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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127937
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/01 20060101AFI20220825BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220825BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220825BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20220825BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61M25/01
A61M25/00 530
A61M25/10
A61M25/14 514
A61B1/01 511
A61B1/01 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026186
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚実
【テーマコード(参考)】
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
4C161AA16
4C161CC06
4C161GG25
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB10
4C267CC25
(57)【要約】
【課題】バルーンを生体管口に効率的に挿入することができるカテーテルシステムを提供する。
【解決手段】カテーテルシステム10において、バルーン22は、先端方向への押込み力が内管78からバルーン22へと伝達されることでバルーン22の先端部22aが捲り返されながら外管24の先端開口36から前記先端方向に突出する。外管24は、管状の外管本体30と、外管本体30の先端部に設けられて先端開口36が形成された外管先端部38と、外管先端部38から先端方向に突出した突起部40と、を有し、突起部40は、外管先端部38に一体成形されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する外管と、前記外管に対して前記外管の軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔に配設された内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンとを有するバルーンカテーテルと、
前記バルーンの内腔に挿入される線状の挿入部を備えた内視鏡と、を備えるカテーテルシステムであって、
前記バルーンは、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口から前記先端方向に突出し、
前記外管は、
管状の外管本体と、
前記外管本体の先端部に設けられて前記先端開口が形成された外管先端部と、
前記外管先端部から前記先端方向に突出した突起部と、を有し、
前記突起部は、前記外管先端部に一体成形されている、カテーテルシステム。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルシステムであって、
前記挿入部の先端面には、当該挿入部の先端方向を撮像するための撮像部が設けられ、
前記挿入部を前記先端開口又は当該先端開口の近傍に位置させた状態で、前記挿入部の先端面と前記突起部とのなす角度は、40°以上150°以下である、カテーテルシステム。
【請求項3】
請求項2記載のカテーテルシステムであって、
前記先端開口の正面視で、前記外管先端部を、前記先端開口の外周のうち最も前記外管の基端方向に位置する点を通る接線よりも前記先端方向に位置する第1領域と、前記接線よりも前記基端方向に位置する第2領域とに分けた場合、
前記突起部は、前記第1領域に位置し、
前記なす角度は、55°以上105°以下である、カテーテルシステム。
【請求項4】
請求項2記載のカテーテルシステムであって、
前記先端開口の正面視で、前記外管先端部を、前記先端開口の外周のうち最も前記外管の基端方向に位置する点を通る接線よりも前記先端方向に位置する第1領域と、前記接線よりも前記基端方向に位置する第2領域とに分けた場合、
前記突起部は、前記第2領域に位置し、
前記なす角度は、100°以上130°以下である、カテーテルシステム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のカテーテルシステムであって、
前記第1領域の肉厚は、前記第2領域の肉厚よりも厚い、カテーテルシステム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のカテーテルシステムであって、
前記突起部の突出長は、1.5mm以上60mm以下である、カテーテルシステム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のカテーテルシステムであって、
前記外管の外周面に対して前記外管の前記軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに前記外管を直線形状に保持するためのスライダを備え、
前記外管本体の先端部は、前記スライダを前記外管に対して基端方向に移動させた状態で前記スライダから露出するとともに前記軸線方向に円弧状に湾曲する、カテーテルシステム。
【請求項8】
請求項7記載のカテーテルシステムであって、
前記スライダは、
管状のスライダ本体と、
前記スライダ本体の先端部から前記先端方向に向かって突出するカバー部と、を有し、
前記カバー部は、前記スライダを前記外管に対して前記先端方向に最も移動させた前記スライダの初期状態で前記外管先端部の先端よりも前記先端方向に位置する、カテーテルシステム。
【請求項9】
請求項8記載のカテーテルシステムであって、
前記カバー部は、前記スライダの前記初期状態で前記突起部と対向している、カテーテルシステム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のカテーテルシステムであって、
前記突起部は、複数設けられている、カテーテルシステム。
【請求項11】
請求項10記載のカテーテルシステムであって、
前記突起部は、前記外管先端部の周方向に等間隔に設けられている、カテーテルシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のカテーテルシステムであって、
前記突起部は、当該突起部が前記先端開口に挿入されるように弾性変形した状態で前記外管先端部の内面に係止可能であり、
前記突起部が前記挿入部によって前記先端方向に押されることによって前記突起部の前記外管先端部の前記内面に対する係止が解除される、カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、卵管の病変部(狭窄部又は閉塞部)を治療するためのバルーンカテーテルと、卵管鏡(内視鏡)とを備えたカテーテルシステムが開示されている。バルーンカテーテルは、可撓性を有する外管と、外管に対して外管の軸線方向に移動可能なように外管の内腔に配設された内管と、外管の先端部と内管の先端部とを互いに繋ぐとともに外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンとを備える。
【0003】
卵管鏡卵管形成術において、バルーンは、膨らんだ状態のバルーンを卵管鏡の線状の挿入部で支持した状態で、先端方向への押込み力が内管からバルーンへと伝達されることでバルーンの先端部が捲り返されながら外管の先端開口から突出して卵管口に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3921108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バルーンの内側に挿入される卵管鏡は、子宮内を観察する子宮鏡に比べて、視野が狭く焦点距離が短い。また、卵管鏡の撮像画像は、子宮鏡の撮像画像よりも暗く低画質である。そのため、ユーザは、卵管鏡の撮像画像に基づいて卵管口を見つけることが容易でなく、バルーンを卵管口(生体管口)に効率的に挿入することができないことがある。
【0006】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、バルーンを生体管口に効率的に挿入することができるカテーテルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、可撓性を有する外管と、前記外管に対して前記外管の軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔に配設された内管と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーンとを有するバルーンカテーテルと、前記バルーンの内腔に挿入される線状の挿入部を備えた内視鏡と、を備えるカテーテルシステムであって、前記バルーンは、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口から前記先端方向に突出し、前記外管は、管状の外管本体と、前記外管本体の先端部に設けられて前記先端開口が形成された外管先端部と、前記外管先端部から前記先端方向に突出した突起部と、を有し、前記突起部は、前記外管先端部に一体成形されている、カテーテルシステムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルーンの挿入対象部位に突起部を挿入するとともに当該突起部の見え方を内視鏡の撮像画像(内視鏡画像)で確認することにより、当該挿入対象部位が生体管口であるか単なる凹部であるかを容易に区別することができる。これにより、ユーザは、内視鏡画像に基づいて生体管口(例えば、卵管口)を容易に見つけることができる。また、突起部を生体管口に挿入することにより、生体管口に対して外管の先端開口を位置決めすることができる。従って、バルーンを生体管口に効率的に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルシステムの概略構成図である。
図2図1のカテーテルシステムの一部省略縦断面図である。
図3図2の外管の一部省略拡大縦断面図である。
図4図3の外管を先端開口の正面から見た図である。
図5図5Aは、図2のバルーンカテーテルの先端側の斜視図であり、図5Bは、図5Aのバルーンカテーテルの先端側をカバー部側から見た平面図である。
図6】内視鏡の先端面と突起部とのなす角度を示す説明図である。
図7図1のバルーンカテーテルを用いた卵管鏡下卵管形成術の第1説明図である。
図8】前記卵管鏡下卵管形成術の第2説明図である。
図9】前記卵管鏡下卵管形成術の第3説明図である。
図10】前記卵管鏡下卵管形成術の第4説明図である。
図11】前記卵管鏡下卵管形成術の第5説明図である。
図12】前記卵管鏡下卵管形成術の第6説明図である。
図13】前記卵管鏡下卵管形成術の第7説明図である。
図14図14Aは、第1変形例に係るバルーンカテーテルの先端側の斜視図であり、図14Bは、図14Aのバルーンカテーテルの先端側をカバー部側から見た平面図である。
図15図15Aは、第2変形例に係るバルーンカテーテルの先端側の斜視図であり、図15Bは、図15Aのバルーンカテーテルの先端側をカバー部側から見た平面図である。
図16】第3変形例に係るバルーンカテーテルの先端側の斜視図である。
図17図17Aは、図16のバルーンカテーテルにおいて突起部の突出端部を先端開口に挿入した状態を示す斜視説明図であり、図17Bは、突起部の突出端部を先端開口から先端方向に露出させる動作を示した断面説明図である。
図18図18Aは、第4変形例に係るバルーンカテーテルの先端側の斜視図であり、図18Bは、図18Aのバルーンカテーテルにおいて内視鏡の先端面と突起部とのなす角度を示す説明図である。
図19】第5変形例に係るバルーンカテーテルの先端側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るカテーテルシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るカテーテルシステム10は、バルーンカテーテル12と、医療機器である内視鏡14(卵管鏡)とを備える。図7図13に示すように、カテーテルシステム10は、例えば、卵管202の病変部204(狭窄部又は閉塞部等)を治療する卵管鏡下卵管形成術に用いられる。ただし、カテーテルシステム10は、卵管202以外のもの、例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、大腸、その他の臓器等の生体管内の病変部を治療するためのものでもよい。
【0012】
カテーテルシステム10に関する以下の説明では、図1中の左側(矢印X1方向)を「先端」、図1中の右側(矢印X2方向)を「基端」という。
【0013】
図1及び図2に示すように、バルーンカテーテル12は、外側カテーテル16と、外側カテーテル16に設けられたスライダ18と、外側カテーテル16内に挿入された内側カテーテル20と、バルーン22とを備える。
【0014】
外側カテーテル16は、可撓性を有する長尺な外管24と、外管24の基端部に設けられた外管ハブ26(外管操作部)と、外管ハブ26に設けられた固定ねじ28とを有する。外管24の全長は、100mm以上1500mm以下に設定するのが好ましく、200mm以上1000mm以下に設定するのがより好ましい。
【0015】
図2において、外管24は、外管本体30と、外管本体30の先端部に設けられた先端部材32(先端チップ)とを含む。外管本体30及び先端部材32のそれぞれの構成材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、エラストマー樹脂(例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂エラストマー、ポリウレタンエラストマー等)、可撓性を有する高分子材料(ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム等)、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。なお、外管本体30と先端部材32は、一体成形されていてもよい。
【0016】
外管本体30には、先端から基端まで貫通した第1内腔34が形成されている。外管本体30の先端部は、軸線方向に円弧状に湾曲するように形状付けられている。外管本体30は、全長に亘って概ね一定の外径を有する。
【0017】
図2図4に示すように、先端部材32は、外管本体30の先端部に設けられて先端開口36が形成された外管先端部38と、外管先端部38から先端方向に突出した突起部40とを有する。先端部材32は、一体成形品である。換言すれば、突起部40は、外管先端部38に一体成形されている。
【0018】
外管先端部38の外周面は、生体組織の損傷を防止するために湾曲している。外管先端部38には、バルーン22を外管先端部38よりも先端方向(矢印X1方向)に導出させるためのバルーン導出孔42が形成されている。
【0019】
バルーン導出孔42は、第1内腔34(後述する内腔94)に連通するとともに直線状に延在した第1孔44と、第1孔44に連通するとともに直線状に延在した第2孔46とを含む。第1孔44及び第2孔46のそれぞれは、円形状の横断面を有する。第1孔44の直径は、第2孔46の直径と同じである。第2孔46の延在方向は、第1孔44の延在方向に対して傾斜している。第2孔46は、外管24の先端開口36に連通している。先端開口36の外周に位置する壁部は、半円状の横断面を有する。すなわち、外管先端部38の先端面48は、横断面が円弧状に湾曲している。先端開口36は、第1孔44の第1中心線Laに対して交差する方向を向いている。
【0020】
先端開口36のうち第2孔46との境界部には、円形状の開口連通部50が設けられている。図4に示すように、外管先端部38は、先端開口36の第2中心線Lbの延在方向から見て(先端開口36の正面視で)、開口連通部50の外周のうち最も基端方向(矢印X2方向)に位置する点(基端点P1)を通る接線Lcよりも先端側に位置する第1領域52と、接線Lcよりも基端側に位置する第2領域54とを含む。第1領域52の肉厚は、第2領域54の肉厚よりも厚い(図2及び図3参照)。
【0021】
図2図4において、突起部40は、外管先端部38の第1領域52から先端方向に突出している。具体的に、突起部40は、第2中心線Lbに対して基端点P1とは反対側に位置している。図3において、突起部40の突出長L1(外管先端部38の先端面48から突起部40の突出端までの距離)は、1.5mm以上60mm以下に設定されている。突起部40の突出長L1は、2mm以上7mm以下の範囲に設定されるのが好ましい。突起部40は、可撓性を有している。つまり、突起部40は、卵管202や子宮の内面に接触した際に撓むように形成されている。突起部40の構成材料としては、上述した外管本体30の構成材料と同じものが挙げられる。
【0022】
突起部40は、突起部40の突出方向に向かって幅狭且つ薄肉に形成されている。突起部40は、先端開口36が位置する側の平坦な突起内面56と、突起内面56の反対側に位置する湾曲した突起外面60とを含む。
【0023】
突起内面56の基端は、外管先端部38の先端面48に連結している。突起外面60の基端は、外管先端部38の外周面に連結している。突起外面60の基端は、突起内面56の基端よりも基端方向(矢印X2方向)に位置している。突起外面60の基端(突起部40のうち最も幅広の部分)の幅は、先端開口36の直径よりも大きい。突起外面60の先端は、突起部40の突出端であり、突起内面56の先端よりも先端方向に位置している。
【0024】
図1及び図2に示すように、外管ハブ26は、硬質樹脂又は金属(ステンレス鋼、チタン、チタン合金等)によって構成されている。硬質樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0025】
図2において、外管ハブ26は、人手によって操作し易い大きさに中空状に形成されている。外管ハブ26には、外管24の第1内腔34に連通する第1空間64と、第1空間64の基端側に位置して内側カテーテル20が挿通する第1挿通孔66と、第1空間64にバルーン拡張流体を導入するための第1導入ポート部68とが設けられている。バルーン拡張流体は、図2に示すバルーン22を外管24の径方向内方に膨らませるためのものである。バルーン拡張流体は、例えば、生理食塩水である。外管ハブ26には、第1空間64内のバルーン拡張流体が第1挿通孔66を介して外部に漏出することを防止する第1シール部材70が設けられている。
【0026】
固定ねじ28は、外管ハブ26に対して内側カテーテル20を固定するためのものである。固定ねじ28の構成材料は、外管ハブ26と同様のものが挙げられる。
【0027】
図1及び図2に示すように、スライダ18は、外管本体30の外周面に対して外管24の軸線方向に移動可能(スライド可能)な状態で設けられている。スライダ18の全長は、外管24の全長よりも短い。スライダ18は、長尺な管状のスライダ本体72と、スライダ本体72の先端部から先端方向に向かって突出したカバー部74と、スライダ本体72の基端部に設けられたスライダハブ76(スライダ操作部)とを有する。スライダ本体72、カバー部74及びスライダハブ76の各々の構成材料としては、上述した外管ハブ26の構成材料と同様の材料が挙げられる。
【0028】
図1図2図5A及び図5Bに示すように、スライダ18を外管本体30に対して最も先端側(矢印X1方向)に移動させた状態(スライダ18の初期状態)で、外管本体30の先端側は、スライダ本体72の形状に沿って直線状に延在する。図6及び図8に示すように、スライダ18を外管本体30に対して最も基端側(矢印X2方向)に移動させた状態(スライダ18の基端を外管ハブ26の先端に位置させた状態)で、外管本体30の先端側は、スライダ本体72よりも先端側に露出するとともに円弧状に湾曲する。
【0029】
図1図2図5A及び図5Bにおいて、カバー部74は、スライダ18の初期状態で突起部40を覆っている。換言すれば、カバー部74の内面は、スライダ18の初期状態で突起部40の突起内面56に対向している。カバー部74は、スライダ18の初期状態で外管先端部38(先端開口36)を覆っている。カバー部74の突出端は、スライダ18の初期状態で、スライダ本体72の軸線方向において突起部40の突出端と同じ位置にある(図5B参照)。ただし、カバー部74の突出端は、スライダ18の初期状態で突起部40の突出端よりも先端側に位置してもよい。
【0030】
カバー部74は、縦断面及び横断面の各々が円弧状に形成されている。図5Bにおいて、カバー部74は、カバー部74の突出方向の中央部が最も幅広に形成されている。換言すれば、カバー部74は、カバー部74の突出方向の中央部の幅がカバー部74の両端部の幅よりも広い。カバー部74は、スライダ本体72からカバー部74の突出方向の中央部に向かって徐々に幅広に形成されるとともに当該中央部からカバー部74の突出端に向かって徐々に幅狭に形成されている。カバー部74の突出方向の中央部の幅は、スライダ本体72の外径よりも広い。カバー部74の大きさは、適宜設定可能である。
【0031】
図1及び図2において、スライダハブ76は、人手によって操作し易い大きさに環状に形成されている。内側カテーテル20は、長尺な内管78と、内管78の基端部に設けられた内管ハブ80(内管操作部)とを備える。内管78の全長は、100mm以上1500mm以下に設定するのが好ましく、200mm以上1000mm以下に設定するのがより好ましい。
【0032】
図2において、内管78の構成材料としては、比較的硬質な樹脂(例えば、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、PEEK樹脂等)又は金属(例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等)が挙げられる。内管78には、先端から基端まで貫通した第2内腔82が形成されている。
【0033】
内管78は、外管ハブ26を挿通するとともに外管本体30の第1内腔34に配設されている。内管78の先端は、外管本体30の先端よりも基端方向(矢印X2方向)に位置している。内管78の外周面と外管本体30の内周面との間には、バルーン拡張流体が流通する外側ルーメンSa(拡張用ルーメン)が設けられている。
【0034】
内管78の第2内腔82には、バルーン支持デバイスとしても機能する内視鏡14の長尺な挿入部100が挿入される。内管78の第2内腔82に挿入部100が挿入された状態で、内管78と挿入部100との間には、灌流液が流通する内側ルーメンSb(灌流用ルーメン)が形成される。灌流液は、例えば、生理食塩水である。
【0035】
内管ハブ80は、外管ハブ26と同様の材料によって構成される。内管ハブ80は、中空状に形成されている。内管ハブ80には、内管78の第2内腔82に連通する第2空間84と、第2空間84の基端側に位置して挿入部100が挿通する第2挿通孔86と、第2空間84に灌流液を導入するための第2導入ポート部88とが設けられている。内管ハブ80には、第2空間84内の灌流液が第2挿通孔86を介して外部に漏出することを防止する第2シール部材90が設けられている。
【0036】
バルーン22は、外管24の先端部と内管78の先端部とを互いに繋ぐ管状部材である。バルーン22は、バルーン拡張流体によって外管24の径方向内方に膨らむ。換言すれば、バルーン22は、径方向に弾性変形可能に形成されている。
【0037】
バルーン22の構成材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、エラストマー樹脂(ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、フッ素樹脂エラストマー、ポリウレタンエラストマー等)、可撓性を有する高分子材料(天然ゴム、エチレン-プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム等)、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイソプレン、ポリエステル等で構成するのが好ましい。
【0038】
バルーン22の一端部は、外管24の先端部(外管先端部38の基端部)に接着又は融着されている。換言すれば、バルーン22の一端部は、外管24のうちバルーン導出孔42の基端側の近傍に接着又は融着されている。具体的に、バルーン22の一端部は、外管本体30の先端と先端部材32との間に挟持されている。バルーン22の他端部は、バルーン固定部材92によって内管78の先端部の外周面に固定されている。なお、バルーン22の他端部は、内管78の内周面の先端部に接着又は融着されてもよい。バルーン22は、内視鏡14の挿入部100が挿入可能な内腔94を有する。バルーン22の外周面と外管本体30の内周面との間には、先端が閉じた袋状の外側空間Scが形成されている。
【0039】
図11に示すように、バルーン22は、内管78からバルーン22へと押込み力(先端方向の押込み力)が伝達されることで、バルーン22の先端部22aが捲り返されながら外管24の先端開口36から先端方向に突出する。この際、バルーン22は、外管24の先端開口36よりも矢印X1方向に突出した突出部分22bにおいて、径方向に二重に折り重なった部分が形成される。
【0040】
図2及び図6に示すように、内視鏡14は、卵管202(図8参照)を観察するための卵管鏡である。内視鏡14は、バルーンカテーテル12の内管78の第2内腔82とバルーン22の内腔94とに挿入された可撓性を有する挿入部100を備える。図6において、挿入部100の平坦な先端面104には、挿入部100の先端方向を撮像するための撮像部102が設けられている。
【0041】
内視鏡14の先端面104を先端開口36又は先端開口36の近傍に位置させた状態で、突起部40(突起内面56)と先端面104とのなす角度(以下、「第1角度θ1」という)は、40°以上150°以下に設定される。第1角度θ1が40°よりも小さい場合、先端開口36から先端方向にバルーン22を突出させる際に突起部40がバルーン22の進行の妨げになり、突起部40によってバルーン22が損傷するおそれがある。第1角度θ1が150°よりも大きい場合、内視鏡14の撮像画像(内視鏡画像)に表示される突起部40を視認し難くなるとともに突起部40が卵管202の内面に当たり易くなる(突起部40によって卵管202の内面を損傷し易くなる)。第1角度θ1は、55°以上105°以下がより好ましい。この場合、バルーン22の進行性と内視鏡画像に表示された突起部40の視認性とが一層向上する。
【0042】
次に、このように構成されるカテーテルシステム10を用いた卵管鏡下卵管形成術について説明する。
【0043】
卵管鏡下卵管形成術では、準備工程において、上述したカテーテルシステム10を準備する。そして、ユーザは、内管78を基端側(矢印X2方向)に完全に引いた状態で固定ねじ28によって固定しておく。さらに、スライダ18を初期状態にする。これにより、外管本体30の先端側がスライダ本体72によって真直ぐに延在するとともに突起部40がカバー部74によって覆われる。
【0044】
続いて、挿入工程において、ユーザは、バルーンカテーテル12を経頸管的に子宮底200まで挿入する。この際、カバー部74が突起部40を覆っているため、突起部40の突出端が子宮の内壁に当たること(突起部40によって子宮の内面が損傷すること)が抑えられる。
【0045】
そして、スライド工程において、スライダ18を外管24に対して外管24の基端方向に引き戻す。これにより、外管本体30の先端側は、スライダ18から露出して湾曲形状になる。また、カバー部74の突出端は、外管先端部38よりも基端側に位置する。換言すれば、突起部40が完全に露出する。この際、ユーザは、内視鏡14の挿入部100の先端面104を外管先端部38の先端開口36又は先端開口36の近傍に位置させる。これにより、内視鏡14は、外管24の先端開口36からバルーンカテーテル12の先端方向を撮像する。内視鏡14によって撮像された内視鏡画像は、図示しない表示部(ディスプレイ)に表示される。なお、内視鏡画像には、突起部40が表示される。
【0046】
その後、特定工程において、ユーザは、内視鏡画像に基づいてバルーン22を挿入する予定の挿入対象部位203を特定する。次いで、確認工程において、ユーザは、バルーンカテーテル12を操作して挿入対象部位203に突起部40を挿入する(図8参照)とともに突起部40の見え方を内視鏡画像で確認する。この際、ユーザは、例えば、突起部40が挿入対象部位203に向かって挿入されていく様子を内視鏡画像で確認した場合、挿入対象部位203が卵管口202aであると判断する。
【0047】
一方、ユーザは、例えば、突起部40が挿入対象部位203に挿入されないことを内視鏡画像で確認した場合、挿入対象部位203が卵管口202aではない(例えば、単なる凹部等である)と判断する。ユーザは、挿入対象部位203が卵管口202aではないと判断した場合、卵管口202aが見つかるまで上述した特定工程と確認工程とを繰り返し行う。
【0048】
確認工程において卵管口202aを確認すると、ユーザは、内視鏡14の挿入部100を外管24に対して所定距離だけ後退させた後で(図9に示す状態にした後で)、バルーン導出工程を行う。具体的に、バルーン導出工程では、図10に示すように、第1導入ポート部68にバルーン拡張流体を供給する(加圧工程)。そうすると、バルーン拡張流体は、第1導入ポート部68から外側ルーメンSaを介してバルーン22の外側空間Scに供給される。そのため、バルーン22は、外側空間Scに供給されたバルーン拡張流体によって径方向内方に押圧されて弾性変形する。つまり、バルーン22のうち挿入部100の外周側に位置する部位は、挿入部100の外周面に密着する。バルーン22のうち挿入部100の先端よりも先端側に位置する部位は、内面同士が互いに接触する。
【0049】
その後、ユーザは、固定ねじ28を緩めた状態で内管ハブ80を操作して内管78を外管24に対して前進させる(前進工程)。そうすると、図11に示すように、内管78によって先端方向に押されたバルーン22は、挿入部100とともに外管24に対して前進する。つまり、バルーン22は、押込み力が内管78からバルーン22に伝達されることにより、挿入部100とともに外管24の先端開口36から先端方向(矢印X1方向)に突出する。
【0050】
前進工程では、バルーン22の一端部が外管24の先端部に固定されているため、バルーン22は、その先端部22a(突出端部)が捲り返されながら前進する。すなわち、バルーン22は、その先端部22a(突出端部)で内面が外側を向くように捲り返される。そのため、バルーン22は、挿入部100の前進距離の半分の距離相当前進する。
【0051】
続いて、ユーザは、内視鏡画像に基づいてバルーン22が病変部204に到達したか否かを判断する。バルーン22が病変部204の手前に位置していた場合には、バルーン拡張流体を減圧するとともに第2導入ポート部88に灌流液(灌流用流体)を供給する(減圧工程)。これにより、内側ルーメンSbを介してバルーン22と内視鏡14の挿入部100との間に灌流液が流通する。次いで、ユーザは、図12に示すように、内視鏡14を所定距離だけ後退させる(後退工程)。その後、上述した加圧工程及び前進工程を再度行う。
【0052】
そして、図13に示すように、バルーン22が病変部204を完全に通過すると、バルーン22によって病変部204が押し広げられる。すなわち、卵管202の狭窄又は閉塞が改善される。
【0053】
病変部204を広げた後、ユーザは、バルーン拡張流体を減圧してからバルーンカテーテル12及び内視鏡14を抜去する(抜去工程)。なお、バルーンカテーテル12の抜去前に、第2導入ポート部88を介して灌流液を注入しつつ内管78を引いてバルーン22を後退させ、同時に内視鏡14をバルーン22の先端部22aに位置するよう操作することで、抜去工程の際に卵管202内を観察しながらバルーンカテーテル12を抜去してもよい。これにより、卵管鏡下卵管形成術が終了する。
【0054】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0055】
本実施形態によれば、バルーン22の挿入対象部位203に突起部40を挿入するとともに当該突起部40の見え方を内視鏡画像で確認することにより、当該挿入対象部位203が卵管口202a(生体管口)であるか単なる凹部であるかを容易に区別することができる。これにより、ユーザは、内視鏡画像に基づいて卵管口202aを容易に見つけることができる。また、突起部40を卵管口202aに挿入することにより、卵管口202aに対して外管24の先端開口36を位置決めすることができる。従って、バルーン22を卵管口202aに効率的に挿入することができる。
【0056】
挿入部100の先端面48には、挿入部100の先端方向を撮像するための撮像部102が設けられ、挿入部100を先端開口36又は当該先端開口36の近傍に位置させた状態で、挿入部100の先端面48と突起部40とのなす角度(第1角度θ1)は、40°以上150°以下である。
【0057】
このような構成によれば、突起部40がバルーン22の進行の妨げになることを抑えつつ内視鏡画像に突起部40を効率的に表示させることができる。
【0058】
先端開口36の正面視で、外管先端部38を、先端開口36の外周のうち最も外管24の基端方向に位置する基端点P1を通る接線Lcよりも先端方向に位置する第1領域52と、接線Lcよりも基端方向に位置する第2領域54とに分けた場合、突起部40は、第1領域52に位置している。第1角度θ1は、55°以上105°以下である。
【0059】
このような構成によれば、内視鏡画像に表示された突起部40の視認性を向上させることができる。
【0060】
第1領域52の肉厚は、第2領域54の肉厚よりも厚い。
【0061】
このような構成によれば、比較的肉厚の厚い第1領域52によって突起部40を支持することができる。
【0062】
突起部40の突出長は、1.5mm以上60mm以下である。
【0063】
このような構成によれば、突起部40の突出長が1.5mm以上であるため、バルーン22の挿入対象部位203に突起部40を挿入することにより、当該挿入対象部位203が卵管口202aであるか単なる凹部であるかを一層容易に区別することができる。また、突起部40の突出長が60mm以下であるため、バルーンカテーテル12を子宮底200まで挿入する際に突起部40が邪魔になることを抑えることができる。
【0064】
バルーンカテーテル12は、外管24の外周面に対して外管24の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに外管24を直線形状に保持するためのスライダ18を有する。外管本体30の先端部は、スライダ18を外管24に対して基端方向に移動させた状態でスライダ18から露出するとともに軸線方向に円弧状に湾曲する。
【0065】
このような構成によれば、スライダ18によって外管24を直線形状に保持することができるため、外管24を子宮底200まで容易に挿入することができる。また、外管24を子宮底200まで挿入した後でスライダ18を基端方向に移動させて外管本体30の先端部を軸線方向に円弧状に湾曲させることにより、先端開口36を卵管口202aの近傍に容易に配置することができる。
【0066】
スライダ18は、管状のスライダ本体72と、スライダ本体72の先端部から先端方向に向かって突出するカバー部74と、を有し、カバー部74は、スライダ18を外管24に対して先端方向に最も移動させたスライダ18の初期状態で外管先端部38の先端よりも先端方向に位置する。
【0067】
このような構成によれば、外管24を子宮底200に挿入する際に突起部40の突出端が子宮の内面に当たることをカバー部74によって抑えることができる。
【0068】
カバー部74は、スライダ18の初期状態で突起部40と対向している。
【0069】
このような構成によれば、突起部40の突出端が子宮の内面に当たることをカバー部74によって効果的に抑えることができる。
【0070】
(第1変形例)
次に、第1変形例に係るバルーンカテーテル12Aについて図14A及び図14Bを参照しながら説明する。なお、本変形例に係るバルーンカテーテル12Aにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0071】
図14A及び図14Bに示すように、バルーンカテーテル12Aは、外側カテーテル16aとスライダ18aとを備える。なお、バルーンカテーテル12Aにおいて、外側カテーテル16aとスライダ18a以外の構成は、上述したバルーンカテーテル12Aと同じである。
【0072】
外側カテーテル16aの外管24aは、外管本体30と先端部材32aとを含む。先端部材32aは、外管本体30の先端部に設けられて先端開口36が形成された外管先端部38aと、外管先端部38aから先端方向に突出した突起部40とを有する。外管先端部38aは、上述した外管先端部38の外周面の一部を切除したような形状を有する。
【0073】
具体的に、外管先端部38aの外周面は、横断面が半円状の第1湾曲面110と、第1湾曲面110の両側に位置する一対の平坦な側面112と、突起部40の基端が連結された第2湾曲面114(図14A参照)とを含む。第1湾曲面110は、外管先端部38aの第2領域54から第1領域52に亘って延在している。換言すれば、第1湾曲面110は、第2領域54の全体と第1領域52の一部に亘って延在している。第1湾曲面110は、外管本体30の外周面よりも径方向内方に位置している。各側面112は、外管24aの軸線方向(矢印X方向)に沿って延在している。
【0074】
スライダ18aは、スライダ本体72a、カバー部74a及びスライダハブ76(図1及び図2参照)を有する。スライダ本体72aの先端部は、スライダ本体72aの軸線方向に対して斜めに切り欠かれている。これにより、スライダ本体72aの先端は、円弧状(180°未満の円弧)に形成されている。カバー部74aは、スライダ本体72aの先端から先端方向に突出している。
【0075】
カバー部74aは、カバー部74aの突出方向に向かって幅広に形成されている。カバー部74aの先端は、先端方向に凸となる円弧形状を有する。カバー部74aは、スライダ18aの初期状態で突起部40を覆っている。換言すれば、カバー部74aの内面は、スライダ18aの初期状態で突起部40の突起内面56に対向している。カバー部74aの突出端は、スライダ18aの初期状態で、スライダ本体72aの軸線方向において突起部40の突出端と同じ位置にある。ただし、カバー部74aの突出端は、スライダ18aの初期状態で突起部40の突出端よりも先端側に位置してもよい。
【0076】
このようなバルーンカテーテル12Aにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同様の構成については同様の効果を奏する。
【0077】
(第2変形例)
次に、第2変形例に係るバルーンカテーテル12Bについて図15A及び図15Bを参照しながら説明する。なお、本変形例に係るバルーンカテーテル12Bにおいて、上述したバルーンカテーテル12、12Aと同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0078】
図15A及び図15Bに示すように、バルーンカテーテル12Bは、スライダ18bを備える。なお、バルーンカテーテル12Bにおいて、スライダ18b以外の構成は、第1変形例に係るバルーンカテーテル12Aと同じである。
【0079】
スライダ18bは、スライダ本体72、カバー部74b及びスライダハブ76(図1及び図2参照)を有する。カバー部74bは、スライダ本体72の先端から先端方向に突出している。カバー部74bは、スライダ本体72に対して一体成形されている。カバー部74bは、円筒部をその軸線に対して斜めに切り欠いたような形状を有する。これにより、カバー部74bの先端は、円弧状(180°未満の円弧)に形成されている。カバー部74bは、カバー部74bの突出方向に向かって幅狭に形成されている。
【0080】
カバー部74bは、スライダ18bの初期状態で突起部40を覆っている。換言すれば、カバー部74bの内面は、スライダ18bの初期状態で突起部40の突起内面56に対向している。カバー部74bの突出端は、スライダ18bの初期状態で、スライダ本体72の軸線方向において突起部40の突出端と同じ位置にある。ただし、カバー部74bの突出端は、スライダ18bの初期状態で突起部40の突出端よりも先端側に位置してもよい。
【0081】
このようなバルーンカテーテル12Bにおいて、上述したバルーンカテーテル12、12Aと同様の構成については同様の効果を奏する。
【0082】
(第3変形例)
次に、第3変形例に係るバルーンカテーテル12Cについて図16図17Bを参照しながら説明する。なお、本変形例に係るバルーンカテーテル12Cにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0083】
図16に示すように、バルーンカテーテル12Cは、外側カテーテル16bとスライダ18cとを備える。なお、バルーンカテーテル12Cにおいて、外側カテーテル16bとスライダ18c以外の構成は、上述したバルーンカテーテル12と同じである。
【0084】
外側カテーテル16bの外管24bは、外管本体30と先端部材32bとを含む。先端部材32bは、外管本体30の先端部に設けられて先端開口36が形成された外管先端部38と、外管先端部38から先端方向に突出した突起部40aとを有する。突起部40aは、外管先端部38の第1領域52から先端方向に突出している。突起部40aは、外管先端部38の先端面48のうち基端点P1から先端開口36の周方向に180°ずれた位置に設けられている。
【0085】
突起部40aの突出長は、上述した突起部40aの突出長L1と同様に設定される。突起部40aは、可撓性を有している。換言すれば、突起部40aは、弾性変形可能に形成されている。突起部40aの構成材料は、上述した外管本体30の構成材料と同じものが挙げられる。突起部40aは、円柱状に形成されている。突起部40aの突出端面は、円弧状の横断面を有する。内視鏡14の先端面48を先端開口36又は先端開口36の近傍に位置させた状態で、突起部40aと先端面48とのなす角度は、上述した第1角度θ1と同様に設定される。
【0086】
スライダ18cは、スライダ本体72及びスライダハブ76(図1及び図2参照)を有する。すなわち、スライダ18cは、上述したカバー部74を有しない。
【0087】
図17A及び図17Bに示すように、カテーテルシステム10の初期状態において、突起部40aは、突起部40aの突出端部が先端開口36に挿入されるように弾性変形した状態で外管先端部38の内面に係止される。すなわち、この状態で、突起部40aの突出端部は、突起部40aの復元力によって第2孔46を形成する壁面に押圧される。そのため、突起部40aは、その突出端部を先端開口36に挿入した湾曲形状に維持される。
【0088】
このようなカテーテルシステム10では、挿入工程において、突起部40aの突出端部を先端開口36に挿入した状態でバルーンカテーテル12Cを子宮底200まで挿入することができるため、突起部40aの突出端が子宮の内面に当たること(突起部40aによって子宮の内面が損傷すること)が抑えられる。また、挿入工程の後で、内視鏡14の挿入部100を外管24bに対して前進させることにより、挿入部100によって突起部40aを先端方向に押圧する。これにより、突起部40aの外管先端部38aの内面に対する係止が解除され、突起部40aは、その全長に亘って真直ぐな形状になる(図17B参照)。そのため、特定工程及び確認工程を確実に行うことができる。
【0089】
このようなバルーンカテーテル12Cにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同様の構成については同様の効果を奏する。
【0090】
突起部40aは、当該突起部40aが先端開口36に挿入されるように弾性変形した状態で外管先端部38aの内面に係止可能であり、突起部40aが挿入部100によって先端方向に押されることによって突起部40aの外管先端部38aの内面に対する係止が解除される。
【0091】
このような構成によれば、突起部40aを先端開口36に挿入した状態で外管24bを子宮底200まで挿入することができるため、突起部40aの突出端が子宮の内面に当たることを抑えることができる。また、外管24bを子宮底200まで挿入した後で、内視鏡14の挿入部100によって突起部40aを先端方向に押圧することにより、突起部40aの突出端を外管先端部38aよりも先端方向に露出させることができる。これにより、突起部40aを卵管口202aに挿入することができる。
【0092】
バルーンカテーテル12Cは、スライダ18cに代えて上述したスライダ18、18a、18bを備えてもよい。この場合、スライダ18、18a、18bのカバー部74、74a、74bによって突起部40aが覆われるため、突起部40aの突出端を先端開口36から先端方向に露出させた状態で外管24bを子宮底200まで挿入することができる。
【0093】
(第4変形例)
次に、第4変形例に係るバルーンカテーテル12Dについて図18A及び図18Bを参照しながら説明する。なお、本変形例に係るバルーンカテーテル12Dにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0094】
図18A及び図18Bに示すように、バルーンカテーテル12Dは、外側カテーテル16cとスライダ18dとを備える。なお、バルーンカテーテル12Dにおいて、外側カテーテル16cとスライダ18d以外の構成は、上述したバルーンカテーテル12と同じである。
【0095】
外側カテーテル16cの外管24cは、外管本体30と先端部材32cとを含む。先端部材32cは、外管本体30の先端部に設けられて先端開口36が形成された外管先端部38と、外管先端部38から先端方向に突出した突起部40bとを有する。突起部40bは、外管先端部38の第2領域54から先端方向に突出している。突起部40bは、外管先端部38の先端面48に設けられている。
【0096】
突起部40bの突出長は、上述した突起部40の突出長L1と同様に設定される。突起部40bは、可撓性を有している。突起部40bの構成材料は、上述した外管本体30の構成材料と同じものが挙げられる。突起部40bは、先端開口36の周方向に沿って延在している。突起部40bは、その突出方向に向かって幅狭に形成されている。突起部40bの突起内面120(先端開口36が位置する側の面)は、先端開口36の周方向に沿って円弧状に湾曲するとともに突起部40bの突出方向に円弧状に湾曲している。
【0097】
図18Bに示すように、内視鏡14の先端面48を先端開口36又は先端開口36の近傍に位置させた状態で、挿入部100の先端面48と突起部40b(突起部40bの突起内面120の先端)とのなす角度(以下、「第2角度θ2」という)は40°以上150°以下に設定される。第2角度θ2は、100°以上130°以下がより好ましい。この場合、バルーン22の進行性と内視鏡画像に映る突起部40bの視認性とが一層向上する。
【0098】
図18A及び図18Bにおいて、スライダ18dは、スライダ本体72、カバー部74c及びスライダハブ76(図1及び図2参照)を有する。カバー部74cは、上述したバルーンカテーテル12のカバー部74をスライダ本体72の周方向に180°回転させたような形状を有する。
【0099】
カバー部74cは、スライダ18dの初期状態で突起部40bを覆っている。換言すれば、カバー部74cの内面は、スライダ18dの初期状態で突起部40bの突起内面120に対向している。カバー部74cの突出端は、スライダ18dの初期状態で、スライダ本体72の軸線方向において突起部40bの突出端と同じ位置にある。ただし、カバー部74cの突出端は、スライダ18dの初期状態で突起部40bの突出端よりも先端側に位置してもよい。
【0100】
このようなバルーンカテーテル12Dにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同様の構成については同様の効果を奏する。
【0101】
突起部40bは、第2領域54に位置し、第2角度θ2は、40°以上150°以下である。
【0102】
このような構成によれば、内視鏡画像に表示された突起部40bの視認性を向上させることができる。
【0103】
(第5変形例)
次に、第5変形例に係るバルーンカテーテル12Eについて図19を参照しながら説明する。なお、本変形例に係るバルーンカテーテル12Eにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同一の構成については同一の参照符号を付し、その説明については省略する。
【0104】
図19に示すように、バルーンカテーテル12Eは、外側カテーテル16dとスライダ18cとを備える。なお、バルーンカテーテル12Eにおいて、外側カテーテル16dとスライダ18c以外の構成は、上述したバルーンカテーテル12と同じである。
【0105】
外側カテーテル16dの外管24dは、外管本体30と先端部材32dとを含む。先端部材32dは、外管本体30の先端部に設けられて先端開口36が形成された外管先端部38と、外管先端部38から先端方向に突出した複数の突起部40cとを有する。突起部40cの構成材料は、上述した外管本体30の構成材料と同じものが挙げられる。
【0106】
複数の突起部40cは、互いに同様の形状に形成されている。突起部40cは、先端開口36の周方向に沿って延在している。突起部40cは、突起部40cの突出方向に向かって薄肉に形成されている。突起部40cの突出長は、上述した突起部40の突出長L1と同様に設定される。突起部40cの突起内面122(先端開口36が位置する側の面)は、先端開口36の周方向に沿って円弧状に湾曲するとともに突起部40cの突出方向に円弧状に湾曲している。
【0107】
本実施形態において、先端部材32dは、複数の突起部40cとして、3つの突起部40c1、40c2、40c3を有する。3つの突起部40c1、40c2、40c3は、外管先端部38の先端面48に設けられている。3つの突起部40c1、40c2、40c3は、先端開口36の周方向に等間隔に設けられている。2つの突起部40c1、40c2は、外管先端部38の第1領域52から先端方向に突出している。1つの突起部40c3は、外管先端部38の第2領域54から先端方向に突出している。
【0108】
内視鏡14の先端面48を先端開口36又は先端開口36の近傍に位置させた状態で、外管先端部38の第1領域52から突出した突起部40c1、40c2(突起部40c1、40c2の突起内面122の先端)と内視鏡14の先端面48とのなす角度は、上述した第1角度θ1と同様に設定される。内視鏡14の先端面48を先端開口36又は先端開口36の近傍に位置させた状態で、外管先端部38の第2領域54から突出した突起部40c3(突起部40c3の突起内面122の先端)と内視鏡14の先端面48とのなす角度は、上述した第2角度θ2と同様に設定される。
【0109】
このようなバルーンカテーテル12Eにおいて、上述したバルーンカテーテル12と同様の構成については同様の効果を奏する。
【0110】
突起部40cは、複数設けられている。
【0111】
このような構成によれば、内視鏡画像に表示される突起部40cの視認性を向上させることができる。また、1つの突起部40cの突出端のみが子宮の内面に当たることを抑えることができる。つまり、突起部40cが子宮の内面に当たった場合でも突起部40cから子宮の内面に作用する力を複数の突起部40cによって軽減することができる。
【0112】
突起部40cは、外管先端部38の周方向に等間隔に設けられている。
【0113】
このような構成によれば、内視鏡画像に表示される突起部40cの視認性を一層向上させることができる。
【0114】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0115】
以上の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0116】
上記実施形態は、可撓性を有する外管(24、24a~24d)と、前記外管に対して前記外管の軸線方向に移動可能なように前記外管の内腔(34)に配設された内管(78)と、前記外管の先端部と前記内管の先端部とを互いに繋ぐとともに前記外管の径方向内方に膨らむ管状のバルーン(22)とを有するバルーンカテーテル(12、12A~12E)と、前記バルーンの内腔(94)に挿入される線状の挿入部(100)を備えた内視鏡(14)と、を備えるカテーテルシステム(10)であって、前記バルーンは、先端方向への押込み力が前記内管から前記バルーンへと伝達されることで前記バルーンの先端部が捲り返されながら前記外管の先端開口(36)から前記先端方向に突出し、前記外管は、管状の外管本体(30)と、前記外管本体の先端部に設けられて前記先端開口が形成された外管先端部(38、38a)と、前記外管先端部から前記先端方向に突出した突起部(40、40a~40c)と、を有し、前記突起部は、前記外管先端部に一体成形されている、カテーテルシステムを開示している。
【0117】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記挿入部の先端面(104)には、当該挿入部の先端方向を撮像するための撮像部(102)が設けられ、前記挿入部を前記先端開口又は当該先端開口の近傍に位置させた状態で、前記挿入部の先端面と前記突起部とのなす角度(θ1、θ2)は、40°以上150°以下であってもよい。
【0118】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記先端開口の正面視で、前記外管先端部を、前記先端開口の外周のうち最も前記外管の基端方向に位置する点(P1)を通る接線(Lc)よりも前記先端方向に位置する第1領域(52)と、前記接線よりも前記基端方向に位置する第2領域(54)とに分けた場合、前記突起部は、前記第1領域に位置し、前記なす角度(θ1)は、55°以上105°以下であってもよい。
【0119】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記先端開口の正面視で、前記外管先端部を、前記先端開口の外周のうち最も前記外管の基端方向に位置する点を通る接線よりも前記先端方向に位置する第1領域と、前記接線よりも前記基端方向に位置する第2領域とに分けた場合、前記突起部は、前記第2領域に位置し、前記なす角度(θ2)は、100°以上130°以下であってもよい。
【0120】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記第1領域の肉厚は、前記第2領域の肉厚よりも厚くてもよい。
【0121】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記突起部の突出長(L1)は、1.5mm以上60mm以下であってもよい。
【0122】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記バルーンカテーテルは、前記外管の外周面に対して前記外管の軸線方向に沿って移動可能に設けられるとともに前記外管を直線形状に保持するためのスライダ(18、18a~18d)を有し、前記外管本体の先端部は、前記スライダを前記外管に対して基端方向に移動させた状態で前記スライダから露出するとともに前記軸線方向に円弧状に湾曲してもよい。
【0123】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記スライダは、管状のスライダ本体(72)と、前記スライダ本体の先端部から前記先端方向に向かって突出するカバー部(74、74a~74c)と、を有し、前記カバー部は、前記スライダを前記外管に対して前記先端方向に最も移動させた前記スライダの初期状態で前記外管先端部の先端よりも前記先端方向に位置してもよい。
【0124】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記カバー部は、前記スライダの前記初期状態で前記突起部と対向してもよい。
【0125】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記突起部は、複数設けられてもよい。
【0126】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記突起部は、前記外管先端部の周方向に等間隔に設けられてもよい。
【0127】
上記のカテーテルシステムにおいて、前記突起部は、当該突起部が前記先端開口に挿入されるように弾性変形した状態で前記外管先端部の内面に係止可能であり、前記突起部が前記挿入部によって前記先端方向に押されることによって前記突起部の前記外管先端部の前記内面に対する係止が解除されてもよい。
【符号の説明】
【0128】
10…カテーテルシステム 12、12A~12E…バルーンカテーテル
14…内視鏡 18、18a~18d…スライダ
22…バルーン 24、24a~24d…外管
30…外管本体 34…第1内腔
36…先端開口 38、38a…外管本体
40、40a~40c…突起部 52…第1領域
54…第2領域 72、72a…スライダ本体
74、74a~74c…カバー部 78…内管
100…挿入部 102…撮像部
104…先端面 L1…突出長
Lc…接線 P1…基端点
θ1…第1角度 θ2…第2角度
図1
図2
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図5
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