(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127919
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
A42B 3/20 20060101AFI20220825BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220825BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20220825BHJP
A42B 3/28 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A42B3/20
A62B18/02 A
A41D13/11 Z
A42B3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026161
(22)【出願日】2021-02-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】719002791
【氏名又は名称】合同会社MRC
(71)【出願人】
【識別番号】591124400
【氏名又は名称】アサダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 彰
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃潔眸
【テーマコード(参考)】
2E185
3B107
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA02
2E185CA03
2E185CB18
2E185CC32
3B107DA14
3B107EA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オゾンの吸い込みを抑制し、呼吸に必要な空気量を確保することによって息苦しさを解消する空気清浄装置の提供を目的とする。
【解決手段】フェイスシールド8の上部に設けられる空気清浄部2と、空気清浄部2を頭部に装脱可能なバンド部と、電源部とを備え、空気清浄部が、吸気口と、排気口を有する空気吸引機と、該排気口と連通する空気通路Lと、排気口又は空気通路の入口に設けられ、電源部に接続されるコロナ放電極および対向電極と、コロナ放電極および対向電極より下流の位置で、空気通路に設けられるフィルタと、空気吸引機と空気通路とコロナ放電極と対向電極とフィルタとを収容するケース6とを備えることを特徴とする、空気清浄装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイスシールドの上部に設けられる空気清浄部と、前記空気清浄部を頭部に装脱可能なバンド部と、電源部とを備え、
前記空気清浄部が、
吸気口と、排気口を有する空気吸引機と、
該排気口と連通する空気通路と、
前記排気口又は前記空気通路の入口に設けられ、前記電源部に接続されるコロナ放電極および対向電極と、
前記コロナ放電極および前記対向電極より下流の位置で、前記空気通路に設けられるフィルタと、
前記空気吸引機と前記空気通路と前記コロナ放電極と前記対向電極と前記フィルタとを収容するケースとを備えることを特徴とする、空気清浄装置。
【請求項2】
胴体に装着可能または机上に載置可能であり、空気を吸い込み、空気を浄化し、排出する空気清浄部と、
電源部と、
フェイスシールドの上部に設けられるとともに前記空気清浄部と管で接続され、前記空気清浄部から前記管を介して供給される空気を受け入れて、供給された空気を横方向に拡散するとともに、該空気を前記フェイスシールドの内側に上から下方向に供給する空気供給部材と、を備え、
前記空気清浄部は、
吸気口と、排気口を有する空気吸引機と、
該排気口と連通する空気通路と、
前記排気口又は前記空気通路の入口に設けられ、前記電源部に接続されるコロナ放電極および対向電極と、
前記コロナ放電極および前記対向電極の下流より下流の位置で、前記空気通路に設けられるフィルタと、
前記空気吸引機と前記空気通路と前記コロナ放電極と前記対向電極と前記フィルタを収容するケースと、
を備える空気清浄装置。
【請求項3】
前記コロナ放電極は空気の流れ方向に設けられ、
前記空気の流れを囲むように前記対向電極が設けられ、
前記コロナ放電極の極性がプラス又はマイナスであり、前記対向電極の極性が前記コロナ放電極の極性以外の極性である請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記コロナ放電極が導電性の繊維束であり、前記対向電極が環状の導電性層であり、前記コロナ放電極の回りに所定距離を置いて設置される請求項3に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記コロナ放電極の先端部が前記対向電極の内部空間に配置される請求項3又は4に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記コロナ放電極の長さが3~6mmであり、該コロナ放電極の先端部が前記対向電極の内部空間の入口から2mm以上進出した位置から、当該内部空間の出口までの範囲に配置される請求項3~5のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記コロナ放電極及び対向電極が、前記排気口の内部空間に設けられる請求項3~6のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項8】
前記フィルタが取り外し可能な、帯電性の不織布であり、前記排気口から横方向に流れた空気が上下方向に流れを変え、前記フィルタに対して上下方向に通過する請求項1~7のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項9】
前記電源部から前記コロナ放電極に供給される電圧が3.0kV~4.0kVである請求項1~8のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項10】
前記フィルタに供給される空気の流量が30~50リットル/分である請求項1~9のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項11】
前記ケースが曲面を有するとともに横方向に長く形成され、上下に分割された、脱着可能な第1ケースと、第2ケースを有し、
前記第2ケースに前記フェイスシールドが脱着可能に取り付けられる請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項12】
前記第1ケースに前記空気吸引機及び電源部を設け、前記第2ケースに前記フィルタを設ける請求項11に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電により帯電された微粒子を不織布等のフィルタにより捕集する空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の塵埃やウイルスや花粉等の微細物質をコロナ放電により帯電させ、エレクトリックフィルタ等により捕集する、マスクやフェイスシールドが知られている。
【0003】
特許文献1は、尖った形状のコロナ放電極を用いてコロナ放電を行い、通過する空気中の微粒子を帯電し、その空気を、顔面を覆うフィルタを通して濾過し、清浄空気を顔面に供給するマスクを開示している。
【0004】
特許文献2は、フェイスシールド内部に設けられる電気集塵装置を開示し、フェイスシールドの内部に、コロナ放電極を設け、さらに平行平板電極で構成される集塵電極を設けた、2段式電気集塵装置により、フェイスシールド内部の空気を浄化する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3227618号公報
【特許文献2】実用新案登録第3227619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のマスク、特許文献2に記載のフェイスシールドでは、いずれも口元でコロナ放電が起き、コロナ放電により多少のオゾンが発生している。そのため、オゾンの吸い込みを抑制するために、コロナ放電部の後に活性炭やオゾン分解触媒を配置することが記載されているが、例えば活性炭の効力が低下した状態を考えると安全性に課題が残る。また、フェイスシールドにおいては、呼吸に必要な空気量を確保する必要があるが、高い集塵率を保ちながら、空気流量を高くすることが求められていた。さらに、特許文献1、2においては、接地電極に囲まれる空間にコロナ放電部がなく、コロナ放電による集塵率に向上の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、オゾンの吸い込みを抑制し、呼吸に必要な清浄化された空気量を確保することによって息苦しさを解消する空気清浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フェイスシールドの上部に設けられる空気清浄部と、前記空気清浄部を頭部に装脱可能なバンド部と、電源部とを備え、前記空気清浄部が、吸気口と、排気口を有する空気吸引機と、該排気口と連通する空気通路と、前記排気口又は前記空気通路の入口に設けられ、前記電源部に接続されるコロナ放電極および対向電極と、前記コロナ放電極および前記対向電極より下流の位置で、前記空気通路に設けられるフィルタと、前記空気吸引機と前記空気通路と前記コロナ放電極と前記対向電極と前記フィルタとを収容するケースとを備えることを特徴とする、空気清浄装置である。
【0009】
これによれば、コロナ放電の発生位置と使用者の口や鼻の位置が遠いため、コロナ放電により発生したオゾンが拡散されることによりオゾンの吸い込みを抑制できる。また、呼吸に必要な空気量を確保しやすく息苦しさも解消できる。
【0010】
また、本発明は、胴体に装着可能または机上に載置可能であり、空気を吸い込み、空気を浄化し、排出する空気清浄部と、電源部と、フェイスシールドの上部に設けられるとともに前記空気清浄部と管で接続され、前記空気清浄部から前記管を介して供給される空気を受け入れて、供給された空気を横方向に拡散するとともに、該空気を前記フェイスシールドの内側に上から下方向に供給する空気供給部材と、を備え、前記空気清浄部は、吸気口と、排気口を有する空気吸引機と、該排気口と連通する空気通路と、前記排気口又は前記空気通路の入口に設けられ、前記電源部に接続されるコロナ放電極および対向電極と、前記コロナ放電極および前記対向電極より下流の位置で、前記空気通路に設けられるフィルタと、前記空気吸引機と前記空気通路と前記コロナ放電極と前記対向電極と前記フィルタを収容するケースと、を備える空気清浄装置である。
【0011】
これによれば、コロナ放電の発生位置と使用者の口や鼻の位置が遠いため、コロナ放電により発生したオゾンが拡散されることによりオゾンの吸い込みを抑制でき、息苦しさも解消できる。また、空気清浄部を胴体に装着したり机上に載置できるため頭部にかかる重量が軽くなり、使用感が良くなる。また、大容量のバッテリーや、大型のフィルタが使用でき、長時間の利用が可能になる。さらに、頭部に空気吸引機が存在しないため、ファンの音が低減され、汚染されたフィルタが顔の近くになく使用者に安心感を与えることができる、電装品が附属されていないためにフェイスシールドの洗浄が容易になる等のメリットがある。
【0012】
前記コロナ放電極は空気の流れ方向に設けられ、前記空気の流れを囲むように対向電極が設けられ、前記コロナ放電極の極性がプラス又はマイナスであり、前記対向電極の極性が前記コロナ放電極の極性以外の極性であることが好ましい。
【0013】
これによれば、スパークを防止し、集塵効率を高くできる。
【0014】
また、前記コロナ放電極が導電性の繊維束であり、前記対向電極が環状の導電性層であり、前記コロナ放電極の回りに所定距離を置いて設置されることが好ましい。
【0015】
これによれば、スパークを防止し、微粒子の帯電効率や捕集効率を高くできる。
【0016】
前記コロナ放電極の先端部が前記対向電極の内部空間に配置されることが好ましい。
【0017】
これによれば、スパークを防止し、微粒子の捕集効率を高める。
【0018】
前記コロナ放電極の長さが3~6mmであり、該コロナ放電極の先端部が前記対向電極の内部空間の入口から2mm以上進入した位置から、当該内部空間の出口までの範囲に配置されることが好ましい。
【0019】
前記コロナ放電極及び対向電極が、前記排出口の内部空間に設けられることが好ましい。
【0020】
これによれば、装置をコンパクトにできる。
【0021】
前記フィルタが取り外し可能な、帯電性の不織布であり、前記排気口から横方向に流れた空気が上下方向に流れを変え、前記フィルタに対して上下方向に通過することが好ましい。
【0022】
これによれば、均一な流れをフィルタに与えることができ、捕集効率が高くなる。また、装置をコンパクトにできる。
【0023】
前記電源部から前記コロナ放電極に供給される電圧が3.0kV~4.0kVであることが好ましい。
【0024】
これによれば、コロナ放電により発生する電流と微粒子の捕集率とのバランスが良い。
【0025】
前記フィルタに供給される空気の流量が30~50リットル/分であることが好ましい。
【0026】
これによれば、フェイスシールド内に、使用者の呼吸に必要な風量を供給できる。
【0027】
前記ケースが曲面を有するとともに横方向に長く形成され、上下に分割された、脱着可能な第1ケースと、第2ケースを有し、前記第2ケースに前記フェイスシールドが脱着可能に取り付けられることが好ましい。
【0028】
前記第1ケースに前記空気吸引機及び電源部を設け、前記第2ケースに前記フィルタを設けることが好ましい。
【0029】
これによれば、ケース内の空気吸引機等のメンテナンスや、フィルタの交換が容易である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、呼吸に必要な空気量を供給しながら、使用者のオゾンの吸い込みを抑制することができ、息苦しさを解消し、安全な空気清浄装置が提供できる。また、接地電極に囲まれる空間にコロナ放電部があるため、コロナ放電による空気清浄効率が向上される。また、本発明の構造により、コンパクトな空気清浄装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態の空気清浄装置1の斜視図ある。
【
図2】第1実施形態の空気清浄装置1の分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態における、フェイスシールド8および第2ケース62を取外した状態の空気清浄装置1の底面図である。
【
図4】第1実施形態のフェイスシールド8、第2ケース62、第1ケース61の下蓋部65を取外した状態の空気清浄装置1の底面図である。
【
図5】第1実施形態の空気吸引機3の排気口32の斜視図である。
【
図6】第1実施形態のコロナ放電極41と対向電極42の構成を説明する図である。
【
図7】第1実施形態の電気回路を説明する図である。
【
図8】第1実施形態の空気清浄装置1を説明する図である。
【
図9】第1実施形態の空気清浄装置1の側面図である。
【
図10】第2実施形態の空気清浄装置101を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1実施形態における空気清浄装置1について、
図1~8を参照して説明する。まず、本実施形態の空気清浄装置1は、
図8の概念図に説明されるように、使用者の頭部にある空気吸引機3が周囲の空気を吸引し、その空気中にあるウイルス、塵、花粉などの微粒子をコロナ放電により帯電し、帯電された微粒子をフィルタ9により捕集し、清浄化された空気をフェイスシールド8内に下方向に流すものである。
【0033】
図1~8に示されるように、空気清浄装置1は、フェイスシールド8と、フェイスシールド8の上部に設けられる空気清浄部2と、空気清浄部2を頭部に装脱可能なバンド部7を備える。空気清浄部2は、空気吸引機3と、空気吸引機3から排出された空気が通過する空気通路Lと、空気吸引機3の排気口32に設けられるコロナ放電極41および対向電極(接地電極)42と、コロナ放電極41および対向電極42に接続され、高電圧を印加するための電源部5と、コロナ放電極41の下流の空気通路Lに設けられるフィルタ9と、これらの空気吸引機3、コロナ放電極41、対向電極42、電源部5、空気通路L、フィルタ9を収容するケース6を備える。なお、
図2では、フィルタ9を取外した状態である。
【0034】
ケース6は、
図1、2に示されるように、前面、背面が曲面を有するとともに横方向に長く形成され、第1ケース61と第2ケース62に上下に分割可能な構造である。第1ケース61は、
図2~4に示されるように、ケース6の上側を構成し、下面、前面、背面、側面、上面を備える箱型形状である。第1ケース61には、空気吸引機3、電源部5が収納されているが、空気吸引機3の排気口32は第1ケース61から突出し、第2ケース62内の空気通路Lに連通される。第1ケース61は、本体64と下蓋部65に分割可能であり、内部に収容される部品のメンテナンスや交換が可能である。
【0035】
第2ケース62は、ケース6の下側を構成し、下面、前面、背面、側面、フェイスシールド取付部を備え、第1ケース61の下方に、係合爪により着脱可能に取り付けられる。空気通路Lの下流端となる第2ケース62の下面66は網形状であり、下面66上にフィルタ9が着脱可能に載置される(
図8参照)。
【0036】
空気吸引機3は、ブロアーであり、
図2に示されるように、前方から空気を吸い込む吸気口31と横方向に空気を排出する排気口32を有する。第1ケース61の前面かつ吸気口31の前側には、空気吸い込み口63の上部が形成され、第2ケース62の前面には空気吸い込み口63の下部が形成される。第1ケース61の下蓋部65は、排気口32が下方に突出するための孔を有する構造である。空気吸引機3は、吸気口31からの吸気方向に対して直角方向となる横方向に排気口32から空気を排出する。そのため、空気吸引機3の排気口32は、第2ケース62内に配置される。空気吸引機3の排気口32の出口は空気通路Lの供給口となり、空気通路Lは、第2ケース62内に設けられ、横方向から下方向に空気の流れ方向を変える(
図8参照)。
【0037】
空気吸引機3は、フィルタ9の通過による圧力損失を考慮すると、ブロアーが好ましいが、それに限定されず、軸流ファン等でも実現可能である。
【0038】
図5、
図8に示すように、空気吸引機3の排気口32には、コロナ放電極41を備える。排気口32は筒状であり、コロナ放電極41は、排気口32内の空気の流れ方向、すなわち、本実施形態では横方向に設けられる。また、排気口32の内壁面にはコーティングにより形成された対向電極(接地電極)42を備える。詳細は後述するように、コロナ放電極41と対向電極42間に、電源部5から高電圧を印加することにより、コロナ放電が起きる。
【0039】
コロナ放電極41は、ステンレス製等の、導電性繊維束であり、排気口32内の断面における略中央部に設けられることが好ましい。本実施形態では、対向電極42よりも上流側に、排気口32の左右の内壁面から空気の流れに対して直交し、水平方向に延びる導電性の支持部33を設け、その中央部にコロナ放電極41を固定テープにより固定している。支持部33は、本実施形態では水平方向に延びる梁であるが、それに限定されず、支柱等、コロナ放電極41を固定可能であればよい。
【0040】
前記支持部33よりも下流側で、排気口32の内壁面には、全周に亘ってカーボンを含む導電性層が塗布されており、それが対向電極42となる。対向電極42は、排気口32の内壁面に導電性層をコーティングすることにより形成されるため、製造が容易であり、また、装置が小型化できるというメリットがある。本実施形態では、排気口32および対向電極42は角筒形状であるが、円筒形状も好ましい。
【0041】
本実施形態においては、コロナ放電極41の極性はプラスであり、対向電極42の極性はマイナスである(正コロナ放電)。逆に、コロナ放電極41の極性をマイナスとし、対向電極42の極性をプラス(負コロナ放電)としても実現可能である。前者(正コロナ放電)の方が、オゾンの発生率が低いという利点があり、後者(負コロナ放電)の方が、集塵率が高いという利点がある。
【0042】
次に
図6を参照してコロナ放電極41と対向電極42の望ましい位置関係を説明する。コロナ放電極41である導電性の繊維束は、繊維径が5~25μmであり、繊維の長さaが3~6mmであることが好ましく、さらには4~5mmが好ましい。また、繊維束の先端は、対向電極42に囲まれる内部空間内に位置していることが好ましく、特に、内部空間入口から進入する距離cが2mm以上であることが好ましい。また、繊維束の先端は、対向電極に囲まれる内部空間の出口を超えない位置が好ましい。対向電極42の空気流れ方向の距離bは、10~20mmであることが好ましい。繊維束の先端が上記範囲内の位置にあることにより、コロナ放電により流れる電流値が高くなり、微粒子の捕集率も高い。また、内部空間入口付近に繊維束の先端が位置すると、スパークが起こる虞があるが、上記範囲内の位置にあることによってスパークの発生が防止される。
【0043】
図2、4、7に示されるように、電源部5は、バッテリー51と、バッテリー51に接続される充電モジュール52と、コロナ放電に必要な電圧をコロナ放電極41へ印加するための高電圧発生器53と、空気吸引機3に接続される昇圧回路54を備える。高電圧発生器53から出力される電圧は、正コロナ放電の場合は3.5~4.0kVが好ましく、負コロナ放電の場合は1~3kVが好ましい。充電モジュール52、高電圧発生器53、昇圧回路54には制御スイッチ55が接続されている。
図1に示されるように、制御スイッチ55は、第1ケース61の上面から突出しており、使用者が空気吸引機3の駆動とコロナ放電を開始したい時に操作するものである。充電モジュール52には、充電ポート56が設けられ、必要な時にmicro USB等が接続される。
【0044】
本実施形態では、電源部5はすべて第1ケース61内に収納されているが、それに限定されず、モバイルバッテリー等により電源部5の一部または全部をケース6の外部に設けることも可能である。
【0045】
コロナ放電極41は、空気吸引機3の排気口32内に配置されているが、これに限定するものではなく、空気通路Lの入口側にあってもよい。全ての空気が効率よくコロナ放電が発生する領域を通過するために、空気吸引機3の排気口32に配置されていることが好ましい。
【0046】
空気吸引機3の排気口32から排気される流量は、呼吸に必要な空気を継続的に送るために30~50L/分が好ましい。また、その後、フィルタ9を通過する際の、空気の平均流速は、10~60cm/秒であることが好ましく、20~30cm/秒がさらに好ましい。平均流速が上記範囲を超えるとレイノルズ数が上昇して乱流になり、清浄化されていない空気がフェイスシールド内に入り込み、使用者の鼻口周りに混入する可能性が高くなる。平均流速が上記範囲を下回ると、呼吸に必要な流量の確保が困難となる。
【0047】
清浄化されていない空気が周囲からフェイスシールド8内に流入するのを抑制するため、
図8、9に示すように、フェイスシールド8内面の左右端側に、上下方向に延びるスポンジ等の邪魔材81を設け、顔とフェイスシールド8間の隙間をなくすことが好ましい。また、フェイスシールド8の上部に横方向に延びるスポンジ等の邪魔材(図示無し)を設け、額とフェイスシールド8間の隙間をなくすことも好ましい。本実施形態では、供給される空気の流量が多く、また、コロナ放電部と口元との間の距離が長いため、オゾンが発生ししても拡散して濃度が薄まり、オゾンを吸い込む可能性が低くなるというメリットがあるため、安全性に寄与する。
【0048】
フィルタ9は、取外し、取替が可能な帯電性の不織布であり、第2ケース62の網状の下面66上に配置される。空気吸引機3から排出される空気中に存在し、コロナ放電により帯電した微粒子は、フィルタ9により効率的に捕集され、浄化された空気をフェイスシールド8の内部空間に下方向に流す。
【0049】
フェイスシールド8は着用者の顔面を透明板で覆うための透明な樹脂製の板材であり、上部左右端に設けられた接続部が第2ケース62の側面に設けられたフェイスシールド取付部と接続する。
【0050】
第1ケース61の前面左右端には、空気清浄部2を頭部に装脱可能なバンド部7が取り付けられる。バンド部7は、左右の第1部材71と、第1部材71、71の後端に取り付けられる第2部材72が接続される。バンド部7には、長さ調節のためのアジャスター73を備える。なお、
図1~4は、第1部材と第2部材が分離した状態の図である。
【0051】
次に、
図10を参照しながら、第2実施形態の空気清浄装置101について説明する。この空気清浄装置101は基本的には空気清浄装置1と同様の構成を備えるので、共通する説明は第1実施形態の図示及び記載を援用するとともに、相違点を説明する。各要素に付す符号は実施形態1の対応番号を100番台とする。
【0052】
第1実施形態では、空気清浄部2が使用者の頭部に固定されるのに対し、第2実施形態では、空気清浄部102および高電圧発生器153を含む電源部105が使用者の胴体に装着されるものであり、空気清浄部102にて清浄化された空気が、管167を介してフェイスシールド108の上部に設けられた空気供給部材168に送られ、空気供給部材168からフェイスシールド108内に清浄化された空気が送られることを特徴とする。
【0053】
空気清浄部102は空気吸引機103と、空気通路Lと、空気吸引機103の排気口132に設けられるコロナ放電極141および対向電極142、フィルタ109を備え、それらが電源部105とともにケース106内に収容され、図示しない装着部材により、胴体に装着可能となっている。なお、電源部105は、ケース106の外部に収容する形態も可能である。装着部材は、例えば、腰ベルトへの取り付け部、首に掛けられる首掛け部などが挙げられる。また、胴体に装着可能とする代わりに、机上に載置可能な形態とすれば、デスクワーク時に重さを感じずに使用できる。
【0054】
フィルタ109の下流側には管167が接続され、管167の下流端は空気供給部材168の側面に接続される。空気供給部材168はフェイスシールド108の上部に設けられ、使用者の頭部に固定される。空気供給部材168内には、管167から供給された空気が横方向に流入する。空気供給部材168の内部において空気は横方向から下方向に流れを変え、フェイスシールド108内に平均的に流れるような構造としている。空気供給部材168の下面に網状の空気分散部169を備えることも好ましい。また、第1実施形態と同様に、フェイスシールド108内面の左右端側に上下方向に延びるスポンジ等の邪魔材を設けたり、フェイスシールド108内面の上部に横方向に延びる邪魔材を設け、顔とフェイスシールド108間の隙間をなくすことも好ましい。
【0055】
第2実施形態の空気清浄装置101によれば、空気清浄部102を胴体に装着できるため、使用者の頭部にかかる重量がフェイスシールドのみの重さになるため軽くでき、また、大容量のバッテリーや大型のフィルタを使うことができるため、長時間使用が可能となるメリットがある。また、空気吸引機103によるファンの音が使用者の耳に届きにくいため、静寂性に寄与する。また、電装品がなく、丸ごとフェイスシールド108を洗うことができるため、メンテナンス性も向上できる。さらに、微粒子が溜まっているフィルタ109が使用者の顔の近くにないため、使用者に安心感を与えることができる。
【符号の説明】
【0056】
1、101 :空気清浄装置
2、102 :空気清浄部
3、103 :空気吸引機
31 :吸気口
32、132 :排気口
33 :支持部
41、141 :コロナ放電極
42、142 :対向電極(接地電極)
5、105 :電源部
51 :バッテリー
52 :充電モジュール
53、153 :高電圧発生器
54 :昇圧回路
55 :制御スイッチ
6、106 :ケース
7 :バンド部
8、108 :フェイスシールド
81 :邪魔材
9、109 :フィルタ
61 :第1ケース
62 :第2ケース
63 :空気吸い込み口
167 :管
168 :空気供給部材
L :空気通路