(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127930
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】シリンジポンプおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220825BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20220825BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61M5/168 516
A61M5/145 506
A61M5/168 550
A61M5/172
A61M5/168 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026176
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀典
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066EE14
4C066FF01
4C066HH05
4C066HH12
4C066QQ22
4C066QQ32
4C066QQ46
4C066QQ58
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】
【課題】シリンジポンプの利用状態に応じた態様で、流体経路の閉塞を検出するための技術を提供すること。
【解決手段】シリンジ10は、シリンジポンプ100に装着される。シリンジポンプ100は、シリンジ10の表示要素19から情報を読み取り、読み取った情報からシリンジIDを抽出し、抽出されたシリンジIDに関連付けられた警告用圧力値を取得する。シリンジポンプ100は、シリンジ10の内圧が取得した警告用圧力値以上であるときに警告を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの少なくとも一部を支持する支持部と、
前記支持部によって支持されている前記シリンジの表示要素から情報を取得する読取部と、
シリンジを特定する情報と警告用圧力値とを関連付ける1以上のデータベースにアクセスすることにより、前記読取部が読み取った情報によって特定されたシリンジに関連付けられた警告用圧力値を取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記支持部によって支持されているシリンジに充填されている薬剤の流路における圧力が、取得された前記警告用圧力値以上である場合に警告を出力する、シリンジポンプ。
【請求項2】
前記支持部によって支持されているシリンジのプランジャロッドを移動させる駆動部をさらに備え、
前記制御部は、前記圧力が前記警告用圧力値以上である場合に、前記駆動部を駆動させることにより、プランジャロッドを前記シリンジの内圧を低減させるように移動させる、請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記1以上のデータベースは、
シリンジに関する条件を、個々のシリンジに関連付ける第1データベースと、
警告用圧力値を、シリンジに関する条件に関連付ける第2データベースと、
を含み、
前記警告用圧力値を取得することは、
前記第1データベースにアクセスすることにより、前記読取部が読み取った情報によって特定されたシリンジに関連付けられたシリンジに関する条件を取得することと、
前記第2データベースにアクセスすることにより、取得された前記シリンジに関する条件に関連付けられた警告用圧力値を取得することと、
を含む、請求項1または請求項2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記シリンジに関する条件は、前記シリンジに充填された薬剤の種類、前記シリンジのガスケット部の形状もしくは素材の種類、前記シリンジのバレル内側のコーティング剤の種類、前記シリンジの滅菌方法、または、これらの組合せを含む、請求項3に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記制御部は、前記支持部がシリンジを支持している状態で前記読取部が読み取った情報によるシリンジの特定ができない場合には、エラーを報知する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
コンピュータによって実行されることにより、前記コンピュータに、
シリンジポンプの支持部によって支持されているシリンジの表示要素から情報を取得するステップと、
シリンジを特定する情報と警告用圧力値とを関連付ける1以上のデータベースにアクセスすることにより、読み取られた前記情報によって特定されたシリンジに関連付けられた警告用圧力値を取得するステップと、
前記支持部によって支持されているシリンジに充填されている薬剤の流路における圧力が、取得された前記警告用圧力値以上である場合に警告を出力するステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤投与等に利用されるシリンジポンプにおける流体経路の閉塞の検出に関する技術が種々提案されている。たとえば、特表2007-528236号公報(特許文献1)は、種々のパラメータを格納するシリンジポンプを開示する。特許文献1では、種々のパラメータは閉塞検出時間を含み、流体経路の圧力における所与の傾斜が閉塞検出時間以上保持されると、シリンジポンプはラインの閉塞のアラームを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンジポンプにおいて、閉塞のアラームを発生すべき状況は、シリンジごとの摺動抵抗など、シリンジポンプの利用状態に応じて設定されるべきであるところ、特許文献1ではその点についての検討はなされていない。
【0005】
本開示は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、シリンジポンプの利用状態に応じた態様で、流体経路の閉塞を検出するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、シリンジの少なくとも一部を支持する支持部と、支持部によって支持されているシリンジの表示要素から情報を取得する読取部と、シリンジを特定する情報と警告用圧力値とを関連付ける1以上のデータベースにアクセスすることにより、読取部が読み取った情報によって特定されたシリンジに関連付けられた警告用圧力値を取得する制御部と、を備え、制御部は、支持部によって支持されているシリンジに充填されている薬剤の流路における圧力が、取得された警告用圧力値以上である場合に警告を出力する、シリンジポンプが提供される。
【0007】
シリンジポンプは、シリンジのプランジャロッドを移動させる駆動部をさらに備えていてもよい。制御部は、圧力が警告用圧力値以上である場合に、駆動部を駆動させることにより、プランジャロッドをシリンジの内圧を低減させるように移動させてもよい。
【0008】
1以上のデータベースは、シリンジに関する条件を、個々のシリンジに関連付ける第1データベースと、警告用圧力値を、シリンジに関する条件に関連付ける第2データベースと、を含んでいてもよい。警告用圧力値を取得することは、第1データベースにアクセスすることにより、読取部が読み取った情報によって特定されたシリンジに関連付けられたシリンジに関する条件を取得することと、第2データベースにアクセスすることにより、取得されたシリンジに関する条件に関連付けられた警告用圧力値を取得することと、を含んでいてもよい。
【0009】
シリンジに関する条件は、シリンジに充填された薬剤の種類、シリンジのガスケット部の形状もしくは素材の種類、シリンジのバレル内側のコーティング剤の種類、シリンジの滅菌方法、または、これらの組合せを含んでいてもよい。
【0010】
制御部は、支持部がシリンジを支持している状態で読取部が読み取った情報によるシリンジの特定ができない場合には、エラーを報知してもよい。
【0011】
本開示の他の局面に従うと、コンピュータによって実行されることにより、コンピュータに、シリンジポンプの支持部によって支持されているシリンジの表示要素から情報を取得するステップと、シリンジを特定する情報と警告用圧力値とを関連付ける1以上のデータベースにアクセスすることにより、読み取られた情報によって特定されたシリンジに関連付けられた警告用圧力値を取得するステップと、支持部によって支持されているシリンジに充填されている薬剤の流路における圧力が、取得された警告用圧力値以上である場合に警告を出力するステップと、を実行させる、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、シリンジの表示要素から当該シリンジを特定する情報が読み取られ、さらに、当該情報に関連付けられた警告用圧力値が取得される。そして、シリンジの内圧が、取得された警告用圧力値以上になると、警告が出力される。これにより、シリンジごとに設定された警告用圧力値に基づいて、シリンジ内の薬剤の流体経路の閉塞が検出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】シリンジポンプ、および、シリンジポンプに取り付けられるシリンジの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1のシリンジポンプを矢印II方向から見た平面図である。
【
図3】
図1のシリンジポンプにシリンジが装着された状態を示す図である。
【
図4】シリンジポンプ100の制御系統を示すブロック図である。
【
図5】シリンジポンプ100がシリンジ10に充填された薬剤の流体経路における閉塞の検出方法を説明するための図である。
【
図6】警告用圧力値のデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】シリンジ10に充填された薬剤の流体経路の閉塞に関する警告を出力するための処理のフローチャートである。
【
図8】ステップS20における駆動部120の移動方向を説明するための図である。
【
図9】シリンジポンプ100と外部のコンピュータとの接続態様を説明するための図である。
【
図10】第1データベースのデータ構造を表す図である。
【
図11】第2データベースのデータ構造を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ、シリンジポンプの一実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0015】
[シリンジポンプの外観構成]
図1は、シリンジポンプ、および、シリンジポンプに取り付けられるシリンジの外観を示す斜視図である。
図2は、
図1のシリンジポンプを矢印II方向から見た平面図である。
図3は、
図1のシリンジポンプにシリンジが装着された状態を示す図である。
【0016】
図1に示すように、シリンジポンプ100は、シリンジ10に適用されるシリンジポンプである。シリンジ10は、バレル20およびプランジャロッド30を含む。
【0017】
バレル20は、略円筒状の外形を有している。バレル20の先端に注液口22が設けられている。バレル20の後端に第1フランジ21が設けられている。バレル20は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の樹脂にて構成されている。バレル20の内周面に、シリコーンオイルなどの潤滑油が塗布されていてもよい。バレル20の内側に、薬液が充填される。
【0018】
バレル20には、シリンジ10の固有の情報を表す表示要素19を含む。表示要素19は、たとえば、RFID(radio frequency identifier)タグなどのIC(integrated circuit)チップであってもよいし、QR(quick response)コードを印刷されたラベルであってもよい。表示要素19は、バレル20に対して貼り付けられるものであってもよいし、バレル20の一部として構成されていてもよい。
【0019】
プランジャロッド30は、バレル20の内側に嵌入され、後端に第2フランジ31を有する。プランジャロッド30の先端側には、バレル20の内周面と摺接するガスケット部32が設けられている。ガスケット部32は、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマなどの弾性体で構成されている。プランジャロッド30におけるガスケット部32以外の部分は、ポリプロピレンなどの樹脂にて構成されている。
【0020】
図1および
図2に示すように、シリンジポンプ100は、バレル受け部110と、溝部111と、駆動部120と、操作パネル180とを備える。
【0021】
バレル受け部110には、バレル20が載置される。バレル受け部110は、バレル20の外周面の下側部分と接する凹面部を有している。溝部111は、バレル受け部110の後端に設けられている。溝部111には、第1フランジ21が挿入される。バレル受け部110および溝部111は、一体成形によって形成されている。
【0022】
駆動部120は、第2フランジ31を押圧する押圧面121、および、第2フランジ31を押圧面121と挟持して保持する可動爪部122を有している。可動爪部122は、ばねなどの付勢機構により押圧面121に接近する方向に付勢されている。駆動部120は、バレル20に向かってプランジャロッド30を移動可能に保持する。駆動部120によって、プランジャロッド30がバレル20に向かって移動させられることにより、バレル20内の薬液が注液口22からチューブ内に注入される。
【0023】
駆動部120は、プランジャロッド30を着脱する際に、プランジャロッド30の延在方向における、駆動部120自体の位置および可動爪部122の位置を、手動で調整するためのクラッチレバー123をさらに有している。具体的には、クラッチレバー123を一方向に回動させることにより、駆動部120は手動で移動することが規制されるロック状態になるとともに、可動爪部122は押圧面121側に付勢された状態で維持される。クラッチレバー123を他方向に回動させることにより、駆動部120はアンロック状態になるとともに、可動爪部122は付勢力に抗して押圧面121から離間するように移動させられる。
【0024】
なお、駆動部120の構成は上記に限られず、駆動部120は、第2フランジ31を押圧する押圧面121、および、第2フランジ31を押圧面121との間に収容する固定爪部を有していてもよい。
【0025】
本実施形態においては、シリンジポンプ100は、バレル保持部112をさらに備えている。バレル保持部112は、バレル受け部110の上方において上下方向に回動するように回動軸113に接続されている。バレル保持部112は、回動して下りた状態において、バレル受け部110に載置されているバレル20を保持する。本実施形態において、バレル受け部110は、シリンジ10の少なくとも一部を支持する支持部の一例であり、バレル保持部112は、当該支持部の他の例である。なお、バレル保持部112は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0026】
操作パネル180は、シリンジポンプ100の状態などを表すディスプレイと、ユーザ(たとえば、医療従事者)によって操作される操作ボタンとを含む。
【0027】
シリンジポンプ100は、リーダライター190をさらに含む。リーダライター190は、シリンジポンプ100に装着された状態にあるシリンジ10の表示要素19に対向する位置の情報を読み取るように配置されている。
【0028】
主に
図3に示されるように、シリンジ10の注液口22は管901に接続され、管901と管902との間にはトランスデューサ200が配置され、管902と管903との間には三方活栓300が配置され、管903は患者に穿刺される針(図示略)に向けて延びる。
【0029】
[シリンジポンプのブロック構成]
図4は、シリンジポンプ100の制御系統を示すブロック図である。
図4に示すように、シリンジポンプ100の動作を制御する制御ユニット150を含む。制御ユニット150は、シリンジポンプ100の動作を制御するためのプログラムを実行するプロセッサ151と、当該プログラムを含む種々のデータを格納するためのメモリ152とを含む。なお、シリンジポンプ100において、動作制御のための処理は、ASIC(application specific integrated circuit)またはFPGA(field-programmable gate array)などの専用回路によって実行されてもよい。
【0030】
制御ユニット150は、駆動部120、および、操作パネル180のディスプレイの動作を制御する。駆動部120は、駆動部120自体を移動させるためのモータを含んでいてもよく、制御ユニット150は、当該モータの動作を制御してもよい。また、制御ユニット150は、操作パネル180の操作ボタンが操作されたことに応じて、操作されたボタンの種類に応じた動作を実行する。
【0031】
シリンジポンプ100は、報知動作を実行する報知部160をさらに含む。報知部160は、警告用のランプであってもよいし、音声を出力するスピーカであってもよいし、これらの組合せであってもよい。制御ユニット150は、報知部160を介して、警告などの情報を報知する。
【0032】
シリンジポンプ100は、起動スイッチ170をさらに含む。制御ユニット150は、起動スイッチ170がユーザに操作されたことに応じて、シリンジポンプ100の動作のONとOFFを切り替える。
【0033】
制御ユニット150は、リーダライター190によって読み出された情報を取得し、当該情報から、シリンジポンプ100に装着されたシリンジ10のIDを取得する。
【0034】
制御ユニット150は、トランスデューサ200と接続されており、トランスデューサ200から出力される信号に基づいて、管901内の圧力、すなわち、シリンジ10の内圧を特定する。なお、トランスデューサ200は、圧力を計測するための手段の一例である。シリンジ10の内圧は他の種類のードウェア要素を用いて計測されてもよい。
【0035】
[シリンジポンプ100による閉塞検出]
図5は、シリンジポンプ100がシリンジ10に充填された薬剤の流体経路における閉塞の検出方法を説明するための図である。
図5に示されたグラフでは、縦軸はシリンジ10の内圧を表し、横軸はシリンジ10内の薬剤の搬送開始からの経過時間を表す。
【0036】
図5において、値Pxは、シリンジ10に対して設定されている警告用圧力値である。線L1は、シリンジ10の内圧の変化の一例を表す。
【0037】
線L1では、薬剤の搬送開始から時間Txが経過した時点で、内圧が値Pxに到達している。シリンジポンプ100は、内圧が値Pxに到達したことに応じて、報知部160において、流体経路が閉塞したことを表す警告を出力する。
【0038】
[警告用圧力値のデータベース]
図6は、警告用圧力値のデータベースのデータ構造の一例を示す図である。警告用圧力値のデータベースは、メモリ152に格納されていてもよいし、プロセッサ151がアクセス可能ないかなる記憶装置に格納されていてもよい。
【0039】
警告用圧力値のデータベースは、4種類の項目(シリンジID、薬剤名、容量、および警告用圧力値)を含む。シリンジIDは、各シリンジを識別する。薬剤名は、シリンジに充填された薬剤の名称を表す。容量は、シリンジに収容された薬剤の容量を表す。警告用圧力値は、シリンジ毎に予め設定された警告用の圧力の値を表す。なお、このデータベースには、他の項目として、ガスケットの形状、ガスケットの材質、滅菌方法を含んでいてもよい。
【0040】
図6の例では、シリンジID「1000101」で特定されるシリンジには、薬剤名「A」で特定される薬剤が容量「45ml」充填されている。そして、このシリンジに対して、警告用圧力値「Px」が設定されている。
【0041】
[処理の流れ]
図7は、シリンジ10に充填された薬剤の流体経路の閉塞に関する警告を出力するための処理のフローチャートである。シリンジポンプ100は、プロセッサ151に所与のプログラムを実行させることによって
図7の処理を実現してもよい。
【0042】
ステップS10にて、シリンジポンプ100は、薬剤の投与の開始が指示されたか否かを判断する。シリンジポンプ100は、操作パネル180内の所与の操作ボタンが操作されたことに応じて、薬剤の投与の開始が指示されたと判断してもよい。シリンジポンプ100は、薬剤の投与の開始が指示されたと判断するまでステップS10に制御を留め(ステップS10にてNO)、当該開始が指示されたと判断すると(ステップS10にてYES)、ステップS12へ制御を進める。
【0043】
なお、
図7に示された処理と並行して、シリンジポンプ100は、薬剤の投与の開始の指示に応じて、薬剤の投与するための処理を開始する。当該処理では、たとえば、薬剤の投与スケジュールに応じて、駆動部120が駆動される。これにより、シリンジ10に充填された薬剤が、当該スケジュールに応じて、管91等を介して患者に投与される。
【0044】
ステップS12にて、シリンジポンプ100は、リーダライター190から、シリンジ10の表示要素19から読み出した情報からシリンジIDを抽出する。
【0045】
ステップS14にて、シリンジポンプ100は、警告用圧力値のデータベースを参照することにより、ステップS12において取得したシリンジIDに関連付けられた警告用圧力値を取得する。
【0046】
ステップS16にて、シリンジポンプ100は、トランスデューサ200から信号を取得し、取得した信号からシリンジ10の内圧を特定する。
【0047】
ステップS18にて、シリンジポンプ100は、ステップS16において特定した内圧が、ステップS14において取得した警告用圧力値以上であるか否かを判断する。シリンジポンプ100は、内圧が警告用圧力値以上であれば(ステップS18にてYES)、ステップS20へ制御を進め、そうでなければ(ステップS18にてNO)、ステップS16へ制御を戻す。
【0048】
ステップS20にて、シリンジポンプ100は、報知部160で、流体経路の閉塞を表す警告を出力する。警告は、視覚的(ランプの点灯)であってもよいし、聴覚的(音声の出力)であってもよいし、これらの組合せであってもよいし、他の態様で出力されてもよい。
【0049】
ステップS22にて、シリンジポンプ100は、プランジャロッド30をバレル20内の圧力(シリンジ10の内圧)が低下する方向(後述する
図8参照)に所与の距離だけ移動させるように、駆動部120を駆動する。その後、シリンジポンプ100は、
図7の処理を終了させる。
【0050】
図8は、ステップS20における駆動部120の移動方向を説明するための図である。
図8には、ステップS20における駆動部120の移動方向として、矢印A1が示される。矢印A1は、バレル20およびガスケット部32によって構成される空間の容積を大きくする、プランジャロッド30の移動方向を表す。
【0051】
以上説明されたシリンジポンプ100は、シリンジ10の表示要素19から情報を読み取り、読み取った情報からシリンジIDを抽出し、抽出されたシリンジIDに関連付けられた警告用圧力値を取得し、そして、シリンジ10の内圧が取得した警告用圧力値以上であるときに警告を出力する。これにより、シリンジごとに摺動抵抗が異なる場合であっても、閉塞を警告するためのシリンジの内圧に関する閾値として、シリンジごとに適切な値が設定され得る。
【0052】
なお、シリンジポンプ100は、シリンジ10内の薬剤の投与の開始が指示されたときに(ステップS10にてYES)、表示要素19の読取の失敗などによってシリンジIDを抽出できなければ、報知部160でエラーを出力してもよい。
【0053】
[システム構成の変形例]
上記の説明では、
図7の処理はシリンジポンプ100に接続されたコンピュータによって実行されてもよい。
図9は、シリンジポンプ100と外部のコンピュータとの接続態様を説明するための図である。
【0054】
図9には、シリンジポンプ100の動作を制御する情報処理装置の一例として、コンピュータ500が示されている。コンピュータ500は、制御ユニット150(
図4)の代替物であり、プロセッサ501とメモリ502とを含む。コンピュータ500は、プロセッサ501に所与のプログラムを実行させることにより、
図7の処理を実現してもよい。コンピュータ500は、
図7の処理を実行する、ASICまたはFPGAなどの専用回路を含んでいてもよい。
【0055】
[警告用圧力値の取得方法の変形例]
警告用圧力値は、シリンジに関する条件(シリンジに充填された薬剤の種類、ガスケット部の形状もしくは素材の種類、バレル内側のコーティング剤の種類、シリンジの滅菌方法、または、これらの組合せなど)に関連付けられて設定されていてもよい。
【0056】
たとえば、病院内で、あるシリンジにある薬剤を充填した場合、ユーザは、データベースに当該シリンジの情報と薬剤の情報とを、シリンジIDに関連付けて登録する。シリンジポンプ100(またはコンピュータ500)は、シリンジポンプ100に装着されたシリンジ10のシリンジIDから、当該シリンジ10に関する条件(充填された薬剤の種類、ガスケット部の形状もしくは素材の種類、バレル内側のコーティング剤の種類、シリンジ10の滅菌方法、または、これらの組合せなど)を特定する。そして、シリンジポンプ100(またはコンピュータ500)は、特定された条件に関連付けられた警告用圧力値を取得し、シリンジ10の内圧が警告用圧力値以上であれば警告を出力する。シリンジポンプ100は、
図10に示されたような第1データベースにおいてシリンジIDに関連付けられた情報を取得することによって、シリンジ10に関する条件を取得してもよい。シリンジ10に関する条件は、シリンジ10に貼付された要素(ICタグなど)から特定されてもよく、シリンジポンプ100は、シリンジ10に貼付された要素から直接的に、シリンジ10に関する条件を取得してもよい。
【0057】
図10は、第1データベースのデータ構造を表す図である。
図11は、第2データベースのデータ構造を表す図である。第1データベースは、シリンジに関する条件を、個々のシリンジに関連付ける。第2データベースは、警告用圧力値を、シリンジに関する条件に関連付ける。第1データベースおよび第2データベースは、たとえばメモリ152に格納される。なお、第1データベースは病院内のサーバに格納され、第2データベースはメモリ152に格納されるなど、第1データベースと第2データベースは互いに異なる記憶装置に格納されていてもよい。
【0058】
図10に示されるように、第1データベースは、3つの項目(シリンジID、薬剤名、および、ガスケット部の素材)を含む。シリンジIDは、各シリンジを識別する。薬剤名は、各シリンジに充填された薬剤の名称を表す。ガスケット部の素材は、各シリンジのガスケット部の素材を表す。
【0059】
図10の例は、たとえば、S(1)で特定されるシリンジにM(1)で特定される薬剤が充填され、また、S(1)で特定されるシリンジのガスケット部の素材がG(1)であることを表す。
【0060】
図11に示されるように、第2データベースは、2つの項目(薬剤名およびガスケット部の素材)について、マトリクス状に、警告用圧力値を格納する。
図11の例では、たとえば、シリンジに充填された薬剤がM(1)であり、シリンジのガスケット部の素材がG(1)である場合、警告用圧力値として値P(1,1)が設定されている。
【0061】
一実現例では、医療従事者は、シリンジS(1)に、薬剤M(1)を充填したことを第1データベースに登録する。医療従事者は、さらに、シリンジS(1)のガスケット部の素材G(1)を第1データベースに登録する。医療従事者は、ガスケット部の素材G(1)の代わりに、シリンジS(1)の商品番号など、ガスケット部の素材を特定する他の種類の情報を登録してもよい。第1データベースを管理するコンピュータは、医療従事者から登録された情報からガスケット部の素材を特定し、特定されたガスケットの素材を第1データベースに登録してもよい。
【0062】
第1データベースは、病院内のサーバに格納される。S(1)、M(1)、および、G(1)が第1データベースに登録されたことに応じて、病院内のコンピュータは、シリンジS(1)のIDを含む表示要素を出力する。医療従事者は、出力された表示要素をシリンジS(1)に貼り付ける。
【0063】
シリンジS(1)がシリンジポンプ100に装着されると、シリンジポンプ100は、シリンジS(1)に貼り付けられた表示要素から情報を読み出し、読み出した情報から、シリンジS(1)のID、すなわち、「S(1)」を抽出する。そして、シリンジポンプ100は、抽出した「S(1)」を利用して、ステップS13として説明されたように、警告用圧力値を取得する。警告用圧力値の取得は、2つのステップを含む。
【0064】
1つ目のステップとして、シリンジポンプ100は、第1データベースを参照することにより、「S(1)」で特定されるシリンジに関連付けられた薬剤名(M(1))とガスケット部の素材(G(1))を取得する。
【0065】
2つ目のステップとして、シリンジポンプ100は、第2データベースを参照することにより、上記のように取得した薬剤名(M(1))とガスケット部の素材(G(1))の組合せに対応する警告用圧力値(P(1))を取得する。
【0066】
上述の例では、警告用圧力値を特定するために利用される、シリンジに関する条件として、2種類の情報の組合せ(シリンジに充填された薬剤名とシリンジのガスケット部の素材)が採用されている。すなわち、第1データベースは、シリンジIDに対して2種類の情報を関連付け、第2データベースは、当該2種類の情報に対応する警告用圧力値を規定する。なお、シリンジに関する条件は、1種類の情報であってもよいし、3種類以上の情報の組合せであってもよい。
【0067】
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
10 シリンジ、19 表示要素、20 バレル、30 プランジャロッド、32 ガスケット部、100 シリンジポンプ、110 バレル受け部、112 バレル保持部、120 駆動部、150 制御ユニット、200 トランスデューサ、300 三方活栓、500 コンピュータ、901,902,903 管。