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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127690
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】演奏検出システムおよび鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G10H1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025823
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三吉 俊允
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕史
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】播本 寛
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BC04
5D478BC24
5D478BD01
(57)【要約】
【課題】可動部材の変位を検出するための要素が設置される基板を小型化する。
【解決手段】鍵盤楽器は、演奏動作により変位する可動部材に設置された被検出コイルと、検出基板50Mと、検出基板50Mとは別体の制御基板20と、配線部30とを具備する。検出基板50Mには、被検出コイルに対向する検出コイルと、検出コイルと被検出コイルとの距離に応じた検出信号を生成する検出回路51とが設置される。制御基板20には、可動部材の位置を表す変位データを検出信号から生成する制御IC21が設置される。配線部30は、検出基板50Mから制御基板20に検出信号を伝送する配線を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏動作により変位する可動部材に設置され、磁性体または導電体で形成された被検出部と、
前記被検出部に対向する検出コイルと、前記検出コイルと前記被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、
前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記可動部材の位置を表す変位データを前記検出信号から生成する制御ICが設置された制御基板と、
前記検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部と
を具備する演奏検出システム。
【請求項2】
前記制御基板は、前記検出基板に対する平面視で当該検出基板に重ならない
請求項1の演奏検出システム。
【請求項3】
前記被検出部は、前記検出コイルに対向する被検出コイルを含む
請求項1または請求項2の演奏検出システム。
【請求項4】
演奏動作により変位する複数の可動部材にそれぞれ設置され、磁性体または導電体で形成された複数の被検出部と、
前記複数の被検出部にそれぞれ対応する複数の検出コイルと、前記複数の検出コイルの各々と当該検出コイルに対応する被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、
前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記複数の検出コイルの各々について生成される前記検出信号から、当該検出コイルに対応する前記可動部材の位置を表す変位データを生成する制御ICが設置された制御基板と、
前記各検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部と
を具備する演奏検出システム。
【請求項5】
前記検出基板は、相互に別体である第1検出基板と第2検出基板とを含み、
前記複数の検出コイルは、前記第1検出基板に設置された複数の第1検出コイルと、前記第2検出基板に設置された複数の第2検出コイルとを含み、
前記検出回路は、前記第1検出基板に設置された第1検出回路と、前記第2検出基板に設置された第2検出回路とを含む
請求項4の演奏検出システム。
【請求項6】
前記第1検出回路が生成する検出信号を前記第1検出基板から前記第2検出基板に伝送する中継部をさらに具備し、
前記配線部は、前記第1検出基板から前記中継部を介して前記第2検出基板に伝送される検出信号と、前記第2検出回路が生成する検出信号とを、前記制御基板に伝送する
請求項5の演奏検出システム。
【請求項7】
複数の鍵と、
前記複数の鍵にそれぞれ対応して設置され、磁性体または導電体で形成された複数の被検出部と、
前記複数の被検出部にそれぞれ対応する複数の検出コイルと、前記複数の検出コイルの各々と当該検出コイルに対応する被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、
前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記複数の検出コイルの各々について生成される前記検出信号から、当該検出コイルに対応する前記鍵の位置を表す変位データを生成する制御ICが設置された制御基板と、
前記各検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部と、
前記各鍵の変位データに応じた音響を再生装置に再生させる再生制御部と
を具備する鍵盤楽器。
【請求項8】
前記複数の鍵と前記検出基板と前記制御基板とを支持する支持体
をさらに具備する請求項7の鍵盤楽器。
【請求項9】
前記検出基板は、前記複数の鍵の下方において前記支持体に固定され、
前記制御基板は、前記複数の鍵の後端側において前記支持体に固定される
請求項8の鍵盤楽器。
【請求項10】
前記複数の鍵にそれぞれ対応して前記複数の鍵の下方に設置され、当該鍵の変位に応じて動作する複数の錘部材をさらに具備し、
前記検出基板は、前記複数の錘部材の下方において前記支持体に固定される
請求項8または請求項9の鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、演奏動作を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者による演奏動作に応じた可動部材の変位を検出するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、鍵盤楽器の鍵の変位を検出するセンサが回路基板に設置された構成が開示されている。回路基板には、各センサによる検出信号を処理する集積回路が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-180074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、複数のセンサと集積回路とが1個の回路基板に設置されるため、回路基板の小型化が制限されるという課題がある。以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、可動部材の変位を検出するための要素が設置される基板を小型化することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る演奏検出システムは、演奏動作により変位する可動部材に設置され、磁性体または導電体で形成された被検出部と、前記被検出部に対向する検出コイルと、前記検出コイルと前記被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記可動部材の位置を表す変位データを前記検出信号から生成する制御ICが設置された制御基板と、前記検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部とを具備する。
【0006】
本開示の他の態様に係る演奏検出システムは、演奏動作により変位する複数の可動部材にそれぞれ設置され、磁性体または導電体で形成された複数の被検出部と、前記複数の被検出部にそれぞれ対応する複数の検出コイルと、前記複数の検出コイルの各々と当該検出コイルに対応する被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記複数の検出コイルの各々について生成される前記検出信号から、当該検出コイルに対応する前記可動部材の位置を表す変位データを生成する制御ICが設置された制御基板と、前記各検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部とを具備する。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る鍵盤楽器は、複数の鍵と、前記複数の鍵にそれぞれ対応して設置され、磁性体または導電体で形成された複数の被検出部と、前記複数の被検出部にそれぞれ対応する複数の検出コイルと、前記複数の検出コイルの各々と当該検出コイルに対応する被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記複数の検出コイルの各々について生成される前記検出信号から、当該検出コイルに対応する前記鍵の位置を表す変位データを生成する制御ICが設置された制御基板と、前記各検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部と、前記各鍵の変位データに応じた音響を再生装置に再生させる再生制御部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における鍵盤楽器の平面図である。
図2】鉛直方向の上方からみた鍵盤装置の平面図である。
図3】鉛直方向の下方からみた鍵盤楽器の平面図である。
図4】鍵盤ユニットの側面図である。
図5】共振回路の回路図である。
図6】鍵盤楽器の電気的な構成を例示するブロック図である。
図7】入力側フィルタの構成を例示する回路図である。
図8】駆動回路の構成を例示するブロック図である。
図9】出力側フィルタの構成を例示する回路図である。
図10】制御ICの内部的な構成を例示するブロック図である。
図11】第2実施形態におけるコイルの平面図である。
図12】第3実施形態における鍵盤ユニットの側面図である。
図13】変形例に係る打弦機構の模式図である。
図14】変形例に係るペダル機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A:第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る鍵盤楽器100の平面図である。鍵盤楽器100は、鍵盤装置11と筐体12と音源装置13と再生装置14とを具備する電子楽器である。筐体12は、鍵盤装置11と音源装置13と再生装置14とを支持および収容する中空の構造体である。
【0010】
鍵盤装置11は、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含む複数の鍵41を具備する。複数の鍵41の各々は、利用者による演奏動作(例えば押鍵および離鍵)に応じて鉛直方向に変位する操作子である。以下の説明では、水平面内で相互に直交するX軸とY軸とを想定する。X軸は、利用者の左右の方向に延在し、Y軸は、利用者の前後の方向に延在する。Y軸の方向に長尺な複数の鍵41が、X軸に沿って配列する。複数の鍵41の配列により鍵盤が構成される。鍵盤装置11は、複数の鍵41の各々について鉛直方向における当該鍵41の位置を表す変位データを生成する。
【0011】
音源装置13は、変位データに応じた音響信号を生成する。具体的には、音源装置13は、相異なる鍵41に対応する複数の音高のうち利用者が押鍵した鍵41に対応する音高の音響を表す音響信号を生成する。再生装置14は、音響信号が表す音響を再生するスピーカである。なお、鍵盤楽器100とは別体で構成された再生装置14(例えばヘッドホンまたはイヤホン)を有線または無線により鍵盤楽器100に接続してもよい。
【0012】
図2は、鍵盤装置11を鉛直方向の上方からみた平面図であり、図3は、鍵盤装置11を鉛直方向の下方からみた平面図である。鍵盤装置11は、複数の鍵盤ユニットU(UL,UM,UH)と制御基板20と配線部30と中継部31Lと中継部31Hとを具備する。複数の鍵盤ユニットUは相互に別体で構成される。
【0013】
複数の鍵盤ユニットU(UL,UM,UH)は、X軸に沿って相互に連結される。鍵盤ユニットUMは、鍵盤ユニットULと鍵盤ユニットUHとの間に位置する。鍵盤ユニットULは、低音域に対応する複数の鍵41を具備する。鍵盤ユニットUMは、中音域に対応する複数の鍵41を具備する。鍵盤ユニットUHは、高音域に対応する複数の鍵41を具備する。なお、以下の説明においては、各鍵盤ユニットUが同数の鍵41を具備する構成を便宜的に例示するが、鍵盤ユニットU毎に鍵41の総数が相違する形態も想定される。
【0014】
図4は、鍵盤ユニットUの構成を例示する側面図である。複数の鍵盤ユニットUの各々の構成は共通する。図4には、鍵盤ユニットUMの構成が便宜的に図示されている。鍵盤ユニットUは、複数の操作機構40と検出基板50と支持体60とを具備する。
【0015】
複数の操作機構40の各々は、利用者による演奏動作に応じて動作する機構であり、鍵41(白鍵または黒鍵)と錘部材42と被検出基板43とを具備する。複数の鍵41の各々に対応して錘部材42と被検出基板43とが設置される。すなわち、鍵盤ユニットUは、錘部材42と被検出基板43とを鍵41毎に具備する。支持体60は、複数の操作機構40と検出基板50とを支持する構造体(フレーム)である。
【0016】
鍵41は、前端部41aと後端部41bとを含む長尺状の部材であり、連結部61を支点として支持体60に支持される。前端部41aは、鍵盤楽器100を演奏する利用者に近い端部であり、後端部41bは、前端部41aとは反対側の端部である。連結部61は、後端部41bと支持体60とを連結する弾性変形可能な部分である。連結部61を支点として鍵41が回動することで、鍵41の前端部41aは鉛直方向に変位する。変位データは、鉛直方向における前端部41aの位置を表すデータである。また、鍵41には、鉛直方向の下方に突出する突起部44が設置される。
【0017】
錘部材42は、前端部42aと後端部42bとを含む長尺状の部材(カウンターウェイト)である。各鍵41に対応する錘部材42は、当該鍵41の下方に設置される。前端部42aは、利用者に近い端部であり、後端部42bは、前端部42aとは反対側の端部である。錘部材42のうち前端部42aと後端部42bとの間の部位が支持体60に軸支される。すなわち、錘部材42は、X軸に沿う回動軸62を中心として回動可能である。錘部材42の後端部42bには調整錘45が設置される。鍵41が押鍵されていない状態では、錘部材42の後端部42bが調整錘45の荷重により鉛直方向の下方に付勢される。したがって、支持体60に設置された載置部63(ストッパ)に錘部材42の後端部42bが載置された状態に維持される。他方、利用者による押鍵で鍵41の前端部41aが降下すると、錘部材42の前端部42aが突起部44により押圧される結果、錘部材42は調整錘45による付勢に対抗して回動する。すなわち、錘部材42の前端部42aが下方に移動する。以上の説明から理解される通り、各鍵41に対応する錘部材42は、当該鍵41の変位に応じて変位する。
【0018】
被検出基板43は、錘部材42に設置される。具体的には、錘部材42の前端部42aにおける下面に被検出基板43が設置される。したがって、被検出基板43は、利用者による演奏動作に応じて移動する。例えば、被検出基板43は、利用者による押鍵により鉛直方向の下方に移動し、利用者による離鍵により鉛直方向の上方に移動する。変位データは、鉛直方向における前端部42aの位置を表すデータとも換言される。被検出基板43は、共振回路71が設置された回路基板である。相異なる鍵41に対応する複数の共振回路71(被検出基板43)がX軸の方向に配列する。
【0019】
検出基板50は、鍵盤ユニットUの複数の鍵41にわたりX軸の方向に延在する長尺状の回路基板である。検出基板50は、複数の鍵41の下方において支持体60に固定される。すなわち、検出基板50は、鉛直方向からの平面視で複数の鍵41に重なる。具体的には、検出基板50は、各鍵41の前端部41aに平面視で重なる。また、検出基板50は、複数の錘部材42の下方において支持体60に固定される。すなわち、検出基板50は、鉛直方向からの平面視で複数の錘部材42に重なる。具体的には、検出基板50は、錘部材42のうち被検出基板43が設置された前端部42aに平面視で重なる。したがって、複数の被検出基板43と検出基板50とは、鉛直方向に間隔をあけて相互に対向する。以上の通り、第1実施形態においては、複数の錘部材42の下方に検出基板50が設置されるから、各鍵41または各錘部材42の変位を阻害することなく検出基板50を設置できる。
【0020】
検出基板50は、複数の共振回路75と検出回路51と配線基板52とを具備する。配線基板52は、複数の配線が表面または内部に形成されたリジッド基板である。複数の共振回路75と検出回路51とは配線基板52に設置される。
【0021】
検出基板50は、鍵盤ユニットU毎に別体で構成される。具体的には、配線基板52は、鍵盤ユニットU毎に別個の基板で構成される。以下の説明では、鍵盤ユニットULの検出基板50を「検出基板50L」と表記し、鍵盤ユニットUMの検出基板50を「検出基板50M」と表記し、鍵盤ユニットUHの検出基板50を「検出基板50H」と表記する場合がある。検出基板50Lと検出基板50Mと検出基板50Hとは、相互に独立に製造される別個の要素である。検出基板50が単体の基板で構成された形態においては、鍵盤楽器100の全部の鍵41にわたる非常に長い検出基板50が必要であり、検出基板50の製造または取扱が困難である。第1実施形態の鍵盤楽器100は、相互に別体で構成された複数の検出基板50を具備するから、各検出基板50の製造または取扱が容易であるという利点がある。
【0022】
共振回路75は、鍵41毎に設置される。すなわち、相異なる鍵41に対応する複数の共振回路75がX軸の方向に配列する。以上の説明から理解される通り、共振回路71と共振回路75との組が鍵41毎に設置される。
【0023】
図5は、共振回路71および共振回路75の回路図である。共振回路71は、被検出コイル711と容量素子712とを含む。具体的には、被検出コイル711の両端と容量素子712の両端とが相互に接続される。被検出コイル711は、例えば被検出基板43の表面または内部に形成された導体パターンにより構成されるコイルである。以上の説明の通り、被検出コイル711は錘部材42に設置される。被検出コイル711は、「被検出部」の一例である。被検出コイル711と検出基板50と制御基板20と配線部30とは、利用者による演奏動作を検出するための「演奏検出システム」を構成する。鍵盤装置11を「演奏検出システム」と解釈してもよい。
【0024】
共振回路75は、入力端子T1と出力端子T2と抵抗素子751と検出コイル752と容量素子753と容量素子754とを含む。抵抗素子751の一端が入力端子T1に接続され、抵抗素子751の他端は、容量素子753の一端と検出コイル752の一端とに接続される。検出コイル752の他端は、出力端子T2と容量素子754の一端とに接続される。容量素子753の他端と容量素子754の他端とは接地(Gnd)される。検出コイル752は、例えば検出基板50に形成された導体パターンにより構成されるコイルである。共振回路75の共振周波数と共振回路75の共振周波数とは同等の周波数である。ただし、共振回路75の共振周波数と共振回路75の共振周波数とは相違してもよい。
【0025】
1個の鍵41に対応する被検出コイル711および検出コイル752は、鉛直方向に相互に間隔をあけて対向する。前述の通り、被検出基板43は、利用者による演奏動作に応じて鉛直方向に移動する。したがって、被検出コイル711と検出コイル752との距離は、利用者による演奏動作に応じて変化する。具体的には、被検出コイル711と検出コイル752との距離は、利用者による押鍵により減少し、利用者による離鍵により増加する。
【0026】
各共振回路75の入力端子T1には基準信号Rが供給される。基準信号Rは、信号レベルが周期的に変動する。例えば正弦波等の任意の波形の周期信号が基準信号Rとして利用される。また、基準信号Rの周波数Frは、共振回路71および共振回路75の共振周波数と略同等の周波数に設定される。
【0027】
基準信号Rは、入力端子T1と抵抗素子751とを経由して検出コイル752に供給される。基準信号Rの供給により検出コイル752には磁界が発生する。検出コイル752に発生した磁界による電磁誘導で共振回路71の被検出コイル711には誘導電流が発生する。すなわち、検出コイル752の磁界の変化を相殺する方向の磁界が被検出コイル711に発生する。被検出コイル711に発生する磁界は、被検出コイル711と検出コイル752との距離に応じて変化する。したがって、被検出コイル711と検出コイル752との距離に応じた振幅δの検出信号dが共振回路75の出力端子T2から出力される。検出信号dは、基準信号Rと同等の周波数Frでレベルが変動する周期信号である。
【0028】
図4に例示される通り、複数の鍵盤ユニットUのうち中音域に対応する1個の鍵盤ユニットUMの支持体60には制御基板20が設置される。すなわち、鍵盤ユニットUMの支持体60は、複数の鍵41と検出基板50と制御基板20とを支持する。図2および図3に例示される通り、鍵盤ユニットULおよび鍵盤ユニットUHに制御基板20は設置されない。すなわち、鍵盤ユニットULおよび鍵盤ユニットUHの各々の支持体60は、複数の鍵41と検出基板50とを支持する。なお、制御基板20を支持体60に固定する方法は任意である。例えば、ネジ,スナップフィット,スライドまたは係合等の任意の構造により、制御基板20は支持体60に固定される。
【0029】
図4に例示される通り、制御基板20は、鍵盤ユニットUMの複数の鍵41の後端部41b側において当該鍵盤ユニットUMの支持体60に固定される。具体的には、制御基板20は、鍵盤ユニットUMの支持体60において各鍵41の後端部41bの近傍に位置する背面60aに設置される。以上の説明から理解される通り、制御基板20は、検出基板50に対する平面視で当該検出基板50には重ならない。
【0030】
具体的には、支持体60の背面60aに固定板65が設置され、当該固定板65の表面に制御基板20が固定される。すなわち、制御基板20は、固定板65を介して間接的に支持体60に固定される。固定板65は、例えば金属製の板状部材である。固定板65は、例えば板金加工等の公知の製造方法で特定の形状に成形される。制御基板20と固定板65とは電気的に絶縁される。検出基板50と制御基板20との間に固定板65が位置する。以上の構成によれば、固定板65が電磁シールドとして機能するから、検出コイル752の周囲の磁界に対する制御基板20の影響が低減される。
【0031】
図6は、鍵盤楽器100の電気的な構成を例示するブロック図である。図4および図6に例示される通り、制御基板20は、制御IC21と配線基板22とを具備する。配線基板22は、複数の配線が表面または内部に形成されたリジッド基板である。鍵盤ユニットUMの支持体60の背面60aに固定板65を介して配線基板22が固定される。制御IC21は、配線基板22の表面に実装された集積回路(ICチップ)である。具体的には、配線基板22のうち鍵盤ユニットUMの支持体60とは反対側の表面に制御IC21が実装される。なお、配線基板22の表面には、制御IC21以外にも、例えば抵抗素子,容量素子,ダイオード,コイル,水晶振動子またはコネクタ等の各種の実装部品が実装される。
【0032】
以上の説明から理解される通り、制御基板20は、各鍵盤ユニットUの検出基板50とは別体で構成される。具体的には、制御基板20の配線基板22は、各検出基板50の配線基板52とは別個の基板で構成される。
【0033】
配線部30は、鍵盤ユニットUMの検出基板50Mと制御基板20とを電気的に接続するための実装部品である。例えば、FFC(Flexible Flat Cable)またはFPC(Flexible Printed Circuit)等の可撓性のケーブルが配線部30として利用される。配線部30の一端は検出基板50M(配線基板52)に接続される。具体的には、X軸の方向における検出基板50Mの中央の部分に配線部30の一端が接続される。配線部30の他端は制御基板20の配線基板22に接続される。図4に例示される通り、配線部30は、複数の鍵41および複数の錘部材42の下方の空間に位置する。
【0034】
図6の中継部31Lは、鍵盤ユニットULの検出基板50Lと鍵盤ユニットUMの検出基板50Mとを電気的に接続するための実装部品である。具体的には、中継部31Lの一端が検出基板50Lに接続され、中継部31Lの他端が検出基板50Mに接続される。同様に、中継部31Hは、鍵盤ユニットUHの検出基板50Hと鍵盤ユニットUMの検出基板50Mとを電気的に接続するための実装部品である。具体的には、中継部31Hの一端が検出基板50Hに接続され、中継部31Hの他端が検出基板50Mに接続される。中継部31Lおよび中継部31Hは、例えばFFCまたはFPC等の可撓性のケーブルである。
【0035】
各鍵盤ユニットUの検出基板50(配線基板22)には、前述の共振回路75が鍵41毎に設置されるほか、検出回路51が設置される。検出回路51は、鍵盤ユニットUの各検出コイル752と各被検出コイル711との距離に応じた検出信号Dを生成する。具体的には、検出回路51は、駆動回路53と入力側フィルタ54と出力側フィルタ55とを具備する。
【0036】
図7は、入力側フィルタ54の構成を例示する回路図である。入力側フィルタ54には基準信号Qが制御IC21から供給される。基準信号Qは、周波数Frでレベルが変動する周期信号である。具体的には、基準信号Qは、ハイレベルおよびローレベルの一方から他方に周波数Frで信号レベルが変動する矩形波状のデジタル信号である。
【0037】
入力側フィルタ54は、基準信号Qから基準信号Rを生成する回路であり、増幅回路541とフィルタ回路542とを具備する。増幅回路541は、基準信号Qを増幅する。フィルタ回路542は、増幅回路541による増幅後の基準信号Qのうち高域側の信号成分を抑圧することで、基準信号Rを生成するローパスフィルタである。例えば、コイルの両端に容量素子が接続されたΠ型フィルタがフィルタ回路542として利用される。入力側フィルタ54が生成する基準信号Rは、信号レベルが連続的に変化するアナログ信号である。具体的には、基準信号Rは、正弦波に近似する波形の周期信号である。入力側フィルタ54が生成する基準信号Rが検出回路51に供給される。
【0038】
図8は、駆動回路53の構成を例示するブロック図である。駆動回路53の構成は、複数の鍵盤ユニットUについて共通する。なお、図8に図示された構成は、駆動回路53の構成の一例であり、各鍵41の位置に応じた検出信号dを出力可能な任意の回路が、駆動回路53として採用される。
【0039】
駆動回路53は、複数(N個)の選択回路S[1]~S[N]を具備する(Nは2以上の自然数)。各選択回路S[n](n=1~N)は、相異なる鍵41に対応する複数の共振回路75に接続される。各選択回路S[n]は、例えば検出基板50に実装されたICチップで構成される。なお、駆動回路53は単体のICチップで構成されてもよい。また、各選択回路S[n]に対応する共振回路75の個数は、選択回路S[n]毎に相違してもよい。
【0040】
各選択回路S[n]には、制御信号Aと制御信号Bとが制御IC21から供給される。制御信号Aは、各鍵盤ユニットUにおける駆動回路53のN個の選択回路S[1]~S[N]の何れかを指定する信号である。具体的には、制御信号Aは、N個の選択回路S[1]~S[N]の各々を所定長の期間(以下「選択期間」という)毎に順番に指定する。他方、制御信号Bは、1個の選択回路S[n]に対応する複数の共振回路75の何れかを指定する信号である。具体的には、選択回路S[n]が選択される選択期間内において、当該選択回路S[n]に対応する複数の共振回路75の各々が制御信号Bにより順番に指定される。
【0041】
制御信号Aにより選択された選択回路S[n]は、当該選択回路S[n]に対応する複数の共振回路75を制御信号Bに同期して時分割で順番に選択し、選択状態にある共振回路75の入力端子T1に基準信号Rを供給する。基準信号Rの周期は、選択回路S[n]が1個の共振回路75を選択される期間の時間長と比較して充分に短い。また、選択回路S[n]は、選択状態にある共振回路75の出力端子T2から出力される検出信号dを出力側フィルタ55に供給する。以上の説明から理解される通り、各共振回路75により生成された検出信号dが、共振回路75毎に時分割で順次に出力側フィルタ55に供給される。前述の通り、検出信号dは、基準信号Rと同等の周波数Frで信号レベルが変動する周期信号である。
【0042】
図9は、出力側フィルタ55の構成を例示する回路図である。出力側フィルタ55は、駆動回路53から供給される検出信号dから検出信号Dを生成するフィルタ回路である。具体的には、出力側フィルタ55は、整流素子551と容量素子552とローパスフィルタ553とを具備する。
【0043】
整流素子551は、検出信号dを整流(半波整流または全波整流)するダイオード素子である。容量素子552は、整流素子551による整流後の検出信号dを時間的に平滑化する。ローパスフィルタ553は、容量素子と抵抗素子との組合せで構成され、平滑化後の検出信号dのうち高域側の信号成分を抑圧することで検出信号Dを生成する。以上の説明から理解される通り、各検出信号dの振幅δに応じて信号レベルが変動する検出信号Dが生成される。前述の通り、検出信号dの振幅δは、被検出コイル711と検出コイル752との距離に依存する。したがって、検出信号Dは、被検出コイル711と検出コイル752との距離に対応する信号レベルに時分割で設定される信号である。複数の鍵盤ユニットUの各々の検出回路51において検出信号Dが並列に生成される。
【0044】
図10は、制御IC21の内部的な構成を例示するブロック図である。制御IC21は、制御装置23と記憶装置24と信号生成回路25とA/D変換器26とを具備する。なお、制御IC21は、単体のICチップで構成されるほか、相互に別体で構成された複数のICチップで構成されてもよい。
【0045】
制御装置23は、鍵盤楽器100の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばCPU(Central Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置23が構成される。
【0046】
記憶装置24は、制御装置23が実行するプログラムと制御装置23が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置24は、例えば半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。なお、記憶装置24に記憶されたプログラムを実行することで制御装置23が音源装置13の機能を実現してもよい。すなわち、音源装置13と当該音源装置13の機能を実現する制御装置23とは、各鍵41の変位データに応じた音響を再生装置14に再生させる「再生制御部」として機能する。
【0047】
信号生成回路25は、制御装置23による制御のもとで各種の信号を生成する。具体的には、信号生成回路25は、制御信号Aと制御信号Bと基準信号Qとを生成する。なお、記憶装置24に記憶されたプログラムを実行することで制御装置23が信号生成回路25の機能を実現してもよい。
【0048】
A/D変換器26は、各鍵盤ユニットUの検出回路51から供給される検出信号Dをアナログ信号からデジタルデータ(以下「検出データ」という)に変換する。鍵41毎に検出データが生成される。すなわち、複数の鍵41の各々について検出データの時系列が生成される。制御装置23は、各鍵41の検出データの時系列から変位データを生成する。
【0049】
信号生成回路25が生成した制御信号Aは、配線部30を介して制御基板20から検出基板50Mに伝送され、当該検出基板50Mの検出回路51(各選択回路S[n])に供給される。また、制御基板20から検出基板50Mに伝送された制御信号Aは、中継部31Lを介して検出基板50Mから検出基板50Lに伝送され、当該検出基板50Lの検出回路51(各選択回路S[n])に供給される。同様に、制御基板20から検出基板50Mに伝送された制御信号Aは、中継部31Hを介して検出基板50Mから検出基板50Hに伝送され、当該検出基板50Hの検出回路51(各選択回路S[n])に供給される。すなわち、制御信号Aは、複数の鍵盤ユニットUの各々の検出回路51に並列に供給される。同様に、制御信号Bは、制御基板20から配線部30を介して検出基板50Mの検出回路51に供給される。また、制御信号Bは、中継部31Lを介して検出基板50Mから検出基板50Lの検出回路51に供給され、中継部31Hを介して検出基板50Mから検出基板50Hの検出回路51に供給される。
【0050】
信号生成回路25が生成した基準信号Qは、配線部30を介して制御基板20から検出基板50Mに伝送され、当該検出基板50Mの検出回路51(入力側フィルタ54)に供給される。また、制御基板20から検出基板50Mに伝送された基準信号Qは、中継部31Lを介して検出基板50Mから検出基板50Lに伝送され、当該検出基板50Lの検出回路51に供給される。同様に、制御基板20から検出基板50Mに伝送された基準信号Qは、中継部31Hを介して検出基板50Mから検出基板50Hに伝送され、当該検出基板50Hの検出回路51に供給される。すなわち、基準信号Qは、複数の鍵盤ユニットUの各々の検出回路51(入力側フィルタ54)に並列に供給される。
【0051】
検出基板50Mの検出回路51が生成する検出信号Dは、配線部30を介して検出基板50Mから制御基板20に伝送され、制御IC21のA/D変換器26に供給される。他方、検出基板50Lの検出回路51が生成する検出信号Dは、中継部31Lを介して検出基板50Lから検出基板50Mに伝送される。検出基板50Lから検出基板50Mに伝送された検出信号Dは、配線部30を介して検出基板50Mから制御基板20に伝送され、制御IC21のA/D変換器26に供給される。同様に、検出基板50Hの検出回路51が生成する検出信号Dは、中継部31Hと検出基板50Mと配線部30とを介して制御基板20に伝送され、制御IC21のA/D変換器26に供給される。以上の通り、各鍵盤ユニットUの検出回路51が生成した検出信号Dは、複数の鍵盤ユニットUから並列に制御基板20に供給される。検出基板50Lおよび検出基板50Hの各々の検出回路51が生成する検出信号Dは、検出基板50Mと配線部30とを経由して制御基板20に供給される。
【0052】
以上の説明から理解される通り、中継部31Lは、検出基板50Lの検出回路51が生成する検出信号Dを、当該検出基板50Lから検出基板50Mに伝送する。同様に、中継部31Hは、検出基板50Hの検出回路51が生成する検出信号Dを、当該検出基板50Hから検出基板50Mに伝送する。配線部30は、検出基板50Mの検出回路51が生成する検出信号Dと、検出基板50Lおよび検出基板50Hの各々から検出基板50Mに伝送される検出信号Dとを、制御基板20に伝送する。検出基板50Lおよび検出基板50Hは「第1検出基板」の一例であり、検出基板50Mは「第2検出基板」の一例である。また、検出基板50Lおよび検出基板50Hの各々の検出回路51は「第1検出回路」の一例であり、検出基板50Mの検出回路51は「第2検出回路」の一例である。
【0053】
以上に説明した通り、第1実施形態においては、検出コイル752が設置された検出基板50とは別体の制御基板20に、変位データを生成する制御IC21が設置される。したがって、例えば制御基板20に制御IC21が設置される構成と比較して検出基板50の小型化が容易である。また、検出基板50に制御IC21が設置される構成と比較して検出コイル752と制御IC21との距離を確保し易いから、検出コイル752の周囲の磁界に対する制御IC21の影響が低減される。したがって、変位データを高精度に生成できる。第1実施形態においては特に、制御基板20と検出基板50とが平面視で重ならないから、検出基板50と制御基板20とが平面視で重なる構成と比較して検出コイル752と制御IC21との距離を容易に確保できる。したがって、検出コイル752の周囲の磁界に対する制御IC21の影響を低減できるという効果は格別に顕著である。
【0054】
また、第1実施形態においては、検出基板50Lおよび検出基板50Hの各々の検出回路51が生成した検出信号Dと、検出基板50Mの検出回路51が生成した検出信号Dとが、検出基板50Mと制御基板20との間の配線部30を介して制御基板20に供給される。以上の構成によれば、検出基板50Lおよび検出基板50Hの各々と制御基板20とを直接的に接続する必要はない。したがって、検出基板50Lと検出基板50Mと検出基板50Hとの各々が制御基板20に対して個別に接続される構成と比較して、制御基板20の小型化が容易である。ただし、複数の検出基板50(50L,50M,50H)の各々が制御基板20に対して個別に接続されてもよい。
【0055】
第1実施形態の鍵盤ユニットUMにおいては、複数の鍵41を支持する支持体60により検出基板50と制御基板20とが支持される。したがって、複数の鍵41を支持する支持体60とは別個の構造体により検出基板50および制御基板20の各々が支持される構成と比較して、鍵盤楽器100の構造が簡素化される。第1実施形態においては特に、複数の鍵41の下方に検出基板50が設置され、複数の鍵41の後端側に制御基板20が設置される。以上の構成においては、検出基板50と制御基板20とが共通の支持体60に支持されるにも関わらず、検出基板50の各検出コイル752と制御基板20の制御IC21との距離を確保し易い。したがって、検出コイル752の周囲の磁界に対する制御IC21の影響を効果的に低減できる。なお、支持体60とは別個の構造体により検出基板50および制御基板20が支持されてもよい。
【0056】
B:第2実施形態
第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各構成において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0057】
図11は、第2実施形態におけるコイル78の平面図である。第2実施形態においては、検出コイル752および被検出コイル711の一方または他方として図11のコイル78が利用される。他の構成は第1実施形態と同様である。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。
【0058】
コイル78は、第1部分781と第2部分782と接続部783とを含む。第1部分781および第2部分782の各々は、矩形の渦巻状に形成される。第1部分781および第2部分782の各々は、中心から外側にかけて反時計回りに渦巻を描く導体パターンである。第1部分781と第2部分782とは、Y軸に沿って相互に隣合う。接続部783は、第1部分781および第2部分782とは別層で形成された導体パターンである。接続部783は、第1部分781の中心側の端部と第2部分782の中心側の端部とを電気的に接続する。
【0059】
電流の供給により第1部分781および第2部分782の各々には磁界が発生する。第1部分781に流れる電流の方向a1と第2部分782の流れる電流の方向a2とは逆方向である。したがって、第1部分781と第2部分782とには逆方向の磁界が発生する。以上の構成によれば、第1部分781および第2部分782の一方から他方に向かう磁界が形成されるから、X軸の方向に隣合う各鍵41の間にわたる磁界の拡散が低減される。すなわち、相互に隣合う2個のコイル78の間における磁界の干渉が低減される。したがって、複数の鍵41の各々の位置を高精度に反映した検出信号dを生成できる。
【0060】
C:第3実施形態
図12は、第3実施形態における鍵盤ユニットUの構成を例示する側面図である。第3実施形態における鍵盤ユニットUMの検出基板50Mにはスペーサ66が設置される。スペーサ66は、検出基板50Mと配線部30との間に介在することで両者間の間隔を確保する部材である。スペーサ66は、検出基板50(配線基板52)と比較して軟質な絶縁材料で形成され、検出基板50Mおよび配線部30の一方または双方により押圧されることで変形可能である。
【0061】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。ところで、検出基板50Mと配線部30とが過度に近接した状態では、配線部30が伝送する信号が検出コイル752の周囲の磁界に影響する可能性がある。第3実施形態においては、検出基板50Mと配線部30との間にスペーサ66が設置されるから、検出基板50Mと配線部30との間隔が充分に確保される。したがって、検出コイル752の周囲の磁界に対する配線部30の影響を効果的に低減できる。
【0062】
なお、以上の説明においては、検出基板50と配線部30との間にスペーサ66を設置した形態を例示したが、各検出基板50と中継部31(31L,31H)との間に同様のスペーサ66を設置した形態も想定される。以上の形態によれば、検出基板50と中継部31との間隔が充分に確保されるから、検出コイル752の周囲の磁界に対する中継部31の影響を効果的に低減できる。
【0063】
D:変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0064】
(1)前述の各形態においては、制御IC21が変位データを生成する構成を例示したが、制御IC21の機能は以上の例示に限定されない。例えば、音源装置13の機能の一部または全部が制御IC21に搭載されるほか、例えばMIDI形式の演奏データを各鍵41の変位データから生成する機能が制御IC21に搭載されてもよい。
【0065】
(2)前述の各形態においては、鍵盤ユニットUMの支持体60に制御基板20が設置された構成を例示したが、制御基板20が設置される場所は以上の例示に限定されない。例えば、鍵盤楽器100を構成する各種の部材に制御基板20が設置される。例えば、鍵盤楽器100の筐体12,筐体12に回動可能に支持されて鍵盤を被覆する蓋部、または、鍵盤楽器100の棚板等、鍵盤楽器100が具備する任意の部材に制御基板20が設置される。
【0066】
(3)前述の各形態においては、被検出コイル711(被検出基板43)を錘部材42に設置したが、被検出コイル711が設置される部材(可動部材)は以上の例示に限定されない。例えば、各鍵41に被検出基板43が設置されてもよい。被検出コイル711が設置される部材の他例を以下に説明する。
【0067】
[態様A]
図13は、鍵盤楽器100の打弦機構91を例示する模式図である。打弦機構91は、アコースティックピアノと同様に、各鍵41の変位に連動して弦(図示略)を打撃するアクション機構である。具体的には、打弦機構91は、回動により打弦可能なハンマ911と、鍵41の変位に連動してハンマ911を回動させる伝達機構912(例えばウィペン,ジャックまたはレペティションレバー等)とを、鍵41毎に具備する。以上の構成において、被検出基板43はハンマ911(例えばハンマシャンク)に設置される。他方、検出基板50は支持部材913に設置される。支持部材913は、例えば打弦機構91を支持する構造体である。なお、打弦機構91におけるハンマ911以外の部材に被検出基板43を設置してもよい。
【0068】
[態様B]
図14は、鍵盤楽器100のペダル機構92を例示する模式図である。ペダル機構92は、利用者が足で操作するペダル921と、ペダル921を支持する支持部材922と、鉛直方向の上方にペダル921を付勢する弾性体923とを具備する。以上の構成において、被検出基板43はペダル921の底面に設置される。他方、検出基板50は、被検出基板43に対向するように支持部材922に設置される。なお、ペダル機構92が利用される楽器は鍵盤楽器100に限定されない。例えば打楽器等の任意の楽器にも同様の構成のペダル機構92が利用される。
【0069】
なお、図14においては鍵盤楽器100のペダル機構92を例示したが、電気弦楽器(例えば電気ギター)等の電気楽器に使用されるペダル機構にも図14と同様の構成が採用される。電気楽器に使用されるペダル機構は、例えばディストーションまたはコンプレッサー等の各種の音響効果の調整のために利用者が操作するエフェクトペダルである。
【0070】
また、前述の各形態においては鍵盤楽器100を例示したが、本開示の適用の対象は以上の例示に限定されない。例えば、木管楽器(例えばクラリネットまたはサクソフォン)や金管楽器(例えばトランペットまたはトロンボーン)等の管楽器の演奏時に利用者が操作する操作子の位置の検出に、前述の各形態と同様の構成が採用される。
【0071】
以上の例示から理解される通り、被検出基板43が設置される要素は、演奏動作に応じて変位する可動部材として包括的に表現される。可動部材は、利用者が直接的に操作する鍵41またはペダル921等の演奏操作子のほか、演奏操作子に対する操作に連動して変位する錘部材42またはハンマ911等の構造体を含む。ただし、本開示における可動部材は、演奏動作に応じて変位する部材に限定されない。すなわち、可動部材は、変位を発生させる契機に関わらず、変位可能な部材として包括的に表現される。
【0072】
(4)前述の各形態においては、錘部材42に被検出コイル711が設置された構成を例示したが、被検出コイル711に代えて、磁性体または導電体で形成された部材(以下「被検出体」という)を利用してもよい。例えば金属製の板状部材が被検出体として例示される。検出コイル752の周囲に形成される磁界は、当該検出コイル752と被検出体との距離に応じて変動するから、被検出体を利用した構成でも、検出コイル752と被検出体との距離に応じた検出信号dが共振回路75から出力される。以上の説明から理解される通り、可動部材に被検出部が設置された構成が好適であり、前述の被検出コイル711や金属板等の被検出体は、「被検出部」の一例である。
【0073】
(5)前述の各形態においては、相互に別体で構成された複数の検出基板50(50L,50M,50H)を鍵盤楽器100が具備する構成を例示したが、鍵盤楽器100が単体の検出基板50を具備する形態も想定される。単体の検出基板50が設置された形態では、当該検出基板50が「検出基板」に相当する。他方、前述の各形態の例示のように複数の検出基板50が設置された形態では、当該複数の検出基板50の集合または複数の検出基板50のうち何れか1個の検出基板50が「検出基板」に相当する。
【0074】
(6)前述の各形態においては、鍵盤楽器100が音源装置13を具備する構成を例示したが、例えば鍵盤楽器100が打弦機構91等の発音機構を具備する構成においては、音源装置13を省略してもよい。
【0075】
以上の説明から理解される通り、本開示は、音源装置13または発音機構に対して演奏動作に応じた操作信号を出力することで楽音を制御する装置(操作装置)としても特定される。前述の各形態の例示のように音源装置13または発音機構を具備する楽器(鍵盤楽器100)のほか、音源装置13または発音機構を具備しない機器(例えばMIDIコントローラまたは前述のペダル機構92)が、操作装置の概念には包含される。すなわち、本開示における演奏操作装置は、演奏者(操作者)が演奏のために操作する装置として包括的に表現される。
【0076】
E:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0077】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る演奏検出システムは、演奏動作により変位する可動部材に設置され、磁性体または導電体で形成された被検出部と、前記被検出部に対向する検出コイルと、前記検出コイルと前記被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記可動部材の位置を表す変位データを前記検出信号から生成する制御ICが設置された制御基板と、前記検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部とを具備する。
【0078】
以上の構成においては、検出コイルが設置された検出基板とは別体の制御基板に、変位データを生成する制御ICが設置される。したがって、検出基板に制御ICが設置される構成と比較して検出基板の小型化が容易である。また、検出基板に制御ICが設置される構成と比較して検出コイルと制御ICとの距離を確保し易いから、検出コイルの周囲の磁界に対する制御ICの影響が低減される。したがって、変位データを高精度に生成できる。なお、検出基板は、単数または複数の配線基板を含む。制御基板も同様に、単数または複数の配線基板を含む。制御ICは、単数または複数の集積回路(ICチップ)で構成される。
【0079】
態様1の具体例(態様2)において、前記制御基板は、前記検出基板に対する平面視で当該検出基板に重ならない。以上の態様においては、検出基板と制御基板とが平面視で重なる構成と比較して検出コイルと制御ICとの距離を確保し易い。したがって、検出コイルの周囲の磁界に対する制御ICの影響が低減され、結果的に変位データを高精度に生成できる。
【0080】
態様1または態様2の具体例(態様3)において、前記被検出部は、前記検出コイルに対向する被検出コイルを含む。以上の態様においては、検出コイルの磁界により電磁誘導で被検出コイルに電流が発生するから、検出コイルの磁界を相殺する方向の磁界が被検出コイルに発生する。したがって、検出コイルと被検出コイルとの距離が高精度に反映された検出信号を生成できる。
【0081】
本開示の他の態様(態様4)に係る演奏検出システムは、演奏動作により変位する複数の可動部材にそれぞれ設置され、磁性体または導電体で形成された複数の被検出部と、前記複数の被検出部にそれぞれ対応する複数の検出コイルと、前記複数の検出コイルの各々と当該検出コイルに対応する被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記複数の検出コイルの各々について生成される前記検出信号から、当該検出コイルに対応する前記可動部材の位置を表す変位データを生成する制御ICが設置された制御基板と、前記各検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部とを具備する。
【0082】
態様4の具体例(態様5)において、前記検出基板は、相互に別体である第1検出基板と第2検出基板とを含み、前記複数の検出コイルは、前記第1検出基板に設置された複数の第1検出コイルと、前記第2検出基板に設置された複数の第2検出コイルとを含み、前記検出回路は、前記第1検出基板に設置された第1検出回路と、前記第2検出基板に設置された第2検出回路とを含む。以上の態様においては、検出基板が第1検出基板と第2検出基板とを含む。したがって、検出基板が単体の基板で構成された形態と比較して、検出基板の製造または取扱が容易である。
【0083】
態様5の具体例(態様6)において、前記第1検出回路が生成する検出信号を前記第1検出基板から前記第2検出基板に伝送する中継部をさらに具備し、前記配線部は、前記第1検出基板から前記中継部を介して前記第2検出基板に伝送される検出信号と、前記第2検出回路が生成する検出信号とを、前記制御基板に伝送する。以上の態様においては、第1検出回路が生成した検出信号と第2検出回路が生成した検出信号とが、第2検出基板と制御基板との間の配線部を介して制御基板に供給されるから、第1検出基板と制御基板とを電気的に接続する必要はない。したがって、第1検出基板および第2検出基板の各々が制御基板に対して個別に接続される構成と比較して、制御基板の小型化が容易である。
【0084】
本開示のひとつの態様に係る鍵盤楽器は、複数の鍵と、前記複数の鍵にそれぞれ対応して設置され、磁性体または導電体で形成された複数の被検出部と、前記複数の被検出部にそれぞれ対応する複数の検出コイルと、前記複数の検出コイルの各々と当該検出コイルに対応する被検出部との距離に応じた検出信号を生成する検出回路とが設置された検出基板と、前記検出基板とは別体の制御基板であって、前記複数の検出コイルの各々について生成される前記検出信号から、当該検出コイルに対応する前記鍵の位置を表す変位データを生成する制御ICが設置された制御基板と、前記各検出信号を前記検出基板から前記制御基板に伝送する配線を含む配線部と、前記各鍵の変位データに応じた音響を再生装置に再生させる再生制御部とを具備する。
【0085】
態様7の具体例(態様8)に係る鍵盤楽器は、前記複数の鍵と前記検出基板と前記制御基板とを支持する支持体をさらに具備する。以上の態様においては、複数の鍵を支持する支持体により検出基板と制御基板とが支持される。したがって、複数の鍵を支持する支持体とは別個の構造体により検出基板および制御基板の各々が支持される構成と比較して、鍵盤楽器の構造が簡素化される。
【0086】
態様8の具体例(態様9)において、前記検出基板は、前記複数の鍵の下方において前記支持体に固定され、前記制御基板は、前記複数の鍵の後端側において前記支持体に固定される。以上の態様においては、複数の鍵の下方に検出基板が設置され、複数の鍵の後端側に制御基板が設置されるから、検出基板の各検出コイルと制御基板の制御ICとの距離を確保し易い。したがって、検出コイルの周囲の磁界に対する制御ICの影響が低減される。なお、鍵の「後端側」とは、長尺状の鍵の両端のうち演奏者側の端部(前端)とは反対側の端部(後端)に近い位置を意味する。
【0087】
態様8または態様9の具体例(態様10)に係る鍵盤楽器は、前記複数の鍵にそれぞれ対応して前記複数の鍵の下方に設置され、当該鍵の変位に応じて動作する複数の錘部材をさらに具備し、前記検出基板は、前記複数の錘部材の下方において前記支持体に固定される。以上の態様においては、複数の錘部材の下方に検出基板が設置されるから、各鍵または各錘部材の変位を阻害することなく検出基板を設置できる。
【符号の説明】
【0088】
100…鍵盤楽器、11…鍵盤装置、12…筐体、13…音源装置、14…再生装置、20…制御基板、21…制御IC、22…配線基板、23…制御装置、24…記憶装置、25…信号生成回路、26…D変換器、30…配線部、31(31L,31H)…中継部、40…操作機構、41…鍵、42…錘部材、43…被検出基板、44…突起部、45…調整錘、50(50L,50M,50H)…検出基板、51…検出回路、52…配線基板、53…駆動回路、54…入力側フィルタ、55…出力側フィルタ、60…支持体、61…連結部、62…回動軸、63…載置部、65…固定板、66…スペーサ、71,75…共振回路、75…共振回路、711…被検出コイル、752…検出コイル。
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