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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127915
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220825BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20220825BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220825BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M2/16 L
H01M10/0585
H01M2/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026153
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間 友博
(72)【発明者】
【氏名】西田 晶
(72)【発明者】
【氏名】野中 太貴
【テーマコード(参考)】
5H011
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H021CC04
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH10
5H028AA05
5H028CC08
5H028CC11
5H028HH01
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AM03
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029DJ04
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】電池セルの膨張が抑制された二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、電極体と、電極体を収納する外装缶と、電極体とともに外装缶に収納される電解液とを備える。電極体は、正極芯体および正極活物質合剤層を含む正極板と、負極芯体および負極活物質合剤層を含む負極板と、正極板と負極板との間に設けられたセパレータとを含む。セパレータは、正極板に対向する第1面と、負極板に対向する第2面とを含み、第1面および第2面の少なくとも一方に接着層が形成される。セパレータの厚み(T)に対する正極板および負極板の極間距離(L)の比率(L/T)が1.12以上1.30以下である。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を収納する外装缶と、
前記電極体とともに前記外装缶に収納される電解液とを備え、
前記電極体は、
正極芯体および正極活物質合剤層を含む正極板と、
負極芯体および負極活物質合剤層を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に設けられたセパレータとを含み、
前記セパレータは、前記正極板に対向する第1面と、前記負極板に対向する第2面とを含み、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に接着層が形成され、
前記セパレータの厚み(T)に対する前記正極板および前記負極板の極間距離(L)の比率(L/T)が1.12以上1.30以下である、二次電池。
【請求項2】
前記接着層は少なくとも前記第1面に形成される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質合剤層に含有される前記電解液の質量は、前記正極活物質合剤層の質量の4.03%以上4.70%以下である、請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
正極活物質合剤層中の単位空隙あたりの前記電解液の含有量は、11.05mg/cc以上12.90mg/cc以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2014-179221号公報(特許文献1)には、正極と負極とが多孔質絶縁層を介して対向した状態で極板巻回体を形成し、多孔質絶縁層の厚みをA(μm)、正極合剤層の表面から対向する負極合剤層の表面までの極間距離をB(μm)とした場合に、AとBの関係が「A≦B≦A×1.3」の関係を満たす非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-179221号公報
【特許文献2】特開2013-206755号公報
【特許文献3】特開2010-212227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極合剤層と負極合剤層との極間距離が狭い場合、電池セルの乾燥工程における水分抜けが不十分となり、水分由来の水素ガスの発生量が増大し得る。また、合剤層における非水電解液の含浸が十分でない場合、炭化水素系ガスの発生量が増大し得る。ガスの発生量が増大することにより、電池セルが膨張する。製造時の電池セルの膨張を抑制することは重要である。従来の二次電池は、上記の観点から必ずしも十分な構成を備えていない。
【0005】
本技術の目的は、電池セルの膨張が抑制された二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る二次電池は、電極体と、電極体を収納する外装缶と、電極体とともに外装缶に収納される電解液とを備える。電極体は、正極芯体および正極活物質合剤層を含む正極板と、負極芯体および負極活物質合剤層を含む負極板と、正極板と負極板との間に設けられたセパレータとを含む。セパレータは、正極板に対向する第1面と、負極板に対向する第2面とを含み、第1面および第2面の少なくとも一方に接着層が形成される。セパレータの厚み(T)に対する正極板および負極板の極間距離(L)の比率(L/T)が1.12以上1.30以下である。
【0007】
なお、ここでいうセパレータの厚み(T)および極間距離(L)は、1つの電極体における全層のセパレータの厚み(T)および極間距離(L)の平均値を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本技術によれば、電池セルの膨張が抑制された二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】角形二次電池の斜視図である。
図2図1におけるII-II断面図である。
図3】電極体を構成する正極板の平面図である。
図4】電極体を構成する負極板の平面図である。
図5】正極板および負極板からなる電極体を示す平面図である。
図6】電極体と正極集電部材および負極集電部材との接続構造を示す図である。
図7】封口板への正極集電部材および負極集電部材の取付構造を示す図である。
図8図7におけるVIII-VIII断面図である。
図9図7におけるIX-IX断面図である。
図10】封口板と電極体とが接続された状態を示す図である。
図11】正極板と負極板との積層構造を示す断面図である。
図12】セパレータ厚み(T)に対する極間距離(L)の比率(L/T)と耐圧電流との関係を示す図である。
図13】正極板におけるエチレンカーボネート(EC)の保液量を示す図である。
図14】セパレータ厚み(T)に対する極間距離(L)の比率(L/T)とセル厚み(mm)との関係を示す図である。
図15】正極活物質合剤層に含有される電解液の質量割合(wt%)とセル厚み(mm)との関係を示す図である。
図16】正極活物質合剤層中の単位空隙あたりの電解液の含有量(mg/cc)とセル厚み(mm)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0011】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0012】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0014】
図1は、角形二次電池1の斜視図である。図2は、図1におけるII-II断面図である。
【0015】
図1図2に示すように、角形二次電池1は、電池ケース100と、電極体200と、絶縁シート300と、正極端子400と、負極端子500と、正極集電部材600と、負極集電部材700と、カバー部材800とを含む。
【0016】
電池ケース100は、開口を有する有底角筒状の角形外装体110と、角形外装体110の開口を封口する封口板120とからなる。角形外装体110および封口板120は、それぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることが好ましい。
【0017】
封口板120には、電解液注液孔121が設けられる。電解液注液孔121から電池ケース100内に電解液が注液された後、電解液注液孔121は、封止部材122により封止される。封止部材122としては、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いることができる。
【0018】
封口板120には、ガス排出弁123が設けられる。ガス排出弁123は、電池ケース100内の圧力が所定値以上となった際に破断する。これにより、電池ケース100内のガスが電池ケース100外に排出される。
【0019】
電極体200は、電解液とともに電池ケース100内に収容されている。電極体200は、正極板と負極板がセパレータを介して積層されたものである。電極体200と角形外装体110の間には樹脂製の絶縁シート300が配置されている。
【0020】
電極体200の封口板120側の端部には、正極タブ210Aおよび負極タブ210Bが設けられている。
【0021】
正極タブ210Aと正極端子400とは、正極集電部材600を介して電気的に接続されている。正極集電部材600は、第1正極集電体610および第2正極集電体620を含む。なお、正極集電部材600は、1つの部品から構成されてもよい。正極集電部材600は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることがより好ましい。
【0022】
負極タブ210Bと負極端子500とは、負極集電部材700を介して電気的に接続されている。負極集電部材700は、第1負極集電体710および第2負極集電体720を含む。なお、負極集電部材700は、1つの部品から構成されてもよい。負極集電部材700は、金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。
【0023】
正極端子400は、樹脂製の外部側絶縁部材410を介して封口板120に固定されている。負極端子500は、樹脂製の外部側絶縁部材510を介して封口板120に固定されている。
【0024】
正極端子400は金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であることがより好ましい。負極端子500は金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。負極端子500が、電池ケース100の内部側に配置される銅または銅合金からなる領域と、電池ケース100の外部側に配置されるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる領域を有するようにしてもよい。
【0025】
カバー部材800は、第1正極集電体610と電極体200との間に位置する。カバー部材800は、負極集電体側に設けられてもよい。また、カバー部材800は必須の部材ではなく、適宜省略が可能である。
【0026】
図3は、電極体200を構成する正極板200Aの平面図である。正極板200Aは、矩形状のアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質(たとえばリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)、結着材(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、および導電材(たとえば炭素材料等)を含む正極活物質合剤層が形成された本体部220Aを有する。本体部の端辺から正極芯体が突出しており、この突出した正極芯体が正極タブ210Aを構成する。正極タブ210Aにおける本体部の220Aと隣接する部分には、アルミナ粒子、結着材、および導電材を含む正極保護層230Aが設けられている。正極保護層230Aは、正極活物質合剤層の電気抵抗よりも大きな電気抵抗を有する。正極活物質合剤層は導電材を含まなくてもよい。正極保護層230Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0027】
図4は、電極体200を構成する負極板200Bの平面図である。負極板200Bは、矩形状の銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質合剤層が形成された本体部220Bを有する。本体部220Bの端辺から負極芯体が突出しており、この突出した負極芯体が負極タブ210Bを構成する。
【0028】
図5は、正極板200Aおよび負極板200Bからなる電極体200を示す平面図である。図5に示すように、電極体200は、一方の端部において各々の正極板200Aの正極タブ210Aが積層され、各々の負極板200Bの負極タブ210Bが積層されるように作製される。正極板200Aおよび負極板200Bは、たとえば各々50枚程度ずつ重ねられる。正極板200Aと負極板200Bとは、ポリオレフィン製の矩形状のセパレータを介して交互に積層される。なお、長尺のセパレータをつづら折りして用いてもよい。
【0029】
図6は、電極体200と正極集電部材600および負極集電部材700との接続構造を示す図である。図6に示すように、電極体200は、第1電極体要素201(第1積層群)および第2電極体要素202(第2積層群)により構成される。第1電極体要素201および第2電極体要素202の外面にもセパレータが各々配置される。
【0030】
第1電極体要素201の複数枚の正極タブ210Aが第1正極タブ群211Aを構成する。第1電極体要素201の複数枚の負極タブ210Bが第1負極タブ群211Bを構成する。第2電極体要素202の複数枚の正極タブ210Aが第2正極タブ群212Aを構成する。第2電極体要素202の複数枚の負極タブ210Bが第2負極タブ群212Bを構成する。
【0031】
第1電極体要素201と第2電極体要素202の間に、第2正極集電体620と第2負極集電体720とが配置される。第2正極集電体620は、第1開口620Aおよび第2開口620Bを有する。第1正極タブ群211Aおよび第2正極タブ群212Aが、第2正極集電体620上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。第1負極タブ群211Bおよび第2負極タブ群212Bが、第2負極集電体720上に溶接接続され、溶接接続部213が形成される。溶接接続部213は、たとえば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等により形成し得る。
【0032】
図7は、封口板120への正極集電部材600および負極集電部材700の取付構造を示す図である。図8は、図7におけるVIII-VIII断面を示す。図9は、図7におけるIX-IX断面を示す。
【0033】
まず、図7図8を参照して、封口板120への正極集電部材600の取付について説明する。
【0034】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材410が配置される。封口板120の内面側に第1正極集電体610、および樹脂製の絶縁部材630(正極集電体ホルダ)が配置される。次に、正極端子400が、外部側絶縁部材410の貫通孔、封口板120の正極端子取り付け孔、第1正極集電体610の貫通孔、および絶縁部材630の貫通孔に挿入される。そして、正極端子400の先端に位置するカシメ部400Aが第1正極集電体610上にカシメ接続される。これにより、正極端子400、外部側絶縁部材410、封口板120、第1正極集電体610、および絶縁部材630が固定される。なお、正極端子400および第1正極集電体610のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。なお、第1正極集電体610はザグリ穴610Aを有し、カシメ部400Aはザグリ穴610A内に設けられる。
【0035】
さらに、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように、第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aにおいて、第2正極集電体620は第1正極集電体610にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0036】
図8に示すように、絶縁部材630は、電極体200側に突出する筒状部630Aを有する。筒状部630Aは、第2正極集電体620の第2開口620Bを貫通し、電解液注液孔121と連通する孔部630Bを規定する。
【0037】
封口板120に正極集電部材600を取り付ける際は、まず、第1正極集電体610が封口板120上の絶縁部材630に接続される。続いて、電極体200に接続された第2正極集電体620が第1正極集電体610に取り付けられる。このとき、第2正極集電体620の一部が第1正極集電体610と重なるように第2正極集電体620が絶縁部材630上に配置される。続いて、第2正極集電体620に設けられた第1開口620Aの周囲が、レーザ溶接等により第1正極集電体610に溶接接続される。
【0038】
次に、図7および図9を参照して、封口板120への負極集電部材700の取付について説明する。
【0039】
封口板120の外面側に樹脂製の外部側絶縁部材510が配置される。封口板120の内面側に第1負極集電体710、および樹脂製の絶縁部材730(負極集電体ホルダ)が配置される。次に、負極端子500が、外部側絶縁部材510の貫通孔、封口板120の負極端子取り付け孔、第1負極集電体710の貫通孔、および絶縁部材730の貫通孔に挿入される。そして、負極端子500の先端に位置するカシメ部500Aが第1負極集電体710上にカシメ接続される。これにより、負極端子500、外部側絶縁部材510、封口板120、第1負極集電体710、および絶縁部材730が固定される。なお、負極端子500および第1負極集電体710のカシメ接続された部分は、レーザ溶接等により溶接接続されることが好ましい。
【0040】
さらに、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように、第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aにおいて、第2負極集電体720は第1負極集電体710にレーザ溶接等により溶接接続される。
【0041】
封口板120に負極集電部材700を取り付ける際は、まず、第1負極集電体710が封口板120上の絶縁部材730に接続される。続いて、電極体200に接続された第2負極集電体720が第1負極集電体710に取り付けられる。このとき、第2負極集電体720の一部が第1負極集電体710と重なるように第2負極集電体720が絶縁部材730上に配置される。続いて、第2負極集電体720に設けられた第1開口720Aの周囲が、レーザ溶接等により第1負極集電体710に溶接接続される。
【0042】
図10は、封口板120と電極体200とが接続された状態を示す図である。上述したように、正極集電部材600および負極集電部材700を介して第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に取り付けられる。これにより、図10に示すように、第1電極体要素201および第2電極体要素202が封口板120に接続され、電極体200と正極端子400および負極端子500とが電気的に接続される。
【0043】
図10に示す状態から、第1電極体要素201と第2電極体要素202とが1つに纏められる。このとき、第1正極タブ群211Aと第2正極タブ群212Aとが互いに異なる方向に湾曲させられる。第1負極タブ群211Bと第2負極タブ群212Bとが互いに異なる方向に湾曲させられる。
【0044】
第1電極体要素201と第2電極体要素202とは、テープ等により1つに纏められ得る。代替的に、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを、箱状ないし袋状に成形した絶縁シート内に配置することで1つに纏めることができる。さらに、第1電極体要素201と第2電極体要素202とを接着により固定することができる。
【0045】
1つに纏められた第1電極体要素201と第2電極体要素202とが絶縁シート300で包まれ、角形外装体110に挿入される。その後、封口板120が角形外装体110に溶接接続され、角形外装体110の開口が封口板120により封口され、密閉された電池ケース100が形成される。
【0046】
その後、封口板120に設けられた電解液注液孔121から非水電解液が電池ケース100に注液される。非水電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むものが用いられる。
【0047】
非水電解液が注液された後、電解液注液孔121は封止部材122により封止される。以上の工程の実施により、角形二次電池1は完成する。
【0048】
図11は、正極板200Aと負極板200Bとの積層構造を示す断面図である。図11に示すように、正極板200Aと負極板200Bとの間にセパレータ200Cが設けられる。正極板200Aにおいて、正極芯体200A1の両面に正極活物質合剤層200A2が設けられる。負極板200Bにおいて、負極芯体200B1の負極活物質合剤層200B2が設けられる。
【0049】
セパレータ200Cの正極板200Aに対向する面(第1面)および負極板200Bに対向する面(第2面)には、接着層が形成される。一例としての電極体200は、たとえば、負極板200B、接着層付きのセパレータ200C、正極板200A、接着層付きのセパレータ200Cの順に積層し、熱プレスすることにより得られる。なお、接着層は、セパレータ200Cの一方の面にのみ形成されることもある。接着層は、少なくともセパレータ200Cの正極板200Aに対向する面(第1面)に形成されることが好ましい。
【0050】
接着層を構成する架橋性単量体としては、たとえば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、たとえば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物と、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物と、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物と、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体とを例示できる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
図11に示す例において、セパレータ200Cの厚み(T)に対する正極板200Aおよび負極板200Bの極間距離(L)の比率(L/T)は、1.12以上1.30以下程度であることが好ましい。図11に示すように、正極板200Aとセパレータ200Cとの間に比較的大きな隙間が形成されている。当該隙間は、電極体200を角形外装体110に挿入した後、缶内部の気圧を増大させ、接着を引き剥がすことにより形成される。
【0052】
図12は、セパレータ厚み(T)に対する極間距離(L)の比率(L/T)と耐圧電流との関係を示す図である。図12に示すように、セパレータ厚み(T)に対して極間距離(L)が大きくなるにつれて、耐圧電流は小さくなる。
【0053】
図13は、正極板200Aにおけるエチレンカーボネート(EC)の保液量を示す図である。図13における「正極層番号」は、電極体200内における積層順に各々の正極板200Aに付与された番号を意味する。
【0054】
図13に示すように、極間距離(L)が大きい場合には、電極体200の全体にわたって、エチレンカーボネート(EC)の保液量が増大する。これは、極間距離(L)が大きい場合には、電解液を注液したときの極間における電解液の含浸性が向上するためであると考えられる。
【0055】
図14は、セパレータ厚み(T)に対する極間距離(L)の比率(L/T)とセル厚み(mm)との関係を示す図である。図14において、曲線11は、多数の測定結果の近似曲線を示し、曲線12は、曲線11の傾き(dy/dx)を示す。
【0056】
図14に示すように、セパレータ厚み(T)に対する極間距離(L)の比率(L/T)が1.0から大きくなるにつれて、セル厚み(mm)は小さくなる。すなわち、極間距離(L)が大きくなるにつれて、セルの膨張が抑制されている。これは、極間距離(L)が大きくことにより、電池セルの乾燥工程における水分抜けの通路が十分に確保され、水分由来の水素ガスの発生量が抑制されるとともに、正極活物質合剤層200A2に電解液が十分に含浸され、正極活物質合剤層200A2が安定して、炭化水素系ガスの発生量が抑制されるためであると考えられる。
【0057】
上記比率(L/T)が1.12以上程度(図中A1よりも右側)のとき、セル厚み(曲線11)は低く抑えられる。ただし、曲線12に示すように、上記比率(L/T)が1.30(図中B1)に近づくと、曲線11の傾き(dy/dx)は小さくなる。耐圧電流を確保する観点、および製造時の正極板200Aおよび負極板200Bの位置ずれを抑制する観点から、上記比率(L/T)は1.30以下程度(図中B1よりも左側)であることが好ましい。
【0058】
図15は、正極活物質合剤層200A2に含有される電解液の質量割合(wt%)とセル厚み(mm)との関係を示す図である。図15に示すように、上記質量割合(wt%)が4.03%以上程度(図中A2よりも右側)のとき、セル厚み(曲線21)は低く抑えられる。ただし、曲線22に示すように、上記質量割合(wt%)が4.70%(図中B2)に近づくと、曲線21の傾き(dy/dx)は小さくなる。したがって、正極活物質合剤層200A2に含有される電解液の質量は、正極活物質合剤層200A2の質量の4.03%以上4.70%以下程度(図中A2の右側であり、かつ、図中B2の左側)であることが好ましい。
【0059】
図16は、正極活物質合剤層200A2中の単位空隙あたりの電解液の含有量(mg/cc)とセル厚み(mm)との関係を示す図である。図16に示すように、上記含有量(mg/cc)が11.05mg/cc以上程度(図中A3よりも右側)のとき、セル厚み(曲線31)は低く抑えられる。ただし、曲線32に示すように、上記含有量(mg/cc)が12.90mg/cc(図中B3)に近づくと、曲線31の傾き(dy/dx)は小さくなる。したがって、正極活物質合剤層200A2中の単位空隙あたりの電解液の含有量は、11.05mg/cc以上12.90mg/cc以下程度であることが好ましい。
【0060】
図15図16に示すデータの根拠となる「正極活物質合剤層に含有される電解液量」は、正極活物質合剤層に含有されるエチレンカーボネート(EC)の測定重量と、電解液中のエチレンカーボネート(EC)の重量割合とから算出される。正極活物質合剤層に含有されるエチレンカーボネート(EC)の重量は、次の手順により測定される。
【0061】
まず、製造された角形二次電池1を解体し、正極板200Aを取り出す。その後、正極板200A中のエチレンカーボネート(EC)以外の電解液成分を揮発させる。その上で、正極板200Aの重量(第1重量)を測定する。さらに、正極板200Aをジメチルカーボネート(DMC)に浸漬し、正極板200Aに含有されているエチレンカーボネート(EC)を溶かす。そして、ジメチルカーボネート(DMC)を蒸発させた後に、再び正極板200Aの重量(第2重量)を測定する。第1重量から第2重量を差し引いた値が、正極活物質合剤層に含有されるエチレンカーボネート(EC)の重量となる。
【0062】
図16に示すデータの根拠となる「正極活物質合剤層中の空隙(率)」は、二次粒子における空隙率の測定方法、たとえば、水銀圧入法等の液浸法、ガス置換法(ガス吸着法ともいう。)等の適宜の測定方法、電子顕微鏡による直接観察によって測定することができる。水銀圧入法は、二次粒子の集合である粉体に高圧で水銀を圧入し、圧力を変えて水銀の圧入量を測定していくことで細孔体積(ないし細孔分布)を求めることができるものである。そして、空隙率(平均空隙率に相当する。)を、以下の式(1)によって算出することができる。
空隙率=細孔体積/粒子体積×100・・・(1)
【0063】
なお、本明細書において言及した各測定値、すなわち、セパレータ200Cの厚み(T)、正極板200Aおよび負極板200Bの極間距離(L)、セル厚み(mm)、正極活物質合剤層に含有される電解液の質量割合(wt%)、および正極活物質合剤層中の単位空隙あたりの電解液の含有量(mg/cc)は、角形二次電池1の製造後であって同電池の使用前、すなわち工場出荷前における測定値を意味する。
【0064】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 角形二次電池、100 電池ケース、110 角形外装体、120 封口板、121 電解液注液孔、122 封止部材、123 ガス排出弁、200 電極体、200A 正極板、200A1 正極芯体、200A2 正極活物質合剤層、200B 負極板、200B1 負極芯体、200B2 負極活物質合剤層、200C セパレータ、201 第1電極体要素、202 第2電極体要素、210A 正極タブ、210B 負極タブ、211A 第1正極タブ群、211B 第1負極タブ群、212A 第2正極タブ群、212B 第2負極タブ群、213 溶接接続部、220A,220B 本体部、230A 正極保護層、300 絶縁シート、400 正極端子、400α 内周面、400β 筒状先端部、400A,500A カシメ部、410,510 外部側絶縁部材、500 負極端子、600 正極集電部材、610 第1正極集電体、610A ザグリ穴、620 第2正極集電体、620A,720A 第1開口、620B 第2開口、630,730 絶縁部材、630A 筒状部、630B 孔部、700 負極集電部材、710 第1負極集電体、720 第2負極集電体、800 カバー部材。
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