(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127841
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/38 20071001AFI20220825BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20220825BHJP
F16H 3/72 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B60K6/38
B60K6/442
F16H3/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026046
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 博貴
【テーマコード(参考)】
3D202
3J528
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB31
3D202EE16
3D202FF12
3D202FF13
3J528EA25
3J528EB33
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB85
3J528FA13
3J528FB13
3J528FB14
3J528FC13
3J528FC16
3J528FC24
3J528FC65
3J528GA01
3J528HA22
3J528JA01
3J528JB01
3J528JF02
3J528JJ02
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両用の車両用駆動装置の小型化を図り易くする。
【解決手段】入力部材INと第1ロータ10とを駆動連結する第1伝達系1における動力伝達を断接する第1係合装置CL1を駆動する第1駆動装置4Aは、第1シフトドラム41と第1カム機構47とを備える。第1ロータ10と出力部材OUTとを駆動連結する第2伝達系2における動力伝達を断接する第2係合装置CL2を駆動する第2駆動装置4Bは、第2シフトドラム42と第2カム機構48とを備える。第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とが、同軸に配置されていると共に、ドラム駆動軸49を介して一体的に回転するように連結され、ドラム駆動軸49を駆動するドラム駆動源6を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ロータを備えた第2回転電機と、
前記入力部材と前記第1ロータとを駆動連結する第1伝達系と、
前記第1ロータと前記出力部材とを駆動連結する第2伝達系と、
前記第2ロータと前記出力部材とを駆動連結する第3伝達系と、
前記第1伝達系における動力伝達を断接する第1係合装置と、
前記第2伝達系における動力伝達を断接する第2係合装置と、
前記第1係合装置を駆動する第1駆動装置と、
前記第2係合装置を駆動する第2駆動装置と、を備え、
前記第1駆動装置は、回転自在に支持された第1シフトドラムと、前記第1シフトドラムの回転運動を直線運動に変換して前記第1係合装置に伝達する第1カム機構と、を備え、
前記第2駆動装置は、回転自在に支持された第2シフトドラムと、前記第2シフトドラムの回転運動を直線運動に変換して前記第2係合装置に伝達する第2カム機構と、を備え、
前記第1シフトドラムと前記第2シフトドラムとが、同軸に配置されていると共に、ドラム駆動軸を介して一体的に回転するように連結され、
前記ドラム駆動軸を駆動するドラム駆動源を備えている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1カム機構と前記第2カム機構とは、前記ドラム駆動軸回りの回転方向の一方側である回転方向第1側に向けて回転することに応じて、
前記第1係合装置を解放状態とし、且つ、前記第2係合装置を係合状態とする第1モード、
前記第1係合装置を解放状態とし、且つ、前記第2係合装置を解放状態とする第2モード、
前記第1係合装置を係合状態とし、且つ、前記第2係合装置を解放状態とする第3モード、
前記第1係合装置を係合状態とし、且つ、前記第2係合装置を係合状態とする第4モード、
の順に状態遷移するように構成されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1ロータの回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記第1係合装置は、第1噛合い部材の前記軸方向の位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる噛み合い式の係合装置であり、
前記第2係合装置は、第2噛合い部材の前記軸方向の位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる噛み合い式の係合装置であり、
前記ドラム駆動軸は、前記軸方向に沿って配置され、
前記第1駆動装置は、前記第1噛合い部材を前記軸方向に駆動し、
前記第2駆動装置は、前記第2噛合い部材を前記軸方向に駆動する、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ドラム駆動軸と前記ドラム駆動源とが、減速機を介して連結されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第2係合装置が前記第1係合装置に対して前記軸方向の一方側である軸方向特定側に配置され、
前記第2駆動装置の前記第2カム機構のカム部が、前記第1駆動装置の前記第1カム機構のカム部に対して前記軸方向特定側に配置されている、請求項1から4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第1回転電機と、第2回転電機と、これらの間を駆動連結する複数のギヤとを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-88385号公報には、内燃機関に駆動連結される入力部材に第1係合装置(CL2)を介してロータが駆動連結された第1回転電機(MG1)と、車輪に駆動連結される出力部材に第2係合装置(CL1)を介してロータが駆動連結された第2回転電機(MG2)と、を備えたハイブリッド車両の車両用駆動装置が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。この車両用駆動装置は、第1係合装置(CL2)及び第2係合装置(CL1)を解放することで、第2回転電機(MG2)を車輪の駆動力源とするいわゆる1モータEV(電気自動車)走行が可能である。また、この車両用駆動装置は、第1係合装置(CL2)を解放すると共に第2係合装置(CL1)を係合することで、第1回転電機(MG1)及び第2回転電機(MG2)を車輪の駆動力源とするいわゆる2モータEV走行も可能である。
【0003】
また、この車両用駆動装置は、第1係合装置(CL2)を係合すると共に第2係合装置(CL1)を解放することで、第1回転電機(MG1)により発電し、第2回転電機(MG2)を車輪の駆動力源とするいわゆるシリーズハイブリッド走行が可能である。また、この車両用駆動装置は、第1係合装置(CL2)及び第2係合装置(CL1)を係合することで、内燃機関、第1回転電機(MG1)及び第2回転電機(MG2)を車輪の駆動力源とするいわゆるパラレルハイブリッド走行が可能である。このとき、第1回転電機(MG1)は発電機として機能することもできるし、電動機として機能することもできる。このように、この車両用駆動装置は、第1係合装置(CL2)及び第2係合装置(CL1)の係合状態によって、複数の走行モードを切り替え可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの走行モードの切り替えには、上述したように、2つの係合装置の係合状態を切り替える必要がある。一般的に、このような係合装置の駆動には、油圧が用いられることが多いが2つの係合装置を駆動するための油圧回路を設けると、車両用駆動装置の構造が複雑化する可能性がある。また、それぞれの係合装置を、電動アクチュエータ等を用いて駆動することも考えられるが、そのようにアクチュエータを複数配置すると車両用駆動装置の大型化やコスト増加の要因となる。このように、係合装置の駆動のための構成によっては、車両用駆動装置の大型化やコスト上昇のおそれがある。
【0006】
上記背景に鑑みて、ハイブリッド車両用の車両用駆動装置の小型化やコスト低減を図り易くすることができる技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みた車両用駆動装置は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第1ロータを備えた第1回転電機と、第2ロータを備えた第2回転電機と、前記入力部材と前記第1ロータとを駆動連結する第1伝達系と、前記第1ロータと前記出力部材とを駆動連結する第2伝達系と、前記第2ロータと前記出力部材とを駆動連結する第3伝達系と、前記第1伝達系における動力伝達を断接する第1係合装置と、前記第2伝達系における動力伝達を断接する第2係合装置と、前記第1係合装置を駆動する第1駆動装置と、前記第2係合装置を駆動する第2駆動装置と、を備え、前記第1駆動装置は、回転自在に支持された第1シフトドラムと、前記第1シフトドラムの回転運動を直線運動に変換して前記第1係合装置に伝達する第1カム機構と、を備え、前記第2駆動装置は、回転自在に支持された第2シフトドラムと、前記第2シフトドラムの回転運動を直線運動に変換して前記第2係合装置に伝達する第2カム機構と、を備え、前記第1シフトドラムと前記第2シフトドラムとが、同軸に配置されていると共に、ドラム駆動軸を介して一体的に回転するように連結され、前記ドラム駆動軸を駆動するドラム駆動源を備えている。
【0008】
この構成によれば、シリーズハイブリッドモードとパラレルハイブリッドモードとの双方を実行可能なハイブリッド車両用の駆動装置を実現することができる。また、第1係合装置を駆動する第1駆動装置と第2係合装置を駆動する第2駆動装置との双方を1つのドラム駆動源により駆動することができる。従って、これら2つの駆動装置に独立の駆動源を備える構成に比べて、車両用駆動装置のコストを低減できると共に、車両用駆動装置の小型化を図り易い。即ち、本構成によれば、ハイブリッド車両用の車両用駆動装置の小型化やコスト低減を図り易くすることができる。
【0009】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】係合装置を駆動する駆動装置の動作原理を示す図
【
図3】第1係合装置及び第2係合装置の係合状態と車両用駆動装置の動作モードとの関係を示す状態遷移図
【
図4】係合装置を駆動する駆動装置の他の形態の一例を示す図
【
図5】車両用駆動装置の他の構成例(第2車両用駆動装置)のスケルトン図
【
図6】車両用駆動装置の他の構成例(第3車両用駆動装置)のスケルトン図
【
図7】車両用駆動装置の他の構成例(第4車両用駆動装置)のスケルトン図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両用駆動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0012】
また、本明細書では、「駆動連結」とは、2つ以上の回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0013】
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「軸方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の軸方向の配置領域内に、他方の部材の軸方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0014】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、内燃機関EGに駆動連結される入力部材INと、車輪Wに駆動連結される出力部材OUTと、第1ロータ10を備えた第1回転電機MG1と、第2ロータ20を備えた第2回転電機MG2と、複数のギヤ機構とを備えている。本実施形態では、一対の車輪Wに対応して、一対の出力部材OUTが備えられている。これらはケース(
図1には不図示)に収容されている。尚、入力部材INの一部、及び一対の出力部材OUTの一部は、ケースの外部に露出している。
【0015】
車両用駆動装置100は、入力部材INと出力部材OUTとの間に3つの駆動力の伝達系を備えている。第1伝達系1は、入力部材INと第1ロータ10とを駆動連結する伝達系である。第2伝達系2は、第1ロータ10と出力部材OUTとを駆動連結する伝達系である。第3伝達系3は、第2ロータ20と出力部材OUTとを駆動連結する伝達系である。第1伝達系1、第2伝達系2、第3伝達系3は、それぞれの動力伝達経路の一部又は全部が、他の伝達系の動力伝達経路と重複していてもよい。尚、第1伝達系1には、第1伝達系1における動力伝達を断接する第1係合装置CL1が備えられており、第2伝達系2には、第2伝達系2における動力伝達を断接する第2係合装置CL2が備えられている。
【0016】
また、車両用駆動装置100は、第1係合装置CL1を駆動する第1駆動装置4Aと、第2係合装置CL2を駆動する第2駆動装置4Bとを備えている。そして、第1駆動装置4Aは、回転自在に支持された第1シフトドラム41と、第1シフトドラム41の回転運動を直線運動に変換して第1係合装置CL1に伝達する第1カム機構47とを備えている。同様に、第2駆動装置4Bは、回転自在に支持された第2シフトドラム42と、第2シフトドラム42の回転運動を直線運動に変換して第2係合装置CL2に伝達する第2カム機構とを備えている。詳細は後述するが、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とは、同軸に配置されていると共に、ドラム駆動軸49を介して一体的に回転するように連結されている。また、車両用駆動装置100は、ドラム駆動軸49を駆動するドラム駆動源6を備えている。
【0017】
本実施形態では、第1駆動装置4Aと第2駆動装置4Bとが共通の1つのクラッチ駆動装置4として構成されている形態を例示している。また、本実施形態では、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とは、それぞれを構成する部材を一部共用するように構成されている。そして、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42は、共通する1本のドラム駆動軸49を介して一体的に回転する。クラッチ駆動装置4の詳細については、後述する。
【0018】
以下、車両用駆動装置100の構成について説明する。本明細書では、4つの形態を例示して説明する。
図1は第1実施形態の車両用駆動装置100、
図5は第2実施形態の車両用駆動装置100、
図6は第3実施形態の車両用駆動装置100、
図7は第4実施形態の車両用駆動装置100を示している。どの形態においても、上述したようなクラッチ駆動装置4によって、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2が駆動される。第1実施形態から第4実施形態を区別する場合は、第1実施形態に係る車両用駆動装置100を第1車両用駆動装置100A、第2実施形態に係る車両用駆動装置100を第2車両用駆動装置100B、第3実施形態に係る車両用駆動装置100を第3車両用駆動装置100C、第4実施形態に係る車両用駆動装置100を第4車両用駆動装置100Dと称する。これらを区別しない場合には、単に車両用駆動装置100と称する。また、それぞれの実施形態において共通する事項については、適宜説明を省略する。
【0019】
図1に示すように、入力部材INと第1係合装置CL1とは第1軸A1上に配置されている。また、出力部材OUTは後述する出力用差動歯車機構DFと共に、第1軸A1と平行な別軸である第2軸A2上に配置されている。また、第1回転電機MG1と第2係合装置CL2とは、第1軸A1及び第2軸A2と平行な別軸である第3軸A3上に配置されている。また、第2回転電機MG2は、第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3と平行な別軸である第4軸A4上に配置されている。ここで、本明細書では、第1軸A1(第2軸A2、第3軸A3、第4軸A4)に沿う方向(平行な方向)を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とし、その一方側を「軸方向第1側L1」、他方側を「軸方向第2側L2」とする。ここでは、入力部材INが内燃機関EGに接続される側を「軸方向第2側L2」とする。また、第1軸A1及び第2軸A2のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向」と称する。尚、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向」と称する場合がある。上記の「軸方向L」及び「径方向」の定義は、第1軸A1(第2軸A2、第3軸A3、第4軸A4)に平行な別軸がさらに存在する場合も同様である。
【0020】
詳細は後述するが、車両用駆動装置100は、複数のギヤ機構として、少なくともカウンタギヤ機構CGと、出力用差動歯車機構DFとを備えている。
図1に示す第1車両用駆動装置100Aでは、カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3、第4軸A4に平行な別軸である第5軸A5に配置され、出力用差動歯車機構DFは第2軸A2に配置されている。第1車両用駆動装置100Aは、これらの他に、入力ギヤ31、第1ロータギヤ15、第2ロータギヤ25、第1回転電機出力ギヤ19、第2回転電機出力ギヤ29、カウンタ駆動ギヤ35を備えている。各機構、ギヤの詳細については後述する。尚、車両用駆動装置100は、カウンタギヤ機構CG及び出力用差動歯車機構DFを備えることなく、複数のギヤ等の組み合わせによって、入力部材INと第1ロータ10とが駆動連結され、第1ロータ10と出力部材OUTとが起動連結され、第2ロータ20と出力部材OUTとが駆動連結される構成であってもよい。
【0021】
上述したように、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。そのため、第1回転電機MG1及びダウ2回転電機MG2は、それぞれ蓄電装置(不図示)と電気的に接続されている。この蓄電装置としては、バッテリやキャパシタ等の公知の各種の蓄電装置を用いることができる。
【0022】
第1回転電機MG1は、内燃機関EGのトルクにより発電を行い、蓄電装置を充電し、或いは第2回転電機MG2を駆動するための電力を供給するジェネレータとして機能する。ただし、第1回転電機MG1は、車両の高速走行時や内燃機関EGの始動時等には、力行して駆動力(「トルク」と同義)を発生するモータとして機能する場合もある。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。第2回転電機MG2は、主に車両を走行させるための駆動力を発生するモータとして機能する。ただし、車両の減速時等には、第2回転電機MG2は、車両の慣性力を電気エネルギとして回生するジェネレータとして機能する場合もある。
【0023】
第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2は、インナーロータ型の回転電機である。第1回転電機MG1は、第1ステータ12と、第1ロータ10とを備えている。第1ステータ12は、非回転部材(ここではケース)に固定され、第1ロータ10は、第1ステータ12の径方向内側に回転可能に配置されている。第1ロータ10の径方向内側には第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータ軸11が配置されている。同様に、第2回転電機MG2は、第2ステータ22と、第2ロータ20とを備えている。第2ステータ22は、非回転部材(ここではケース)に固定され、第2ロータ20は、第2ステータ22の径方向内側に回転可能に配置されている。第2ロータ20の径方向内側には第2ロータ20と一体的に回転する第2ロータ軸21が配置されている。
【0024】
上述したように、第1伝達系では、入力部材INと第1ロータ10とが駆動連結される。換言すれば、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータ軸11が入力部材と駆動連結される。入力部材INは、第1軸A1上において軸方向Lに沿って延在するように形成されている。入力部材INは、内燃機関EGに対して軸方向第1側L1に配置されている。入力部材INは、ダンパ装置DPを介して内燃機関EGの出力軸EOUT(クランクシャフト等)に駆動連結されている。ダンパ装置DPは、伝達されるトルクの変動を減衰する装置である。例えば、ダンパ装置DPには、出力側から過大なトルクが入力される等した場合に、出力部材OUTから内燃機関EGまでの動力伝達経路に過大な負荷が作用することを制限するためのトルクリミッタが設けられていると好適である。
【0025】
第1軸A1に配置された入力部材INと、第3軸A3に配置された第1ロータ10とを駆動連結するため、第1軸A1には、入力ギヤ31が配置されている。また、第3軸A3には、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータギヤ15が配置されている。具体的には、第1ロータギヤ15は、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータ軸11に連結されている。第1軸A1に配置される入力ギヤ31は、第1係合装置CL1を介して入力部材INと選択的に連結される。入力ギヤ31と第1ロータギヤ15とは噛み合っており、入力部材INと入力ギヤ31とが第1係合装置CL1を介して連結されると、入力部材INからの動力が第1ロータ10に伝達される。従って、入力ギヤ31、第1係合装置CL1、第1ロータギヤ15、及び第1ロータ軸11は、入力部材INと第1ロータ10とを駆動連結する第1伝達系1に含まれる。
【0026】
尚、第1係合装置CL1が解放状態の場合には、入力ギヤ31が入力部材INに連結されず、入力ギヤ31には内燃機関EGからの動力が伝達されない。このため、内燃機関EGと第1ロータ10との間の駆動力の伝達は行われない。
【0027】
本実施形態では、第1係合装置CL1は、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。第1係合装置CL1は、第1駆動装置4Aによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成されている。具体的には、第1係合装置CL1は、第1駆動装置4Aによって軸方向Lに沿って移動するように構成された第1噛合い部材DS1(ドグスリーブ)と、第1噛合い部材DS1が係合される一対の第1被噛合い部材DT1とを有している。第1係合装置CL1は、第1噛合い部材DS1の軸方向Lの位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる。ここでは、一対の第1被噛合い部材DT1のうち、一方は入力部材INと一体的に回転するように連結され、他方は入力ギヤ31と一体的に回転するように連結されている。第1係合装置CL1は、第1噛合い部材DS1が一対の第1被噛合い部材DT1の双方に係合することで係合状態となり、第1噛合い部材DS1が一対の第1噛合い部材DS1の少なくとも一方から離間することで解放状態となる。
【0028】
出力部材OUTには、出力用差動歯車機構DFを介して動力が伝達される。出力用差動歯車機構DFは、差動入力ギヤ71の回転を一対の出力部材OUTに分配する。出力用差動歯車機構DFは、差動入力ギヤ71に加えて、差動ケースに支持された一対の差動ピニオンギヤ72と、一対のサイドギヤ73とを備えている。ここでは、一対の差動ピニオンギヤ72、及び一対のサイドギヤ73は、いずれも傘歯車である。差動ケースは、差動入力ギヤ71と一体的に回転する中空の部材であり、その内部に、一対の差動ピニオンギヤ72と、一対のサイドギヤ73とが収容されている。本実施形態では、一対のサイドギヤ73のそれぞれが、出力用差動歯車機構DFの一部であると共に、出力部材OUTにも相当する。
【0029】
一対の差動ピニオンギヤ72は、第2軸A2を基準とした径方向に沿って互いに間隔を空けて対向するように配置されている。一対の差動ピニオンギヤ72のそれぞれは、差動ケースと一体的に回転するように支持されたピニオンシャフトに取り付けられ、ピニオンシャフトを中心として回転(自転)可能、かつ、第2軸A2を中心として回転(公転)可能である。
【0030】
一対のサイドギヤ73は、出力用差動歯車機構DFにおける駆動力の分配後の回転要素である。一対のサイドギヤ73は、互いに軸方向Lに間隔を空けて、一対のピニオンシャフトを挟んで対向するように配置されている。それぞれのサイドギヤ73は、双方の差動ピニオンギヤ72と噛み合っている。そして、一対のサイドギヤ73のそれぞれは、一対の出力軸80と一体的に回転するように連結されている。
【0031】
一対の出力軸80は、出力用差動歯車機構DFから軸方向Lの両側に突出するように形成されている。具体的には、軸方向第1側L1の出力軸80は、その軸方向第1側L1の端部がケースCSを軸方向Lに貫通してケースの外部に露出するように配置され、軸方向第2側L2の出力軸80は、その軸方向第2側L2の端部がケースを軸方向Lに貫通してケースCSの外部に露出するように配置されている。即ち、軸方向第1側L1の出力軸80は、軸方向第1側L1のサイドギヤ73から軸方向第1側L1に突出するように、当該サイドギヤ73と一体的に連結されている。また、軸方向第2側L2の出力軸80は、軸方向第2側L2のサイドギヤ73から軸方向第2側L2に突出するように、当該サイドギヤ73と一体的に連結されている。そして、一対の出力軸80のそれぞれは、車輪Wに駆動連結されている。尚、一対の出力軸80のそれぞれを出力部材OUTと考えても良い。
【0032】
上述したように、第2回転電機MG2は、第4軸A4に配置されている。第2軸A2に配置された出力部材OUTと、第4軸A4に配置された第2ロータ20とを駆動連結するため、第4軸A4には、第2回転電機出力ギヤ29が配置されている。第2回転電機出力ギヤ29は、第2ロータ20と一体的に回転する第2ロータ軸21に連結されている。第2回転電機出力ギヤ29は、第5軸A5に配置されたカウンタギヤ機構CGを介して、出力用差動歯車機構DFと駆動連結されている。従って、第2ロータ軸21、第2回転電機出力ギヤ29、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車機構DFは、第2ロータ20と出力部材OUTとを駆動連結する第2伝達系2に含まれる。
【0033】
カウンタギヤ機構CGは、第1カウンタギヤ61及び第1カウンタギヤ61と一体的に回転する第2カウンタギヤ62を備えて構成されている。第1カウンタギヤ61は第2カウンタギヤ62に対して軸方向第2側L2に配置されている。第2カウンタギヤ62は第1カウンタギヤ61よりも小径のギヤである。カウンタギヤ機構CGにおいて第2回転電機MG2の側から伝達された回転が減速されて出力用差動歯車機構DFへ伝達される。
【0034】
第1カウンタギヤ61は、第1軸A1に配置されたカウンタ駆動ギヤ35を介して、第3軸A3に配置された第1回転電機出力ギヤ19に駆動連結されている。また、第1回転電機出力ギヤ19は、第2係合装置CL2を介して第1ロータ軸11に駆動連結されている。詳細は後述するが、カウンタギヤ機構CGは、出力部材OUTと第2ロータ20とを駆動連結している。従って、第1ロータ軸11が連結された第1ロータ10と、出力部材OUTとは、第2係合装置CL2を介して駆動連結されている。
【0035】
第2係合装置CL2は、係合状態において、第1ロータ軸11とカウンタギヤ機構CGとを連結する。第1ロータ軸11とカウンタギヤ機構CGとが連結されることにより、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の側からの動力と、第2回転電機MG2の側からの動力とを合わせて出力用差動歯車機構DFに伝達することができる。第1ロータ10からの動力は、第1回転電機出力ギヤ19、カウンタ駆動ギヤ35、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車機構DFを介して出力部材OUTに伝達される。従って、第1ロータ10と出力部材OUTとを駆動連結する第2伝達系2には、第1ロータ軸11、第2係合装置CL2、第1回転電機出力ギヤ19、カウンタ駆動ギヤ35、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車機構DFが含まれる。
【0036】
第2係合装置CL2も、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。第2係合装置CL2は、第2駆動装置4Bによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成されている。具体的には、第2係合装置CL2は、第2駆動装置4Bによって軸方向Lに沿って移動するように構成された第2噛合い部材DS2(ドグスリーブ)と、第2噛合い部材DS2が係合される一対の第2被噛合い部材DT2とを有している。第2係合装置CL2は、第2噛合い部材DS2の軸方向Lの位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる。ここでは、一対の第2被噛合い部材DT2のうち、一方は第1ロータ軸11と一体的に回転するように連結され、他方は第1回転電機出力ギヤ19と一体的に回転するように連結されている。第2係合装置CL2は、第2噛合い部材DS2が一対の第2被噛合い部材DT2の双方に係合することで係合状態となり、第2噛合い部材DS2が一対の第2被噛合い部材DT2の少なくとも一方から離間することで解放状態となる。
【0037】
車両用駆動装置100は、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2の作動状態によって、例えば、下記の表1に例示するような複数の動作モードにより駆動されることができる。尚、表1の第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の欄における「〇」は対象の係合装置が係合状態であることを示し、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2の欄における「○」は対象の動力源が動力を出力している状態であることを示す。また、第1回転電機MG1の欄における「●」は伝達される動力によって発電している状態であることを示す。第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の欄における「×」は対象の係合装置が解放状態であることを示す。そして、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2の欄における「×」は対象の動力源が動力を出力しておらず、回転電機が発電もしていない状態を示す。
【0038】
【0039】
例えば、蓄電装置に十分な電力が蓄えられており、車両の発進時等で高トルク、高回転速度が要求されないような場合には、第2回転電機MG2のみが動力源として駆動される第1EVモードが選択される。この時、内燃機関EG及び第1回転電機MG1は停止状態であり、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2は解放状態に制御される。第2回転電機MG2の動力が第3伝達系3を介して出力用差動歯車機構DFに伝達されて車輪Wが駆動される。尚、第1係合装置CL1は、係合状態であってもよい。
【0040】
蓄電装置に十分な電力が蓄えられており、第1EVモードよりも高いトルクが要求される場合には、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2が動力源として駆動される第2EVモードを選択することができる。この時、内燃機関EGは停止状態であり、第1回転電機MG1は第2回転電機MG2と共に駆動される。第1係合装置CL1は解放状態に制御され、第2係合装置CL2が係合されることで第1回転電機MG1の動力が第2伝達系2を介して出力用差動歯車機構DFに伝達されると共に、第2回転電機MG2の動力が第3伝達系3を介して出力用差動歯車機構DFに伝達されて車輪Wが駆動される。
【0041】
蓄電装置に蓄えられた電力量が十分でない場合等には、内燃機関EGの動力によって第1回転電機MG1に発電させると共に、発電された電力を用いて第2回転電機MG2を駆動するいわゆるシリーズハイブリッドモード(第1HVモード)が選択される。内燃機関EGは駆動され、第1係合装置CL1が係合されることで、第1伝達系1を介して内燃機関EGの動力が第1回転電機MG1に伝達され、第1回転電機MG1に発電させる。第2係合装置CL2は解放状態に制御され、第2伝達系2が遮断されることで、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の動力は出力用差動歯車機構DFには伝達されない。一方、第2回転電機MG2の動力は、第3伝達系3を介して出力用差動歯車機構DF及び車輪Wに伝達される。
【0042】
第1ハイブリッドモードよりも高いトルクや高い回転速度が要求される場合、第2回転電機MG2の動力に加えて内燃機関EGの動力も出力用差動歯車機構DFに伝達して車輪Wを駆動するいわゆるパラレルハイブリッドモード(第2HVモード)が選択可能である。内燃機関EGは駆動され、第1係合装置CL1が係合されることで、第1伝達系1を介して内燃機関EGの動力が第1回転電機MG1に伝達され、第1回転電機MG1に発電させる。さらに、第2係合装置CL2が係合されることで、第2伝達系2を介して内燃機関EGからの動力を出力用差動歯車機構DFに伝達することができる。内燃機関EGからの動力が第2伝達系2を介して出力用差動歯車機構DFに伝達されると共に、第2回転電機MG2の動力が第3伝達系3を介して出力用差動歯車機構DFに伝達されて車輪Wが駆動される。
【0043】
第2ハイブリッドモードにおける上記の状態では、第2回転電機MG2が力行し(表中の「○」)、第1回転電機MG1が発電している(表中の「●」)。しかし、第1回転電機MG1は、力行も発電(回生)もしていなくてもよい(表中の「×」)。また、このモードでは、蓄電装置に蓄えられた電力量及び必要駆動力に応じて、第1回転電機MG1が駆動力を出力(力行)するように制御されても良い(表中の「○」)。この時、第2回転電機MG2は力行していても良いし(表中の「○」)、停止していても良い(表中の「×」)。第2回転電機MG2が力行している場合、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2の動力が、出力用差動歯車機構DFに伝達されて車輪Wが駆動される。第2回転電機MG2が停止している場合、内燃機関EG、第1回転電機MG1の動力が、出力用差動歯車機構DFに伝達されて車輪Wが駆動される。
【0044】
また、第2回転電機MG2を停止させ、第2係合装置CL2を解放状態として、出力用差動歯車機構DFへ動力を伝達させない状態で、第1係合装置CL1を係合し、内燃機関EGを駆動してその動力により第1回転電機MG1に発電させることで、車両を停止させた状態で蓄電装置を充電する充電モードが実現できる。
【0045】
上述したように、第1駆動装置4Aは、回転自在に支持された第1シフトドラム41と、第1シフトドラム41の回転運動を直線運動に変換して第1係合装置CL1に伝達する第1カム機構47とを備えている。同様に、第2駆動装置4Bは、回転自在に支持された第2シフトドラム42と、第2シフトドラム42の回転運動を直線運動に変換して第2係合装置CL2に伝達する第2カム機構とを備えている。第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とは、同軸に配置されていると共に、ドラム駆動軸49を介して一体的に回転するように連結されている。また、車両用駆動装置100は、ドラム駆動軸49を駆動するドラム駆動源6を備えている。
【0046】
本実施形態では、第1駆動装置4Aと第2駆動装置4Bとが共通の1つのクラッチ駆動装置4として構成され、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とが、それぞれを構成する部材を一部共用するように構成されている。第1シフトドラム41と第2シフトドラム42は、共通する1本のドラム駆動軸49を介して一体的に回転する。
【0047】
第1シフトドラム41、第2シフトドラム42、ドラム駆動軸49は、第1軸A1~第5軸A5と平行な別軸であるドラム回転軸A0に配置され、このドラム回転軸A0を回転軸心として回転する。第1シフトドラム41及び第2シフトドラム42は、ドラム回転軸A0を中心とする円筒状に形成されている。ドラム駆動軸49は、第1シフトドラム41及び第2シフトドラム42を一体的に回転するように連結する軸部材であり、ドラム回転軸A0に沿って延在するように形成されている。ドラム駆動源6としては、種々のモータを採用可能であり、例えば、複数相の交流電力で駆動される交流回転電機を採用することができる。より具体的には、ドラム駆動源6としては、サーボモータやステッピングモータが好適に用いられる。
【0048】
図1に示すように、ドラム駆動軸49とドラム駆動源6とは、減速機5を介して連結されている。減速機5は、第1減速ギヤ51と第1減速ギヤ51よりも大径の第2減速ギヤ52とを備えている。第1減速ギヤ51は、ドラム回転軸A0と平行し別軸に配置されると共に、ドラム駆動源6の回転軸に連結されている。第2減速ギヤ52は、第1減速ギヤ51と噛み合うと共にドラム回転軸A0に配置され、ドラム駆動軸49に連結されている。
【0049】
上述したように、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とは、一体的に回転するように連結されており、ドラム駆動源6は2つのドラムを駆動する。即ち、ドラム駆動源6は、2つのドラムを駆動するために、大きい駆動力が必要であるが、このような減速機5を備えることにより、ドラム駆動源6の小型化を図り易い。よって、車両用駆動装置100の小型化も図り易い。
【0050】
図1及び
図2に示すように、第1カム機構47は、第1カム案内路43と、第1カムフォロア45とを備えている。また、第2カム機構48は、第2カム案内路44と、第2カムフォロア46とを備えている。
【0051】
第1カム案内路43は、第1シフトドラム41の回転方向に沿って設けられている。本実施形態では、第1カム案内路43は、第1シフトドラム41の外周面において周方向に沿って連続的に形成された溝状に構成されている。第1カム案内路43は、第1シフトドラム41の回転に応じて位相が変化するように形成されている。ここで、第1カム案内路43の「位相」とは、第1シフトドラム41の回転軸心に沿う方向(ここでは、軸方向L)における第1カム案内路43の位置である。第1カムフォロア45は、第1カム案内路43の位相の変化に応じて直線運動を行う。第1カムフォロア45は、特定の径方向に沿って延在するように形成されており、その一部が第1カム案内路43における溝部内に位置するように配置されている。なお、第1カム案内路43の形状は溝状には限定されず、例えば、第1シフトドラム41の外周面において周方向に沿って連続的に形成された凸状に形成されていても良い。また、第1カム案内路43が第1シフトドラム41の軸方向Lの端面あるいは内周面に形成されていても良い。
【0052】
第1カムフォロア45が第1カム案内路43の位相に応じて軸方向Lに沿って直線運動を行うことで、第1係合装置CL1を駆動することができる。第1カムフォロア45は、不図示のシフトフォークに連結され、シフトフォークを介して第1噛合い部材DS1(ドグスリーブ)に連結されている。第1カムフォロア45が軸方向Lに沿って直線運動することによって、第1係合装置CL1の係合状態が切り替えられる。
【0053】
同様に、第2カム案内路44は、第2シフトドラム42の回転方向に沿って設けられている。本実施形態では、第2カム案内路44は、第2シフトドラム42の外周面において周方向に沿って連続的に形成された溝部により構成されている。第2カム案内路44は、第2シフトドラム42の回転に応じて位相が変化するように形成されている。ここで、第2カム案内路44の「位相」とは、第2シフトドラム42の回転軸心に沿う方向(ここでは、軸方向L)における第2カム案内路44の位置である。第2カムフォロア46は、第2カム案内路44の位相の変化に応じて直線運動を行う。第2カムフォロア46は、特定の径方向に沿って延在するように形成されており、その一部が第2カム案内路44における溝部内に位置するように配置されている。なお、第2カム案内路44の形状は溝状には限定されず、例えば、第2シフトドラム42の外周面において周方向に沿って連続的に形成された凸状に形成されていても良い。また、第2カム案内路44が第2シフトドラム42の軸方向Lの端面あるいは内周面に形成されていても良い。
【0054】
第2カムフォロア46が第2カム案内路44の位相に応じて軸方向Lに沿って直線運動を行うことで、第2係合装置CL2を駆動することができる。第2カムフォロア46は、不図示のシフトフォークに連結され、シフトフォークを介して第2噛合い部材DS2(ドグスリーブ)に連結されている。第2カムフォロア46が軸方向Lに沿って直線運動することによって、第2係合装置CL2の係合状態が切り替えられる。
【0055】
即ち、第1係合装置CL1は、第1噛合い部材DS1の軸方向Lの位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる噛み合い式の係合装置であり、第2係合装置CL2は、第2噛合い部材DS2の軸方向Lの位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる噛み合い式の係合装置である。ドラム駆動軸49は、軸方向Lに沿って配置されており、クラッチ駆動装置4を構成する第1駆動装置4Aは、第1噛合い部材DS1を軸方向Lに駆動し、クラッチ駆動装置4を構成する第2駆動装置4Bは、第2噛合い部材DS2を軸方向Lに駆動する。
【0056】
噛み合い式の係合装置である第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2は、シフトドラム(第1シフトドラム41、第2シフトドラム42)を有するクラッチ駆動装置4(第1駆動装置4A、第2駆動装置4B)により適切に駆動される。また、クラッチ駆動装置4(第1駆動装置4A、第2駆動装置4B)は第1ロータ10の回転軸に沿う軸方向Lに沿って配置されているので、車両用駆動装置100の径方向の寸法を小さく抑え易い。
【0057】
上述したように、第1カム機構47と第2カム機構48とは、ドラム駆動軸49の回転に応じて第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の係合状態を切り替える。具体的には、
図3に示すように、第1カム機構47と第2カム機構48とは、ドラム駆動軸49回りの回転方向Dの一方側である回転方向第1側D1に向けて回転することに応じて、第1モード(MODE1)、第2モード(MODE2)、第3モード(MODE3)、第4モード(MODE4)の4つの動作モードに状態遷移する。
図3の状態遷移図は、円筒状に形成された第1シフトドラム41及び第2シフトドラム42の周方向(回転方向)に沿って形成された第1カム案内路43及び第2カム案内路44の展開図を用いて、第1係合装置CL1及び第2係合装置CL2の係合状態と車両用駆動装置100の動作モードとの関係を示している。
【0058】
第1モードは、第1係合装置CL1を解放状態とし、且つ、第2係合装置CL2を係合状態とする動作モードである。この動作モードでは、表1を参照して上述したように、内燃機関EGと出力部材OUTとの間の駆動力の伝達を遮断し、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の双方の駆動力を出力部材に伝達する、いわゆる2モータEVモード(第2EVモード)が実現可能である。
【0059】
第2モードは、第1係合装置CL1を解放状態とし、且つ、第2係合装置CL2を解放状態とする動作モードである。この動作モードでは、表1を参照して上述したように、内燃機関EG及び第1回転電機MG1と、出力部材OUTとの間の駆動力の伝達を遮断し、第2回転電機MG2の駆動力を出力部材OUTに伝達する、いわゆる1モータEVモード(第1EVモード)が実現可能である。
【0060】
第3モードは、第1係合装置CL1を係合状態とし、且つ、第2係合装置CL2を解放状態とする動作モードである。この動作モードでは、表1を参照して上述したように、内燃機関EG及び第1回転電機MG1と出力部材OUTとの間の駆動力の伝達を遮断した状態で内燃機関EGの駆動力を第1回転電機MG1に伝達して第1回転電機MG1に発電を行わせると共に、第2回転電機MG2の駆動力を出力部材OUTに伝達する、いわゆるシリーズハイブリッドモード(第1HVモード)が実現可能である。
【0061】
第4モードは、第1係合装置CL1を係合状態とし、且つ、第2係合装置CL2を係合状態とする動作モードである。この動作モードでは、表1を参照して上述したように、内燃機関、第1回転電機、及び第2回転電機の駆動力を出力部材に伝達する、いわゆるパラレルハイブリッドモード(第2HVモード)が実現可能である。
【0062】
第1カム機構47と第2カム機構48とは、回転方向第1側D1に向けて回転することに応じて、第1モード、第2モード、第3モード、第4モードの順に状態遷移する。また、第1カム機構47と第2カム機構48とは、回転方向第2側D2に向けて回転することに応じて、第4モード、第3モード、第2モード、第1モードの順に状態遷移する。
【0063】
2モータEVモードからパラレルハイブリッドモードに切り替えるには、まず第1回転電機MG1と第2回転電機MG2との間の駆動力の伝達を遮断し、内燃機関EGと第1回転電機MG1間で駆動力を伝達する状態とし、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の回転速度を出力部材OUTの回転速度に同期させてから内燃機関EGを始動して、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の駆動力を出力部材OUTに伝達するプロセスが必要である。シフトドラム40による動作モードの状態遷移の順番を、2モータEVモード(第1モード)、1モータEVモード(第2モード)、シリーズハイブリッドモード(第3モード)、パラレルハイブリッドモード(第4モード)の順とすることで、効率よく動作モードを状態遷移させることができる。例えば、後述するように、停車時から急発進など低出力状態から高出力が必要になった場合などに、低出力状態で利用され易いシリーズハイブリッドモード(第3モード)が、1モータEVモード(第2モード)とパラレルハイブリッドモード(第4モード)との間にあるため、パラレルハイブリッドモード(第4モード)への移行と、1モータEVモード(第2モード)を介して2モータEVモード(第1モード)への移行との双方を迅速に行うことができる。よって、高い出力を迅速に車輪Wへ伝達することができる。
【0064】
例えば、車両の発進時には、第2モードが選択され、1モータEVモード(第1EVモード)によって車両が走行する。ここで、第1EVモードよりも高いトルク、高い回転速度が要求される場合には、シフトドラム40を回転方向第2側D2に回転させることによって、第1モード(2モータEVモード(第2EVモード))に状態遷移させる。ここで、蓄電装置に蓄えられた電力が不足する場合には、シフトドラム40を回転方向第1側D1に回転させることによって、再度第2モード(1モータEVモード(第1EVモード))に状態遷移させ、さらにシフトドラム40を回転方向第1側D1に回転させることによって、第2係合装置CL2の解放状態を維持させつつ、第1係合装置CL1を係合させる。そして、第1回転電機MG1を駆動して、入力部材INを介して内燃機関EGを始動し、第3モード(シリーズハイブリッドモード(第1HVモード))に状態遷移させる。さらに高いトルクや高い回転速度が要求される場合には、シフトドラム40を回転方向第1側D1に回転させることによって、第4モード(パラレルハイブリッドモード(第2HVモード))に状態遷移させる。
【0065】
尚、上記においては、第1駆動装置4Aと第2駆動装置4Bとが共通の1つのクラッチ駆動装置4として構成されている形態を例示した。また、上記においては、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とは、それぞれを構成する部材を一部共用して構成されている形態を例示した。しかし、
図4に示すように、第1駆動装置4Aと第2駆動装置4Bとは独立した部材により構成されていてもよい。尚、この場合においても、第1シフトドラム41と第2シフトドラム42は、ドラム駆動軸49を介して一体的に回転する。例えば、ドラム駆動軸49が、一体的に回転する第1ドラム駆動軸49Aと第2ドラム駆動軸49Bとを備え、第1ドラム駆動軸49Aが減速機5と第1シフトドラム41とを連結し、第2ドラム駆動軸49Bが第1シフトドラム41と第2シフトドラム42とを連結する構成であってもよい。
【0066】
このように、本実施形態の車両用駆動装置100によれば、シリーズハイブリッドモードとパラレルハイブリッドモードとの双方を実行可能なハイブリッド車両用の駆動装置を実現することができる。また、第1係合装置CL1を駆動する第1駆動装置4Aと第2係合装置CL2を駆動する第2駆動装置4Bとの双方を1つのドラム駆動源6により駆動することができる。従って、これら2つの駆動装置に独立の駆動源を備える構成に比べて、車両用駆動装置100のコストを低減できると共に、車両用駆動装置100の小型化を図り易い。
【0067】
上述したようなクラッチ駆動装置4は、
図1を参照して上述したような車両用駆動装置100(第1車両用駆動装置100A)に限らず、他の構成の車両用駆動装置100(第2車両用駆動装置100B、第3車両用駆動装置100C、第4車両用駆動装置100D)においても適用可能である。以下、そのような他の構成例について説明する。尚、
図1を参照して説明した第1車両用駆動装置100Aと同様の事項については、適宜説明を省略する。また、第2車両用駆動装置100B、第3車両用駆動装置100C、第4車両用駆動装置100Dにおいて共通する事項についても適宜説明を省略する。
【0068】
図5は、第2車両用駆動装置100Bのスケルトンを示しており、第6は、第3車両用駆動装置100Cのスケルトンを示している。第2車両用駆動装置100B及び第3車両用駆動装置100Cは、複数のギヤ機構として、カウンタギヤ機構CGと、出力用差動歯車機構DFと、複数の遊星歯車機構とを備えている。また、第2車両用駆動装置100B及び第3車両用駆動装置100Cは、複数の遊星歯車機構として、遊星歯車式増速機PG1と、遊星歯車式減速機PG2とを備えている。第2車両用駆動装置100Bと第3車両用駆動装置100Cとを区別する場合、第2車両用駆動装置100Bには、第1遊星歯車式増速機PG11と第1遊星歯車式減速機PG12とが備えられており、第3車両用駆動装置100Cには、第2遊星歯車式増速機PG21と第2遊星歯車式減速機PG22とが備えられている。
【0069】
始めに、第2車両用駆動装置100Bの構成について説明する。上述した遊星歯車式増速機PG1は、第1伝達系1に設けられた遊星歯車機構であって、入力部材INの回転を増速して第1ロータ10に伝達する。また、遊星歯車式減速機PG2は、第2伝達系2に設けられた遊星歯車機構であって、第1ロータ10の回転を減速して第1カウンタギヤ61に伝達する。また、詳細は、後述するが、遊星歯車式増速機PG1は、第1回転要素E1、第2回転要素E2、及び第3回転要素E3を備えている。第1回転要素E1は、第1ロータ10に駆動連結され、第2回転要素E2は入力部材INに駆動連結され、第3回転要素E3は、第1係合装置CL1により非回転部材(ここではケースCS)に選択的に連結される。
【0070】
また、入力部材INと、第1回転電機MG1と、遊星歯車式増速機PG1と、遊星歯車式減速機PG2と、第1係合装置CL1と、第2係合装置CL2とは、第1軸A1上に配置されている。そして、カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1と平行な別軸である第5軸A5上に配置され、出力用差動歯車機構DFは、第1軸A1及び第5軸A5と平行な別軸である第2軸A2上に配置されている。また、第2回転電機MG2は、第1軸A1、第2軸A2及び第5軸A5と平行な別軸である第4軸A4上に配置されている。内燃機関EGと入力部材INとの動力伝達、出力部材OUTと車輪Wとの間の動力伝達は、第1車両用駆動装置100Aと同様である。
【0071】
入力部材INと第1ロータ10とを駆動連結する第1伝達系1には、遊星歯車式増速機PG1と、第1係合装置CL1とが含まれる。第1ロータ軸11も第1伝達系1に含めることができる。遊星歯車式増速機PG1は、第1サンギヤS1(第3車両用駆動装置100Cと区別する場合は“S11”以下同様)と、第1キャリヤC1(C11)と、第1リングギヤR1(R11)と、第1キャリヤC1に支持されたピニオンギヤとを備えている。ピニオンギヤは、第1サンギヤS1に噛み合うサンギヤ側ピニオンギヤと、第1リングギヤR1に噛み合うリングギヤ側ピニオンギヤとを含み、遊星歯車式増速機PG1はこれら2種類のピニオンギヤが相互に噛み合うダブルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0072】
本例では、第1サンギヤS1は第1回転要素E1に相当し、第1キャリヤC1は第2回転要素E2に相当し、第1リングギヤR1は第3回転要素E3に相当する。
図5に示すように、入力部材INは、第1キャリヤC1(第2回転要素E2)に駆動連結され、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータ軸11は、第1サンギヤS1(第1回転要素E1)に駆動連結される。第1リングギヤR1(第3回転要素E3)は、第1係合装置CL1により非回転部材であるケースCSに選択的に連結される。第1リングギヤR1が第1係合装置CL1によりケースCSに連結された場合、内燃機関EGから入力部材INを介して入力された動力は、遊星歯車式増速機PG1によって増速されて第1回転電機MG1に伝達される。
【0073】
尚、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3の回転速度の順は、記載の順となっている。そして、第2回転要素E2に入力部材INが駆動連結され、第1回転要素E1と第3回転要素E3の一方に第1ロータ10が駆動連結され、他方がケースCSに固定されることで、入力部材INの回転が増速されて第1ロータ10に伝達される。ここでは、第1係合装置CL1が係合された状態で、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3の順に高い回転速度となっており、第2回転要素E2に連結された入力部材IN(内燃機関EG)の回転が増速されて、第1回転要素E1に連結された第1ロータ10に伝達される。
【0074】
尚、本願において、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、遊星歯車機構の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、遊星歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。尚、「各回転要素の回転速度の順」は、各回転要素の速度線図(共線図)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸の配置方向は、速度線図の描き方によって異なるが、その配置順は遊星歯車機構の構造によって定まるものであるため一定となる。
【0075】
ここでは、上述したように、ダブルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式増速機PG1を構成する形態を例示したが、シングルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式増速機PG1が構成されてもよい。また、上記のような第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3の回転速度の順は単なる一例であり、第2回転要素E2(入力部材IN)の回転が増速されて第1回転要素E1(第1ロータ10)に伝達される構成であれば、これらの回転速度の順が入れ替わっても良い。
【0076】
尚、第1係合装置CL1が解放状態で、第1リングギヤR1がケースCSに連結されていない場合には、第1キャリヤC1が空転し、入力部材INと第1ロータ10との間での第1伝達系1の動力伝達が遮断され、内燃機関EGからの動力は第1ロータ10に伝達されない。
【0077】
第2車両用駆動装置100Bでは、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって、遊星歯車式増速機PG1、第1回転電機MG1、遊星歯車式減速機PG2が記載の順に配置されている。第1ロータ軸11は、第1回転電機MG1の軸方向第1側L1において、遊星歯車式増速機PG1の第1サンギヤS1と一体回転するように連結され、第1回転電機MG1の軸方向第2側L2において、遊星歯車式減速機PG2の第2サンギヤS2(後述する)と一体回転するように連結されている。
【0078】
遊星歯車式減速機PG2は、第2サンギヤS2(第3車両用駆動装置100Cと区別する場合は“S12”以下同様)と、第2キャリヤC2(C12)と、第2リングギヤR2(R12)と、第2キャリヤC2に支持されたピニオンギヤとを備えている。ピニオンギヤは、第2サンギヤS2に噛み合うと共に第2リングギヤR2に噛み合う。遊星歯車式減速機PG2はシングルピニオン型の遊星歯車機構である。本例では、第2サンギヤS2は第4回転要素E4に相当し、第2キャリヤC2は第5回転要素E5に相当し、第2リングギヤR2は第6回転要素E6に相当する。
【0079】
第2サンギヤS2(第4回転要素E4)は第1ロータ10と一体的に回転するように第1ロータ軸11に連結され、第2キャリヤC2(第5回転要素E5)は第2係合装置CL2を介して非回転部材であるケースCSに選択的に連結され、第2リングギヤR2(第6回転要素E6)はカウンタ駆動ギヤ35と一体的に回転するように連結されている。後述するように、カウンタ駆動ギヤ35は、カウンタギヤ機構CGの第1カウンタギヤ61に噛み合うギヤであり、本実施形態では第2リングギヤR2に対して径方向外側に配置され、第2リングギヤR2と一体的に回転するように連結されている。
【0080】
上述したように、第2キャリヤC2は、第2係合装置CL2により非回転部材であるケースCSに選択的に連結される。第2キャリヤC2が第2係合装置CL2によりケースCSに連結された場合、第1ロータ軸11を介して遊星歯車式減速機PG2に入力された動力は、遊星歯車式減速機PG2によって減速されて伝達される。
【0081】
ここでは、第4回転要素E4、第5回転要素E5、第6回転要素E6の回転速度の順が記載の順となっている。そして、第5回転要素E5はケースCSに固定され、第4回転要素E4と第6回転要素E6のうち、回転速度の絶対値が大きい方に駆動源(ここでは第1回転電機MG1)側の部材が駆動連結され、回転速度の絶対値が小さい方に出力部材OUT側の部材が駆動連結されることで、駆動源の回転が減速されて出力部材OUTの側に伝達される。ここでは、第2係合装置CL2が係合された状態で、第4回転要素E4の回転が反転されると共に減速されて第6回転要素E6に伝達される構成となっている。よって、第4回転要素E4に連結された第1ロータ10の回転が減速されて、第6回転要素E6に連結されたカウンタ駆動ギヤ35に伝達される。
【0082】
尚、ここでは、シングルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式減速機PG2を構成する形態を例示したが、ダブルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式減速機PG2が構成されてもよい。また、上記のような第4回転要素E4、第5回転要素E5、第6回転要素E6の回転速度の順は単なる一例であり、第4回転要素E4(第1ロータ10)の回転が減速されて第6回転要素E6(カウンタ駆動ギヤ35)に伝達される構成であれば、これらの回転速度の順が入れ替わっても良い。
【0083】
第2係合装置CL2が解放状態で、第2キャリヤC2がケースCSに連結されていない場合には、第2リングギヤR2が空転し、第1ロータ軸11と第1カウンタギヤ61との間での動力伝達が遮断される。つまり、入力部材INと第1カウンタギヤ61との間での第2伝達系2の動力伝達が遮断され、内燃機関EGからの動力は第1カウンタギヤ61に伝達されない。
【0084】
第2カウンタギヤ62は、出力用差動歯車機構DFの差動入力ギヤ71に噛み合っている。従って、カウンタギヤ機構CGは、カウンタ駆動ギヤ35と、出力用差動歯車機構DFとの間の動力伝達経路に配置されて、両者の間で動力を伝達する。また、第1カウンタギヤ61は、第2回転電機出力ギヤ29と噛み合っている。第2回転電機出力ギヤ29は、第2回転電機MG2のロータに連結されて第2ロータ20と一体的に回転する第2ロータ軸21と一体回転するように、第2ロータ軸21に連結されている。第2回転電機MG2からの動力は、第1カウンタギヤ61を介して、出力用差動歯車機構DFに伝達される。即ち、カウンタギヤ機構CGは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の側からの動力と、第2回転電機MG2の側からの動力とを合わせて出力用差動歯車機構DFに伝達することができる。
【0085】
第2車両用駆動装置100Bでは、第2係合装置CL2が第1係合装置CL1に対して軸方向第2側L2に配置され、第2駆動装置4Bの第2カム機構48のカム部(第2カムフォロア46)が、第1駆動装置4Aの第1カム機構47のカム部(第1カムフォロア45)に対して軸方向第2側L2に配置されている。これにより、カム機構におけるカム部から係合装置までの伝達機構を小型化し易い。なお、第2車両用駆動装置100Bでは、軸方向第2側L2が「軸方向特定側」に相当する。
【0086】
第2車両用駆動装置100Bも、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2の作動状態によって、表1を参照して上述したような複数の動作モードにより駆動されることができる。
【0087】
次に
図6を参照して第3車両用駆動装置100Cについて説明するが、第1車両用駆動装置100A及び第2車両用駆動装置100Bと同様の事項については、適宜説明を省略する。第2車両用駆動装置100Bと同様に、入力部材INと第1ロータ10とを駆動連結する第1伝達系1には、遊星歯車式増速機PG1と、第1係合装置CL1とが含まれる。また、第1ロータ軸11も第1伝達系1に含めることができる。遊星歯車式増速機PG1は、第1サンギヤS1(第2車両用駆動装置100Bと区別する場合は“S21”以下同様)と、第1キャリヤC1(C21)と、第1リングギヤR1(R21)と、第1キャリヤC1に支持されたピニオンギヤとを備えている。第3車両用駆動装置100Cの遊星歯車式増速機PG1(第2遊星歯車式増速機PG21)は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、当該ピニオンギヤは、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛み合っている。
【0088】
第2車両用駆動装置100Bと同様に、第1サンギヤS1は第1回転要素E1に相当し、第1キャリヤC1は第2回転要素E2に相当し、第1リングギヤR1は第3回転要素E3に相当する。
図3に示すように、入力部材INは、第1キャリヤC1(第2回転要素E2)に駆動連結され、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータ軸11は、第1サンギヤS1(第1回転要素E1)に駆動連結される。第1リングギヤR1(第3回転要素E3)は、第1係合装置CL1により非回転部材であるケースCSに選択的に連結される。第1リングギヤR1が第1係合装置CL1によりケースCSに連結された場合、
図6の速度線図に示すように、内燃機関EGから入力部材INを介して入力された動力は、遊星歯車式増速機PG1によって増速されて第1回転電機MG1に伝達される。
【0089】
尚、ここでは、シングルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式増速機PG1を構成する形態を例示したが、第2車両用駆動装置100Bと同様に、ダブルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式増速機PG1が構成されてもよい。また、第2車両用駆動装置100Bと同様に、第2回転要素E2(入力部材IN)の回転が増速されて第1回転要素E1(第1ロータ10)に伝達される構成であれば、第1回転要素E1、第2回転要素E2、第3回転要素E3の回転速度の順が入れ替わっても良い。
【0090】
第2車両用駆動装置100Bと同様に、第1係合装置CL1が解放状態で、第1リングギヤR1がケースCSに連結されていない場合には、第1キャリヤC1が空転し、入力部材INと第1ロータ10との間での動力伝達が遮断され、内燃機関EGからの動力は第1ロータ10に伝達されない。
【0091】
第3車両用駆動装置100Cでは、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって、第1回転電機MG1、第2係合装置CL2、第2回転電機MG2、遊星歯車式減速機PG2、遊星歯車式増速機PG1及び第1係合装置CL1が記載の順に配置されている。第1回転電機MG1と、遊星歯車式増速機PG1及び第1係合装置CL1は、第1軸A1における軸方向Lの両端にそれぞれ配置されている。第1ロータ軸11は、第1軸A1における最も軸方向第1側L1で第1回転電機MG1に連結されると共に、最も軸方向第2側L2で遊星歯車式増速機PG1及び第1係合装置CL1に駆動連結されている。
【0092】
また、第1ロータ軸11は、軸方向Lにおける第1回転電機MG1と第2回転電機MG2との間に配置された第2係合装置CL2によって、選択的に第2ロータ20及び遊星歯車式減速機PG2の第2サンギヤS2と連結される。
【0093】
第3車両用駆動装置100Cでは、第2係合装置CL2が第1係合装置CL1に対して軸方向第1側L1に配置され、第2駆動装置4Bの第2カム機構48のカム部(第2カムフォロア46)が、第1駆動装置4Aの第1カム機構47のカム部(第1カムフォロア45)に対して軸方向第1側L1に配置されている。これにより、カム機構におけるカム部から係合装置までの伝達機構を小型化し易い。なお、第3車両用駆動装置100Cでは、軸方向第1側L1が「軸方向特定側」に相当する。
【0094】
第2サンギヤS2(第7回転要素E7)は、第2係合装置CL2を介して第1ロータ10に選択的に連結されると共に第2ロータ20と一体的に回転するように連結され、第8回転要素E8は、第1カウンタギヤ61に噛合うカウンタ駆動ギヤ35と一体的に回転するように連結され、第9回転要素E9は、非回転部材であるケースCSに連結されている。カウンタ駆動ギヤ35は、カウンタギヤ機構CGの第1カウンタギヤ61に噛み合うギヤであり、本実施形態では第2リングギヤR2に対して径方向外側に配置され、第2キャリヤC2と一体的に回転するように連結されている。
【0095】
第2リングギヤR2はケースCSに固定されている。第2ロータ20と一体的に回転する第2サンギヤS2は、第2係合装置CL2により選択的に第1ロータ10に駆動連結される。第2サンギヤS2が第1ロータ10に駆動連結された場合、第1ロータ軸11を介して遊星歯車式減速機PG2に入力された動力は、遊星歯車式減速機PG2によって減速されて、第2キャリヤC2から出力され、カウンタ駆動ギヤ35を介してカウンタギヤ機構CGに伝達される。
【0096】
ここでは、第7回転要素E7、第8回転要素E8、第9回転要素E9の回転速度の順が記載の順となっている。そして、第8回転要素E8に出力部材OUT側の部材が駆動連結され、第7回転要素E7と第7回転要素E7の一方に駆動源(ここでは第1回転電機MG1)側の部材が駆動連結され、他方がケースCSに固定されることで、駆動源側の部材の回転が減速されて出力部材OUT側の部材(ここではカウンタ駆動ギヤ35)に伝達される。ここでは、第7回転要素E7、第8回転要素E8、第9回転要素E9の順に低い回転速度となっており、第7回転要素E7に連結された駆動源側の部材の回転が減速されて、第8回転要素E8に連結された出力部材OUT側の部材に伝達される。
【0097】
尚、ここでは、シングルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式減速機PG2を構成する形態を例示したが、ダブルピニオン型の遊星歯車機構により遊星歯車式減速機PG2が構成されてもよい。また、第7回転要素E7(第1ロータ10)の回転が減速されて第9回転要素E9(カウンタ駆動ギヤ35)に伝達される構成であれば、第7回転要素E7、第8回転要素E8、第9回転要素E9の回転速度の順が入れ替わっても良い。
【0098】
第2係合装置CL2が解放状態の場合、第1ロータ軸11と第1カウンタギヤ61との間での動力伝達が遮断される。これにより、入力部材INと第1カウンタギヤ61との間での動力伝達も遮断され、内燃機関EGからの動力は第1カウンタギヤ61に伝達されない。
【0099】
第2カウンタギヤ62は、出力用差動歯車機構DFの差動入力ギヤ71に噛み合っている。従って、カウンタギヤ機構CGは、カウンタ駆動ギヤ35と、出力用差動歯車機構DFとの間の動力伝達経路に配置されて、両者の間で動力を伝達する。ここでは、第2回転電機MG2の第2ロータ20が、遊星歯車式減速機PG2の第2サンギヤS2と一体回転するように連結されており、遊星歯車式減速機PG2の第2キャリヤC2は、カウンタ駆動ギヤ35を介して第1カウンタギヤ61に駆動連結されている。即ち、第2回転電機MG2からの動力は、第1カウンタギヤ61を介して、出力用差動歯車機構DFに伝達可能される。このように、カウンタギヤ機構CGは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の側からの動力と、第2回転電機MG2の側からの動力とを合わせて出力用差動歯車機構DFに伝達することができる。
【0100】
第3車両用駆動装置100Cも、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2の作動状態によって、表1を参照して上述したような複数の動作モードにより駆動されることができる。
【0101】
次に
図7を参照して第4車両用駆動装置100Dについて説明するが、第1車両用駆動装置100A、第2車両用駆動装置100B、及び第3車両用駆動装置100Cと同様の事項については、適宜説明を省略する。第4車両用駆動装置100Dは、内燃機関EGに駆動連結される入力部材INと、車輪Wに駆動連結される出力部材OUTと、第1ロータ10を備えた第1回転電機MG1と、第2ロータ20を備えた第2回転電機MG2と、複数のギヤ機構とを備えている。第4車両用駆動装置100Dが備える複数のギヤ機構には、カウンタギヤ機構CGと、出力用差動歯車機構DFとが含まれる。
【0102】
出力用差動歯車機構DFは、第2カウンタギヤ62に噛合う差動入力ギヤ71を備え、差動入力ギヤ71の回転を一対の出力部材OUTに分配する。出力用差動歯車機構DFは、第1軸A1と平行な別軸である第2軸A2上に配置されている。カウンタギヤ機構CGは、第1カウンタギヤ61及び第1カウンタギヤ61と一体的に回転する第2カウンタギヤ62を備えている。カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1及び第2軸A2と平行な別軸である第5軸A5上に配置されている。第2回転電機MG2が配置される第3軸A3には、第2ロータ20と一体的に回転する第2ロータギヤ25が配置されている。第1軸A1には、第2ロータギヤ25と第1カウンタギヤ61との双方に噛み合うアイドラギヤ33が配置されている。
【0103】
第1軸A1に配置された入力部材INと、第3軸A3に配置された第1ロータ10とを駆動連結するため、第1軸A1には、入力ギヤ31が配置されている。また、第3軸A3には、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータギヤ15が配置されている。具体的には、第1ロータギヤ15は、第1ロータ10と一体的に回転する第1ロータ軸11に連結されている。このように、第4車両用駆動装置100Dでは、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とが同軸上に配置されている。第1軸A1に配置される入力ギヤ31は、第1係合装置CL1を介して入力部材INと選択的に連結される。入力ギヤ31と第1ロータギヤ15とは噛み合っており、入力部材INと入力ギヤ31とが第1係合装置CL1を介して連結されると、入力部材INからの動力が第1ロータ10に伝達される。
【0104】
尚、第1係合装置CL1が解放状態の場合には、入力ギヤ31が入力部材INに連結されず、入力ギヤ31には内燃機関EGからの動力が伝達されない。このため、内燃機関EGと第1ロータ10との間の駆動力の伝達は行われない。
【0105】
カウンタギヤ機構CGは、第1カウンタギヤ61及び第1カウンタギヤ61と一体的に回転する第2カウンタギヤ62を備えて構成されている。第1カウンタギヤ61は第2カウンタギヤ62に対して軸方向第1側L1に配置されている。第2カウンタギヤ62は第1カウンタギヤ61よりも小径のギヤである。そして、カウンタギヤ機構CGにおいて第2回転電機MG2の側から伝達された回転が減速されて出力用差動歯車機構DFへ伝達される。
【0106】
また、第1カウンタギヤ61は、アイドラギヤ33を介して第2ロータ軸21に連結された第2ロータギヤ25に駆動連結されている。第1カウンタギヤ61と一体的に回転する第2カウンタギヤ62は、差動入力ギヤ71に噛み合っている。従って、第2ロータ20と出力部材OUTとの間は、第2ロータギヤ25、アイドラギヤ33、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車機構DFを介して動力が伝達される。
【0107】
第2係合装置CL2は、係合状態において、第1ロータ軸11と第2ロータ軸21とを連結する。第1ロータ軸11と第2ロータ軸21とが連結されることにより、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の側からの動力と、第2回転電機MG2の側からの動力とを合わせて出力用差動歯車機構DFに伝達することができる。第1ロータ10からの動力は、第2ロータ軸21、第2ロータギヤ25、アイドラギヤ33、カウンタギヤ機構CG、出力用差動歯車機構DFを介して出力部材OUTに伝達される。
【0108】
第4車両用駆動装置100Dも、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、第1係合装置CL1、第2係合装置CL2の作動状態によって、表1を参照して上述したような複数の動作モードにより駆動されることができる。
【符号の説明】
【0109】
1:第1伝達系、2:第2伝達系、3:第3伝達系、4A:第1駆動装置、4B:第2駆動装置、5:減速機、6:ドラム駆動源、10:第1ロータ、20:第2ロータ、40:シフトドラム、41:第1シフトドラム、42:第2シフトドラム、45:第1カムフォロア(カム部)、46:第2カムフォロア(カム部)、47:第1カム機構、48:第2カム機構、49:ドラム駆動軸、100:車両用駆動装置、CL1:第1係合装置、CL2:第2係合装置、D:回転方向、D1:回転方向第1側、DS1:第1噛合い部材、DS2:第2噛合い部材、EG:内燃機関、EV:第2、IN:入力部材、L:軸方向、L1:軸方向第1側、MG1:第1回転電機、MG2:第2回転電機、OUT:出力部材、W:車輪
【手続補正書】
【提出日】2022-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
第1ロータを備えた第1回転電機と、
第2ロータを備えた第2回転電機と、
前記入力部材と前記第1ロータとの間の動力伝達を断接する第1係合装置と、
前記第1ロータと前記出力部材との間の動力伝達を断接する第2係合装置と、
前記第1係合装置を駆動する第1駆動装置と、
前記第2係合装置を駆動する第2駆動装置と、を備え、
前記第1駆動装置は、回転自在に支持された第1シフトドラムと、前記第1シフトドラムの回転運動を直線運動に変換して前記第1係合装置に伝達する第1カム機構と、を備え、
前記第2駆動装置は、回転自在に支持された第2シフトドラムと、前記第2シフトドラムの回転運動を直線運動に変換して前記第2係合装置に伝達する第2カム機構と、を備え、
前記第1シフトドラムと前記第2シフトドラムとが、同軸に配置されていると共に、ドラム駆動軸を介して一体的に回転するように連結され、
前記ドラム駆動軸を駆動するドラム駆動源を備えている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1カム機構と前記第2カム機構とは、前記ドラム駆動軸回りの回転方向の一方側である回転方向第1側に向けて回転することに応じて、
前記第1係合装置を解放状態とし、且つ、前記第2係合装置を係合状態とする第1モード、
前記第1係合装置を解放状態とし、且つ、前記第2係合装置を解放状態とする第2モード、
前記第1係合装置を係合状態とし、且つ、前記第2係合装置を解放状態とする第3モード、
前記第1係合装置を係合状態とし、且つ、前記第2係合装置を係合状態とする第4モード、の順に状態遷移するように構成され、
前記第1モードにおいて、前記第1回転電機及び前記第2回転電機が駆動され、
前記第2モードにおいて、前記第2回転電機のみが駆動され、
前記第3モードにおいて、前記内燃機関の動力によって前記第1回転電機に発電させると共に、前記第2回転電機が駆動され、
前記第4モードにおいて、前記内燃機関が駆動される、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1ロータの回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記第1係合装置は、第1噛合い部材の前記軸方向の位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる噛み合い式の係合装置であり、
前記第2係合装置は、第2噛合い部材の前記軸方向の位置に応じて係合状態と解放状態とが切り替わる噛み合い式の係合装置であり、
前記ドラム駆動軸は、前記軸方向に沿って配置され、
前記第1駆動装置は、前記第1噛合い部材を前記軸方向に駆動し、
前記第2駆動装置は、前記第2噛合い部材を前記軸方向に駆動する、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ドラム駆動軸と前記ドラム駆動源とが、減速機を介して連結されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1ロータの回転軸に沿う方向を軸方向として、
前記第2係合装置が前記第1係合装置に対して前記軸方向の一方側である軸方向特定側に配置され、
前記第2駆動装置の前記第2カム機構のカム部が、前記第1駆動装置の前記第1カム機構のカム部に対して前記軸方向特定側に配置されている、請求項1から4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。