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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012779
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/04 20060101AFI20220107BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B43K1/04
B43K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114856
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA02
2C350HA15
2C350KA01
2C350KA07
2C350KC01
(57)【要約】
【課題】筆記方向により描線幅をかき分けることができる筆記具を提供する。
【解決手段】インクタンク13に収容された筆記具用インク40を、中継芯30を経由してペン先50の筆記部で筆記可能となる筆記具Aであって、前記ペン先50の筆記部には1つのスリットを形成し、前記スリットは中心から径方向外周に異なる長さであることを特徴とする筆記具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクタンクに収容された筆記具用インクを、中継芯を経由してペン先の筆記部で筆記可能となる筆記具であって、前記ペン先の筆記部には1つのスリットを形成し、該スリットは中心から径方向外周に異なる長さであることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記スリットの内面は、中継芯の外周面と当接していることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
筆記部径方向側面には開口部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記ペン先はベース材料に添加材を1~50質量%含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具を持ち替えることなく、筆記方向により描線幅をかき分けることができる筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の筆記具においては、一つのペン芯等で、細い文字や太い文字を円滑に書くことは難しいものであった。また、太字用のサインペン等で細い線を筆記することもコツなどが必要で筆記しにくいものであった。
そこで、筆記具本体の両端部に細字用、太字用のペン芯を備えたツインタイプの筆記具が知られている。このツインタイプの筆記具では、その都度、持ち替えが必要となり、煩わしいものである。また、通常のペン芯などは、耐摩耗性を向上させるために、ペン芯は高強度の材質を使用するものであり、当該ペン芯を高強度の材質を用いて構成した場合、筆感は悪くなるものであった。
【0003】
一方、ペン芯等にスリットを形成した筆記具としては、例えば、
1)細い文字と太い文字とを連続的に書けるマーキングペンとして、横断面で3以上の扇型状片を形成するように分割されたペン先部を有するマーキングペン(例えば、特許文献1参照)、
2)筆記先端部の両側に先細傾斜面を有し、前記筆記先端部の頂面に細長の筆記面を有し、筆記具本体に取り付けられる取付部を後端に有するペン体と、前記ペン体の内孔に挿入され、インキを前記筆記先端部まで供給するインキ誘導芯と、前記ペン体の前記取付部が接続される軸筒と、を備え、前記ペン体は、前記筆記先端部に軸方向に開口し且つ径方向に貫通するスリットを有し、前記スリットの後端は、前記インキ誘導芯の先端より後方に位置されることを特徴とするマーキングペン(例えば、特許文献2参照)、
3)向かいあわせに折曲され、折曲部を筆記先端部として先端部に沿って両側面が先細形状となり、更に筆記先端部に向かって略中心線上にスリットが形成された金属板片より成るペン先を有した万年筆であって、ペン先は対向する金属板片部の中間にスリット状のインク誘導溝を備えて前記筆記先端部に近接した位置まで密着した支持部が配設されて軸筒の先端に固定され、軸筒の先方には支持部と連接してインク流量調節部と後方にはインクが貯蔵されて筆記先端部までインクが導出されるように構成されてなる万年筆(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のマーキングペンは、横断面で3以上の扇型状片を形成するように分割されたペン先部を有するものであり、このペン先部で細い文字と太い文字とを連続的に書くためにはコツが必要であり、誰もが簡単に任意の大きさの文字等を書くことは未だ困難さを有するものである。また、上記特許文献2及び3のマーキングペンや万年筆は、筆記方向により描線幅をかき分けることができる筆記具でなく、本発明とは技術思想(構成及びその作用効果)が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-199327号公報(特許請求の範囲、図1等)
【特許文献2】特開2018-103428号公報(特許請求の範囲、図4等)
【特許文献3】実開平5-483号公報(実用新案登録請求の範囲、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題などに鑑み、これを解消しようとするものであり、筆記具を持ち替えることなく、筆記方向により描線幅を簡単にかき分けることができる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために鋭意検討した結果、インクタンクに収容された筆記具用インクを、中継芯を経由してペン先の筆記部で筆記可能となる筆記具であって、前記ペン先の特定の部位に1つのスリットを形成することにより、上記目的の筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明の筆記具は、インクタンクに収容された筆記具用インクを、中継芯を経由してペン先の筆記部で筆記可能となる筆記具であって、前記ペン先の筆記部には1つのスリットを形成し、該スリットは中心から径方向外周に異なる長さであることを特徴とする。
前記スリットの内面は、中継芯の外周面と当接していることが好ましい。
前記筆記部径方向側面には開口部が形成されていることが好ましい。
前記ペン先はベース材料に添加材を1~50質量%含有することが好ましい。
前記筆記具用インクは、表面張力が30~60mN/mであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筆記具を持ち替えることなく、筆記方向により簡単に描線幅をかき分けることができる筆記具が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の筆記具の実施形態の一例を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は正面図、(d)は(c)の縦断面図である。
図2】筆記部を含むペン先部分の拡大図面であり、(a)は拡大部分正面図、(b)は拡大部分縦断面図である。
図3】筆記部を含むペン先部分の拡大図面であり、(a)は筆記部の拡大斜視図、(b)は筆記部において太字で筆記する場合の斜視図、(c)は筆記部において細字で筆記する場合の斜視図である。
図4図1の筆記具に用いる筆記部を含むペン先の一例を示す図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は前方底面側から見た斜視図、(h)は正面視の縦断面図、(i)は底面図である。
図5】本発明の筆記具に用いる筆記部を含むペン先の他例を示す図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は前方底面側から見た斜視図、(h)は正面視の縦断面図、(i)は底面図である。
図6】本発明の筆記具に用いる筆記部を含むペン先の他例を示す図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は前方底面側から見た斜視図、(h)は正面視の縦断面図、(i)は底面図である。
図7】本発明の筆記具の実施形態の他例を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)の縦断面図、(d)は筆記部を含むペン先の部分拡大縦断面図である。
図8図7の筆記具の前方側の部分拡大斜視図である。
図9図7の筆記具に用いる筆記部を含むペン先の一例を示す図面であり、(a)は前方側から見た斜視図、(b)は平面図、(c)は後方側から見た斜視図、(d)は左側面図、(e)は正面図、(f)は右側面図、(g)は前方底面側から見た斜視図、(h)は正面視の縦断面図、(i)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、下記で詳述するそれぞれの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1図4は、本発明の筆記具の実施形態の一例を示すものであり、図1は、平面図、正面図、それらの各縦断面図、図2及び3は筆記部を含むペン先の各拡大図面、図4図1の筆記具に用いる筆記部を含むペン先の一例を示す各図面である。
【0012】
(全体構成)
本実施形態の筆記具Aは、その外部構造として、図1(a)及び(c)に示すように、先軸11及び後軸12を備えた軸筒10と、先軸11の先端側に固着されたペン先50とを備えている。また、先軸11には、未使用時におけるペン先50の筆記部(アウター)のインクの乾燥などを防ぐべく、キャップ(図示せず)が取付自在となっている。
一方、本実施形態に係る筆記具Aは、その内部構造として、図1(b)及び(d)に示すように、筆記具用インク40が充填される筒形状のインクタンク13と、先軸11の内部に圧入されるコレクター20と、該コレクター20の軸心となる中心孔21内に挿入されている中継芯30とを備えている。
【0013】
(軸筒10)
図1(a)~(d)に示すように、軸筒10は、後端が閉鎖された筒形状のインクタンク13と、先端が先細り形状を呈し、インクタンク13の先端がその後端の内周に嵌入している筒形状の先軸11と、後端を閉鎖させ、その先端の内周には先軸11の後端が嵌入している筒形状の後軸12とから構成されている。これらの先軸11、後軸12及びインクタンク13を備えた軸筒10は、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成することができる。
【0014】
(コレクター20)
コレクター20は、ABS樹脂等により形成されており、先軸11の内部に圧入等されている。このコレクター20は、図1(b)及び(d)に示すように、複数枚の板状部材が軸方向へ平行に配置されており、この板状部材間に図示しないインクが保留可能となっている。さらに、このコレクター20の軸心となる中心孔21には、繊維束体により形成された中継芯30が貫装されており、前方側には筒状の収容室22が一体に形成されている。
上記コレクター20の後方側は先軸11に圧入されると共に、前方側は別部材となる先軸11内周面に密着すると共に、上記収容室22の外周面等に密着する装着部材36により、コレクター20全体は先軸11内に固着されることとなる。
【0015】
(中継芯30)
中継芯30は、多孔質の材質、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、これらの繊維束に合成樹脂を含浸させたものや、樹脂粒子、焼結体等の多孔体で形成されている。この中継芯30は、後端部31がインクタンク13内に挿入されているので、インクタンク13内のインクは当該中継芯30を介して毛管力によりペン先50の筆記部まで供給する機能を有するものであり、本実施形態ではその長手方向の長さは先軸11の外面に露出した長さより長いものとなっている。
この中継芯30の前方側の外周には、筒状のホルダー部材35が固着されており、該ホルダー部材35の先端側は中継芯30の先端部32が露出している。このホルダー部材35は、前記コレクター20の前方側の筒状の収容室22に装着されると共に、先軸11の開口部11aに固着されるペン先50内に挿入される構造となっている。
【0016】
(筆記具用インク40)
本発明において、上記インクタンク13に充填される筆記具用インク40の組成は、特に限定されず、筆記具の用途等に応じて、水性インク、油性インク、熱変色性インクなどの好適な配合処方とすることができ、水性インク用着色樹脂微粒子の分散液と、水溶性有機溶剤とを含有し、表面張力が30~60mN/mとなる筆記具用水性インク組成物が望ましい。
用いることができる水性インク用着色樹脂微粒子の分散液は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散されているものが挙げられる。
【0017】
用いることができる(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーは、内包可能な染料の量を多くしても、色の濃い発色性に優れる安定な着色樹脂微粒子が得られる点、並びに、得られる着色樹脂微粒子が筆記具用などの色材として十分な描線の濃度となる点などから用いるものである。これ以外の(メタ)アクリル酸n-ブチルなどの(メタ)アクリル酸化合物などの使用では、上記の効果を発揮できないこととなる。
なお、上記「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を表す。また、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの製造法は、既知であり、従来の製法、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルは、(メタ)アクリル酸と、シク
ロヘキサノールとを無機酸、有機スルホン酸、強酸性イオン交換樹脂等の触媒を用いてエステル化するエステル化法や、チタンや錫等を含む有機金属化合物を触媒に用いるエステル交換法により、製造することができる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの他に、更に、発色性に優れる着色樹脂微粒子を得る点等から、好ましくは、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー以外の疎水性ビニルモノマー、水性モノマーを用いることができる。
疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー以外のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類、スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類などの少なくとも1種のモノマーを用いることができる。
用いることができる疎水性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、スチレン、メチルスチレン等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。
用いることができる水性モノマーとしては、例えば、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-プロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール-テトラメチレングリコール-モノメタクリレート、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノメタクリレート等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。
【0019】
用いることができる塩基性染料としては、例えば、ジ及びトリアリールメタン系染料;アジン系(ニグロシンを含む)、オキサジン系、チアジン系等のキノンイミン系染料;キサンテン系染料;トリアゾールアゾ系染料;チアゾールアゾ系染料;ベンゾチアゾールアゾ系染料;アゾ系染料;ポリメチン系、アゾメチン系、アザメチン系等のメチン系染料;アントラキノン系染料;フタロシアニン系染料等の塩基性染料などの少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、水溶性の塩基性染料が望ましい。
【0020】
用いることができる具体的な塩基性染料としては、C.I.ベーシックイエロー(-1,-2,-9,-80等)、C.I.ベーシックオレンジ(-1,-2,-7,-34等)、C.I.ベーシックレッド(-1,-2,-3,-53等)、C.I.ベーシックバイオレット(-1,-2,-3,-39等)、C.I.ベーシックブルー(-1,-2,-5,-88等)、C.I.ベーシックグリーン(-1,-4,-6,-10等)、C.I.ベーシックブラウン(-1,-2,-4,-15等)、C.I.ベーシックブラック(-1,-2,-7,-8等)などのCOLOR INDEXに記載されている各No.の各色の染料が挙げられる。
また、これらの市販品も使用することができ、黄色塩基性染料では、AIZEN CATHILON YELLOW GLH(保土谷化学工業社製の商品名)等、赤色塩基性染料では、AIZEN CATHILON RED BLH、AIZEN CATHILON RED RHなど(以上、保土谷化学工業社製の商品名)、Diacryl Supra Brilliant Red 2Gなど(三菱化学社製の商品名)、Sumiacryl Red B(住友化学社製の商品名)等、青色塩基性染料では、AIZEN CATHILON TURQUOISE BLUE LH(保土谷化学工業社製の商品名)等、緑色塩基性染料では、Diacryl Supra Brilliant Green 2GL(三菱化学社製の商品名)等、茶色塩基性染料では、Janus Brown R(日本化学社製の商品名)、AIZEN CATHILON BROWN GH(保土谷化学工業社製の商品名)等が挙げられる。
【0021】
また、用いることができる油溶性染料としては、一般に市販されているモノアゾ、ジスアゾ、金属錯塩型モノアゾ、アントラキノン、フタロシアニン、トリアリールメタン等が挙げられる。また、酸・塩基性染料等の官能基を疎水基で置換した造塩タイプ油溶性染料も使用することができる。
黄色系としては、C.I.ソルベントイエロー114、116;オレンジ系としては、C.I.ソルベントオレンジ67;赤色系としては、C.I.ソルベントレッド122、146;青色系としては、C.I.ソルベントブルー5、36、44、63、70、83、105、111;黒色系としては、C.I.ソルベントブラック3、7、27、29;等がそれぞれ挙げられる。
具体的な市販油溶性染料としては、青染料SBNブルー701(保土谷化学工業社製)、青染料オイルブルー650(オリエント化学工業社製)、青染料サビニールブルーGLS(クラリアント社製)、赤染料SOC-1-0100(オリエント化学工業社製)、オイルブラック860、オイルピンク314、オイルイエロー3G、バリファストピンク2310N、同レッド3312、同イエローCGHNnew、同イエロー1108、同ブラック3830(オリエント化学工業社製)等を挙げることができる。
【0022】
用いる水性インク用着色樹脂微粒子の分散液は、少なくとも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子が水に分散されているものであり、その製造法としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーに、または、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーとこれ以外の疎水性ビニルモノマーなどを含む混合モノマーに、上記塩基性染料又は油溶性染料を溶解し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などを重合開始剤として、また還元剤を更に併用した重合開始剤とし、更にトリアリルイソシアヌレート、イソシアヌル酸トリアリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ジトリメチロールプロパンアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、メトキシ化ビスフェノールAメタクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレート、ジトリメチロールプロパンメタクリレート、ジペンタエリスリトールメタクリレート、エトキシ化ポリグリセリンメタクリレートなどの架橋剤や、必要に応じて、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)-アルキルエーテル硫酸アンモニウム、エーテルサルフェート、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリアクリル酸アンモニウム、スチレン-マレイン酸コポリマーアンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの重合性界面活性剤(乳化剤)を用いて乳化重合することなどにより製造することができる。また、上記染色は重合と同時に行ったが、重合後に塩基性染料又は油溶性染料を溶解して染色を行っても良い。
上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤を用いると、着色樹脂微粒子の耐熱性、機械的特性、耐加水分解性、耐候性が向上できるので好ましい。
【0023】
上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーなどに、更に、ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーなどを適宜量混合して乳化重合を行ってもよい。このジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーを更に、混合して乳化重合したものでは、分散液中の水分が揮発したとしても安定性が損なわれにくく、更に安定性に優れた水性インク用着色樹脂微粒子の分散液などが得られるものとなる。
用いることができるジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーには、ジシクロペンタニルアクリレートモノマー、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートモノマー、ジシクロペンテニルメタクリレートを含むものである。
また、上記乳化重合の際には、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー、これ以外の上記疎水性ビニルモノマーなど、上記ジシクロペンタ(テ)ニル(メタ)アクリレートモノマーの他に、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミド基、イソシアネート基などの反応性架橋基を有するモノマーや2つ以上のビニル基を有する多官能性モノマーを適宜量配合して架橋してもよい。
【0024】
前記水性インク用着色樹脂微粒子を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は、着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であることが必要であり、好ましくは、30~95質量%であることが望ましい。
なお、上記「全ポリマー成分」とは、着色樹脂微粒子を構成する重合性成分をいい、具体的には、用いる(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、用いる他のモノマー成分と、後述する架橋剤の合計量をいう。
上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量を全ポリマー成分に対して、30質量%以上とすることにより、本発明の効果を発揮せしめることができ、一方、この含有量が30質量%未満であると、経時安定性が劣ることとなり、好ましくない。
【0025】
また、前記水性インク用着色樹脂微粒子を構成するポリマー成分のうち、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマー以外の他のモノマー成分の含有量は、用いる(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと後述する架橋剤との合計量の残部となるものである。
好ましくは、他のモノマー成分の含有量は、用いる筆記具用インクの効果を更に発揮せしめる点、分散性の点、反応性の点から、全ポリマー成分に対して、5~85質量%とすることが望ましい。
【0026】
上記塩基性染料又は油溶性染料の含有量は、発色性、十分な描線濃度を得る点、安定性などの点から、全ポリマー成分に対して、15~50質量%とすることが望ましい。
この染料の含有量を15%以上とすることにより、十分な発色性、十分な描線濃度を発揮せしめることができ、一方、染料の含有量が15質量%未満であると、発色性が十分でなく、本発明の効果を発揮できないものとなる。
【0027】
上記必要に応じて用いることができる重合性界面活性剤としては、上記乳化重合に通常用いられる重合性界面活性剤であれば特に制限はないが、例えば、重合性界面活性剤としては、アニオン系またはノニオン系などの重合性界面活性剤であり、アデカ(株)製のアデカリアソープNE-10、同NE-20、同NE-30、同NE-40、同SE-10N、花王(株)製のラテムルS-180、同S-180A、同S-120A、三洋化成工業(株)製のエレミノールJS-20、第一工業製薬社製のアクアロンKH-10などの少なくとも1種が挙げられる。これらの重合性界面活性剤の使用量は、上記モノマー全量に対して、0.1~50質量%が望ましい。
また、上記トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤の含有量は、上記モノマー全量に対して、0.1~25質量%が望ましい。
【0028】
上記好ましい態様、具体的には、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーに、上述の塩基性染料又は油溶性染料を溶解し、乳化重合することにより、または、少なくとも、上記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと他のモノマー成分を含む混合モノマーの重合後に塩基性染料又は油溶性染料を溶解して染色することにより、樹脂固形分として20~50質量%の着色樹脂微粒子が水に分散されている水性インク用着色樹脂微粒子の分散液が得られることとなる。
この着色樹脂微粒子の分散液は、従来よりも十分な発色性、経時安定性などに優れた機能を有する色材となるものであり、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具に好適な筆記具用水性インク組成物の色材として有用となるものである。
【0029】
また、上記で得られる水性インク用着色樹脂微粒子の分散液における着色樹脂微粒子の平均粒子径は、20~300nmであることが望ましい。
上記の平均粒子径の範囲とすることにより、ペン先50や中継芯30内で目詰まりすることなく、更に、保存安定性などに優れたものとなる。
なお、本明細書で規定する「平均粒子径」は、散乱光強度分布によるヒストグラム平均粒子径であり、本発明(後述する実施例を含む)では、粒度分布測定装置〔FPAR1000(大塚電子社製)〕にて、測定した値D50の値である。
【0030】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジ オール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル1,3-ブタンジオール、2メチルペンタン -2,4-ジオール、3-メチルペンタン-1,3,5トリオール、1,2,3-ヘキサントリオールなどのアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどのグリセロール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなどのグリコールの低級アルキルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダリジノンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
その他にも、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどのアミド類、アセトンなどのケトン類などの水溶性有機溶剤を混合することもできる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、サインペンやマーキングペン、ボールペンなどの筆記具種により変動するものであり、インク組成物全量に対して、1~40質量%、描線乾燥性を更に向上させる点から、10質量%以下としたインク組成に対して特に有効であり、より好ましくは、3~8質量%とすることが望ましい。
【0032】
水(水道水、精製水、イオン交換水、蒸留水、純水など)の含有量は、インク組成物全量に対して30~90質量%が好ましく、より好ましくは40~60質量%である。
また、着色樹脂微粒子の含有量は、筆記具種、流出機構(ペン芯、ボールペン)等により変動するものであるが、固形分量で、筆記具用水性インク組成物全量に対して、1~30質量%が好ましい。
【0033】
用いることができる上記筆記具用インクでは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて防腐剤もしくは防黴剤、pH調整剤、消泡剤などを適宜選択して使用することができる。
例えば、pH調整剤として、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリポリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなど炭酸やリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などの少なくとも1種が挙げられる。
防腐剤もしくは防黴剤として、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルフォニル)ピリジン、安息香酸やソルビン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物などの少なくとも1種が挙げられる。
潤滑剤としてリン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸アルカリ塩、ノニオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのフッ素系界面活性剤、ジメチルポリシロキサンのポリエチレングリコール付加物などのポリエーテル変性シリコーンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
本発明で用いる筆記具用インクは、筆記具用(サインペン、マーキングペン、万年筆用等)インクの用途に応じて、上述の各成分を適宜組み合わせて、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によってインクタンク13に充填される所定物性の筆記具用インクを調製することができる。
用いる筆記具用インクにおいて、濃度差のない描線を更に効果的に発揮せしめる点、更に裏抜けが生じにくい点から、好ましくは、表面張力は、25℃において、30~60mN/mであることが望ましい。この表面張力の調整は、上記インク成分となる各成分の種類、その含有量等を好適に組み合わせることなどにより調整することができる。
【0035】
(ペン先50)
ペン先50は、先軸11の開口部11aに嵌合により固着されるものであり、図4(a)~(i)に示すように、中継芯30を固着したホルダー部材35が挿入される筒状体51からなる本体部52と、前方側にフランジ部53とを有し、上記本体部52とフランジ部53の上面部は平坦面54となっており、フランジ部53の前方側の中央部に鉛直方向に平板状のペン先体60が一体に形成されている。
このペン先体60は、先端側は円弧状の円弧状部61を有すると共に、該円弧状部61の外周面61aには先端側中心62から径方向外周に異なる長さのスリットが形成、本実施形態では、図4(a)~(i)に示すように、先端側中心62の下方側に長いスリット63と、先端側中心62の上方側に短いスリット64とが一体に形成されており、当該スリット63、64の長さにより、後述するようにそれぞれ太い描線と細い描線の筆記が可能となる各筆記部63a、64aとなる。
【0036】
また、ペン先体60における筆記部63a、64aの径方向側面となる内部中央部側には開口部(窓部)67が形成されている。この開口部67は、前方側が中継芯30の先端部32の先端面32aが当接して内周面が円弧状の切り欠きとなる装着開口部68となっており、後方側が拡形となり、中継芯30を固着したホルダー部材35の先端側が保持される拡形保持部69となっており、この拡形保持部69の直径は上記本体部51の筒状体52と同一の大きさとなっている。
また、前記スリット63と64の内部(内面)は、中継芯32の先端面32aと当接するように内部まで形成されて(図示符号では65)、上記スリット63、64及び65は1つのスリットとなっている。これらのスリットの長手方向の長さ(先端側中心62を基準)、幅方向の長さなどは、毛管力の大きさ、描線の長短等を調整する点などを勘案して設定されるものであり、描線が長いスリット63では、長手方向の長さが0.5~5.0mmとすることが好ましく、描線が短いスリット64では、長手方向の長さが0.05~2.0mmとすることが好ましく、幅方向の長さは共に0.05~0.50mmとすることが好ましい。本実施形態では、幅方向の長さは共に0.10mmであり、スリット63の長さは3.0mm、スリット64の長さは0.2mmである。
【0037】
このように構成される本実施形態の筆記具Aでは、上記コレクター20内に配装される中継芯30によりペン先50に供給された筆記具用インク40は装着開口部66の当接面まで貫通形成されたスリット63、64及び65の各毛管力により筆記具用インク40が円弧状部61の外周面61aに形成された各スリット63、64の各表面まで供給されることとなるので、太い描線等を筆記したい場合は、図3(b)に示すように、筆記部63aを筆記面に接すれば太い描線等を筆記することができ、細い描線等を筆記したい場合は、軸筒10(先軸11)を180°回転すれば、図3(c)に示すように、筆記部63bを筆記面に接すれば容易に細い描線等を筆記ことができ、筆記具を持ち替えることなく、簡単に、かつ、筆感も損なうことなく筆記方向により描線幅をかき分けることができる筆記具が得られることとなる。
また、この筆記具Aにおいて、上記各筆記部を含むペン先50のベース材料として、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種若しくは2種以上の組み合わせからなるものを使うことができる。また、並行繊維束やフェルト等の繊維束を加工若しくはこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、各種のプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)、オレフィン系、スチレン系などの熱可塑性エラストマーとしてもよい。より好ましくは、ポリアセタール樹脂を用いて射出成形、光造形、粉末焼結積層造形、FDM、金属積層造形など三次元プリンタになどにより成形したものを用いることで、より優れた筆感を実現できるものとなる。
【0038】
ペン先50は、さらにベース材料よりも高硬度の材料である添加材を1質量%以上50質量%未満、より好ましくは5質量%以上15質量%以下配合することで、筆記の際に被筆記面側の紙面等を痛めずに滑らかな筆感を実現できるものとなる。
この添加材を1%以上配合しないと、十分な筆記感を得ることが困難であり、また、50%以上の場合は、筆記の際に著しくペン先50が摩耗してしまうので、50%未満とすることが好ましい。
用いることができる添加材としては、例えば、二酸化チタン、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛フェライト顔料、べんがら、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、鉄黒、黄鉛、クロムオレンジ、モリブデンレッド、カドミウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムレッド、炭酸カルシウム、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ジアソライド系、縮合アゾ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系、窒化ホウ素、シリカ、アルミナ、などの無機粒子、有機粒子の非樹脂材料がよく、その中でもカーボンブラックや酸化チタン酸化チタンやカーボンブラックが好適である。また、これらの粒子のサイズは100nm~10μmが好ましい。
【0039】
本発明の筆記具は、上述のように、筆記具のペン先50、インクタンク13からのインク供給機構・構造を備えたことに特徴を有するものであり、これら以外の構成は、特に限定されるものではない。以下に、本発明の筆記具の他の各実施形態等について説明する。
図5図6は、本発明の筆記具におけるペン先50の実施形態の他例を示す各図面であり、図7図9は、本発明の筆記具の他例を示す各図面である。なお、上記実施形態の筆記具Aと同様の構成、機能を有する場合は、以下の各実施形態において、各図面等に同一符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図5(a)~(i)は、本発明の筆記具におけるペン先50の実施形態の他例を示す各図面である。
本実施形態のペン先50は、図1図4のペン先に較べ、描線が長いスリット63の幅方向の長さを長くしたものであり、スリット63と64の内部(内面)は、中継芯32の先端面32aと当接するよう当接面と共に、その拡形保持部69の底面まで形成されて(図示符号では65a)、上記スリット63、64及び65aは1つのスリットとなっている。
この実施形態のペン先50によれば、筆記部63aで更に太い描線等を筆記することができ、上記図1図4の筆記具Aと同様の機能を備えるので、筆記具を持ち替えることなく、簡単に、かつ、筆感も損なうことなく筆記方向により描線幅をかき分けることができ、優れた筆感を実現できる筆記具が得られることとなる。
【0041】
図6(a)~(i)は、本発明の筆記具におけるペン先50の実施形態の他例を示す各図面である。
本実施形態のペン先50は、ペン先体の形状等が図4及び図5の各ペン先と相違するものであり、図6(a)~(i)に示すように、フランジ部53の前方側が平板状でなく、また、開口部(窓部)を設けられず、三角錐状のペン先部80となっており、三角錐状の先端側が平坦面部81となっており、この三角錐状のペン先部80の平坦面部81における中央部で縦断する方向に短いスリット82と、三角錐状の底面側となる部分に長いスリット83とが一体に形成されており、スリット82とスリット83の内部(内面)は、中継芯30の先端面32aと当接するように内部まで形成されて1つのスリットとなっている。また、ペン先部80の内部には筒状体51と連設され、中継芯30の先端面32aを当接する収容部85が形成されている。
この実施形態のペン先50のペン先体80によれば、ペン先体の筆記角度を変更することにより、スリット82で短い描線等を筆記することができ、スリット83で長い描線等を筆記することができ、上記図1図4の筆記具Aと同様の作用効果を発揮することができるので、筆記具を持ち替えることなく、簡単に、かつ、筆感も損なうことなく筆記方向により描線幅をかき分けることができ、優れた筆感を実現できるものとなる。
【0042】
図7図9は、本発明の筆記具の他例となるペン先が万年筆形状となる筆記具を示す各図面である。
本実施形態の筆記具Bは、ペン先が万年筆形状となる点などで、上記実施形態の筆記具Aと異なるものである。
具体的には、この実施形態の筆記具Bのペン先50は、ペン先体の形状等が図4図6の各ペン先と相違するものであり、中継芯30の前方側を挿入する筒状体51からなる本体部52を有し、上記本体部52の前方側が平板状や三角錐形状でなく、三角錐を縦断方向に切断した半三角錐体形状となるペン先体90となっている。
このペン先体90の底面側となる長手方向中央部には、中継芯30の上面を当接支持する当接溝91が形成されている。また、上記半三角錐体形状となるペン先状体90の先端側が丸みを帯び、下方に突部93を有する曲面部92となっており、この半三角錐体形状の中央部の前方側付近から曲面部92、突部93の中央部にスリット95が一体に形成されている。このスリット95の内部(内面)は、中継芯30の先端面32a及び上端面32bとそれぞれ当接する突部93の当接面93aと上端当接面93bまで形成されて(図示符号では95a)、上記スリット95及び95aは1つのスリットとなっている。
また、インクタンク13内には筆記具用インク40を撹拌する金属や硬質樹脂で構成された撹拌ボール45を有する点、中継芯30の後端部は先軸11に一体に設けられる中継芯保持部材25をインクタンク13内まで設けると共に、上記中継芯保持部材25の外周にパッキン部材26を設けた点、ペン先50の本体部52は先軸11の開口部11aに継手部材37を介してコレクター芯20の前方側に設けた収容部23に固着した点で上記実施形態の筆記具Aと若干異なるものである。
【0043】
このように構成される筆記具Bは、上記コレクター20内に配装される中継芯30によりペン先50に供給された筆記具用インク40はペン先状体90の突部93,曲面部92まで貫通形成されたスリット95の毛管力により筆記具用インク40がスリット95の表面まで供給されることとなるので、太い描線等を筆記したい場合は、曲面92側のスリット95を筆記面に接すれば太い描線等を筆記することができ、細い描線等を筆記したい場合は、軸筒10(先軸11)を180°回転すれば、突部93の下方側に形成したスリットを筆記面に接すれば容易に細い描線等を筆記ことができ、筆記具を持ち替えることなく、簡単に、かつ、筆感も損なうことなく筆記方向により描線幅をかき分けることができる筆記具が得られることとなる。
また、この筆記具Cにおいても、上記筆記部を含むペン先50は、ポリアセタール樹脂と添加材を用いて射出成形などにより一体成形したものを用いることにより、上記筆記具Aの作用効果と同様に、更に優れた筆感を実現できるものとなる。
更に、筆記具用インクとして、表面張力が30~60mN/mであることにより、更に優れた筆感を実現できるものとなる。
【0044】
本発明の筆記具は、上記各実施形態などに限定されることなく、本発明の技術思想を変更しない範囲内で更に種々変更することができる。
上記実施形態の中綿式の筆記具Cにおけるペン先構造を上記図1図4図5図6図7図9で示した各形態のペン先に変更適用して実施してもよいものである。
【実施例0045】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
〔実施例1〕
下記構成及び図1図4に準拠するペン先を有する筆記具、下記組成の筆記具用インクを使用した。ペン先の寸法等は下記に示す大きさ等を使用した。
【0047】
(筆記具の構成)
軸筒10(先軸11、後軸12)、インクタンク13、ホルダー部材35:各ポリプロピレン製
コレクター20:ABS樹脂製
中継芯30:PET製、φ1.4×50mm
ペン先50、ペン先体60:ポリアセタール樹脂90質量%と酸化チタン10質量%を混練の後、射出成形により一体成形。
長手方向に長いスリット63:0.2mm、長手方向に短いスリット64:3.0mm、各スリットの幅方向長さ:0.1mm
【0048】
(筆記具用インク組成:インク色:蛍光黄色)
筆記具用インクとして、下記組成のインク(合計100質量%)を使用した。
(製造例1:水性インク用着色樹脂微粒子の分散液の調製)
2リットルのフラスコに、撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、モノマー投入用1000ml分液漏斗を取り付け、温水槽にセットし、蒸留水329.5部、グリセリンモノメタクリレート〔ブレンマーGLM、日油社製〕5部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム〔アクリルエステルSEM-Na、三菱ケミカル社製〕5部、重合性界面活性剤〔ADEKA社製、アデカリアソープSE-10N、エーテルサルフェート〕20部及び過硫酸アンモニウム0.5部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら、内温を50℃まで昇温した。
一方、メタクリル酸シクロヘキシルモノマー55部と、他のモノマーとして、メタクリル酸n-ブチル35部とからなる混合モノマーに、油溶性染料〔サビニールブルーGLS、クラリアント社製〕40部、架橋剤〔トリアリルイソシアヌレート、日本化成社製、「タイク(TAIC)」〕10部を混合した液を調製した。
この調製液を上記分液漏斗から温度50℃付近に保った上記フラスコ内に撹拌下で3時間にわたって添加し、乳化重合を行った。さらに5時間熟成して重合を終了し、水性インク用着色樹脂微粒子の分散液(粒子1)を得た。
前記メタクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量は、着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、50.0質量%、前記油溶性染料の含有量は全ポリマー成分に対して、36.4質量%であった。また、着色樹脂微粒子の平均粒子径は、40nmであった。
上記で得た着色樹脂微粒子の分散液を用いて下記筆記具用インクを調製した。
筆記具用インク組成:(全量100質量%)
着色樹脂微粒子の分散液 50質量%
pH調整剤(トリエタノールアミン) 1質量%
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 5質量%
イオン交換水 44質量%
上記筆記具用インクの表面張力を自動表面張力計、DY-300(協和界面科学社製)を用いて表面張力(25℃)を測定したところ、40mN/mであった。
〔実施例2〕
ペン先50、ペン先体60:ポリアセタール樹脂95質量%とカーボンブラック5質量%を混練の後、射出成形により一体成形。
その他の筆記具の構成は実施例1と同様にした。
【0049】
この図1図4準拠の実施例1及び実施例2のペン先50を用いた筆記具Aでは、筆記具用インクが中継芯30によりペン先50のペン先体60の円弧状部61の外周面61aに形成した各スリット63、64の各表面まで供給されていることを確認した。そして、この筆記具により筆記部63aを筆記面に接すれば太い描線等を筆記することができ、また、軸筒10(先軸11)を180°回転して、筆記部63bを筆記面に接すれば容易に細い描線等を筆記できることを確認した。また、このペン先における筆記において、筆感も損なうことなく滑らかに描線幅をかき分けることができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の筆記具では、サインペン、アンダーラインペン、油性マーキングペン、水性マーキングペンと呼ばれるタイプの筆記具に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 筆記具本体
20 コレクター
30 中継芯
50 ペン先
60 ペン先体
63、64 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9