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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127689
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】鉄心製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20220825BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01F41/02 A
H01F27/245 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025822
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】堀口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】遠山 嘉一
【テーマコード(参考)】
5E062
【Fターム(参考)】
5E062AB03
(57)【要約】
【課題】 巻鉄心の巻回時における巻取速度の低下防止と、巻き緩みの発生を防止することのできる技術を提供する。
【解決手段】鉄心製造装置Aを構成するアンコイラ部1に、鉄心素体44aをロール巻したフープ材44の載置台5を回転可能に構成する。載置台5の回転軸7にブレーキ装置6を取り付け、回転軸7の回転に可変可能な制動力を付加することによって、巻取部3によって巻き取られる鉄心素体44aに一定の張力が加えられるようにした。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心素体をロール巻きしたフープ材からなるアンコイラ部と、該アンコイラ部から引き出される前記鉄心素体を案内するガイドローラを備えたガイド部と、該ガイド部を介して供給される前記鉄心素体を巻取軸に巻回する動力を供給する駆動部を備え、前記巻取軸に鉄心素体を巻回する巻取部、および、前記駆動部の駆動を制御する制御部から構成される鉄心製造装置において、前記アンコイラ部は、前記フープ材を上載する載置台を回転可能に構成するとともに、前記載置台から下方へ延びる回転軸にブレーキ装置を具備し、前記回転軸の回転に可変可能な制動力を付加することによって、前記巻取部によって巻回される鉄心素体に一定の張力を加えるように構成したことを特徴とする鉄心製造装置。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、電動シリンダを備えたバンドブレーキによって構成し、前記電動シリンダのロッドの伸長(ストローク長)を制御することにより、前記回転軸の回転に対して、可変可能な制動力を付与するように構成したことを特徴とする請求項1記載の鉄心製造装置。
【請求項3】
前記駆動部はモータによって構成され、前記制御装置は、当該モータの回転数をカウントして前記巻取軸に巻回する鉄心の巻径を計算により求め、該巻径に応じて前記ブレーキ装置の制動力を可変制御することを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の鉄心製造装置。
【請求項4】
前記バンドブレーキは、固定台に固定され、該バンドブレーキを構成するバンド部材を前記回転軸周りに巻き付けるとともに、当該バンド部材の先端部に取り付けたばね部材の先端フックを、前記固定台に具備した係止片に引掛けることによって、前記回転軸に制動力を付加するように構成したことを特徴とする請求項2または請求項3の何れかに記載の鉄心製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻鉄心の製造装置に係り、特に巻鉄心の巻回時における巻取速度の低下防止と、巻き緩みの発生を防止することのできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用変圧器等の静止型誘導電気機器は、鉄心とこれに巻回する巻線から本体部が概略構成される。当該静止誘導電機器のうち、分路リアクトルは、鉄心を持たない場合もあるが、鉄心を持つ場合は、下記特許文献1に記されるように、ギャップ付き鉄心からなる鉄心脚とヨーク鉄心によって鉄心部が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-302114号
【特許文献2】特開2011-222711号
【0004】
ヨーク鉄心に円形ヨークを採用する場合は、前記特許文献1に示されるように、鉄心脚は三角配置され、三角配置された脚鉄心の上下に円形ヨーク(上ヨークと下ヨーク)が配置される。
【0005】
一方、巻線部は、三角配置された鉄心脚に巻回した巻線によって構成される。分路リアクトルは電力用変圧器と比較して、鉄心を通らない漂遊磁束が大きくなるが、細線により構成した転移電線を使用したレヤー巻線を採用することによって、電位分布の改善と漂遊損の低減を図っている。
【0006】
上記のような分路リアクトルを構成する鉄心、特に、ヨーク鉄心の製造方法については上記特許文献2に例示されている。
【0007】
特許文献2の段落[0026]に示すように、ヨーク鉄心を製造する場合は、特許文献2の図3に示すように、鉄心素体からなる巻きコイル材(フープ材)から一定のテンションで薄帯状の鉄心素体を引っ張り出し、巻軸に巻き付けて円形の巻鉄心を一旦製作する。
【0008】
特許文献2のリアクトル装置の場合、ヨーク鉄心が楕円形であるので、一旦製作した円形の巻鉄心に必要な応力を加えることで、楕円形に成形しなおしているが、特許文献1のように、ヨーク鉄心が円形である場合は、応力を加えることによって行う当該成形作業が不要となることは自明である。
【0009】
なお、上記のごとくフープ材から引っ張り出す鉄心素体に一定のテンションを付加する目的は明示されてはいないが、巻軸に巻いて巻鉄心を製造する際に、巻き緩みが発生することを防止するためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
然るに、特許文献2に記載されるように、フープ材から引っ張り出す鉄心素体を一定のテンションで引っ張り出すことは容易ではない。
【0011】
例えば、フープ材の回転軸にベルトを引掛け、一定の力で締め付けることにより、フープ材から引っ張り出される鉄心素体にテンションを加える、所謂、バンドブレーキを用いた方法は容易に想到できるが、この場合、フープ材の巻径が大きいときには大きなテンションが鉄心素体に加わり、フープ材の巻径が小さくなるにつれてテンションが小さく変化してしまう。そのため、回転軸にバンドブレーキによって一定の制動力を付加したとしても、鉄心素体を一定の張力(テンション)で引き出すことができなくなる。
【0012】
また、巻軸側の駆動部(モータ)の運転状態が始動時か定常運転時かの違いによっても、鉄心素体に加わるテンションが変化してしまう。つまり、モータの始動時は、駆動部(モータ)のトルクが大きくなるので、鉄心素体に加わるテンションが大きくなってしまう。他方、モータの定常運転時は、駆動部のトルクが小さくなるので、鉄心素体に加わるテンションが小さくなってしまう。
【0013】
テンションが大きくなると、巻軸への巻取速度を上げることができず、巻取速度が遅くなってしまい、作業性の低下を招く。他方、テンションが小さすぎると、巻軸に巻回する巻鉄心に巻き緩みが発生してしまう。このような問題を解決するためには、フープ材から引っ張り出す鉄心素体に一定のテンションを加えることが必要となるが、容易ではない。
【0014】
本発明は以上の点に鑑み、鉄心の巻取時において、鉄心素体に加わる張力(テンション)を一定に制御する技術を開示することにより、巻鉄心の巻き緩みを生じることなく、かつ、巻取速度を上げて巻取作業の作業性を向上させることのできる鉄心製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の発明は、鉄心素体をロール巻きしたフープ材からなるアンコイラ部と、該アンコイラ部から引き出される前記鉄心素体を案内するガイドローラを備えたガイド部と、該ガイド部を介して供給される前記鉄心素体を巻取軸に巻回する動力を供給する駆動部を備え、前記巻取軸に鉄心素体を巻回する巻取部、および、前記駆動部の駆動を制御する制御部から構成される鉄心製造装置において、前記アンコイラ部は、前記フープ材を上載する載置台を回転可能に構成するとともに、前記載置台から下方へ延びる回転軸にブレーキ装置を具備し、前記回転軸の回転に可変可能な制動力を付加することによって、前記巻取部によって巻回される鉄心素体に一定の張力を加えるよう構成したことに特徴を有する。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のブレーキ装置を電動シリンダを備えたバンドブレーキによって構成し、前記電動シリンダのロッドの伸長(ストローク長)を制御することにより、前記回転軸の回転に対して、可変可能な制動力を付与するように構成したことに特徴を有する。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の駆動部をモータによって構成し、前記制御装置は、前記モータの回転数をカウントして前記巻取軸に巻回する巻鉄心の巻径を計算により求め、巻径に応じて前記ブレーキ装置の制動力を可変制御するように構成したことに特徴を有する。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3の何れかに記載のブレーキ装置を固定台に取り付け、当該ブレーキ装置を構成するバンドブレーキのバンド部材を前記回転軸周りに巻き付けるとともに、該バンド部材の先端部に取り付けたばね部材の先端フックを、前記固定台に具備した係止片に引掛けることによって、前記回転軸に制動力を付加するように構成したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、鉄心素体の引き出し時の張力(テンション)を一定に制御することが可能となり、巻取速度を低下させることなく、巻鉄心の巻き緩みの発生を確実に防止することが可能となる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、鉄心素体の巻取時の張力(テンション)を一定にする制御が、従来の鉄心製造装置の構造を大きく変更するいことなく、安価に実現することが可能となる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、鉄心の巻径に応じて前記ブレーキ装置の制動力を可変できるので、鉄心素体の巻取時の張力(テンション)を一定にするための制御が容易に実現可能となる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、簡易かつ確実に、前記回転台に制動力を付加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の鉄心製造装置の側面図である。
図2】本発明の鉄心製造装置の平面図である。
図3】本発明の鉄心製造装置を構成するアンコイラ部を拡大して示す側面図である。
図4】本発明の鉄心製造装置を構成するアンコイラ部を拡大して示す平面図である。
図5】本発明の鉄心製造装置によって、巻鉄心を製造する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5により説明する。図1は本発明の鉄心製造装置Aを示す側面図であり、図2は鉄心製造装置Aの平面図である。図1図2に示すように、鉄心製造装置Aはアンコイラ部1とガイド部2、および、巻取部3から構成されている。
【0025】
アンコイラ部1は、鉄心素体をロール巻きした図示しないフープ材を装着する装着部4を有し、装着部4はこれを上載固定する載置台5とともに回転可能に構成されている。6は載置台5の回転軸7に制動力を付与するブレーキ装置であり、図示しない制御装置と電気的に接続され、制御装置からの指令信号に従って回転軸7をブレーキ制御する。なお、アンコイラ部1の詳細構造については、本発明の特徴的部分とともに後述する。
【0026】
ガイド部2は、アンコイラ部1の装着部4に装着したフープ材から引き出した薄帯状の鉄心素体の側面に当接して、巻取部3側へ円滑に移動させる複数のガイドローラ8aと、図2に示すように、複数のガイドローラ8a間を結んだ直線の延長線上から横方向(図2の下方向)に一定距離ずれた位置に配置されるガイド片8b、および、ガイド片8bの後段に設置され、鉄心素体を上下方向から回転自在に挟み込む複数の上部ローラ9a及び下部ローラ9bを備えて構成される。
【0027】
巻取部3は、鉄心素体を巻き取る巻取軸10に取り付けられ、当該巻取部3で製作する巻鉄心の内径を確定すべく、巻鉄心の中心から径方向に延出する複数の保持片11と、前記巻鉄心を製作する回転台12と、回転台12の中心から下方へ向けて延出する巻取支軸13、巻取支軸13の下端部に取り付けられる平歯車14、平歯車14と累合し、平歯車14に動力を伝達する伝達歯車15、および、伝達歯車15を先端部に固定し、これを回転させる中心軸16を備えて基台17上に設置されるモータ18を備えて概略構成されている。
【0028】
前記巻取支軸13は、基台17に複数の外側支軸19によって支えられる中央台20の中央部に形成された開口、および、固定台21に固定される中空筒部22内の上部軸受23aおよび下部軸受23bによって回転可能に枢支されており、固定台21は、その中央部に形成した開口に、巻取支軸13の下端部を挿通した状態で、複数の内側支軸24によって基台17上に設置されている。
【0029】
回転台12はその下面に外側回転ローラ12aと内側回転ローラ12bを備え、当該回転ローラ12a,12bを中央台20上に配置することによって、巻取支軸13とともに、これを中心として中央台20上を回転可能に構成されている。
【0030】
次に、本発明の特徴的部分を含むアンコイラ部1の詳細構造について、図3図4を用いて説明する。図3図1に示す鉄心製造装置Aのアンコイラ部1を拡大して示す側面図であり、図4はその平面図である。
【0031】
図3図4において、上面に装着部4を固定した載置台5は、その下面に複数の外側回転ローラ25aおよび内側回転ローラ25bを備えており、当該回転ローラ25a,25bを中央台26上に配置して重量支持することにより、中央台26上を回転軸7を中心に回転自在に構成されている。
【0032】
中央台26は、基台27上に立設する複数の第1の支軸28と第2の支軸29によって支えられており、第2の支軸29は、基台27上の内側に立設する複数の第3の支軸30によって支えられた固定台31上に、その下端部が固定されている。
【0033】
中央台26および固定台31の中心部には開口32,33が形成されており、回転台5の下面に取り付けた固定部材34の中空部に固定された回転軸7が、開口32,33内に回転可能に挿通している。当該回転軸7は、固定台31上の中央位置に固定された中空筒部35の内周側に固定された上部軸受36aおよび下部軸受36bによって回転可能に枢着されており、その下端部には、外周面に一定の幅(厚み)を有する略円盤状の制動部材37が取り付けられている。
【0034】
ブレーキ装置6は固定台31の下面に固定された電動シリンダ38と、電動シリンダ38を構成するロッド39の先端部に具備されるバンドブレーキ40とから構成されている。電動シリンダ38としては、モータとボールねじを組み合わせたものや、ソレノイドを用いたもの、リニアモータを使用したものなど、電気エネルギーを直線運動に変換できるものであれば、どのような構造のものを採用しても良い。
【0035】
バンドブレーキ40は、バンド部材(帯状の摩擦材)41の基端部を電動シリンダ38の伸長するロッド39に取り付け、中央部を前記略円盤状の制動部材37の外周面に沿わせた後、その先端部を、固定台31の下面から下方へ向けて突出する係止片42に、ばね部材43の先端フック43aを介して係止されている。
【0036】
前記ブレーキ装置6は、図示しない制御装置によってロッド39の伸長(ストローク長)を制御できるものであり、該制御装置は、図1に示す巻取部3に備えたモータ18の中心軸16の回転数をカウントすることにより、巻取軸10の回転数を検出し、巻取軸10の回転数から、図1に示す巻取部3にて製作する巻鉄心の巻径を計算によって求め、当該計算値に対応したストローク長でロッド39の進退動作を制御する。
【0037】
つづいて、本発明の鉄心製造装置Aによって、巻鉄心を製造する場合について説明する。図5は、図1に示す鉄心製造装置Aのアンコイラ部1に薄帯状の鉄心素体44aからなるフープ材44を取り付け、当該フープ材44から鉄心素体44aを引き出し、巻取部3の巻取軸10に具備した保持片11周りに巻き取っていく様子を示す側面図である。
【0038】
前記フープ材44はアンコイラ部1の装着部4の外周位置に装着される。これにより、フープ材44はアンコイラ部1の載置台5上に載置される。次に、フープ材44から鉄心素体44aを引き出し、ガイド部のガイドローラ8aの一方側(紙面手前側)の側面に当接した状態で、ガイド片8bの他方側(紙面奥側)の側面に当接するよう、ガイドローラ8aとガイド片8b間をぬう格好ですり抜けさせた後、上部ローラ9aおよび下部ローラ8b間に挟み込むようにして巻取部3側へ引き出す。
【0039】
巻取部3まで引き出した鉄心素体44aはその先端部を保持片11にテープなどの固定手段によって固定しておく。これにより、巻取部3による巻鉄心45の製造準備が完了する。
【0040】
この状態で、巻取部3のモータ18を、図示しない制御装置によって駆動する。モータ18を駆動すると、モータ18の中心軸16が回転し、その先端部に取り付けた伝達歯車15が回転する。
【0041】
当該伝達歯車15には平歯車14が噛み合っており、平歯車14には巻取支軸13がその中心位置に固定されているので、伝達歯車15の回転は平歯車14を介して巻取支軸13に伝達され、巻取支軸13を回転させる。
【0042】
巻取支軸13が上部軸受23aおよび下部軸受23bに枢着された状態で回転すると、巻取支軸13には、回転台12および巻取軸10が固定されているので、回転台12および巻取軸10が巻取支軸13の回転とともに回転する。
【0043】
このとき、回転台12は、その下面に取り付けた回転ローラ12a,12bを中央台20上で走らせることにより、巻取支軸13を中心に中央台20上を回転する。
【0044】
この結果、巻取軸10の保持片11によって先端部が保持された鉄心素体44aは保持片11の周りに順次、巻き取られていく。鉄心素体44aが巻取られる際、鉄心素体44aはアンコイラ部1のフープ材44から巻取部3側へ引き出されるが、引き出された鉄心素体44aは、ガイド部2のガイドローラ8aや上部ローラ9aおよび下部ローラ9bによって円滑に巻取部3側へ送り出されるとともに、ガイド部2のガイド片9bによって、鉄心素体44aが横倒しになることを確実に防止することができる。
【0045】
巻取部3による鉄心素体44aの巻き取りによって、アンコイラ部1の装着部4に装着したフープ材44は、装着部4が固定された載置台5とともに回転する。載置台5は、その下面に取り付けた回転ローラ25a,25bが、図3に示す中央台26上を円周方向に走ることによって、中央台26上で回転軸7を中心に回転する。
【0046】
載置台5の回転は、固定部材34を介して回転軸7に伝達される。回転軸7は、上部軸受36aおよび下部軸受36bに枢着された状態で、中央台26の開口32および固定台31の開口33内を回転する。
【0047】
回転軸7の下端部には一定の厚み寸法を有する略円盤状の制動部材37が取り付けられている。また、制動部材37の外周面には図4に示すように、ブレーキ装置6を構成するバンドブレーキ40のバンド部材41が巻き付けられており、当該バンド部材41の基端部は、ブレーキ装置6の固定台31下に固定された電動シリンダ38のロッド39に接続され、その先端部は、ばね部材43の先端フック43aを利用して、固定台31下面から下方へ向けて突出する係止片42に係止されている。
【0048】
これにより、回転軸7の回転動作は、バンド部材41と制動部材37間の摩擦力による制動力が付加された状態となる。この結果、装着部4に装着された図5に示すフープ材44から引き出される鉄心素体44aには、前記バンド部材41と制動部材37間の摩擦力に応じたテンション(張力)が加えられた状態となる。
【0049】
そして、アンコイラ部1のフープ材44から巻取部3へ鉄心素体44aを引き出す過程において、巻取部3で製作される図5に示す巻鉄心45の巻き始めは、アンコイラ部1の制動部材37とバンド部材41間の静止摩擦力によって、巻取部3に具備するモータのトルクが大きくなる。
【0050】
このとき、制動部材37とバンド部材41間の摩擦力が大きすぎると、巻取部3による巻鉄心45の巻取速度が低下してしまい、作業性が低下してしまう。
【0051】
そこで、本発明では、巻取部3による巻鉄心45の巻き始め、換言すれば、巻取部3に具備するモータ18の始動時には、アンコイラ部1に取り付けたブレーキ装置6を構成する電動シリンダ38のロッド39の伸長(ストローク長)を長くして、ロッド39を進出させ、制動部材37とバンド部材41間の摩擦力(制動力)を小さくする。
【0052】
具体的には、図示しない制御装置によって、モータ18の回転軸16の回転数をカウントし、当該カウント値から巻取軸10の回転数をカウントする。そして、巻取軸10の回転数と保持片11の長さの関係から、保持片11周りに巻回する巻鉄心45の巻径を計算により求め、当該巻径に応じたストローク長で、電動シリンダ38のロッド39のストローク長(進出する長さ)を長くする。
【0053】
次に、巻鉄心44の巻回動作が進行し、モータ18が定常運転状態になると、制動部材37とバンド部材41間の摩擦力が始動時と比較して小さくなる。このようにして摩擦力が小さくなりすぎると、巻鉄心3の巻回作業に巻き緩み(弛み)が発生してしまい問題である。
【0054】
そこで、本発明では、モータ18が定常運転となったときには、アンコイラ部1に取り付けたブレーキ装置6を構成する電動シリンダ38のロッド39のストローク長(進出する長さ)を短くして、ロッド39を後退させ、制動部材37とバンド部材41間の摩擦力(制動力)を大きくする。
【0055】
具体的には、図示しない制御装置によって、モータ18の回転軸16の回転数をカウントし、当該カウント値から巻取軸10の回転数をカウントする。そして、巻取軸10の回転数と保持片11の長さの関係から、保持片11周りに巻回する巻鉄心45の巻径を計算により求め、当該巻径に応じたストローク長となるように、電動シリンダ38のロッド39のストローク長を短くする。
【0056】
ストローク長の調整は、アンコイラ部1から引き出す鉄心素体44aの張力Fが一定となるように調整する。巻取部3によって製作される巻鉄心45の直径をDとした場合、張力Fは下記[数1]にて表現される。
【0057】
【数1】
【0058】
そこで、あらかじめ、巻鉄心45の所望する巻取速度が得られ、かつ、巻き緩みが生じない張力Fを決定しておき、モータ18のトルクTを電動シリンダ38のロッド39のストローク長で調整することにより、鉄心素体44aの張力Fを一定とする。
【0059】
このような張力Fの一定制御は、上述した巻鉄心45の巻き始めに対応するモータ18の始動時と、モータ18が定常運転状態となった時点のみならず、常時、鉄心素体44aに一定の張力Fが付加されるよう制御がなされる。
【0060】
その後、巻取部3によって鉄心素体44aを巻取っていき、所定の巻回数、巻回することで巻回作業が終了したら、図示しない制御装置からモータ18に停止指令を出力し、モータ18の駆動を停止する。
【0061】
モータ18の停止時においても、アンコイラ部1のフープ材44から引き出される鉄心素体44aには、前述のごとく、ブレーキ装置6によって一定の張力Fが加わるよう制御されているので、巻鉄心45の巻終わり時においても、巻鉄心45に巻き緩みが発生することはない。
【0062】
巻鉄心45の巻回作業が終了したら、鉄心素体44aを既知の切断手段により切断して、巻鉄心45の製作を終了する。
【0063】
以上説明したように、本発明の鉄心製造装置は、アンコイラ部1のフープ材44から引き出す鉄心素体44aの張力を常に一定に制御することができるので、巻取部3による巻鉄心45の巻き始め時の、巻鉄心の巻径が小さいときにおいて、鉄心素体44aの張力が大きくなってしまうことにより、巻鉄心の巻取速度が遅くなって、巻回作業の作業性が低下してしまう問題の発生を防止できる。
【0064】
また、巻鉄心45の巻回動作がある程度進み、巻鉄心45の巻径が大きくなってきたときにおいて、鉄心素体44aの張力が小さくなってしまうことによる、巻鉄心45の巻き緩み問題の発生を確実に防止することができる。
【0065】
さらに、鉄心素体44aの張力の一定制御は、既知のバンドブレーキと電動シリンダの組み合わせによって実現できるので、従前の鉄心製造装置の構造を大きく変更することなく、低コストかつ低負担にて実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
あらゆる電気機器に用いられる巻鉄心の製造装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 アンコイラ部
2 ガイド部
3 巻取部
4 装着部
5 載置台
6 ブレーキ装置
7 回転軸
8a ガイドローラ
8b ガイド片
9a 上部ローラ
9b 下部ローラ
10 巻取軸
11 保持片
12 回転台
12a,25a 外側回転ローラ
12b,25b 内側回転ローラ
13 巻取支軸
14 平歯車
15 伝達歯車
16 中心軸
17,27 基台
18 モータ
19 外側支軸
20,26 中央台
21,31 固定台
22,35 中空筒部
23a,36a 上部軸受
23b,36b 下部軸受
24 内側支軸
28 第1の支軸
29 第2の支軸
30 第3の支軸
32,33 開口
34 固定部材
37 制動部材
38 電動シリンダ
39 ロッド
40 バンド部材
41 バンドブレーキ
42 係止片
43 ばね部材
43a 先端フック
44 フープ材
44a 鉄心素体
45 巻鉄心
A 鉄心製造装置
図1
図2
図3
図4
図5