(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127948
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20220825BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20220825BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220825BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M2/16 L
H01M2/16 P
H01M2/16 M
H01M2/26 A
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026203
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】川村 渥史
(72)【発明者】
【氏名】山田 智之
(72)【発明者】
【氏名】津島 達也
(72)【発明者】
【氏名】細川 尚士
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H021CC04
5H021CC09
5H021EE02
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH03
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ04
5H029DJ05
5H029DJ07
5H029HJ03
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043EA07
5H043EA32
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】金属リチウムの析出をより適切に抑制できる二次電池を提供する。
【解決手段】ここに開示される二次電池は、扁平状の捲回電極体40を備えている。かかる捲回電極体40は、一対の湾曲部40r1、40r2と平坦部40fとを有している。そして、捲回電極体40内部の正極始端部20sは、平坦部40fに沿って延びる第1領域17を有している。一方、捲回電極体40内部の負極始端部20sは、平坦部40に沿って延びる第2領域27と、第2領域27の端部から折り返された折り返し部28と、折り返し部28の端部から平坦部40fに沿って延びる第3領域29とを有している。そして、かかる捲回電極体40は、第1領域17と第2領域27と第3領域29とが重なった電極始端積層部48を有している。かかる構成によると、平坦部40fに部分的な加圧不良が生じることを防止し、金属リチウムの析出を抑制できる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して正極板と負極板とが捲回された扁平状の捲回電極体と、前記捲回電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記扁平状の捲回電極体は、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、当該一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有し、
前記正極板の長手方向の一方の端部は、正極始端部として前記捲回電極体の内部に配置され、他方の端部は正極終端部として前記捲回電極体の外側に配置され、かつ、
前記負極板の長手方向の一方の端部は、負極始端部として前記捲回電極体の内部に配置され、他方の端部は負極終端部として前記捲回電極体の外側に配置されており、
前記正極始端部は、前記平坦部に沿って延びる第1領域を有し、
前記負極始端部は、前記平坦部に沿って延びる第2領域と、前記湾曲部に沿うように前記第2領域の端部から折り返される折り返し部と、前記折り返し部の端部から前記平坦部に沿って延びる第3領域とを有し、
前記捲回電極体は、厚み方向において前記第1領域と前記第2領域と前記第3領域とが重なった電極始端積層部を有している、二次電池。
【請求項2】
前記正極板の長手方向における前記電極始端積層部の長さが0.5mm~10mmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電池ケース内に複数個の前記捲回電極体が収容されている、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記複数個の捲回電極体の各々は、前記正極板の長手方向における前記電極始端積層部の長さが異なっている、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極始端部は、前記一対の湾曲部のうち、一方の湾曲部に近接した位置に配置されており、前記正極終端部は、前記正極始端部よりも他方の湾曲部に近い位置に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極終端部及び前記負極終端部の少なくとも一方が前記他方の湾曲部に配置されている、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記セパレータは、樹脂製の多孔質基材層と、前記多孔質基材層の表面に形成され、セラミック粒子及びバインダを含む多孔質表面層とを有しており、
前記正極板および前記負極板と対向していない領域における前記多孔質表面層の空隙率が30%~60%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記正極板と前記負極板との間に介在した前記セパレータにおける前記多孔質表面層の厚みは、前記正極板および前記負極板と対向していない領域における前記多孔質表面層の厚みの60%以下である、請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記捲回電極体は、第1セパレータ、前記負極板、第2セパレータおよび前記正極板が、この順に積層された積層体を捲回することによって作製されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1セパレータの長手方向の一方の端部に前記負極始端部から延出した第1延出部が形成され、かつ、前記第2セパレータの長手方向の一方の端部に前記負極始端部から延出した第2延出部が形成されている、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1延出部および前記第2延出部の各々は、前記一対の湾曲部の少なくとも一方に沿うように折り返され、前記第1セパレータおよび前記第2セパレータのみが積層されたセパレータ積層部を形成する、請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記セパレータ積層部において、前記第1セパレータが3層以上積層され、かつ、前記第2セパレータが2層以上積層されている、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第1セパレータおよび前記第2セパレータの各々の少なくとも一方の表面に接着層が設けられている、請求項9~12のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記接着層の表面に、平面視において網目状の凸部が形成されている、請求項13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記電極始端積層部における前記第2領域と前記第3領域との間に前記セパレータが介在しており、前記捲回電極体の厚さ方向における前記第2領域と前記第3領域との距離が前記負極板の厚みよりも小さい、請求項1~14のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項16】
前記捲回電極体の厚さ方向における前記第2領域と前記第3領域との距離から、前記第2領域と前記第3領域との間に介在した前記セパレータの総厚みを引いた値が50μm以下である、請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
前記負極始端部の前記第2領域と前記第3領域との間に、前記セパレータが3層以上介在している、請求項15または16に記載の二次電池。
【請求項18】
前記正極板は、帯状の金属箔である正極芯体と、前記正極芯体の表面に付与された正極活物質層とを備え、かつ、
前記負極板は、帯状の金属箔である負極芯体と、前記負極芯体の表面に付与された負極活物質層とを備えている、請求項1~17のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項19】
前記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部に、前記正極芯体が露出した正極タブが積層された正極タブ群が形成され、
前記捲回電極体の捲回軸方向における他方の端部に、前記負極芯体が露出した負極タブが積層された負極タブ群が形成されている、請求項18に記載の二次電池。
【請求項20】
前記正極活物質層の幅寸法が200mm~400mmである、請求項18または19に記載の二次電池。
【請求項21】
前記捲回電極体の高さ寸法が60mm~120mmである、請求項1~20のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項22】
前記捲回電極体の厚みが5mm~25mmである、請求項1~21のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項23】
前記負極板の厚みに対する前記正極板の厚みの割合が65%~95%である、請求項1~22のいずれか一項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、一対の電極板(正極板と負極板)を備えた電極体を有している。かかる電極体の一例として、セパレータを介して、長尺な帯状の正極板と負極板とを捲回した捲回電極体が挙げられる。かかる捲回電極体では、各々の電極板の一方の端部(始端部)が電極体内部に配置され、他方の端部(終端部)が電極体の外側に配置される。また、この種の捲回電極体の外形は扁平形状に成形され得る。当該扁平形状の捲回電極体は、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、当該一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有している。
【0003】
上記扁平形状の捲回電極体を備えた二次電池の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の二次電池では、捲回電極体の平坦部の内部に、正極の巻内端(正極始端部)と負極の巻内端(負極始端部)が配置されている。そして、負極の巻内端は、正極の巻内端よりも湾曲部側に延出した延出部を有しており、当該負極の延出部は、正極と重ならない範囲で折り返されている。かかる特許文献1に記載の二次電池によると、電極体の平坦部における厚みのばらつきが抑制されるため、電池ケースに電極体を容易に収容できる。また、正極と負極との距離(極間距離)のばらつきも抑制できるため、充放電反応の偏りによる金属リチウム(金属Li)の析出を抑制するという効果も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、二次電池の耐久性向上や長寿命化に対する要求が益々高まっており、金属リチウムの析出をより適切に抑制できる技術が求められている。本発明は、かかる要求を鑑みてなされたものであり、金属リチウムの析出を適切に抑制できる二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって以下の構成の二次電池が提供される。
【0007】
ここに開示される二次電池は、セパレータを介して正極板と負極板とが捲回された扁平状の捲回電極体と、捲回電極体を収容する電池ケースとを備えている。かかる二次電池の扁平状の捲回電極体は、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、当該一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有し、正極板の長手方向の一方の端部は、正極始端部として捲回電極体の内部に配置され、他方の端部は正極終端部として捲回電極体の外側に配置され、かつ、負極板の長手方向の一方の端部は、負極始端部として捲回電極体の内部に配置され、他方の端部は負極終端部として捲回電極体の外側に配置されている。そして、ここに開示される二次電池において、正極始端部は、平坦部に沿って延びる第1領域を有し、負極始端部は、平坦部に沿って延びる第2領域と、湾曲部に沿うように第2領域の端部から折り返される折り返し部と、折り返し部の端部から平坦部に沿って延びる第3領域とを有し、捲回電極体は、厚み方向において第1領域と第2領域と第3領域とが重なった電極始端積層部を有している。
【0008】
この種の二次電池は、通常、電池ケースの外側から捲回電極体の平坦部を加圧し、電極体内部における正極板と負極板との距離(極間距離)を小さくした状態で使用する。しかしながら、扁平形状の捲回電極体では、湾曲部近傍の平坦部において、他の領域よりもシート状部材(正極板、負極板、セパレータ)の積層数が少なく、厚みが薄い領域が生じることがある。この場合、平坦部の面内の一部に加圧不良が生じるため、局所的な極間距離の増大によって、金属Liの析出が促進されるおそれがある。これに対して、ここに開示される二次電池では、負極板(負極始端部)を湾曲部に沿うように折り返し、正極板の第1領域と、負極板の第2領域と、負極板の第3領域とが重なった電極始端積層部を形成する。これによって、湾曲部近傍の平坦部に加圧不良が生じることを防止し、局所的な極間距離の増大による金属Liの析出を抑制できる。
【0009】
ここに開示される二次電池の一態様では、正極板の長手方向における電極始端積層部の長さが0.5mm~10mmである。これによって、平坦部における部分的な加圧不良をより適切に防止し、Li析出耐性をより好適に向上できる。
【0010】
ここに開示される二次電池の一態様では、電池ケース内に複数個の捲回電極体が収容されている。上述した部分的な加圧不良による局所的な極間距離の増大は、複数の捲回電極体の各々において発生する可能性がある。このため、ここに開示される技術は、複数個の捲回電極体を備えた高容量の二次電池に好適に適用できる。
【0011】
また、上記複数個の捲回電極体を備えた態様において、複数個の捲回電極体の各々は、正極板の長手方向における電極始端積層部の長さが異なっていることが好ましい。これによって、電池ケースの外側から複数の捲回電極体の全てを同時に加圧した際に、各々の捲回電極体の平坦部における面圧分布を均一化することに貢献できる。
【0012】
ここに開示される二次電池の一態様では、正極始端部は、一対の湾曲部のうち、一方の湾曲部に近接した位置に配置されており、正極終端部は、正極始端部よりも他方の湾曲部に近い位置に配置されている。これによって、正極始端部と正極終端部とが近接することによる厚みの偏りを防止し、平坦部における面圧分布の均一化に貢献できる。また、かかる態様においては、正極終端部及び負極終端部の少なくとも一方が他方の湾曲部に配置されていることが好ましい。これによって、捲回電極体の平坦部の表面に段差が生じることを防止できるため、平坦部における面圧分布の均一化にさらに貢献できる。
【0013】
ここに開示される二次電池の一態様では、セパレータは、樹脂製の多孔質基材層と、多孔質基材層の表面に形成され、セラミック粒子及びバインダを含む多孔質表面層とを有している。かかる態様において、負極板および正極板と対向していない領域における多孔質表面層の空隙率は30%~60%であることが好ましい。空隙率が30%~60%の範囲の多孔質表面層を有するセパレータは、捲回電極体のプレス成形の際に押し潰されるように変形し、当該捲回電極体の厚みのばらつきを吸収する緩衝材として機能させることができる。このため、上記空隙率の多孔質表面層を有するセパレータを使用することによって、捲回電極体の平坦部の表面に段差が生じることを防止できるため、平坦部における面圧分布の均一化に貢献できる。なお、プレス成形前のセパレータの多孔質表面層の空隙率は、負極板および正極板と対向していない領域における多孔質表面層の空隙率を測定することによって調べることができる。
【0014】
また、多孔質表面層を有するセパレータを使用する態様において、正極板と負極板との間に介在したセパレータにおける多孔質基材層の厚みは、負極板および正極板と対向していない領域における多孔質基材層の厚みの60%以下であることが好ましい。このように加圧後の多孔質基材層の厚みが加圧前の60%以下になるようにプレス成形を実施することによって、捲回電極体の厚みのばらつきを好適に吸収することができる。
【0015】
ここに開示される二次電池の一態様では、捲回電極体は、第1セパレータ、負極板、第2セパレータおよび正極板が、この順に積層された積層体を捲回することによって作製されている。また、かかる態様において、第1セパレータの長手方向の一方の端部に負極始端部から延出した第1延出部が形成され、かつ、第2セパレータの長手方向の一方の端部に負極始端部から延出した第2延出部が形成されていることが好ましい。これによって、平坦部の全域における面圧分布を均一化し、平坦部の全面におけるLi析出耐性を向上できる。
【0016】
また、第1延出部および第2延出部を形成する態様において、第1延出部および第2延出部の各々は、一対の湾曲部の少なくとも一方に沿うように折り返され、第1セパレータおよび第2セパレータのみが積層されたセパレータ積層部を形成することが好ましい。これによって、平坦部における面圧分布をさらに均一化し、Li析出耐性をさらに向上できる。
【0017】
また、セパレータ積層部を形成する態様では、セパレータ積層部において、第1セパレータが3層以上積層され、かつ、第2セパレータが2層以上積層されていることが好ましい。これによって、平坦部における面圧分布をより均一にできる。
【0018】
また、第1セパレータおよび第2セパレータを備えた態様では、第1セパレータおよび第2セパレータの各々の少なくとも一方の表面に接着層が設けられていることが好ましい。これによって、捲回電極体の内部でセパレータの位置ずれが生じることを防止できる。また、かかる態様において、接着層の表面には、平面視において網目状の凸部が形成されていることが好ましい。これによって、プレス成形時に接着層が変形しやすくなるため、捲回電極体の厚みのばらつきを吸収することができる。
【0019】
ここに開示される二次電池の一態様では、負極始端部の第2領域と第3領域との間にセパレータが介在しており、捲回電極体の厚さ方向における第2領域と第3領域との距離が負極板の厚みよりも小さい。このように第2領域と第3領域との隙間を小さくすることによって、電極体に掛かる構成圧を均一化できる。
【0020】
また、第2領域と第3領域との間にセパレータを介在させる態様において、捲回電極体の厚さ方向における第2領域と第3領域との距離から、第2領域と第3領域との間に介在したセパレータの総厚みを引いた値は50μm以下であることが好ましい。これによって、第2領域と第3領域との隙間をさらに小さくできる。また、かかる態様では、負極始端部の第2領域と第3領域との間に、セパレータが3層以上介在していることが好ましい。
【0021】
ここに開示される二次電池の一態様では、正極板は、帯状の金属箔である正極芯体と、正極芯体の表面に付与された正極活物質層とを備え、かつ、負極板は、帯状の金属箔である負極芯体と、負極芯体の表面に付与された負極活物質層とを備えている。かかる態様では、捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部に、正極芯体が露出した正極タブが積層された正極タブ群が形成され、捲回電極体の捲回軸方向における他方の端部に、負極芯体が露出した負極タブが積層された負極タブ群が形成されていることが好ましい。これによって、電池ケースの内容量に対する充放電領域の体積が増加するため、電池性能の向上に貢献できる。
【0022】
また、上記正極活物質層を備えた態様において、正極活物質層の幅寸法が200mm~400mmであることが好ましい。ここに開示される技術は、かかる寸法の捲回電極体を備えた二次電池において特に好適に使用できる。
【0023】
ここに開示される二次電池の一態様では、捲回電極体の高さ寸法が60mm~120mmである。ここに開示される技術は、かかる寸法の捲回電極体を備えた二次電池において特に好適に使用できる。
【0024】
ここに開示される二次電池の一態様では、捲回電極体の厚みが5mm~25mmである。ここに開示される技術は、かかる寸法の捲回電極体を備えた二次電池において特に好適に使用できる。
【0025】
前記負極板の厚みに対する前記正極板の厚みの割合が65%~95%である。これによって、最適な電極体厚みと構成圧が得られるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
【
図5】封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図6】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図7】一実施形態に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
【
図8】
図7の捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図9】
図8中のIX-IX線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る二次電池の捲回電極体の模式的な縦断面図である。
【
図11】他の実施形態に係る二次電池の捲回電極体の模式的な縦断面図である。
【
図12】従来の捲回電極体の湾曲部近傍を示す模式的な縦断面図である。
【
図13】従来の捲回電極体の湾曲部近傍を示す模式的な断面図である。
【
図14】サンプル1の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
【
図15】サンプル2の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
【
図16】サンプル3の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
【
図17】サンプル4の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0028】
なお、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。ここに開示される技術は、電荷担体としてリチウムイオン(Li+)を使用し、充放電反応に伴って電荷担体が金属リチウム(金属Li)として析出し得る二次電池(典型的には、リチウムイオン二次電池)に対して適用され得る。
【0029】
また、本明細書において参照する各図における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、「D」は下を示す。但し、これらの方向は説明の便宜上の定めたものであり、ここに開示される二次電池を使用する際の設置形態を限定することを意図したものではない。
【0030】
<二次電池>
以下、ここに開示される二次電池の一実施形態について
図1~
図9を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
図5は、封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図6は、正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図7は、本実施形態に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
図8は、
図7の捲回電極体を模式的に示す正面図である。
図9は、
図8中のIX-IX線に沿う模式的な縦断面図である。なお、説明の便宜上、
図9ではセパレータ30(
図7等参照)の記載を省略している。
【0031】
図2に示すように、本実施形態に係る二次電池100は、捲回電極体40と、捲回電極体40を収容する電池ケース50を備えている。以下、かかる二次電池100の具体的な構成について説明する。
【0032】
(1)電池ケース
電池ケース50は、捲回電極体40を収容する筐体である。図示は省略するが、電池ケース50の内部には非水電解液も収容されている。
図1に示すように、本実施形態における電池ケース50は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。なお、電池ケース50には、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、電池ケース50は、金属製であるとよい。かかる電池ケース50の材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0033】
電池ケース50は、外装体52と、封口板54とを備えている。外装体52は、上面に開口52hを有する扁平な有底角型の容器である。
図1および
図2に示すように、外装体52は、平面略矩形の底壁52aと、底壁52aの長辺から高さ方向Zの上方に延びる一対の長側壁52bと、底壁52aの短辺から高さ方向Zの上方に延びる一対の短側壁52cとを備えている。一方、封口板54は、外装体52の開口52hを塞ぐ、平面略矩形の板状部材である。そして、封口板54の外周縁部は、外装体52の開口52hの外周縁部と接合(例えば溶接)されている。これによって、内部が気密に密閉された電池ケース50が作製される。また、封口板54には、注液孔55とガス排出弁57が設けられている。注液孔55は、密閉後の電池ケース50の内部に非水電解液を注液するために設けられた貫通孔である。なお、注液孔55は、非水電解液の注液後に封止部材56によって封止される。また、ガス排出弁57は、電池ケース50内で大量のガスが発生した際に破断(開口)し、当該ガスを排出するように設計された薄肉部である。
【0034】
(2)非水電解液
上述の通り、電池ケース50の内部には、捲回電極体40の他に、非水電解液(図示省略)も収容されている。非水電解液には、従来公知の二次電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。例えば、非水電解液は、非水系溶媒に支持塩を溶解させることによって調製される。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0035】
(3)電極端子
また、封口板54の幅方向Yの一方(
図1、
図2中の左側)の端部には、正極端子60が取り付けられている。かかる正極端子60は、電池ケース50の外側において、板状の正極外部導電部材62と接続されている。一方、封口板54の幅方向Yの他方(
図1、
図2中の右側)の端部には、負極端子65が取り付けられている。かかる負極端子65には、板状の負極外部導電部材67が取り付けられている。これらの外部導電部材(正極外部導電部材62および負極外部導電部材67)は、外部接続部材(バスバー等)を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。なお、外部導電部材は、導電性に優れた金属(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)で構成されていることが好ましい。
【0036】
(4)電極集電部
図3~
図5に示すように、本実施形態に係る二次電池100では、電池ケース50内に複数個(3個)の捲回電極体40が収容されている。詳しい構造は後述するが、各々の捲回電極体40には、正極タブ群42と負極タブ群44とが設けられている。上述した正極端子60は、正極集電部70を介して、複数の捲回電極体40の各々の正極タブ群42と接続されている。具体的には、正極集電部70は、電池ケース50の内部に収容されている。この正極集電部70は、
図2および
図5に示すように、封口板54の内側面に沿って幅方向Yに延びる板状の導電部材である正極第1集電部71と、高さ方向Zに沿って延びる板状の導電部材である複数の正極第2集電部72とを備えている。そして、正極端子60の下端部60cは、封口板54の端子挿通孔58を通って電池ケース50の内部に挿入され、正極第1集電部71と接続されている(
図2参照)。一方で、
図4~
図6に示すように、この二次電池100では、捲回電極体40の個数に対応した個数の正極第2集電部72が設けられている。それぞれの正極第2集電部72は、捲回電極体40の正極タブ群42に接続される。そして、
図4および
図5に示すように、捲回電極体40の正極タブ群42は、正極第2集電部72と捲回電極体40の一方の側面40aとが対向するように折り曲げられる。これによって、正極第2集電部72の上端部と正極第1集電部71とが電気的に接続される。
【0037】
一方、負極端子65は、負極集電部75を介して、複数の捲回電極体40の各々の負極タブ群44と接続される。かかる負極側の接続構造は、上述した正極側の接続構造と略同一である。具体的には、負極集電部75は、封口板54の内側面に沿って幅方向Yに延びる板状の導電部材である負極第1集電部76と、高さ方向Zに沿って延びる板状の導電部材である複数の負極第2集電部77とを備えている(
図2および
図5参照)。そして、負極端子65の下端部65cは、端子挿通孔59を通って電池ケース50の内部に挿入され、負極第1集電部76と接続される(
図2参照)。一方、複数の負極第2集電部77の各々は、捲回電極体40の負極タブ群44と接続される(
図4~
図6参照)。そして、負極タブ群44は、負極第2集電部77と捲回電極体40の他方の側面40bとが対向するように折り曲げられる。これによって、負極第2集電部77の上端部と負極第1集電部76とが電気的に接続される。また、電極集電部(正極集電部70および負極集電部75)にも、導電性に優れた金属(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)が好適に使用できる。
【0038】
(5)絶縁部材
また、この二次電池100では、捲回電極体40と電池ケース50との導通を防止する種々の絶縁部材が取り付けられている。具体的には、正極外部導電部材62(負極外部導電部材67)と封口板54の外側面との間には、外部絶縁部材92が介在している(
図1参照)。これによって、正極外部導電部材62や負極外部導電部材67が封口板54と導通することを防止できる。また、封口板54の端子挿通孔58、59の各々にはガスケット90が装着されている(
図2参照)。これによって、端子挿通孔58、59に挿通された正極端子60(又は負極端子65)が封口板54と導通することを防止できる。また、正極第1集電部71(又は負極第1集電部76)と封口板54の内側面との間には、内部絶縁部材94が配置されている。この内部絶縁部材94は、正極第1集電部71(又は負極第1集電部76)と封口板54の内側面との間に介在する板状のベース部94aを備えている。これによって、正極第1集電部71や負極第1集電部76が封口板54と導通することを防止できる。さらに、内部絶縁部材94は、封口板54の内側面から捲回電極体40に向かって突出する突出部94bを備えている(
図2および
図3参照)。これによって、高さ方向Zにおける捲回電極体40の移動を規制し、捲回電極体40と封口板54が直接接触することを防止できる。加えて、複数の捲回電極体40は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ98(
図3参照)に覆われた状態で電池ケース50の内部に収容される。これによって、捲回電極体40と外装体52が直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材料は、所定の絶縁性を有していれば特に限定されない。一例として、ポリオレフィン系樹脂(例、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE))、フッ素系樹脂(例、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の合成樹脂材料を使用できる。
【0039】
(6)捲回電極体
図7に示すように、本実施形態に係る二次電池100において使用される電極体は、セパレータ30を介して正極板10と負極板20とが捲回された扁平状の捲回電極体40である。この捲回電極体40は、捲回電極体40の捲回軸WLと二次電池100の幅方向Yが略一致するように電池ケース50内に収容される。すなわち、以下の説明における「捲回軸方向」は、図中の幅方向Yと略同一の方向である。以下、捲回電極体40の構成について具体的に説明する。
【0040】
(a)正極板
図7に示すように、正極板10は、長尺な帯状の部材である。正極板10は、帯状の金属箔である正極芯体12と、正極芯体12の表面に付与された正極活物質層14とを備えている。なお、電池性能の観点から、正極活物質層14は、正極芯体12の両面に付与されていることが好ましい。また、この正極板10では、捲回軸方向(幅方向Y)の一方の端辺から外側(
図7中の左側)に向かって正極タブ12tが突出している。そして、この正極タブ12tは、長尺な帯状の正極板10の長手方向Lにおいて所定の間隔を空けて複数形成されている。この正極タブ12tは、正極活物質層14が付与されておらず、正極芯体12が露出した領域である。また、この正極板10の正極タブ12t側の端辺に隣接した領域には、正極板10の長手方向Lに沿って延びる保護層16が形成されている。
【0041】
正極板10を構成する各部材には、一般的な二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極芯体12には、所定の導電性を有した金属材料を好ましく使用できる。かかる正極芯体12は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等から構成されていることが好ましい。また、正極芯体12の厚みは、8μm~20μmが好ましく、10μm~18μmがより好ましく、12μm~15μmがさらに好ましい。
【0042】
また、正極活物質層14は、正極活物質を含む層である。正極活物質は、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる材料である。高性能の正極板10を安定的に作製するという観点から、正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物が好適である。上記リチウム遷移金属複合酸化物の中でも、遷移金属として、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)からなる群の少なくとも一種を含むリチウム遷移金属複合酸化物は特に好適である。具体例としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物(NCA)、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。また、Ni、CoおよびMnを含まないリチウム遷移金属複合酸化物の好適例として、リチウムリン酸鉄系複合酸化物(LFP)等が挙げられる。なお、本明細書における「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、主要構成元素(Li、Ni、Co、Mn、O)の他に、添加的な元素を含む酸化物を包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Si、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。詳しい説明は省略するが、このことは「~系複合酸化物」と記載した他のリチウム遷移金属複合酸化物についても同様である。また、正極活物質層14は、正極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の一例として、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材の具体例としては、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が挙げられる。バインダの具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の樹脂バインダが挙げられる。なお、正極活物質層14の固形分全体を100質量%としたときの正極活物質の含有量は、概ね80質量%以上であり、典型的には90質量%以上である。
【0043】
また、正極活物質層14の幅寸法は、200mm~400mmが好ましく、250mm~350mmがより好ましく、260mm~300mmがさらに好ましく、例えば280mm程度である。正極活物質層14の幅寸法が200mm以上となる比較的に大型の捲回電極体40では、後述する部分的な加圧不良によるLiの析出が生じやすくなる傾向がある。しかし、ここに開示される技術によると、この種の大型の捲回電極体40においても、平坦部40fにおいて部分的な加圧不良が生じることを防止し、金属Liの析出を抑制することができる。また、正極芯体12の片面における正極活物質層14の厚みは、10μm~100μmが好ましく、20μm~80μmがより好ましく、50μm~75μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、捲回電極体および当該捲回電極体の構成部材の「幅寸法」は、捲回軸WLが延びる方向(すなわち、幅方向Y)における寸法を指す。また、捲回電極体および当該捲回電極体の構成部材の「厚み」とは、捲回電極体40の平坦部40fに対して垂直な方向(すなわち、奥行方向X)における寸法を指す。
【0044】
一方、保護層16は、正極活物質層14よりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。かかる保護層16を正極板10の端辺に隣接した領域に設けることによって、セパレータ30が破損した際に、正極芯体12と負極活物質層24とが直接接触することによる内部短絡を防止できる。例えば、保護層16として、絶縁性のセラミック粒子を含む層を形成すると好ましい。かかるセラミック粒子としては、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等の無機酸化物や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物や、マイカ、タルク、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン等の粘土鉱物や、ガラス繊維などが挙げられる。絶縁性や耐熱性を考慮すると、上述の中でも、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、シリカおよびチタニアが好適である。また、保護層16は、上記セラミック粒子を正極芯体12の表面に定着させるためのバインダを含有していてもよい。かかるバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の樹脂バインダが挙げられる。なお、保護層は、正極板の必須の構成要素ではない。すなわち、ここに開示される二次電池では、保護層が形成されていない正極板を使用することもできる。
【0045】
(b)負極板
図7に示すように、負極板20は、長尺な帯状の部材である。かかる負極板20は、帯状の金属箔である負極芯体22と、負極芯体22の表面に付与された負極活物質層24とを備えている。なお、電池性能の観点から、負極活物質層24は、負極芯体22の両面に付与されていることが好ましい。さらに、この負極板20には、捲回軸方向(幅方向Y)の一方の端辺から外側(
図7中の右側)に向かって突出する負極タブ22tが設けられている。この負極タブ22tは、負極板20の長手方向Lにおいて所定の間隔を空けて複数設けられている。この負極タブ22tは、負極活物質層24が付与されておらず、負極芯体22が露出した領域である。
【0046】
負極板20を構成する各部材には、一般的な二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極芯体22には、所定の導電性を有した金属材料を好ましく使用できる。かかる負極芯体22は、例えば、銅や銅合金等から構成されていることが好ましい。また、負極芯体22の厚みは、4μm~20μmが好ましく、6μm~15μmがより好ましく、8μm~10μmがさらに好ましい。
【0047】
また、負極活物質層24は、負極活物質を含む層である。負極活物質には、上述した正極活物質との関係において電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できれば特に限定されず、従来の一般的な二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用できる。かかる負極活物質としては、炭素材料、シリコン系材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等を使用し得る。また、黒鉛の表面が非晶質炭素で被覆された非晶質炭素被覆黒鉛などを使用することもできる。一方、シリコン系材料としては、シリコン、シリコン酸化物(シリカ)などが挙げられる。また、シリコン系材料は、他の金属元素(例えばアルカリ土類金属)や、その酸化物を含有していてもよい。また、負極活物質層24は、負極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の一例として、バインダ、増粘剤等が挙げられる。バインダの具体例として、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系のバインダが挙げられる。また、増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。なお、負極活物質層24の固形分全体を100質量%としたときの負極活物質の含有量は、概ね30質量%以上であり、典型的には50質量%以上である。なお、負極活物質は、負極活物質層24の80質量%以上を占めていてもよいし、90質量%以上を占めていてもよい。また、負極活物質層24の幅寸法は、200mm~400mmが好ましく、250mm~350mmがより好ましく、260mm~300mmがさらに好ましく、例えば285mm程度である。また、負極芯体22の片面における負極活物質層24の厚みは、10μm~200μmが好ましく、50μm~100μmがより好ましく、75μm~85μmがさらに好ましい。
【0048】
(c)セパレータ
本実施形態における捲回電極体40は、2枚のセパレータ30を備えている。以下では、説明の便宜上、負極板20の外側に配置されたセパレータ30を「第1セパレータ32」と称し、負極板20と正極板10との間に配置されたセパレータ30を「第2セパレータ34」と称することがある。これらのセパレータ30は、正極板10と負極板20との接触を防止すると共に、電荷担体(例えばリチウムイオン)を通過させる機能を有したシート状の部材である。かかるセパレータ30の一例として、電荷担体が通過し得る微細な孔が複数形成された絶縁シートが挙げられる。
【0049】
セパレータ30には、従来公知の二次電池において用いられるものを特に制限なく使用できる。セパレータ30の好適例として、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP))等からなる樹脂製の多孔質基材層を含むセパレータが挙げられる。また、この多孔質基材層の表面には、絶縁性の無機材料を含む多孔質表面層が形成されていることが好ましい。この多孔質表面層は、耐熱性に優れているため、温度上昇によるセパレータ30の収縮や破損を抑制できる。かかる多孔質表面層の無機材料としては、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等のセラミック粒子が挙げられる。また、多孔質表面層には、セラミック粒子を結着させるバインダが含まれている。バインダには、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、アクリル系樹脂等の樹脂バインダを使用できる。なお、本実施形態において使用される2枚のセパレータ30(第1セパレータ32と第2セパレータ34)は、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。また、各々のセパレータ30の厚みは、4μm~30μmが好ましく、6μm~20μmがより好ましく、8μm~16μmがさらに好ましい。
【0050】
また、セパレータ30の多孔質基材層は、空隙率が30%~60%の範囲内のものであると特に好適である。このような空隙率の多孔質表面層を有したセパレータ30は、捲回電極体40のプレス成形の際に押し潰されるように変形し、当該捲回電極体40の厚みのばらつきを吸収する緩衝材として機能し得る。すなわち、上記空隙率の多孔質表面層を有するセパレータ30を使用することによって、捲回電極体40の平坦部40fの表面に段差が生じることを防止し、平坦部40fの面圧分布の均一化によるLi析出耐性の向上に貢献することができる。なお、上述した多孔質表面層の空隙率は、捲回電極体40を作製する前(プレス成形前)の空隙率を示している。プレス成形後の捲回電極体40では、負極板20および正極板10と対向していない領域に配置されたセパレータ30の多孔質表面層の空隙率を測定することによって、プレス成形前の多孔質表面層の空隙率を調べることができる。なお、ここでの「負極板20および正極板10と対向していない領域」としては、捲回軸方向における捲回電極体40の両側縁部に形成された「セパレータ30のみが延出した領域30a」などが挙げられる。
【0051】
また、多孔質表面層を有するセパレータ30を緩衝材として機能させる場合には、加圧後の多孔質基材層の厚みが、加圧前の厚みの70%以下(より好適には60%以下、さらに好適には50%以下)まで減少するようにプレス成形を実施することが好ましい。このように多孔質表面層を充分に変形させることによって、捲回電極体40の厚みのばらつきを充分に吸収できる。なお、作製後の捲回電極体40において、プレス成形による多孔質基材層の厚みの減少率を調べるには、正極板10と負極板20との間に介在したセパレータ30の多孔質表面層の厚みと、負極板20および正極板10と対向していない領域における多孔質表面層の厚みを調べるとよい。
【0052】
また、各々のセパレータ30の少なくとも一方の表面には、接着層が設けられていることが好ましい。かかる接着層は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、アクリル系樹脂等の樹脂バインダを含む層であり、圧力や熱等によって正極板10や負極板20と接着する。これによって、捲回電極体40の内部におけるシート部材(正極板10、負極板20およびセパレータ30)の位置ずれを防止できる。詳しくは後述するが、本実施形態に係る二次電池100は、正極板10と負極板20の始端部(正極始端部10sおよび負極始端部20s)の配置位置を調節することによって金属Liの析出を抑制する。このため、接着層を有するセパレータ30を用い、正極板10と負極板20の位置ずれを防止することによって、上述のLi析出抑制効果をより安定的に発揮できるようになる。なお、シート部材の位置ずれをより適切に防止するという観点から、接着層は、セパレータ30の両面に形成されている方が好ましい。また、セパレータ30の片面のみに接着層を形成する場合には、正極板10と接触する面に接着層を形成した方が好ましい。これは、正極板10の配置位置が負極板20よりもずれやすい傾向があるためである。なお、上述した多孔質表面層を有するセパレータ30の場合には、多孔質表面層の表面に接着層を別途形成してもよいし、多孔質表面層が接着層を兼ねていてもよい。当該接着層を兼ねた多孔質表面層は、バインダの含有割合を増加させることによって形成できる。例えば、多孔質表面層の総重量を100質量%としたときのバインダの含有割合を5質量%以上(好ましくは10質量%以上)とするとよい。これによって、一定以上の接着性を発揮し、接着層として機能する多孔質表面層を形成できる。
【0053】
なお、接着層の表面には、平面視において網目状の凸部が形成されていることが好ましい。かかる網目状の凸部は、捲回電極体40のプレス成形時に容易に押圧変形するため、シート状部材の間の緩衝材として機能し得る。この結果、プレス成形後の平坦部40fの面内における捲回電極体40の厚みのばらつきを吸収し、金属Liの析出をより好適に抑制できる。なお、接着層は、上記形態に限定されない。例えば、接着層自体が網目状に形成されていてもよい。換言すると、多孔質基材層や多孔質表面層の表面に、平面視において網目状の接着層が形成されていてもよい。このような網目状の接着層も緩衝材として機能し得る。
【0054】
(d)捲回電極体の構造
次に、上述した正極板10と、負極板20と、セパレータ30とを備えた捲回電極体40の具体的な構造について説明する。かかる捲回電極体40は、2枚のセパレータ30を介して正極板10と負極板20を積層して捲回することによって作製される。具体的には、まず、第1セパレータ32、負極板20、第2セパレータ34、正極板10を、この順序で積層した積層体を作製する(
図7参照)。このとき、幅方向Yの一方(
図7中の左側)の側縁から正極板10の正極タブ12tのみが突出し、かつ、他方(
図7中の右側)の側縁から負極板20の負極タブ22tのみが突出するように、各々のシート部材の幅方向Yにおける積層位置を調節する。そして、作製した積層体を捲回して筒状体を作製する。このときの捲回数は、目的とする捲回電極体40の性能や製造効率などを考慮して適宜調節することが好ましい。一例として、捲回電極体40の捲回数は、10回~60回が好ましく、30回~40回がより好ましい。そして、この筒状体をプレスすることによって、扁平形状の捲回電極体40が作製される。そして、
図8に示すように、作製後の捲回電極体40の最外周の面には、第1セパレータ32が配置される。この第1セパレータ32の終端部32aに巻き止めテープ38を貼り付けることによって、捲回電極体40の形状が保持される。
【0055】
図9に示すように、作製後の捲回電極体40において、正極板10の長手方向Lの一方の端部は、正極始端部10sとして捲回電極体40の内部に配置される。そして、正極板10の他方の端部は、正極終端部10eとして捲回電極体40の外側に配置される。同様に、負極板20の一方の端部は、負極始端部20sとして捲回電極体40の内部に配置される。また、負極板20の他方の端部は、負極終端部20eとして捲回電極体40の外側に配置される。なお、
図9中では図示を省略するが、正極板10は、長手方向Lの両方の端部(正極始端部10sおよび正極終端部10e)まで正極活物質層14(
図7参照)が付与されている。同様に、負極板20は、長手方向Lの両方の端部(負極始端部20sおよび負極終端部20e)まで負極活物質層24(
図7参照)が付与されている。
【0056】
また、捲回後の捲回電極体40の捲回軸方向(幅方向Y)の一方の端部には、正極芯体12が露出した正極タブ12tが複数積層された正極タブ群42が形成される。一方、捲回電極体40の捲回軸方向(幅方向Y)の他方の端部には、負極芯体22が露出した負極タブ22tが複数積層された負極タブ群44が形成される。一方、捲回電極体40の幅方向Yの中央部には、正極活物質層14と負極活物質層24が対向したコア部46が形成される。かかるコア部46は、充放電反応が生じる主な場となる。ここで、上述した通り、本実施形態における正極タブ群42は、正極第2集電部72と接続された後に、当該正極第2集電部72が捲回電極体40の側面40aと対向するように折り曲げられる(
図4~
図6参照)。同様に、負極タブ群44は、負極第2集電部77と接続された後に、当該負極第2集電部77が捲回電極体40の側面40bと対向するように折り曲げられる。このように折り曲げ可能な正極タブ群42(および負極タブ群44)を設けることによって、電池ケース50の内容量に対するコア部46(充放電領域)の体積を増加できるため、電池性能の向上に貢献できる。
【0057】
上述した通り、本実施形態における捲回電極体40は、プレス成形によって扁平形状に成形される。
図9に示すように、かかる扁平形状の捲回電極体40は、外表面が湾曲した一対の湾曲部40r1、40r2と、当該一対の湾曲部40r1、40r2を連結する外表面が平坦な平坦部40fとを有している。
図3に示すように、この捲回電極体40を電池ケース50内に収容すると、平坦部40fが外装体52の長側壁52b(すなわち、電池ケース50の扁平面)と対向する。また、上側の湾曲部40r1が封口板54と対向し、下側の湾曲部40r2が外装体52の底壁52aと対向する。
【0058】
ここで、上記捲回電極体40の平坦部40fの面内の一部に、他の領域よりも厚みが薄い領域が生じると、当該領域の付近において金属Liの析出が促進される。具体的には、この種の二次電池100は、通常、電池ケース50の扁平面(外装体52の長側壁52b)を挟み込むように押圧し、捲回電極体40の平坦部40fを加圧した状態で使用する。これによって、捲回電極体40内部における正極板10と負極板20との極間距離が小さくなるため電気抵抗が低減される。しかしながら、上述した局所的に厚みが薄い領域は、平坦部40fを加圧した際の圧力が充分に伝わらないため、局所的に極間距離が大きい領域となって電気抵抗が高くなる。そして、この局所的に極間距離が大きい領域の周囲では、電流集中によって負極活物質層24の表面に金属Liが析出しやすくなる。また、局所的に極間距離が大きな領域では、非水電解液が分解したガスが溜まりやすいため、充放電を繰り返した際に電気抵抗がさらに上昇し、金属Liの析出がより発生しやすくなる。
【0059】
一例として、
図12に示す従来の捲回電極体140は、湾曲部140r近傍の平坦部140fにおいてシート状部材の積層数が不足して、部分的な厚み不足が生じやすくなる傾向がある。具体的には、扁平形状の捲回電極体140を成形した際に、正極始端部110sと負極始端部120sの両方(特に正極始端部110s)を湾曲部140r内に配置し、平坦部140fの面内における電極板(正極板110および負極板120)の積層数を同一にすることは非常に困難である。このため、この種の捲回電極体140では、通常、湾曲部140rの近傍において、電極板の積層数が平坦部140fの他の領域よりも少ない領域141が生じる。この場合、上記積層数が不足した領域141において、加圧不良が生じて局所的な極間距離の増大による金属Liの析出が生じやすくなる。また、この種の金属Liの析出促進は、
図13に示す構成の捲回電極体240でも生じ得る。具体的には、
図13に示す捲回電極体240では、負極始端部220sを湾曲部240r側に延出させ、負極板220における正極板210と重ならない領域(延出部)を折り返すという構成を採用している。しかし、かかる構成を採用した場合でも、電極板の積層数が不足した領域241が平坦部240fに生じるため、この領域241の周囲において金属Liが析出しやすくなる。
【0060】
これに対して、図本実施形態に係る二次電池100では、捲回電極体40の平坦部40fにおける部分的な加圧不良を防止するという観点で、正極始端部10sと負極始端部20sの各々の配置位置が調節されている。具体的には、
図9に示すように、本実施形態における正極板10の正極始端部10sは、捲回電極体40の平坦部40fに沿って延びる第1領域17を有している。一方、負極板20の負極始端部20sは、平坦部40fに沿って延びる第2領域27と、湾曲部40r2に沿うように第2領域27の端部から折り返される折り返し部28と、折り返し部28の端部から平坦部40fに沿って延びる第3領域29とを有している。かかる構成の捲回電極体40では、湾曲部40r2に近接する平坦部40fを含む領域に、厚み方向(奥行方向X)において第1領域17と第2領域27と第3領域29とが重なった電極始端積層部48が形成される。これによって、湾曲部40r2に近接する平坦部40fにおいて部分的な加圧不良が生じることを防止できるため、局所的な極間距離の増大による金属Liの析出を適切に抑制できる。
【0061】
なお、本明細書では、第1領域17、第2領域27および第3領域29の各々について、「平坦部40fに沿って延びる」と説明している。しかし、かかる説明は、第1領域17、第2領域27および第3領域29の各々が平坦部40fの外表面に対して平行であることを限定するものではない。すなわち、第1領域17、第2領域27および第3領域29の各々は、平坦部40fの外表面に対して僅かに傾斜していてもよい。また、第1領域17、第2領域27および第3領域29の各々は、厳密な直線状でなくてもよく、湾曲・蛇行していてもよい。また、折り返し部28についても同様であり、湾曲部40r2の外表面に対して平行である必要はないし、蛇行等をしていてもよい。
【0062】
また、高さ方向Zにおける電極始端積層部48の長さは、0.5mm~10mmが好ましく、1mm~10mmが好ましく、1mm~7mmが好ましく、例えば3mm程度であるとよい。これによって、平坦部40fにおける部分的な加圧不良をより適切に防止し、Li析出耐性をより好適に向上できる。なお、本実施形態のように、複数個の捲回電極体40を有する二次電池100では、各々の捲回電極体40の電極始端積層部48の長さが相互に異なっていることが好ましい。これによって、電池ケース50の外側から複数の捲回電極体40の全てを加圧した際に、各々の捲回電極体40の平坦部40fおける面圧分布を均一化することに貢献できるため、平坦部40fの全面におけるLi析出耐性を適切に向上させることができる。
【0063】
また、
図9に示すように、本実施形態における捲回電極体40では、高さ方向Zの下側の湾曲部40r2の近傍に正極始端部10sが配置されている。これに対して、正極終端部10eは、正極始端部10sよりも上側の湾曲部40r1に近い位置に配置されている。これによって、捲回電極体40の周方向において正極始端部10sと正極終端部10eが近接することを防止できるため、平坦部40fにおける面圧分布を均一化することに貢献できる。なお、本実施形態では、負極板20の負極終端部20eについても同様に、負極始端部20sよりも上側の湾曲部40r1に近い位置に配置されている。これによって、平坦部40fにおける面圧分布をさらに均一化できる。
【0064】
より具体的には、本実施形態では、上側の湾曲部40r1に正極終端部10eと負極終端部20eが配置されている。この場合には、正極終端部10eや負極終端部20eに起因する段差が平坦部40fの表面に生じることを防止できるため、平坦部40fにおける面圧分布をさらに均一化できる。なお、捲回電極体40の最外周では、正極終端部10eが負極板20に覆われるように、負極終端部20eが正極終端部10eから延出していることが好ましい。例えば、
図9に示すように、上側の湾曲部40r1の円弧における9時から12時の間の領域に正極終端部10eが配置されている場合、負極終端部20eは、12時から3時の間の領域に配置されていることが好ましい。このように負極板20を正極板10よりも長くし、負極側の電荷担体の吸蔵性能を充分に確保することによってLi析出耐性をさらに向上できる。また、正極始端部10sと負極始端部20sを湾曲部40r1に配置する場合には、接着層を備えたセパレータ30を使用することが好ましい。これによって、正極始端部10sや負極始端部20sが湾曲部40r1からずれることを防止できる。
【0065】
なお、本実施形態における捲回電極体40の高さ寸法は、60mm~120mmが好ましく、80mm~110mmがより好ましく、90mm~100mmが特に好ましく、例えば95mm程度である。また、捲回電極体40の厚みは、5mm~25mmが好ましく、8mm~20mmがより好ましく、10mm~15mmが特に好ましい。ここに開示される技術によるLi析出抑制効果は、上述したような寸法を有した捲回電極体40を備えた二次電池において特に好適に発揮される。なお、ここでの「高さ寸法」とは、捲回軸WLに対して垂直であり、且つ、厚み方向(奥行方向X)に対して垂直な方向(すなわち高さ方向Z)における寸法を指す。
【0066】
また、負極板20の厚みに対する正極板10の厚みの割合は、65%~95%が好ましく、70%~90%がより好ましく、75%~85%が特に好ましい。これによって、最適な電極体厚みと構成圧が得られるという効果が得られる。なお、本明細書における「電極板(正極板又は負極板)の厚み」とは、電極活物質層と電極芯体の合計厚みである。例えば、電極芯体の両面に電極活物質層が形成された電極板においては、2つの電極活物質層と電極芯体の合計厚みが「電極板の厚み」となる。
【0067】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は、ここに開示される技術が適用される一例を示したものであり、ここに開示される技術を限定するものではない。以下、ここに開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0068】
(1)捲回電極体の個数
例えば、上述の実施形態に係る二次電池100は、電池ケース50の内部に3個の捲回電極体40が収容された高容量の二次電池である。しかし、1つの電池ケース内に収容される電極体の数は、特に限定されず、2つ以上(複数)であってもよいし、1つであってもよい。なお、複数個の捲回電極体を備えた二次電池では、各々の捲回電極体の湾曲部の近傍において部分的な加圧不良が生じる可能性があるため、金属Liの析出が生じやすくなる傾向がある。これに対して、ここに開示される技術では、複数個の捲回電極体の各々に対して部分的な加圧不良を防止する構造を採用できるため、金属Liの析出を好適に抑制できる。
【0069】
(2)二次電池の容量
また、高容量の二次電池を構築するには、充電時に電荷担体を放出する正極活物質層の充填密度を高くし、正極容量を大きくすることが求められる。この場合、正極の容量に対する負極の容量の比率(対向容量比:負極容量/正極容量)が低下するため、負極板の表面に金属Liが析出しやすくなる。これに対して、ここに開示される技術によると、正極始端部および負極始端部の配置位置の調節という構造面の改善によってLi析出耐性を向上できる。このため、Li析出耐性の観点で困難であった正極活物質層の高密度化を実現し、二次電池の高容量化に貢献することができる。例えば、ここに開示される技術によると、正極活物質層の充填密度が3.4g/cc以上(例えば3.6g/cc)であり、対向容量比が1.1以下(例えば1.08)という捲回電極体を用いた場合であっても、金属Liの析出を好適に抑制できる。
【0070】
(3)各電極の始端部の位置
上述の実施形態では、下側の湾曲部40r2の近傍に正極始端部10sと負極始端部20sが配置され、上側の湾曲部40r1に正極終端部10eと負極終端部20eが配置されている。しかし、捲回電極体の平坦部に電極始端積層部が形成されていれば、正極板と負極板の各々の始端部と終端部の配置位置は特に限定されない。すなわち、ここに開示される技術では、上側の湾曲部の近傍に正極始端部と負極始端部を配置し、当該上側の湾曲部近傍の平坦部に電極始端積層部を形成してもよい。この場合でも、部分的な加圧不良を防止し、Liの析出を充分に抑制できる。但し、正極タブ群および負極タブ群に近接した領域は、電力集中が生じやすくなる傾向がある。かかる点を考慮すると、正極始端部と負極始端部は、正極タブ群および負極タブ群から離れた方の湾曲部の近傍に配置されている方が好ましい。すなわち、
図2に示すように、高さ方向Zの上部に正極タブ群42と負極タブ群44が形成された捲回電極体40では、下側の湾曲部40r2の近傍に正極始端部10sと負極始端部20sが配置されている方が好ましい。
【0071】
(4)セパレータの始端部
図9に示すように、上述した実施形態に係る二次電池100では、電極始端積層部48が形成されるように、正極始端部10sと負極始端部20sの配置位置を調節することによって金属Liの析出を抑制している。ここで、金属Liの析出をさらに好適に抑制するには、正極板と負極板の始端部の他に、セパレータの始端部の配置位置も調節することが好ましい。以下、セパレータの始端部の配置位置を調節した実施形態について説明する。
図10は、他の実施形態に係る二次電池の捲回電極体の模式的な断面図である。
【0072】
図10に示すように、この実施形態では、2枚のセパレータ30の始端部30sが負極始端部20sから延出している。具体的には、第1セパレータ32の長手方向の一方の端部(第1セパレータ32の始端部30s)は、負極始端部20sから延出した第1延出部32eを有している。同様に、第2セパレータ34の一方の端部(第2セパレータ34の始端部30s)は、負極始端部20sから延出した第2延出部34eを有している。このように負極始端部20sからセパレータ30の始端部30sを延出させた場合、電極始端積層部48と隣接した領域に、負極始端部20sに起因する段差が生じることを防止できる。これによって、捲回電極体40の平坦部40fにおける面圧分布を均一化にすることができるため、平坦部40fの全面におけるLi析出耐性を向上できる。
【0073】
また、
図10に示す実施形態では、第1延出部32eおよび第2延出部34eの各々が上側の湾曲部40r1に沿って折り返されている。これによって、捲回電極体40の内部には、第1セパレータ32および第2セパレータ34のみが積層されたセパレータ積層部49が形成される。この結果、平坦部40fにおける面圧分布をさらに均一化し、平坦部40fの全面におけるLi析出耐性をより好適に向上できる。なお、セパレータ積層部49におけるセパレータ30の積層数は、負極板20の厚みとセパレータ30の厚みを考慮して適宜調節することが好ましい。具体的には、加圧前の捲回電極体40において、セパレータ積層部49が負極板20よりも僅かに厚くなるようにセパレータ30の積層数を調節することが好ましい。一例として、セパレータ積層部49では、第1セパレータ32が3層以上積層され、かつ、第2セパレータが2層以上積層されていることが好ましい。これによって、捲回電極体40を加圧した際に、セパレータ積層部49が潰れるように変形し、負極始端部20sに起因する段差の発生を好適に抑制できる。
【0074】
なお、本実施形態のように、セパレータ30の始端部30sを負極始端部20sから延出させた場合、各々のセパレータ30の表面に接着層が形成されている方が好ましい。換言すると、第1セパレータ32から延出した第1延出部32eと、第2セパレータ34から延出した第2延出部34eの各々が接着層によって接着されていると好ましい。これによって、捲回電極体40の内部(特にセパレータ積層部49)においてセパレータ30の位置ずれが生じることを防止できる。
【0075】
また、
図10に示すように、この実施形態では、電極始端積層部48における第2領域27と第3領域29との間にセパレータ30(第2セパレータ34)が介在している。このとき、厚さ方向(奥行方向X)における第2領域27と第3領域29との距離が負極板20の厚みよりも小さくすることが好ましい。具体的には、第2領域27と第3領域29との間にセパレータ30が配置されている場合、電池ケース50の外部からの圧力で電極始端積層部48におけるセパレータ30が潰れるように変形する。このときに、第2領域27と第3領域29との距離が小さくなるように、セパレータ30の厚みや捲回電極体40に対する圧力を調節することによって、第2領域27と第3領域29との間の隙間が小さくなるため、電極体に掛かる構成圧を均一化できる。例えば、電極始端積層部48における第2領域27と第3領域29との隙間は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。これのように、第2領域27と第3領域29との間に殆ど隙間がない状態にすることによって、構成圧の均一化いう効果がより好適に発揮される。なお、本明細書における「電極始端積層部における第2領域と第3領域との隙間」は、第2領域から第3領域までの距離から、当該第2領域と第3領域との間に介在するセパレータの総厚みを引いた値である。
【0076】
また、
図10に示す実施形態では、電極始端積層部48の第2領域27と第3領域29との間に介在するセパレータ30が第2セパレータ34のみである。しかし、第2領域と第3領域との間に介在させるセパレータは、第2セパレータに限定されない。例えば、
図11に示す実施形態では、電極始端積層部48の第2領域27と第3領域29との間に、第1セパレータ32と第2セパレータ34の両方が介在している。具体的には、
図11に示す実施形態では、第1セパレータ32の第1延出部32eと、第2セパレータ34の第2延出部34eの各々が、上側の湾曲部40r1に沿って折り返され、第2領域27と第3領域29との間に差し込まれている。かかる構成によると、3層以上のセパレータ30を第2領域27と第3領域29との間に配置できる。これによって、電極始端積層部48における第2領域27と第3領域29との間に存在する空隙をさらに容易に小さくすることができる。なお、
図11に示すように、第2領域27と第3領域29との間に差し込まれた第1延出部32eと第2延出部34eは、負極板20の折り返し部28に沿うように折り返されていてもよい。これによって、4層以上のセパレータを第2領域27と第3領域29との間に介在させ、第2領域27と第3領域29との間に存在する空隙を更に小さくできる。
【0077】
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明する。なお、以下に記載する試験例の内容は、本発明を限定することを意図したものではない。
【0078】
1.各サンプルの作製
本試験では、正極始端部と負極始端部の配置位置が異なる4種類の捲回電極体(サンプル1~4)を作製した。以下、各サンプルについて具体的に説明する。
【0079】
(1)サンプル1
本試験では、2枚のセパレータを介して正極板と負極板を積層した積層体を作成し、当該積層体を捲回した後にプレス成形することによって、扁平形状の捲回電極体を作製した。まず、正極板には、正極芯体(厚み13μmのアルミニウム箔)の両面に正極活物質層(厚さ60μm、幅280mm)が付与されたものを準備した。この正極板の正極活物質層には、正極活物質と、導電材と、バインダとが97.5:1.5:1.0の割合で含まれている。なお、正極活物質にはリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)を使用した。また、導電材にはアセチレンブラック(AB)を使用した。そして、バインダにはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を使用した。一方、負極板には、負極芯体(厚み8μmの銅箔)の両面に負極活物質層(厚さ80μm、幅285mm)が付与されたものを使用した。この負極板の負極活物質層には、負極活物質と、増粘剤と、バインダとが98.3:0.7:1.0の割合で含まれている。なお、負極活物質には黒鉛(グラファイト)を使用し、増粘剤にはカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用し、バインダにはスチレンブタジエンゴム(SBR)を使用した。そして、セパレータには、ポリエチレン(PE)製の多孔質基材層の表面に、アルミナ粉末とポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質表面層が形成されたものを使用した。なお、本試験では、セパレータの多孔質表面層が接着層として機能するように、多孔質表面層におけるPVdFの含有量を25質量%に調節した。
【0080】
次に、セパレータを介して正極板と負極板を積層させた積層体を作製し、当該積層体を捲回することによって筒状体を作製した。なお、本試験における捲回数は33回に設定した。そして、プレス成形を実施し、捲回後の筒状体を押し潰すことによって、扁平形状の捲回電極体を作製した。ここで、サンプル1の捲回電極体240では、
図13に示すように、負極始端部220sを湾曲部240r側に延出させ、負極板220における正極板210と重ならない領域(延出部)を折り返すという構成を採用した。具体的には、正極始端部210sから負極板220が延出した積層体を作製した後に、当該延出した負極板220を、正極板210と重ならないように折り曲げた。そして、積層体を捲回した後にプレス成形することによって、
図13に示す構造の捲回電極体240を作製した。
【0081】
(2)サンプル2
サンプル2では、正極始端部と負極始端部の配置位置を異ならせた点を除いて、サンプル1と同じ条件で捲回電極体を作製した。具体的には、サンプル2では、正極始端部と負極始端部が重なるように積層体を作製した後に、当該積層体を捲回して筒状体を作製した。そして、正極始端部と負極始端部が湾曲部に配置されるようにプレス成形を実施し、捲回電極体を作製した。なお、作製後の捲回電極体の断面を確認すると、
図12に示すように、正極始端部110sと負極始端部120sの両方が湾曲部140rまで届かず、湾曲部140r近傍の平坦部140fに配置されていた。さらに、正極始端部110sと負極始端部120sの配置位置が揃わず、正極始端部210sから負極板220が僅かに延出していた。
【0082】
(3)サンプル3
サンプル3では、正極始端部と負極始端部が平坦部に配置されるようにプレス成形の位置を調節した点を除いて、サンプル2と同じ条件で捲回電極体を作製した。作製した捲回電極体の断面を確認すると、正極始端部と負極始端部の両方が平坦部に配置されていたが、サンプル2と同様に正極始端部と負極始端部の配置位置が揃わず、正極始端部から負極板が僅かに延出していた。
【0083】
(4)サンプル4
サンプル4においても、正極始端部と負極始端部の配置位置を異ならせた点を除いて、サンプル1と同じ条件で捲回電極体を作製した。具体的には、サンプル4では、
図9に示すように、湾曲部40r2近傍の平坦部40fに、第1領域17と第2領域27と第3領域29とが重なった電極始端積層部48が形成されるように捲回電極体40を作製した。具体的には、正極始端部10sから負極板20が延出した積層体を作製した後に、負極板20の先端部分(第3領域29に相当)が正極板10と重なるように、延出させた負極板20を折り曲げた。そして、積層体を捲回した後に、負極板20を折り曲げた位置(折り返し部)が湾曲部に配置されるように筒状体をプレス成形することによって、
図9に示す構造の捲回電極体40を作製した。
【0084】
2.評価試験
(1)面圧分布評価
本評価では、各サンプルの捲回電極体の平坦部を押圧した際の面圧分布を調べた。具体的には、まず、試験対象の捲回電極体の平坦部を挟み込むように一対の感圧紙(富士フィルム社製)を貼り付けた。そして、押圧面が平坦な押圧治具を用いて、捲回電極体の平坦部を挟み込むように押圧した。このときの圧力は125kNに設定し、加圧時間は3秒に設定した。その後、捲回電極体から感圧紙を取り外し、当該加圧紙の変色部分(被加圧部分)を目視で観察した。結果を
図14~
図17に示す。
図14は、サンプル1の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
図15は、サンプル2の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
図16は、サンプル3の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
図17は、サンプル4の面圧分布評価の結果を示す感圧紙の写真である。
【0085】
(2)Li析出耐性評価
本評価では、各サンプルの捲回電極体を使用したリチウムイオン二次電池を構築し、当該リチウムイオン二次電池のLi析出耐性を評価した。具体的には、各サンプルにおいて、捲回電極体を3個ずつ作製し、各々の捲回電極体を電極端子と接続した後に電池ケース内に収容した。そして、電池ケース内に非水電解液を注液した後に、電池ケースを密閉することによって、試験用のリチウムイオン二次電池を構築した。なお、本評価において使用した非水電解液は、ECとDMCとEMCとを3:4:3の体積比で混合した非水溶媒に、支持塩(LiPF6)を1mоl/Lの濃度で溶解させたものである。
【0086】
そして、構築後の試験用電池を20℃の環境に配置し、所定条件のCC充電とCC放電を繰り返すサイクル充放電を1000サイクル繰り返した。なお、本評価試験におけるCC充電では、1Cの充電レートで100秒間充電した。一方、CC放電では、1Cの放電レートで100秒間放電した。そして、上述のサイクル充放電を実施した後にSOCが0%になるまで放電し、試験用電池を解体して負極板を回収した。そして、負極活物質層の表面に金属Liが析出しているか否かを目視で観察した。
【0087】
(3)試験結果
まず、
図14~
図16に示すように、面圧分布評価を実施した結果、サンプル1~3では、試験後の感圧紙に殆ど変色していない(圧力が加わっていない)未加圧領域Aが部分的に生じていることが確認された。具体的には、サンプル1~3においては、湾曲部の近傍の平坦部に、捲回電極体の捲回軸に沿った線状の未加圧領域Aが生じていることが分かった。そして、Li析出耐性評価を実施した結果、この未加圧領域Aの近傍における負極活物質層の表面に金属Liが析出していた。特に、サンプル3では、サンプル1や2と比べて広い未加圧領域Aが生じており、より多くの金属Liの析出が確認された。
【0088】
一方、
図17に示すように、サンプル4の面圧分布評価では、湾曲部の近傍の平坦部に充分な圧力が加わっており、サンプル1~3のような未加圧領域Aが生じていなかった。そして、Li析出耐性評価の結果、サンプル4では、金属Liの析出が殆ど確認されなかった。以上の結果から、
図9に示すように、正極板10の第1領域17と、負極板20の第2領域27と、負極板20の第3領域29とが重なった電極始端積層部48が形成されるように、正極始端部10sと負極始端部20sの配置位置を調節することによって、金属Liの析出を適切に抑制できることが分かった。
【0089】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の説明は例示にすぎない。すなわち、ここで開示される技術には上述した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10 正極板
10e 正極終端部
10s 正極始端部
17 第1領域
20 負極板
20e 負極終端部
20s 負極始端部
27 第2領域
28 折り返し部
29 第3領域
30 セパレータ
32 第1セパレータ
32e 第1延出部
34 第2セパレータ
34e 第2延出部
40 捲回電極体
40f 平坦部
40r1 上側の湾曲部
40r2 下側の湾曲部
48 電極始端積層部
49 セパレータ積層部
50 電池ケース
100 二次電池