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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127646
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】整復用鉗子
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/60 20060101AFI20220825BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61B17/60
A61B17/28
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025753
(22)【出願日】2021-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】520308411
【氏名又は名称】株式会社フジフレックスマーケティング
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】池本 光範
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG05
4C160LL31
(57)【要約】
【課題】より小さな切開領域であっても比較的容易に目的部位に挿入することができる整復用鉗子を提供する。
【解決手段】骨を仮固定するための整復用鉗子であって、(1)(a)第1ハンドル部、(b)第2ハンドル部、(c)第1ハンドル部に対応して作動する第1把持部、(d)第2ハンドル部に対応して作動する第2把持部及び(e)交差連結部を含み、
第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部から手指による脱着が可能となっている整復用鉗子に係る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨を仮固定するための整復用鉗子であって、
(1)(a)第1ハンドル部、(b)第2ハンドル部、(c)第1ハンドル部に対応して作動する第1把持部、(d)第2ハンドル部に対応して作動する第2把持部及び(e)交差連結部を含み、
(2)交差連結部は、軸部と、その軸部に対して転回可能な第1連結部材及び第2連結部材とを含み、
(3)第1連結部材に第1ハンドル部及び第1把持部が連結されており、
(4)第2連結部材に第2ハンドル部及び第2把持部が連結されており、
(5)第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部から手指による脱着が可能となっており、
(6)第1ハンドル及び第2ハンドルを離反又は近接させることにより、第1把持部の先端領域と第2把持部の先端領域とが離反又は近接され、かつ、前記先端領域どうしが近接することで骨を把持することができる、
ことを特徴とする整復用鉗子。
【請求項2】
第1把持部及び第2把持部が近接した状態で第1把持部及び第2把持部を固定するための固定手段をさらに含む、請求項1に記載の整復用鉗子。
【請求項3】
第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、その側面と交差連結部の側面との間で手指による脱着が可能な状態で連結されている、請求項1又は2に記載の整復用鉗子。
【請求項4】
第1把持部及び第2把持部を上方から見た状態において、第1把持部の長尺方向の中心線と、第2把持部の長尺方向の中心線とが、第1把持部又は第2把持部の先端領域で交差するように、第1把持部と第2把持部とが交差連結部に連結されている、請求項1~3のいずれかに記載の整復用鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な整復用鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鎖骨、大腿骨、上腕骨等の骨折のような整形外科外傷を治療するための手術においては、骨折した部位において骨どうしのずれを直し、もとの位置に戻すための整復という施術がなされる。整復された骨折部位においては、骨把持鉗子(整復用鉗)にて整復位を維持した状態で仮固定される。その後、仮固定された骨折部位にプレートを当接して最終的な固定が行われることになる。
【0003】
このような整復用鉗子としては、種々のタイプの鉗子が提案されている。例えば、破損した骨を整復状態で仮固定するための骨固定用鉗子であって、前記骨を把持すべく互いに近接離反可能に組み合わされた第1及び第2の把持部材と、前記両把持部材を互いに近接する向きに駆動するための操作部と、前記骨を把持した状態で前記両把持部材を互いに保持するための保持機構とを有し、前記両把持部材の少なくとも一方の前記骨に当接する側に、前記骨に巻き付けるべき糸状体を受容するための溝が対応する把持部材の基端側から遊端側に向けて設けられていることを特徴とする骨固定用鉗子がある(特許文献1)。
【0004】
そのほかにも、例えば、指骨骨折に際し経皮的な鋼線の刺入により骨折部を固定するため、一対のアーム先端に対向する整復固定針を突設し、夫々のアーム外方より鋼線を挿通して前記整復固定針間を通過するようにこの鋼線を案内する誘導筒を備える整復鉗子において、前記アームは、整復固定針近傍に曲面で面取りされた長孔を形成し、前記誘導筒は、この長孔を挿通して前記鋼線を案内する管体と、長孔周面に当接し中心部にこの管体を移動可能に挿通する球体と、球体の上面に当接し中心部に前記管体を移動可能に挿通するボルトと、前記アームの両側面を移動可能に保持する脚部を垂下し前記ボルトを螺着して前記アームに係止する位置決め部材を有することを特徴とする整復鉗子が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-67847
【特許文献2】特開2007-75429
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、他の開腹手術と同様、骨折等の治療のための手術においても切開部を必要最小限となるように施術することが、手術の低侵襲化、ひいては患者の早期退院等の見地から要請されている。
【0007】
この点において、従来の固定用鉗子においては、さらなる改善の余地がある。すなわち、固定用鉗子を骨折部位に挿入するに際し、その本質的な形状(はさみ形状)ゆえにある程度の大きな切開を行う必要がある。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、より小さな切開領域であっても比較的容易に目的部位に挿入することができる整復用鉗子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造からなる鉗子上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の整復用鉗子に係る。
1. 骨を仮固定するための整復用鉗子であって、
(1)(a)第1ハンドル部、(b)第2ハンドル部、(c)第1ハンドル部に対応して作動する第1把持部、(d)第2ハンドル部に対応して作動する第2把持部及び(e)交差連結部を含み、
(2)交差連結部は、軸部と、その軸部に対して転回可能な第1連結部材及び第2連結部材とを含み、
(3)第1連結部材に第1ハンドル部及び第1把持部が連結されており、
(4)第2連結部材に第2ハンドル部及び第2把持部が連結されており、
(5)第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部から手指による脱着が可能となっており、
(6)第1ハンドル及び第2ハンドルを離反又は近接させることにより、第1把持部の先端領域と第2把持部の先端領域とが近接又は離反し、かつ、前記先端領域どうしが近接することで骨を把持することができる、
ことを特徴とする整復用鉗子。
2. 第1把持部及び第2把持部が近接した状態で第1把持部及び第2把持部を固定するための固定手段をさらに含む、前記項1に記載の整復用鉗子。
3. 第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、その側面と交差連結部の側面との間で手指による脱着が可能な状態で連結されている、前記項1又は2に記載の整復用鉗子。
4. 第1把持部及び第2把持部を上方から見た状態において、第1把持部の長尺方向の中心線と、第2把持部の長尺方向の中心線とが、第1把持部又は第2把持部の先端領域で交差するように、第1把持部と第2把持部とが交差連結部に連結されている、前記項1~3のいずれかに記載の整復用鉗子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より小さな切開領域であっても比較的容易に目的部位に挿入することができる整復用鉗子を提供することができる。
【0012】
特に、本発明の整復用鉗子は、第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部からの手指による脱着が可能となっているので、体内に挿入する際は、交差連結部を含む小さなサイズで導入し、設置することができる。その後に、鉗子を体内に設置した状態で交差連結部に各部材を連結することで完成させ、通常の骨鉗子として機能させることができる。
【0013】
このため、骨折等を治療するための手術において、切開領域が狭い場合、骨折位置によっては通常の骨鉗子が導入できない場合等においても、本発明の鉗子は比較的容易にかつ確実に所定の位置の配置することが可能である。また、必要に応じて、施術中において、形状、大きさ等の異なる把持部の交換を適宜行うことも可能である。
【0014】
また、本発明の鉗子を用いることによって、切開領域をより小さくすることができるので、患者の負担の軽減等を図ることができる。これにより、患者の入院期間の短縮化等にも寄与することができる。
【0015】
このような特徴をもつ本発明の鉗子は、特に鎖骨、大腿骨、上腕骨等の骨折のような整形外科外傷を治療するための手術において、骨折した部位を整復するための鉗子として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の整復用鉗子の斜視図である。
図2図2Aは、本発明の整復用鉗子が閉じた状態の側面図である。図2Bは、本発明の整復用鉗子が開いた状態の側面図である。
図3図3Aは、本発明の整復用鉗子の交差連結部の側面図である。図3Bは、図3Aのb方向から見た図である。図3Cは、図3Aのc方向から見た図である。図3Dは、図3Aのd方向から見た図である。
図4図4Aは、本発明の整復用鉗子を上方からみた図である。図4Bは、図4Aの第1把持部及び第2把持部の拡大図である。
【符号の説明】
【0017】
10 本発明の整復用鉗子
11 第1ハンドル部
12 第1把持部
13 第2ハンドル部
14 第2把持部
15 交差連結部
15a 第1連結部
15b 第2連結部
15c 軸部(回転軸)
15d,15e,15f,15g 突起部
16 固定手段
16a ボルト部
16b ナット部
C1 中心線
C2 中心線
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.整復用鉗子
本発明の整復用鉗子(本発明鉗子)は、骨を仮固定するための整復用鉗子であって、
(1)(a)第1ハンドル部、(b)第2ハンドル部、(c)第1ハンドル部に対応して作動する第1把持部、(d)第2ハンドル部に対応して作動する第2把持部及び(e)交差連結部を含み、
(2)交差連結部は、軸部と、その軸部に対して転回可能な第1連結部材及び第2連結部材とを含み、
(3)第1連結部材に第1ハンドル部及び第1把持部が連結されており、
(4)第2連結部材に第2ハンドル部及び第2把持部が連結されており、
(5)第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部からの手指による脱着が可能となっており、
(6)第1ハンドル及び第2ハンドルを互いに離反又は近接させることにより、第1把持部の先端領域と第2把持部の先端領域とが互いに近接又は離反し、かつ、前記先端領域どうしが近接することで骨を把持することができる、
ことを特徴とする。
【0019】
図1には、本発明鉗子の実施形態の一例の斜視図を示す。本発明鉗子10は、主要構成部材として、第1ハンドル部11と、第2ハンドル部13と、第1把持部12、第2把持部14と、交差連結部15とを含む。
【0020】
本発明鉗子10は、一般的な骨鉗子の作動形式と同様、ペンチ等のように、第1ハンドル部11及び第2ハンドル部13を離反又は近接させることにより、第1把持部12の先端領域と第2把持部14の先端領域とが互いに近接又は離反し、かつ、前記先端領域どうしが近接することで骨を挟持することができる。
【0021】
図2Aに示すように、第1ハンドル部11と第2ハンドル13部とを近接させる際(例えば手指で第1ハンドル部11と第2ハンドル部13を握り締める場合)には、第1把持部12の先端領域と第2把持部14の先端領域とが閉じて骨を挟持することができる。他方、図2Bに示すように、第1ハンドル部11と第2ハンドル部13とを離反させる際には、第1把持部12と第2把持部14とが開いて、その先端領域どうしが離れ、把持していた骨を解放することができる。なお、図2Bは、図1をA方向からみた状態(側面)を示す。
【0022】
本発明鉗子では、交差連結部を有する。これは、軸部と、その軸部に対して転回が可能な状態でX字状となるように交差した状態で連結されている第1連結部材及び第2連結部材とを含む。
【0023】
そのうえで、第1連結部には、第1ハンドル部及び第1把持部が連結される。第2連結部には、第2ハンドル部及び第2把持部が連結される。例えば、第1連結部の端部に第1ハンドル部が連結されており、その他端に第1把持部が連結される。また同様に、第2連結部の端部に第2ハンドル部が連結されており、その他端に第2把持部が連結される。
【0024】
本発明では、第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部からの手指による脱着が可能となっている。これにより、狭い切開領域であっても、患部に本発明鉗子を比較的容易に挿入し、設置することができる。すなわち、体内への挿入時において、本発明鉗子全体として必要最小限な「嵩」とすることができるので、その状態で体内に挿入した後、その挿入された状態で他の部材を連結することによって、所望の仮固定を実現することができる。
【0025】
図3には、図1に示した本発明鉗子10における交差連結部15及びその周辺部材を示す。図3Aには、交差連結部15の側面を示す。図3Bは、図3Aのb方向から見た図である。図3Cは、図3Aのc方向から見た図である。図3Dは、図3Aのd方向から見た図である。
【0026】
交差連結部15は、略円柱状の軸部15cを有し、これを軸として互いに転回(旋回)が可能な状態でX字状となるように第1連結部15a、第2連結部15bが交差して連結されている。
【0027】
図3Aに示す鉗子では、第1連結部15aの一端には第1ハンドル部11が連結され、他端には第1把持部12が連結されている。第2連結部15bの一端には第2ハンドル部13が連結されており、他端には第2把持部14が第2連結部と一体化した状態(分離不能な状態)で接合されている。このように、本発明鉗子は、少なくとも体内に最初に挿入しやすい状態となっていれば良いので、必ずしも第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部のすべてが交差連結部から分離できるようにする必要はなく、上記のように部分的に一体化されていても良い。
【0028】
本発明鉗子では、第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、交差連結部から手指による脱着が可能となっていれば良いので、その脱着可能な部材以外は交差連結部に脱着不能(はめ殺し)の状態となっていても良い。従って、例えば図3Aで示したように、第2把持部14と第2連結部15bとが一体化(一体的に成形)されているが、このような形態も本発明に包含される。第2把持部と第2連結部とが一体化されている場合、あるいは第1把持部と第1連結部とが一体化されている場合は、第1把持部と第2把持部による把持力等をより高めることができる。
【0029】
脱着可能な連結方法は、特に限定されず、公知の手段を採用することができる。例えば、ネジ式、嵌合式等のほか、ワンタッチ継手のような方式であっても良い。一体化は、少なくとも施術中に分離できない状態(施術に支障を来さないように容易に分解されない状態)におくことを意味し、例えば成形による一体化のほか、溶接、接着剤、ビス止め等による手段が挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
また、本発明鉗子においては、特に第1ハンドル部及び第2ハンドル部の少なくとも一方が手指で交差連結部からの脱着が可能となっていることが望ましい。すなわち、第1ハンドル部及び第2ハンドル部の少なくとも一方が手指で交差連結部から取り外したり、あるいは手指で取り付けることができることが望ましい。このような構成とすることで、例えば第1ハンドル部及び第2ハンドル部を取り外した状態で体内に取り付けた後、第1ハンドル部及び第2ハンドル部を交差連結部に装着することができる。その結果、比較的小さな切開領域に対して本発明鉗子をより確実かつ容易に挿入し、骨固定を行うことが可能となる。また、第1ハンドル部及び第2ハンドル部がない状態で体内に挿入できるので、実質的にどのような切開部位でも容易に本発明鉗子を体内に配置することができる。
【0031】
本発明では、必要に応じて、第1把持部及び第2把持部の少なくとも一方が手指で交差連結部からの脱着が可能となっていても良い。これにより、第1把持部又は第2把持部として、種々の大きさ、形状等を有する把持部に適宜交換することができる等のメリットがある。
【0032】
また、本発明鉗子では、第1把持部及び第2把持部の少なくとも1つが、その側面と交差連結部の側面との間で手指による脱着が可能となっていても良い。このような構造を採用することによって、第1把持部又は第2把持部を側面から手指で取り付けたり、あるいは側面から手指で取り外すことができるので、限られた操作空間であってもより容易かつ確実にその脱着を行うことが可能となる。
【0033】
特に、本発明では、図4Aに示すように、第1把持部12が交差連結部15の側面に取り付けられていることが望ましい。図3Bに示すように、交差連結部15の側面の一方面に突起部15d,15e,他方の面に突起部15f,15gがそれぞれ設けられており、かつ、第1把持部12の端部の両側面には突起部15d,15eあるいは突起部15f,15gと嵌合できる孔(凹部)がそれぞれ2つずつ形成されている。そして、対応する2つの突起部と2つの孔とを互いに嵌合させることにより、交差連結部の右側面又は左側面のいずれかに第1把持部を連結することができる。
【0034】
図4Aでは、交差連結部15の手元から先端に向かって右側面と、第1把持部12の先端に向かって左側面とが連結された状態となっているが、必要に応じて交差連結部15の先端に向かって左側面と、第1把持部12の先端に向かって右側面とが連結された状態も構成することができる。すなわち、交差連結部15の左側面及び右側面のいずれか任意の面に第1把持部12を取り付けることができる。また、図4Aでは、左右の側面の突起部は2つずつであるが、3つずつ又はそれ以上の個数の突起部を設けても良い。また、左右の側面の突起部は、互いに同じ個数であっても良いし、互いに異なる個数であっても良い。これにより、施術中においても、第1把持部を左右のいずれかに自由に取り外し・取り付けを行うことができる。
【0035】
図4Bに示すように、交差連結部の右側面又は左側面のいずれかに第1把持部を連結することにより、第1把持部及び第2把持部が重なる方向(上方)から見た状態において、第1把持部の長尺方向の中心線C1と、第2把持部の長尺方向の中心線C2とが、互いに平行でなく、第1把持部又は第2把持部の先端領域で交差するように、第1把持部と第2把持部とが交差連結部に連結された状態となる。これにより、中心線C1が直線である第1把持部12と、中心線C2が直線である第2把持部14とを用い、第1把持部又は第2把持部の先端領域で交差し、その交差点Cを中心とした領域で骨を把持することが可能となる。
【0036】
また、本発明鉗子では、第1把持部及び第2把持部が近接した状態で固定するための固定手段をさらに含んでいても良い。この場合、固定手段の形態、方式、設置箇所等は、特に限定されない。例えば、図3Aに示すように、交差連結部の第1連結部15aと第2連結部15bとまたがるネジ式の固定手段16を設けることができる。これは、第2連結部15bに固定され、図3Cのように第1連結部15aに形成された貫通孔17を貫通するように設置されたボルト部16aと、第1連結部15aと第2連結部15bとを閉じた状態で締め付けることができるナット部(ハンドルノブ)16bとを含む。貫通孔17は、第1把持部12及び第2把持部14が自由に開閉できるように、貫通孔17の断面は、ボルト部の断面サイズよりも大きく、一定のクリアランスをもって形成されている。
【0037】
図1の鉗子では、第1連結部15aの長尺方向に長い略長方形の貫通孔となっている。そして、第1把持部と第2把持部とで骨を挟んだ状態でナット部16bを締め付けることによって骨を強く固定することができる。ナット部16bを緩めることによって、第1連結部と第2連結部とが離反できるようになり、本発明鉗子を骨から取り外すことができる。図1の鉗子では、固定手段としてボルト・ナットの組み合わせを用いているが、ナットの代わりにゴムバンド等を使用することもできるほか、その他の公知の同様の固定手段をいずれも採用することができる。
【0038】
また、図3Aでは、ボルト16aを第2連結部に連結する方法として、ボルト部16aの端部に貫通孔16c(図示せず)を設け、他方で第2連結部15bのボルト部16aの固定箇所にも貫通孔18を設け、貫通孔18と貫通孔16cが直線状になるように貫通孔18にボルト部16aの端部を挿入し、貫通孔18と貫通孔16cとをまたぐピン18aを差し込むことで、ボルト部16aがピン18aを軸として第2把持部14の長尺方向に前後の動くような状態で固定することができる。
【0039】
本発明鉗子10を構成する各部材の材質は、特に限定されず、例えば金属・合金(ステンレス鋼、アルミニウム等)、カーボン、合成樹脂等の各材料のほか、これらの複合材料を挙げることができる。また、各部材は、互いに同じ材質であっても良いし、あるいは互いに異なる材質であっても良い。
【0040】
また、各部材の大きさ及び形状も、例えば対象となる骨の大きさ、形状、位置等によって適宜設定することができる。例えば、図1に示すように、第1把持部及び第2把持部は、プレート形状の材料を採用することができる。両プレートの平面部で骨を挟むように配置することで容易に仮固定を実施することが可能となる。この場合、図1で示すようなスプーン形状、フォーク形状等に加工されていることが骨を確実に把持するうえで好ましい。また、第2把持部が骨の下から支持し、第1把持部が骨の上から押さえつける役割をもたせる場合は、第2把持部の支持面接を大きくすることで安定して把持できるとともに、第1把持部の押圧面積を小さくすることで高い圧力を得ることができる。このようにして、より強力に骨折部分の仮固定を行うことができる。また、ハンドル部も、施術者が握りやすい形状に適宜設定することができる。
【0041】
2.整復用鉗子の使用
本発明鉗子は、骨折部分の仮固定に用いることができる。手順としては、まずは骨折部分を露出させるために皮膚を常法に従って切開する。露出された骨折部分は、もとの位置(整復位)に戻した後、その状態で本発明鉗子による仮固定を行う。
【0042】
本発明鉗子としては、図1のような鉗子を用いることができる。体内に導入する時点では、最小単位として、例えば図3Aに示すように、交差連結部15には第2把持部14が予め一体的に接合されており、第1ハンドル部、第2ハンドル部及び第1把持部は交差連結部15から取り外された状態で用いる。図1に示すように、第1把持部12及び第2把持部14は、把持する骨に向かって湾曲形状となっており、互いに湾曲形状のスプーンの凹部がともに内側を向かって対向するように配置され、骨を安定的に挟持できるようになっている。特に、骨の長尺方向に対して略直角方向に第1把持部及び第2把持部を向けて骨を挟み、骨折部分の仮固定を行うことができる。
【0043】
図1の鉗子では、第2把持部14の先端はその中心部が空洞(中空)となったループ形状になっているが、必ずしも空洞がなくても良いし、その他の形状であっても良い。特にループ形状とした場合は、局所的に高い圧力(挟持力)を得ることができる等のメリットがある。特に、第1把持部のループ状の部分(空洞部分)に対応する領域を局所的に第2把持部の先端から加圧できるので、より強力に骨を挟み込むことが可能となる。換言すれば、第1把持部で骨の両端部を支持し、その両端の間を第2把持部で押さえ込むことで、より安定的に骨を挟持することができる。
【0044】
第1把持部と第2把持部による挟み込みは、図3Aに示すように、交差連結部15に取り付けられた固定手段16によって行うことができる。この固定手段16は、そのボルト部16aの端部が交差連結部の第2連結部15bに取り付けられており、図3Dのように、そのボルト部16aが第1連結部15aの厚み方向を上方に向かって貫通している。貫通したボルト16aにはナット部16bが取り付けられている。ナット部16bを回転して緩めると、第1把持部12及び第2把持部14が開く状態となる。ナット部16bを回転して締め付けると、第1把持部12及び第2把持部14が閉じた状態で固定される。
【0045】
まず、交差連結部15には第2把持部14のみが予め接合された状態で、切開部から骨折部分に向かって挿入する。より具体的には、第2把持部14を骨折部分の下方をくぐらせるように挿入する。このようにして、第2把持部14が骨折部分の下に突き刺さって固定されたような状態となる。
【0046】
次いで、固定された状態の交差連結部15の第1連結部及び第2連結部にそれぞれ第1ハンドル部11及び第2ハンドル部13をそれぞれ手指で連結する。この場合の連結順序は、特に限定されず、例えば治療部位、施術者の利き手等に応じて適宜決定すれば良い。さらに、第1把持部12を交差連結部15の側面に取り付ける。この場合の順序はいずれであっても良く、先に第1把持部12を交差連結部15の側面に取り付けても良い。図4Aに示すように、手元から先端に向かって交差連結部15の右側面の突起部15d、15eに第1把持部12の左側面の形成された2つの対応する孔(図示せず)に嵌め込み、連結させる。
【0047】
第1把持部12は、第2把持部14と骨を挟持できるような位置に調整し、位置決めが完了した後、ボルト部16aとナット部16bを有する固定手段16において、ナット部16bを締め込むことで第1把持部12を第2把持部14と可能な限り近接させ、両把持部の圧力で骨折部分を強固に仮固定することができる。
【0048】
本発明鉗子による仮固定が完了した後は、通常の手術手順に従って治療を行えば良い。所定の治療が完了した後は、本発明鉗子の把持部を固定部分から開放し、本発明鉗子を抜去する。本発明鉗子を取り外す際には、第1ハンドル部、第2ハンドル部、第1把持部及び第2把持部が交差連結部に接合された状態のまま抜去する方法のほか、本発明鉗子を組み立てた手順とは逆に手順による方法を採用することもできる。例えば、図1に示す鉗子であれば、本発明鉗子10を骨折部分(治療部分)に配置した状態で、第1ハンドル部11、第2ハンドル部13及び第1把持部12を交差連結部から取り外し(分割し)、その後にナット部16bを回転しながら緩めて第1把持部と第2把持部を開放することで治療部分から取り外し、最後に残った第2把持部14及び交差連結部15をまとめて抜去すれば良い。

図1
図2
図3
図4