(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012795
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】環境管理装置、環境形成システム、プログラム、及び環境管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114881
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 剛
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050AA02
2G050CA01
2G050DA01
2G050EA01
2G050EA02
2G050EA04
(57)【要約】
【課題】環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能な、環境管理装置を得る。
【解決手段】計時部73による計測のうち、判定部72によって温度測定値が所定の温度条件を満たすと判定されている期間内の計測を有効と判断する。一方、判定部72によって温度測定値が所定の温度条件を満たさないと判定されている期間内の計測を無効と判断する。これにより、制御部74は対象物100に対する試験実行時間を管理する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境形成室内に配置される対象物に対する処理の実行時間を管理する環境管理装置であって、
前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、前記環境センサから取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを判定する判定部と、
時間を計測する計時部と、
前記計時部による計測のうち、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を管理する制御部と、
を備える、環境管理装置。
【請求項2】
前記環境形成室の内部空間は、それぞれに前記対象物を配置可能な複数のエリアに区画可能であり、
一以上のエリアに異なる前記環境条件を設定可能であり、
前記制御部は、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を前記環境条件が異なるエリア別に管理可能である、請求項1に記載の環境管理装置。
【請求項3】
前記環境形成室の内部空間は、それぞれに前記対象物を配置可能な複数のエリアに区画可能であり、
前記環境センサは、一以上のエリアに配置されており、
前記制御部は、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間をエリアを分けて管理可能である、請求項1又は2に記載の環境管理装置。
【請求項4】
環境形成室内に配置される対象物に対する処理の実行時間を管理する環境管理装置に搭載される情報処理装置を、
前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、前記環境センサから取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
時間を計測する計時手段と、
前記計時手段による計測のうち、前記判定手段によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定手段によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を管理する制御手段と、
として機能させるための、プログラム。
【請求項5】
処理の対象物が配置される環境形成室内に、前記処理を実行するための環境を形成する環境形成装置と、
前記対象物に対する前記処理の実行時間を管理する環境管理装置と、
を備え、
前記環境管理装置は、
前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、前記環境センサから取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを判定する判定部と、
時間を計測する計時部と、
前記計時部による計測のうち、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を管理する制御部と、
を有する、環境形成システム。
【請求項6】
環境形成室内に配置される対象物に対する処理の実行時間を管理する環境管理方法であって、
前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、取得部が前記環境センサから取得し、
前記取得部が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを、判定部が判定し、
計時部が時間を計測し、
前記計時部による計測のうち、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を制御部が管理する、
環境管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境管理装置、環境形成システム、プログラム、及び環境管理方法に関し、特に、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能な、環境管理装置、環境形成システム、プログラム、及び環境管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の被試験物の性能等を評価するための試験として、環境試験が知られている。環境試験では、試験室内に収容された被試験物に対して温度等の環境ストレスを印加することにより、被試験物の性能等が評価される。また、環境試験を実施するための装置として、環境試験装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、複数のユーザによって共用可能な環境試験装置が開示されている。当該環境試験装置は、被試験物を高温環境と低温環境とに繰り返しさらすことによって、被試験物に対して温度ストレスを印加する試験を実行する。当該環境試験装置の試験室は、物理的又は仮想的に複数の区画に区切られている。各ユーザは、タッチパネル式の表示装置に表示された設定画面によって、自身が使用する区画及び試験条件(繰り返しのサイクル数)を設定する。環境試験装置は試験のサイクル数をカウントし、試験のサイクル数がいずれかのユーザによって設定されたサイクル数に到達すると、スピーカーからブザー音が雷鳴する。ユーザは、環境試験装置の動作を手動で停止させ、自身の被試験物を試験室から取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のユーザによって1台の環境試験装置が共用されて同時に使用される場合がある(いわゆる「相乗り試験」)。この場合、ユーザごとに試験の実行時間(開始時刻及び終了時刻)が異なることが多く、試験室への被試験物の出し入れのために、環境試験装置の動作中に各ユーザによって試験室の扉が開閉される可能性がある。
【0006】
環境試験装置の動作中に試験室の扉が開けられると、試験室の内部の空気が外部に漏れ出るため、試験室内に形成されていた温度及び湿度等の環境条件が、試験実行中の所定範囲から逸脱する場合がある。そのため、いずれかのユーザによって試験室の扉が開けられていた時間を、試験実行時間から除外する必要がある。そこで、各ユーザが試験室の扉を開けていた時間を記入する等し、当該時間の情報をもとに自身の被試験物に対する試験実行時間を調整する必要がある。各ユーザにとって、その調整作業は煩雑で非効率である。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された環境試験装置によると、試験室の扉の開閉に伴う環境条件の変動については何ら対策がとられていないため、試験室の扉が開けられたことによって環境条件が所定範囲から逸脱した場合には、被試験物に対して適正な環境ストレスを印加できない状況が生じる可能性がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能な、環境管理装置、環境形成システム、プログラム、及び環境管理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る環境管理装置は、環境形成室内に配置される対象物に対する処理の実行時間を管理する環境管理装置であって、前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、前記環境センサから取得する取得部と、前記取得部が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを判定する判定部と、時間を計測する計時部と、前記計時部による計測のうち、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を管理する制御部と、を備えるものである。
【0010】
この態様によれば、制御部は、計時部による計測のうち、判定部によって環境測定値が環境条件を満たすと判定されている期間内の計測を有効と判断し、判定部によって環境測定値が環境条件を満たさないと判定されている期間内の計測を無効と判断することにより、対象物に対する処理の実行時間を管理する。従って、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられたことに起因して環境測定値が所定の環境条件から逸脱した場合には、その逸脱期間に関しては計時部による計測が無効と判断されて処理の実行時間から除外される。その結果、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能となる。また、環境形成装置が環境試験装置である場合には、試験時間が適切に管理されることによって、対象物に対して過不足のない所望の環境ストレスを印加できるため、試験精度を向上させることが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記環境形成室の内部空間は、それぞれに前記対象物を配置可能な複数のエリアに区画可能であり、一以上のエリアに異なる前記環境条件を設定可能であり、前記制御部は、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を前記環境条件が異なるエリア別に管理可能であることが望ましい。
【0012】
この態様によれば、環境形成室内の一以上のエリアに異なる環境条件を設定可能であり、制御部は、対象物に対する処理の実行時間を環境条件が異なるエリア別に管理可能である。従って、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた際のエリアごとの環境の変化態様が既知である場合に、各エリアの変化態様に応じてエリア別に異なる環境条件を設定することにより、全エリアにおいて対象物に対する処理の実行時間を適切に管理することが可能となる。また、規格等で許容される環境条件(許容差)が異なる場合においても、対象物に対する処理の実行時間を適切に管理することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記環境形成室の内部空間は、それぞれに前記対象物を配置可能な複数のエリアに区画可能であり、前記環境センサが、一以上のエリアに配置され、前記制御部は、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間をエリアを分けて管理可能であることが望ましい。
【0014】
この態様によれば、環境形成室内の一以上のエリアに環境センサが配置された状態で、制御部は、対象物に対する処理の実行時間をエリアを分けて管理可能である。従って、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた際のエリアごとの環境の変化態様が未知の場合であっても、一以上のエリアに配置された環境センサによる環境測定値に基づいて判定部がエリアを分けて判定を行うことにより、全エリアにおいて対象物に対する処理の実行時間を適切に管理することが可能となる。
【0015】
本発明の一態様に係るプログラムは、環境形成室内に配置される対象物に対する処理の実行時間を管理する環境管理装置に搭載される情報処理装置を、前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、前記環境センサから取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを判定する判定手段と、時間を計測する計時手段と、前記計時手段による計測のうち、前記判定手段によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定手段によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を管理する制御手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0016】
この態様によれば、制御手段は、計時手段による計測のうち、判定手段によって環境測定値が環境条件を満たすと判定されている期間内の計測を有効と判断し、判定手段によって環境測定値が環境条件を満たさないと判定されている期間内の計測を無効と判断することにより、対象物に対する処理の実行時間を管理する。従って、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられたことに起因して環境測定値が所定の環境条件から逸脱した場合には、その逸脱期間に関しては計時手段による計測が無効と判断されて処理の実行時間から除外される。その結果、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能となる。また、環境形成装置が環境試験装置である場合には、試験時間が適切に管理されることによって、対象物に対して過不足のない所望の環境ストレスを印加できるため、試験精度を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の一態様に係る環境形成システムは、処理の対象物が配置される環境形成室内に、前記処理を実行するための環境を形成する環境形成装置と、前記対象物に対する前記処理の実行時間を管理する環境管理装置と、を備え、前記環境管理装置は、前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、前記環境センサから取得する取得部と、前記取得部が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを判定する判定部と、時間を計測する計時部と、前記計時部による計測のうち、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を管理する制御部と、を有するものである。
【0018】
この態様によれば、制御部は、計時部による計測のうち、判定部によって環境測定値が環境条件を満たすと判定されている期間内の計測を有効と判断し、判定部によって環境測定値が環境条件を満たさないと判定されている期間内の計測を無効と判断することにより、対象物に対する処理の実行時間を管理する。従って、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられたことに起因して環境測定値が所定の環境条件から逸脱した場合には、その逸脱期間に関しては計時部による計測が無効と判断されて処理の実行時間から除外される。その結果、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能となる。また、環境形成装置が環境試験装置である場合には、試験時間が適切に管理されることによって、対象物に対して過不足のない所望の環境ストレスを印加できるため、試験精度を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明の一態様に係る環境管理方法は、環境形成室内に配置される対象物に対する処理の実行時間を管理する環境管理方法であって、前記環境形成室内に配置される環境センサによって測定された、前記環境形成室内の環境測定値を、取得部が前記環境センサから取得し、前記取得部が取得した前記環境測定値が、前記処理を実行するための所定の環境条件を満たすか否かを、判定部が判定し、計時部が時間を計測し、前記計時部による計測のうち、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たすと判定されている期間内の前記計測を有効と判断し、前記判定部によって前記環境測定値が前記環境条件を満たさないと判定されている期間内の前記計測を無効と判断することにより、前記対象物に対する前記処理の前記実行時間を制御部が管理するものである。
【0020】
この態様によれば、制御部は、計時部による計測のうち、判定部によって環境測定値が環境条件を満たすと判定されている期間内の計測を有効と判断し、判定部によって環境測定値が環境条件を満たさないと判定されている期間内の計測を無効と判断することにより、対象物に対する処理の実行時間を管理する。従って、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられたことに起因して環境測定値が所定の環境条件から逸脱した場合には、その逸脱期間に関しては計時部による計測が無効と判断されて処理の実行時間から除外される。その結果、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能となる。また、環境形成装置が環境試験装置である場合には、試験時間が適切に管理されることによって、対象物に対して過不足のない所望の環境ストレスを印加できるため、試験精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、環境形成装置の動作中に環境形成室の扉が開けられた場合であっても、対象物に対する処理の実行時間を効率的に管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る環境形成システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】環境試験装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】サーバ装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【
図4】試験の予約時に端末装置の画面に表示される入力画面の例を簡略化して示す図である。
【
図5】試験の開始時に端末装置の画面に表示される入力画面の例を簡略化して示す図である。
【
図6】環境試験装置の動作中に扉が開けられた際の環境形成室内の温度変化の例を示す図である。
【
図7】環境試験装置の動作中に扉が閉められた際の環境形成室内の温度変化の例を示す図である。
【
図8】サーバ装置が管理する管理情報の例を示す図である。
【
図9】対象物に対する環境試験が開始された後にサーバ装置が実行する環境管理処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】対象物に対する環境試験が開始された後にサーバ装置が実行する環境管理処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】対象物に対する環境試験が開始された後にサーバ装置が実行する環境管理処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0024】
<環境形成システムの全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る環境形成システム1の全体構成を模式的に示す図である。
図1に示すように環境形成システム1は、いずれも通信ネットワーク41に接続された、環境試験装置11~13、サーバ装置21、及び端末装置31~33を備えている。環境試験装置11~13は、試験の対象物が配置される試験室内に、当該試験を実行するための環境(温度、湿度、又は圧力等)を形成する環境形成装置である。サーバ装置21は、環境試験装置11~13を管理対象として、試験の対象物に対する試験の実行時間等を管理する環境管理装置である。端末装置31~33は、試験を実行するユーザに対して情報を表示し、かつ、ユーザからの操作入力を受け付けるユーザ端末である。端末装置31~33は、例えば携帯端末であり、具体的にはノートPC、タブレット、又はスマートフォン等である。なお、環境試験装置11~13の台数は1台以上であれば良く、端末装置31~33の台数も1台以上であれば良い。また、サーバ装置21の管理機能並びに端末装置31~33の表示機能及び入力機能を、各環境試験装置11~13内に実装することも可能である。通信ネットワーク41は、イントラネット等の任意の通信ネットワークであり、図略のLANケーブル及びスイッチングハブ等を備えて構成されている。但し、通信ネットワーク41は無線の通信ネットワークであっても良い。
【0025】
本実施の形態の例において、環境試験装置11~13は、試験の対象物に対して所定の温度ストレスを印加することによって対象物の性能等を評価するための恒温試験装置(恒温器)として構成されている。但し、環境形成装置によって形成される環境は温度に限らず、湿度、圧力、又は温度とこれらの環境との組合せ等であっても良い。試験温度は環境試験装置11~13ごとに異なり、例えば、環境試験装置11の試験温度は85℃に、環境試験装置12の試験温度は150℃に、環境試験装置13の試験温度は-50℃に、それぞれ設定されている。試験の対象物は、例えば、回路基板等の電子部品、又はスマートフォン等の電子機器である。なお、環境試験装置11~13は、試験の対象物に対して所定の温度ストレス及び湿度ストレスを印加する恒温恒湿試験装置として構成されても良い。また、環境試験装置11~13は、試験の対象物に対して所定の高温ストレス及び低温ストレスを交互に繰り返し印加する温度サイクル試験装置として構成されても良い。また、環境試験装置11~13は、試験の対象物に対して所定の温度ストレス及び電圧ストレスを印加することによって初期不良品をスクリーニングするためのバーンイン試験装置として構成されても良い。
【0026】
<環境試験装置の構成>
図2は、環境試験装置11の構成を模式的に示す図である。環境試験装置12,13の構成もこれと同様である。
図2に示すように環境試験装置11は、断熱性の筐体51と、筐体51によって囲まれた試験室52(環境形成室)と、試験室52へのアクセス時に開閉される断熱性の扉53とを備えている。また、環境試験装置11は、液晶ディスプレイ等の表示部54と、操作スイッチ等の操作部55とを備えている。但し、タッチパネル式のディスプレイが用いられることにより、表示部54と操作部55とが一体として構成されていても良い。また、環境試験装置11は、試験機能及び通信機能を含む環境試験装置11の全体動作の制御を司る制御部50を、備えている。
【0027】
試験室52内には、試験の対象物100を載置するための網目状の棚板58,59が2段に配置されている。但し、棚板は2段に限らず、1段以上あれば良い。また、棚板に限らず、試験室52の内部空間を物理的又は仮想的に区切っても良い。さらに、下段の棚板58は試験室52の床板であっても良い。棚板58の載置面は4つのエリアAR11~AR14に区画されており、棚板59の載置面は4つのエリアAR21~AR24に区画されている。これにより、本実施の形態の例では試験室52の内部空間が合計8つのエリアAR11~AR14,AR21~AR24に区画されている。但し、区画されるエリアの数は8つに限らず、2つ以上であれば良い。互いに隣接するエリア同士は、柵又は枠等によって物理的に区画されても良いし、目印等又は運用ルールによって仮想的に区画されても良い。試験室52の奥面の上部には、図略の空調室内で生成された空調空気を送風ファンによって試験室52内に送出するための吹き出し口56が配置されている。また、吹き出し口56の近傍には、試験室52内の温度を測定するための温度センサ57が配置されている。また、図示は省略するが、試験室52の奥面の下部には、試験室52内から空気を排出して当該空気を空調室に循環させるための排気口が設けられている。但し、吹き出し口56、温度センサ57、及び排気口の配置レイアウトは、上記の例には限られない。
【0028】
<サーバ装置の構成>
図3は、サーバ装置21の構成を簡略化して示すブロック図である。
図3に示すようにサーバ装置21は、情報処理部61、記憶部62、及び通信部63を備えている。情報処理部61は、CPU等の情報処理装置を用いて構成されている。記憶部62は、HDD又はSSD等の不揮発性の記憶装置を用いて構成されている。情報処理部61は、取得部71、判定部72、計時部73、及び制御部74を有している。情報処理部61が有するこれらの機能は、記憶部62から読み出したプログラムを情報処理部61が実行することによってソフトウェア的に実現されても良いし、FPGA等の専用回路を用いてハードウェアとして実現されても良い。
【0029】
以下、管理対象が環境試験装置11である場合を例にとり、情報処理部61の機能の概要について説明する。
【0030】
取得部71は、温度センサ57によって測定された試験室52内の温度測定値を、環境試験装置11から通信ネットワーク41及び通信部63を介して取得する。
【0031】
判定部72には、取得部71が取得した温度測定値が信号S1として入力される。判定部72は、信号S1で示される温度測定値が、環境試験装置11において試験を実行するための所定の温度条件を満たすか否かを判定する。温度条件の設定手法の詳細については後述する。
【0032】
計時部73は、クロック周期が既知であるシステムクロック等のクロック数をカウントすることによって時間を計測し、その時間の計測値を制御部74に逐次入力する。
【0033】
制御部74には、判定部72による判定結果が信号S2として入力され、また、計時部73による時間の計測値が信号S3として入力される。制御部74は、判定部72によって温度測定値が温度条件を満たすと判定されている期間内においては計時部73による時間の計測を有効と扱い、一方、判定部72によって温度測定値が温度条件を満たさないと判定されている期間内においては計時部73による時間の計測を無効と扱うことにより、対象物100に対する試験実行時間を管理する。なお、制御部74は、計時部73による時間の計測を有効と扱うことに代えて、計時部73による時間の計測動作自体を許可し、計時部73による時間の計測を無効と扱うことに代えて、計時部73による時間の計測動作自体を禁止しても良い。
【0034】
<端末装置における入力画面への入力例>
以下、ユーザが端末装置31を操作する場合の例について説明する。
図4は、試験の予約時に端末装置31の画面に表示される入力画面81の例を簡略化して示す図である。環境試験装置11~13における試験の実行状況及び予約状況はサーバ装置21が管理しており、ユーザは、端末装置31からサーバ装置21にアクセスすることによって、試験の予約を行うことができる。
【0035】
ユーザは、所望する試験温度に応じて環境試験装置11~13のいずれかを選択し、その選択した環境試験装置の装置IDを入力画面81に入力する。ここでは、環境試験装置11が選択されたものとする。
【0036】
また、ユーザは、試験の開始日時及び予定終了日時を入力画面81に入力する。
【0037】
さらに、ユーザは、環境試験装置11のエリアAR11~14,AR21~24のいずれかの空きエリアを選択し、その選択したエリアのエリアIDを入力画面81に入力する。
【0038】
また、ユーザは、試験の開始日時の直前にサーバ装置21から通知メールによる連絡を受けることを希望する場合には、その通知メールを受信するメールアドレスを入力する。
【0039】
入力画面81への必要項目の入力が完了すると、ユーザは予約ボタン82をクリック又はタップする。これにより、入力画面81に入力された情報が予約情報として端末装置31からサーバ装置21に送信される。サーバ装置21は、端末装置31から受信した予約情報を記憶部62に格納することによって管理する。
【0040】
図5は、試験の開始時に端末装置31の画面に表示される入力画面83の例を簡略化して示す図である。
【0041】
ユーザは、温度の逸脱条件を入力画面83に入力する。逸脱条件としては、試験を実行するための温度条件の許容範囲の上限値及び下限値が設定される。
図5に示した例のように上限値が+5℃、下限値が-5℃に設定された場合には、温度条件が85℃に設定されている環境試験装置11に関しては、温度条件の許容範囲は80℃以上90℃以下の範囲となる。環境試験装置11の試験室52内の温度がこの許容範囲内である場合には、試験実行時間のカウントが継続される。一方、環境試験装置11の試験室52内の温度がこの許容範囲から逸脱している場合には、試験実行時間のカウントが停止される。
【0042】
図6は、環境試験装置11の動作中に扉53が開けられた際の試験室52内の温度変化の例を示す図である。例えば、環境試験装置11の動作中の時刻T11において扉53が開けられて、試験室52内の温度が85℃から徐々に低下する。時刻T12において試験室52内の温度が80℃未満まで低下することにより、逸脱条件が成立している。
【0043】
ユーザは試験予約時にエリアを任意に選択し、また、選択したエリアに関して逸脱条件を任意に設定できるため、試験室52のエリア別に逸脱条件を任意に設定可能ということになる。環境試験装置11の動作中に扉53が開けられた際の試験室52内の温度の変化態様は、エリアの場所によって異なる。例えば、吹き出し口56に近いエリアほど温度変化は小さく、吹き出し口56から遠いエリアほど温度変化は大きい傾向がある。また、扉53に近いエリアほど温度変化は大きく、扉53から遠いエリアほど温度変化は小さい傾向がある。このように傾向が既知である場合には、ユーザは、自身が選択したエリアが温度変化の大きいエリアであるときには、逸脱条件を厳しく設定(つまり許容範囲を狭く設定)し、一方、自身が選択したエリアが温度変化の小さいエリアであるときには、逸脱条件を緩く設定(つまり許容範囲を広く設定)することが可能である。なお、1エリア毎に逸脱条件を設定するのではなく、いくつかのエリアをまとめたグループ単位で逸脱条件を設定しても良い。
【0044】
また、ユーザは、温度の復帰条件を入力画面83に入力する。復帰条件としては、温度条件の許容範囲の上限値及び下限値に加えて、継続時間が設定される。
図5に示した例では、上限値が+5℃、下限値が-5℃、継続時間が60秒に設定されている。ユーザは、対象物100の熱容量等に応じて、継続時間を任意に設定することができる。試験室52内の温度が許容範囲外から許容範囲内に回復した後、その状態で上記継続時間が経過することにより、復帰条件が成立する。
【0045】
上記逸脱条件の成立によって試験実行時間のカウントが停止された後、復帰条件が成立することによって、試験実行時間のカウントが再開される。
【0046】
図7は、環境試験装置11の動作中に扉53が閉められた際の試験室52内の温度変化の例を示す図である。この例では、扉53が閉められたことにより試験室52内の温度が次第に上昇し、時刻T21において許容範囲の下限の80℃まで回復している。試験室52内の温度はさらに上昇し、時刻T21から継続時間60秒が経過する前の時刻T22において許容範囲の上限の90℃を超えている。その後、試験室52内の温度が下降に転じ、時刻T23において試験室52内の温度が許容範囲の上限の90℃まで回復している。そして、試験室52内の温度がさらに低下し、時刻T23から継続時間60秒が経過する前の時刻T24において許容範囲の下限の80℃未満となっている。その後、試験室52内の温度が上昇に転じ、時刻T25において許容範囲の下限の80℃まで回復している。試験室52内の温度が許容範囲内に収まっている状態が時刻T25から継続時間60秒が経過するまで継続したことにより、時刻T26において復帰条件が成立している。
【0047】
また、ユーザは、所望する最終的な試験実行時間(以下「最終実行時間」と称す)を、入力画面83に入力する。
図5に示した例では、最終実行時間は100時間に設定されている。
【0048】
さらに、ユーザは、試験の終了時にサーバ装置21から通知メールによる連絡を受けることを希望する場合には、その通知メールを受信するメールアドレスを入力する。
【0049】
入力画面83への必要項目の入力が完了した後、ユーザは、動作中の環境試験装置11の扉53を開けて、試験室52内の自身が選択したエリアに対象物100を収容し、再び扉53を閉める。その後、ユーザは開始ボタン84をクリック又はタップする。これにより、当該ユーザによって投入された対象物100に対する環境試験が開始される。入力画面83に入力された情報は、設定情報として端末装置31からサーバ装置21に送信される。サーバ装置21は、端末装置31から受信した設定情報に基づいて管理情報85(
図8参照)を作成し、その管理情報85を記憶部62に格納して管理する。
【0050】
図8は、サーバ装置21が管理する管理情報85の例を示す図である。サーバ装置21は、設定情報に含まれていた逸脱条件、復帰条件、及びメールアドレスに加え、設定情報に含まれていた最終実行時間に対して現時点で完了している試験実行時間(以下「現在実行時間」と称す)のカウント値を、管理情報85として管理する。
図8に示した例では、100時間に設定されている最終実行時間に対して現在実行時間は15分である。
【0051】
<サーバ装置の動作>
図9は、対象物100に対する環境試験が開始された後にサーバ装置21が実行する環境管理処理の流れを示すフローチャートである。サーバ装置21は、以下に説明する処理によって、対象物100に対する試験実行時間を管理する。
【0052】
ユーザによって開始ボタン84がクリック又はタップされると、まずステップSP101において、制御部74が、計時部73から逐次入力される信号S3に基づいて、所定時間(以下の例では「1分」とする)が経過したか否かを判定する。但し、所定時間は1分に限られず、数秒から数分程度の任意の時間であって良い。
【0053】
1分が経過していない場合(ステップSP101:NO)は、制御部74は、1分が経過するまでステップSP101の処理を繰り返し実行する。
【0054】
1分が経過した場合(ステップSP101:YES)、ステップSP102において、取得部71が、その時点で温度センサ57によって測定された試験室52内の温度測定値を、環境試験装置11から通信ネットワーク41及び通信部63を介して取得する。取得部71は、取得した温度測定値を信号S1として判定部72に入力する。
【0055】
次にステップSP103において、判定部72が、信号S1で示される温度測定値と管理情報85で設定されている逸脱条件に基づく温度条件の許容範囲とを比較することにより、温度測定値が温度条件の許容範囲内(上記の例では80℃以上90℃以下)にあるか否かを判定する。判定部72は、判定結果を信号S2として制御部74に入力する。
【0056】
温度測定値が許容範囲内にない場合(ステップSP103:NO)、ステップSP101に戻って、次の1分が経過するのを待つ。ステップSP101に戻る際、制御部74は、計時部73によって今回計測された1分を現在実行時間のカウント値に反映させる処理を行わない(つまり今回の計測を無効とする)。
【0057】
温度測定値が許容範囲内にある場合(ステップSP103:YES)、ステップSP104に進み、制御部74は、計時部73によって今回計測された1分を現在実行時間のカウント値に反映させる。つまり、今回の計測を有効とし、管理情報85の現在実行時間のカウント値に1分を加算する。
【0058】
次にステップSP105において、制御部74は、管理情報85の現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達したか否かを判定する。
【0059】
現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達していない場合(ステップSP105:NO)、ステップSP101に戻って次の1分が経過するのを待つ。
【0060】
現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達した場合(ステップSP105:YES)、ステップSP106において、制御部74は、管理情報85で設定されているメールアドレス宛に、試験が終了した旨を示す通知メールを送信する。端末装置31が当該通知メールを受信すると、リセットボタンを含む試験終了画面が、端末装置31の画面に表示される。ユーザは、動作中の環境試験装置11の扉53を開けて、試験室52内の自身が使用していたエリアから対象物100を取り出し、再び扉53を閉める。その後、端末装置31の画面に表示されているリセットボタンをクリック又はタップすることにより、自身が使用していたエリアが空きエリアとしてサーバ装置21によって管理される。
【0061】
<作用効果>
本実施の形態によれば、判定部72によって温度測定値が所定の温度条件を満たすと判定されている期間内において、制御部74は計時部73による計測を有効とする。一方、判定部72によって温度測定値が所定の温度条件を満たさないと判定されている期間内において、制御部74は計時部73による計測を無効とする。このように、制御部74が対象物100に対する試験実行時間を管理する。つまり、環境試験装置11の動作中に試験室52の扉53が開けられたことに起因して温度測定値が所定の温度条件から逸脱した場合には、その逸脱期間に関しては計時部73による計測が無効とされて試験実行時間から除外される。その結果、環境試験装置11の動作中に試験室52の扉53が開けられた場合であっても、対象物100に対する試験実行時間を効率的に管理することが可能となる。また、試験実行時間が適切に管理されることによって、対象物100に対して過不足のない所望の温度ストレスを印加できるため、試験精度を向上させることが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、試験室52内のエリア別に異なる温度条件を設定可能であり、制御部74は、対象物100に対する試験実行時間をエリア別に管理する。従って、環境試験装置11の動作中に試験室52の扉53が開けられた際のエリアごとの温度の変化態様が既知である場合に、各エリアの変化態様に応じてエリア別に異なる温度条件を設定することにより、全エリアにおいて対象物100に対する試験実行時間を適切に管理することが可能となる。また、規格等で許容される環境条件(許容差)が異なる場合においても、対象物に対する処理の実行時間を適切に管理することが可能となる。
【0063】
以下、上記実施の形態に係る環境形成システム1の様々な変形例について説明する。以下に述べる変形例は、任意に組み合わせて適用することが可能である。
【0064】
<第1変形例>
上記実施の形態では試験室52内に温度センサ57が1つのみ配置されたが、温度センサ57はエリア別に配置されても良い。例えば、
図2に示したように試験室52の内部空間が8つのエリアAR11~AR14,AR21~AR24に区画されている場合には、各エリアに1つずつ、合計8つの温度センサ57が配置されても良い。各温度センサ57は、例えば、各エリアの棚板58,59上に配置される。なお、エリアと温度センサ57とを1対1で対応付けるのではなく、複数のエリアに対して1つの温度センサ57を対応付けても良い。例えば、棚板58の中央に温度センサを設けて当該温度センサとエリアAR11~AR14とを対応付け、エリアAR21,AR22の境界に温度センサを設けて当該温度センサとエリアAR21,AR22とを対応付け、エリアAR23,AR24の境界に温度センサを設けて当該温度センサとエリアAR23,AR24とを対応付けても良い。
【0065】
本変形例の場合は、
図9に示したフローチャートのステップSP102において、取得部71は、ユーザにより選択されたエリアに配置された温度センサ57によって測定された、当該エリアの温度測定値を、環境試験装置11から取得する。取得部71は、取得した温度測定値を信号S1として判定部72に入力する。
【0066】
そして、ステップSP103において、判定部72は、信号S1で示される温度測定値と、管理情報85で設定されている逸脱条件に基づく温度条件の許容範囲とを比較することにより、ユーザにより選択されたエリアの温度測定値が、温度条件の許容範囲(上記の例では80℃以上90℃以下)内にあるか否かを判定する。判定部72は、判定結果を信号S2として制御部74に入力する。
【0067】
本変形例によれば、試験室52内のエリア別に温度センサ57が配置されており、制御部74は、対象物100に対する試験実行時間をエリア別に管理する。従って、環境試験装置11の動作中に試験室52の扉53が開けられた際のエリアごとの温度の変化態様が未知の場合であっても、エリア別に配置された温度センサ57による温度測定値に基づいて判定部72がエリア別に判定を行うことにより、全エリアにおいて対象物100に対する試験実行時間を適切に管理することが可能となる。なお、複数の温度センサ57が配置される本変形例においても、エリア別に異なる温度条件を設定しても良い。これにより、上記と同様に、規格等で許容される環境条件(許容差)が異なる場合においても、対象物に対する処理の実行時間を適切に管理することが可能となる。
【0068】
<第2変形例>
上記実施の形態では、試験室52内の温度測定値が環境試験装置11からサーバ装置21に1分毎に送信されることにより、制御部74による試験実行時間のカウントも1分単位で行われた。これに対し、環境試験装置11~13、サーバ装置21、及び通信ネットワーク41が十分に高速な通信機能を有する場合には、試験室52内の温度測定値を環境試験装置11~13からサーバ装置21にリアルタイム(例えば1秒又はそれ未満毎)で送信することにより、制御部74による試験実行時間のカウントをリアルタイムで行っても良い。なお、サーバ装置21の機能を、各端末装置31~33内又は各環境試験装置11~13内に実装しても良い。
【0069】
図10は、対象物100に対する環境試験が開始された後にサーバ装置21が実行する環境管理処理の流れを示すフローチャートである。
【0070】
ユーザによって開始ボタン84がクリック又はタップされると、まずステップSP201において、取得部71が、その時点で温度センサ57によって測定された試験室52内の温度測定値を、環境試験装置11から通信ネットワーク41及び通信部63を介して取得する。本変形例において、各環境試験装置11~13の制御部50は、試験室52内の温度測定値をリアルタイムでサーバ装置21に送信している。取得部71は、取得した温度測定値を信号S1として判定部72に入力する。
【0071】
次にステップSP202において、判定部72は、信号S1で示される温度測定値と、管理情報85で設定されている逸脱条件に基づく温度条件の許容範囲とを比較することにより、温度測定値が温度条件の許容範囲(上記の例では80℃以上90℃以下)内にあるか否かを判定する。判定部72は、判定結果を信号S2として制御部74に入力する。
【0072】
温度測定値が許容範囲内にない場合(ステップSP202:NO)は、ステップSP201に戻って、次の温度測定値が取得される。ステップSP201に戻る際、制御部74は、計時部73によるリアルタイムの時間計測値を現在実行時間のカウント値に反映させる処理(つまりカウンタをインクリメントする処理)を行わない。
【0073】
温度測定値が許容範囲内にある場合(ステップSP202:YES)は、ステップSP203に進み、制御部74は、計時部73によるリアルタイムの時間計測値を現在実行時間のカウント値に反映させることにより(つまりカウンタをインクリメントすることにより)、管理情報85の現在実行時間のカウント値を更新する。
【0074】
次にステップSP204において、制御部74は、管理情報85の現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達したか否かを判定する。
【0075】
現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達していない場合(ステップSP204:NO)は、ステップSP201に戻って次の温度測定値が取得される。
【0076】
現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達した場合(ステップSP204:YES)は、ステップSP205に進み、制御部74は、管理情報85で設定されているメールアドレス宛に、試験が終了した旨を示す通知メールを送信する。
【0077】
本変形例によれば、環境試験装置11~13が試験室52内の温度測定値をリアルタイムでサーバ装置21に送信し、サーバ装置21の制御部74が試験実行時間のカウントをリアルタイムで行うため、上記実施の形態と比較して対象物100に対する試験実行時間を細密に管理することができる。その結果、対象物100に対する環境試験の試験精度を向上させることが可能となる。
【0078】
<第3変形例>
上記実施の形態では、まず判定部72が判定を行い、温度測定値が許容範囲内にあれば、次に制御部74が現在実行時間のカウント値に1分を加算した。これに対し、まず制御部74が現在実行時間のカウント値に1分を加算し、次に判定部72が判定を行い、温度測定値が許容範囲内に含まれていなければ制御部74が現在実行時間のカウント値から1分を減算する構成としても良い。
【0079】
図11は、対象物100に対する環境試験が開始された後にサーバ装置21が実行する環境管理処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
ユーザによって開始ボタン84がクリック又はタップされると、まずステップSP100において、制御部74は、管理情報85の現在実行時間のカウント値に1分を加算する。
【0081】
次にステップSP101において、制御部74は、計時部73から逐次入力される信号S3に基づいて、1分が経過したか否かを判定する。
【0082】
1分が経過していない場合(ステップSP101:NO)は、制御部74は、1分が経過するまでステップSP101の処理を繰り返し実行する。
【0083】
1分が経過した場合(ステップSP101:YES)は、ステップSP102に進み、取得部71が、その時点で温度センサ57によって測定された試験室52内の温度測定値を、環境試験装置11から通信ネットワーク41及び通信部63を介して取得する。取得部71は、取得した温度測定値を信号S1として判定部72に入力する。
【0084】
次にステップSP103において、判定部72は、信号S1で示される温度測定値と、管理情報85で設定されている逸脱条件に基づく温度条件の許容範囲とを比較することにより、温度測定値が温度条件の許容範囲(上記の例では80℃以上90℃以下)内にあるか否かを判定する。判定部72は、判定結果を信号S2として制御部74に入力する。
【0085】
温度測定値が許容範囲内にない場合(ステップSP103:NO)は、ステップSP301に進み、制御部74が、管理情報85の現在実行時間のカウント値から1分を減算する。その後、ステップSP100に戻る。
【0086】
温度測定値が許容範囲内にある場合(ステップSP103:YES)は、ステップSP105に進み、制御部74は、管理情報85の現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達したか否かを判定する。
【0087】
現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達していない場合(ステップSP105:NO)は、ステップSP100に戻り、制御部74が、現在実行時間のカウント値に次の1分を加算する。
【0088】
現在実行時間のカウント値が最終実行時間に到達した場合(ステップSP105:YES)は、ステップSP106に進み、制御部74は、管理情報85で設定されているメールアドレス宛に、試験が終了した旨を示す通知メールを送信する。
【0089】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
<第4変形例>
上記実施の形態では、サーバ装置21は、恒温試験において試験実行時間を管理した。これに対し、サーバ装置21は、所定の高温ストレス及び低温ストレスを交互に繰り返し印加する温度サイクル試験において、温度測定値及び温度条件に基づいて試験のサイクル数を管理しても良い。温度サイクル試験においては、制御部74は、試験実行時間に代えて、現時点までに完了した温度サイクルのサイクル数のカウント値を、管理情報85の一つとして管理する。制御部74は、判定部72による判定結果に基づき、温度サイクルの1サイクル中の全ての期間において温度条件が許容範囲内にある場合には、管理情報85の現在のサイクル数のカウント値に「1」を加算する。一方、温度サイクルの1サイクル中のいずれかの期間で温度条件が許容範囲から逸脱している場合には、制御部74は、管理情報85の現在のサイクル数のカウント値に「1」を加算しない。
【0091】
これにより、温度ストレスの印加が不十分な温度サイクルはサイクル数にカウントされなくなり、温度サイクル試験の試験精度を向上させることが可能となる。
【0092】
また、上記実施の形態では、サーバ装置21は恒温試験において試験実行時間を管理した。これに対し、サーバ装置21は、試験の対象物100に対して温度ストレスと電圧ストレス(又は電流ストレス)とを印加するバーンイン試験等において、上述した試験実行時間の管理に加え、対象物100に印加する電圧ストレスを温度測定値及び温度条件に基づいて制御しても良い。制御部74は、判定部72による判定結果に基づき、温度測定値が温度条件の許容範囲内にある期間内においては、対象物100に規定の電圧ストレスを印加する。一方、温度測定値が温度条件の許容範囲内にない期間内においては、制御部74は、対象物100への電圧ストレスの印加を停止し、又は、対象物100へ印加する電圧ストレスを上記規定の電圧ストレスより低減させる。
【0093】
これにより、温度ストレスの印加が不十分で計時部73による計測が無効とされる期間内においては、対象物100への電圧ストレスの印加が停止又は低減されるため、無駄な電圧ストレスが対象物100へ印加される事態を回避できる。その結果、対象物100に印加する電圧ストレスを適正化できるため、バーンイン試験等の試験精度を向上させることが可能となる。
【0094】
なお、以上の説明では、環境形成装置が環境試験装置として構成されている例について述べたが、この例には限られない。環境形成装置は、対象物であるワークに対して熱処理を施すために所定の高温環境を形成する熱処理装置として構成されても良い。また、環境形成装置は、対象物である食品を加熱するために所定の高温環境を形成する調理装置として構成されても良い。
【符号の説明】
【0095】
1 環境形成システム
11~13 環境試験装置
21 サーバ装置
52 試験室(環境形成室)
53 扉
57 温度センサ
61 情報処理部
71 取得部
72 判定部
73 計時部
74 制御部
100 対象物
AR11~AR14,AR21~AR24 エリア