(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127681
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】給油装置
(51)【国際特許分類】
B67D 7/54 20100101AFI20220825BHJP
B67D 7/76 20100101ALI20220825BHJP
【FI】
B67D7/54
B67D7/76 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025813
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤田 慎庫
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直裕
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA03
3E083AD27
3E083AG08
3E083AH12
(57)【要約】
【課題】既存の給油所においてベーパ戻り管を容易かつ低コストで設置する。
【解決手段】地下タンク10に接続される給油管9と、給油管に接続される給油ポンプ2と、給油ポンプの吐出管に接続される流量計3と、流量計の吐出管先端に接続され、先端に給油ノズル5を備える給油ホース4とを有する給油系統と、給油ノズルに設けられるベーパコレクタ11と、ベーパコレクタに接続されるベーパホース14と、ベーパホースと地下タンクを繋ぐベーパ戻り管12とを有するベーパリカバリ系統とを備える給油装置1であって、ベーパ戻り管の少なくとも一部は給油管に挿通して配設される。給油管は、地下タンクに接続される第1の立上配管6と、第1の立上配管に接続されると共に、給油所の敷地内に埋設される横引配管7と、横引配管と給油ポンプとを繋ぐ第2の立上配管8とを備え、ベーパ戻り管の一部は、第1の立上配管、横引配管及び第2の立上配管に挿通してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下タンクに接続される給油管と、該給油管に接続される給油ポンプと、該給油ポンプの吐出管に接続される流量計と、該流量計の吐出管先端に接続され、先端に給油ノズルを備える給油ホースとを有する給油系統と、前記給油ノズルに設けられるベーパコレクタと、該ベーパコレクタに接続されるベーパホースと、該ベーパホースと前記地下タンクを繋ぐベーパ戻り管とを有するベーパリカバリ系統とを備える給油装置であって、
前記ベーパ戻り管の少なくとも一部は、前記給油管に挿通して配設されることを特徴とする給油装置。
【請求項2】
前記給油管は、前記地下タンクに接続される第1の立上配管と、該第1の立上配管に接続されると共に、給油所の敷地内に埋設される横引配管と、該横引配管と前記給油ポンプとを繋ぐ第2の立上配管とを備え、
前記ベーパ戻り管の一部は、前記第1の立上配管、前記横引配管及び前記第2の立上配管に挿通して配設されることを特徴とする請求項1に記載の給油装置。
【請求項3】
前記第1の立上配管と前記横引配管の接続部及び前記第2の立上配管と前記給油ポンプの接続部の各々に連結され、前記横引配管及び前記第2の立上配管に挿通されたベーパ戻り管を前記給油管の外部に露出させる連結手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の給油装置。
【請求項4】
前記ベーパ戻り管及び前記給油管の損傷を検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の給油装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記給油ポンプに設けられるエアセンサであることを特徴とする請求項4に記載の給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンク等へ燃料油を給油する給油装置に関し、特に給油時に発生する燃料油ベーパを回収するベーパリカバリ系統を備えた給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所に設置された給油装置は、一般的に各種の燃料油(ハイオクガソリン、レギュラーガソリン、軽油)の自動車に対応できるように、複数の油種の給油機構が組込まれている。各々の給油機構は、
図6に示すように、給油ポンプ2、流量計3、給油ホース4及び給油ノズル5を備える。
【0003】
また、給油所の地下には、複数の給油装置61から離間した場所に油種毎に複数の地下タンク10が埋設され、各給油装置61と各地下タンク10は、地下に埋設された第1の立上配管6、横引配管7及び第2の立上配管8を介して連通する。尚、
図6では一系統の給油装置61及び地下タンク10等を示す。
【0004】
ところで、車両の燃料タンクは、下部に燃料油が存在し、その上部に気化した燃料油ベーパが飽和状態で存在している。そのため、給油装置61から車両の燃料タンクに燃料油を給油すると、燃料油とほぼ同容量の燃料油ベーパが燃料タンクから大気に放出される。この大気中に放出された燃料油ベーパは、環境汚染を引き起こし、さらには燃料油ベーパの引火により火災が発生する恐れがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は上記問題に鑑み、給油ノズル5の先端部から延設されたベーパ戻り管の一部に、ベーパ発生量に応じて変速可能に駆動されるベーパ吸引手段を配設し、発生量に見合ったベーパを効果的に回収することができるベーパ回収装置を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記発明も有効であるが、
図6に示す既存の給油装置61をベーパ回収機能付き給油装置に変更する場合には、
図7に示すように、給油時に発生するベーパをベーパ吸引ポンプ13によって吸引し、給油ノズル5の先端部から地下タンク10へ回収するベーパ戻り管12を新設する必要がある。
【0008】
上記ベーパ戻り管12は、給油装置71と地下タンク10が離れているため横引配管12aが長くなり、横引配管12aを埋設するために広い範囲で掘り返す必要がある。そのため、工事の手間とコストが嵩むという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、既存の給油所においてベーパ戻り管を容易かつ低コストで設置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、地下タンクに接続される給油管と、該給油管に接続される給油ポンプと、該給油ポンプの吐出管に接続される流量計と、該流量計の吐出管先端に接続され、先端に給油ノズルを備える給油ホースとを有する給油系統と、前記給油ノズルに設けられるベーパコレクタと、該ベーパコレクタに接続されるベーパホースと、該ベーパホースと前記地下タンクを繋ぐベーパ戻り管とを有するベーパリカバリ系統とを備える給油装置であって、前記ベーパ戻り管の少なくとも一部は、前記給油管に挿通して配設されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ベーパ戻り管の少なくとも一部を給油管に挿通して配設するため、既存の給油装置にベーパリカバリ系統を設ける際に、ベーパ戻り管の敷設作業を簡略化することができ、ベーパ戻り管を容易かつ低コストで設置することができる。
【0012】
上記給油装置において、前記給油管を、前記地下タンクに接続される第1の立上配管と、該第1の立上配管に接続されると共に、給油所の敷地内に埋設される横引配管と、該横引配管と前記給油ポンプとを繋ぐ第2の立上配管とで構成し、前記ベーパ戻り管の一部を、前記第1の立上配管、前記横引配管及び前記第2の立上配管に挿通して配設することができる。これによって、比較的長い横引配管等の埋設作業を不要とし、ベーパ戻り管の敷設作業を大幅に軽減することができる。
【0013】
上記給油装置において、前記第1の立上配管と前記横引配管の接続部及び前記第2の立上配管と前記給油ポンプの接続部の各々に連結され、前記横引配管及び前記第2の立上配管に挿通されたベーパ戻り管を前記給油管の外部に露出させる連結手段を設けることができる。これにより、既存の給油管の配管構造を利用しながら、連結手段を介してベーパ戻り管を配管内に容易に配設することができる。
【0014】
上記給油装置において、前記ベーパ戻り管及び前記給油管の損傷を検出する検出手段を設けることができる。これにより、ベーパ戻り管や給油管が損傷して穴が開き、燃料油の供給ができなくなる事態に迅速に対応し、給油操作への影響を最小限に留めることができる。
【0015】
上記給油装置において、前記検出手段として前記給油ポンプに設けられるエアセンサを用いることで、既存の給油ポンプの構成を活用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の給油装置によれば、既存の給油所においてベーパ戻り管を容易かつ低コストで設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る給油装置の一実施の形態を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す給油装置の第1の立上配管と横引配管の接続部及びこれらを連結する連結手段を示す断面図である。
【
図3】従来の第1の立上配管と横引配管の接続部を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す給油装置の第2の立上配管と給油ポンプの接続部及びこれらを連結する連結手段を示す断面図である。
【
図5】従来の第2の立上配管と給油ポンプの接続部を示す断面図である。
【
図6】従来の給油所の一例を示す概略図であって、給油装置がベーパリカバリ系統を備えていない場合を示す。
【
図7】
図6に示す給油所の給油装置にベーパリカバリ系統を設けた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る給油装置の一実施の形態を示し、この給油装置1は、給油所に埋設される地下タンク10に接続される第1の立上配管6と、第1の立上配管6に接続されると共に、給油所の敷地内に埋設される横引配管7と、横引配管7と給油ポンプ2とを繋ぐ第2の立上配管8とからなる給油管9と、給油ポンプ2と、給油ポンプ2の吐出管に接続される流量計3と、流量計3の吐出管先端に接続され、先端に給油ノズル5が設けられる給油ホース4とを有する給油系統と、給油ノズル5に設けられるベーパコレクタ11と、ベーパコレクタ11に接続されるベーパホース14と、ベーパホース14と地下タンク10を繋ぐベーパ戻り管12と、ベーパ吸引ポンプ13を有するベーパリカバリ系統等を備え、ベーパ戻り管12の一部が、第1の立上配管6、横引配管7及び第2の立上配管8に挿通して配設される。
【0020】
図2は、
図1の第1の立上配管6と横引配管7の接続部を拡大した断面図を示し、これら第1の立上配管6(6b)と横引配管7の間に連結手段15が設けられる。
【0021】
図3に示すように、従来の第1の立上配管6(6a、6b)と横引配管7は、例えばエルボ40を介して接続されている。エルボ40の雌ねじ部40a、40bと、横引配管7の雄ねじ部7a及び立上配管6aの雄ねじ部6eが螺合し、立上配管6a、6bがフランジ6c、6dを介して連結されている。
【0022】
本発明では、
図2に示すように、連結手段15として、第1連結部材22と、第2連結部材23と、第1ホースニップル24と、第1雌ねじ部材25と、第2ホースニップル26と、第2雌ねじ部材27と、第1シール部材28と、第2シール部材29を設ける。
【0023】
第1連結部材22は、エルボ40の雌ねじ部40bと螺合する雄ねじ部22aと、第2連結部材23のフランジ部23aと接合されるフランジ部22bを備える。第2連結部材23は、第1連結部材22のフランジ部22bに接合されるフランジ部23aと、第1の立上配管6bのフランジ部6dに接合されるフランジ部23bと、内部に曲管部23cを備える。
【0024】
第2連結部材23の曲管部23cの上端部には、第1シール部材28を挟んで第1ホースニップル24が設けられる。第1ホースニップル24の雄ねじ部24bが曲管部23cの雌ねじ部23fと螺合し、ベーパ戻り管12aの下端部12cが第1ホースニップル24の竹の子部24aに挿入される。また、第2連結部材23の曲管部23cの上端部を覆うように第1雌ねじ部材25が配置され、第1雌ねじ部材25の雌ねじ部25aが曲管部23cの雄ねじ部23dと螺合する。
【0025】
一方、第2連結部材23の曲管部23cの下方の左端部には、第2シール部材29を挟んで第2ホースニップル26が設けられる。第2ホースニップル26の雄ねじ部26bが曲管部23cの雌ねじ部23gと螺合し、ベーパ戻り管12bの右端部12dが第2ホースニップル26の竹の子部26aに挿入される。また、第2連結部材23の曲管部23cの左端部を覆うように第2雌ねじ部材27が配置され、第2雌ねじ部材27の雌ねじ部27aが曲管部23cの雄ねじ部23eと螺合する。
【0026】
上記構成により、既設の第1の立上配管6(6a)及び横引配管7を利用しながら、ベーパ戻り管12aを横引配管7の内部で保持すると共に、ベーパ戻り管12bを外部に導出して最終的に地下タンク10(
図1参照)に連結することができる。ベーパ戻り管12bを外部に導出するのは、第1の立上配管6内でベーパ戻り管12(12a)が開口すると、燃料油の供給が不可能になるからである。
【0027】
次に、
図1の給油ポンプ2と第2の立上配管8との接続部に設けられる連結手段16について説明する。
【0028】
図4は、給油ポンプ2と第2の立上配管8の接続部を拡大した断面図を示し、これら給油ポンプ2と第2の立上配管8の間に連結手段16が連結される。
【0029】
図5に示すように、従来の給油ポンプ2と第2の立上配管8は、配管43を介して接続されている。配管43のフランジ部43aと給油ポンプ2の下端部が接合され、配管43のフランジ部43bと第2の立上配管8のフランジ部8aが接合されている。
【0030】
本発明では、
図4に示すように、連結手段16として、連結部材31と、第3ホースニップル32と、第3雌ねじ部材33と、第4ホースニップル34と、第4雌ねじ部材35と、第3シール部材36と、第4シール部材37を設ける。
【0031】
連結部材31は、給油ポンプ2の下部に接合されるフランジ部31aと、第2の立上配管8のフランジ部8aと接合されるフランジ部31bと、内部に曲管部31cを備える。
【0032】
連結部材31の曲管部31cの上方右端部には、第3シール部材36を挟んで第3ホースニップル32が設けられる。第3ホースニップル32の雄ねじ部32bが曲管部31cの雌ねじ部31fと螺合し、ベーパ戻り管12eの左端部12gが第3ホースニップル32の竹の子部32aに挿入される。また、連結部材31の曲管部31cの上方右端部を覆うように第3雌ねじ部材33が配置され、第3雌ねじ部材33の雌ねじ部33aが曲管部31cの雄ねじ部31dと螺合する。
【0033】
一方、連結部材31の曲管部31cの下端部には、第4シール部材37を挟んで第4ホースニップル34が設けられる。第4ホースニップル34の雄ねじ部34bが曲管部31cの雌ねじ部31gと螺合し、ベーパ戻り管12fの上端部12hが第4ホースニップル34の竹の子部34aに挿入される。また、連結部材31の曲管部31cの下端部を覆うように第4雌ねじ部材35が配置され、第4雌ねじ部材35の雌ねじ部35aが曲管部31cの雄ねじ部31eと螺合する。
【0034】
上記構成により、既設の第2の立上配管8を利用しながら、ベーパ戻り管12fを第2の立上配管8の内部で保持すると共に、ベーパ戻り管12eを外部に導出して吸引ポンプ13(
図1参照)に連結することができる。
【0035】
さらに、上記給油装置1において、ベーパ戻り管12及び給油管9、すなわちベーパ戻り管12並びに第1の立上配管6、横引配管7及び第2の立上配管8の損傷を検出する検出手段(不図示)を設けることが好ましい。ベーパ戻り管12が損傷して穴が開くと、通常燃料油で満たされている第1の立上配管6及び第2の立上配管8の燃料油がベーパ戻り管12を介して地下タンク10に戻される。それによって、エアを吸い込むだけで燃料油を供給することができなくなる。また、第1の立上配管6、横引配管7又は第2の立上配管8が損傷して穴が開いた場合も、燃料油が外部に漏れて燃料油の供給ができなくなる。そこで、検出手段でベーパ戻り管12及び給油管9の損傷を検出することで、給油操作への影響を最小限に留めることができる。
【0036】
上記検出手段として給油ポンプに設けられるエアセンサ(特開2009-257296号公報に記載の混入量検知装置21等)を用いることで、既存の給油ポンプ2の構成を活用することができる。エアセンサでは、ベーパ戻り管12及び給油管9(第1の立上配管6、横引配管7、第2の立上配管8)のいずれが損傷したかを特定することはできないが、燃料油を車両に供給することができないことが判る。
【0037】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0038】
1 給油装置
2 給油ポンプ
3 流量計
4 給油ホース
5 給油ノズル
6 第1の立上配管
7 横引配管
8 第2の立上配管
9 給油管
10 地下タンク
11 ベーパコレクタ
12 ベーパ戻り管
13 ベーパ吸引ポンプ
14 ベーパホース
15、16 連結手段
22 第1連結部材
23 第2連結部材
24 第1ホースニップル
25 第1雌ねじ部材
26 第2ホースニップル
27 第2雌ねじ部材
28 第1シール部材
29 第2シール部材
31 連結部材
32 第3ホースニップル
33 第3雌ねじ部材
34 第4ホースニップル
35 第4雌ねじ部材
36 第3シール部材
37 第4シール部材
40 エルボ