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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127797
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】圧力調整弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20220825BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F02M37/00 311K
F16K17/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025987
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA08
3H059BB04
3H059CD05
3H059EE01
3H059FF13
(57)【要約】
【課題】バルブ部材の閉弁時のシール性の低下を抑制する。
【解決手段】圧力調整弁は、平面状の副シート面41を有する金属製の副バルブシート40と、副バルブシート40に対して相対的に揺動可能に設けられかつ副シート面41に接離する円環状の副シール面54を有する金属製の副バルブ体50と、を備える。副シール面54は、副バルブ体50に形成されかつ内周側面52と外周側面53とを有する短円筒状の副バルブ部51の先端部に形成される。副シール面54と内周側面52との間には、両面をなだらかに接続する断面円弧状の内側接続曲面55が形成される。副バルブ部51の副シール面54と外周側面53との間には、両面をなだらかに接続する断面円弧状の外側接続曲面56が形成される。外側接続曲面56の曲率は内側接続曲面55の曲率よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状のシート面を有する金属製のシート部材と、
前記シート部材に対して相対的に揺動可能に設けられかつ前記シート面に接離する円環状のシール面を有する金属製のバルブ部材と、
を備えており、
前記シール面は、前記バルブ部材に形成されかつ内周側面及び外周側面を有する円筒状の環状凸部の先端部に形成されている、圧力調整弁であって、
前記環状凸部のシール面と内周側面との間には、両面をなだらかに接続する断面円弧状の内側接続曲面が形成されており、
前記環状凸部のシール面と外周側面との間には、両面をなだらかに接続する断面円弧状の外側接続曲面が形成されており、
前記外側接続曲面の曲率は内側接続曲面の曲率よりも小さい、圧力調整弁。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力調整弁であって、
前記シール面の硬度は前記シート部材の硬度よりも大きい、圧力調整弁。
【請求項3】
請求項2に記載の圧力調整弁であって、
前記外側接続曲面の硬度は前記シート部材の硬度よりも小さい、圧力調整弁。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の圧力調整弁であって、
前記シール面は、めっき層により形成されている、圧力調整弁。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の圧力調整弁であって、
前記シール面は、前記バルブ部材とは別部材により形成されている、圧力調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(従来例という)には、燃料タンク内の燃料を内燃機関(エンジン)に供給する燃料供給装置に用いられる圧力調整弁が開示されている。その圧力調整弁は、図11に示すように、平面状のシート面7を有する金属製のシート部材6と、シート部材6に対して相対的に揺動可能に設けられかつシート面7に接離する円環状のシール面3を有する金属製のバルブ部材2と、を備える。シール面3は、バルブ部材2に形成されかつ円筒状の環状凸部5の先端面に形成されている。なお、図11に圧力調整弁1のバルブ部材2の開弁状態を実線2で示し、その閉弁状態(シール状態)を二点鎖線2で示す。また、本明細書では環状凸部5を有する側の部材をバルブ部材とし、残りの部材をシート部材6とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-48560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例の圧力調整弁1において、バルブ部材2が閉弁する際、バルブ部材2が傾いた状態で閉弁する場合がある(図12参照)。この場合、図13に示すように、シート部材6のシート面7にバルブ部材2の環状凸部5のシール面3が片当りすなわちシール面3の外周側エッジ部4が当接(衝突)する。このとき、例えばバルブ部材2及びシート部材6の硬度を同一とすると、シート面7の塑性変形による一次凹み7aが生じ、その反動による塑性変形でシート面7に隆起部7bが生じることがある。また、バルブ部材2の閉弁時(シール時)には、図14に示すように、隆起部7bがシール面3に当接(衝突)することで、シール面3の塑性変形による二次凹み3aが生じることがある。このようなシート面7及びシール面3の傷付きにより、バルブ部材2の閉弁時のシール性が低下する虞があった。
【0005】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、バルブ部材の閉弁時のシール性の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、平面状のシート面を有する金属製のシート部材と、前記シート部材に対して相対的に揺動可能に設けられかつ前記シート面に接離する円環状のシール面を有する金属製のバルブ部材と、を備えており、前記シール面は、前記バルブ部材に形成されかつ内周側面及び外周側面を有する円筒状の環状凸部の先端部に形成されている、圧力調整弁であって、前記環状凸部のシール面と内周側面との間には、両面をなだらかに接続する断面円弧状の内側接続曲面が形成されており、前記環状凸部のシール面と外周側面との間には、両面をなだらかに接続する断面円弧状の外側接続曲面が形成されており、前記外側接続曲面の曲率は内側接続曲面の曲率よりも小さい、圧力調整弁である。
【0008】
第1の手段によると、シート部材に対してバルブ部材が相対的に傾いた状態で閉弁するときには、曲率の大きい外側接続曲面がシート面に当接する。このため、従来例に比べて、シート面の塑性変形による傷付きの発生を抑制することができる。また、シート面に対する当接頻度が低い内側接続曲面の曲率が大きいことで、内周側面と外周側面との間の距離を同じとして内側接続曲面の曲率を外側接続曲面の曲率と同じにする場合と比べて、シール面の面積を増大させことができる。よって、バルブ部材の閉弁時のシール性の低下を抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、第1の手段の圧力調整弁であって、前記シール面の硬度は前記シート部材の硬度よりも大きい、圧力調整弁である。
【0010】
第2の手段によると、仮にシート面に外側接続曲面の当接により傷付きによる隆起部が発生したとしても、バルブ部材の閉弁時(シール時)において、シート面の隆起部によるシール面の傷付きを抑制しつつ、隆起部がシール面により押圧されることによりシート面に平坦化される。このため、バルブ部材の閉弁時のシール性の低下を一層抑制することができる。
【0011】
第3の手段は、第2の手段の圧力調整弁であって、前記外側接続曲面の硬度は前記シート部材の硬度よりも小さい、圧力調整弁である。
【0012】
第3の手段によると、シート面に外側接続曲面が当接した際のシート面の傷付きを抑制することができる。
【0013】
第4の手段は、第2又は3の手段の圧力調整弁であって、前記シール面は、めっき層により形成されている、圧力調整弁である。
【0014】
第4の手段によると、めっき層によりシール面の硬度を高めることができる。
【0015】
第5の手段は、第2又は3の手段の圧力調整弁であって、前記シール面は、前記バルブ部材とは別部材により形成されている、圧力調整弁である。
【0016】
第5の手段によると、別部材によりシール面の硬度を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示の技術によると、バルブ部材の閉弁時のシール性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態にかかる燃料供給装置の概要を示す構成図である。
図2】圧力調整弁を示す断面図である。
図3】圧力調整弁のバルブ機構部を第1状態で示す断面図である。
図4】圧力調整弁のバルブ機構部を第2状態で示す断面図である。
図5】圧力調整弁のバルブ機構部を第3状態で示す断面図である。
図6】副バルブ体の副バルブ部を示す断面図である。
図7】副バルブ体が傾いた状態を示す模式図である。
図8】副バルブシートに副バルブ体の副バルブ部が片当りする状態を示す模式図である。
図9】シート面の傷付き状態を示す模式図である。
図10】シール状態を示す模式図である。
図11】従来例にかかる圧力調整弁の要部を示す模式図である。
図12】シート面にシール面が片当りする状態を示す模式図である。
図13】シート面の傷付き状態を示す模式図である。
図14】シール状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[一実施形態]
以下、本明細書に開示の技術を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。実施形態にかかる圧力調整弁は、自動車等の車両において、燃料タンク内の燃料を内燃機関であるエンジンに供給する燃料供給装置に用いられるものである。
【0020】
(燃料供給装置の概要)
燃料供給装置の概要から説明する。図1は燃料供給装置の概要を示す構成図である。図1に示すように、燃料供給装置10は、燃料タンク11内に設置された燃料ポンプ12を備えている。燃料ポンプ12は、モータ一体型の電動式の燃料ポンプである。燃料ポンプ12は、燃料タンク11内に貯留されている燃料を吸入して加圧した後、燃料供給通路13を介してエンジン15のデリバリパイプ16に供給する。デリバリパイプ16は、燃料供給通路13から供給された燃料を複数のインジェクタ17に分配する。各インジェクタ17は、エンジン15の吸気通路又は燃焼室に燃料を噴射する。
【0021】
燃料供給通路13の途中には、供給方向の燃料の流れを許容しかつその逆流を阻止する逆止弁14が介在されている。逆止弁14は、燃料ポンプ12の動作時に開弁して燃料ポンプ12からエンジン15側への燃料の流れを許容し、燃料ポンプ12の停止時に閉弁して燃料の逆流を阻止する。燃料供給通路13において逆止弁14よりも上流側の通路部分を上流側供給通路部13aといい、逆止弁14よりも下流側の通路部分を下流側供給通路部13bという。
【0022】
上流側供給通路部13aからは燃料タンク11内に連通する燃料排出通路部13cが分岐されている。燃料排出通路部13cにはリリーフ弁19が設けられている。リリーフ弁19は、通常時に閉弁しており、上流側供給通路部13a内の燃料の圧力が所定の圧力すなわち開弁圧Pvよりも高くなると開弁し、上流側供給通路部13aを流れる燃料の一部を燃料排出通路部13cから燃料タンク11内に排出させる。
【0023】
上流側供給通路部13aの途中には、上流側分岐通路18aを介して圧力調整弁20が接続されている。また、下流側供給通路部13bの途中には、下流側分岐通路18bを介して圧力調整弁20が接続されている。圧力調整弁20は、燃圧調整用バルブ機構V1と残圧保持用バルブ機構V2とを備えている。燃圧調整用バルブ機構V1は、燃料ポンプ12の作動時において燃料供給通路13を流れる燃料すなわちエンジン15へ供給される燃料の圧力を所定の圧力に調整する機構である。また、残圧保持用バルブ機構V2は、燃料の供給停止時すなわち燃料ポンプ12の停止時(非作動時)において下流側分岐通路18bを含む下流側供給通路部13b内の燃料の残圧を所定の圧力に保持(調整)する機構である。
【0024】
(圧力調整弁20)
圧力調整弁20を説明する。図2は圧力調整弁を示す断面図である。説明の都合上、図2を基に圧力調整弁20の方位を定めるが、圧力調整弁20の配置方向を特定するものではない。
【0025】
図2に示すように、圧力調整弁20は、略円筒状の内部空間を形成するケーシング23を備えている。ケーシング23は、その下半部を形成する第1ケース部材24と、その上半部を形成する第2ケース部材25と、を結合してなる。両ケース部材24,25の結合部には、径方向外方へ円環状に突出するフランジ部26が形成されている。ケーシング23は金属製である。
【0026】
第1ケース部材24は、上段の大径筒部24aと中段の中径筒部24bと下段の小径筒部24cと上段段付き部24dと下段段付き部24eとを有する段付円筒状に形成されている。上段段付き部24dには複数個の第1燃料入口27が形成されている。小径筒部24cの開口端部(下端部)には第2燃料入口28が形成されている。第2ケース部材25は上面開口部を閉鎖する略円筒状に形成されている。第2ケース部材25の上面部には燃料出口29が形成されている。
【0027】
第1ケース部材24と第2ケース部材25との間には、可撓性を有する円環板状のダイヤフラム31の外周部が挟持されている。ダイヤフラム31により、ケーシング23の内部空間が第1ケース部材24側の主調圧室32と第2ケース部材25側の背圧室33とに区画されている。
【0028】
主調圧室32内には副バルブシート40が設けられている。副バルブシート40は、柱状部40aとフランジ状部40bとを有するT字型中空円筒形状に形成されている。柱状部40aは、第1ケース部材24の中径筒部24b内に圧入されている。副バルブシート40の内部空間を副調圧室43という。
【0029】
図3に示すように、副バルブシート40は、その上面に軸線に直交する平面状の副シート面41を有する。副バルブシート40は、金属製すなわち可塑性材料により形成されている。副バルブシート40の可塑性材料は、例えばSUS303等の金属材料である。
【0030】
副バルブシート40上には副バルブ体50が略同心状に配置されている。副バルブ体50は、円板状の基板部50aと、基板部50aの下面外周部に突出された短円筒状の副バルブ部51と、基板部50aの上面中央部に形成された球状の主バルブシート部58と、を有する。副バルブ部51は、副バルブシート40に対して着座及び離座可能である。
【0031】
図6に示すように、副バルブ部51は、円筒状の内周側面52、円筒状の外周側面53、及び、平面状の下端面54を有する断面略四角形状に形成されている。副バルブ部51の先端部に形成された円環状の下端面54は、副バルブ体50の軸線に直交する平面状の副シール面54(下端面と同一符号を付す)とされている。副シール面54は、副バルブシート40の副シート面41に接離する。内周側面52及び外周側面53は、副バルブ体50の軸線を中心とする円筒面状に形成されている。
【0032】
内周側面52と副シール面54との間には、両面52,54をなだらかに接続する断面円弧状の内側接続曲面55が形成されている。内側接続曲面55の断面形状は、曲率半径R1の曲面で形成されている。また、外周側面53と副シール面54との間には、両面53,54をなだらかに接続する断面円弧状の外側接続曲面56が形成されている。外側接続曲面56の断面形状は、曲率半径R1より大きい曲率半径R2の曲面で形成されている。すなわち、外側接続曲面56の曲率が内側接続曲面55の曲率よりも小さく設定されている。
【0033】
外側接続曲面56は、副シート面41への当接による傷付きを抑制可能な曲率半径R2とする。また、内側接続曲面55は、副シート面41に対して当接しない又はほとんど当接しないため、直角に近い曲率半径R1でもよい。また、副シール面54の径方向(図6において左右方向)の幅は、例えば内周側面52と外周側面54との間の距離(副バルブ部51の径方向の幅)の略1/2の幅に設定されている。なお、副バルブ部51の外周側面53の外径は、副シート面41の外径よりも小さい(図3参照)。
【0034】
副バルブ体50は、金属製すなわち可塑性材料により形成されている。副バルブ体50の可塑性材料は、例えばSUS304等の金属材料である。すなわち、副バルブ体50の硬度は副バルブシート40の硬度よりも小さい。また、副バルブ体50の副シール面54の硬度は、副バルブシート40のシート面41の硬度よりも大きく設定されている。
【0035】
本実施形態では、副シール面54は、副バルブシート40の硬度よりも大きいめっき層54(副シール面と同一符号を付す)により形成されている。めっき層54は、例えば、副バルブ体50の当該部位に表面処理を施すことによって形成されている。めっき層54としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、NiPメッキ(ニッケル・燐メッキ)等が挙げられる。
【0036】
また、副バルブ体50の当該部位に別部材を接合することによって副シール面54を形成することもできる。
【0037】
また、副シール面54は、副バルブ体50の当該部位に熱処理、加工硬化等を施すことによって形成することも可能である。熱処理としては、焼入れ、浸炭、軟窒化等が挙げられる。
【0038】
また、副バルブ部51の副シール面54を除く残りの面、内側接続曲面55及び外側接続曲面56等の面は、副バルブシート40のシート面41の硬度よりも小さい。
【0039】
図3に示すように、主バルブシート部58の表面は、副バルブ体50の軸線上に位置する点pを中心とする球状の主シート面59とされている。副バルブシート40は本明細書でいう「シート部材」に相当する。副シート面41は本明細書でいう「シート面」に相当する。副バルブ体50は本明細書でいう「バルブ部材」に相当する。副バルブ部51は本明細書でいう「環状凸部」に相当する。副シール面54は本明細書でいう「シール面」に相当する。
【0040】
副バルブシート40には、副バルブ体50を覆うキャップ状のリテーナ35が装着されている。リテーナ35の上面部の中央部には第1開口孔35aが形成されている。また、リテーナ35の上面部の外周部又は側面部には、複数個の第2開口孔35bが形成されている。リテーナ35の第1開口孔35aから副バルブ体50の主バルブシート部58が露出されている。これにより、副バルブシート40に副バルブ体50が移動可能にかつ揺動可能に設けられている。また、副バルブ体50の軸方向(上下方向)の移動量は、副バルブシート40とリテーナ35とにより規制される。副バルブシート40とリテーナ35とにより、副バルブ体50を揺動可能とする揺動機構42が構成されている。
【0041】
図2に示すように、副バルブシート40の副調圧室43内には、副バルブ体50を開方向(上方)に付勢する副バルブスプリング37が配置されている。副バルブシート40と副バルブ体50と副バルブスプリング37とにより残圧保持用バルブ機構V2が構成されている。
【0042】
図3に示すように、ダイヤフラム31の内周部には主バルブ体60が設けられている。主バルブ体60は、ダイヤフラム31の上面側に配置された円環板状の挟持部材65と結合されている。主バルブ体60と挟持部材65とによりダイヤフラム31が挟持されている。主バルブ体60は軸方向(上下方向)に貫通する連通孔61を有する。主バルブ体60の下端部には、副バルブ体50の主バルブシート部58に対して着座及び離座可能な円筒状の主バルブ部62が同心状に形成されている。主バルブ部62の内周面には、上端側から下方へ向かって徐々に拡径するテーパ孔状の主シール面63が形成されている。主シール面63は、副バルブ体50の主バルブシート部58の主シート面59に接離する。
【0043】
図2に示すように、第2ケース部材25と挟持部材65との対向面間には、コイルスプリングからなる主バルブスプリング66が介装されている。主バルブスプリング66は、主バルブ体60及び副バルブ体50を閉方向(下方)に付勢している。主バルブスプリング66は、主バルブ体60を閉弁状態すなわち主バルブ部62が副バルブ体50の主バルブシート部58に着座するとともに、副バルブ体50を閉弁状態すなわち副バルブ部51が副バルブシート40に着座する状態に保持する。主バルブ体60と主バルブシート部58と主バルブスプリング66とにより、燃圧調整用バルブ機構V1が構成されている。主バルブスプリング66は副バルブ体50を閉方向に付勢する「付勢部材」に相当する。また、副バルブ体50は、主バルブスプリング66により閉方向すなわち副バルブシート40に向けて付勢される「リフト弁」である。
【0044】
また、主バルブシート部58と主バルブ部62とにより、副バルブ体50を調心するための調心機構64が構成されている。すなわち、バルブ部62の主シール面63が主バルブシート部58の主シート面59に当接することによって、主バルブ体60の軸線上に副バルブ体50の主バルブシート部58の中心が位置合わせされる。続いて、主バルブ部62に副バルブ体50が傾いた状態で当接(着座)するとき(図7参照)は、副バルブ体50の副バルブ部51が副バルブシート40に片当りした後、主バルブ部62の主シール面63に対して主バルブシート部58の主シート面59が摺動する。これにより、主バルブ体60の軸線に対して副バルブ体50の軸線が同一軸線上に調心され、副バルブ部51の副シール面54が副バルブシート40の副シート面41に面接触状に当接(シール)される(図3参照)。
【0045】
図2に示すように、第1ケース部材24の大径筒部24a内には、第1燃料入口27から主調圧室32に流入する燃料を濾過する第1フィルタ67が配置されている。第1フィルタ67と副バルブシート40との間には、ウェーブワッシャからなる第1フィルタ用スプリング68が介在されている。第1フィルタ用スプリング68は、第1フィルタ67を第1ケース部材24の上段段付き部24dに押圧している。
【0046】
第1ケース部材24の中径筒部24b内には、第2燃料入口28から副調圧室43に流入する燃料を濾過する第2フィルタ69が配置されている。第2フィルタ69と副バルブ体50との間には、コイルスプリングからなる副バルブスプリング37が介在されている。副バルブスプリング37は、副バルブ体50を開方向(上方)に付勢しつつ第2フィルタ69を第1ケース部材24の下段段付き部24eに押圧している。副バルブスプリング37の付勢力は、主バルブスプリング66の付勢力よりも小さい。副バルブスプリング37は第2フィルタ用スプリングを兼用する。
【0047】
(燃料供給装置10に対する圧力調整弁20の設置)
図1に示すように、圧力調整弁20は、燃料供給装置10における上流側分岐通路18a及び下流側分岐通路18bを形成する分岐管70に接続される。分岐管70は、内外二重環状をなす内管部71と外管部72とを有する。外管部72と内管部71との間に上流側分岐通路18aが形成されている。内管部71内に下流側分岐通路18bが形成されている。分岐管70は、燃料タンク11内に配置されている。
【0048】
内管部71には、第1ケース部材24の先端部(図2において下端部)が挿入されている。第1ケース部材24の小径筒部24c(図2参照)と内管部71との間には、両者間をシールする第1Oリング73が介在されている。また、外管部72には、第1ケース部材24の基端部(フランジ部26側の端部)が挿入されている。第1ケース部材24の大径筒部24aと外管部72との間には、両者間をシールする第2Oリング74が介在されている。ケーシング23のフランジ部26と第2Oリング74との間には、スペーサ75が介在されている。
【0049】
外管部72には、圧力調整弁20を抜け止めするキャップ77がスナップフィットにより取り付けられている。キャップ77は、上面開口部を閉鎖する略円筒状に形成されている。キャップ77の上面部には開口孔77aが形成されている。外管部72とキャップ77との間には、ケーシング23のフランジ部26が挟持されている。
【0050】
(圧力調整弁20の作用)
圧力調整弁20は、通常時は、図3に示すように、主バルブスプリング66により、主バルブ体60の主バルブ部62が副バルブ体50の主バルブシート部58に着座すると共に、副バルブ体50の副バルブ部51が副バルブシート40に着座する状態に保持されている。この状態すなわち主バルブ体60及び副バルブ体50が共に閉弁する状態を「第1状態」という。
【0051】
(燃料ポンプ12の作動時)
図1において、燃料ポンプ12の作動により上流側分岐通路18aに流入した燃料は、圧力調整弁20の第1燃料入口27を通じて主調圧室32に流入する。一方、下流側分岐通路18bに流入した燃料は、圧力調整弁20の第2燃料入口28から副調圧室43に流入する。
【0052】
主調圧室32の燃料の圧力が主バルブ体60の開弁圧P1を超えると、主バルブスプリング66の付勢に抗して、主バルブ体60が押し上げられるにともない、副バルブスプリング37の付勢力及び副調圧室43の燃料の圧力(主調圧室32の燃料の圧力と同じ圧力)によって副バルブ体50が主バルブ体60と共に押し上げられる。これにより、図4に示すように、副バルブ体50の副バルブ部51が副バルブシート40から離座し、基板部50aがリテーナ35の上面部に当接する。この状態すなわち主バルブ体60が閉弁する状態で副バルブ体50が開弁する状態を「第2状態」という。第2状態では、主調圧室32と副調圧室43とがリテーナ35の第2開口孔35bを介して連通する。
【0053】
さらに、図5に示すように、主バルブスプリング66の付勢に抗して、主バルブ体60が押し上げられると、主バルブ体60の主バルブ部62が副バルブ体50の主バルブシート部58から離座する。この状態すなわち主バルブ体60及び副バルブ体50が共に開弁する状態を「第3状態」という。第3状態では、主調圧室32の燃料が、余剰燃料として主バルブ体60の連通孔61を通じて背圧室33及び燃料出口29を通じてキャップ77の開口孔77aから排出される(図1参照)。なお、主バルブ体60の開弁圧P1は、リリーフ弁19(図1参照)の開弁圧Pvよりも低い圧力である。
【0054】
主調圧室32の燃料の圧力が開弁圧P1以下になると、主バルブスプリング66の付勢により、主バルブ体60の主バルブ部62が副バルブ体50の主バルブシート部58に着座する第2状態となる(図4参照)。さらに、副バルブ体50の副バルブ部51が副バルブシート40に着座する第1状態となる(図3参照)。
【0055】
(燃料ポンプ12の停止時)
図1において、燃料ポンプ12の停止時には、圧力調整弁20の両バルブ体50,60の閉弁、各インジェクタ17の閉弁、及び、逆止弁14の閉弁によって、燃料供給通路13の下流側分岐通路18bを含む下流側供給通路部13b内に燃料の残圧が保持される。この状態において、例えば、エンジン15等が発する熱影響によって、下流側分岐通路18bを含む下流側供給通路部13b内の燃料の圧力が高くなる場合がある。そうすると、副調圧室43の燃料の圧力も高くなる。
【0056】
副調圧室43の燃料の圧力が副バルブ体50の開弁圧P2を超えると、主バルブスプリング66の付勢に抗して、副バルブ体50の副バルブ部51が副バルブシート40から離座する第2状態となる(図4参照)。この状態では、副調圧室43の燃料が、余剰燃料としてリテーナ35の第2開口孔35b(図3参照)を介して主調圧室32に流出した後、第1燃料入口27から上流側分岐通路18aへ排出される(図1参照)。その燃料は、上流側分岐通路18aから上流側供給通路部13a、燃料ポンプ12を通じて燃料タンク11内へ排出される。なお、副バルブ体50の開弁圧P2は、主バルブ体60の開弁圧P1よりも高い圧力で、リリーフ弁19の開弁圧Pvよりも低い圧力である。
【0057】
副調圧室43の燃料の圧力が開弁圧P2以下になると、主バルブスプリング66の付勢によって、副バルブ体50の副バルブ部51が副バルブシート40に着座する第1状態となる(図3参照)。
【0058】
(実施形態による利点)
本実施形態によると、副バルブ体50が閉弁する際、副バルブシート40に対して副バルブ体50が傾いた状態で閉弁する場合がある(図7参照)。このとき、副シート面41に副バルブ部51の外側接続曲面56が当接(衝突)する(図8参照)。このため、従来例(図12及び図13参照)に比べて、副シート面41の塑性変形による傷付きの発生を抑制することができる。また、副シート面41に対して当接しない又はほとんど当接しない内側接続曲面55の曲率が大きいことで、内周側面52と外周側面53との間の距離を同一として内側接続曲面55の曲率を外側接続曲面56の曲率と同じにする場合と比べて、副シール面54の面積を増大させことができる。よって、副バルブ体50の閉弁時のシール性の低下を抑制することができる。ひいては、圧力調整弁20の信頼性及び耐久性を向上することができる。
【0059】
また、副バルブ体50の副バルブ部51が円環状の副シール面54を有する。したがって、副バルブシート40に対して副バルブ体50が偏心した場合でも、副シート面41に対する副シール面54のシール幅(径方向の幅)を周方向に亘って一定化することができる。このため、副シール面54が全周に亘って副シート面41に一定の面圧で面接触することにより、副バルブ体50の閉弁時のシール性を向上させることができる。
【0060】
また、副バルブ部51の副シール面54の硬度が副バルブシート40の硬度よりも大きい。したがって、仮に副シート面41に外側接続曲面56の当接により傷付きによる隆起部が発生したとしても、副バルブ体50の閉弁時(シール時)において、副シート面41の隆起部による副シール面54の傷付きを抑制しつつ、隆起部が副シール面54により押圧されることにより副シート面41に平坦化される。
【0061】
具体的には、図9に示すように、副シート面41に外側接続曲面56が当接することにより、副シート面41の塑性変形による一次凹み41aが生じ、その反動による塑性変形で副シート面41に隆起部41bが生じることがある。このような隆起部41bが発生したとしても、副バルブ体50の閉弁時(シール時)において、副シート面41の隆起部41bによる副シール面54の傷付きを抑制することができる。また、図10に示すように、隆起部41bが副シール面54により押圧されることにより副シート面41に平坦化される。このため、副バルブ体50の閉弁時のシール性の低下を一層抑制することができる。
【0062】
また、外側接続曲面56の硬度が副バルブシート40の硬度よりも小さい。したがって、副シート面41に外側接続曲面56が当接した際の副シート面41の傷付きを抑制することができる。また、仮に外側接続曲面56が凹むような塑性変形を生じたとしても、外側接続曲面56が副シール面54の径方向外側に位置するため、副バルブ体50の閉弁時のシール性に影響しない又はほとんど影響しない。
【0063】
また、めっき層54により副シール面54の硬度を高めることができる。
【0064】
また、副シール面54が副バルブ体50とは別部材により形成された場合は、別部材により副シール面54の硬度を高めることができる。
【0065】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、本明細書に開示の技術は、圧力調整弁に限らず、単一のバルブ機構を備える圧力調整弁、あるいはリリーフ弁、逆止弁等に適用してもよい。また、本明細書に開示の技術は、燃料以外の流体の圧力調整弁に適用してもよい。また、実施形態では、バルブ部材を揺動機構により揺動可能としたが、シート部材を揺動機構により揺動可能としてもよいし、バルブ部材及びシート部材を揺動機構により揺動可能としてもよい。また、バルブ部材及び/又はシート部材をそれぞれ揺動機構を介して揺動可能としてもよい。また、副バルブ部51の副シール面54は、内側接続曲面55及び/又は外側接続曲面56と同一硬度としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 燃料供給装置
15 エンジン(内燃機関)
20 圧力調整弁
40 副バルブシート(シート部材)
41 副シート面(シート面)
50 副バルブ体(バルブ部材)
51 副バルブ部(環状凸部)
52 内周側面
53 外周側面
54 副シール面(シール面)
55 内側接続曲面
56 外側接続曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14