(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127702
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】仮設足場および水上構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/00 20060101AFI20220825BHJP
E02B 17/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
E04G3/00 D
E02B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025836
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 宣行
(72)【発明者】
【氏名】江草 弘章
(57)【要約】
【課題】水上構造物を構築する際に、簡易に設置および撤去することができる仮設足場およびこの仮設足場を利用した水上構造物の施工方法を提案する。
【解決手段】斜杭2の頭部に構造体3を形成する際に、斜杭2に設けられる仮設足場であって、斜杭2に取り付けられたブラケット5と、ブラケット5に上載された枠体6と、枠体6上に固定された足場材7とを有している。枠体6には、構造体3を挿通可能な大きさの開口部61が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に立設した杭の頭部に構造体を形成する際に、前記杭に設けられる仮設足場であって、
前記杭に取り付けられたブラケットと、
前記ブラケットに上載された枠体と、
前記枠体上に固定された足場材と、を有し、
前記枠体には、前記構造体を挿通可能な大きさの開口部が形成されていることを特徴とする仮設足場。
【請求項2】
前記ブラケットは、本体部と、前記本体部の上方において前記杭の頭部に係止される係止部と、前記杭の外周面に添接される取付部と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の仮設足場。
【請求項3】
前記構造体は、複数の前記杭の頭部に横架された状態で形成され、
前記枠体は、前記開口部に複数の前記杭の頭部を挿通させた状態で前記ブラケットに上載され、
複数の前記杭に固定された前記ブラケット同士は、前記取付部同士の間に横架された連結部材を介して連結されていることを特徴とする、請求項2に記載の仮設足場。
【請求項4】
水底に立設した杭にブラケットを取り付けるブラケット取付工程と、
前記ブラケットに枠状の仮設足場を載置する足場載置工程と、
前記杭の頭部にプレキャストコンクリート部材を架設する架設工程と、
前記仮設足場を撤去する足場撤去工程と、を備える水上構造物の施工方法であって、
前記仮設足場は、前記プレキャストコンクリート部材を挿通可能な大きさの開口部を有しており、
前記足場撤去工程では、前記開口部に前記プレキャストコンクリート部材を挿通させながら、前記仮設足場を上方に引き上げることを特徴とする、水上構造物の施工方法。
【請求項5】
前記プレキャストコンクリート部材には、前記杭の位置に対応して箱抜きが形成されているとともに、補強部材として埋設された補強鉄骨が前記箱抜き内に露出していて、
前記架設工程では、前記杭の頭部を前記箱抜きに挿入するとともに、前記杭の頭部に形成した係合部に前記補強鉄骨を係合させた状態で前記杭の頭部に載置させた後、前記箱抜きにコンクリートを打設することを特徴とする、請求項4に記載の水上構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設足場および水上構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海や河川等の水域において水上構造物を構築する場合に、水底に立設した杭を基礎として構築する場合がある。このような水上構造物を施工する際には、杭に足場を固定した状態で作業を行うのが一般的である。例えば、特許文献1には、杭に固定されたブラケットに支保工および型枠を設置し、型枠内に打設したコンクリートが硬化した後、支保工と型枠を撤去する水上構造物の施工方法が開示されている。特許文献1では、支保工と、型枠と、足場とが一体化されたユニットの分割体をブラケットに上載するとともに分割体同士を連結することにより支保工と型枠を構築し、撤去する際には、分割体同士の連結を解除してから横移動させて撤去する。
特許文献1の水上構造物の施工方法では、水上において分割体同士の接合および解体を行う必要があり、その作業に手間と費用がかかる。また、支保工、型枠および足場を構築する際または撤去する際には、別途足場を確保する必要があるため、この足場の設置および撤去にも手間と費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水上構造物を構築する際に、簡易に設置および撤去することができる仮設足場およびこの仮設足場を利用した水上構造物の施工方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の仮設足場は、水底に立設した杭の頭部に構造体を形成する際に前記杭に設けられるものであって、前記杭に取り付けられたブラケットと、前記ブラケットに上載された枠体と、前記枠体上に固定された足場材とを有し、前記枠体には、前記構造体を挿通可能な大きさの開口部が形成されている。
かかる仮設足場によれば、構造体の構築後に仮設足場を撤去する際、枠体の開口部内に構造体を位置させながら枠体を上昇させることができるので、枠体を解体することなく枠体を撤去できる。そのため、仮設足場の設置時および撤去時において、仮設足場の組み立ておよび解体に要する手間を省略でき、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。
なお、前記ブラケットは、ブラケット本体と、前記ブラケット本体の上方において前記杭の頭部に係止される係止部と、前記杭の外周面に添接される取付部とを備えているのが望ましい。かかる仮設足場によれば、ブラケットを簡易に杭に取り付けることが可能となるので、ブラケット取付時の手間を低減できる。
また、前記構造体が複数の前記杭の頭部に横架された状態で形成される場合には、前記枠体は前記開口部に複数の前記杭の杭頭部を挿通させた状態で前記ブラケットに上載され、複数の前記杭に固定されたブラケット同士は前記取付部同士の間に横架された連結部材を介して連結されているのが望ましい。ブラケットを介して複数の杭を連結すると、水流などの影響によって杭が揺れることを抑制できるので、施工時の安定性を向上させることができる。
【0006】
また、本発明の水上構造物の施工方法は、水底に立設した杭にブラケットを取り付けるブラケット取付工程と、前記ブラケットに枠状の仮設足場を載置する足場載置工程と、前記杭の頭部にプレキャストコンクリート部材を架設する架設工程と、前記仮設足場を撤去する足場撤去工程とを備えている。前記仮設足場は、前記プレキャストコンクリート部材を挿通可能な大きさの開口部を有しており、前記足場撤去工程では、前記開口部に前記プレキャストコンクリート部材を挿通させながら、前記仮設足場を上方に引き上げる。
かかる水上構造物の施工方法によれば、仮設足場を撤去する際に、仮設足場の開口部内にプレキャストコンクリート部材を位置させながら仮設足場を上昇させるため、仮設足場を解体する必要がない。そのため、仮設足場の設置時および撤去時において、仮設足場の組み立ておよび解体に要する手間を省略でき、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。
なお、前記プレキャストコンクリート部材に前記杭の位置に対応して箱抜きが形成されているとともに補強部材として埋設された補強鉄骨が前記箱抜き内に露出している場合には、前記架設工程において前記杭の頭部を前記箱抜きに挿入するとともに前記杭の頭部に形成した係合部に前記補強鉄骨を係合させた状態で前記杭頭部に載置させた後、前記箱抜きにコンクリートを打設する。かかる水上構造物の施工方法によれば、コンクリート打設時のプレキャストコンクリート部材を支持するための支保工を省略あるいは削減できる。その結果、施工時の手間およびコストの低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の仮設足場および水上構造物の施工方法によれば、水上構造物を構築する際に必要となる足場を、簡易に設置および撤去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の水上構造物を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の水上構造物の施工方法を示すフローチャートである。
【
図3】水上構造物の各工程を示す斜視図であって、(a)はブラケット取付工程、(b)は足場載置工程、(c)は架設工程、(d)足場撤去工程である。
【
図4】ブラケットを示す図であって、(a)は側面図、(b)は係止部の拡大斜視図である。
【
図5】ブラケットの取付部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図7】(a)は連結部材の設置状況を示す斜視図、(b)は拡大図である。
【
図8】斜杭の杭頭位置調整状況を示す側面図であって、(a)は杭間隔が広い場合、(b)は杭間隔が狭い場合である。
【
図9】杭頭処理工程においてブラケットの一部を撤去する状況を示す斜視図である。
【
図12】プレキャストコンクリート部材を斜杭との接合部を示す図であって、(a)は平面図、(b)は部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、水底に杭を打設して水上構造物1を構築する場合について説明する。
図1に水上構造物1を示す。水上構造物1は、
図1に示すように、複数(本実施形態では4本)の斜杭2,2,…と、斜杭2,2,…の頭部に形成されたコンクリート製の構造体3とを備えている。斜杭2は、下に向かうにしたがって他の斜杭2と離れるように傾斜した状態で、水底に打設されている。本実施形態の斜杭2は、鋼管杭からなる。
本実施形態の構造体3は、直方体状を呈していて、複数の斜杭2,2,…の頭部に横架された状態で形成されている。構造体3は、プレキャスト部材を斜杭2の頭部に固定することにより形成されている。
【0010】
以下、本実施形態の水上構造物1の施工方法について説明する。
図2に本実施形態の水上構造物の施工方法を示す。水上構造物は、
図2に示すように、杭打設工程S1、ブラケット取付工程S2、足場載置工程S3、杭頭処理工程S4、架設工程S5および足場撤去工程S6を実施することにより構築する。
図3(a)~(d)に水上構造物1の施工方法の各工程を示す。
杭打設工程S1は、鋼管杭を水底に打設して、所定の位置に斜杭2を形成する工程である。本実施形態では、
図3(a)に示すように、4本の鋼管杭を、下に向かうにしたがって離間するように、傾斜させた状態で打設する。斜杭2は、他の斜杭2と間隔をあけて打設するものとし、隣り合う一対の斜杭2,2は正面視でハ字状を呈している。斜杭2を構成する鋼管杭の寸法は、構造体3の形状、重量や、水上構造物の用途等に応じて適宜決定する。
【0011】
ブラケット取付工程S2では、
図3(a)に示すように、斜杭2にブラケット5を取り付ける。斜杭2に構造体3を形成(設置)する際には、
図3(c)に示すように、斜杭2に仮設足場4を設置した状態で行う。仮設足場4は、
図3(b)に示すように、斜杭2に取り付けられたブラケット5と、ブラケット5に上載された枠体6と、枠体6上に固定された足場材7とを有している。枠体6には、構造体3を挿通可能な大きさ(構造体3の平面形状よりも大きな平面形状)の開口部61が形成されている。
図4にブラケット5を示す。ブラケット5は、仮設足場5を斜杭2に設置するための支持部材であって、各斜杭2に取り付けられている。ブラケット5は、
図4(a)に示すように、斜杭2の外面に添接されるベース部51と、台座を構成する本体部52と、斜杭2の頭部に係止される係止部53と、斜杭2の外周面に添接される取付部54とを備えている。
ベース部51は、斜杭2の上端から下方に向けて斜杭2の外面に沿って延設されている。本実施形態のベース部51は、鋼材(例えば、H形鋼や溝形鋼等)からなる。本実施形態のベース部51は、下部部材51aと上部部材51bとが連結されることにより所定の長さに形成されている。ベース部51は、各斜杭2の外面において、4本の斜杭2,2,…の中心の反対側(各斜杭2の中心軸を結んで形成される矩形状の仮想領域の外側)に添接する。
【0012】
本体部52は、足場の一部を構成する枠体を載置するための台座である。本体部52は、ベース部51から横方向(水平あるいは略水平)に張り出す受部52aと受部52aを支持するための斜材52bとを備えている。受部52aの形状は部材(仮設足場4)を載置することが可能であれば限定されるものではないが、本実施形態では平板状を呈している。斜材52bは、一端が受部52aの下面に固定されていて、他端がベース部51に固定されている。本体部52は、斜杭2の頭部に構造体3を形成した状態で、受部52aの上面から構造体3の下面までの間に所定の間隔が確保できる高さ位置に設けられている。また、受部52aは、平面視した状態で、構造体3の側面よりも外側に張り出す長さを有している。
【0013】
係止部53は、ベース部51の上端に固定された鉤型部材である。
図4(b)に示すように、係止部53は、ベース部51の上端に固定された第一部材53aと、第一部材53aの先端部に形成された第二部材53bとを備えている。本実施形態の第一部材53aは、溝形鋼からなり、ベース部51の先端から斜杭2の中心側に張り出すように設けられている。第二部材53bは、第一部材53aの下面に固定された鋼板であって、斜杭2の内空に挿入される。第二部材53bを斜杭2に挿入することで、ベース部51と第二部材53bとの間に斜杭2を構成する鋼管の一部が挿入された状態で、斜杭2の上端にブラケット5が係止される。なお、本実施形態では、クランプや万力等の挟締治具51cによりベース部51を杭2に取り付ける。
【0014】
取付部54は、斜杭2の外面に周設される部材であって、ベース部51に固定されている。
図5(a)および(b)に取付部を示す。本実施形態の取付部54は、係止部53と本体部52との間の高さ位置において、ベース部51に固定されている。取付部54は、
図5(a)に示すように、斜杭2の外面形状に応じて弧状断面(平面視U字状)に形成された板材からなり、斜杭2を囲むように斜杭2の外面に添接することで、ブラケット5(ベース部51の横方向のずれを抑制する。取付部54の端部には、フランジ54aが形成されている。フランジ54aは、斜杭2の外面から側方に張り出すように形成されている。フランジ54aは、取付部54を構成する板材を折り曲げることにより形成してもよいし、取付部54の端部に板材を固定することにより形成してもよい。本実施形態では、ベース部51の下端部にも取付部54を設けている。
【0015】
足場載置工程S3は、
図3(b)に示すように、斜杭2に足場を形成する工程である。
足場載置工程S3では、ブラケット5に枠体6および足場材7(枠状の仮設足場)を載置する。
図6に枠体6および足場材7を示す。
図6に示すように、枠体6は、鋼材を組み合わせることにより、構造体3挿通可能な大きさの開口部61を有した枠状に形成されている。枠体6は、クレーン等の揚重機を利用して、4本の斜杭2の頭部を開口部61に挿通させた状態でブラケット5に上載する。枠体6をブラケット5に載置したら、斜杭2同士の間において、枠体6を構成する対向する一組の鋼材同士の間に補強鋼材62を横架させる。本実施形態では、2本の補強鋼材62を平行に配設する。次に、枠体6上に足場材7を載置する。すなわち、4本の斜杭2,2,…の周囲に足場材7を配置する。また、本実施形態では、一対の補強鋼材62同士の間にも足場材7を横架する。なお、本実施形態では、作業員の昇降スペースとして、枠体6の四隅のうちの一つの角部において足場材7を省略している。
【0016】
杭頭処理工程S4は、斜杭2の杭頭処理を行う工程である。杭頭処理工程でS4では、
図7(a)に示すように、まず、取付部54同士を連結部材55により連結する。
図7は、連結部材55の設置状況を示す図である。連結部材55は、斜杭2同士の間に横架されている。本実施形態では、前後方向、左右方向、対角線方向に配設された連結部材55を斜杭2同士の間に横架することにより、4本の斜杭2,2,…を連結する。連結部材55の両端は、
図7(b)に示すように、斜杭2の外面に固定された弧状板材56に固定する。弧状板材56は、
図5(a)および(b)に示すように、斜杭2の外面形状に対応する形状の板材により構成されていて、端部にフランジ56aが形成されている。フランジ56aは、斜杭2の外面から側方に張り出すように形成されている。フランジ56aは、弧状板材56を構成する板材を折り曲げることにより形成してもよいし、弧状板材56の端部に板材を固定することにより形成してもよい。弧状板材56は、フランジ56aを取付部54のフランジ54aに重ねた状態で、両フランジ54a,56aを貫通するボルト56cにナットを定着することにより、取付部54に固定する。弧状板材56には、連結部材55の端部を固定するための取付板56bが形成されている。連結部材55は、揚重機等により吊下させた状態で、
図7(b)に示すように、端部を弧状板材56の取付板56bに挟締治具56dを介して固定することにより、斜杭2同士の間に横架する。すなわち、各斜杭2,2,…に固定されたブラケット5同士を、取付部54(弧状板材56)同士の間に横架された連結部材55を介して連結する。斜杭2同士の間に連結部材55を横架すると、ブラケット5の上下移動が阻止されるようになる。なお、杭が直杭である場合には、杭の外周面に取り付けた支持部材等により連結部材55(ブラケット5)を支持する。
【0017】
なお、杭頭処理工程S4では、必要に応じて杭頭位置の調整を行う。
図8は、斜杭2の杭頭位置調整状況を示す図である。斜杭同士の間隔が大きい場合には、
図8(a)に示すように、調整装置57(例えばチェーンブロック)を利用して、斜杭2同士の間隔を調整する。斜杭2に固定された弧状板材56同士の間に、ワイヤー57aが連結された調整装置57を横架した状態で、調整装置57を操作することにより斜杭2を引き寄せる。一方、斜杭2同士の間隔が小さい場合には、
図8(b)に示すように、斜杭2を押し広げる調整装置(例えばジャッキ)57及び鋼材57bを斜杭2同士の間に介材させて、調整装置57を操作することにより斜杭2を押し広げる。連結部材55は、杭頭位置の調整後に斜杭2同士の間に横架させる。
【0018】
次に、
図9に示すように、杭2の上端に係止されたブラケット5のベース部51の上部部材51bおよび係止部53を撤去する。上部部材51bは、下部部材51aとの連結を解除した状態で、クレーンなどの揚重機で吊り上げる。なお、ベース部51が1本の鋼材により形成されている場合には、ベース部51を連結部材55の上方において切断する。
【0019】
続いて、
図10に示すように、斜杭2の杭頭処理を行う。
図10は、杭頭処理状況を示す図である。斜杭2の杭頭処理は、斜杭2の上端に水平面が形成されるように、斜杭2の上端部22を切断する。杭頭処理は、仮設足場4上において、作業員が斜杭2の上端を切断することにより、斜杭2の杭頭の位置を調整する。このとき、係合部21として、杭頭に突起を残置させた状態で、斜杭2の上端部22を切断する。
【0020】
架設工程S5では、斜杭2の頭部に構造体3を形成する。
図11に架設工程S5を示す。構造体3は、
図11に示すように、プレキャストコンクリート部材31を4本の斜杭2,2,…の頭部に架設することにより形成する。プレキャストコンクリート部材31は、揚重機Cを利用して、斜杭2の上端に載置する。
図12に斜杭2とプレキャストコンクリート部材31の接合部を示す。
図12(a)に示すように、プレキャストコンクリート部材31には、斜杭2の位置に対応して箱抜き32が形成されている。箱抜き32内には、プレキャストコンクリート部材31に補強部材として埋設された補強鉄骨33が露出している。プレキャストコンクリート部材31を斜杭2の頭部に設置する際には、斜杭2の頭部を箱抜き32に挿入するとともに、補強鉄骨33を斜杭2の頭部に載置する。このとき、
図12(b)に示すように、斜杭2の頭部に形成した係合部21に補強鉄骨33を係合させた状態で斜杭2の頭部にプレキャストコンクリート部材31を載置させる。本実施形態では、箱抜き32内において、補強鉄骨33が十字状に配設されている。係合部21は、補強鉄骨33同士の角部に挿入することで、補強鉄骨33に係止する。
【0021】
プレキャストコンクリート部材31を斜杭2の上端に載置させたら、箱抜き32の下側に型枠を設置して、箱抜き32にコンクリートを打設(充填)する。このとき、箱抜き32内に、必要な鉄筋を配筋する。また、斜杭2の内部には、底蓋を設置しておく。底蓋を設置するタイミングは、コンクリートを打設する前であれば限定されるものではなく、例えば、杭頭処理工程において行ってもよい。
【0022】
足場撤去工程S6は、
図2(d)に示すように、仮設足場4を撤去する工程である。
仮設足場の撤去は、まず、補強鋼材62と、補強鋼材62に架設された足場材7を撤去する。このとき、枠体6に載置した足場材7も必要に応じて撤去する。
次に、揚重機を利用して、開口部61に構造体3(プレキャストコンクリート部材31)を挿通させながら、枠体6を上方に引き上げることにより仮設足場4を撤去する。仮設足場4を撤去したら、ブラケット5を撤去する。
【0023】
本実施形態の水上構造物の施工方法によれば、仮設足場2を撤去する際に、仮設足場4(枠体6)の開口部61内にプレキャストコンクリート部材を位置させながら仮設足場4を上昇させるため、仮設足場4を解体する必要がない。そのため、仮設足場4の設置時および撤去時において、仮設足場4の組み立ておよび解体に要する手間を省略でき、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。
また、プレキャストコンクリート部材に斜杭2の位置に対応して箱抜きが形成されているため、箱抜きに斜杭の頭部を挿入した状態で箱抜きにコンクリートを打設することで、斜杭2と構造体3とが一体に接合される。また、箱抜き内には、プレキャストコンクリート部材に補強部材として埋設された補強鉄骨が露出していて、杭の頭部に形成した係合部を補強鉄骨に係合させるため、プレキャストコンクリート部材の位置決めが容易である。
【0024】
また、本実施形態の仮設足場によれば、構造体3の構築後に、枠体の開口部内に構造体を位置させながら枠体を上昇させることができるため、枠体を解体することなく枠体を撤去できる。そのため、仮設足場の設置時および撤去時において、仮設足場の組み立ておよび解体に要する手間を省略でき、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。
また、仮設足場の支持部材としてのブラケットは、簡易に杭に取り付けることが可能となるので、ブラケット取付時の手間を低減できる。
また、前記構造体が複数の前記杭の頭部に横架された状態で形成される場合には、前記枠体は前記開口部に複数の前記杭の杭頭部を挿通させた状態で前記ブラケットに上載され、複数の前記杭に固定されたブラケット同士は前記取付部同士の間に横架された連結部材を介して連結されているのが望ましい。ブラケットを介して複数の杭を連結すると、水流などの影響によって杭が揺れることを抑制できるので、施工時の安定性を向上させることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、杭が斜杭2の場合について説明したが、杭は必ずしも傾斜している必要はなく鉛直であってもよい。また、杭は、必ずしも鋼管杭である必要はなく、例えば、コンクリート杭であってもよい。また、水上構造物が有する杭の本数は、4本に限定されるものではなく、例えば、3本や5本以上であってもよい。
前記実施形態では、ブラケット4のベース部41を1本の鋼材により構成するものとしたが、ベース部41を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、複数本の鋼材であってもよし、鋼板であってもよい。なお、ベース部41を鋼板により構成する場合には、杭の外面形状に応じて加工するのが望ましい。
【符号の説明】
【0026】
1 水上構造物
2 斜杭(杭)
3 構造体
4 ブラケット
41 ベース部
42 本体部
43 係止部
44 取付部