(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127723
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】カップリング
(51)【国際特許分類】
F16D 37/02 20060101AFI20220825BHJP
F16F 9/53 20060101ALI20220825BHJP
F16F 15/03 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F16D37/02 Z
F16F9/53
F16F15/03 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025869
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】辻 仁志
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 優矢
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AC08
3J048BE05
3J048CB12
3J048EA07
3J069AA41
3J069DD25
(57)【要約】
【課題】簡単に捩り剛性を変えることのできるカップリングを提供すること。
【解決手段】一方の軸2に対して相対回転不能に取り付けられる第1継手部5と、他方の軸3に対して相対回転不能に取り付けられる第2継手部6と、第1継手部5と第2継手部6との間に連結され、捩り振動を吸収する中間部7と、を備え、第1継手部5と第2継手部6との間に介在する磁気粘性流体8と、磁気粘性流体8に印加する磁場を発生する磁場発生部9と、を更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第1継手部と、
他方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第2継手部と、
前記第1継手部と前記第2継手部との間に連結され、捩り振動を吸収する中間部と、
を備えるカップリングであって、
前記第1継手部と前記第2継手部との間に介在する磁気粘性流体と、
前記磁気粘性流体に印加する磁場を発生する磁場発生部と、
を更に備えることを特徴とするカップリング。
【請求項2】
請求項1に記載のカップリングにおいて、
前記中間部は、捩り方向に弾性変形する板ばねを有する、
ことを特徴とするカップリング。
【請求項3】
請求項2に記載のカップリングにおいて、
前記板ばねは、磁性体を用いて構成されており、
前記磁場発生部は、
前記板ばねの両面を隙間を介して挟む形状に形成されたヨークと、
前記ヨーク内に磁路を形成するように巻設されたコイルと、
を有し、
前記磁気粘性流体は、少なくともその一部が前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在し、
前記コイルに電流が印加されると、前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在する磁気粘性流体を貫通する磁路が形成される、
ことを特徴とするカップリング。
【請求項4】
請求項2に記載のカップリングにおいて、
前記中間部は、前記板ばねを複数有し、
複数の前記板ばねは、磁性体を用いて構成され、互いに隣接するもの同士が連結部材を介して捩り方向に弾性変形可能に連結されており、
前記磁場発生部は、
前記各板ばねの両面を隙間を介して挟む形状に形成されたヨークと、
前記ヨーク内に磁路を形成するように巻設されたコイルと、
を有し、
前記磁気粘性流体は、少なくともその一部が前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在し、
前記コイルに電流が印加されると、複数の前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在する磁気粘性流体を貫通する磁路が形成される、
ことを特徴とするカップリング。
【請求項5】
請求項1に記載のカップリングにおいて、
前記中間部は、捩り方向に弾性変形するゴム又は樹脂を有する、
ことを特徴とするカップリング。
【請求項6】
請求項5に記載のカップリングにおいて、
前記ゴム又は前記樹脂は、捩り振動を吸収する振動吸収材として機能するとともに、前記第1継手部と前記第2継手部との間から前記磁気粘性流体が漏出することを防止するシール材としても機能する、
ことを特徴とするカップリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気粘性流体を用いたカップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
軸と軸を連結し、回転動力を駆動側から従動側へ伝えるカップリングが知られている(例えば特許文献1~4を参照。)。同文献に開示されたカップリングは、駆動側の軸に固定される駆動側継手部と、従動側の軸に固定される従動側継手部と、これらの継手部の間に連結される中間部とを備えている。特許文献1~3に開示されたカップリングでは、上記中間部に板ばねが含まれ、特許文献4に開示されたカップリングでは、上記中間部にゴム材が含まれる。
【0003】
カップリングの一般的な役割として、(1)駆動側から従動側に動力伝達すること、(2)駆動側と従動側の軸の取付誤差を吸収すること、(3)駆動側の振動を吸収すること、(4)駆動側のモータなどの熱を従動側に伝えないことが挙げられる。特許文献1~4に開示されたカップリングでは、上記(3)の役割に関し、駆動側の振動は、中間部において吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-167743号公報
【特許文献2】特開2002-372068号公報
【特許文献3】特開昭62-155335号公報
【特許文献4】特開2014-092168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カップリングにおいて吸収される捩り振動は、カップリングの捩り剛性を変えることで抑制することができ、その捩り振動の共振点を変えることもできる。
【0006】
しかしながら、特許文献1~4に開示されたカップリングでは、捩り剛性を変えるために、カップリングの中間部に使用されている板ばねやゴム材を剛性の異なるものに取り換え、あるいは、カップリングを丸ごと捩り剛性の異なる別のカップリングに取り換えることが必要となる。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて創案されたものであり、簡単に捩り剛性を変えることのできるカップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係るカップリングは、一方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第1継手部と、他方の軸に対して相対回転不能に取り付けられる第2継手部と、前記第1継手部と前記第2継手部との間に連結され、捩り振動を吸収する中間部と、を備え、前記第1継手部と前記第2継手部との間に介在する磁気粘性流体と、前記磁気粘性流体に印加する磁場を発生する磁場発生部と、を更に備える。
【0009】
かかる構成を備えるカップリングによれば、その捩り剛性を簡単に変えることができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係るカップリングは、第1の態様に係るカップリングにおいて、前記中間部は、捩り方向に弾性変形する板ばねを有する。
【0011】
本発明の第3の態様に係るカップリングは、第2の態様に係るカップリングにおいて、前記板ばねは、磁性体を用いて構成されており、前記磁場発生部は、前記板ばねの両面を隙間を介して挟む形状に形成されたヨークと、前記ヨーク内に磁路を形成するように巻設されたコイルと、を有している。前記磁気粘性流体は、少なくともその一部が前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在し、前記コイルに電流が印加されると、前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在する磁気粘性流体を貫通する磁路が形成される。
【0012】
本発明の第4の態様に係るカップリングは、第2の態様に係るカップリングにおいて、前記中間部は、前記板ばねを複数有し、複数の前記板ばねは、磁性体を用いて構成され、互いに隣接するもの同士が連結部材を介して捩り方向に弾性変形可能に連結されている。前記磁場発生部は、前記各板ばねの両面を隙間を介して挟む形状に形成されたヨークと、前記ヨーク内に磁路を形成するように巻設されたコイルと、を有している。前記磁気粘性流体は、少なくともその一部が前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在し、前記コイルに電流が印加されると、複数の前記板ばねと前記ヨークとの前記隙間に介在する磁気粘性流体を貫通する磁路が形成される。
【0013】
本発明の第5の態様に係るカップリングは、第1の態様に係るカップリングにおいて、前記中間部は、捩り方向に弾性変形するゴム又は樹脂を有する。
【0014】
本発明の第6の態様に係るカップリングは、第5の態様に係るカップリングにおいて、前記ゴム又は前記樹脂は、捩り振動を吸収する振動吸収材として機能するとともに、前記第1継手部と前記第2継手部との間から前記磁気粘性流体が漏出することを防止するシール材としても機能する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単に捩り剛性を変えることのできるカップリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るカップリングを示す断面図である。
【
図3】
図1のB部拡大図であって、磁気粘性流体の図示(灰色塗潰し)を省略した図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態の変形例を示す図であって、
図1のB部に対応する部位を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係るカップリングを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施の形態に係るカップリングについて、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係るカップリング1は、
図1乃至
図3に示すように、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間に連結されるものであって、第1継手部5、第2継手部6、中間部7、磁気粘性流体8および磁場発生部9を備えている。
【0019】
第1継手部5は、駆動側回転軸2に対して相対回転不能に取付けられ、駆動側回転軸2と一体に回転する。第1継手部5は、後述する第1インナーヨーク15aを除いて、非磁性体を用いて構成されていることが望ましい。
【0020】
第2継手部6は、従動側回転軸3に対して相対回転不能に取付けられ、従動側回転軸3と一体に回転する。第2継手部6は、後述する第2インナーヨーク15bを除いて、非磁性体を用いて構成されていることが望ましい。
【0021】
中間部7は、第1継手部5と第2継手部6との間に連結されている。本実施形態では、中間部7は、複数の板ばね11および連結部材12を用いて構成されている。
【0022】
複数の板ばね11には、それぞれ磁性体からなる円板状の部材が使用されている。各板ばね11は、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間で捩り方向に変位が生じると、その捩り方向に弾性変形する。したがって、各板ばね11は、駆動側回転軸2又は従動側回転軸3から捩り振動が入力されると、捩り方向に弾性変形しながらその捩り振動を吸収する。複数の板ばね11は、間隔をおいて平行に配置され、回転軸線Nに対して直交している。
【0023】
複数の板ばね11は、
図3に示すように、互いに隣接するもの同士が連結部材12を介して連結されている。複数の板ばね11のうち、第1継手部5に最も近い位置に配置された板ばね11(以下「第1板ばね11A」ともいう。)は、第1継手部5と複数の連結部材13を介して連結されている。複数の板ばね11のうち、第2継手部6に最も近い位置に配置された板ばね11(以下「第2板ばね11B」ともいう。)は、第2継手部6と複数の連結部材14を介して連結されている。
【0024】
本実施形態では、連結部材12,13,14は、回転軸線Nを中心とした円周上に等間隔に配されている。各板ばね11の第1継手部5側の面に配された連結部材12,13と、第2継手部6側の面に配された連結部材12,14とは、互いに異なる円周上の位置に配されている。本実施形態では、連結部材12,13,14としてボルトが用いられている。なお、連結部材12は、ボルトに限定されず、例えば、所定の形状の部材を板ばね11同士の間、第1板ばね11Aと第1継手部5の間、および第2板ばね11Bと第2継手部6の間に溶接して、これらを互いに連結するものであってもよい。
【0025】
磁気粘性流体8は、第1継手部5と第2継手部6との間に介在し、少なくともその一部が各板ばね11と後述するヨーク15との隙間に介在している。本実施形態では、
図1において、灰色に塗り潰した部分に磁気粘性流体8が封入されている。この磁気粘性流体8は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体である。磁性粒子として、例えばナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなるものを使用することができる。磁性粒子は磁化可能な金属材料からなり、金属材料に特に制限はないが軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。磁気粘性流体における磁性粒子の配合量は、例えば3~40vol%とすることができる。磁気粘性流体にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の添加剤を添加することも可能である。
【0026】
磁場発生部9は、磁気粘性流体8に印加する磁場を発生する。本実施形態では、磁場発生部9は、ヨーク15とコイル16を含んで構成されている。
【0027】
ヨーク15は、
図2に示すように、本実施形態では、第1インナーヨーク15a、第2インナーヨーク15b、中間ヨーク15cおよびアウターヨーク15dで構成されている。ヨーク15を構成する部材は何れも当然に磁性体を用いて構成されている。
【0028】
第1インナーヨーク15aは、第1継手部5に形成された環状凹部5aに嵌め込まれ、半径方向外方と回転軸線N方向の中間部7側に露出している。なお、本実施形態では、第1インナーヨーク15aは、断面矩形の環状部材からなり、第1継手部5の一部となっている。
【0029】
第2インナーヨーク15bは、第2継手部6に形成された環状凹部6aに嵌め込まれ、半径方向外方と回転軸線N方向の中間部7側に露出している。なお、本実施形態では、第2インナーヨーク15bは、断面矩形の環状部材からなり、第2継手部6の一部となっている。
【0030】
中間ヨーク15cは、第1インナーヨーク15aおよび第2インナーヨーク15bの間に配置されている。この中間ヨーク15cは、第1インナーヨーク15aおよび第2インナーヨーク15bに対して回転方向に固定されていない。すなわち、中間ヨーク15cは、第1インナーヨーク15aおよび第2インナーヨーク15bに対して微小回転可能な状態にある。本実施形態では、中間ヨーク15cは、環状に形成され、その内周部に上記板ばね11間に入り込む凸条15caを有する。
【0031】
アウターヨーク15dは、一方の端面が第1インナーヨーク15aの側面に微小隙間を介して対向し、他方の端面が第2インナーヨーク15bの側面に微小隙間を介して対向している。本実施形態では、アウターヨーク15dは、全体的に環状に形成され、断面が略C字状に形成されている。
【0032】
アウターヨーク15dの両側には、
図1に示すように、ベアリングハウジング部材17が固定されている。一方のベアリングハウジング部材17と第1継手部5との間にベアリング18が介装され、他方のベアリングハウジング部材17と第2継手部6との間にベアリング18が介装されている。したがって、第1継手部5、第2継手部6、中間部7、第1インナーヨーク15aおよび第2インナーヨーク15bは、アウターヨーク15dおよびコイル16に対して回転可能となっている。なお、ベアリングハウジング部材17は、非磁性体を用いて構成されていることが望ましい。
【0033】
本実施形態では、
図2に示すように、第1インナーヨーク15a、第2インナーヨーク15bおよび中間ヨーク15cからなるヨーク15の内側部は、板ばね11の外周部の両面を微小隙間20を介して挟む形状に形成されている。
【0034】
コイル16は、アウターヨーク15dの内側に巻設されている。コイル16には、給電部21から所望の電流値の電流が給電可能となっている。
【0035】
上述の構成を備えるカップリング1において給電部21により、コイル16に電流を印加すると、例えば
図1の矢印Pの方向に沿って、ヨーク15内に磁路が形成される。特に、板ばね11の両面とヨーク15との間の微小隙間20に介在する磁気粘性流体8を貫通する磁路が形成され、磁気粘性流体8は、印加される磁場の強さに応じたずり応力を発現する。そして、コイル16に印加する電流値を変えることにより、磁気粘性流体8のずり応力を変えることができるので、カップリング1の捩り剛性も変えることができる。
【0036】
このように、本実施形態に係るカップリング1によれば、コイル16に印加する電流値を変えるだけで、カップリング1の捩り剛性を変えることができるので、簡単にカップリング1に入力される捩り振動を抑制でき、その捩り振動の共振点を変えることも簡単に行うことができる。
【0037】
<第1の実施形態の変形例>
上述した本発明の第1の実施の形態では、中間部7は、複数枚の板ばね11を用いて構成されていたが、例えば
図4に示すように、中間部7に用いられる板ばね11の枚数を1枚にすることも可能である。この場合、1枚の板ばね11は、第1継手部5および第2継手部6の双方に連結部材13,14を用いてそれぞれ連結される。連結部材13,14は、回転軸線Nを中心とした円周上に等間隔に配され、板ばね11の第1継手部5側の面に配された連結部材13と、第2継手部6側の面に配された連結部材14とは、互いに異なる円周上の位置に配される。
【0038】
また、上述した本発明の第1の実施の形態では、中間ヨーク15cに磁性体が用いられているが、板ばね11と凸条15caとの隙間20にある磁気粘性流体8を貫通する磁路を確実に形成させるため、中間ヨーク15cを磁性体と非磁性体の2種類の部材を用いて構成してもよい。例えば、回転軸線N方向から視て、中間ヨーク15cの板ばね11と重なる部分を磁性体とし、中間ヨーク15cのその他の部分を非磁性体としてもよい。あるいは、中間ヨーク15cの凸条15caを磁性体とし、中間ヨーク15cのその他の部分を非磁性体としてもよい。
【0039】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係るカップリングについて、図面を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態において説明した部材と同じ部材については図面において同符号を付して説明を省略する場合がある。
【0040】
図5に示すように、本実施形態に係るカップリング1Aは、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間に連結されるものであって、第1継手部5A、第2継手部6A、中間部7A、磁気粘性流体8および磁場発生部9Aを備えている。
【0041】
第1継手部5Aは、駆動側回転軸2に対して相対回転不能に取付けられ、駆動側回転軸2と一体に回転する。第1継手部5Aは、磁性体を用いて構成されている。
【0042】
第2継手部6Aは、従動側回転軸3に対して相対回転不能に取付けられ、従動側回転軸3と一体に回転する。第2継手部6Aは、磁性体を用いて構成されている。
【0043】
中間部7Aは、ゴムを用いて構成され、第1継手部5Aと第2継手部6Aとの間に連結されている。本実施形態では、中間部7Aは、回転軸線N上に設けられた中央ゴム部材7Aaと、第1継手部5Aおよび第2継手部6の側面近傍に設けられた環状ゴム部材7Abとで構成されている。中央ゴム部材7Aaおよび環状ゴム部材7Abの何れもその一方が第1継手部5Aに固定され、その他方が第2継手部6Aに固定されている。中央ゴム部材7Aaおよび環状ゴム部材7Abは、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間で捩り方向に変位が生じると、その捩り方向に弾性変形する。したがって、中央ゴム部材7Aaおよび環状ゴム部材7Abは、駆動側回転軸2又は従動側回転軸3から捩り振動が入力されると、捩り方向に弾性変形しながらその捩り振動を吸収する。
【0044】
環状ゴム部材7Abの内側と、第1継手部5Aと第2継手部6Aとの隙間には、磁気粘性流体8の封入空間が形成されている。このことから、環状ゴム部材7Abは、磁気粘性流体8が第1継手部5Aと第2継手部6Aとの隙間から漏出することを防止するシール材としても機能している。
【0045】
磁気粘性流体8は、第1継手部5Aと第2継手部6Aとの隙間に介在している。本実施形態では、
図5において、灰色に塗り潰した部分に磁気粘性流体8が封入されている。
【0046】
磁場発生部9Aは、磁気粘性流体8に印加する磁場を発生する。本実施形態では、磁場発生部9Aは、ヨーク15Aとコイル16を含んで構成されている。
【0047】
ヨーク15Aは、本実施形態では、第1インナーヨーク15Aa、第2インナーヨーク15Abおよびアウターヨーク15Acで構成されている。ヨーク15Aを構成する部材は何れも当然に磁性体を用いて構成されている。
【0048】
本実施形態では、第1継手部5Aが第1インナーヨーク15Aaの役割を兼ねており、第2継手部5Bが第2インナーヨーク15Abの役割を兼ねている。
【0049】
アウターヨーク15Acは、一方の端面が第1インナーヨーク15Aaの側面に微小隙間を介して対向し、他方の端面が第2インナーヨーク15Abの側面に微小隙間を介して対向している。本実施形態では、アウターヨーク15Acは、全体的に環状に形成され、断面が略C字状に形成されている。
【0050】
アウターヨーク15Acの両側には、
図5に示すように、ベアリングハウジング部材17が固定されている。一方のベアリングハウジング部材17と第1継手部5Aとの間にベアリング18が介装され、他方のベアリングハウジング部材17と第2継手部6Aとの間にベアリング18が介装されている。したがって、第1継手部5A、第2継手部6Aおよび中間部7Aは、アウターヨーク15Acおよびコイル16に対して回転可能となっている。
【0051】
コイル16は、アウターヨーク15Acの内側に巻設されている。コイル16には、給電部21から所望の電流値の電流が給電可能となっている。
【0052】
上述の構成を備えるカップリング1Aにおいて給電部21により、コイル16に電流を印加すると、例えば
図5の矢印Pの方向に沿って、ヨーク15A内に磁路が形成される。特に、第1インナーヨーク15Aaと第2インナーヨーク15Abの間の微小隙間20Aに介在する磁気粘性流体8を貫通する磁路が形成され、磁気粘性流体8は、印加される磁場の強さに応じたずり応力を発現する。そして、コイル16に印加する電流値を変えることにより、磁気粘性流体8のずり応力を変えることができるので、カップリング1Aの捩り剛性も変えることができる。
【0053】
このように、本実施形態に係るカップリング1Aによれば、コイル16に印加する電流値を変えるだけで、カップリング1Aの捩り剛性を変えることができるので、簡単にカップリング1Aに入力される捩り振動を抑制でき、その捩り振動の共振点を変えることも簡単に行うことができる。
【0054】
<第2の実施形態の変形例>
上述した本発明の第2の実施の形態では、中間部7Aは、ゴムを用いて構成されていたが、中間部7Aは、樹脂を用いて構成してもよい。例えば、回転軸線N上に設けられた中央ゴム部材7Aaを樹脂からなる中央樹脂部材に置き替え、第1継手部5Aおよび第2継手部6の側面近傍に設けられた環状ゴム部材7Abを樹脂からなる環状樹脂部材に置き替えてもよい。もちろん、中央樹脂部材および環状樹脂部材は、駆動側回転軸2と従動側回転軸3との間で捩り方向に変位が生じると、これに応じて捩り方向に弾性変形するものである。
【0055】
このような第2の実施形態の変形例に係るカップリングにおいても、第2の実施形態に係るカップリング1Aと同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、軸と軸を連結するためのカップリングに適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,1A カップリング
5,5A 第1継手部
6,6A 第2継手部
7,7A 中間部
8 磁気粘性流体
9,9A 磁場発生部
11 板ばね
11A 第1板ばね
11B 第2板ばね
12 連結部材
13 連結部材
14 連結部材
15 ヨーク
15a 第1インナーヨーク
15b 第2インナーヨーク
15c 中間ヨーク
15d アウターヨーク
16 コイル
20,20A 微小隙間