット11との磁力中心とがずれると、浮上状態が安定しない。
そこで
図1に示した実施例1は、3本の保持部材31,32,33にて浮上本体部10と基部20との磁力反発力に抗するように、引張る方向に連結保持した。
図1で(a)と(b)は、基部20の方向を変えて表現したものである。
(c)は部分断面図,(d)は下側から見た斜視図、(e)は平面図、(f)は底面図である。
保持部材は、紐や糸のような屈曲性線材であってよく、保持部材31,32,33の上端部31a,32a,33aを浮上マグネット11の廻りに同心円状で等間隔に連結してあり、保持部材31,32,33の下端部31b,32b,33bを基部側マグネット21の廻りに同心円状で等間隔に連結してある。
この場合に、保持部材の上端部側の同心円の半径により、下端部側の同心円の半径が大きくなるように、三角錐状に配設してある。
このようにすると、例えば
図1(a)にて浮上本体部10のマグネット中心が、基部側のマグネット中心と右側にずれる方向に移動しようとすると、左側から引張っている保持部材32により、その移動を規制する。
上記では、右側にずれる場合で説明したが、3本以上の保持部材を同心円多角錐状に配置した場合には、どの方向にずれようとしてもその動きを規制するので、安定して浮上状態が維持される。
また、上記は上端部側の複数本の線材の間隔が下端部側の間隔よりも狭い例を示したが、逆に下端部側の方が上端部側よりも狭い、逆の配置であっても同様に作用する。
実施例1では、保持部材として3本の線材からなる例を示したが、線材の本数は3本以上であれば本数に制限はない。
また、線材の長さもそれぞれが同じ長さであってもよく、相互に1本又は2本以上の長さが異なるように設定すると、複数本の線材に加わるそれぞれの磁力反発力のバランスにより、浮上本体部が浮上保持されることになる。
これにより、浮上本体部が揺動する際に生じる揺動軌道が真円運動とは異なるようになり、その動きの変化を楽しむことができる。
従って、複数本の線材は、長さが異なるように設定する場合の他に、太さや引張り強さが異なるように設定することもできる。
線材をゴム等の弾性材にすると、磁力反発力とのバランスをとりながら浮上するので、上下方向の変化も生じる。
【0014】
図1の実施例では、基部20が基部側マグネット21を中心にして、三方に同心円状に脚部22a,22b,22cを配設した例になっている。
また、浮上本体部10は、上部に開口部10aを有する鈴の形状にした例である。
【0015】
図2の実施例2は、基部20Aを円形状にし、浮上本体部10Aをカップ状のベル形状にした例である。
図2で、(a)は外観図、(b)は部分断面図、(c)は平面図、(d)は底面図を示す。
実施例1や2では、基部20,20Aに設けた基部側マグネット21を利用して、本発明に係る磁力浮上保持体を各種スチール製品等の側面や、上にあるいは壁等に吸着(固着)保持させることもできる。
【0016】
図3の実施例3は、浮上本体部10Bが下側に開口部10bを有するおりんタイプにした例である。
図3で(a)は外観図、(b),(c)は部分断面図である。
(b)は、浮上本体部10Bの内側の項部に厚肉部を形成することで、基部20Bの中央部に形成した支柱部21とのマグネット相互の間隔を調整した例である。
(c)は、浮上本体部10Bが揺動しやすいように、保持部材31,32,33との連結部をおりんの内側上部付近に設けた例である。
このようにすると、浮上本体部をりん棒等にて打りんすると、揺らぎが発現するとともに共鳴音がなり、余韻が長い。
図4は、基部20Cの形状を円盤状にし、保持部材31,32,33の下側の広がりを大きくした例である。
【符号の説明】
【0017】
10 浮上本体部
11 浮上マグネット
20 基部
21 基部側マグネット
31,32,33 保持部材