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特開2022-12769エッチング装置、およびエッチング方法
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  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図1
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図2
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図3
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図4
  • 特開-エッチング装置、およびエッチング方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012769
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】エッチング装置、およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220107BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H01L21/302 101E
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114843
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 康嗣
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB12
2G084CC14
2G084CC33
2G084FF02
5F004AA11
5F004BA03
5F004BB14
5F004BB18
5F004DA18
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB08
(57)【要約】
【課題】エッチング処理対象の厚さを目標の厚さ分布面にするための加工時間を短縮する。
【解決手段】シリコンウェーハ1上のエッチング処理対象を除去するエッチング装置は、第1のエッチングと、第1のエッチングでは除去できない空間波長成分の除去が可能な第2のエッチングが行われるとともに、第1のエッチングによる取代分布が、第1のエッチングによってエッチング可能な最大取代分布以下に設定されるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング処理対象を多段局所ドライエッチングによって所定の目標厚さ分布面まで除去するエッチング装置であって、
所定の空間波長成分の除去が可能な第1のエッチングと、
上記第1のエッチングでは除去できない空間波長成分の除去が可能な第2のエッチングが行われるように構成されるとともに、
上記第1のエッチングによる取代分布が、第1のエッチングによって除去可能な最大取代分布以下であって、第1のエッチングによって除去できない空間波長成分の回帰面が、目標厚さ分布面と平行になるように第1のエッチングによる除去を行うとした場合の最大取代分布よりも大きな取代分布、かつ、第2のエッチングだけによって目標厚さ分布面と平行な分布面を最小取代分布で形成するとした場合の第1のエッチングによる取代分布よりも大きな取代分布に設定され、上記第2のエッチングによる取代分布が、上記第1のエッチングによって除去しない部分を除去対象と設定されるように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
請求項1のエッチング装置であって、
上記エッチング処理対象の表面に沿って相対的に移動しながらエッチングガスを噴出するノズルを備え、
上記第1および第2のエッチングによる取代分布は、上記エッチング処理対象の厚さの測定結果に基づいて取得された厚さ分布面に基づいて、上記エッチング処理対象と上記ノズルとの相対的な走査速度が決定されることにより設定されることを特徴とするエッチング装置。
【請求項3】
請求項2のエッチング装置であって、
上記第1のエッチングによる取代分布を設定するための上記走査速度が決定された後に、上記第2のエッチングによる取代分布を設定するための上記走査速度が決定されるように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記第1のエッチングが行われた後に、第2のエッチングが行われるように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記第2のエッチングが行われた後に、第1のエッチングが行われるように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記エッチング処理対象の表面に沿って相対的に移動しながらエッチングガスを噴出するノズルを備え、
上記第1のエッチングが行われる場合と、上記第2のエッチングが行われる場合とで、上記ノズルの開口径、上記ノズルの開口部とエッチング処理対象との距離、ノズルの周囲に配置された排気手段の排気条件、エッチング処理対象の加工領域および/または排気ダクトの周辺に供給する不活性ガスの流量、放電管に供給される非活性のプロセスガスから分岐させて、エッチング処理対象の加工領域および/または排気ダクトの周辺に供給する非活性のプロセスガスの流量、上記ノズルの開口形状、上記ノズルに接続された放電管に供給するガスの流量、および電磁波発生器から出力される電磁波の強さのうち少なくとも何れかが異なることを特徴とするエッチング装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記第1のエッチングによる取代分布が、上記エッチング処理対象の表面と、目標厚さ分布面に上記第2のエッチングの最低取代分布を加えた平行分布面との、差分の分布を除去対象として、上記第1のエッチングの取代分布において上記エッチング処理対象の全面内すべての位置の取代が上記差分の分布を超えない取代に設定され、上記第2のエッチングによる取代分布が、上記第1のエッチングによって除去しない部分を除去対象と設定されるように構成されていることを特徴とするエッチング装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち何れか1項のエッチング装置であって、
上記第1のエッチング、および上記第2のエッチングの少なくとも一方は、複数回のエッチング動作によって行われることを特徴とするエッチング装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のうち何れか1項のエッチング装置を用いたエッチング方法であって、
上記第1のエッチングが行われる第1のエッチング工程と、
上記第2のエッチングが行われる第2のエッチング工程と、
を有することを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング処理対象の厚さを目標の厚さにするためなどに用いられるエッチング装置、およびそのようなエッチング装置を用いたエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板における半導体層の厚さを目標の厚さとその分布面(以下「厚さ分布面」という)にするために、例えば、まず、SOIウェーハのアクティブシリコンレイヤをエッチングすることにより厚さ分布面の凹凸を除去し、次に、要求される膜厚にまでエッチングすることにより、加工の高精度化、および高スループット化を図る技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-128079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように2段階のエッチングを行っても、必ずしもスループットを大幅に向上させられるとは限らない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、エッチング処理対象の厚さを目標の厚さ分布面にするための加工時間を容易に短縮できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
エッチング処理対象を多段局所ドライエッチングによって所定の目標厚さ分布面まで除去するエッチング装置であって、
所定の空間波長成分の除去が可能な第1のエッチングと、
上記第1のエッチングでは除去できない空間波長成分の除去が可能な第2のエッチングが行われるように構成されるとともに、
上記第1のエッチングによる取代分布が、第1のエッチングによって除去可能な最大取代分布以下であって、第1のエッチングによって除去できない空間波長成分の回帰面が、目標厚さ分布面と平行になるように第1のエッチングによる除去を行うとした場合の最大取代分布よりも大きな取代分布、かつ、第2のエッチングだけによって目標厚さ分布面と平行な分布面を最小取代分布で形成するとした場合の第1のエッチングによる取代分布よりも大きな取代分布に設定され、上記第2のエッチングによる取代分布が、第1のエッチングによって除去しない部分を除去対象と設定されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、第2のエッチングによる取代を少なく抑えて、加工時間を短縮することが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エッチング処理対象の厚さを目標の厚さ分布面にするための加工時間を容易に短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エッチング装置の構成を模式的に示す模式図である。
図2】第1段階の加工前の半導体層の厚さ分布面を示す模式図である。
図3】第1段階の加工後の半導体層の厚さ分布面を示す模式図である。
図4】比較例の第1段階の加工後の半導体層の厚さ分布面を示す模式図である。
図5】変形例の第1段階の加工後の半導体層の厚さ分布面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(エッチング装置の概略構成)
図1はダウンストリームプラズマエッチングを用いたエッチング装置の一例を示すものである。シリコンウェーハ1は、ゲートバルブ10を有するチャンバCの中に収容されたステージ2の上に載置されるようになっている。ステージ2はX軸駆動モータ3、およびY軸駆動モータ3’の作用によりX軸、Y軸方向(図1における左右方向である主走査方向、紙面に垂直な方向である副走査方向)への駆動が可能であり、それによりシリコンウェーハ1はX軸、Y軸方向への移動が可能となっている。ここで、以下の説明では、便宜上、シリコンウェーハ1に対して相対的にノズル5や層厚測定装置11が移動するとして説明する。なお、上記のような直線方向の走査に限らず、例えばシリコンウェーハ1を回転させるようにして、円周方向が主走査方向、半径(または直径)方向の移動が副走査方向となるようにしてもよい。
【0012】
シリコンウェーハ1の上部におけるチャンバC内には、2台のプラズマ装置の一方と他方とに設けられたノズル5’・5”が設置されている。上記ノズル5’はシリコンウェーハ1側のノズル開口径が相対的に大径に設定される一方、ノズル5”は、シリコンウェーハ1側のノズル開口径が相対的に小径に設定されている。ここで、上記2台のプラズマ装置はノズル5’・5”の開口径の相違に関する点を除いて基本的に同じ構成を有しているが、図1および以下においては、便宜上、ノズル5’が設けられたプラズマ装置だけに着目して説明する。
【0013】
上記ノズル5’はプラズマ発生用の放電管4の下端に設けられている。上記放電管4の上端にはプロセスガス供給ライン8(プロセスガス供給装置)が接続されている。また放電管4のプラズマ発生領域6に相当する部分にはマイクロ波電源7が配置されている。上記放電管4、ノズル5、プラズマ発生領域6、およびマイクロ波電源7等によってプラズマ装置が構成されている。なお、プラズマ装置は全体が2台設けられるのに限らず、ノズル5’・5”以外の部分やそのうちの一部が共通に設けられたりしてもよい。また、チャンバCが2つ設けられ、それぞれにノズル5’または5”が設けられたプラズマ装置が設けられ、上記2つのチャンバCの間をウェ-ハ1が移動するようにされるなどしてもよい。
【0014】
チャンバCには、また、シリコンウェーハ1上の半導体(エッチング処理対象)層の厚さを測定する層厚測定装置11が設けられている。
【0015】
エッチングを行う際には、上記チャンバCに接続される真空ポンプ(図示せず)を稼動した状態で、プロセスガスである六フッ化硫黄ガスをプロセスガス供給ライン8より導入し、プラズマ装置を稼動させて放電管4の中で活性種ガスであるフッ素ラジカルを発生させ、ノズル5からシリコンウェーハ1に照射する。シリコンウェーハ1は上記放電管4のノズル5から照射される活性種ガスによりエッチング作用を受ける。ここで、活性種ガスはその下に位置するシリコンウェーハの部分に局部的に作用するが、シリコンウェーハが上記のようにXY軸方向に駆動されるので、それによりウェーハ全面が加工される。より詳しくは、シリコンウェーハ1はステージ2に接続したX軸駆動モータ3、Y軸駆動モータ3’の駆動により、ノズル5が相対的に主走査方向に往復しながら、副走査方向に所定のピッチずつ移動する。
【0016】
上記ステージ2の駆動制御や、プラズマ装置の動作制御、層厚測定装置11による半導体層の厚さの測定などは、制御コンピュータ9によって行われるようになっている。
【0017】
(厚さ制御)
上記のようなエッチング装置で、例えばシリコン基板等の支持基板上に絶縁膜を介して半導体層が形成されたシリコンウェーハ1について、上記半導体層の層厚が、領域ごとに所定の層厚になるようにエッチング処理される場合の動作の例を説明する。
【0018】
(1) まず、エッチング前のシリコンウェーハ1における半導体層の全域の層厚が層厚測定装置11によって測定される。次に、シリコンウェーハ1の領域ごとに、その測定結果と予め設定された目標厚とに基づいてエッチング処理による取代が求められる。
【0019】
さらに、合計の取代が上記取代になるように、各ノズル5’・5”の取代が求められる。すなわち、開口径が大径のノズル5’による、所定の空間波長成分の除去が可能な第1のエッチングでの取代と、開口径が小径のノズル5”による、上記第1のエッチングでは除去できない空間波長成分の除去が可能な第2のエッチングでの取代が求められる。より詳しくは、上記第1のエッチングによる取代分布は、第1のエッチングによって除去可能な最大取代分布以下であって、第1のエッチングによって除去できない空間波長成分の回帰面が、目標厚さ分布面と平行になるように第1のエッチングによる除去を行うとした場合の最大取代分布よりも大きな取代分布、かつ、第2のエッチングだけによって目標厚さ分布面と平行な分布面を最小取代分布で形成するとした場合の第1のエッチングによる取代分布よりも大きな取代分布に設定される。なお、上記の回帰面は、例えば、目標厚さ分布面の面形状と第1のエッチングでは除去できない空間波長成分の厚さデータとから最小二乗法により求められる面など、一般的な算出法による回帰面を適宜選択できる。また、上記の最低取代分布は、エッチング処理対象が載置されたステージを最高速度で走査させエッチング加工した際に除去される取代分布とするほか、これに安定生産を行う上で必要な余裕取代分布を加えた取代分布としてもよい。
【0020】
ここで、上記第1のエッチングによる取代分布が、エッチング処理対象の表面と、目標厚さ分布面に上記第2のエッチングの最低取代分布を加えた平行分布面との、差分の分布を除去対象として、上記第1のエッチングの取代分布において上記エッチング処理対象の全面内すべての位置の取代が上記差分の分布を超えない取代に設定され、上記第2のエッチングによる取代分布が、上記第1のエッチングによって除去しない部分を除去対象と設定するように構成してもよい。
【0021】
また、上記取代分布に応じて、シリコンウェーハ1に対する各ノズル5’・5”の相対的な走査速度マップが制御コンピュータ9によって作成される。上記相対的な走査速度は、層厚が相対的に厚い部分(取代が大きい部分)では低速で、相対的に薄い部分(取代が小さい部分)では高速で走査するように制御コンピュータ9によって決定される。
【0022】
なお、上記のような第1のエッチングによる取代分布の算出または走査速度の決定、および第2のエッチングによる取代分布の算出または走査速度の決定の順序は、特に限定されないが、通常は、例えばこの順序で行うことによって演算が容易になると考えられる。
【0023】
(2) 上記演算の結果、シリコンウェーハ1の厚さ分布面が例えば図2に示すような凹凸形状を有していたとし、目標厚に加工されたときの厚さ分布面が、同図に示す目標厚さ分布面Sとすると、まず、大径のノズル5’によって、図3に示すように、凹凸の各谷の部分が目標厚さ分布面Sに近づくように第1段階のエッチング(第1のエッチング)がなされる。すなわち、谷の部分の上記目標厚さ分布面Sからの厚さが厚い部分ほど多く(山の部分および谷の部分が上記目標厚さ分布面Sに近づくように)エッチングされる。このとき、上記各谷の部分の最下点が、目標厚さ分布面Sに後述の第2段階のエッチング(第2のエッチング)における最低取代量を加えた表面位置(以下「中間目標位置S’」という)を下回らず、且つ中間目標位置S’に極力近づくようにエッチングを行うことで、第1のエッチングにおける除去(エッチング)体積を最大化し、最も高い除去効率、すなわち多段局所ドライエッチング加工全体として最短の加工時間を実現することが可能となる。
【0024】
(3) 次に、小径のノズル5”によって、図3に示す第1のエッチングによって形成されたシリコンウェーハ1の厚さ分布面が目標厚さ分布面Sに沿った位置になるまで第2のエッチングがなされることにより、すなわち、特に上記第1のエッチングでは除去できない空間波長成分が除去されることにより、シリコンウェーハ1の厚さ分布面が全面的に目標厚さ分布面Sに沿った形状となる。なお、上記目標厚さ分布面Sに沿った形状は、所定の精度の範囲で目標厚さ分布面Sに一致する形状でもよいし、さらに仕上げ加工によって除去され得る多少の取代分布が残された形状でもよい。
【0025】
ここで、上記(2)の第1のエッチングによって形成される図3に示すような厚さ分布面の回帰面は同図に破線で示すように必ずしも平坦とはならない。しかしながら、このように各谷の部分が目標厚さ分布面Sに近づくように形成されることによって(上記各谷の部分の最下点が、目標厚さ分布面Sに第2のエッチングにおける最低取代量を加えた表面位置(中間目標位置S’)を下回らず、且つ中間目標位置S’に極力近づくように形成されることによって)、例えば図4に示すように第1のエッチングによって形成される厚さ分布面の回帰面が平坦な、いわゆる平坦化加工が第1段階でなされる場合に比べて、第2のエッチングによる取代が少なく抑えられることになり、加工時間を短縮できることになる。
【0026】
なお、上記実施形態では、第1のエッチングおよび第2のエッチングの走査速度マップを作成した後、第1段階として、大径のノズル5’による第1のエッチングを行った後に、第2段階として、小径のノズル5”による第2のエッチングを行う例にて説明したが、それ以外にも、工順を逆にして小径のノズル5”によって第2のエッチングを行った後、大径のノズル5’によって第1のエッチングを行うことも可能である。
【0027】
より具体的には、例えば、図5に示すように、まず、小径のノズル5”による第2のエッチングによって、大径のノズル5’による第1のエッチングでは除去できない空間波長成分の除去が行われた後に、大径のノズル5’による第1のエッチングによって、その大径のノズル5’によって可能な空間波長成分の除去が行われようにしてもよい。
【0028】
すなわち、各ノズル5’・5”によって行われるエッチングの順序には直接係わらず、これらのノズル5’・5”によるエッチングの取代が上記のように設定されることによって、加工時間を容易に短縮することができる。
【0029】
上記のように、上記小径のノズル5”による取代を少なく抑えることによって、全体の処理時間を容易に短くすることができる。すなわち、小径のノズル5”は大径のノズル5’と比較してそのノズルの開口径が小さく活性種ガスの噴出量が少ないため、より細かい凹凸の除去ができるがエッチングレートは低くなる。そのため、大径のノズル5’によるエッチング量を最大限とし、小径のノズル5”によるエッチング量を最小限とすることによって全体の処理時間を容易に短くすることができる。
【0030】
また、上記実施形態においては、ノズル5’・5”の開口径が異なる例にて説明したが、それ以外にも、複数のノズル開口部(ウェーハ側に開口したノズルの先端部)とシリコンウェーハ1との距離を異ならせるなど、特開2016-081948号公報等にて開示されるような公知の技術により、複数のノズルのエッチング特性を異ならせることでも本発明を実施することができる。より具体的には、エッチングによって除去可能な空間波長成分と除去効率が異なる複数種類のエッチングとしては、上記第1のエッチングが行われる場合と、上記第2のエッチングが行われる場合とで、上記ノズルの開口部とエッチング処理対象との距離、ノズルの周囲に配置された排気手段の排気条件、エッチング処理対象の加工領域および/または排気ダクトの周辺に供給する不活性ガスの流量、放電管に供給される非活性のプロセスガスから分岐させて、エッチング処理対象の加工領域および/または排気ダクトの周辺に供給する非活性のプロセスガスの流量、上記ノズルの開口形状、上記ノズルに接続された放電管に供給するガスの流量、および電磁波発生器から出力される電磁波の強さのうち少なくとも何れかが異なるようにしてもよい。
【0031】
ここで、第1のエッチングによる取代分布が、第1のエッチングによって除去可能な最大取代分布に設定される場合に、最も高い除去効率を得られることになるが、これに限らず、上記最大取代分布を第1のエッチングによる取代分布の上限として、例えば図4に示したような、第1のエッチングによって除去できない空間波長成分の回帰面が、目標厚さ分布面と平行になるように第1のエッチングによる除去を行うとした場合の最大取代分布よりも大きな取代分布に設定され、また、例えば特許文献1に示されるような、第2のエッチングだけによって目標厚さ分布面と平行な分布面を最小取代分布で形成するとした場合の第1のエッチングによる取代分布よりも大きな取代分布に設定されることが可能であり、これによって、より高い除去効率が得られ、加工時間の短縮を図ることが容易にできる。
【0032】
(その他の事項)
なお、上記のように小径のノズル5”でのエッチングによる取代を小さく抑えられるようにするための具体的な制御は、上記に限らず、等価や同等な種々の演算、制御が行われるようにしてもよい。例えば、上記のように凹凸の各谷の部分が目標厚さ分布面Sに近づくようにするのに限らず、高い空間波長成分の振幅(例えば図2のA、B)が小さい部分ほど、局所的な平均厚さ(例えば図3の破線部分のC、D:低い空間波長成分の形状)が目標厚さ分布面Sに近づくように制御するなどしてもよい。
【0033】
また、上記の例ではシリコンウェーハ1上に形成された半導体層を目標の厚さに加工する例を示したが、これに限らず、シリコン、石英等の基板自体をエッチング処理対象として目標の厚さに加工してもよい。
【0034】
また、基板上に形成された膜等がエッチング処理対象とされる場合、そのエッチング対象は、シリコン(SOI)等の半導体膜や、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の絶縁膜、タンタル等の導電膜などであってもよい。
【0035】
また、エッチング処理対象に合わせ、プロセスガスは、適宜四フッ化炭素や三フッ化窒素などの他のガスであってもよい。
【0036】
また、基板全体や半導体層などの厚さや平行度・平坦度等に目標値をもって加工をしてもよい。すなわち、図2等では模式的に目標厚さ分布面Sが平面的に描かれているが、種々の厚さまたは形状(例えばレンズ形状、特定・任意の形状など)となる目標厚さ分布面Sが設定されればよい。
【0037】
また、上記第1、第2段階のエッチングは、それぞれ1回のエッチング走査(エッチング動作)によって行われるのに限らず、少なくとも一方が複数回のエッチング走査によって行われてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 シリコンウェーハ
2 ステージ
3 X軸駆動モータ
3’ Y軸駆動モータ
4 放電管
5’ ノズル
5” ノズル
6 プラズマ発生領域
7 マイクロ波電源
8 プロセスガス供給ライン
9 制御コンピュータ
10 ゲートバルブ
11 層厚測定装置
図1
図2
図3
図4
図5