(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127683
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】アクセスポイント制御装置、通信システムおよび通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20220825BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20220825BHJP
H04B 7/0456 20170101ALI20220825BHJP
H04B 7/0452 20170101ALI20220825BHJP
H04B 7/024 20170101ALI20220825BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20220825BHJP
H04W 28/16 20090101ALI20220825BHJP
H04W 88/12 20090101ALI20220825BHJP
【FI】
H04B7/06 950
H04B7/08 802
H04B7/0456 110
H04B7/0452
H04B7/024
H04W16/28 130
H04W28/16
H04W88/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025816
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】安藤 研吾
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】石橋 功至
(72)【発明者】
【氏名】アブレウ ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067KK02
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】セルフリーMIMOシステムにおいて、周波数利用効率および利用者の公平性を向上させる。
【解決手段】一実施の形態によるアクセスポイント制御装置は、複数の端末との間で無線通信を行う複数のアクセスポイントを制御する演算装置と、複数のアクセスポイントに接続されたインタフェースとを備える。演算装置は、複数のアクセスポイントと、複数の端末との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列を算出し、通信路行列を第1行列、第2行列および第3行列の積に分解するために第1行列、第2行列および第3行列を算出し、第1行列と第3行列とに基づいて、送信ビームフォーマ行列と受信ビームフォーマ行列とを算出し、第2行列を算出するために発散防止パラメータを用いることで前記第2行列の発散を防止する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末との間でセルフリーMIMOシステムの無線通信を行う複数のアクセスポイントを制御する演算装置と、
前記複数のアクセスポイントに接続されたインタフェースと
を備え、
前記演算装置は、
前記複数のアクセスポイントのおのおのが備える複数の第1アンテナ素子と、前記複数の端末のおのおのが備える複数の第2アンテナ素子との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列を算出し、
前記通信路行列を第1行列、第2行列および第3行列の積に分解するために前記第1行列、前記第2行列および前記第3行列を算出し、
前記第1行列と前記第3行列とに基づいて、送信ビームフォーミングを行うための送信ビームフォーマ行列と、受信ビームフォーミングを行うための受信ビームフォーマ行列とを算出し、
前記第2行列を算出するために発散防止パラメータを用いることで前記第2行列の発散を防止する
アクセスポイント制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセスポイント制御装置において、
前記演算装置は、
前記発散防止パラメータを用いて前記第2行列を算出する処理と、
フルランク化用パラメータを用いて前記第3行列を算出する処理と、
前記第2行列と、前記第3行列とに基づいて前記第1行列を算出する処理と
を、前記通信路行列と、前記積との分解誤差が所定の閾値より小さくなるまで繰り返す
アクセスポイント制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアクセスポイント制御装置において、
前記演算装置は、前記第3行列に含まれる、それぞれの端末に対応する通信路行列を表現する次元数の過不足を解消するためのフリッピング動作をさらに用いて、前記第3行列を算出する
アクセスポイント制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のアクセスポイント制御装置において、
前記演算装置は、前記送信ビームフォーマ行列と、前記受信ビームフォーマ行列とを算出するために、前記複数のアクセスポイントと、前記複数の端末との間の周波数利用効率を最大化する第1演算方法と、前記複数の端末の間で無線資源の割り当ての公平性を保つ第2演算方法とを選択して切り替える
アクセスポイント制御装置。
【請求項5】
複数の端末との間でセルフリーMIMOシステムの無線通信を行う複数のアクセスポイントを制御する演算装置を備えるアクセスポイント制御装置と、
前記複数の端末と、
前記複数のアクセスポイントと
を備え、
前記アクセスポイント制御装置は、
前記演算装置と、
前記複数のアクセスポイントに接続されたインタフェースと
を備え、
前記演算装置は、
前記複数のアクセスポイントのおのおのが備える複数の第1アンテナ素子と、前記複数の端末のおのおのが備える複数の第2アンテナ素子との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列を算出し、
前記通信路行列を第1行列、第2行列および第3行列の積に分解するために前記第1行列、前記第2行列および前記第3行列を算出し、
前記第1行列と前記第3行列とに基づいて、送信ビームフォーミングを行うための送信ビームフォーマ行列と、受信ビームフォーミングを行うための受信ビームフォーマ行列とを算出し、
前記第2行列を算出するために発散防止パラメータを用いることで前記第2行列の発散を防止する
通信システム。
【請求項6】
複数の端末との間でセルフリーMIMOシステムの無線通信を行う複数のアクセスポイントを制御する演算装置を備えるアクセスポイント制御装置と、
前記複数の端末と、
前記複数のアクセスポイントと
を備える通信システムで前記無線通信を行う通信方法であって、
前記複数のアクセスポイントのおのおのが備える複数の第1アンテナ素子と、前記複数の端末のおのおのが備える複数の第2アンテナ素子との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列を算出することと、
前記通信路行列を第1行列、第2行列および第3行列の積に分解するために前記第1行列、前記第2行列および前記第3行列を算出することと、
前記第1行列と前記第3行列とに基づいて、送信ビームフォーミングを行うための送信ビームフォーマ行列と、受信ビームフォーミングを行うための受信ビームフォーマ行列とを算出することと、
前記第2行列を算出するために発散防止パラメータを用いることで前記第2行列の発散を防止することと
を含む
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクセスポイント制御装置と、このアクセスポイント制御装置を用いる通信システムと、この通信システムで用いる通信方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代移動通信システムを高度化させたいわゆる「5G+」や、「6G」とも表記される第6世代移動通信システムなどに要求される大容量通信の実現に向けて、セルフリーMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output:マイモ)システムが注目を集めている。セルフリーMIMOでは、既存のセル構造を破壊することにより、空間的な無線資源を極限まで活用することが可能である。また、「5G+」や「6G」では、多様な通信要求が混在する環境に対しても適用可能な柔軟な移動通信のサービスを提供することが求められている。
【0003】
しかしながら、セルフリーMIMOシステムにおいて多様な通信要求が混在する環境、すなわちユーザ端末ごとに具備するアンテナ数が異なる環境における有効な検討は、その通信路構造の複雑さなどから、まだなされていない。
【0004】
上記に関連して、特許文献1(特表2016-521482号公報)には、ネットワーク多入力多出力(MIMO)システムのための疎な送信ビーム形成を設計する方法が開示されている。この方法は、クラウド中央処理装置が、システム内の複数のユーザ機器(UE)の各々についての送信ビーム形成において使用するための送信ポイント(TP)のクラスタを、ネットワーク効用関数およびシステムリソースを最適化することによって動的に形成するステップを含む。この方法は、さらに、クラウド中央処理装置が、最適化に従ってUEごとの疎なビーム形成ベクトルを決定するステップを含む。この方法は、さらに、クラウド中央処理装置が、複数のUE内の第1のUEと関連付けられる形成されたクラスタ内の各TPへメッセージおよび第1のビーム形成係数を送信するステップであって、第1のUEと関連付けられる形成されたクラスタ内の各TPは、第1のUEに対応する第1のビーム形成ベクトル内の非ゼロのエントリに対応する、送信するステップを含む。
【0005】
また、特許文献2(特開2020-188462号公報)には、OFDMベースの通信システムのための適応型ビームフォーミングアンテナを提供する方法が開示されている。この方法は、受信された直交周波数分割多重(OFDM)シンボルから、巡回プレフィックス値の行列(A)およびテール値の行列(B)を形成する段階と、行列(A)および行列(B)から加算行列(S)および差分行列(D)を形成する段階とを備える。この方法は、さらに、ビームフォーマプリセット行列(W)に、加算行列(S)および差分行列(D)を乗算して、行列(P)および行列(Q)を判定する、乗算する段階と、行列(P)および行列(Q)からビーム識別子を判定する段階とを備える。
【0006】
また、非特許文献1(T. L. Marzetta著、「Noncooperative cellular wireless with unlimited numbers of base station antennas」、IEEE Trans. Wireless Commun.、vol. 9、no. 11、pp. 3590~3600、2010年、doi: 10.1109/TWC.2010.092810.091092.)には、大規模MIMO技術について記載されている。
【0007】
また、非特許文献2(H. Q. Ngo, A. Ashikhmin, H. Yang, E. G. Larsson, and T. L. Marzetta著、「Cell-free massive MIMO versus small cells」、IEEE Trans. Wireless Commun.、vol. 16、no. 3、pp. 1834~1850、2017年、doi: 10.1109/TWC.2017.2655515.)には、セルフリーMIMOについて記載されている。
【0008】
また、非特許文献3(A. J. Goldsmith and P. P. Varaiya著、「Capacity of fading channels with channel side information」、IEEE Trans. Inform. Theory、vol. 43、no. 6、pp. 1986~1992、1997年、doi: 10.1109/18.641562.)には、送受信機で通信路情報が既知である一対一MIMO通信においては、注水法を利用した特異値分解に基づくビームフォーマ設計が最適であることが示されている。
【0009】
また、非特許文献4(D. Senaratne and C. Tellambura著、「GSVD beamforming for two-user MIMO downlink channel」、IEEE Trans. Veh. Technol.、vol. 62、no. 6、pp. 2596~2606、2013年、doi: 10.1109/TVT.2013.2241091.)には、一対二通信に対しては特異値分解の定義を単一の行列から2つ行列へと発展させた、一般化特異値分解を活用するビームフォーマ設計が有効であることが示されている。
【0010】
また、非特許文献5(L. Khamidullina, A. L. F. de Almeida, and M. Haardt著、「Multilinear generalized singular value decomposition (ml-gsvd) with application to coordinated beamforming in multi-user MIMO systems」、Proc. IEEE ICASSP, Barcelona, Spain、2020年、pp. 4587~4591、doi: 10.1109/ICASSP40776.2020.9053691.)には、一対多通信においては一般化特異値分解の定義を高次元のテンソルに発展させるための演算手法が示されている。
【0011】
また、非特許文献6(ITU著、「Guidelines for evaluation of radio interface technologies for IMT-advanced」、ITU, M Series Mobile, radiodetermination, amateur and related satellites services Report ITU-R M.2135-1、2009年12月)には、アーバンマクロセルに係る伝播減衰が示されている。
【0012】
また、非特許文献7(H. Bolcskei, M. Borgmann, and A. J. Paulraj著、「Impact of the propagation environment on the performance of space-frequency coded mimo-ofdm」、IEEE J. Sel. Areas Commun.、vol. 21、no. 3、pp. 427~439、2003年、issn: 1558-0008、doi: 10.1109/JSAC.2003.809723.)には、アクセスポイントと端末との間の空間相関行列が示されている。
【0013】
また、非特許文献8(P. H. Schoenemann著、「A generalized solution of the orthogonal procrustes problem」、Psychometrika、vol. 31、no. 1、1966年)には、ML-GSVDで利用可能な個別行列の閉形式表現による更新式が示されている。
【0014】
また、非特許文献9(W. Rhee and J. M. Cioffi著、「Increase in capacity of multiuser OFDM system using dynamic subchannel allocation」、Proc. IEEE VTC-Spring, Tokyo, Japan、vol. 2、2000年、pp. 1085~1089、doi: 10.1109/VETECS.2000.851292.)には、Max Min資源割当について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2016-521482号公報
【特許文献2】特開2020-188462号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】T. L. Marzetta著、「Noncooperative cellular wireless with unlimited numbers of base station antennas」、IEEE Trans. Wireless Commun.、vol. 9、no. 11、pp. 3590~3600、2010年、doi: 10.1109/TWC.2010.092810.091092.
【非特許文献2】H. Q. Ngo, A. Ashikhmin, H. Yang, E. G. Larsson, and T. L. Marzetta著、「Cell-free massive MIMO versus small cells」、IEEE Trans. Wireless Commun.、vol. 16、no. 3、pp. 1834~1850、2017年、doi: 10.1109/TWC.2017.2655515.
【非特許文献3】A. J. Goldsmith and P. P. Varaiya著、「Capacity of fading channels with channel side information」、IEEE Trans. Inform. Theory、vol. 43、no. 6、pp. 1986~1992、1997年、doi: 10.1109/18.641562.
【非特許文献4】D. Senaratne and C. Tellambura著、「GSVD beamforming for two-user MIMO downlink channel」、IEEE Trans. Veh. Technol.、vol. 62、no. 6、pp. 2596~2606、2013年、doi: 10.1109/TVT.2013.2241091.
【非特許文献5】L. Khamidullina, A. L. F. de Almeida, and M. Haardt著、「Multilinear generalized singular value decomposition (ml-gsvd) with application to coordinated beamforming in multi-user MIMO systems」、Proc. IEEE ICASSP, Barcelona, Spain、2020年、pp. 4587~4591、doi: 10.1109/ICASSP40776.2020.9053691.
【非特許文献6】ITU著、「Guidelines for evaluation of radio interface technologies for IMT-advanced」、ITU, M Series Mobile, radiodetermination, amateur and related satellites services Report ITU-R M.2135-1、2009年12月
【非特許文献7】H. Bolcskei, M. Borgmann, and A. J. Paulraj著、「Impact of the propagation environment on the performance of space-frequency coded mimo-ofdm」、IEEE J. Sel. Areas Commun.、vol. 21、no. 3、pp. 427~439、2003年、issn: 1558-0008、doi: 10.1109/JSAC.2003.809723.
【非特許文献8】P. H. Schoenemann著、「A generalized solution of the orthogonal procrustes problem」、Psychometrika、vol. 31、no. 1、1966年
【非特許文献9】W. Rhee and J. M. Cioffi著、「Increase in capacity of multiuser OFDM system using dynamic subchannel allocation」、Proc. IEEE VTC-Spring, Tokyo,Japan、vol. 2、2000年、pp. 1085~1089、doi: 10.1109/VETECS.2000.851292.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
セルフリーMIMOシステムにおいて、周波数利用効率および利用者の公平性を向上させる。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0019】
一実施の形態によれば、アクセスポイント制御装置(2)は、演算装置(22)と、インタフェース(24)とを備える。演算装置(22)は、複数の端末(5)との間でセルフリーMIMOシステムの無線通信を行う複数のアクセスポイント(3)を制御する。インタフェース(24)は、複数のアクセスポイント(3)に接続されている。演算装置(22)は、複数のアクセスポイント(3)のおのおのが備える複数の第1アンテナ素子(31)と、複数の端末(5)のおのおのが備える複数の第2アンテナ素子(51)との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列(Hk)を算出する。演算装置(22)は、通信路行列(Hk)を第1行列(Bk)、第2行列(C)および第3行列(A)の積に分解するために第1行列(Bk)、第2行列(C)および第3行列(A)を算出する。演算装置(22)は、第1行列(Bk)と第3行列(A)とに基づいて、送信ビームフォーミングを行うための送信ビームフォーマ行列(Uk、Uk
u)と、受信ビームフォーミングを行うための受信ビームフォーマ行列(Vk、Vk
u)とを算出する。演算装置(22)は、第2行列(C)を算出するために発散防止パラメータ(ε)を用いることで第2行列(C)の発散を防止する。
【0020】
一実施の形態によれば、通信システム(1)は、アクセスポイント制御装置(2)と、複数の端末(5)と、複数のアクセスポイント(3)とを備える。アクセスポイント制御装置(2)は、演算装置(22)と、インタフェース(24)とを備える。演算装置(22)は、複数の端末(5)との間でセルフリーMIMOシステムの無線通信を行う複数のアクセスポイント(3)を制御する。インタフェース(24)は、複数のアクセスポイント(3)に接続されている。演算装置(22)は、複数のアクセスポイント(3)のおのおのが備える複数の第1アンテナ素子(31)と、複数の端末(5)のおのおのが備える複数の第2アンテナ素子(51)との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列(Hk)を算出する。演算装置(22)は、通信路行列(Hk)を第1行列(Bk)、第2行列(C)および第3行列(A)の積に分解するために第1行列(Bk)、第2行列(C)および第3行列(A)を算出する。演算装置(22)は、第1行列(Bk)と第3行列(A)とに基づいて、送信ビームフォーミングを行うための送信ビームフォーマ行列(Uk、Uk
u)と、受信ビームフォーミングを行うための受信ビームフォーマ行列(Vk、Vk
u)とを算出する。演算装置(22)は、第2行列(C)を算出するために発散防止パラメータ(ε)を用いることで第2行列(C)の発散を防止する。
【0021】
一実施の形態によれば、通信方法は、複数の端末(5)との間でセルフリーMIMOシステムの無線通信を行う複数のアクセスポイント(3)を制御する演算装置(22)を備えるアクセスポイント制御装置(2)と、複数の端末(5)と、複数のアクセスポイント(3)とを備える通信システム(1)で無線通信を行う。通信方法は、複数のアクセスポイント(3)のおのおのが備える複数の第1アンテナ素子(31)と、複数の端末(5)のおのおのが備える複数の第2アンテナ素子(51)との間でアップリンク通信および/またはダウンリンク通信が行われる複数の通信路のそれぞれの状態を表す通信路行列(Hk)を算出することを含む。通信方法は、通信路行列(Hk)を第1行列(Bk)、第2行列(C)および第3行列(A)の積に分解するために第1行列(Bk)、第2行列(C)および第3行列(A)を算出する(S11、S12、S13、S14)ことをさらに含む。通信方法は、第1行列(Bk)と第3行列(A)とに基づいて、送信ビームフォーミングを行うための送信ビームフォーマ行列(Uk、Uk
u)と、受信ビームフォーミングを行うための受信ビームフォーマ行列(Vk、Vk
u)とを算出する(S16)ことをさらに含む。通信方法は、第2行列(C)を算出するために発散防止パラメータ(ε)を用いる(S13)ことで第2行列(C)の発散を防止することをさらに含む。
【発明の効果】
【0022】
一実施の形態によれば、セルフリーMIMOシステムにおいて、周波数利用効率および利用者の公平性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、一実施の形態による通信システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態によるアクセスポイント制御装置の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態によるアクセスポイントの一構成例を示すブロック回路図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による端末の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図5A】
図5Aは、一実施の形態によるダウンリンク通信におけるML-GSVDの演算内容を概略的に示す図である。
【
図5B】
図5Bは、一実施の形態によるアップリンク通信におけるML-GSVDの演算内容を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による通信方法の一構成例を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、一実施の形態によるビームフォーミング方法の、ダウンリンク通信における演算内容を概略的に示す図である。
【
図7B】
図7Bは、一実施の形態によるビームフォーミング方法の、アップリンク通信における演算内容を概略的に示す図である。
【
図8A】
図8Aは、一実施の形態による通信方法の一構成例を示すフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、一実施の形態による通信方法の別の一構成例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、一実施の形態による通信方法をシミュレーションした際に用いたシミュレーション諸元の一例を示す表である。
【
図10】
図10は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図15】
図15は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図17】
図17は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図18】
図18は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図20】
図20は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図21】
図21は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図22】
図22は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図23】
図23は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【
図24】
図24は、一実施の形態による通信方法のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明によるアクセスポイント制御装置、通信システムおよび通信方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0025】
(実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による通信システム1は、アクセスポイント制御装置2と、複数のアクセスポイント3と、複数のフロントホール4と、複数の端末5とを備える。通信システム1は、一辺の長さDを有する正方形の領域に配置されている。
【0026】
一例として、複数のアクセスポイント3は、グリッド状に配置されてもよい。複数の端末5は、スマートフォンなどの携帯移動端末、自動車などに搭載された車載端末、ロボットやドローンなどの移動体に搭載された無線通信端末などであってもよい。
【0027】
それぞれの端末5は、複数のアクセスポイント3のうちの少なくとも1つとの間で無線通信を行う。この無線通信には、端末5からアクセスポイント3に向けて信号が送信されるアップリンク通信と、アクセスポイント3から端末5に向けて信号が送信されるダウンリンク通信とを含む。この無線通信は、いわゆるセルフリーMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output:マイモ)システムによるものであり、既存のセル構造を破壊することにより、空間的な無線資源を極限まで活用することが可能である。
【0028】
複数のアクセスポイント3は、アクセスポイント制御装置2との間で、フロントホール4を介した有線通信を行う。アクセスポイント制御装置2は、複数のアクセスポイント3の動作を制御する。
【0029】
図2に示すように、一実施の形態によるアクセスポイント制御装置2は、バス20と、アンテナ21と、演算装置22と、記憶装置23と、インタフェース24とを備えている。アンテナ21、演算装置22、記憶装置23およびインタフェース24は、バス20を介して相互に通信可能に接続されている。アンテナ21は、省略可能である。記憶装置23は、制御プログラム231を格納している。制御プログラム231は、インタフェース24を介して外部から受信されて記憶装置23に格納されてもよいし、記録媒体230から読み出されて記憶装置23に格納されてもよい。記録媒体230は、非一時的、かつ、有形であってもよい。
【0030】
アクセスポイント制御装置2は、いわゆるコンピュータを備えていてもよい。つまり、アクセスポイント制御装置2の機能の少なくとも一部は、演算装置22が制御プログラム231を実行することによって実現してもよい。
【0031】
図3に示すように、一実施の形態によるアクセスポイント3は、バス30と、アンテナ31と、演算装置32と、記憶装置33と、インタフェース34とを備えている。アンテナ31、演算装置32、記憶装置33およびインタフェース34は、バス30を介して相互に通信可能に接続されている。アンテナ31は、複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナであってもよい。記憶装置33は、通信プログラム331を格納している。通信プログラム331は、アンテナ31またはインタフェース34を介して外部から受信されて記憶装置33に格納されてもよいし、記録媒体330から読み出されて記憶装置33に格納されてもよい。記録媒体330は、非一時的、かつ、有形であってもよい。
【0032】
アクセスポイント3は、いわゆるコンピュータを備えていてもよい。つまり、アクセスポイント3の機能の少なくとも一部は、演算装置32が通信プログラム331を実行することによって実現してもよい。
【0033】
図4に示すように、一実施の形態による端末5は、バス50と、アンテナ51と、演算装置52と、記憶装置53と、インタフェース54とを備えている。アンテナ51、演算装置52、記憶装置53およびインタフェース54は、バス50を介して相互に通信可能に接続されている。アンテナ51は、複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナであってもよい。記憶装置53は、通信プログラム531を格納している。通信プログラム531は、アンテナ51またはインタフェース54を介して外部から受信されて記憶装置53に格納されてもよいし、記録媒体530から読み出されて記憶装置53に格納されてもよい。記録媒体530は、非一時的、かつ、有形であってもよい。
【0034】
端末5は、いわゆるコンピュータを備えていてもよい。つまり、端末5の機能の少なくとも一部は、演算装置52が通信プログラム531を実行することによって実現してもよい。
【0035】
(システムモデル)
一実施の形態による通信路モデルについて説明する。一実施の形態による通信システム1における、アクセスポイント3と端末5との間の通信路は、以下の「数1」式で定義される通信路モデルとしてモデル化される。
【数1】
【0036】
「数1」式において、「H
l,k」は、l番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の通信路の状態を表す通信路行列であり、M
k行N列の複素数で構成される行列である。「l」はアクセスポイント3の番号であり、1からLまでの整数である。「L」は通信システム1に含まれるアクセスポイント3の総数である。「k」は端末5の番号であり、1からKまでの整数である。「K」は通信システム1に含まれる端末5の総数である。「M
k」はk番目の端末5が有するアンテナ素子の総数である。「δ(d
l,k)」は、l番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の伝播減衰を表し、例えば以下の「数2」式のように近似される。
【数2】
この伝播減衰δ(d
l,k)は、非特許文献6(ITU著、「Guidelines for evaluation of radio interface technologies for IMT-advanced」、ITU, M Series Mobile, radiodetermination, amateur and related satellites services Report ITU-R M.2135-1、2009年12月)に記載されている。
【0037】
「数1」式において、「R
l,k」は、M
k行M
k列の複素数で構成される行列であり、l番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の空間相関行列であり、以下の「数3」式のように定義される。
【数3】
「数3」式は、非特許文献7(H. Bolcskei, M. Borgmann, and A. J. Paulraj著、「Impact of the propagation environment on the performance of space-frequency coded mimo-ofdm」、IEEE J. Sel. Areas Commun.、vol. 21、no. 3、pp. 427~439、2003年、issn: 1558-0008、doi: 10.1109/JSAC.2003.809723.)に示されている。
【0038】
「数1」式において、「G
l,k」は、l番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5とのフェージング係数行列であり、以下の「数4」式を満たす。
【数4】
【0039】
「数1」式において、「T
l,k」はN行N列の複素数で構成される行列であり、l番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の空間相関行列であり、以下の「数5」式のように定義される。
【数5】
「数5」式は、非特許文献7に示されている。
【0040】
「数1」式および「数2」式において、「dl,k」は、l番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の距離を表す。「数2」式において、「fc」は、搬送波周波数を表す。
【0041】
「数3」式および「数5」式において、「θ
l,k
t」はl番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の発射角を表す。また、「θ
l,k
r」はl番目のアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の入射角を表す。「θ
l,k
t」および「θ
l,k
r」を角度「θ
l,k」と総称する。「数3」式および「数5」式において、「a(θ
l,k)」は等間隔線形アレーアンテナにおけるアレー応答ベクトルを表し、角度「θ
l,k」に対して以下の「数6」式のように定義する。
【数6】
【0042】
一実施の形態におけるダウンリンク通信における基底帯域複素数受信信号について説明する。一実施の形態においてk番目の端末5がアクセスポイント3から受信する受信信号は、以下の「数7」式のように表される。
【数7】
【0043】
「数7」式において、「yk」はQk行1列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5が受信する受信信号を表し、k番目の端末5の所望信号と、ユーザ間干渉と、有色雑音との和として表される。「Qk」はk番目の端末5に対応する伝送ストリームの本数を表す。
【0044】
「数7」式において、「U
k」はQ
k行M
k列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5が受信する受信ビームを形成するための受信ビームフォーマ行列である。「H
k」は、M
k行LN列の複素数で構成された行列であり、全てのアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の通信路行列であり、以下の「数8」式のように表される。
【数8】
【0045】
「数7」式において、「V
k」は、LN行Q
k列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5が送信する送信ビームを形成するための送信ビームフォーマ行列である。「s
k」は、Q
k行1列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5に対する送信信号を表す。「n
k」は、k番目の端末5のAWGN(Additive White Gaussian Noise:加算性白色ガウス雑音)を表し、以下の「数9」式を満たす。
【数9】
【0046】
一実施の形態によるダウンリンク信号の周波数利用効率について説明する。ダウンリンク信号の周波数利用効率は、以下の「数10」式のように表される。
【数10】
【0047】
「数10」式において、「η
k」は、k番目の端末5の周波数利用効率を表す。「E
k」は、以下の「数11」式のように定義される。
【数11】
【0048】
「数10」および「数11」式において、「F
k
TX」は以下の「数12」式のように定義される。また、「F
k
RX」は以下の「数13」式のように定義される。
【数12】
【数13】
【0049】
一実施の形態におけるアップリンク基底帯域複素受信信号について説明する。一実施の形態においてアクセスポイント3がk番目の端末5から受信する受信信号は、以下の「数14」式のように表される。
【数14】
【0050】
「数14」式において、「y
u」はLN行1列の複素数で構成された行列であり、全てのアクセスポイント制御装置2が端末5から受信する受信信号を表す。「H
k
u」は、LN行M
k列の複素数で構成された行列であり、全てのアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の通信路行列を表し、以下の「数15」のように定義される。
【数15】
【0051】
「数14」式において、「V
k
u」は、M
k行Q
k列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5が送信する送信ビームを形成するための送信ビームフォーマ行列である。「s
k」は、Q
k行1列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5が送信する送信信号を表す。「n
u」は、アクセスポイント制御装置2が端末5から受信するAWGNであり、以下の「数16」式を満たす。
【数16】
【0052】
k番目の端末5からの送信信号は、以下の「数17」式のように推定することができる。
【数17】
【0053】
「数17」式において、「sk
u」(正確には、「s」の上にハット記号がある)は、Qk行1列の複素数で構成された行列であり、推定したk番目の端末5からの送信信号を表す。「Uk
u」は、Qk行LN列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5に対応する受信ビームフォーマ行列である。「yu」は、LN行1列の複素数で構成された行列であり、アクセスポイント制御装置2が端末5から受信する受信信号を表す。
【0054】
「数17」式と「数7」式に基づいて、以下の「数18」式が得られる。
【数18】
【0055】
「数18」式において、推定したk番目の端末5からの送信信号sk
u(正確には、「s」の上にハット記号がある)は、k番目の端末5の信号と、ユーザ間干渉と、有色雑音との和として表される。「Hk
u」は、LN行Mk列の複素数で構成された行列であり、全てのアクセスポイント3と、k番目の端末5との間の通信路行列を表す。「Vk
u」は、Mk行Qk列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5の送信ビームフォーマ行列である。「sk
u」は、Qk行1列の複素数で構成された行列であり、k番目の端末5が送信する送信信号を表す。
【0056】
一実施の形態によるアップリンク信号の周波数利用効率について説明する。アップリンク信号の周波数利用効率は、以下の「数19」式のように表される。
【数19】
【0057】
「数19」式において、「η
k
u」は、k番目の端末5のアップリンク周波数利用効率を表す。「E
k
u」は、以下の「数20」式のように定義される。
【数20】
【0058】
「数19」式および「数20」式において、「F
k
UTX」は、以下の「数21」式のように定義される。また、「数20」式において、「F
URX」は、以下の「数22」式のように定義される。
【数21】
【数22】
【0059】
一実施の形態では、以上のように説明した通信路のシステムモデルに基づいて、ML-GSVD(MultiLinear Generalized Singular Value Decomposition:多線形一般化特異値分解)と呼ばれる演算を行う。
【0060】
一実施の形態による、改良型ML-GSVDにおけるダウンリンク通信について説明する。一実施の形態では、「数8」式に示した通信路行列H
kを、以下の「数23」式のように、3つの行列の積に分解する。
【数23】
【0061】
「数23」式において、「Bk」は、Mk行LN列の複素数で構成された行列であり、各端末5の次元に対して個別の行列であり、個別行列Bkと呼ばれる。「diag{C(k,:)}」は、LN行LN列の実数で構成された行列であり、スケーリング行列Ckと呼ばれる。「A」はLN行LN列の複素数で構成された行列であり、全ての通信路行列について共通の行列であり、共通行列Aと呼ばれる。
【0062】
図5Aは、一実施の形態によるダウンリンク通信におけるML-GSVDの演算内容を概略的に示す図である。
図5Aの例では、LN=6、M
1=1、M
2=3、M
3=2であり、全ての端末5に対応するダウンリンク通信路テンソルHを、1番目の端末5に対応するH
1と、2番目の端末5に対応するH
2と、3番目の端末5に対応するH
3とに分けて示している。同様に、個別テンソルBを、1番目の端末5に対応するB
1と、2番目の端末5に対応するB
2と、3番目の端末5に対応するB
3とに分けて示している。また、スケーリング行列Cを、1番目の端末5に対応するC
1と、2番目の端末5に対応するC
2と、3番目の端末5に対応するC
3とに分けて示しており、斜線部以外の要素は0となる。
【0063】
「数7」式と「数23」式とから、以下の「数24」式が得られる。
【数24】
【0064】
「数24」式において、「C
k」は、以下の「数25」式のように定義される。
【数25】
【0065】
一実施の形態による、アップリンク通信におけるML-GSVDについて説明する。一実施の形態では、「数8」式に示した通信路行列H
kを、以下の「数26」式のように、3つの行列の積に分解する。
【数26】
【0066】
図5Bは、一実施の形態によるアップリンク通信におけるML-GSVDの演算内容を概略的に示す図である。
図5Bの例では、LN=6、M
1=1、M
2=3、M
3=2であり、全ての端末5に対応するアップリンク通信路テンソルH
uを、1番目の端末5に対応するH
1
uと、2番目の端末5に対応するH
2
uと、3番目の端末5に対応するH
3
uとに分けて示している。同様に、個別テンソルBの転置テンソルB
Tを、1番目の端末5に対応するB
1
Tと、2番目の端末5に対応するB
2
Tと、3番目の端末5に対応するB
3
Tとに分けて示している。また、スケーリング行列Cを、1番目の端末5に対応するC
1と、2番目の端末5に対応するC
2と、3番目の端末5に対応するC
3とに分けて示しており、斜線部以外の要素は0となる。
【0067】
「数18」式と「数26」式とから、以下の「数27」式が得られる。
【数27】
【0068】
図6のフローチャートを参照して、一実施の形態によるML-GSVDの演算方法について説明する。一実施の形態によるML-GSVDの演算は、アクセスポイント制御装置2の演算装置22が制御プログラム231を実行することによって実現されてもよい。
【0069】
図6のフローチャートが開始すると、ステップS11が実行される。ステップS11において、演算装置22は、共通行列Aとスケーリング行列Cの初期値を算出する。
【0070】
共通行列Aの初期値は、以下の「数28」式の左特異行列として求められる。
【数28】
【0071】
スケーリング行列Cの初期値は、行列の各要素が区間[0,1]の一様分布に従う確率変数として求められる。
【0072】
ステップS11の次に、ステップS12が実行される。ステップS12において、演算装置22は、共通行列Aとスケーリング行列Cに基づいて、個別行列B
kを更新する。なお、ステップS12が初めて実行されるときは、共通行列Aの初期値と、スケーリング行列Cの初期値とに基づいて、個別行列Bkの初期値が算出される。ここで、分解を行う対象の通信路行列H
kを統合した通信路テンソルHを、以下の「数29」式のように定義する。
【数29】
「数29」に示すように、通信路テンソルHは、番号kが1からKまでの全ての端末5のそれぞれに対応する通信路行列[H
k]を含むように構成されている。
【0073】
個別行列B
kの更新を最適化するために、通信路テンソルHの分解前と分解後の分解誤差が最小になるような個別行列B
kを、以下の「数30」式に基づいて選択する。
【数30】
【0074】
「数30」式の個別行列「B
k」は、以下の「数31」式を満たす。
【数31】
【0075】
「数30」式の分解誤差「E
RBk」は、以下の「数32」式のように定義される。
【数32】
【0076】
「数32」式において、左辺の「Hk」(正確には、「H」はスクリプト文字である)は分解前の通信路テンソルHのうちのk番目の端末5に対応する成分を表し、右辺の「BkCkAT」すなわち「BkHk」(正確には、「H」はスクリプト文字であり、「H」の上にチルダ記号がある)は分解後の通信路テンソルHのうちのk番目の端末5に対応する成分を表し、分解誤差「ERBk」は、LN行Mk列の複素数で構成された行列であり、通信路テンソルHの分解前と分解後の差を表す。
【0077】
個別行列B
kを更新するためのラグランジュアンは、以下の「数33」式のとおりである。
【数33】
【0078】
「数33」式において、「L」(正確には、「L」はスクリプト文字である)は、ラグランジュアンである。「E
RBk」は、「数32」に基づいて、以下の「数34」のように表される。
【数34】
【0079】
「数33」式において、「Lm」は、Mk行Mk列の複素数で構成された行列であり、ラグランジュ乗数である。
【0080】
なお、個別行列B
kの、閉形式表現による更新式として、以下の「数35」式が、非特許文献8(P. H. Schoenemann著、「A generalized solution of the orthogonal procrustes problem」、Psychometrika、vol. 31、no. 1、1966年)に記載されている。
【数35】
【0081】
ステップS12の後、ステップS13が実行される。ステップS13において、演算装置22は、スケーリング行列Cの更新に際して、以下の「数36」式に基づいた演算を行った後、発散防止パラメータεを用いた正規化および次元数調整のためのフリッピング動作をもってスケーリング行列Cの更新を実現する。
【数36】
【0082】
「数36」式において、演算子「◇」は、KR(Khatri-Rao)積を表す。また、スケーリング行列Cの正規化の影響を保証するため、「A(:,l
n)」を以下の「数37」式のように更新する。
【数37】
【0083】
「数37」式において、l
n番目の列「C(:,l
n)」、つまり正規化後のスケーリング行列Cのl
n列は、以下の「数38」式のように表される。
【数38】
【0084】
「数38」式の分母に含まれる「ε」は、正規化時の発散を防止する発散防止パラメータである。この発散防止パラメータεと、「数38」式の分母に含まれる「max」関数とを用いることにより、ln番目の列「C(:,ln)」の値の発散を防止することができる。また、この発散防止パラメータεを、0より大きく、1より十分に小さい適宜な値を設定し、後述するフリッピング動作と組み合わせることで、一実施の形態による改良型ML-GSVDでは、関連技術によるML-GSVDより優れた性能が得られることを、発明者は後述するシミュレーションにより確認した。
【0085】
一実施の形態による改良型ML-GSVDにおける、スケーリング行列Cのフリッピング動作について説明する。一実施の形態による改良型ML-GSVDでは、各k番目の端末5に対応する通信路行列Hkを表現するために、スケーリング行列Cにおける第k行成分の非零要素数分の次元を使用する。ここで次元定理より、スケーリング行列Cの第k行成分の非零要素数の過不足が存在する場合にはそれを解消する必要があり、その動作をフリッピング動作と呼称し、詳細を後述する。
【0086】
スケーリング行列Cに含まれるk番目の行C(k,:)の中の、LN-M
k個の最小要素のインデックスの集合を「Z
k」と呼ぶ。スケーリング行列Cの要素C(k,l
n)のそれぞれにおいて、インデックスl
nが集合Z
kに含まれる場合は必要以上の非零要素が含まれることになるため、以下の「数39」式のように要素C(k,l
n)の更新を行うことでその是正を実現する。
【数39】
【0087】
また、スケーリング行列Cに含まれるk番目の行C(k,:)の非零要素数が不足している場合には余剰次元を割当する必要がある。ここで、k番目の端末5に割り当て可能な余剰次元のインデックスの集合を「Z’
k」と呼ぶ。スケーリング行列Cの要素C(k,l
n)のそれぞれにおいて、インデックスl
nが集合Z’
kに含まれる場合は、以下の「数40」式のように要素C(k,l
n)を更新することでフリッピング動作を実現する。
【数40】
ここで、集合Z’kは、以下の「数41」式と「数42」式のように定義される。
【数41】
【数42】
【0088】
ステップS13の後、ステップS14が実行される。ステップS14において、演算装置22は、以下のフルランク化用パラメータξを用いて共通行列Aを更新する。共通行列Aの更新は、以下の「数43」式に基づいて行われる。
【数43】
【0089】
「数43」式において、「[・](j)」は、j番目のモードでのアンフォールディングを表す。「Δ」は、発散防止用のパラメータである。「ξ」は、フルランク化用パラメータである。
【0090】
ステップS14の後、ステップS15が実行される。ステップS15において、演算装置22は、「数32」式または「数34」式に基づいて算出される分解誤差ERBkの平均値が所定の閾値より小さいかどうかを判定する。分解誤差ERBkの平均値が閾値より小さくない場合(No)は、演算装置22はステップS15の後にステップS12を再度実行する。反対に、分解誤差ERBkの平均値が閾値より小さい場合(Yes)は、演算装置22はステップS15の後にステップS16を実行する。言い換えれば、演算装置22は、分解誤差ERBkが閾値より小さくなるまで、ステップS12~ステップS14を繰り返す。
【0091】
ステップS16において、演算装置22は、個別行列Bkと共通行列Aとを用いてビームフォーマ行列を算出する。
【0092】
一実施形態によるビームフォーマの設計コンセプトについて説明する。送信時には、通信路行列Hkのうちの共通行列Aの部分を対角化し、送信信号を所望の次元に乗せる。受信時には、通信路行列Hkの個別行列Bkの部分のユニタリ性により、各端末5からの信号を抽出する。
【0093】
図7Aは、一実施の形態によるビームフォーミング方法の、ダウンリンク通信における演算内容を概略的に示す図である。
図7Aは、左から右に並べられた7つの行列を含んでいる。一番左の行列は、Q
k行LN列の受信ストリーム合成行列J
k
Tである。受信ストリーム合成行列J
k
Tの要素は、0または1である。
図7Aの例では、ハッチングで示されている要素が「1」であり、その他の要素が「0」である。左から2番目の行列は、個別行列B
kのエルミート行列B
k
Hであり、受信ストリーム合成行列J
k
Tとの積により受信ビームフォーマ行列U
kを構成する。また、個別行列B
kのユニタリ性により、個別行列B
kのエルミート行列B
k
Hと、通信路行列H
kにおける個別行列B
kとの積、すなわち行列B
k
HB
kは、
図7Aに示すとおり、部分的な単位行列となる。左から4番目の行列は、通信路テンソルHに対するk番目のスケーリング行列C
kである。右から3番目の行列は、通信路テンソルHに対する共通行列Aの転置行列A
Tである。転置行列A
Tと、この行列に対する正規化逆行列(A
T)
†との積、すなわち行列A
T(A
T)
†は、
図7Aに示すように、単位行列となる。一番右の行列は、LN行Q
k列の送信ストリーム選択行列J
kである。送信ストリーム選択行列J
kの要素は0または1であり、(A
T)
†との積により送信ビームフォーマ行列V
kを構成する。
図7Aの例では、ハッチングで示されている要素が「1」であり、その他の要素が「0」である。送信ストリーム選択行列J
kは、以下の「数44」式のように定義される。
【数44】
【0094】
「数44」式において、「jk,i」は、k番目の端末5のi番目のストリームに対するストリーム選択変数であり、0または1の値を取る。
【0095】
図7Aに示すように、受信ストリーム合成行列J
k
Tと、個別行列B
kのエルミート行列B
k
Hとの積は、受信ビームフォーマ行列U
kであり、Q
k行M
k列の複素数で構成された行列である。また、個別行列B
kと、スケーリング行列C
kと、転置行列A
Tとの積は、
図5Aや「数23」式などを参照して説明したとおり、通信路行列H
kである。また、正規化逆行列(A
T)
†と、送信ストリーム選択行列J
kとの積は、送信ビームフォーマ行列V
kであり、LN行Q
k列の複素数で構成された行列である。このように、一実施の形態によるアクセスポイント制御装置2の演算装置22は、ダウンリンク通信において、個別行列B
kに基づいて受信ビームフォーマ行列U
kを算出することができ、共通行列Aに基づいて送信ビームフォーマ行列V
kを算出することができる。
【0096】
図7Bは、一実施の形態によるビームフォーミング方法の、アップリンク通信における演算内容を概略的に示す図である。
図7Bは、左から右に並べられた7つの行列を含んでいる。一番左の行列は、Q
k行LN列の受信ストリーム合成行列J
k
Tである。受信ストリーム合成行列J
k
Tの要素は、0または1である。
図7Aの例では、ハッチングで示されている要素が「1」であり、その他の要素が「0」である。左から2番目の行列は、共通行列Aの正規化逆行列A
†である。共通行列Aの正規化逆行列A
†と、共通行列Aとの積、すなわち行列A
†Aは、
図7Bに示すように、単位行列となる。左から4番目の行列はスケーリング行列C
kである。右から3番目の行列は、個別行列Bkの転置行列B
k
Tである。個別行列B
kの転置行列B
k
Tと、個別行列B
kの複素共役行列B
k
*との積、すなわち行列B
k
TB
k
*は、
図7Bに示すように、部分的な単位行列となる。一番右の行列は、LN行Q
k列の送信ストリーム選択行列J
kである。送信ストリーム選択行列J
kの要素は0または1である。
図7Bの例でも、
図7Aの例と同様に、ハッチングで示されている要素が「1」であり、その他の要素が「0」である。送信ストリーム選択行列J
kは、「数44」式のように定義される。
【0097】
図7Bに示すように、受信ストリーム合成行列J
k
Tと、正規化逆行列A
†との積は、受信ビームフォーマ行列U
k
uであり、M
k行LN列の複素数で構成された行列である。また、共通行列Aと、スケーリング行列C
kと、転置行列B
k
Tとの積は、
図5Bや「数26」式などを参照して説明したとおり、通信路行列H
k
uである。また、複素共役行列B
k
*と、送信ストリーム選択行列J
kとの積は、送信ビームフォーマ行列V
k
uであり、M
k行Q
k列の複素数で構成された行列である。このように、一実施の形態によるアクセスポイント制御装置2の演算装置22は、アップリンク通信において、共通行列Aに基づいて受信ビームフォーマ行列U
k
uを算出することができ、個別行列B
kに基づいて送信ビームフォーマ行列V
k
uを算出することができる。
【0098】
ダウンリンク通信において、送信ビームフォーマ行列V
kのq列目<V
k>
qは、以下の「数45」式を満たすように設計される。
【数45】
【0099】
「数45」式において、「q」は、1からQkまでの整数である。「pk,i」は、k番目の端末5のi番目のストリームに割り当てる送信電力を表す。
【0100】
アップリンク通信において、送信ビームフォーマ行列V
k
uのq列目<V
k
u>
qは、以下の「数46」式を満たすように設計される。
【数46】
【0101】
「数46」式において、「q」は、1からQkまでの整数である。「pk,i
u」は、k番目の端末5のi番目のストリームに割り当てる送信電力を表す。
【0102】
ダウンリンク通信において、受信ビームフォーマ行列U
kは、
図7Aを参照して説明したように、以下の「数47」式を満たすように設計される。
【数47】
【0103】
アップリンク通信において、受信ビームフォーマ行列U
k
uは、
図7Bを参照して説明したように、以下の「数48」式を満たすように設計される。
【数48】
【0104】
「数48」式において、正規化逆行列A
†は、以下の「数49」式のように定義される。
【数49】
【0105】
「数49」式において、共通行列Aは、特異値分解により以下の「数50」式を満たす。
【数50】
【0106】
「数49」式において、「Λ」(正確には、「Λ」の上にバー記号がある)は、以下の「数51」式のように定義される。
【数51】
【0107】
ステップS16が完了すると、
図6のフローチャートは終了する。
【0108】
図8Aと
図8Bを参照して、一実施の形態によるアクセスポイント制御装置2がアップリンク通信およびダウンリンク通信で行うストリーム(アンテナ次元)の割り当てと、ダウンリンク通信で行う送信電力の割り当てについて説明する。
【0109】
図8Aは、一実施の形態による通信方法の一構成例を示すフローチャートである。
図8Bは、一実施の形態による通信方法の別の一構成例を示すフローチャートである。
図8Aのフローチャートでは、通信システム1における周波数利用効率を最大化する、いわゆる「貪欲法」によって、ストリームおよび/または送信電力の割り当てが行われる。
図8Bのフローチャートでは、複数の端末5の間で無線資源の割り当ての公平性を担保する、いわゆる「Max Min資源割当」によって、ストリームおよび/または送信電力の割り当てが行われる。無線資源の割り当ての公平性を担保することで、全ての端末5に最小限の伝送レートを保証することができる。一実施の形態による通信システム1において、アクセスポイント制御装置2の演算装置22は、いわゆる「貪欲法」と、いわゆる「Max Min資源割当」とを、任意のタイミングで選択して切り替えることが可能である。なお、非特許文献9(W. Rhee and J. M. Cioffi著、「Increase in capacity of multiuser OFDM system using dynamic subchannel allocation」、Proc. IEEE VTC-Spring, Tokyo, Japan、vol. 2、2000年、pp. 1085~1089、doi: 10.1109/VETECS.2000.851292.)には、Max Min資源割当について記載されている。
【0110】
図8Aのフローチャートが開始すると、ステップS21が実行される。ステップS21において、アクセスポイント制御装置2の演算装置22は、スケーリング行列Cに含まれる列C(:,l
n)が最大値を持つ端末5のインデックスkを探索する。列C(:,l
n)は、ベクトルC(:,l
n)と呼んでもよい。
【0111】
ステップS21の後、ステップS22が実行される。ステップS22において、演算装置22は、k番目の端末5にlnのストリーム次元を割り当てる。
【0112】
ステップS22の後、ステップS23が実行される。ステップS23において、演算装置22は、ステップS21とステップS22とを繰り返した回数が所定の閾値に達したかどうかを判定する。この閾値は、全ての端末5のそれぞれに対応する伝送ストリーム本数Q
kの合計であり、以下の「数52」式のように表される。
【数52】
【0113】
ステップS21とステップS22を繰り返す回数を表す数値は、ステップS21を最初に実行する前に初期化されていることが好ましい。また、この回数は、ステップS21~ステップS23のいずれかの時点で、これらのステップが繰り返されるたびにインクリメントされることが好ましい。繰り返し回数が閾値に達していない場合(No)、演算装置22はステップS21を再度実行する。反対に、繰り返し回数が閾値に達している場合(Yes)、
図8Aのフローチャートは終了する。
【0114】
図8Bのフローチャートが開始すると、ステップS31が実行される。ステップS31において、演算装置22は、スケーリング行列Cに含まれる行C(k,:)の最大値を取るストリームを、全ての端末5に1つずつ割り当てる。行C(k,:)は、ベクトルC(k,:)と呼んでもよい。
【0115】
ステップS31の後、ステップS32が実行される。ステップS32において、演算装置22は、割当資源が最小となる端末5を探索する。この最小値は、以下の「数53」式のように表される。
【数53】
【0116】
「数53」において、「qk(i)」は、k番目の端末5に割り当てられるi番目のストリームのインデックスを表す。
【0117】
ステップS32の後、ステップS33が実行される。ステップS33において、演算装置22は、行C(k,:)が割り当てられていないストリームの中で最大値となるストリームを、探索した端末5に1つ割り当てる。
【0118】
ステップS33の後、ステップS34が実行される。ステップS34において、演算装置22は、ステップS31、S32およびS33を繰り返した回数が所定の閾値に達したかどうかを判定する。この閾値は、
図8AのフローチャートのステップS23の場合と同様に、全ての端末5のそれぞれに対応する伝送ストリーム本数Q
kの合計であり、「数52」式のように表される。
【0119】
ステップS31、S32およびS33を繰り返す回数を表す数値は、ステップS31を最初に実行する前に初期化されていることが好ましい。また、この回数は、ステップS31~ステップS34のいずれかの時点で、これらのステップが繰り返されるたびにインクリメントされることが好ましい。繰り返し回数が閾値に達していない場合(No)、演算装置22はステップS31を再度実行する。反対に、繰り返し回数が閾値に達している場合(Yes)、
図8Bのフローチャートは終了する。
【0120】
図8Aのフローチャートを参照して説明した、一実施の形態による通信システム1における周波数利用効率の最大化する手法として、「注水法」がある。このとき、送信電力p
k,qは、以下の「数54」式で表される。
【数54】
【0121】
図8Bのフローチャートを参照して説明した、一実施の形態による通信システム1が端末5の公平性を担保する手法として、「注水法」と「逆注水法」の組み合わせがある。すなわち、各端末5に対しては「逆注水法」に基づき、各ストリームに対しては「注水法」に基づき、電力の割り当てを行う。このとき、送信電力p
k,qは、以下の「数55」式で表される。
【数55】
【0122】
「数54」式および「数55」式において、「P」は、全てのアクセスポイント3に対する総送信電力制約を表す。
【0123】
(シミュレーション結果)
図9~
図24を参照して、一実施の形態による通信方法をシミュレーションした結果について説明する。
図9は、一実施の形態による通信方法をシミュレーションした際に用いたシミュレーション諸元の一例を示す表である。
【0124】
図10~
図24に示すシミュレーション結果では、一実施形態による改良型ML-GSVDを、関連技術によるMRC(Maximal Ratio Combining:最大比合成)、MMSE(Minimum Mean Square Error:最小二乗誤差法)およびML-GSVDと比較する。
【0125】
関連技術によるMRCによるビームフォーマでは、ダウンリンク通信における送信ビームフォーマ行列V
kを以下の「数56」式のように定め、受信ビームフォーマ行列U
kを以下の「数57」式のように定める。
【数56】
【数57】
【0126】
また、関連技術によるMRCによるビームフォーマでは、アップリンク通信における送信ビームフォーマ行列V
k
uを以下の「数58」式のように定め、受信ビームフォーマ行列U
k
uを以下の「数59」式のように定める。
【数58】
【数59】
【0127】
関連技術によるMMSEによるビームフォーマでは、ダウンリンク通信における送信ビームフォーマ行列V
kを以下の「数60」式のように定め、受信ビームフォーマ行列U
kを以下の「数61」式のように定める。
【数60】
【数61】
【0128】
また、関連技術によるMMSEによるビームフォーマでは、アップリンク通信における送信ビームフォーマ行列V
k
uを以下の「数62」式のように定め、受信ビームフォーマ行列U
k
uを以下の「数63」式のように定める。
【数62】
【数63】
【0129】
関連技術によるML-GSVDでは、周波数利用効率の最大化する場合の送信電力p
k,iは、以下の「数64」式で表される。
【数64】
【0130】
また、関連技術によるML-GSVDでは、端末5の公平性を担保する場合の送信電力p
k,iは、以下の「数65」式で表される。
【数65】
【0131】
図10~
図12は、一実施の形態による通信方法の分解特性に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図10~
図12に共通して、横軸は、通信路行列H
kを分解するために個別行列B
k、スケーリング行列Cおよび共通行列Aを更新する処理の繰り返し回数(Iteration)iを表し、縦軸は通信路行列H
kの分解における正規化した誤差(Normalized Error)E
(i)を表している。また、アクセスポイント3の総数Lは25であり、端末5の総数Kは25であり、k番目の端末5が有するアンテナ素子の総数M
kは2から6までの整数である。
【0132】
図10は比較的低い負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは9である。
図10は、グラフG011、G012を含んでいる。グラフG011は関連技術によるML-GSVDのシミュレーション結果を示し、グラフG012は一実施の形態による改良型ML-GSVDのシミュレーション結果を示す。
図10に示すように、繰り返し回数iがある閾値を超えると、グラフG012はグラフG011より下に位置している。このことは、繰り返し回数iがこの閾値を超えれば、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるML-GSVDよりも誤差が少なくなり、すなわち分解の精度が高くなることを意味する。
【0133】
図11は中間的な負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは4である。
図11は、グラフG021、G022を含んでいる。グラフG021は関連技術によるML-GSVDのシミュレーション結果を示し、グラフG022は一実施の形態による改良型ML-GSVDのシミュレーション結果を示す。
図11に示すように、繰り返し回数iがある閾値を超えると、グラフG022はグラフG021より下に位置している。このことは、繰り返し回数iがこの閾値を超えれば、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるML-GSVDよりも分解の誤差が少なくなり、すなわち分解の精度が高くなることを意味する。
【0134】
図12過負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは3である。
図12は、グラフG031、G032を含んでいる。グラフG031は関連技術によるML-GSVDのシミュレーション結果を示し、グラフG032は一実施の形態による改良型ML-GSVDのシミュレーション結果を示す。
図12に示すように、繰り返し回数iがある閾値を超えると、グラフG022はグラフG021より下に位置している。このことは、繰り返し回数iがこの閾値を超えれば、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるML-GSVDよりも分解の誤差が少なくなり、すなわち分解の精度が高くなることを意味する。
【0135】
図10~
図12から読み取れるように、負荷状態に関わらず、繰り返し回数iがこの閾値を超えれば、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるML-GSVDよりも分解の誤差が少なくなり、すなわち分解の精度が高くなる。
【0136】
図13~
図15は、一実施の形態による通信方法のダウンリンク通信における全ての端末5の周波数利用効率に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図13~
図15に共通して、横軸は周波数利用効率(Spectral Efficiency)を表し、縦軸は周波数利用効率のCDF(Cumulative Distribution Function:累積分布関数)を表す。また、アクセスポイント3の総数Lは25であり、端末5の総数Kは25であり、k番目の端末5が有するアンテナ素子の総数M
kは2から6までの整数である。
【0137】
図13は比較的低い負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは9である。
図13は、グラフG041、G042、G043、G044、G045、G046、G047、G048を含んでいる。グラフG041は関連技術によるMRCの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG042は関連技術によるMRCの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG043は関連技術によるMMSEの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG044は関連技術によるMMSEの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG045は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG046は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG047は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG048は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図13に示すように、グラフG047は、グラフG041、G043、G045のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG048は、グラフG042、G044、G046のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0138】
図14は中間的な負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは4である。
図14は、グラフG051、G052、G053、G054、G055、G056、G057、G058を含んでいる。グラフG051は関連技術によるMRCの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG052は関連技術によるMRCの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG053は関連技術によるMMSEの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG054は関連技術によるMMSEの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG055は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG056は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG057は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG058は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図14に示すように、グラフG057は、グラフG051、G053、G055のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG058は、グラフG052、G054、G056のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0139】
図15は過負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは3である。
図15は、グラフG061、G062、G063、G064、G065、G066、G067、G068を含んでいる。グラフG061は関連技術によるMRCの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG062は関連技術によるMRCの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG063は関連技術によるMMSEの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG064は関連技術によるMMSEの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG065は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG066は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG067は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG068は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図15に示すように、グラフG067は、グラフG061、G063、G065のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG068は、グラフG062、G064、G066のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0140】
図13~
図15から読み取れるように、負荷状態に関わらず、公平性を優先した場合でも、周波数利用効率を優先した場合でも、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れている。
【0141】
図16~
図18は、一実施の形態による通信方法のダウンリンク通信における、複数の端末5の中で最悪な通信状態にある端末5側の、周波数利用効率に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図13~
図15に共通して、横軸は最小周波数利用効率(minimum Spectral Efficiency)を表し、縦軸は最小周波数利用効率のCDF(Cumulative Distribution Function:累積分布関数)を表す。また、アクセスポイント3の総数Lは25であり、端末5の総数Kは25であり、k番目の端末5が有するアンテナ素子の総数M
kは2から6までの整数である。
【0142】
図16は比較的低い負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは9である。
図16は、グラフG071、G072、G073、G074、G075、G076、G077、G078を含んでいる。グラフG071は関連技術によるMRCの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG072は関連技術によるMRCの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG073は関連技術によるMMSEの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG074は関連技術によるMMSEの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG075は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG076は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG077は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG078は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図16に示すように、グラフG077は、グラフG071、G073、G075のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG078は、グラフG072、G074、G076のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0143】
図17は中間的な負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは4である。
図17は、グラフG081、G082、G083、G084、G085、G086、G087、G088を含んでいる。グラフG081は関連技術によるMRCの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG082は関連技術によるMRCの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG083は関連技術によるMMSEの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG084は関連技術によるMMSEの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG085は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG086は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG087は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG088は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図17に示すように、グラフG087は、グラフG081、G083、G085のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG088は、グラフG082、G084、G086のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0144】
図18は過負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは3である。
図18は、グラフG091、G092、G093、G094、G095、G096、G097、G098を含んでいる。グラフG091は関連技術によるMRCの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG092は関連技術によるMRCの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG093は関連技術によるMMSEの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG094は関連技術によるMMSEの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG095は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG096は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG097は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG098は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図18に示すように、最小周波数利用効率がある閾値を超えた範囲において、グラフG097は、グラフG091、G093、G095のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、最小周波数利用効率がこの閾値を超えた範囲において、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG098は、最小周波数利用効率が別の閾値を超えた範囲において、グラフG092、G094、G096のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、最小周波数利用効率がこの別の閾値を超えた範囲において、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0145】
図16~
図18から読み取れるように、負荷状態に関わらず、公平性を優先した場合でも、周波数利用効率を優先した場合でも、少なくとも最小周波数利用効率がある閾値を超えた範囲において、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れている。
【0146】
図19~
図21は、一実施の形態による通信方法のアップリンク通信における全ての端末5の周波数利用効率に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図19~
図21に共通して、横軸は周波数利用効率(Spectral Efficiency)を表し、縦軸は周波数利用効率のCDFを表す。また、アクセスポイント3の総数Lは25であり、端末5の総数Kは25であり、k番目の端末5が有するアンテナ素子の総数M
kは2から6までの整数である。
【0147】
図19は比較的低い負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは9である。
図19は、グラフG101、G102、G103、G104、G105、G106を含んでいる。
図19において、グラフG105、G106がほぼ重なっていることに注意されたい。グラフG101は関連技術によるMRCのシミュレーション結果を示す。グラフG102は関連技術によるMMSEのシミュレーション結果を示す。グラフG103は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG104は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG105は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG106は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図19に示すように、グラフG105は、グラフG101、G102、G103のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG106は、グラフG101、G102、G104のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0148】
図20は中間的な負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは4である。
図20は、グラフG111、G112、G113、G114、G115、G116を含んでいる。グラフG111は関連技術によるMRCのシミュレーション結果を示す。グラフG112は関連技術によるMMSEのシミュレーション結果を示す。グラフG113は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG114は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG115は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG116は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図20に示すように、グラフG115は、グラフG111、G112、G113のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG116は、グラフG111、G112、G114のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0149】
図21は過負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは3である。
図21は、グラフG121、G122、G123、G124、G125、G126を含んでいる。グラフG121は関連技術によるMRCのシミュレーション結果を示す。グラフG122は関連技術によるMMSEのシミュレーション結果を示す。グラフG123は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG124は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG125は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG126は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図21に示すように、グラフG125は、グラフG121、G122、G123のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG126は、グラフG121、G122、G124のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0150】
図19~
図21から読み取れるように、負荷状態に関わらず、公平性を優先した場合でも、周波数利用効率を優先した場合でも、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れている。
【0151】
図22~
図24は、一実施の形態による通信方法のダウンリンク通信における、複数の端末5の中で最悪な通信状態にある端末5側の、周波数利用効率に係るシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図22~
図24に共通して、横軸は最小周波数利用効率(minimum Spectral Efficiency)を表し、縦軸は最小周波数利用効率のCDF(Cumulative Distribution Function:累積分布関数)を表す。また、アクセスポイント3の総数Lは25であり、端末5の総数Kは25であり、k番目の端末5が有するアンテナ素子の総数M
kは2から6までの整数である。
【0152】
図22は比較的低い負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは9である。
図22は、グラフG131、G132、G133、G134、G135、G136を含んでいる。
図22において、グラフG135、G136はほぼ重なっていることに注意されたい。グラフG131は関連技術によるMRCのシミュレーション結果を示す。グラフG132は関連技術によるMMSEのシミュレーション結果を示す。グラフG133は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG134は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG135は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG136は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図22に示すように、グラフG135は、グラフG131、G132、G133のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG136は、グラフG131、G132、G134のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0153】
図23は中間的な負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは4である。
図23は、グラフG141、G142、G143、G144、G145、G146を含んでいる。
図23において、グラフG145、G146はほぼ重なっていることに注意されたい。グラフG141は関連技術によるMRCのシミュレーション結果を示す。グラフG142は関連技術によるMMSEのシミュレーション結果を示す。グラフG143は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG144は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG145は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG146は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図23に示すように、グラフG145は、グラフG141、G142、G143のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG146は、グラフG141、G142、G144のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0154】
図24は過負荷状態におけるシミュレーション結果を示しており、それぞれのアクセスポイント3が有するアンテナ素子の総数Nは3である。
図24は、グラフG151、G152、G153、G154、G155、G156を含んでいる。グラフG151は関連技術によるMRCのシミュレーション結果を示す。グラフG152は関連技術によるMMSEのシミュレーション結果を示す。グラフG153は関連技術によるML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG154は関連技術によるML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG155は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、公平性を優先した場合のシミュレーション結果を示す。グラフG156は一実施の形態による改良型ML-GSVDの、周波数利用効率を優先した場合のシミュレーション結果を示す。
図24に示すように、最小周波数利用効率がある閾値を超えた範囲において、グラフG155は、グラフG151、G152、G153のいずれよりも右側に位置している。このことは、公平性を優先した場合に、最小周波数利用効率がこの閾値を超えた範囲において、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。同様に、グラフG156は、最小周波数利用効率が別の閾値を超えた範囲において、グラフG151、G152、G154のいずれよりも右側に位置している。このことは、周波数利用効率を優先した場合に、最小周波数利用効率がこの別の閾値を超えた範囲において、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れていることを意味する。
【0155】
図22~
図24から読み取れるように、負荷状態に関わらず、公平性を優先した場合でも、周波数利用効率を優先した場合でも、少なくとも最小周波数利用効率がある閾値を超えた範囲において、一実施の形態による改良型ML-GSVDの方が関連技術によるMRC、MMSE、ML-GSVDのいずれよりも周波数利用効率が優れている。
【0156】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 通信システム
2 アクセスポイント制御装置
20 バス
21 アンテナ
22 演算装置
23 記憶装置
230 記録媒体
231 制御プログラム
24 インタフェース
3 アクセスポイント
30 バス
31 アンテナ
32 演算装置
33 記憶装置
330 記録媒体
331 通信プログラム
34 インタフェース
4 フロントホール
5 端末
50 バス
51 アンテナ
52 演算装置
53 記憶装置
530 記録媒体
531 通信プログラム
54 インタフェース
G011、G012 グラフ
G021、G022 グラフ
G031、G032 グラフ
G041、G042、G043、G044、G045、G046、G047、G048 グラフ
G051、G052、G053、G054、G055、G056、G057、G058 グラフ
G061、G062、G063、G064、G065、G066、G067、G068 グラフ
G071、G072、G073、G074、G075、G076、G077、G078 グラフ
G081、G082、G083、G084、G085、G086、G087、G088 グラフ
G091、G092、G093、G094、G095、G096、G097、G098 グラフ
G101、G102、G103、G104、G105、G106 グラフ
G111、G112、G113、G114、G115、G116 グラフ
G121、G122、G123、G124、G125、G126 グラフ
G131、G132、G133、G134、G135、G136 グラフ
G141、G142、G143、G144、G145、G146 グラフ
G151、G152、G153、G154、G155、G156 グラフ