(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127874
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16D 27/10 20060101AFI20220825BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220825BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F16D27/10 Z
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026095
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】521077211
【氏名又は名称】チェ、ビョン ソン
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ビョン ソン
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AG03
4F202AG13
4F202AH17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CQ01
4F206AD03
4F206AG03
4F206AG13
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】 ソレノイドアセンブリーの軽量化とコストの節減に寄与し、インナープランジャーの形状の多様化が図れる他、インナーハウジングとの摩擦力を低減できるようにして、ソレノイドアセンブリーの機能を向上させることのできるインナープランジャーを提供すること。
【解決手段】 ソレノイドアセンブリーを構成するコイルボビンが結合されるインナープランジャーの外輪と、インナーハウジングに結合される内輪と、から構成され、前記内輪は、成形性に優れた絶縁体合成樹脂から成形され、インナープランジャーを構成する合成樹脂製の内輪の外周縁には、磁性体金属が外輪としてインサートされ、合成樹脂製の内輪には、インナーハウジングとの摩擦を低減できるようにアンダーカット溝が内輪の内面の全体に形成されたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルボビン(10)が結合されるインナープランジャーの外輪(3)と、前記外輪に一体に構成されてインナーハウジング(20)に結合される内輪(2)と、から構成されるクラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャー(1)において、
前記インナープランジャー(1)の内輪(2)は、インナープランジャーの形状を多様化できるだけではなく、軽量化できるように成形性に優れた絶縁体合成樹脂から成形され、前記合成樹脂製の内輪(2)には、インナーハウジング(20)に沿って往復動するときにインナーハウジング(20)との摩擦を低減できるようにアンダーカット溝(2-1)が内輪(2)の内面の全体に形成され、
前記インナープランジャーを構成する合成樹脂製の内輪(2)の外周縁には、磁性体金属が外輪(3)としてインサートされてなる
ことを特徴とする自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャー。
【請求項2】
インナープランジャーの外輪(3)をインサートするための空間(30-1)と、内輪(2)を形成するための空間(30-2)と、から構成された金型(30)及びインナーハウジング(20)との摩擦を低減できるようにアンダーカット溝(2-1)が内輪(2)の内面の全体に形成できるようにアンダーカット成形部(40-1)付きコア(40)を用意するステップと、
金型(30)におけるインナープランジャーの外輪(3)をインサートするための空間(30-1)に磁性体金属製の外輪(3)を入れ、金型(30)の真ん中にはアンダーカット成形部(40-1)付きコア(40)を結合し、合成樹脂の射出により非磁性体合成樹脂から内輪(2)を形成し且つ脱型するステップと、を含む
ことを特徴とする自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドのコイルアセンブリーのインナープランジャー及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、クラッチ用ソレノイドアセンブリーを構成するインナープランジャーの品質と生産性を向上させることができ、しかも、軽量化できるように構成されたインナープランジャーと該インナープランジャーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のごとく、自動車の差動裝置は、両側の車輪にかかる抵抗に応じてエンジンの駆動力に差をつけ振り分けるように構成されたものであって、キャリアの内部にディファレンシャルケース(差動歯車箱;differential case)が回転可能な状態で設けられ、前記ディファレンシャルケースの内部にピニオン(pinion)付きスパイダー(spider)、前記ピニオンの両側に噛合するサイドギヤ(side gear)が設けられた構造となっており、前記両側のサイドギヤと車輪のハブ(hub)とがドライブシャフト(drive shaft)により連結されることにより、エンジン動力の伝達が行われるようになっている。
【0003】
上記のような機能をする自動車の差動裝置において、クラッチ(clutch)を作動させる機能をするソレノイドアセンブリー(solenoid assembly)は、内部にコイルアセンブリーから発生する磁気力を用いてアウタープランジャー(outer plunger)及びインナープランジャー(inner plunger)またはピストン(piston)を作動させて差動ギヤロック装置を取り付けたり取り外したりする作用をする。
【0004】
従来、上記のような作用をする差動裝置のクラッチ用ソレノイドアセンブリーを構成するインナープランジャーの構成について述べると、インナーハウジングに密着されて結合されるインナープランジャーの内輪は磁力に影響を受けずに移動できるようにステンレス製となっており、外輪は、コイルの電磁力が形成できるようにするための磁性体金属製となっている。
【0005】
上記のように、内輪に磁力が及ばないようにし、かつ、外輪には磁力が形成できるようにするために、材質が異なる異種の金属を一体に構成していたが、その手段をもって異種の金属を互いに溶接し、かつ、色々な段階の精密加工工程を通じて精度よく加工する必要があるため、それに伴う製造コストが高くつくというデメリットがある。
【0006】
特に、インナープランジャーの内輪と外輪の全体が金属製となっているが故に、重量が大きくならざるを得ない。
【0007】
したがって、自動車の軽量化に逆行することはもとより、ソレノイドアセンブリーの機能を低下させるというデメリットがあり、ステンレスの場合に成形性に劣っているが故に、インナープランジャーの形状を制限的に製造せざるを得ないなどインナープランジャーの構造に多大な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-1983-0003671号公報(1983年06月22日付け公開)
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-1660641号公報(2016年09月21日付け登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような問題を解決するための本発明による自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーは、ソレノイドアセンブリーの軽量化とコストの節減に寄与し、インナープランジャーの形状の多様化が図れる他、インナーハウジングとの摩擦力を低減できるようにして、ソレノイドアセンブリーの機能を向上させることのできるインナープランジャーを提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーは、ソレノイドアセンブリーを構成するコイルボビンが結合されるインナープランジャーの外輪と、インナーハウジングに結合される内輪と、から構成される。
【0011】
上記のような構成を有するインナープランジャーの内輪は、成形性に優れた絶縁体合成樹脂から成形され、インナープランジャーを構成する合成樹脂製の内輪の外周縁には、磁性体金属が外輪としてインサートされている。
【0012】
前記合成樹脂製の内輪には、インナーハウジングとの摩擦を低減できるようにアンダーカット溝が内輪の内面の全体に形成されている。
【0013】
クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーの製造方法は、インナープランジャーの外輪をインサートするための空間と内輪を形成するための空間とから構成された金型と、インナーハウジングとの摩擦を低減できるようにアンダーカット溝が内輪の内面の全体に形成できるようにアンダーカット成形部付きコアと、を用意するステップからなる。
【0014】
このような構成を有する金型におけるインナープランジャーの外輪をインサートするための空間に磁性体金属製の外輪を入れ、金型の真ん中にアンダーカット成形部付きコアを結合し、射出により非磁性体合成樹脂から内輪を形成することにより、インナープランジャーを製造することが本発明の特徴である。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によれば、ソレノイドアセンブリーを構成するインナープランジャーの内輪が合成樹脂製となっており、外輪は磁性体金属製となっていることから、ソレノイドアセンブリーの生産性の向上とコストの節減に寄与することができる。
【0016】
また、インナープランジャーの形状を多様化させることができるだけではなく、軽量化させることができ、インナーハウジングとの摩擦力を低減できるように構成されたことから、ソレノイドアセンブリーの品質を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明によるインナープランジャーの構成を示す斜視図。
【
図2】本発明によるインナープランジャーの構成を示す断面図。
【
図3】本発明によるインナープランジャーが設けられた状態の一部を示す断面図。
【
図4】本発明によるインナープランジャーを製造するための金型の一部を示す断面図。
【
図5】本発明によるインナープランジャーを成形した状態の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるインナープランジャー及びその製造方法についてさらに詳しく説明するが、このような説明は、本発明を実現するための実施形態を基準としたものであり、本発明が追い求める技術的思想をこのドキュメントに記載されている実施形態に記載の形態に限定しようとするものではなく、本発明の実施形態の様々な変更(modifications)、均等物(equivalents)及び/又は代替物(alternatives)を含む。
【0019】
併せて、本発明の実施形態を説明しながら、たとえ本発明の構成に伴う作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成により予測可能な効果もまた認められるべきであるということはいうまでもない。
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明による自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーの構成について述べる。
【0021】
図1から
図3を参照すると、本発明のクラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャー1は、ソレノイドアセンブリーを構成し、かつ、電磁力を形成するコイルボビン10が結合されるインナープランジャーの外輪3と、前記外輪3に一体に構成されてインナーハウジング20に結合される内輪2と、から構成され、このような構成を有するインナープランジャー1は、コイルボビン10に形成される電磁力によりインナーハウジング20において往復動する作用をする。
【0022】
上記のような構成を有するインナープランジャー1の内輪2は、成形性に優れた絶縁体合成樹脂から成形され、インナープランジャーを構成する合成樹脂製の内輪2の外周縁には、磁性体金属が外輪3としてインサートされている。
【0023】
上記のような合成樹脂製の内輪2には、インナーハウジング20に沿って往復動するときにインナーハウジング20との摩擦を低減できるようにアンダーカット溝2-1が内輪2の内面の全体に形成されてなる。
【0024】
図中、未説明符号10-1は、コイルを意味する。
【0025】
本発明によるクラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーの製造方法は、金型とのインサート成形により行われる。
【0026】
図4及び
図5に基づいて、インナープランジャーをインサート成形するための金型について述べる。
【0027】
インナープランジャーの外輪3をインサートするための空間30-1と内輪2を形成するための空間30-2とから構成された金型30と、インナーハウジング20との摩擦を低減できるようにアンダーカット溝2-1が内輪2の内面の全体に形成できるようにアンダーカット成形部40-1付きコア40と、から構成されている。
【0028】
このような構成を有する金型30において、インナープランジャーをインサート成形する。
【0029】
まず、金型30におけるインナープランジャーの外輪3をインサートするための空間30-1に磁性体金属製の外輪3を入れ、金型30の真ん中にはアンダーカット成形部40-1付きコア40を結合し、合成樹脂の射出により非磁性体合成樹脂から内輪2を形成し且つ脱型することによりインナープランジャー1を製造する。
【0030】
以上のような構成を有する本発明による自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーに関する作用について詳しく説明すれば、次の通りである。
【0031】
まず、自動車差動裝置のクラッチ用ソレノイドアセンブリーの基本的な作用について述べる。
【0032】
自動車差動裝置に装着され、差動裝置を構成するインナーハウジング20に結合された状態で差動裝置の作動を必要とするときに電気がコイルボビン10に供給されて電磁力を形成する。
【0033】
すると、コイルボビン10から発生する磁場による電磁気力によりインナープランジャー1がインナーハウジング20に沿って移動する作用をする。
【0034】
上記のような作用は、自動車差動裝置のクラッチ用ソレノイドアセンブリーの通常の作用であるため、その具体的な説明は省略し、インナープランジャーの構成に対する作用のみについて述べる。
【0035】
まず、コイルボビン10から発生する磁場による電磁気力によりインナープランジャー1がインナーハウジング20に沿って移動する作用をするとき、インナープランジャー1を構成する内輪2が合成樹脂製となっているため、電磁気力に影響をあまり受けなくなるので、応答性が向上して、インナープランジャー1がインナーハウジング20に沿って移動する作用に役立つ。
【0036】
特に、非磁性体合成樹脂から内輪2を構成することにより、より簡便にアンダーカット溝2-1が内輪2の内面の全体に形成されたので、インナーハウジング20に沿って往復動するときにインナーハウジング20との摩擦を低減することが可能になることにより、インナープランジャーが摩擦抵抗から解放されてインナーハウジング20に沿って往復動する作用をするときに役立つ。
【0037】
また、非磁性体合成樹脂からインナープランジャーの内輪2を形成することにより、成形性に優れていて、インナープランジャーの形状を多様化させることができるので、インナープランジャーの形状に応じた機能と生産性を向上させることができる。
【0038】
インナープランジャーの内輪2の外周縁には、磁性体金属が外輪3としてインサートされているので、相互間の離脱を防ぎ、かつ、形状を長期間にわたって保持することができる。
【0039】
そして、インナープランジャーの内輪2の外周縁にインサートされている磁性体金属が外輪3を構成しているので、コイルボビン10から発生する電磁気力が損失されなくなることにより、インナープランジャーが円滑に作動することができる。
【0040】
1 インナープランジャー
2 内輪
2-1 アンダーカット溝
3 外輪
10 コイルボビン
【手続補正書】
【提出日】2022-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁力を形成するコイルボビン(10)が結合される外輪(3)と、前記外輪に一体に構成されてインナーハウジング(20)に結合される内輪(2)と、からインナープランジャー(1)が構成され、前記コイルボビン(10)に形成される電磁力により前記インナーハウジング(20)において往復動する作用をする自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーを製造する方法において、
前記内輪(2)は、成形性に優れた絶縁体合成樹脂から成形され、
前記内輪(2)の外周縁に磁性体金属からなる外輪をインサート構成し、
前記内輪(2)を成形するための金型(30)に前記外輪(3)を挿入した後、固定できるように前記外輪(3)をインサートするための空間(30-1)を前記金型(30)の内側に形成し、かつ、コア(40)との間に合成樹脂を射出し、前記外輪(3)がインサートされる状態で前記内輪(2)を形成するための空間(30-2)を構成し、
前記インナーハウジング(20)との摩擦を低減できるようにアンダーカット溝(2-1)が前記内輪(2)の内面の全体に形成できるようにアンダーカット成形部(40-1)を成形空間(30-2)の方にコア(40)を突出させて用意し、
前記外輪(3)を前記空間(30-1)に先に挿入させた後、前記コア(40)を前記金型(30)の内部に位置させ、合成樹脂の射出により外輪(3)がインサートされた内輪(2)を成形しかつ脱型することにより、
インナープランジャー(1)を構成する合成樹脂からなる内輪(2)の外周縁には、磁性体金属が外輪(3)としてインサートされて、コイルボビン(10)から発生する磁場による電磁気力によりインナープランジャー(1)がインナーハウジング(20)に沿って移動する作用をするとき、電磁気力による影響が低減し、インナープランジャー(1)の形状を多様化できるようにする
ことを特徴とする自動車差動裝置クラッチ用ソレノイドアセンブリーのインナープランジャーの製造方法。