(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127831
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】粉体塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 127/12 20060101AFI20220825BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20220825BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220825BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C09D127/12
C09D5/03
C09D7/61
C09D5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026033
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000174851
【氏名又は名称】三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】竹山 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ファム ホアイ ナム
(72)【発明者】
【氏名】亀山 周太郎
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CD091
4J038HA036
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA20
4J038PA02
4J038PA03
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB06
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1回の厚塗り可能膜厚が大きく、また、重ね塗りの限界膜厚が大きい、厚塗りが可能である充填材を含む熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料組成物を提供する。
【解決手段】充填材が粒子内に分散した平均粒径が2~100μmである第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、平均粒径が10~200μmである第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、電荷調整剤粒子とを含む粉体混合物であることを特徴とする、粉体塗料組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材が粒子内に分散した平均粒径が2~100μmである第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、平均粒径が10~200μmである第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、電荷調整剤粒子とを含む粉体混合物であることを特徴とする、粉体塗料組成物。
【請求項2】
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子の比率が、1~60:40~99重量%であり、電荷調整剤粒子は粉体塗料組成物全量に対して0.01~5重量%含まれる、請求項1に記載の粉体塗料組成物。
【請求項3】
第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径が、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉体塗料組成物。
【請求項4】
充填材が導電性充填材である、請求項1~3の何れか一項に記載の粉体塗料組成物。
【請求項5】
導電性充填材がグラフェン構造を持つ炭素材料である、請求項4に記載の粉体塗料組成物。
【請求項6】
電荷調整剤粒子が黒鉛である、請求項1~5の何れか一項に記載の粉体塗料組成物。
【請求項7】
熱溶融性フッ素樹脂がパーフルオロ樹脂である、請求項1~6の何れか一項に記載の粉体塗料組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の粉体塗料組成物から製造された膜厚が100μm以上である塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立面にも静電粉体塗装で厚塗りが可能である、充填材を含む熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、電気的性質及び機械的性質を有し、また極めて低い摩擦係数及び非粘着性も有しているため、化学、機械、電機などあらゆる工業分野において広く利用されている。特に、熱溶融性フッ素樹脂は、融点以上の温度で流動性を示すため、塗膜とした際にピンホールの発生を抑制できることから、フッ素樹脂コーティングのための塗料の材料として一般に利用されている。
【0003】
特許文献1は、フッ素樹脂の水性液体塗料を開示している。これらの水性液体塗料は、高濃度・高粘度の、いわゆるスラリー塗料として使用され、厚塗りが可能となる。しかし、粉体塗装に対するスラリーは、溶媒(分散媒)が揮発する際に発泡しやすい。それを防止するために各種の溶剤が用いられて、多段階焼成、乾燥プロセスが必要となり、その結果、溶剤が揮発する環境問題や、スラリーは乾燥時間が長くなること、スラリーは保存管理が粉体塗料より難しいこと、複雑な形の被塗装物にはスラリーでは塗装が難しい等の問題がある。
【0004】
一方、熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料には、揮発する液媒体が無く厚塗りが可能、塗料の再利用が可能、VOC(揮発性有機化合物)が発生しないといったメリットがある。熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料を用いた粉体塗装の方法としては、被塗物と粉体塗料を帯電させて塗装する静電塗装が一般的に用いられている。そして、熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料に導電性や耐摩耗性、耐摩擦性等の各種の特性の付与や、着色や光輝感などの外観の調整を目的として充填材を用いる場合には、熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料と充填材の粒子を混合して使用できるが、熱溶融性フッ素樹脂粉体粒子の内部に充填材の粒子を分散させることが、厚塗り性・塗膜耐久性や、充填材の塗膜からの脱離防止・塗膜の中でのバラツキの防止などの面から好ましい(例えば、特許文献2、3)。
【0005】
一方、近年、塗膜の耐久性、耐食性が求められる傾向にあり、また、生産性の改善、工程コスト削減のためには、厚塗りが可能であることが求められており、また、生産性改善のためには、重ね塗りの回数を減らすために1回の塗装で可能な膜厚が大きい方が好ましい。しかし、充填材、特に導電性充填材を含む熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料では、含まないものに比べて厚塗り性が悪化してしまう。上記のように充填材を内部に分散させたものであっても、導電性充填材を含むことにより、静電塗装において粉体粒子に電荷がかかりにくく、そのため粒子の脱離が起きやすいためと考えられる。一方で、導電性コーティングが帯電防止で使われているが、耐食性を付与するため厚く塗りたいという要求もある。また、これまで導電性コーティングでは表層のみ導電性を付与するケースが多かったが、厚い塗膜全体に導電性を付与したいという要求もある。
【0006】
また、PFA等の熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料は、液体塗料に比べて厚塗りが可能であることが知られている。ロトライニング法では更なる厚塗りが可能であるが、使用対象は、ロトライニングが施工可能であるタンクや配管の断面が円形の構造物の内面に限定されてしまう(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3321805号公報
【特許文献2】特公平5-73147号公報
【特許文献3】特公昭52-44576号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】耐食ライニング・コーティングガイドブック(日本弗素樹脂工業会発行)p9の表1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、1回の厚塗り可能膜厚が大きく、また、重ね塗りの限界膜厚も大きい、厚塗りが可能である、充填材を含む熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、充填材が粒子内に分散した平均粒径が2~100μmである第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、平均粒径が10~200μmである第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、電荷調整剤粒子と、を含む粉体混合物であることを特徴とする、粉体塗料組成物である。
本発明の粉体塗料組成物では、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子の比率が、1~60:40~99重量%であり、電荷調整剤粒子は粉体塗料組成物全量に対して5重量%以下0.01重量%以上含まれることが好ましい。第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径は、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましく、また、充填材は、導電性充填材であることが好ましく、導電性充填材がグラフェン構造を持つ炭素材料であることが更に好ましい。また、電荷調整剤粒子が黒鉛であることが好ましい。さらに、熱溶融性フッ素樹脂がパーフルオロ樹脂であることが好ましい。
本発明の別の態様は、粉体塗料組成物から製造された塗膜であり、膜厚は100μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、1回の厚塗り可能膜厚も大きく、また、重ね塗りの限界膜厚が大きい、厚塗りが可能である、充填材を含む熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料組成物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の粉体塗料組成物は、(1)第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、(2)第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、(3)電荷調整剤粒子と、を含む粉体混合物であることを特徴とする、粉体塗料組成物である。
【0013】
(1)第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子について、以下、説明する。本発明の第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子は、充填材が熱溶融性フッ素樹脂中に分散した平均粒径が2~100μmの粒子であり、熱溶融性フッ素樹脂と充填材とから製造される。
【0014】
本発明で使用する熱溶融性フッ素樹脂は、熱溶融性フッ素樹脂として知られている樹脂の中から適宜選択することができる。例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれるモノマーの重合体又は共重合体、又は、これらモノマーとエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等の2重結合を有するモノマーや、アセチレン、プロピン等の3重結合を有するモノマーとの共重合体などを挙げることができる。具体的な熱溶融性フッ素樹脂としては、例えば、低分子量の熱溶融性ポリテトラフルオロエチレン(熱溶融性PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体などを挙げることができる。
【0015】
これらの熱溶融性フッ素樹脂の中では、特に熱溶融性PTFEやPFAやFEP、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体といったパーフルオロ樹脂が、塗膜の非粘着性、耐熱性の観点から好ましく用いられる。これらの中でも耐熱性の面から、PFAが好ましい。PFAを使用する場合には、PFA中のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)のアルキル基は、炭素数が1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。また、PFA中のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の含有量は、1~50重量%の範囲であることが好ましい。
【0016】
また、本発明で使用する熱溶融性フッ素樹脂は、高温溶融時の成形性が良いという観点から、融点以上の温度で流動性を有する熱溶融性フッ素樹脂が好ましい。具体的には、熱溶融性フッ素樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましい。このような樹脂としては、PFA、FEP、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体が挙げられる。融点が高く、かつ熱流動性に優れているPFAが特に好ましい。一方、MFRが大きすぎる(溶融粘度が小さすぎる)と、繰り返し塗装及び焼成の際に、垂れや引けによる外観不良が生じやすくなり、厚膜化が困難となるため好ましくない。具体的には、熱溶融性フッ素樹脂のMFRは、15g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下が特に好ましい。
【0017】
本発明で使用される熱溶融性フッ素樹脂は、求める特性に応じて、2種類以上の熱溶融性フッ素樹脂をブレンドしてもよい。また、非熱溶融性のポリテトラフルオロエチレンを含んでいても良い。
【0018】
本発明の第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子では、充填材が粒子内部に分散している。ここで、充填材が粒子内部に均一に分散していることが好ましい。充填材が粒子内部に均一に分散しているか否かは、粒子の表面を電子顕微鏡等で観察して充填材が一様に分散しているかによって確認できる。また、使用する充填材の物性にもよるが、導電性充填材を用いた場合は、体積抵抗率を測定することにより確認することも出来る。本明細書において、体積抵抗率は、本明細書中に記載の測定方法(7)に従って測定した値であり、導電性充填材を用いた場合は体積抵抗率が106Ω・cm以下であるものが好ましい。このように、充填材を、熱溶融性フッ素樹脂中に均一に分散させて、樹脂粒子を製造するためには、例えば、特許公報2に記載されている方法を使用出来る。
【0019】
粒子内部に分散させる充填材としては、各種の充填材を用いることができる。例えば、金属粉、金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等)、ガラス、セラミックス、炭化珪素(SiC)、酸化珪素、窒化ホウ素、弗化カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、硫酸バリウム、各種の樹脂粒子などが挙げられる。充填材の形状としては、粒子状、繊維状、フレーク状など、各種の形状の充填材が使用可能である。
【0020】
特に本発明は導電性充填材を用いる場合に有効であり、導電性充填材としては、金属、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム等)、炭化チタン、窒化チタン、炭素繊維・カーボンブラック・黒鉛(グラファイト)やカーボンナノチューブ(CNT)などのグラフェン構造を持つ炭素材料、及びそれらを被覆した粒子や複合化した粒子が挙げられる。高い導電性を得るためには、カーボンブラックと炭素繊維を併用することが好ましい。また本発明においては、炭化珪素(SiC)のような絶縁性が比較的小さい、具体的には体積抵抗率が108Ω・cm以下のものも導電性充填材として用いることができる。炭化珪素(SiC)は、塗膜の耐摩耗性を向上するために、好ましく用いられる。
また、マイカ、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化珪素のような表面が親水性である極性粒子を用いた場合も厚塗り困難であるが(フッ素樹脂と充填材の電気的特性が異なるため、静電塗装の際の帯電にバラツキが発生すると考えられる)、そのような充填材を用いることも出来る。マイカは塗膜に光輝感を付与することができるため、好ましく用いられる。
粒子の形状としては、粒子状、繊維状、フレーク状など、各種の形状の充填材が使用可能である。好ましい配合量は、求める特性と充填材の種類及び粒子の大きさによって変わるが、0.1~30重量%が好ましく、1~10重量%がより好ましく、2~5重量%が特に好ましい。充填材が少ない場合は充填材による効果が小さくなり、また、多い場合は充填材粒子の凝集が起こりやすくなったり、溶融粘度が高くなったりすることにより、平滑で均一な塗膜が得られなくなる懸念がある。
【0021】
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径は2~100μmであり、好ましくは、3~75μmであり、更に好ましくは 5~50μm、特に好ましくは 8~35μmの範囲にある。平均粒径が小さいと、風の影響を受け静電粉体塗装が難しくなるだけでなく、そもそも製造が困難で、保存時に凝集しやすく、欠陥の原因になる。また、平均粒径が大きすぎると、電荷がかかりにくくなり、脱離が起きやすくなるため、静電塗装が困難となり、また、得られた塗膜表面が平滑でなくなる。
【0022】
なお、本明細書において、「平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法によって得られる粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径を意味する(d50)。
【0023】
(2)第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子
本発明の第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子は、平均粒径が10~200μmである熱溶融性フッ素樹脂からなる粒子である。
【0024】
第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子は、上記第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子で使用する樹脂から製造することが出来る。第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子は、上記第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子とは異なり、充填材を含まない。熱溶融性フッ素樹脂の中では、特にPFAやFEP、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体といったパーフルオロ樹脂が、塗膜の非粘着性、耐熱性の観点から好ましく用いられる。これらの中でも耐熱性の面から、PFAが好ましい。
【0025】
粒子の平均粒径は10~200μmであり、好ましくは 15~150μmであり、更に好ましくは20~100μm、特に好ましくは25~70μmである。平均粒径に関しては、上記第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と比較すると、第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径は、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。市販の熱溶融性フッ素樹脂の粉体塗料が使用できる。なお、粒子中に充填材は含まないが、粒子外(粉体混合状態)で発泡防止剤などの添加剤を少量含んでいても良い。
【0026】
(3)電荷調整剤粒子
本発明の電荷調整剤粒子としては、各種の導電性粒子を用いることができる。金属粉、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)や、カーボンナノチューブ(CNT)などのグラフェン構造を持つ炭素材料、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム等)、炭化チタン、窒化チタン等を用いることができる。これらの中ではグラフェン構造を持つ炭素材料を用いることが好ましく、黒鉛(グラファイト)を用いることが特に好ましい。電荷調整剤粒子の働きは、充填材を含む第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、充填材を含まない第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子で帯電特性が異なるところを、電荷調整剤粒子がそれぞれの粒子に付着し被覆することで、表面の帯電特性を均質化して、粒子同士の混合時に凝集・分離せずに均一な混合をもたらすことと考えられる。ここで黒鉛(グラファイト)を用いると好ましい理由は、高速で乾式混合する時に、脆い黒鉛(グラファイト)が粉砕され、細かなシート状となり、それぞれの粒子に付着し被覆することができるからである。
【0027】
(4)任意成分について
本発明の粉体塗料組成物には、粉体塗料組成物の物性に影響を与えない範囲で、任意成分として、有機・無機材料の添加剤を含むこともできる。例えば、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミドなどのエンジニアリングプラスチック、金属粉、金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等)、ガラス、セラミックス、炭化珪素、酸化珪素、弗化カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、マイカ、硫酸バリウムなどが挙げられる。添加剤の形状としては、粒子状、繊維状、フレーク状など、各種の形状の添加材が使用可能である。含有量は、粉体塗料組成物全量に対して、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
【0028】
(5)本発明の粉体塗料組成物の組成比
本発明の粉体塗料組成物において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子の比率は、好ましくは1~60:40~99重量%であり、より好ましくは、5~50:50~95重量%、更に好ましくは10~45:55~90重量%である。また、電荷調整剤粒子の含有量は、粉体塗料組成物全体に対して、好ましくは0.01~5重量%であり、より好ましくは0.1~3.0重量%、更に好ましくは、0.2~2.0重量%である。また、粉体塗料組成物全体において、フッ素樹脂の占める割合が80重量%以上であり、90重量%以上であることが好ましい。フッ素樹脂の比率を多くすると、フッ素樹脂の特徴である離型性、滑り性、耐薬品性、耐候性等が良く得られるが、フッ素樹脂の比率が少ないと、フッ素樹脂の特徴は十分には得られない。
【0029】
(6)製造方法
本発明の粉体塗料組成物の製造方法について、以下、説明する。
本発明の粉体塗料組成物は、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子と、電荷調整剤粒子を混合することで得られる。混合方法としては、乾燥状態の粒子を混合する方法(ドライブレンド・乾式混合)、または混合用の容器自体を転動させることで攪拌するタービュラーミキサーなどを用いた流動式混合法を用いることができる。ドライブレンドを行う装置としては、特に限定されるものではないが、カッターミキサー、ヘンシェルミキサー、チョッパー付V型ブレンダー、チョッパー付ダブルコーンミキサー、ロッキングミキサーなどが挙げられる。混合された樹脂組成物は、使用目的に従って、所定の形状に成形される。
【0030】
(7)本発明の粉体塗料組成物により作成された塗膜
本発明の「塗膜」は、本発明の粉体塗料組成物を塗装してなる塗膜である。基材と接着させるために、基材と接着し、かつフッ素樹脂を含むプライマー層を設けておくことが好ましい。本発明の粉体塗料組成物を塗装する方法は、公知の粉体塗装方法を用いることができるが、静電粉体塗装が好ましい。塗装後に、熱溶融性フッ素樹脂の融点以上に加熱することで、ピンホールなどの欠陥の無い塗膜が得られる。本発明の粉体塗料組成物は、フライパン・炊飯器などの調理器具、工場ラインなどでの耐熱離型性トレイ(パン焼き工程など)、定着ロール・ベルト・インクジェットノズルなどのOA機器関連物品、配管などの化学プラントの工業設備関連物品等、非粘着性、撥水撥油性が要求される物品の塗装に好適に用いることができる。
【0031】
<アルミテストピース作成>
(A)基材表面処理(ショットブラスト)
基材アルミニウム(JIS A1050準拠品、95mm×150mm、厚み1mm)の表面を、イソプロピルアルコールで脱脂し、その表面にサンドブラスタ―(株式会社不二製作所製 ニューマブラスター SGF-4(A)S-E566)を用い、#60番アルミナ(昭和電工株式会社製 ショウワブラスター)によるショットブラストを施し粗面化した。
【0032】
(B)下塗り(プライマー塗布)
上記(A)にて処理を施した基材に、エアースプレー塗装ガン(アネスト岩田株式会社製 W-88-10E2 φ1mmノズル(手動ガン))を用いて、エアー圧力3~4kgf/cm2で液体プライマー塗料(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 フッ素樹脂テフロン(登録商標)塗料 水性プライマー PJ-BN910)を吹き付け、塗装を行った。塗装された液体重量が、基材1枚あたり0.9~1.4gとなるように塗装し、強制通風循環炉で120℃×15分間乾燥後、膜厚8~12μmの塗膜を形成させた。塗装環境は温度25℃、湿度60%RHであった。
【0033】
<評価方法>
(1)塗膜外観
静電粉体塗装機(日本パーカライジング株式会社製ハンドガンシステム GX7500CS)を用いて、上記(A)及び(B)にて処理したアルミニウム基材をアースした状態として水平に設置し、粉体を塗装電圧20~40kV(負)、吐出量約50g/minにて約25cmの距離から塗着量が約2.8g(膜厚100μm相当)となるよう静電塗装し、390℃で30分焼成後、得られた塗膜の外観を観察した。均一且つ外観に異常がない場合を合格(〇)とした。
【0034】
(2)隠ぺい性
前記(1)で得られた塗膜の外観を観察し、プライマーの色を隠ぺいできているか確認した。下地の色が見えない場合を合格(〇)とした。
【0035】
(3)厚塗り性1
静電粉体塗装機(日本パーカライジング株式会社製ハンドガンシステム GX7500CS)を用いて、上記(A)及び(B)にて処理したアルミニウム基材を垂直に立てた状態とし、かつアースした状態として、粉体を塗装電圧20~40kV(負)、吐出量約50g/minにて約25cmの距離から粉体が付着しなくなるまで静電吹付塗装を行った。塗装環境は温度25℃、湿度60%RHであった。塗装したアルミニウム基材を強制通風循環炉で390℃×30分間焼成して塗膜を形成させた。得られた塗膜について、塗着量、粉落ちの有無、静電反発の有無、外観を確認して、塗着量2.8g(膜厚100μm相当)以上であり、粉落ち、静電反発が無く、発泡など欠陥の無い塗膜が得られたものを合格(〇)とした。
【0036】
(4)厚塗り性2
静電粉体塗装機(日本パーカライジング株式会社製ハンドガンシステム GX7500CS)を用いて、水平に設置したガラス基材(フロートガラス、95mm×150mm、厚み2mm)に一回あたり100~120μmの膜厚となるよう静電塗装し、所定の温度で30分焼成し、これを五回繰り返した(1回目は390℃, 2,3回目は360℃, 4,5回目は340℃)。焼成膜の膜厚が500μm以上であるか、及び発泡の有無を確認し、500μm以上の膜厚であり発泡による欠陥が観察されなければ合格(〇)とした。
【0037】
(5)導電性1
ガラス基材(フロートガラス、95mm×150mm、厚み2mm)に膜厚100~120μmとなるよう静電塗装し、390℃で30分焼成後、沸騰した湯中で塗膜を剥離させ、フィルムを得た。日東精工アナリテック株式会社製ハイレスタUXにて、UAプローブを用い、印加電圧100Vで表面抵抗値を測定した。表面抵抗値が、109Ωより低い場合を合格(〇)とし、1010~12Ωの場合を△、1012Ωより高い場合を×で表示した。
【0038】
(6)導電性2
厚塗り性2と同様の条件で作成した厚みの300μm以上の塗膜を、沸騰した湯中で剥離させ、フィルムを得た。日東精工アナリテック株式会社製ハイレスタUXにて、UAプローブを用い、印加電圧100Vで表面抵抗値を測定した。表面抵抗値が、109Ωより低い場合を合格(〇)とし、1010~12Ωの場合を△、1012Ωより高い場合を×で表示した。
【0039】
(7)体積抵抗率
ガラス基材(フロートガラス、95mm×150mm、厚み2mm)に膜厚50~100μmとなるよう静電塗装し、390℃で30分焼成後、沸騰した湯中で塗膜を剥離させ、フィルムを得た。フィルムを剥がし、日東精工アナリテック株式会社製ハイレスタUXにて、UAプローブを用い、印加電圧100Vで、塗膜の厚み方向(表面と裏面)の抵抗値を測定して体積抵抗率を算出した。体積抵抗率が106Ω・cmより低い場合、使用した粒子は良好と判断した。
【0040】
<原料>
・カーボンブラック1:旭カーボン株式会社製アサヒサーマル 平均一次粒径:80nm (オイルファーネスブラック)
・カーボンブラック2:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製カーボンECP(ケッチェンブラック)、平均一次粒径:25nm
・炭素繊維(東レ株式会社製 トレカミルドファイバーMLD-30、平均長さ:30μm)
・黒鉛(グラファイト)(昭和電工株式会社製UF-G5、平均粒径:3μm)
(PFA水性分散液)
PFA水性分散液は、以下のようにして調製した。特許第5588679号公報に記載された実施例1~3に準じた方法により、テトラフルオロエチレン・パーフルオロプロピルビニルエーテル(TFE・PPVE)共重合体の分散液を調製した。(固形樹脂のMFR=16.6[g/10分]、平均粒径:0.186μm、コモノマー(PPVE)比率:3.3重量%、分散液中のPFA含量:30.6重量%)
・PFA粉体塗料:三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 フッ素樹脂テフロン(登録商標)塗料 粉体トップコート MJ-508、平均粒径d50:約50μm(粉砕による不定形粒子、3%のPPS粒子との混合物(発泡抑制のため))
・2H,3H-デカフルオロペンタン(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 バートレル(登録商標)XF)
・60%硝酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・炭化珪素(SiC)(平均粒径 約25μmの球状粒子粉末)
・マイカ(MERCK社製 IRIODIN(登録商標)355、粒度10~100μmの鱗片状粒子粉末)
【実施例0041】
(比較例1)
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子1の調製例)
2Lステンレスビーカーに純水1000gを取り、カーボンブラック2(ケッチェンブラック)29.5gおよび黒鉛9.0gを加え、超音波生成装置(超音波工業株式会社製 UE-100Z28S-8A Ultrasonic generator)を用いて、5分間超音波分散処理を行った。得られた分散液を更にPFA水性分散液4200gが入ったステンレス容器に加え、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌機を用いて600rpmで3分間攪拌し、そこに60%硝酸水溶液88gを添加し、急激な粘度上昇を確認した後、2H,3H-デカフルオロペンタン1000gを加え、液中に凝集物の粗粒子を生成させた。濾過により取り出した凝集物の粗粒子を純水で洗浄し、50~60℃に昇温、30分保持することで2H,3H-デカフルオロペンタンを揮発除去し、得られた乾燥した粗粒子を粉砕機(ライツマニュファクチュアリング社製RP-6-K115)で粉砕し、粉砕粉末を得た。凝集物の粉砕粉末を、特許文献3に記載の焼成炉に噴霧して焼成し、融点以下に冷却された粒子を捕集したものを第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子1とした。得られた粒子の平均粒径は、d50:31.4μmであった。この粒子1の体積抵抗率を評価方法(7)に従って測定したところ、105~106Ω・cmを示した。この粒子(粉体)を粉体塗料組成物として、上記の各種評価を行った。
【0042】
(比較例2)
高速ミキサー(タニナカ株式会社製KSMAX)にて、上記調製例で製造した第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子1(平均粒径d50:31.4μm)40.0g、および第2の熱溶融性フッ素樹脂としてPFA粉体塗料(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 MJ-508、平均粒径d50:55μm)60.0gを投入し、12,000rpmで30秒混合撹拌し、粉体塗料組成物を得た。
【0043】
(実施例1)
高速ミキサー(タニナカ株式会社製KSMAX)にて、上記調製例1で製造した第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子(平均粒径d50:31.4μm)20.0gおよび第2の熱溶融性フッ素樹脂としてPFA粉体塗料(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 MJ-508、平均粒径d50:51.2μm )79.4g、黒鉛0.6gを投入し、12,000rpmで30秒混合撹拌し、粉体塗料組成物を得た。
【0044】
(実施例2)
上記実施例1において、PFA粉体塗料(第2の熱溶融性フッ素樹脂)79.4gに代えて79.1g、黒鉛0.6gに代えて、0.9gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0045】
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2の調製例)
カーボンブラック2(ケッチェンブラック)およびグラファイトの代わりに、カーボンブラック1を使用したこと以外は、上記調製例1の比較例1と同様の方法により、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2を製造した。得られた粒子の平均粒径は、d50:22.2μmであった。この粒子2の体積抵抗率を評価方法(7)に従って測定したところ、1012Ω・cm以上を示した。
【0046】
(実施例3)
上記実施例2において、上記調製例1で製造した第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子の代わりに、上記調製例で製造した第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2(平均粒径d50:22.2μm)を20.0gを使用し、第2の熱溶融性フッ素樹脂としてPFA粉体塗料(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 MJ-508、平均粒径d50:42.8μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0047】
(実施例4)
上記実施例3において、PFA粉体塗料79.1gに代えて79.5g、黒鉛0.9gに代えて0.5gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0048】
(実施例5)
上記実施例3において、PFA粉体塗料79.1gに代えて79.7g、黒鉛0.9gに代えて0.3gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0049】
(比較例1~2及び、実施例1~5の結果)
比較例1~2及び、実施例1~5の粉体塗料組成物の組成比及び塗膜評価結果を表1及び、表2に示す。表1は、本発明の粉体塗料組成物の組成比をまとめたものである。表2は、評価方法(1)から(6)に従って測定した評価結果を示す。比較例1は、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子1から塗膜を得たものであるが、(1)塗装外観(均一かつ外観以上がない場合:〇)、(2)隠ぺい性(基板色が見えない場合:〇)、及び、(3)厚塗り性1(立面に1回塗装して100μm以上の塗膜を形成出来た場合:〇)を充足したが、(4)厚塗り性2(繰り返し塗装して500μm以上の塗膜を形成出来た場合:〇)は、充足しなかった。
一方、比較例2は、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子1と第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子から塗膜を得たものであるが、(4)厚塗り性2(繰り返し塗装して500μm以上の塗膜を形成)を充足したものの、(1)~(3)の項目は充足しなかった。
これに対して、実施例1、2は、比較例2の粉体塗料組成物に、第三成分である電荷調整剤粒子として黒鉛を含むものであるが、(1)~(4)の全ての項目で、良好な結果が得られた。実施例3~5では、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2中で分散させる導電性粒子をカーボンブラック1のみに変更したが、黒鉛及びカーボンブラック2(ケッチェンブラック)を含む実施例1,2と同様の良好な結果が得られた。
【0050】
【0051】
【0052】
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3の調製例)
2Lステンレスビーカーに純水1000gを取り、カーボンブラック2(ケッチェンブラック)、18gおよび炭素繊維26gを加え、超音波生成装置(超音波工業株式会社製 UE-100Z28S-8A Ultrasonic generator)を用いて、5分間超音波分散処理を行った。得られた分散液をPFA水性分散液4200gが入ったステンレス容器に加え、ダウンフロータイププロペラ型4枚羽根付き攪拌機を用いて600rpmで3分間攪拌し、そこに60%硝酸水溶液88gを添加し、急激な粘度上昇を確認した後、2H,3H-デカフルオロペンタン1000gを加え、液中に凝集物の粗粒子を生成させた。濾過により取り出した凝集物の粗粒子を純水で洗浄し、50~60℃に昇温、30分保持することで2H,3H-デカフルオロペンタンを揮発除去し、得られた乾燥した粗粒子を粉砕機(ライツマニュファクチュアリング社製RP-6-K115)で粉砕し、粉砕粉末を得た。凝集物の粉砕粉末を、特許文献3に記載の焼成炉に噴霧して焼成し、融点以下に冷却された粒子を捕集したものを第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3とした。得られた粒子の平均粒径は、d50:17.6μmであった。この粒子3の体積抵抗率を評価方法(7)に従って測定したところ、105~106Ω・cmを示した。
【0053】
(実施例6)
高速ミキサー(タニナカ株式会社製KSMAX)にて、上記調製例で製造した第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3(平均粒径d50:17.6μm )10.0g、および第2の熱溶融性フッ素樹脂粒子としてPFA粉体塗料(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製 MJ-508、平均粒径d50:49.2μm )89.1g、黒鉛0.9gを投入し、12,000rpmで30秒混合撹拌し、粉体塗料組成物を得た。
【0054】
(実施例7)
実施例6において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3、10.0gに代えて、20.0g、および、PFA粉体塗料(第2の熱溶融性フッ素樹脂)89.1gに代えて、79.1gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0055】
(実施例8)
実施例6において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3、10.0gに代えて、40.0g、および、PFA粉体塗料(第2の熱溶融性フッ素樹脂)89.1gに代えて、59.1gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0056】
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子4の調製例)
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3の調製例において、カーボンブラック2、及び、PFA水性分散液の量を変更した以外は、同様の方法により、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子4を製造した。得られた粒子の平均粒径は、d50:18.4μmであった。この粒子4の体積抵抗率を評価方法(7)に従って測定したところ、105~106Ω・cmを示した。
【0057】
(実施例9)
実施例6において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子4(平均粒径d50:18.4μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0058】
(実施例10)
実施例7において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子4(平均粒径d50:18.4μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0059】
(実施例11)
実施例8において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子4(平均粒径d50:18.4μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0060】
(実施例6~11の結果)
実施例6~11の粉体塗料組成物の組成比及び塗膜評価結果を表3及び、4に示す。表3は、本発明の粉体塗料組成物の組成比をまとめたものである。表4は、評価方法(1)から(6)に従って測定した評価結果を示す。実施例6~11は、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3として、カーボンブラック2(ケッチェンブラック)、及び、炭素繊維を分散させた粒子を使用している。実施例6では、(1)厚塗り性1については、立面に粉落ちがなく2.8g以上は塗着して、静電反発を起こさず塗装できることを確認し、塗膜外観に異常がないことを確認した。(2)厚塗り性2については、繰り返し塗装・焼成を経ても、粉体が電着し、焼成後も発泡がない厚み500μm以上の膜が得られた。(3)導電性1については、膜厚約100μmのフィルムは、106~7Ωの表面抵抗値を示した。(4)導電性2については、膜厚300μm以上のフィルムにおいて、106~7Ωの表面抵抗値を示した。(5)塗膜外観については、平滑かつ均一な塗膜が得られた。(6)隠ぺい性についても、プライマーを十分に隠ぺいした塗膜が得られた。実施例7~11に関しても、実施例6と同様に、ほぼ全ての項目で、良好な結果が得られた。
実施例1~5と比較すると、実施例6~11では、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子として、カーボンブラック2(ケッチェンブラック)及び、炭素繊維を分散させた粒子を使用することで、(5)導電性1(100μmの塗膜の抵抗値)、(6)導電性2(300μmの塗膜の抵抗値)の何れも、106Ω程度の良好な導電性を示した。
【0061】
【0062】
【0063】
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子5の調製例)
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3の調製例において、カーボンブラック2及び、PFA水性分散液の量を変更した以外は、同様の方法により、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子5を製造した。得られた粒子の平均粒径は、d50:20.2μmであった。この粒子5の体積抵抗率を評価方法(7)に従って測定したところ、105~106Ω・cmを示した。
【0064】
(実施例12)
実施例6において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子5(平均粒径d50:20.2μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0065】
(実施例13)
実施例7において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子5(平均粒径d50:20.2μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0066】
(実施例14)
実施例12において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子5(平均粒径d50:20.2μm)10.0gに代えて、30.0g、および、PFA粉体塗料(第2の熱溶融性フッ素樹脂)89.1gに代えて、69.1gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0067】
(実施例15)
実施例8において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子3に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子5(平均粒径d50:20.2μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0068】
(実施例16)
実施例13において、PFA粉体塗料(第2の熱溶融性フッ素樹脂)79.1gに代えて、78.65g、および、黒鉛0.9gに代えて、1.35gを使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物を得た。
【0069】
(実施例12~16の結果)
実施例12~16の粉体塗料組成物の組成比及び塗膜評価結果を表5及び6に示す。表5は、本発明の粉体塗料組成物の組成比をまとめたものである。表6は、評価方法(1)から(6)に従って測定した評価結果を示す。実施例12~16の全てについて、(1)塗装外観、(2)隠ぺい性、(3)厚塗り性1、(4)厚塗り性2、(5)導電性1、(6)導電性2の全ての項目に関して、良好な結果が得られた。但し、(6)導電性2に関しては、第1の粒子の比率を、第2の粒子に対して高くすると、表面抵抗が上昇する傾向(実施例12~15で上昇傾向)を示した。
【0070】
【0071】
【0072】
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子6の調製例)
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2の調製例において、カーボンブラック1の代わりに、SiCを使用し、そして、その量及び、PFA水性分散液の量を変更した以外は、同様の方法により、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子6(SiCを5重量%含有)を製造した。得られた粒子の平均粒径は、d50:21.0μmであった。
【0073】
(実施例17)
実施例5において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子6(平均粒径d50:21.0μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物(PFA粉体塗料79.7重量%、黒鉛0.3重量%、粒子6:20.0重量%)を得た。
【0074】
(比較例3)
上記実施例17において、粉体塗料組成物から黒鉛を除いた以外は、同様の方法で、粉体塗料組成物(PFA粉体塗料80重量%%、粒子6:20重量%)を得た。
【0075】
(比較例4)
上記第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子6のみから粉体塗料組成物を作成した。
【0076】
(第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子7の調製例)
第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子6の調製例において、SiCの代わりに、マイカを使用し、そして、その量及び、PFA水性分散液の量を変更した以外は、同様の方法により、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子7(マイカを1重量%含有)を製造した。得られた粒子の平均粒径は、d50:21.1μmであった。
【0077】
(実施例18)
実施例5において、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子2に代えて、第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子7(平均粒径d50:21.1μm)を使用した以外は同様の方法により、粉体塗料組成物(PFA粉体塗料79.7重量%、黒鉛0.3重量%、粒子7:20重量%)を得た。
【0078】
(比較例5)
上記実施例18において、粉体塗料組成物から黒鉛を除いた以外は、同様の方法で、粉体塗料組成物(PFA粉体塗料80重量%、粒子7:20重量%)を得た。
【0079】
(比較例6)
上記第1の熱溶融性フッ素樹脂粒子7のみから粉体塗料組成物を作成した。
【0080】
(実施例17、18及び、比較例3~6の結果)
実施例17、18及び、比較例3~6の粉体塗料組成物の組成比及び塗膜評価結果を表7及び表8に示す。表7は、本発明の粉体塗料組成物の組成比をまとめたものである。表8は、評価方法(1)から(3)に従って測定した評価結果を示す。実施例17及び18の結果から、第三成分として黒鉛を加えることにより、SiCやマイカ等の非導電性の充填材を含む第一の熱溶融性フッ素樹脂粒子を使用した場合も、カーボンブラック等を含む樹脂粒子を使用した場合と同様に、(1)塗装外観、(2)隠ぺい性、(3)厚塗り性1の向上が確認された。一方、第三成分として黒鉛を含まない場合(比較例3,5)は、(1)塗装外観にムラが出来、(2)隠ぺい性も不十分であった。また、熱溶融性フッ素樹脂粒子6および7のみから粉体塗料組成物を製造した場合(比較例4,6)では、(1)塗装外観と(2)隠ぺい性は満たしたが、(3)厚塗り性1に問題があった。
【0081】
【0082】
【0083】
本発明は、本明細書に記載の実施例の開示内容、本明細書に開示されている発明の実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない限り、本明細書に開示されている事項等に基づいて、適宜変更を加えた発明の内容を包含するものである。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂粉体塗料組成物は、立面にも静電粉体塗装で厚塗りが可能であり、幅広い工業製品等に、比較的厚い塗膜を形成でき、また、含まれる充填材による特性(導電性等)を塗膜に与えることも出来る。