(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127890
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
B41M3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026119
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉成 玲子
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA06
2H113BA03
2H113BA27
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB09
2H113BB10
2H113BB22
2H113BC12
2H113CA36
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA44
2H113DA43
2H113DA47
2H113DA57
2H113EA07
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で印刷線を形成し、観察する角度によって画像が変化する印刷物を提供する。
【解決手段】基材103上の少なくとも一部に、複数の印刷線130からなる印刷部100が設けられた印刷物であって、複数の印刷線は、少なくとも第1画線130xと第2画線130yを含む2種類以上の画線からなり、各種類の画線が交互に配列され、第2画線の幅W2の中心と、隣り合う第1画線の幅W1の中心との距離Dが最短となる位置関係にある第1画線と第2画線が、(式1)の関係を満たし、かつ最短となる距離Dが115μm以下である。
4.3≦W1/W2≦10.3 ・・・(式1)
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に、複数の印刷線からなる印刷部が設けられた印刷物であって、前記複数の印刷線は、少なくとも第1画線と第2画線を含む2種類以上の画線からなり、各種類の前記画線が交互に配列され、前記第2画線の幅W2の中心と、隣り合う前記第1画線の幅W1の中心との距離Dが最短となる位置関係にある第1画線と第2画線が、(式1)の関係を満たし、かつ最短となる距離Dが115μm以下であることを特徴とする印刷物。
4.3≦W1/W2≦10.3 ・・・(式1)
【請求項2】
前記複数の印刷線の前記第1画線の幅W1が20から200μmの範囲内であり、前記第2画線の幅W2が3.5から30μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記複数の印刷線の前記第1画線の高さH1が2.0から10.0μmの範囲内であり、前記第2画線の高さH2が0.5から2.5μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記第1画線は、透過性を有する無色か、白色か、前記基材と等色であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記複数の印刷線がグラビアオフセット印刷法により形成されたことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察する角度により画像が変化する印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、銀行券、旅券及び有価証券等の貴重印刷物のための偽造防止技術が開発されている。偽造や複製がされたか否かを目視により簡易に判別可能とするため、貴重印刷物を構成する網点又は画線と、基材又はインキの盛りにより形成した凹凸を組み合わせることで、観察角度の変化により画像の色又は形状が変化する偽造防止技術が公知である。
【0003】
これらの偽造防止技術を有する印刷物として、観察角度の変化により画像の色が変化する印刷物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の印刷物は、基材上に、第一の画像を形成する下地層を付与し、その上に、第二の画像を形成する印刷画線と第三の画像を形成する印刷画線を隣接して配置し、更にその上に印刷画線を遮蔽する画線を付与することで、観察角度の変化により、第二の画像から第三の画像に変化して視認されるものである。
【0004】
また、その他の印刷物として、観察角度の変化により画像の形状が変化する印刷物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2の印刷物は、基材上に、二段階の高さを有し、第一の画像を形成する第一の画線を複数配置し、第一の画線の間に第二の画像を形成する第二の画線を、第一の画線よりも低い画線として配置する。正面からは、第二の画像が視認され、観察角度の変化により、第二の画線が第一の画線によって遮蔽されることで、第一の画像が視認されるものである。
【0005】
さらに、その他の印刷物として、観察角度の変化により画像の形状が変化する印刷物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。盛りのある印刷画線を多層構成とすることで、観察角度の変化により、画像の色及び形状が変化した画像が視認され、また、形成体を構成する各層に、異なる機能性材料を付与することで、付与した機能性に対応した異なる環境に合わせて画像が視認されるものである。
【0006】
一方で、パターンを形成するための印刷法に用いられる印刷の方式としては、形成したいパターンの、線幅、直線性、厚さ、線幅精度、相対位置精度、絶対位置精度、表面平滑性、生産速度等に合わせて、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーンオフセット印刷、タンポ印刷、オフセット印刷(平版印刷)、凸版印刷、ロータリースクリーン印刷、凸版反転印刷、ディスペンサー印刷、静電吐出インクジェット印刷等、が提案されている。
【0007】
中でも、ブランケットに一旦転写又は印刷してから、被印刷基板にブランケットから転写する印刷方式は、パターンの細線化が可能であること、パターン形状の安定化が可能であること、一定量の印刷用組成物の転写が可能であること、等の点から注目されている。
【0008】
この様な印刷方式の1つであるグラビアオフセット印刷では、所望のパターンに対応して凹部が形成された凹版の凹部に、印刷用組成物を、ドクターブレード等を用いて充填し、その後、該印刷用組成物をブランケットに転写し、該ブランケットから被印刷基板に再度転写することで基板上にパターンを形成する。インキの種類に合わせて、必要に応じて、熱又はUV等の光照射することにより硬化させて、例えば導電性パターン等のパターンとなる。
【0009】
また、スクリーンオフセット印刷では、所望のパターンに対応して形成されたスクリーン版から、印刷用組成物をブランケットに印刷し、該ブランケットから被印刷基板に転写することで基板上にパターンを形成する。
【0010】
また、タンポ印刷では、所望のパターンに対応して凹部が形成された凹版の凹部に印刷用組成物を充填し、その後、該印刷用組成物を柔らかい半球状や船底状のタンポと呼ばれるブランケットに転写させ、次いで、該タンポ(ブランケット)を被印刷基板に押しつけて、タンポ(ブランケット)上の印刷用組成物を基板に再度転写することで基板上にパターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010-247460号公報
【特許文献2】特開2011-42049号公報
【特許文献3】特許第5971593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の印刷物は、観察角度の変化により異なる色の画像が出現することから、非常に意匠性に優れた偽造防止技術である。しかしながら、正面から観察した際に、印刷画線を遮蔽するために、隣接して配置した全ての印刷画線上に、遮蔽する画線を付与する必要があるため、正面から視認可能な画像及び観察角度の変化により視認可能な画像は同一形状であり、観察角度の変化により異なる形状の画像が出現する印刷物を形成することは不可能である。
【0013】
また、特許文献2の印刷物は、画線の高さを変化させることで、特許文献1では達成することができなかった、観察角度の変化により異なる形状の画像が出現することが可能となった。しかしながら、画像を形成する画線は、一種類の単色インキにより形成されているため、観察角度の変化により、色及び画像の形状が変化する印刷物が求められている。
【0014】
さらに、特許文献1及び特許文献2により、観察角度の変化という簡易な識別方向により画像が出現する印刷物を作製することが可能となった。しかしながら、近年、盛り上がりを有する画線が形成された印刷物をインクジェット・プリンタにより簡易に作製可能となったことから、目視による真偽判別に加え、複数の異なる環境下又は機械読取により真偽判別することが可能な印刷物が求められている。
【0015】
そこで、特許文献3により、複雑な多層構成と機能性の材料を組み合わせることで、異なる環境下又は機械読取により、真偽判別が可能となった。しかしながら、異なる機能性の材料を用いて、複雑な多層構成とするには、工程が複雑で必要とする画像を正確に形成するのが困難であり、製造コストがかかるという問題がある。
【0016】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で印刷線を形成し、観察する角度によって画像が変化する印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する手段として、本発明の一態様の印刷物は、基材上の少なくとも一部に、複数の印刷線からなる印刷部が設けられた印刷物であって、
前記複数の印刷線は、少なくとも第1画線と第2画線を含む2種類以上の画線からなり、各種類の前記画線が交互に配列され、前記第2画線の幅W2の中心と、隣り合う前記第1画線の幅W1の中心との距離Dが最短となる位置関係にある第1画線と第2画線が、(式
1)の関係を満たし、かつ最短となる距離Dが115μm以下である。
4.3≦W1/W2≦10.3 ・・・(式1)
【発明の効果】
【0018】
本発明の印刷物は、上記構成を満たす複数の印刷線から形成されるため、観察者からは印刷線は単線として視認されず、一方で観察する角度によって画像が変化する。この画像変化により高級感や興趣が付加することができる。また、印刷物を複写しても、印刷線の形状は再現不可能であるため、偽造を行うことは困難であり、高い偽造印刷防止効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一態様の印刷物を示す平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る印刷部を示す図であり、
図2(a)は上面図、
図2(b)は
図2(a)における切断線IIa-IIaに沿った断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る印刷部を示す図であり、
図3(a)は上面図、
図3(b)は
図3(a)における切断線IIb-IIbに沿った断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態の係る一部の印刷部を示す図であり、
図4(a)は上面図、
図4(b)は
図4(a)における切断線IIc-IIcに沿った断面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図3(a)における切断線IIb-IIbに沿った断面図における、第一の観察角度(S1)、第二の観察角度(S2)、第三の観察角度(S3)での見え方を示す図であり、
図5(b)は、
図4(a)に示した印刷線のパターン例で各観察角度に対応して視認される画像の例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の第1の実施形態に係る印刷部の第1画線と第2画線が交互に並んだ様子を示す上面図であり、
図6(b)は
図6(a)における切断線VIII-VIIIに沿った断面図である。
【
図7】
図7(a)は本発明の第2の実施形態に係る印刷部の第1画線と第2画線と第3画線が交互に並んだ様子を示す上面図であり、
図7(b)は
図7(a)における切断線VIV-VIVの位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を、
図1~
図7を参照して詳細に説明する。本発明は、印刷部を備えた印刷物に関する。なお、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではない。本発明に対して、当業者の知識に基づいて種々の変更または修正を加えることが可能である。そして、そのような変更または修正が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
(第1実施形態)
〈印刷物〉
本発明に係る印刷物の第1の実施の形態は、基材上に印刷部を備えている。
図1に本実施形態の印刷物500の平面図を、また
図2に印刷部100の平面図と切断線IIa-IIaにおける断面図を示す。
図1に示したように、本発明の印刷物500は、基材103の表面の一部に、互いに平行で一方向に延伸した複数の印刷線からなる印刷部100を有している。
【0022】
〈印刷部〉
図2に示したように、印刷部100は基材103上に形成された少なくとも2種以上の印刷線130xと130yを含む印刷線130を備えている。印刷線130xと印刷線130yは交互に配置されている。印刷線130のパターンは、少なくとも一方の方向に複数本配置されていればよく、その数は限定されるものではない。以下、印刷部100を構成する各部について詳細を説明する。
【0023】
[印刷基材]
印刷基材103は、紙、プラスチックフィルム、ガラス板、金属が使用でき、また従来から印刷に利用されているものが使用できるが、これらに限定されない。印刷の視認性の点からは、印刷基材103は、プラスチックが好ましい。印刷基材103の厚みは、10μm以上、3mm以下のものを用いることができるが、これに限定されない。また、印刷基材103は、長辺が3cm以上、3m以下とできるが、これに制限はない。
【0024】
印刷基材103に用いることができる紙の例としては、通常の出版印刷や宣伝広告物に用いられる各種の用紙であって表面性状の優れたものが挙げられる。例えば、ミラーコート紙、コート紙、アート紙、上質紙等であるが、包装材料に用いられるカートン用紙や板紙であってもよい。また、合成紙(商品名として、「ユポ(商標)」「ピーチコート(商標)」等)も伸縮が少ない点から好ましい。
【0025】
印刷基材103に用いることができるプラスチックフィルムは熱可塑性ブラスチックのフィルムとできる。また、熱可塑性ブラスチックはキャスト成形のフィルムとできる。このプラスチックフィルムの例としては、以下の材料:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン;セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースニトレートなどのセルロースエステル類またはそれらの誘導体;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;ポリエチレンビニルアルコール;シンジオタクティックポリスチレン;ポリカーボネート;ポリエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン類;ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトンイミド;ポリアリレート;ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂;ノルボルネン樹脂などのシクロオレフィン系樹脂などを含む。
【0026】
印刷基材103に用いることができるガラス板は、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英ガラスのガラス板とできる。印刷基材103に用いることができる金属は、たとえば、銅、真鍮、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、鉄鋼とできる。これらの金属は、圧延板が好ましい。
【0027】
[印刷線]
図2(a)に、一方向に延伸した複数の印刷線130x(第1画線とする)および複数の印刷線130y(第2画線とする)の上面図を、切断線IIa-IIaにおける断面図を
図2(b)に示す。複数の印刷線130x同士は同等の幅を有し、隣り合う印刷線130xとの間隔が同等である。また、複数の印刷線130y同士は同等の幅を有し、隣り合う印刷線130yとの間隔が同等である。さらに、複数の印刷線130xと130yは交互に配置され、
図2では左右方向のいずれかとなる同一の方向に隣り合う130xと130yの間隔が同等である。たとえば、ある印刷線130yと、
図2においてその右側に位置する印刷線130xとの間隔は印刷線130yに依らず同等である。
【0028】
図3(a)に、一方向に延伸した複数の印刷線130x、複数の印刷線130yおよび複数の印刷線130z(第3画線とする)の上面図を、切断線IIb-IIbにおける断面図を
図3(b)に示す。複数の印刷線130x同士は同等の幅を有し、隣り合う印刷線130xとの間隔が同等である。また、複数の印刷線130y同士は同等の幅を有し、隣り合う印刷線130yとの間隔が同等である。さらに、複数の印刷線130z同士は同等の幅を有し、隣り合う印刷線130zとの間隔が同等である。ここで第1画線の印刷線130xと第2画線の印刷線130yと第3画線の印刷線130zとは交互に、すなわち、
130x、130y、130z、130x、130y・・と順次となるように並んでいる。
印刷部100に、第1画線の印刷線130xと第2画線の印刷線130yから成る領域を有してもよいし、第1要素の印刷線130xと第2画線の印刷線130yと第3画線の印刷線130zからなる領域を有してもよいし、その両方を有してもよい。なおここで第1画線、第2画線、第3画線というのは単に区別をするためであって、いずれを第1画線、第2画線、第3画線とするかは任意である。
【0029】
図4(a)に、
図3(a)に示す印刷線130x、130y、130zで構成した印刷線のパターン例の上面図を示す。すなわち、第1画線の印刷線130xの間隙に第2画線の印刷線130yと第3画線130zが配置されて、第1画線の1本の印刷線130xに対して、第2画線の1本の印刷線130yと第3画線の1本の印刷線130zが順番に位置している。第1画線の印刷線130xの線長方向に対しては、第2画線の印刷線130yおよび第3画線の印刷線130zは、表示する画像に合わせて、その長さを変更する。切断線IIc-IIcにおける断面図を
図4(b)に示す。切断線の位置によっては、第1画線の印刷線130xのみで、第2画線の印刷線130yおよび、第3画線の印刷線130zは位置していてもよいし、位置してなくてもよい。
【0030】
図3(a)に示した様な印刷線のパターンを上面側から観察したときの画像の見え方の違いを
図5(a)で説明する。正面からの観察角度である第一の観察角度(S1)と正面から一方向に傾けた第二の観察角度(S2)および正面から他方向に傾けた第三の観察角度(S3)によって、視認される画像が異なる。第一の観察角度(S1)から視認される画像は、第2画線の印刷線130yと第3画線の印刷線130zの両方の印刷線から形成される。第二の観察角度(S2)から視認される画像は、第1画線の印刷線130xに隠れて、第3画線の印刷線130zが視認されなくなるために、第2画線の印刷線130yから形成されるパターンが見える。また、第三の観察角度(S3)から視認される画像は、第1画線の印刷線130xに隠れて、第2画線の印刷線130yが視認されなくなるために、第3画線の印刷線130zから形成されるパターンが見える。
【0031】
図5(b)に、
図4(a)に示した印刷線のパターン例で各観察角度に対応して視認される画像を示す。第二の観察角度(S2)から視認される画像は「O」の字のパターン、第三の観察角度(S3)から視認される画像は「E」の字のパターン、第一の観察角度(S1)から視認される画像は、それらが合成されて「日」の字のパターンと観察される。なお第1画線の印刷線130xのパターンは観察角度を変えても同じように見えるため、観察角度を変えたときにも観察者の特段の注意を引くことがないので、
図5(b)では省略している。
【0032】
次に、
図6を参照して、印刷線130について詳細に説明する。
図6(a)は印刷部100の上面形状の構成例および切断線VIII-VIIIの位置を示す斜視図である。
図6(b)は、
図6(a)の印刷部における切断線VIII-VIIIに沿った断面の一部を示す断面図である。
【0033】
基材103上に形成された印刷線130(130x、130y)の断面形状は、
図6(b)に示すように凸形状であり、基材103と接する下面は直線状であり、基材103との接点と上面部を結ぶ線が緩い曲線からなる凸形状となっている。
ここで、基材103上における第1画線の印刷線130xである印刷線130xaの幅(
図6(b)において、印刷線130xaが基材103と接する両端の点と点の間の距離)をW1a、印刷線130xbの幅(
図6(b)において、印刷線130xbが基材103と接する両端の点と点の間の距離)をW1bと定義する。また、第1画線の印刷線130xの基材103からの高さ(
図6(b)における第1画線の印刷線130xの最高点と基材103の表面との距離)をH1と定義する。
【0034】
また、1つの印刷線である印刷線130yaの幅(
図6(b)において、印刷線130yaが基材103と接する両端の点と点の間の距離)をW2、印刷線130yaの基材103からの高さ(
図6(b)における印刷線130yaの最高点と基材103の表面との距離)をH2と定義する。印刷線130xaの幅の中心と、印刷線130yaの幅の中心の間の距離と、印刷線130xbの幅の中心と、印刷線130yaの幅の中心の間の距離のうち、最短となる方をD2、より長い方をD2xと定義する。
【0035】
本実施形態においては、印刷線130xおよび130y(上記説明では、130xaおよび130xb、130yaを例にとって説明したが、何れであっても良い。)の幅W1aおよび幅W1bの算術平均W1(W1=(W1a+W1b)/2)と、幅W2が、以下の数式(式1)、を満たすことが必要である。
4.3≦W1/W2≦10.3 ・・・(式1)
【0036】
図6における、印刷線130xの幅W1は、20μm以上、200μm以内が好ましい。20μmより小さいと、印刷線の高さの形成が安定しないため好ましくない。200μmより大きいと、印刷線130xの1本ずつが視認されやすくなるため好ましくない。印刷線130yの幅W2は、3.5μm以上、30μm以内が好ましい。3.5μmより小さいと、印刷線を視認しにくくなるため、好ましくない。30μmより大きいと130xの印刷線の幅を大きくする必要があり、印刷線130xが視認されやすくなるため、好ましくない。印刷線130yと隣り合う印刷線130xaおよび130xbとの間の距離のうち最短となる距離D2は115μm以下であることが好ましい。115μmより大きいと、画像変化をもたらす印刷線130yと130xの間の距離が大きく、視る角度を大きく変化しても変化が視認しにくくなるため好ましくない。
【0037】
また、印刷線130xの高さH1は、2.0μm以上、10.0μm以下であることが好ましい。2.0μmより小さいと、印刷線130yを隠蔽しにくくなるため好ましくない。10.0μmより大きいと、観察角度に関わらず、印刷線130xの凹凸が視認されるため、好ましくない。印刷線130yの高さH2は、0.5μm以上、2.5μm以下であることが好ましい。0.5μmより小さいと、印刷線130yに含まれる粒子の分散が十分でなく、印刷線130yの表層や端部に微小な凹凸が発生して、印刷線が不明瞭になるため好ましくない。2.5μmより大きいと、印刷線130xから隠蔽されにくくなるため好ましくない。
【0038】
上述の様に、W、DおよびHの値を設定することで、例えば
図1の印刷物の様に、印刷線130xおよび130y(
図2参照)を備えた印刷部100は、観察する角度によって画像が変化して見えるようにすることが可能となる。
【0039】
本実施形態においては、印刷線130xは透過性を有する無色か、白色か、前記基材と等色が好ましい。これらのいずれかの色にすると、印刷線130yを視認しやすくなるため好ましい。透過性を有する無色とは、光に対して透明である性質を意味する。本実施形態に係る透過性材料は、好ましくは紫外領域から赤外領域の光を透過する。波長領域にすると、380nmから800nmにおいて平均透過率が50%以上であることが好ましい。透過性を有する無色の透明な印刷線であり、基材103との接点と上面部を結ぶ線が緩い曲線からなる凸形状を有する印刷線130xであると、印刷物の正面(
図5(a)の(S1)方向)から観察すると基材の色が視認され、第一の視認角度から観察すると、印刷線の凸形状と印刷線を構成する樹脂等の屈折率により、光の屈折効果が得られ、印刷線130xに隣り合わせる印刷線130yは視認されない。また、第二の視認角度から観察すると、印刷線130yが視認される。すなわち、印刷線130xは、視認されにくく、かつ隠蔽性を合わせ持つことができる。
また、白色とは、波長領域にすると、380nmから800nmで極大点を持たず、平均反射率が50%以上であることが好ましい。また、基材と等色とは、基材の明度と同等で、基材の表面色と区別がしにくい色が好ましい。具体的には、CIE L*a*b*色空間での基材と印刷線の色差であるΔE*値が4以下、好ましくは1以下とできる。白色の印刷線130xであると、印刷物の正面(
図5(a)の(S1)方向)から観察すると反射した白色が視認され、第一の視認角度から観察すると、反射した白色が視認されて印刷線130yを隠蔽し、第二の視認角度から観察すると、印刷線130yが視認される。すなわち、視認する画像の色を際立たせ、印刷物全体の明度を維持することができる。
【0040】
〔インキ〕
本発明に係る印刷線形成に用いられるインキはプロセスインキ基本4原色(黄、紅、藍、墨))を用いることができるが、顔料、ワニス、添加剤を組み合わせてできた多種のインキ、いわゆる特色を用いることができる。
印刷インキを構成する原材料としては、色料(顔料や染料)、ビヒクル(油、樹脂、溶剤、可塑剤)、添加剤(ろう(ワックス)、ドライヤ、界面活性剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤等)が挙げられる。印刷インキはこれらを混合したものとすることができる。
インキに含有される固形材料の大きさは、印刷線の線幅の大きさおよび高さより小さければよく、形成する印刷線の高さの二分の一以下が好ましい。形成された印刷線の中に固形材料が包含されると、印刷線形状による効果が得られる。
インキ内の固形分比率は、50%以上好ましくは70%以上が好ましい。固形分比率が高いと、印刷線を形成する際に流動性が抑えられ、印刷線の形状を維持することができる。固形分の上限は、特に限定されないが、99%以下、さらには90%以下とすることができる。
【0041】
インキの発色剤は、ジスアゾイエロー、ブリリアントカーミン、フタロシアニンブルー等とできるが、これに限定されず、プロセス印刷で利用されている印刷分野で知られている有機顔料・無機顔料を適宜用いることができる。
顔料は無機顔料、有機顔料または、この混合とすることができる。無機顔料としては、金属粒子、酸化物、水酸化物、硫化物、セレン化物、フェロシアン化物、クロム酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、炭素等の単体または混合した粒子とすることができる。酸化物は、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)、鉄黒(黒色酸化鉄)とすることができる。
【0042】
有機顔料は、炭素化合物、ニトロソ系、ニトロ系、アゾ系、レーキ系、フタロシアニン系、縮合多環材料とすることができる。また、蓄光や残光顔料、紫外や赤外等のある特定の波長の光に反応して発光する金属酸化物や量子ドット等としてもよい。これら顔料を1種類用いてもよいし、複数を混合して利用してもよい。
【0043】
染料は、酸性染料、塩基性染料、溶剤染料、分散染料とすることができる。
また、これらの色を目的とした顔料や染料に対し、導電性を目的として金属微粒子や導電性金属酸化物微粒子あるいは金属ナノワイヤや金属塩化物、導電性ポリアニリン、導電性ポリプロピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体)などの導電性ポリマー等を混合して導電性インキとして利用してもよい。
【0044】
ビヒクルの油は、植物油、加工油、鉱油の単体または混合物とすることができる。樹脂は、天然樹脂、天然物誘導体、合成樹脂等の単体または、混合物とすることができる。
また、ビヒクルの油は、硬化して固体になる硬化性化合物(硬化性樹脂)でもよい。硬化性化合物は、エポキシ樹脂、多官能アクリルモノマー(オリゴマー)等の比較的低分子量
の硬化性化合物(硬化性樹脂)とできる。また、それらの混合物も用いることが可能である。ビヒクルの油は硬化性の官能基を含まないものとしてもよい。このようなビヒクルの油はポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと他の不飽和二重結合含有モノマーとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルと他の不飽和二重結合含有モノマーとの共重合体、ポリスチレン、スチレンと他の不飽和二重結合含有モノマーとの共重合体、ケトン-ホルムアルデヒド縮合体若しくはその水素添加物、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール若しくはその共重合体、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド等とできる。これらは単独又は2種以上を併用することができる。更に、上記の樹脂(重合体)の側鎖若しくは末端に硬化性の官能基を有している樹脂(重合体)等も挙げられる。これらは、官能基のあるものもないものも含めた上で、単独又は2種以上を併用することができる。
【0045】
また、バインダー樹脂の中に含まれる硬化性化合物(硬化性樹脂)としては、官能基を有するものが好ましい。官能基として水酸基を有する多価アルコール、エポキシ基(グリシジル基)を有するエポキシ樹脂(グリシジル化合物)、カルボキシル基を有する多価カルボン酸、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートモノマー若しくはオリゴマー等が特に好ましい。
【0046】
〔溶剤〕
本実施形態で用いることができる溶剤は、特に限定はされないが、例えば、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1.3ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール等のジオール溶媒が挙げられる。また、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、プロピレングリコール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、等の多価アルコールや、ブチルトリグリコール、イソブチルジグリコール、2-ブトキシエタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エタノール、等の1価のアルコール、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、等グリコールエーテル、グリコールエステル、テルペン系溶媒、炭化水素溶媒、アルコール溶媒等が挙げられる。また、例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トリデカン、メチルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン等環状炭化水素化合物、リモネン、ジペンテン、テルピネン、ターピネン(テルピネンともいう。)、ネソール、シネン、オレンジフレーバー、テルピノレン、ターピノレン(テルピノレンともいう。)、フェランドレン、メンタジエン、テレベン、ジヒドロサイメン、モスレン、イソテルピネン、イソターピネン(イソテルピネンともいう。)、クリトメン、カウツシン、カジェプテン、オイリメン、ピネン、テレビン、メンタン、ピナン、テルペン、シクロヘキサン等脂環式炭化水素化合物、ヘプタノール、オクタノール(1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール等)、デカノール(1-デカノール等)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコール等の飽和又は不飽和の炭素数6~30の脂肪族アルコール等脂肪族アルコール、クレゾール、オイゲノール等環状アルコール、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール、ターピネオール(テルピネオール、α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール(モノテルペンアルコール等)、ジヒドロターピネオール、ミルテノール、ソブレロール、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ソブレロール、ベルベノール等環状アルコール、が挙げられる。
また、速乾性インキでは、常温で乾燥する沸点の低い溶剤(MEK、エタノール、アセトンなど)を、水性インキでは水(精製水)を用いることが可能である。
【0047】
本実施形態の印刷物は印刷法によって形成するのが好ましい。
【0048】
本実施形態においては、印刷法として公知の方法を適用でき、なかでもグラビア印刷法に代表される凹版印刷が好ましく、グラビアオフセット印刷法が特に好ましく適用できる。使用する印刷装置も、公知のものでよく、例えば、グラビア印刷法に代表される凹版印刷であれば、金属製で表面に細線の型となる溝を有する凹版を備えたものを用いることができる。
【0049】
オフセットロールとしては、金属製の筒体の表面がブランケット材で被覆されたものを用いることができ、ブランケット材の材質としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、天然ゴム等の弾性材が例示でき、これらの中でも、耐久性、耐油性が高く、さらに十分な弾性とともに適度にコシを有している点で、特にシリコーン樹脂が好ましく、硬質の基板に対してグラビアオフセット印刷を行うのに特に好適である。
【0050】
グラビアオフセット印刷は、凹版オフセット印刷とも呼ばれる。
グラビアオフセット印刷では、導電性パターンに対応する凹部が形成されたグラビア版(凹版)と、印刷用組成物をグラビア版(凹版)の凹部に充填するドクターブレードと、表面が、例えばシリコーンゴムからなるブランケットと、が用いられる。なお、グラビアオフセット印刷に用いられる凹版は、汎用のグラビア印刷に用いられる通常の凹版とは形態が異なっていてもよい。以下、グラビアオフセット印刷に用いられる「グラビア版又は凹版」を、「グラビア版(凹版)」と略記する場合がある。
【0051】
このグラビア版(凹版)の凹部から印刷用組成物がブランケットに一旦転写される。このブランケットに対向させる様に基板を供給して、両者を圧接させて、ブランケット上のパターンを基板に再度転写することで、印刷パターンが形成される。
【0052】
この印刷法によれば、凹部の形状によって印刷パターンの形状を自在に設定でき、微細な印刷線パターンに対応する印刷パターンから、大面積のパターンまでを精度良く形成することが可能である。
【0053】
グラビア版(凹版)としては、公知のものが使用できる。
グラビア版(凹版)、ブランケット及び基板は、それぞれ平板状(枚葉)のものでもよいし円筒状のものでもよい。ブランケットを基板に圧接して、連続的にブランケット上のパターンを基板に転写するようにしてもよい。
【0054】
また、1つのブランケットを使って、多数の基板への印刷を行う場合には、印刷後に、溶剤を吸収したブランケットを乾燥させる工程を含ませることも好ましい。この乾燥工程は、1回の印刷サイクル毎に行ってもよいし、間隔を開けて、5~20回の印刷サイクル毎に行ってもよい。
【0055】
ブランケットとしては、シリコーンゴムを材質とするものが好ましい。シリコーンゴム層を表面に有するシートが好ましいものとして挙げられる。ブランケット胴と称される剛性のある円筒に巻きつけた状態で使用されることが好ましい。例えば、シリコーンゴム層をポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム上に形成したシリコーンブランケットを、ブランケット胴に巻きつけた状態で使用することができる。
【0056】
〔印刷物の製造方法〕
次に、本発明の一実施形態としての印刷物の製造方法を説明する。
本実施形態の印刷物の製造方法は、基材上に印刷部を形成する工程を備えている。適切な材料で形成された基材を選択する。次に、印刷部を形成する工程は、グラビアオフセット印刷法の技術を用いて実施することができる。グラビアオフセット印刷法は、金属製でその表面に細線の型となる溝の線幅と深さを所定の大きさに調整した凹版上にインキを供給し、余分のインキをドクターブレードによって除去し、溝に充填されたインキを、金属製の筒体の表面がシリコーン樹脂製のブランケット材で被覆されたオフセットロールのブランケット材の表面に転写した後、運搬されてきた基材の表面に対して、このインキを転写することで印刷を行う。所望の形状が転写された基材を熱風か赤外線によって加熱して硬化させるか、光照射によって硬化させるか、数日間静置して硬化させるかして、所望の形状を有する印刷部を形成する。
【0057】
(第2実施形態)
図7(a)は、本発明の第2の実施形態に印刷部を示す断面斜視図である。本実施形態は、印刷部100の上面形状の別の構成例および切断線VIV-VIVの位置を示す断面斜視図である。
図7(b)は、
図7(a)の印刷部における切断線VIV-VIVに沿った断面の一部を示す断面図である。
【0058】
第1実施形態と同様に、基材103上に形成された印刷線印刷線130(130x、130y、130z)の断面形状は、
図7(b)に示すように凸形状であり、基材103と接する下面は直線状であり、基材103との接点と上面部を結ぶ線が緩い曲線からなる凸形状となっている。
第1の実施形態と同様に、ここで、基材103上における印刷線130xの幅をW1aおよびW1b、基材103からの高さをH1と定義する。また、1つの印刷線である印刷線130yaの幅をW2、基材103からの高さをH2と定義する。また、1つの印刷線である印刷線130zaの幅(
図7(b)において、印刷線130zaが基材103と接する両端の点と点の間の距離)をW3、基材103からの高さ(
図7(b)における印刷線130zaの最高点と基材103の表面との距離)をH3と定義する。印刷線130xaの幅の中心と、印刷線130yaの幅の中心の間の距離と、印刷線130xbの幅の中心と、印刷線130yaの幅の中心の間の距離のうち、最短となる方をD2、より長い方をD2xと定義する。また、印刷線130xaの幅の中心と、印刷線130zaの幅の中心の間の距離と、印刷線130xbの幅の中心と、印刷線130zaの幅の中心の間の距離のうち、最短となる方をD3、より長い方をD3xと定義する。このとき、前述の実施形態と同様、距離D2および距離D3は115μm以下であることが好ましい。115μmより大きいと、画像変化をもたらす印刷線130yおよび130zと印刷線130xの間の距離が大きく、視る角度を大きく変化しても変化が視認しにくくなるため好ましくない。
【0059】
本実施形態においては、印刷線130x、130yおよび130z(上記説明では、130xaおよび130xb、130ya、130zaを例にとって説明したが、何れであっても良い。)の幅W1aおよび幅W1bの算術平均W1(W1=(W1a+W1b)/2)と、幅W2、幅W3が、以下の数式(式1)、(式2)を満たすことが必要である。
4.3≦W1/W2≦10.3 ・・・(式1)
4.3≦W1/W3≦10.3 ・・・(式2)
【実施例0060】
上述した実施形態を具体化した実施例を、比較対象としての比較例とともに説明する。以下の実施例では、レーザー顕微鏡観察を行い、印刷部130の幅、高さ、間隔を測定した。具体的には、ランダムに選択した10箇所において、選択した各印刷部の画像を得た後に、
図6および
図7に示す幅W、高さH、長さを求めた。10箇所の測定値の算術平均値を、印刷部100を成す印刷線の特性値とした。
【0061】
<実施例1>
200mm×200mmの寸法および、130μmの厚みのコート紙を切り出し、基材103を準備した。
次に、グラビアオフセット印刷法により、基材103上に、白色および紅色の印刷を行い、
図6(a)に示すような、一方向に平行に延伸する複数の白色の印刷線と紅色の印刷線を形成することにより、印刷部100を含む印刷物500を得た。
図6(b)に示すように、印刷線130の底面が基材103と接して平らであり、上面が凸形形状であった。
平面視で、上述のようにして求めた印刷線130xは幅W1が50.4μmで、印刷線130xaの高さH1a、印刷線130xbの高さH1bを算術平均した高さH1が3.0μmであり、印刷線130yは幅W2が5.1μmで、高さH2が0.6μmで、130xとの最短となる距離D2は29.8μmであった。
【0062】
次に、W1、W2の値から、W1/W2を算出し、9.9であった。
【0063】
次に、印刷線を形成する際に用いた凹板を変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、実施例2から実施例8の印刷部100を含む印刷物500を得た。
【0064】
<実施例2>
実施例2は、印刷線130xは幅W1が20.5μmで、高さH1が2.0μmであり、印刷線130yは幅W2が3.5μmで、高さH2が0.5μmで、130xとの最短となる距離D2は14.0μmであった。W1/W2は、5.8であった。
【0065】
<実施例3>
実施例3は、印刷線130xは幅W1が20.3μmで、高さH1が3.3μmであり、印刷線130yは幅W2が5.2μmで、高さH2が0.6μmで、130xとの最短となる距離D2は14.7μmであった。W1/W2は、3.9であった。
【0066】
<実施例4>
実施例4は、印刷線130xは幅W1が80.3μmで、高さH1が5.2μmであり、印刷線130yは幅W2が13.1μmで、高さH2が1.1μmで、130xとの最短となる距離D2は48.7μmであった。W1/W2は、6.1であった。
【0067】
<実施例5>
実施例5は、印刷線130xは幅W1が150.6μmで、高さH1が10.0μmであり、印刷線130yは幅W2が20.2μmで、高さH2が1.8μmで、130xとの最短となる距離D2は87.5μmであった。W1/W2は、7.5であった。
【0068】
<実施例6>
実施例6は、印刷線130xは幅W1が45.0μmで、高さH1が3.0μmであり、印刷線130yは幅W2が5.2μmで、高さH2が0.6μmで、130xとの最短となる距離D2は28.2μmであった。W1/W2は、8.7であった。
【0069】
<実施例7>
実施例7は、印刷線130xは幅W1が70.4μmで、高さH1が3.5μmであり、印刷線130yは幅W2が15.3μmで、高さH2が1.2μmで、130xとの最短となる距離D2は44.8μmであった。W1/W2は、4.6であった。
【0070】
<実施例8>
実施例8は、印刷線130xは幅W1が200.2μmで、高さH1が5.0μmであり、印刷線130yは幅W2が26.0μmで、高さH2が2.0μmで、130xとの最短となる距離D2は115.0μmであった。W1/W2は、7.7であった。
【0071】
次に、印刷線を形成する際に用いた凹版を変更したこと、および3種類の凹版を使用したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、実施例9から実施例11の印刷部100を含む印刷物500を得た。
図7(a)に示すような、一方向に平行に延伸する複数の白色の印刷線と紅色の印刷線と藍色の印刷線を形成することにより、印刷部100を含む印刷物500を得た。
図7(b)に示すように、印刷線130の底面が基材103と接して平らであり、上面が凸形形状であった。
【0072】
<実施例9>
実施例9は、印刷線130xは幅W1が50.4μmで、高さH1が3.0μmであり、印刷線130yは幅W2が4.9μmで、高さH2が0.6μmで、130xとの最短となる距離D2は29.7μmであり、印刷線130zは幅W3が4.9μmで、高さH3が0.5μmで、130xとの距離D3は29.7μmであった。W1/W2は、10.3であり、W1/W3は、10.3であった。
【0073】
<実施例10>
実施例10は、印刷線130xは幅W1が20.4μmで、高さH1が2.3μmであり、印刷線130yは幅W2が3.7μmで、高さH2が0.5μmで、130xとの最短となる距離D2は14.0μmであり、印刷線130zは幅W3が3.5μmで、高さH3が0.5μmで、130xとの距離D3は13.9μmであった。W1/W2は、5.5であり、W1/W3は、5.8であった。
【0074】
<実施例11>
実施例11は、印刷線130xは幅W1が85.1μmで、高さH1が5.2μmであり、印刷線130yは幅W2が20.0μmで、高さH2が2.5μmで、130xとの最短となる距離D2は54.5μmであり、印刷線130zは幅W3が20.0μmで、高さH3が1.9μmで、130xとの距離D3は54.5μmであった。W1/W2は、4.3であり、W1/W3は、4.3であった。
【0075】
次に、印刷線を形成する際に用いた凹板を変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返して、比較例1~比較例4の印刷部100を含む印刷物500を得た。
【0076】
<比較例1>
比較例1は、印刷線130xは幅W1が18.8μmで、高さH1が1.9μmであり、印刷線130yは幅W2が10.0μmで、高さH2が0.9μmで、130xとの最短となる距離D2は16.5μmであった。W1/W2は、1.9であった。
【0077】
<比較例2>
比較例2は、印刷線130xは幅W1が30.5μmで、高さH1が1.0μmであり
、印刷線130yは幅W2が2.0μmで、高さH2が0.4μmで、130xとの距離最短となるD2は17.5μmであった。W1/W2は、15.3であった。
【0078】
<比較例3>
比較例3は、印刷線130xは幅W1が511.5μmで、高さH1が4.2μmであり、印刷線130yは幅W2が5.0μmで、高さH2が2.0μmで、130xとの最短となる距離D2は261.0μmであった。W1/W2は、102.3であった。
【0079】
<比較例4>
比較例4は、印刷線130xは幅W1が301.5μmで、高さH1が20.0μmであり、印刷線130yは幅W2が35.0μmで、高さH2が2.7μmで、130xとの最短となる距離D2は171.5μmであった。W1/W2は、8.6であった。
【0080】
<評価>
実施例1~11および比較例1~4の印刷物を、白色光源の下に静置し、印刷面から30cm離れた位置から、印刷線の線長方向に対して90度印刷物を回転させて、基材の垂直方向となる正面および印刷線の線長方向と90度異なる方向の一方向へ傾けたあと、反対側の方向である他方へ傾け、それぞれ目視評価を行った。印刷線の1本1本が見えず方向性も認識できない場合、すなわち、印刷部が平らに見える場合を(〇)、印刷線の方向が認識できる場合を(△)、印刷線の1本1本が視認できる場合を(×)と判定した。
上述の印刷線の視認の有無に関する判定と色画像が正面から見て薄紫色、一方向に傾けて見て紅色、他方に傾けて見て藍色への見え方の変化の有無に関する判定とを合わせた総合判定を表1に示したように決めた。
すなわち、線が見えない(〇)、変化する(〇)である場合を総合判定◎とした。以下、表1に示すように、線の方向が認識できる(△)、変化する(〇)である場合を総合判定〇とした。また、線が見えない(〇)、変化しない(×)である場合を総合判定×に、線が見える(×)、変化しない(×)である場合を総合判定××とした。
【0081】
【0082】
実施例1~11および比較例1~4の特性値および評価結果を表2にまとめて示した。
【0083】
【0084】
表2に示したように、(式1)および(式2)を満たす適切な形状を有する印刷線を有する実施例1~11の印刷物は、印刷線は視認されず、角度を変えながら連続的に観察すると画像の色が変化した。以上のように、角度依存のある高い色変化性能を有することが確認された。これは、良好な形状を有する印刷線が形成されたためと推定される。
【0085】
一方、比較例1の印刷物は、印刷線の各々の線が視認されなかったが、視る角度を変化させても、画像が変化せず不良であった。第1画線の印刷線の大きさが小さく、第2画線の印刷線および第3画線の印刷線が隠蔽されなかったためと推定される。
【0086】
比較例2の印刷物は、印刷線の各々の線が視認されなかったが、印刷線が不明瞭で視る角度を変化させても画像が変化せず不良であった。印刷線の線幅が小さく、印刷線の高さが低いために、画像の表示が十分でなく、視認されなかったと推定される。
【0087】
比較例3の印刷物は、印刷線の各々の線が視認され、画像が変化せず不良であった。第1画線の線幅が大きく、印刷線の1本1本が視認されたと推定される。また、第1画線の印刷線の割合が大きく、第2画線の印刷線が相対的に少なかったため、表示される色の面
積が少なく視認されなかったと推定される。
【0088】
比較例4の印刷物は、印刷線の各々の線が視認されたが、視る角度を変化させると画像の色が変化した。第2画線の線幅が大きく、印刷線の1本1本が視認されたと推定される。