(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127721
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】単胴式空気輸送装置、及びその運転制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 53/16 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
B65G53/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025866
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】市川 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 慶太郎
【テーマコード(参考)】
3F047
【Fターム(参考)】
3F047BA02
3F047CA02
(57)【要約】
【課題】コンプレッサの消費電力を削減できる単胴式空気輸送装置、及びその運転制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の単胴式空気輸送装置10は、粉粒体を受け入れて輸送管4から後段設備へ圧送する槽本体3と、前記槽本体3へ圧送空気を供給するコンプレッサ2と、前記コンプレッサ2と前記輸送管4を直接接続するバイパス管5と、前記バイパス管5を開閉動作するバイパス弁6を備えた単胴式空気輸送装置10において、前記粉粒体を前記槽本体3に受け入れるときに前記バイパス弁6を閉じて前記コンプレッサ2を無負荷状態にする制御部20を備えたことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を受け入れて輸送管から後段設備へ圧送する槽本体と、
前記槽本体へ圧送空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサと前記輸送管を直接接続するバイパス管と、
前記バイパス管を開閉動作するバイパス弁を備えた単胴式空気輸送装置において、
前記粉粒体を前記槽本体に受け入れるときに前記バイパス弁を閉じて前記コンプレッサを無負荷状態にする制御部を備えたことを特徴とする単胴式空気輸送装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の単胴式空気輸送装置において、
前記制御部は、前記単胴式空気輸送装置の起動時又は前記粉粒体の受入終了後に前記バイパス弁を開き、前記圧送空気を前記槽本体に供給する前に閉じる制御を行うことを特徴とする単胴式空気輸送装置。
【請求項3】
粉粒体を受け入れて輸送管から後段設備へ圧送する槽本体と、
前記槽本体へ圧送空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサと前記輸送管を直接接続するバイパス管と、
前記バイパス管を開閉動作するバイパス弁を備えた単胴式空気輸送装置の運転制御方法において、
前記粉粒体を前記槽本体に受け入れるときに前記バイパス弁を閉じて前記コンプレッサを無負荷状態にすることを特徴とする単胴式空気輸送装置の運転制御方法。
【請求項4】
前記請求項3に記載の単胴式空気輸送装置の運転制御方法において、
前記単胴式空気輸送装置の起動時又は前記粉粒体の受入終了後に前記バイパス弁を開き、前記圧送空気を前記槽本体に供給する前に閉じる制御を行うことを特徴とする単胴式空気輸送装置の運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を圧送空気(圧縮空気ともいう)で輸送する際に輸送効率を高めた単胴式空気輸送装置、及びその運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船倉(タンク)に貯蔵された粉粒体などを陸上の粉粒体貯蔵機(サイロともいう)へ貯蔵する際に、双胴式又は単胴式の空気輸送装置(セラーポンプともいう)が利用されている。
特許文献1,2に示すような双胴式は、船内に十分な設置スペースが確保でき、輸送量も多い場合に利用される。双胴式空気輸送装置は、2つの槽本体を設置し、いずれか1方の槽本体の粉粒体受け入れ時に上部の受入弁を開放して重力落下により粉粒体を槽本体内に受け入れている。槽本体の設定位置まで粉粒体を受け入れた後に受入弁を閉じる。その後、圧送弁を開放して槽本体へ圧送空気を供給し粉粒体の混合物として、槽本体の内部圧力よりも低い後段設備へ圧力差を利用して輸送管を介して圧送している。
このときいずれか他方の槽本体では、一方の槽本体が圧送中に粉粒体の受け入れ作業を行い、一方の槽本体が粉粒体の受け入れ作業に切り替わったら、圧送作業に切り替えている。このように双胴式空気輸送装置では2つの槽本体で受け入れ作業と、圧送作業を交互に繰り返すことにより連続作業が実現できる。
【0003】
一方、単胴式は、前記十分な設置スペースが確保できず、双胴式ほどの圧送能力でなくても事足りる場合に利用される。
図3は従来の単胴式空気輸送装置の構成概略図である。単胴式空気輸送装置1は、受入時にコンプレッサ2から常時送られる圧送空気が槽本体3内へ流れることを妨げるためにコンプレッサ2と輸送管4を直接繋ぐバイパス管5及びバイパス管5を開閉するバイパス弁6を設けていた。
図4は従来の単胴式空気輸送装置の運転制御方法の説明図である。図中の各弁の下線は閉じた状態、上線は開いた状態を示す(後述する
図2も同じ)。装置稼働時に主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを開放して槽本体3内部へ圧送空気を供給する。次に主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを閉じて、バイパス弁6を開放して圧送空気をバイパス管5を介して輸送管4へ排気すると共に、排気弁8a及び受入弁8bを開放して粉粒体を槽本体3内部の設定位置まで受け入れる。受け入れ作業後に、排気弁8a及び受入弁8b、バイパス弁6を閉じて、主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを開放して槽本体3へ圧送空気を供給し粉粒体の混合物として、槽本体3の内部圧力よりも低い後段設備へ圧力差を利用して輸送管4を介して圧送する。
【0004】
なおコンプレッサ2と輸送管4を直接接続する補助管9a(バイパス管5よりも槽本体3側の輸送管4に接続)に補助圧送弁9bを設けている。補助圧送弁9bは、圧送作業中に粉粒体が槽本体3出口又は輸送管4内で詰まったときに輸送管4へ直接圧送空気を供給して(
図4中の補助圧送弁の点線参照)槽本体3出口付近に負圧を発生させて詰まりを解消するための弁である。補助管9aは、バイパス管5よりも管径を小さく設定している。
【0005】
しかしながら、単胴式の場合、双胴式と異なり粉砕原料の受け入れ時には圧送空気を用いる必要がないため、コンプレッサと輸送管を直接つなぐバイパス管へそのまま排出していた。そうすると装置稼働中は常時コンプレッサが運転状態となり、コンプレッサの消費電力が大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54-107292号公報
【特許文献2】特開2009-40544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、コンプレッサの消費電力を削減できる単胴式空気輸送装置、及びその運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、粉粒体を受け入れて輸送管から後段設備へ圧送する槽本体と、
前記槽本体へ圧送空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサと前記輸送管を直接接続するバイパス管と、
前記バイパス管を開閉動作するバイパス弁を備えた単胴式空気輸送装置において、
前記粉粒体を前記槽本体に受け入れるときに前記バイパス弁を閉じて前記コンプレッサを無負荷状態にする制御部を備えたことを特徴とする単胴式空気輸送装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、従来構成で粉粒体の受け入れ時にも圧送空気を生成して輸送管から排気していた稼働中は常時負荷状態のコンプレッサを、受け入れ時に圧送空気を生成しない無負荷状態にできる。このためコンプレッサの消費電力を削減することができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記制御部は、前記単胴式空気輸送装置の起動時又は前記粉粒体の受入終了後に前記バイパス弁を開き、前記圧送空気を前記槽本体に供給する前に閉じる制御を行うことを特徴とする単胴式空気輸送装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、単胴式空気輸送装置の起動時又は前記粉粒体の圧送時に圧送弁を開放する前にコンプレッサを無負荷状態から負荷状態に復帰させることにより、コンプレッサをスムーズに立ち上げる(起動させる)ことができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、粉粒体を受け入れて輸送管から後段設備へ圧送する槽本体と、
前記槽本体へ圧送空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサと前記輸送管を直接接続するバイパス管と、
前記バイパス管を開閉動作するバイパス弁を備えた単胴式空気輸送装置の運転制御方法において、
前記粉粒体を前記槽本体に受け入れるときに前記バイパス弁を閉じて前記コンプレッサを無負荷状態にすることを特徴とする単胴式空気輸送装置の運転制御方法を提供することにある。
上記第3の手段によれば、従来構成で粉粒体の受け入れ時にも圧送空気を生成して輸送管から排気していた稼働中は常時負荷状態のコンプレッサを、受け入れ時に圧送空気を生成しない無負荷状態にできる。このためコンプレッサの消費電力を削減することができる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第3の手段において、前記単胴式空気輸送装置の起動時又は前記粉粒体の受入終了後に前記バイパス弁を開き、前記圧送空気を前記槽本体に供給する前に閉じる制御を行うことを特徴とする単胴式空気輸送装置の運転制御方法を提供することにある。
上記第4の手段によれば、単胴式空気輸送装置の起動時又は前記粉粒体の圧送時に圧送弁を開放する前にコンプレッサを無負荷状態から負荷状態に復帰させることにより、コンプレッサをスムーズに立ち上げる(起動させる)ことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来構成で粉粒体の受け入れ時にも圧送空気を生成して輸送管から排気していた稼働中は常時負荷状態のコンプレッサを、受け入れ時に圧送空気を生成しない無負荷状態にできる。このためコンプレッサの消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の単胴式空気輸送装置の構成概略図である。
【
図2】本発明の単胴式空気輸送装置の運転制御方法の説明図である。
【
図3】従来の単胴式空気輸送装置の構成概略図である。
【
図4】従来の単胴式空気輸送装置の運転制御方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の単胴式空気輸送装置、及びその運転制御方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0015】
[単胴式空気輸送装置10]
図1は本発明の単胴式空気輸送装置の構成概略図である。
本発明の単胴式空気輸送装置10は、粉粒体を受け入れて輸送管4から後段設備へ圧送する槽本体3と、前記槽本体3へ圧送空気を供給するコンプレッサ2と、前記コンプレッサ2と前記輸送管4を直接接続するバイパス管5と、前記バイパス管5を開閉動作するバイパス弁6を備えた単胴式空気輸送装置10において、前記粉粒体を前記槽本体3に受け入れるときに前記バイパス弁6を閉じて前記コンプレッサ2を無負荷状態にする制御部20を備えている。
【0016】
制御部20は、バイパス弁6と電気的に接続して、バイパス管5の開閉動作を制御するものである。制御部20は、単胴式空気輸送装置10の起動時又は粉粒体の受入終了後、排気弁8a及び受入弁8bを閉じた後に開放する制御を行う。そして槽本体3を圧送する際、主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを開放する前にバイパス弁6を閉じる制御を行う。通常、負荷状態のコンプレッサ2は、主ノズル圧送弁7a、リングノズル圧送弁7b、バイパス弁6がいずれも閉じられると、自動的に無負荷状態にシフトして、圧送空気が供給されなくなる。このため、粉粒体の受け入れ時には、主ノズル圧送弁7a、リングノズル圧送弁7b、バイパス弁6をいずれも閉じる制御を行うことでコンプレッサ2を無負荷状態にして消費電力を削減することができる。この他、負荷状態のコンプレッサ2が前記3つの弁の閉塞時に自動的に無負荷状態にシフトしない場合には、コンプレッサ2と制御部20を電気的に直接接続する構成にして、負荷状態から無負荷状態に切り替える制御を行う構成としても良い。
【0017】
本実施形態のバイパス管5は、管断面積を以下のように設定している。
(1)バイパス管5の管断面積Xは、補助管9aの管断面積Yよりも大きく設定している(X>Y)。
(2)バイパス管5の管断面積Xは、主ノズル圧送弁7aを取り付けた配管の管断面積Aとリングノズル圧送弁7bを取り付けた配管の管断面積Bの和以上に設定している(X≧A+B)。
(3)バイパス管5の管径断面積Xは、主ノズル圧送弁7aを取り付けた配管の管断面積Aと補助管9aの管断面積Yの和以上に設定している(X≧A+Y)。
バイパス管5の管断面積Xは、(1)~(3)を満たすように設定し、コンプレッサ2からの圧送空気を輸送管4へ十分に排気することができるように構成している。従って、バイパス弁6を開放することにより無負荷状態のコンプレッサ2を負荷状態へ容易にシフトできる。
【0018】
[単胴式空気輸送装置の運転制御方法]
図2は本発明の単胴式空気輸送装置の運転制御方法の説明図である。。
[装置(コンプレッサ)起動]単胴式空気輸送装置10の起動時において、制御部20によりバイパス弁6を開放してコンプレッサ2から圧送空気を輸送管4へ直接排気する。これにより起動時のコンプレッサから供給される圧送空気を輸送管にそのまま排気してスムーズな立ち上げを実現できる。
[起動ブロー]次に、バイパス弁6を閉じて、主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを開放して槽本体3内部へ圧送空気を供給する。所定時間経過後、主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを閉じる。前記3つの弁、すなわち主ノズル圧送弁7a、リングノズル圧送弁7b、バイパス弁6を閉じているため、コンプレッサ2は負荷状態から無負荷状態へシフトする。
[受入作業]排気弁8a及び受入弁8bを開放して粉粒体を槽本体3内部へ受け入れる。槽本体3の設定位置まで粉粒体を受け入れた後、排気弁8a及び受入弁8bを閉じる。
【0019】
[無負荷のコンプレッサを負荷へシフト]
制御部20によりバイパス弁6を開放してコンプレッサ2から輸送管4へ直接接続する経路を形成し、輸送管4を介して生成した圧送空気を排気してコンプレッサ2を無負荷状態から負荷状態に復帰させている。これにより、コンプレッサ2のスムーズな立ち上げが実現できる。
[圧送作業]
制御部20によりバイパス弁6を閉じる。ついで主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを開放して槽本体3へ圧送空気を供給し粉粒体の混合物として、槽本体3の内部圧力よりも低い後段設備へ圧力差を利用して輸送管4を介して圧送する。圧送作業終了後、主ノズル圧送弁7a及びリングノズル圧送弁7bを閉じる。このときバイパス弁6も閉じているため、負荷状態のコンプレッサ2は無負荷状態にシフトする。
その後、排気弁8a及び受入弁8bを開放して受入作業を行う。以降、受け入れ作業、無負荷のコンプレッサを負荷へシフト、圧送作業の繰り返しとなる。なお、圧送作業中に、槽本体内部で粉粒体の詰まりが生じた場合には、補助圧送弁を9b開放し、その間、リングノズル圧送弁7bを閉じて、槽本体3出口付近の粉粒体の詰まりを解消する作業を行う。
【0020】
このような本発明によれば、従来構成で粉粒体の受け入れ時にも圧送空気を生成して輸送管から排気していた稼働中は常時負荷状態のコンプレッサを、受け入れ時に圧送空気を生成しない無負荷状態にできる。このためコンプレッサの消費電力を削減することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0021】
1,10 単胴式空気輸送装置
2 コンプレッサ
3 槽本体
4 輸送管
5 バイパス管
6 バイパス弁
7a 主ノズル圧送弁
7b リングノズル圧送弁
8a 排気弁
8b 受入弁
9a 補助管
9b 補助圧送弁
20 制御部