(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127950
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】二次電池および二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20220825BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20220825BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20220825BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20220825BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220825BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20220825BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M2/16 P
H01M2/16 M
H01M2/16 L
H01M2/22 B
H01G11/52
H01G11/84
H01G11/70
H01G11/74
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026205
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】三田 和隆
(72)【発明者】
【氏名】塚越 貴史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晋也
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB13
5E078BA09
5E078CA02
5E078CA07
5E078CA10
5E078CA11
5E078LA07
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE10
5H021EE21
5H021EE22
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
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5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
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5H029DJ04
5H029DJ05
5H029DJ13
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5H029EJ05
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA05
5H043BA19
5H043CA12
5H043EA02
5H043HA02E
5H043LA00
5H043LA02
5H043LA14
(57)【要約】
【課題】電極タブ群を折り曲げた状態の捲回電極体を電池ケースに収容する二次電池において、電極タブ群近傍の平坦部における局所的な極間距離の増大を抑制する。
【解決手段】ここに開示される二次電池は、扁平形状の捲回電極体と、捲回電極体を収容する電池ケースとを備えている。かかる二次電池の捲回電極体は、正極タブが積層された正極タブ群と、負極タブが積層された負極タブ群とを備えおり、正極タブ群と負極タブ群の各々は折り曲げられている。そして、かかる二次電池のセパレータ30は、帯状の基材層32と、無機粒子及びバインダを含む表面層34とを有している。そして、正極板10及び負極板20の少なくとも一方は、セパレータ30の表面層34と接着されている。これによって、セパレータ30を介して正極板10と負極板20との極間距離を適切に保持できるため、電極タブ群近傍における局所的な極間距離の増大を抑制できる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して正極板と負極板とが捲回された扁平形状の捲回電極体と、前記捲回電極体を収容する電池ケースとを備えた二次電池であって、
前記扁平形状の捲回電極体は、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、当該一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有し、
前記正極板は、帯状の正極芯体と、当該正極芯体の少なくとも一方の表面に形成された正極活物質層とを有し、
前記負極板は、帯状の負極芯体と、当該負極芯体の少なくとも一方の表面に形成された負極活物質層とを有し、
前記捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部に、前記正極芯体が露出した正極タブが積層された正極タブ群が形成され、かつ、前記捲回電極体の捲回軸方向における他方の端部に、前記負極芯体が露出した負極タブが積層された負極タブ群が形成され、
前記正極タブ群は、導電部材である正極集電体と接合された状態で折り曲げられており、前記負極タブ群は、導電部材である負極集電体と接合された状態で折り曲げられており、
前記セパレータは、帯状の基材層と、当該基材層の少なくとも一方の表面に形成され、無機粒子及びバインダを含む表面層とを有し、
前記平坦部における前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方は、前記セパレータの前記表面層と接着されている、二次電池。
【請求項2】
前記表面層の総質量に対する前記無機粒子の含有量が70質量%~80質量%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記表面層は、前記無機粒子として、アルミナ粒子およびベーマイト粒子の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記表面層は、前記バインダとして、ポリフッ化ビニリデンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記表面層は、複数の空隙を含む網目状構造を有している、請求項1~4のいずれかに記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極板および前記負極板と対向していない領域に配置された前記セパレータの前記表面層の空隙率が50%以上である、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電池ケース内に、複数個の前記捲回電極体が収容されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記捲回電極体の最外周に前記セパレータが配置されており、前記セパレータの前記表面層を介して、隣接した捲回電極体同士が接着されている、請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記捲回電極体の最外周に前記セパレータが配置され、前記セパレータの終端部が巻止めテープによって前記捲回電極体の最外面に貼り付けられており、
前記巻止めテープは、前記正極タブ群と前記負極タブ群とを結ぶ直線上に配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記捲回電極体の最外周に前記セパレータが配置され、前記セパレータの終端部が巻止めテープによって前記捲回電極体の最外面に貼り付けられており、
前記正極板および前記負極板と対向していない領域に配置されたセパレータの前記表面層の厚みに対する、前記正極板と前記負極板との間に介在した前記セパレータの前記表面層の厚みの割合が0.9以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記正極板の長手方向の一方の端部は、正極始端部として前記捲回電極体の前記平坦部の内部に配置され、他方の端部は正極終端部として前記捲回電極体の前記平坦部の外側に配置されており、かつ、
前記負極板の長手方向の一方の端部は、負極始端部として前記捲回電極体の前記平坦部の内部に配置され、他方の端部は負極終端部として前記捲回電極体の前記平坦部の外側に配置されている、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池。
【請求項12】
前記正極始端部と前記表面層との接着強度が、前記正極終端部と前記表面層との接着強度よりも大きい、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記正極終端部と前記表面層との接着強度が、前記負極終端部と前記表面層の接着強度よりも大きい、請求項11または12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記電池ケース内に複数個の前記捲回電極体が収容され、かつ、前記捲回電極体の最外周に前記セパレータが配置され、当該セパレータの前記表面層を介して、隣接した前記捲回電極体同士が接着されており、
前記隣接した捲回電極体同士の接着強度が、前記正極終端部と前記表面層との接着強度よりも大きい、請求項11~13のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項15】
セパレータを介して正極板と負極板とを捲回して筒状体を作製する工程と、
前記筒状体をプレスして扁平形状の捲回電極体を作製する工程と、
前記捲回電極体を電池ケースの内部に収容する工程と
を備え、
前記捲回電極体が、請求項1~14のいずれかに記載された捲回電極体である、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池および二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、通常、一対の電極板(正極板及び負極板)を備えた電極体と、当該電極体を収容する電池ケースと、電池ケースの外部に露出する電極端子(正極端子及び負極端子)とを備えている。そして、電極体を構成する各電極板は、例えば、箔状の金属部材である電極芯体(正極芯体及び負極芯体)と、当該電極芯体の表面に形成された電極活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)とを備えている。
【0003】
かかる二次電池の電極体の一例として、セパレータを介して正極板と負極板とを捲回した捲回電極体が挙げられる。この種の捲回電極体のセパレータには、通常、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる基材層を有した多孔質の帯状フィルム等が用いられ得る。また、二次電池の安全性向上の観点から、基材層の表面に耐熱層が形成されたセパレータが用いられることもある。例えば、特許文献1には、多孔質の樹脂層(基材層)と、当該樹脂層の少なくとも一方の面に積層された多孔質の耐熱層とを有したセパレータが開示されている。そして、この耐熱層は、無機材料からなるフィラーとバインダを含んでいる。この種の耐熱層を有したセパレータは、温度上昇時の熱収縮が抑制されるため、内部短絡の発生を防止し、二次電池の安全性を向上できる。
【0004】
また、上記構成の捲回電極体の捲回軸に沿った方向(捲回軸方向)の両端部には、電極芯体が露出した電極タブが複数積層された電極タブ群が形成されることがある。かかる電極タブ群は、電極集電体などの導電部材と接続される。そして、この集電部材を電極端子と接続することによって、電池ケース内の捲回電極体と、電池ケース外の電極端子とを導通させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記捲回電極体の形状の一例として扁平形状が挙げられる。かかる扁平形状の捲回電極体は、セパレータを介して正極板と負極板を捲回して作製した筒状の捲回電極体(筒状体)をプレス成形することによって作製される。かかる捲回電極体には、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、当該一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とが形成される。かかる扁平形状の捲回電極体の平坦部では、正極板と負極板との距離(極間距離)が狭くなるため、電極間での電荷担体の移動が促進される。
【0007】
ところで、近年の二次電池の分野では、電極タブ群を折り曲げた状態で捲回電極体を電池ケースの内部に収容するという構造が提案されている。これによって、電極タブ群の省スペース化を実現し、電池ケースの内壁に近接する位置まで捲回電極体の幅を増加できる。この結果、電池ケースの内容量に対する捲回電極体の体積が増大するため、電池性能の向上に大きく貢献できる。しかしながら、かかる構成の二次電池では、電極タブ群に近接した平坦部に、電極タブ群を折り曲げた際の応力が掛かって、局所的な極間距離の増大が生じる可能性がある。かかる局所的な極間距離の増大が生じると、充放電反応が不均一になって電荷担体の析出などが発生し得る。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、電極タブ群を折り曲げた状態の捲回電極体を電池ケースに収容する二次電池において、電極タブ群近傍の平坦部における局所的な極間距離の増大を抑制する二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって以下の構成の二次電池が提供される。
【0010】
ここに開示される二次電池は、セパレータを介して正極板と負極板とが捲回された扁平形状の捲回電極体と、捲回電極体を収容する電池ケースとを備えている。上記扁平形状の捲回電極体は、外表面が湾曲した一対の湾曲部と、当該一対の湾曲部を連結する外表面が平坦な平坦部とを有し、正極板は、帯状の正極芯体と、当該正極芯体の少なくとも一方の表面に形成された正極活物質層とを有し、負極板は、帯状の負極芯体と、当該負極芯体の少なくとも一方の表面に形成された負極活物質層とを有している。また、捲回電極体の捲回軸方向における一方の端部に、正極芯体が露出した正極タブが積層された正極タブ群が形成され、かつ、捲回電極体の捲回軸方向における他方の端部に、負極芯体が露出した負極タブが積層された負極タブ群が形成されている。上記正極タブ群は、板状の導電部材である正極集電体と接合された状態で折り曲げられており、負極タブ群は、板状の導電部材である負極集電体と接合された状態で折り曲げられている。そして、ここに開示される二次電池のセパレータは、帯状の基材層と、当該基材層の少なくとも一方の表面に形成され、無機粒子及びバインダを含む表面層とを有し、平坦部における正極板及び負極板の少なくとも一方は、セパレータの表面層と接着されている。
【0011】
本発明者は、種々の検討の結果、安全性向上のために耐熱層付きのセパレータを使用すると、電極タブ群近傍の平坦部に局所的な極間距離の増大が生じやすくなることを発見した。この点について、本発明者は、次のように考察した。通常のセパレータは、プレス成形によって電極板(正極板および負極板)の表面の凹凸に沿うように押圧変形され、電極板と嵌合する。このようにしてセパレータと電極板とが接着されると、正極板と負極板との極間距離が保持されやすい。一方、耐熱層を有するセパレータは、比較的に強度が高く、電極板と嵌合するような変形が生じにくい。すなわち、耐熱層付きのセパレータは、通常のセパレータが有していた極間距離保持機能が失われる。ここに開示される二次電池は、かかる知見に基づいてなされたものである。具体的には、上記構成の二次電池のセパレータは、熱収縮による内部短絡を防止するために、無機粒子及びバインダを含む表面層を有している。しかし、ここに開示される技術における表面層は、従来技術における耐熱層と異なり、プレス成形によって電極板と嵌合・接着される程度の接着性を有している。これによって、セパレータと電極板との接着による極間距離保持機能を適切に発揮できるため、電極タブ群を折り曲げた状態の捲回電極体を電池ケースの内部に収容するという構造を採用した場合であっても、安全性向上を低下させることなく、電極タブ群近傍の平坦部における局所的な極間距離の増大を抑制できる。この結果、電極集電体と電極タブ群との接合部分の近傍の品質が安定した二次電池を得ることができる。
【0012】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、表面層の総質量に対する無機粒子の含有量が70質量%~80質量%である。表面層における無機粒子の含有量を少なくするにつれて、電極板と表面層との接着による極間距離保持効果が発揮されやすくなる。一方、表面層における無機粒子の含有量を減少させすぎると、表面層に粘着性が生じて、捲回電極体の作製が困難になるおそれがある。また、一定以上の無機粒子を表面層に添加することによって、セパレータの熱収縮を好適に防止できる。これらの観点から、表面層における無機粒子の含有量は、70質量%~80質量%の範囲内が好ましい。
【0013】
ここに開示される二次電池の一態様では、表面層は、無機粒子として、アルミナ粒子およびベーマイト粒子の少なくとも一方を含む。これによって、セパレータの熱収縮を適切に防止できる。
【0014】
ここに開示される二次電池の一態様では、表面層は、バインダとして、ポリフッ化ビニリデンを含む。これによって、電極板と表面層との接着による極間距離保持効果がより発揮されやすくなる。
【0015】
ここに開示される二次電池の一態様では、表面層は、複数の空隙を含む網目状構造を有している。これによって、表面層に高い柔軟性が生じるため、捲回電極体の平坦部の厚みを均一化し、極間距離のばらつきの抑制に貢献できる。
【0016】
上記網目状構造の表面層を形成する態様では、正極板および負極板と対向していない領域に配置されたセパレータの表面層の空隙率が50%以上であることが好ましい。これによって、表面層に好適な柔軟性を付与し、極間距離のばらつきをより好適に抑制できる。なお、本明細書において「正極板および負極板と対向していない領域に配置されたセパレータの表面層の空隙率」は、プレス成形前のセパレータの表面層の空隙率を意味するものとする。
【0017】
ここに開示される二次電池の一態様では、電池ケース内に複数個の捲回電極体が収容されている。かかる二次電池では、複数個の捲回電極体の電極タブ群の近傍において局所的な極間距離の増大が生じる可能性がある。これに対して、ここに開示される技術は、複数個の捲回電極体の各々において局所的な極間距離の増大を抑制できるため、複数個の捲回電極体を備えた二次電池に好適に適用できる。
【0018】
また、上記複数個の捲回電極体を備えた態様では、捲回電極体の最外周にセパレータが配置されており、セパレータの表面層を介して、隣接した捲回電極体同士が接着されていることが好ましい。これによって、電池ケース内部における捲回電極体の移動が規制されるため、外部からの衝撃や振動による捲回電極体の破損を防止できる。
【0019】
ここに開示される二次電池の一態様では、捲回電極体の最外周にセパレータが配置され、セパレータの終端部が巻止めテープによって捲回電極体の最外面に貼り付けられており、巻止めテープは、正極タブ群と負極タブ群とを結ぶ直線上に配置されている。これによって、捲回電極体の巻きほぐれを防止できるため、電極タブ群の近傍の領域における極間距離の増大をさらに好適に抑制し、電極タブ群と電極集電体(正極集電体及び負極集電体)との安定的な接合を実現できる。
【0020】
ここに開示される二次電池の一態様では、捲回電極体の最外周にセパレータが配置され、セパレータの終端部が巻止めテープによって捲回電極体の最外面に貼り付けられており、正極板および負極板と対向していない領域に配置されたセパレータの表面層の厚みに対する、正極板と負極板との間に介在したセパレータの表面層の厚みの割合が0.9以下である。これによって、巻止めテープの厚みによる段差が平坦部に形成されることを防止し、平坦部に対する面圧のばらつきによる電池性能の低下を防止できる。
【0021】
ここに開示される二次電池の一態様では、正極板の長手方向の一方の端部は、正極始端部として捲回電極体の平坦部の内部に配置され、他方の端部は正極終端部として捲回電極体の平坦部の外側に配置されており、かつ、負極板の長手方向の一方の端部は、負極始端部として捲回電極体の平坦部の内部に配置され、他方の端部は負極終端部として捲回電極体の平坦部の外側に配置されている。かかる構成のように、扁平形状の捲回電極体では、正極および負極の各々の電極板の始端部が平坦部の内側に配置され、終端部が平坦部の外側に配置され得る。
【0022】
上述した正極始端部と正極終端部が平坦部に配置される態様では、正極始端部と表面層との接着強度が、正極終端部と表面層との接着強度よりも大きいことが好ましい。このように、捲回電極体の内部における接着強度を相対的に強くすることによって、極間距離保持効果をより好適に発揮できる。
【0023】
上述した正極始端部と負極終端部が平坦部に配置される態様では、正極終端部と表面層との接着強度が、負極終端部と表面層の接着強度よりも大きいことが好ましい。これによって、捲回電極体の内部への電解液の浸透性を向上できる。
【0024】
上記正極始端部と負極終端部が平坦部の内部に配置される態様において、電池ケース内に複数個の捲回電極体が収容され、かつ、捲回電極体の最外周にセパレータが配置され、当該セパレータの表面層を介して、隣接した捲回電極体が接着されている場合、隣接した捲回電極体同士の接着強度が、正極終端部と表面層の接着強度よりも大きいことが好ましい。これによって、電池ケース内の捲回電極体の移動をより確実に規制し、捲回電極体の破損をより適切に防止できる。
【0025】
また、ここに開示される技術の他の側面として、二次電池の製造方法が提供される。かかる製造方法は、セパレータを介して正極板と負極板とを捲回して筒状体を作製する工程と、筒状体をプレスして扁平形状の捲回電極体を作製する工程と、捲回電極体を電池ケースの内部に収容する工程とを備えている。そして、ここに開示される製造方法では、捲回電極体が、上述した各態様のいずれかにおける捲回電極体である。かかる製造方法によると、電極タブ群近傍の平坦部における局所的な極間距離の増大が抑制された二次電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図1中のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
【
図5】封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図6】正極第2集電体と負極第2集電体が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図7】一実施形態に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
【
図8】
図7の捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図9】
図8中のIX-IX線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図10】一実施形態に係る二次電池の捲回電極体の正極板と負極板とセパレータの界面を模式的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0028】
なお、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなども包含する。以下では、上述した二次電池のうち、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0029】
また、本明細書において参照する各図における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、「D」は下を示す。但し、これらの方向は説明の便宜上の定めたものであり、ここに開示される二次電池を使用する際の設置形態を限定することを意図したものではない。
【0030】
<第1の実施形態>
1.二次電池の構造
以下、ここに開示される二次電池の一実施形態について
図1~
図10を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3は、
図1中のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図1中のIV-IV線に沿う模式的な横断面図である。
図5は、封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図6は、正極第2集電体と負極第2集電体が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図7は、本実施形態に係る二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
図8は、
図7の捲回電極体を模式的に示す正面図である。
図9は、
図8中のIX-IX線に沿う模式的な縦断面図である。
図10は、本実施形態に係る二次電池の捲回電極体の正極板と負極板とセパレータの界面を模式的に示す拡大図である。
【0031】
図2に示すように、本実施形態に係る二次電池100は、捲回電極体40と、捲回電極体40を収容する電池ケース50を備えている。以下、かかる二次電池100の具体的な構成について説明する。
【0032】
(1)電池ケース
電池ケース50は、捲回電極体40を収容する筐体である。図示は省略するが、電池ケース50の内部には非水電解液も収容されている。
図1に示すように、本実施形態における電池ケース50は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。なお、電池ケース50には、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、電池ケース50は、金属製であるとよい。かかる電池ケース50の材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0033】
図1および
図2に示すように、電池ケース50は、外装体52と、封口板54とを備えている。外装体52は、上面に開口52hを有する扁平な有底角型の容器である。外装体52は、平面略矩形の底壁52aと、底壁52aの長辺から高さ方向Zの上方に延びる一対の長側壁52bと、底壁52aの短辺から高さ方向Zの上方に延びる一対の短側壁52cとを備えている。一方、封口板54は、外装体52の開口52hを塞ぐ、平面略矩形の板状部材である。そして、封口板54の外周縁部は、外装体52の開口52hの外周縁部と接合(例えば溶接)されている。これによって、内部が気密に密閉された電池ケース50が作製される。また、封口板54には、注液孔55とガス排出弁57が設けられている。注液孔55は、密閉後の電池ケース50の内部に非水電解液を注液するために設けられた貫通孔である。なお、注液孔55は、非水電解液の注液後に封止部材56によって封止される。また、ガス排出弁57は、電池ケース50内で大量のガスが発生した際に破断(開口)し、当該ガスを排出するように設計された薄肉部である。
【0034】
(2)電解液
上述の通り、電池ケース50の内部には、捲回電極体40の他に、電解液(図示省略)も収容されている。電解液には、従来公知の二次電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。例えば、電解液には、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。この非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0035】
(3)電極端子
また、封口板54の幅方向Yの一方(
図1、
図2中の左側)の端部には、正極端子60が取り付けられている。かかる正極端子60は、電池ケース50の外側において、板状の正極外部導電部材62と接続されている。一方、封口板54の幅方向Yの他方(
図1、
図2中の右側)の端部には、負極端子65が取り付けられている。かかる負極端子65には、板状の負極外部導電部材67が取り付けられている。これらの外部導電部材(正極外部導電部材62および負極外部導電部材67)は、外部接続部材(バスバー等)を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。なお、外部導電部材は、導電性に優れた金属(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)で構成されていることが好ましい。
【0036】
(4)電極集電体
図3~
図5に示すように、本実施形態に係る二次電池100では、電池ケース50内に複数個(3個)の捲回電極体40が収容されている。詳しい構造は後述するが、各々の捲回電極体40には、正極タブ群42と負極タブ群44とが設けられている(
図7及び
図8参照)。
図4に示すように、これらの電極タブ群(正極タブ群42と負極タブ群44)は、電極集電体(正極集電体70と負極集電体75)が接合された状態で折り曲げられている。
【0037】
具体的には、複数の捲回電極体40の各々の正極タブ群42は、正極集電体70を介して正極端子60と接続されている。この正極集電体70は、電池ケース50の内部に収容されている。この正極集電体70は、
図2および
図5に示すように、封口板54の内側面に沿って幅方向Yに延びる板状の導電部材である正極第1集電体71と、高さ方向Zに沿って延びる板状の導電部材である複数の正極第2集電体72とを備えている。そして、正極端子60の下端部60cは、封口板54の端子挿通孔58を通って電池ケース50の内部に挿入され、正極第1集電体71と接続されている(
図2参照)。一方で、
図4~
図6に示すように、この二次電池100では、複数の捲回電極体40に対応した数の正極第2集電体72が設けられている。それぞれの正極第2集電体72は、捲回電極体40の正極タブ群42に接続される。そして、
図4および
図5に示すように、捲回電極体40の正極タブ群42は、正極第2集電体72と捲回電極体40の一方の側面40aとが対向するように折り曲げられる。これによって、正極第2集電体72の上端部と正極第1集電体71とが電気的に接続される。
【0038】
一方、複数の捲回電極体40の各々の負極タブ群44は、負極集電体75を介して負極端子65と接続される。かかる負極側の接続構造は、上述した正極側の接続構造と略同一である。具体的には、負極集電体75は、封口板54の内側面に沿って幅方向Yに延びる板状の導電部材である負極第1集電体76と、高さ方向Zに沿って延びる板状の導電部材である複数の負極第2集電体77とを備えている(
図2および
図5参照)。そして、負極端子65の下端部65cは、端子挿通孔59を通って電池ケース50の内部に挿入され、負極第1集電体76と接続される(
図2参照)。一方、複数の負極第2集電体77の各々は、捲回電極体40の負極タブ群44と接続される(
図4~
図6参照)。そして、負極タブ群44は、負極第2集電体77と捲回電極体40の他方の側面40bとが対向するように折り曲げられる。これによって、負極第2集電体77の上端部と負極第1集電体76とが電気的に接続される。また、電極集電体(正極集電体70および負極集電体75)にも、導電性に優れた金属(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)が好適に使用できる。
【0039】
(5)絶縁部材
また、この二次電池100では、捲回電極体40と電池ケース50との導通を防止するために、種々の絶縁部材が取り付けられている。具体的には、正極外部導電部材62(負極外部導電部材67)と封口板54の外側面との間には、外部絶縁部材92が介在している(
図1参照)。これによって、正極外部導電部材62や負極外部導電部材67が封口板54と導通することを防止できる。また、封口板54の端子挿通孔58、59の各々にはガスケット90が装着されている(
図2参照)。これによって、端子挿通孔58、59に挿通された正極端子60(又は負極端子65)が封口板54と導通することを防止できる。また、正極第1集電体71(又は負極第1集電体76)と封口板54の内側面との間には、内部絶縁部材94が配置されている。この内部絶縁部材94は、正極第1集電体71(又は負極第1集電体76)と封口板54の内側面との間に介在する板状のベース部94aを備えている。これによって、正極第1集電体71や負極第1集電体76が封口板54と導通することを防止できる。さらに、内部絶縁部材94は、封口板54の内側面から捲回電極体40に向かって突出する突出部94bを備えている(
図2および
図3参照)。これによって、高さ方向Zにおける捲回電極体40の移動を規制し、捲回電極体40と封口板54が直接接触することを防止できる。加えて、複数の捲回電極体40は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ98(
図3参照)に覆われた状態で電池ケース50の内部に収容される。これによって、捲回電極体40と外装体52が直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材料は、所定の絶縁性を有していれば特に限定されない。一例として、ポリオレフィン系樹脂(例、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE))、フッ素系樹脂(例、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の合成樹脂材料を使用できる。
【0040】
(6)捲回電極体
図7に示すように、本実施形態に係る二次電池100において使用される電極体は、セパレータ30を介して正極板10と負極板20とが捲回された扁平形状の捲回電極体40である。そして、かかる扁平形状の捲回電極体40は、外表面が湾曲した一対の湾曲部40rと、当該一対の湾曲部40rを連結する外表面が平坦な平坦部40fとを有している(
図3および
図9参照)。なお、この二次電池100では、捲回電極体40の捲回軸WLと二次電池100の幅方向Yとが略一致するように、電池ケース50内に捲回電極体40が収容される(
図2参照)。すなわち、以下の説明における「捲回軸方向」は、図中の幅方向Yと略同一の方向である。
【0041】
上述した通り、本実施形態における捲回電極体40は、正極タブ群42と負極タブ群44が折り曲げられた状態で電池ケース50の内部に収容される。これによって、電池ケース50の内壁に近接する位置まで捲回電極体40の幅を増加できるため、電池性能の向上に大きく貢献できる。しかし、正極タブ群42(負極タブ群44)の近傍に位置する平坦部40fには、正極タブ群42(負極タブ群44)を折り曲げた際の応力が掛かるため、局所的な極間距離の増大が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態に係る二次電池100は、捲回電極体40の正極タブ群42(負極タブ群44)を折り曲げた場合でも極間距離の増大を適切に抑制できる構成を有している。以下、本実施形態における捲回電極体40の具体的な構成について説明する。
【0042】
(a)正極板
図7および
図10に示すように、正極板10は、長尺な帯状の部材である。正極板10は、帯状の金属箔である正極芯体12と、正極芯体12の表面に付与された正極活物質層14とを備えている。なお、電池性能の観点から、正極活物質層14は、正極芯体12の両面に付与されていることが好ましい。また、この正極板10では、捲回軸方向(幅方向Y)の一方の端辺から外側(
図7中の左側)に向かって正極タブ12tが突出している。そして、この正極タブ12tは、長尺な帯状の正極板10の長手方向Lにおいて所定の間隔を空けて複数形成されている。この正極タブ12tは、正極活物質層14が付与されておらず、正極芯体12が露出した領域である。また、この正極板10の正極タブ12t側の端辺に隣接した領域には、正極板10の長手方向Lに沿って延びる保護層16が形成されている。
【0043】
正極板10を構成する各部材には、一般的な二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極芯体12には、所定の導電性を有した金属材料を好ましく使用できる。かかる正極芯体12は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等から構成されていることが好ましい。
【0044】
また、正極活物質層14は、正極活物質を含む層である。正極活物質は、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる粒子状の材料である。高性能の正極板10を安定的に作製するという観点から、正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物が好適である。上記リチウム遷移金属複合酸化物の中でも、遷移金属として、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)からなる群の少なくとも一種を含むリチウム遷移金属複合酸化物は特に好適である。具体例としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物(NCA)、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。また、Ni、CoおよびMnを含まないリチウム遷移金属複合酸化物の好適例として、リチウムリン酸鉄系複合酸化物(LFP)等が挙げられる。なお、本明細書における「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、主要構成元素(Li、Ni、Co、Mn、O)の他に、添加的な元素を含む酸化物を包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Si、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。詳しい説明は省略するが、このことは「~系複合酸化物」と記載した他のリチウム遷移金属複合酸化物についても同様である。また、正極活物質層14は、正極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の一例として、導電材、バインダ等が挙げられる。導電材の具体例としては、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が挙げられる。バインダの具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の樹脂バインダが挙げられる。なお、正極活物質層14の固形分全体を100質量%としたときの正極活物質の含有量は、概ね80質量%以上であり、典型的には90質量%以上である。
【0045】
一方、保護層16は、正極活物質層14よりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。かかる保護層16を正極板10の端辺に隣接した領域に設けることによって、セパレータ30が破損した際に、正極芯体12と負極活物質層24とが直接接触することによる内部短絡を防止できる。例えば、保護層16として、絶縁性のセラミック粒子を含む層を形成すると好ましい。かかるセラミック粒子としては、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)等の無機酸化物や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物や、マイカ、タルク、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン等の粘土鉱物や、ガラス繊維などが挙げられる。絶縁性や耐熱性を考慮すると、上述の中でも、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、シリカおよびチタニアが好適である。また、保護層16は、上記セラミック粒子を正極芯体12の表面に定着させるためのバインダを含有していてもよい。かかるバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の樹脂バインダが挙げられる。なお、保護層は、正極板の必須の構成要素ではない。すなわち、ここに開示される二次電池では、保護層が形成されていない正極板を使用することもできる。
【0046】
なお、正極板10の厚みt2(
図10参照)は、80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、120μm以上がさらに好ましい。このような充分な厚みを有する正極板10は、プレス成形後の弾性作用が大きいため、湾曲部40rに残留した弾性作用によって平坦部40fが膨張するスプリングバックが生じ、極間距離が増大しやすくなり得る。詳しくは後述するが、ここに開示される技術によると、電極タブ群の折り曲げに起因した極間距離の増大だけでなく、スプリングバックに起因した極間距離の増大も好適に抑制できる。なお、スプリングバックを防止しやすくするという観点から、正極板10の厚みは、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、160μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書における「正極板の厚み」は、正極芯体と正極活物質層の合計厚みである。
【0047】
さらに、正極板10の表面粗さ(典型的には正極活物質層14の表面粗さ)は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましい。詳しくは後述するが、本実施形態では、セパレータ30の表面層34を正極板10の表面の凹凸に合わせて変形させて嵌合させることによって、セパレータ30と正極板10とを接着し、極間距離保持機能を発揮する。かかるセパレータ30と正極板10との接着を好適に実現するという観点から、正極板10は、一定以上の表面粗さを有していることが好ましい。一方、正極板10の表面粗さの上限は、特に限定されず、3μm以下であってもよい。なお、本明細書における「表面粗さ」は、算術平均粗さRaである。
【0048】
また、正極活物質層14は、レーザー回折・散乱法にて分析した粒度分布において、ピーク粒径が10μm~20μmの範囲内にある大型の正極活物質粒子と、ピーク粒径が2μm~6μmの範囲内にある小型の正極活物質粒子を含むことが好ましい。このように、粒子径が異なる2種類の正極活物質粒子を混合することによって、正極活物質層14の表面に微細な凹凸が形成されるため、正極板10とセパレータ30との接着をより好適に実現できる。なお、上述した大型粒子と小型粒子は、同じ種類のリチウム遷移金属複合酸化物であってもよいし、異なる種類のリチウム遷移金属複合酸化物であってもよい。
【0049】
また、近年では、電池容量向上の観点から、充填密度が2g/cc以上の正極活物質層を形成することが試みられている。しかし、この種の高密度の正極活物質層は、プレス成形に対する反力が大きいため、上述したスプリングバックによる極間距離の増大が促進される要因になり得る。しかし、ここに開示される技術によると、2g/cc以上(好適には2.5g/cc以上)の高密度の正極活物質層を形成した場合であっても、捲回電極体のスプリングバックを好適に抑制できる。換言すると、ここに開示される技術によると、従来の技術では使用が困難であった高密度の正極活物質層を容易に使用でき、電池容量の向上に貢献できる。なお、スプリングバックを適切に防止するという観点から、正極活物質層14の充填密度は、4g/cc以下であることが好ましい。
【0050】
(b)負極板
図7および
図10に示すように、負極板20は、長尺な帯状の部材である。かかる負極板20は、帯状の金属箔である負極芯体22と、負極芯体22の表面に付与された負極活物質層24とを備えている。なお、電池性能の観点から、負極活物質層24は、負極芯体22の両面に付与されていることが好ましい。さらに、この負極板20には、捲回軸方向(幅方向Y)の一方の端辺から外側(
図7中の右側)に向かって突出する負極タブ22tが設けられている。この負極タブ22tは、負極板20の長手方向Lにおいて所定の間隔を空けて複数設けられている。この負極タブ22tは、負極活物質層24が付与されておらず、負極芯体22が露出した領域である。
【0051】
負極板20を構成する各部材には、一般的な二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極芯体22には、所定の導電性を有した金属材料を好ましく使用できる。かかる負極芯体22は、例えば、銅や銅合金等から構成されていることが好ましい。
【0052】
また、負極活物質層24は、負極活物質を含む層である。負極活物質には、上述した正極活物質との関係において電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できれば特に限定されず、従来の一般的な二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用できる。かかる負極活物質としては、炭素材料、シリコン系材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等を使用し得る。また、黒鉛の表面が非晶質炭素で被覆された非晶質炭素被覆黒鉛などを使用することもできる。一方、シリコン系材料としては、シリコン、シリコン酸化物(シリカ)などが挙げられる。また、シリコン系材料は、他の金属元素(例えばアルカリ土類金属)や、その酸化物を含有していてもよい。また、負極活物質層24は、負極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の一例として、バインダ、増粘剤等が挙げられる。バインダの具体例として、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系のバインダが挙げられる。また、増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。なお、負極活物質層24の固形分全体を100質量%としたときの負極活物質の含有量は、概ね30質量%以上であり、典型的には50質量%以上である。なお、負極活物質は、負極活物質層24の80質量%以上を占めていてもよいし、90質量%以上を占めていてもよい。また、負極活物質層24の幅寸法w2は、200mm~450mmが好ましく、250mm~350mmがより好ましく、270mm~320mmがさらに好ましい。
【0053】
また、負極板20の厚みt3(
図10参照)は、100μm以上が好ましく、130μm以上がより好ましく、160μm以上がさらに好ましい。上述した正極板10と同様に、負極板20が厚くなると、スプリングバックに起因した極間距離の増大が促進される可能性がある。しかし、ここに開示される技術によると、このような厚みの負極板20を使用した場合でも、スプリングバックの発生を好適に抑制でできる。一方、スプリングバックを防止しやすくするという観点から、負極板20の厚みは、250μm以下が好ましく、220μm以下がより好ましく、190μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書における「負極板の厚み」は、負極芯体と負極活物質層の合計厚みである。
【0054】
また、上記正極板10の表面粗さと同様に、負極板20の表面粗さ(典型的には負極活物質層24の表面粗さ)についても、セパレータ30と負極板20との接着を好適に実現するという観点で調節されていることが好ましい。例えば、負極板20の表面粗さは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。これによって、セパレータ30と負極板20を適切に接着し、ここに開示される技術による極間距離保持効果をより好適に発揮できる。また、負極板20の表面粗さの上限は、特に限定されず、5μm以下であってもよい。
【0055】
(c)セパレータ
図7および
図9に示すように、本実施形態における捲回電極体40は、2枚のセパレータ30を備えている。各々のセパレータ30は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。このセパレータ30を正極板10と負極板20との間に介在させることによって、正極板10と負極板20との接触を防止すると共に、正極板10と負極板20との間で電荷担体(例えばリチウムイオン)を移動させることができる。
【0056】
図10に示すように、本実施形態におけるセパレータ30は、帯状の基材層32と、当該基材層32の表面(両面)に形成された表面層34とを有している。詳しい作用は後述するが、本実施形態では、上記構成のセパレータ30の一方の表面層34と正極板10とが接着し、他方の表面層34と負極板20とが接着している。これによって、セパレータ30による極間距離保持機能が十分に発揮されるため、折り曲げた電極タブ群の近傍などに局所的な極間距離の増大が生じることを防止できる。また、捲回電極体40の平坦部40f(
図9参照)が厚み方向(奥行方向X)に膨張することも規制されるため、スプリングバックに起因した極間距離の増大も抑制できる。以下、かかる構成のセパレータ30について説明する。
【0057】
まず、基材層32は、従来公知の二次電池のセパレータにおいて用いられるものを特に制限なく使用できる。例えば、基材層32は、ポリオレフィン樹脂等を含む多孔質のシート状部材であることが好ましい。これによって、セパレータ30の柔軟性を充分に確保し、捲回電極体40の作製(捲回およびプレス成形)を容易に実施できる。なお、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等やこれらの混合物を使用できる。また、基材層32の空隙率は、20%~70%が好ましく、30%~60%がより好ましく、40%~50%がさらに好ましい。これによって、正極板10と負極板20との間で適切に電荷担体を移動させることができる。なお、本明細書における「空隙率」は、特に言及しない限りにおいて、プレス成形前の空隙率を示すものとする。なお、この「プレス成形前の空隙率」は、正極板および負極板と対向していない領域に配置されたセパレータを測定対象とすることで得ることができる。この「正極板および負極板と対向していない領域」としては、
図7中の捲回電極体40の両側縁部に形成された「セパレータ30のみが延出した領域30a」などが挙げられる。
【0058】
図10に示すように、本実施形態における表面層34は、基材層32の両面に形成された層である。この表面層34には、無機粒子とバインダが含まれている。無機粒子としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ベーマイト、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化鉄、セリア、イットリア等のセラミックを主成分として含むセラミック粒子が挙げられる。この種の無機粒子を含む表面層34は、優れた耐熱性を有している。これによって、温度上昇時のセパレータ30の熱収縮を抑制し、二次電池100の安全性の向上に貢献できる。なお、上述したセラミック粒子のなかでも、アルミナ粒子、ベーマイト粒子は、セパレータ30の熱収縮抑制の観点から特に好適である。なお、無機粒子の平均粒子径は、例えば0.15μm~2μmが好ましく、0.3μm~0.7μmがより好ましく、0.3μm~0.5μmがさらに好ましい。また、無機粒子の比表面積は、例えば2m
2/g~13m
2/g程度が好適である。なお、本明細書における「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径(D
50粒子径)を意味するものとする。
【0059】
次に、表面層34のバインダには、一定の粘性を有する従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用できる。例えば、表面層34のバインダは、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂等などの樹脂材料が好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸エステルの重合体を主成分とするもの等を使用できる。また、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を使用できる。また、セルロース系樹脂としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用できる。また、フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用できる。また、表面層34は、これらのバインダ樹脂を二種以上含んでいてもよい。なお、上述したバインダ樹脂の中でも、PVdFは、電極板に対する接着性をより好適に発揮できる。また、表面層34は、対向する電極板の電極活物質層のバインダと同種のバインダを含んでいることが好ましい。一例として、正極活物質層14にPVdFが含まれている場合には、当該正極活物質層14と対向する表面層34のバインダとしてPVdFを使用することが好ましい。これによって、表面層34と正極板10との接着強度をさらに向上させることができる。
【0060】
また、表面層34は、正極板10(又は負極板20)に対して所定の接着性が発揮されるように、無機粒子の含有量が調節されていることが好ましい。例えば、表面層34における無機粒子の含有量は、90質量%未満が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。このように表面層34における無機粒子の含有量を一定以下にすると、プレス成形において表面層34が変形しやすくなるため、正極板10(又は負極板20)と表面層34との嵌合(接着)による極間距離保持効果を適切に発揮できる。一方、表面層34における無機粒子の含有量を減少させ過ぎると、バインダ等の樹脂材料の含有量が相対的に多くなるため、プレス成形前の表面層34に粘着性が生じる可能性がある。このような場合、セパレータ30を介して正極板10と負極板20を捲回することが困難になり得る。かかる観点から、表面層34における無機粒子の含有量は、60質量以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。また、このように一定以上の無機粒子を含む表面層34を形成することによって、セパレータ30の熱収縮による内部短絡を好適に防止することもできる。なお、本明細書における「無機粒子の含有量」は、表面層の総質量に対する無機粒子の質量比である。
【0061】
また、表面層34は、複数の空隙を含む網目状構造を有していることが好ましい。かかる表面層34では、網目状に硬化したバインダ樹脂の内部に無機粒子が分散している。この網目状構造の表面層34は、高い柔軟性を有しているため、プレス成形の際に押し潰されるように変形する。これによって、捲回電極体40の厚みt1のばらつきをセパレータ30において吸収できるため、極間距離のばらつきによる電荷担体の析出を抑制できる。なお、網目状構造の表面層34の空隙率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。これによって、表面層34に好適な柔軟性を付与し、捲回電極体40の厚みt1のばらつきを抑制できる。一方、セパレータ30の強度を考慮すると、表面層34の空隙率は、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0062】
なお、上記網目状構造の表面層34は、基材層32側(セパレータ30の内側)の充填密度よりも、電極板側(セパレータ30の外側)の充填密度の方が高くなるように形成されていることが好ましい。これによって、プレス成形において基材層32側の表面層34が優先的に押圧変形するため、電極板側の表面層34の空隙が潰れることを防止できる。これによって、電極板の近傍への電解液の浸透性の低下を抑制し、液枯れの防止などに貢献できる。
【0063】
また、セパレータ30の厚みt4(
図10参照)は、4μm以上が好ましく、8μm以上がより好ましく、12μm以上がさらに好ましい。上述した正極板10や負極板20と同様に、セパレータ30の厚みt4が増加すると、スプリングバックに起因した極間距離の増大が促進される傾向がある。しかし、ここに開示される技術によると、上述したような充分な厚みのセパレータ30を使用した場合でも、スプリングバックの発生を好適に抑制できる。一方、スプリングバックの発生を防止しやすくするという観点から、セパレータ30の厚みは、28μm以下が好ましく、24μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書における「セパレータ30の厚みt4」は、基材層32と表面層34の合計厚みである。
【0064】
2.二次電池の製造方法
以上、本実施形態に係る二次電池100の構造について説明した。次に、かかる二次電池100の製造手順を説明しながら、ここに開示される技術による極間距離保持効果について具体的に説明する。なお、本実施形態に係る二次電池100の製造方法は、(1)捲回工程と、(2)プレス成形工程と、(3)収容工程を備えている。
【0065】
(1)捲回工程
本工程では、まず、セパレータ30、負極板20、セパレータ30、正極板10を、この順序で積層した積層体を作製する(
図7参照)。このとき、幅方向Yの一方(
図7中の左側)の側縁から正極板10の正極タブ12tのみが突出し、かつ、他方(
図7中の右側)の側縁から負極板20の負極タブ22tのみが突出するように、各々のシート部材の幅方向Yにおける積層位置を調節する。そして、作製した積層体を捲回することによって筒状の捲回体(筒状体)を作製する。このときの捲回数は、目的とする二次電池100の性能や製造効率などを考慮して適宜調節することが好ましい。なお、ここに開示される技術は、捲回数が20回以上の捲回電極体40に特に好適に適用できる。具体的には、捲回電極体40の捲回数が増加するにつれて、電極タブ群を構成する電極タブの枚数が増加する。このような電極タブの積層数が多い電極タブ群を適切に折り曲げるには大きな外力が必要となるため、電極タブ群の近傍の平坦部40fに大きな応力が掛かりやすくなる。しかし、ここに開示される技術によると、セパレータ40による極間距離保持機能が適切に発揮されるため、捲回数が20回以上の捲回電極体40においても、電極タブ群の近傍における極間距離の局所的な増大を十分に抑制できる。なお、
図9に示す捲回電極体40は、説明の便宜上、捲回数を大幅に減らしたものを示している。すなわち、
図9に示す捲回電極体40の捲回数は、ここに開示される捲回電極体の捲回数を限定するものではない。
【0066】
(2)プレス成形工程
本工程では、捲回後の筒状体をプレスすることによって、扁平形状の捲回電極体40(
図9参照)を作製する。
図9に示すように、このプレス成形後の扁平形状の捲回電極体40は、外表面が湾曲した一対の湾曲部40rと、当該一対の湾曲部40rを連結する外表面が平坦な平坦部40fとを有している。また、
図7及び
図8に示すように、プレス成形後の扁平形状の捲回電極体40の幅方向Yにおける一方の端部には、正極タブ12tが積層された正極タブ群42が形成され、他方の端部には、負極タブ22tが積層された負極タブ群44が形成される。そして、この捲回電極体40の幅方向Yの中央部には、正極活物質層14と負極活物質層24とが対向したコア部46が形成される。
【0067】
ここで、本実施形態では、プレス成形において、セパレータ30の表面層34が正極板10(負極板20)と接着される。具体的には、プレス成形において捲回体を押し潰した結果、平坦部40fに位置するシート状部材(正極板10、負極板20およびセパレータ30)の各々に大きな圧力が加わる。このとき、本実施形態では、表面層34における無機粒子の含有量やプレス成形における圧力などを調節することによって、正極活物質層14(又は負極活物質層24)の表面の凹凸に合わせて表面層34を変形させる。これによって、捲回電極体40の平坦部40fにおけるセパレータ30と正極板10(又は負極板20)との界面で、セパレータ30と正極板10(負極板20)とが嵌合して接着されるため、セパレータ30によって正極板10と負極板20との極間距離が保持される。
【0068】
なお、電池ケース50に収容する前の捲回電極体40の平坦部40fに配置された表面層34と電極板(典型的には正極板10)との接着強度は、0.5N/m以上が好ましく、0.75N/m以上がより好ましく、1.0N/m以上がさらに好ましい。このように表面層34と電極板との間で好適な接着強度が確保されるように、表面層34における無機粒子の含有量や、プレス成形における圧力を調節することが好ましい。これによって、電極タブ群の折り曲げに起因する局所的な極間距離の増大や、スプリングバックに起因する極間距離の増大の各々をより好適に抑制できる。なお、本明細書における「接着強度」は、JIS Z0237に準拠した90°剥離強度である。
【0069】
そして、
図8および
図9に示すように、本実施形態では、プレス成形後の捲回電極体40の最外周の面にセパレータ30が配置される。このセパレータ30の終端部30eに巻止めテープ38を貼り付けることによって、捲回電極体40の形状が保持される。なお、この巻止めテープ38は、正極タブ群42と負極タブ群44とを結ぶ直線上に配置されていることが好ましい。これによって、捲回電極体40の巻きほぐれを防止できるため、電極タブ群(正極タブ群42、負極タブ群44)の近傍の平坦部40fにおいて局所的な極間距離の増大が生じることをより好適に抑制できる。
【0070】
なお、セパレータ30の終端部30eに巻止めテープ38を貼り付ける場合には、プレス成形後の表面層34の厚みに対するプレス成形前の表面層34の厚みの割合が0.9以下(より好適には0.8以下、さらに好適には0.7以下、特に好適には0.6以下)まで減少するように、表面層34の柔軟性やプレス成形の圧力を調節することが好ましい。これによって、巻止めテープ38の厚みを表面層34の押圧変形で吸収し、平坦部40fに大きな段差が生じることを防止できる。この結果、平坦部40fに対する面圧のばらつきによる電池性能の低下を抑制できる。また、かかる効果は、本実施形態のような複数個の捲回電極体40を有する二次電池100において特に好適に発揮され得る。なお、上述した「プレス成形前の表面層の厚み」は、上述した「プレス成形前の空隙率」と同様に、負極板および正極板と対向していない領域(例えば、
図7中の符号30aの領域)を測定対象とすることで検出できる。一方、「プレス成形後の表面層の厚み」は、正極板10と負極板20との間に介在した(例えば平坦部40fの中央部近傍における)セパレータ30の表面層34の厚みに基づいて測定できる。
【0071】
また、
図9に示すように、プレス成形後の捲回電極体40では、帯状の正極板10の長手方向の一方の端部が、正極始端部10sとして捲回電極体40の内部に配置される。そして、正極板10の他方の端部が、正極終端部10eとして捲回電極体40の外側に配置される。同様に、帯状の負極板20の一方の端部が、負極始端部20sとして捲回電極体40の内部に配置される。また、負極板20の他方の端部が、負極終端部20eとして捲回電極体40の外側に配置される。そして、この捲回電極体40では、上述した正極始端部10s、正極終端部10e、負極始端部20sおよび負極終端部20eの何れもが捲回電極体40の平坦部40fに配置されている。
【0072】
そして、
図9に示す構造の捲回電極体40では、正極始端部10sと表面層34(
図10参照)との接着強度が、正極終端部10eと表面層34との接着強度よりも大きいことが好ましい。これによって、捲回電極体40の内部における接着強度が強くなるため、ここに開示される技術による極間距離保持効果をより好適に発揮できる。なお、内部の接着強度が強くなるように捲回電極体40を作製した場合、電極体内部の正極始端部10sと接着された表面層34の厚みが、正極終端部10eと接着された表面層34の厚みよりも薄くなる。
【0073】
また、
図9に示す捲回電極体40において、正極終端部10eと表面層34の接着強度は、負極終端部20eと表面層34の接着強度よりも大きいことが好ましい。これによって、負極板20の表面近傍に電解液が浸透しやすくなるため、液枯れの防止などの観点から好適である。なお、負極終端部20eと表面層34との接着強度が相対的に小さくなるように捲回電極体40を作製した場合、正極終端部10eと接着された表面層34の厚みが、負極終端部20eと接着された表面層34の厚みよりも薄くなる。
【0074】
また、捲回電極体40の湾曲部40rにはプレス成形中に大きな圧力が掛からない。このため、湾曲部40rに位置するセパレータ30の表面層34は、平坦部40fに位置するセパレータ30の表面層34よりも厚くなる傾向がある。具体的には、湾曲部40rにおける表面層34の厚みは、平坦部40fにおける表面層34の厚みの1.5倍~3倍になり得る。より具体的には、湾曲部40rにおける表面層34の厚みは、平坦部40fにおける表面層34の厚みよりも1μm程度厚くなる傾向がある。
【0075】
(3)収容工程
本工程では、プレス成形工程において成形した捲回電極体40を電池ケース50の内部に収容する。具体的には、
図6に示すように、捲回電極体40の正極タブ群42に正極第2集電体72を接合し、負極タブ群44に負極第2集電体77を接合する。そして、
図5に示すように、複数個(図では3個)の捲回電極体40を、平坦部40f同士が対向するように配列する。そして、複数個の捲回電極体40の上方に封口板54を配置し、正極第2集電体72と捲回電極体40の一方の側面40aとが対向するように、各々の捲回電極体40の正極タブ群42を折り曲げる。これによって、正極第1集電体71と正極第2集電体72とが接続される。同様に、負極第2集電体77と捲回電極体40の他方の側面40bとが対向するように、各々の捲回電極体40の負極タブ群44を折り曲げる。これによって、負極第1集電体76と負極第2集電体77とが接続される。この結果、正極集電体70と負極集電体75を介して封口板54に捲回電極体40が取り付けられる。
【0076】
上述した封口板54と捲回電極体40との接続では、電極タブ群(正極タブ群42及び負極タブ群44)と近接した平坦部40fに、電極タブ群を折り曲げた際の応力が加わる。この結果、電極タブ群の近傍の平坦部40fにおいて極間距離が増大するため、電荷担体の析出等が生じる可能性がある。しかし、本実施形態では、電極板とセパレータ30とが接着されているため、電極タブ群を折り曲げた際の応力が加わっても極間距離が増大することを防止できる。
【0077】
次に、本工程では、封口板54に取り付けられた捲回電極体40を、電極体ホルダ98(
図3参照)で覆った後に外装体52の内部に収容する。この結果、捲回電極体40の平坦部40fが外装体52の長側壁52b(すなわち、電池ケース50の扁平面)と対向する。また、上側の湾曲部40rが封口板54と対向し、下側の湾曲部40rが外装体52の底壁52aと対向する。そして、外装体52の上面の開口52hを封口板54で塞いだ後に、外装体52と封口板54とを接合(溶接)することによって電池ケース50を構築する。その後、封口板54の注液孔55から電池ケース50の内部に電解液を注液し、注液孔55を封止部材56で塞ぐ。以上の工程によって、本実施形態に係る二次電池100が製造される。上述した通り、かかる二次電池100は、表面層34を介してセパレータ30と電極板とが接着されているため、電極タブ群(正極タブ群42及び負極タブ群44)を折り曲げた際の応力による局所的な極間距離の増大を抑制できる。この結果、局所的な極間距離の増大による電荷担体の析出を抑制できる。また、本実施形態によると、プレス成形後の捲回電極体40のスプリングバックの発生を抑制することもできる。このため、スプリングバックに起因する電池抵抗の上昇や電荷担体の析出も好適に抑制できる。さらに、スプリングバックが抑制された捲回電極体40は、厚み寸法t1が維持されるため、外装体52内に容易に収容でき、製造効率の向上にも貢献できる。
【0078】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は、ここに開示される技術が適用される一例を示したものであり、ここに開示される技術を限定するものではない。以下、ここに開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0079】
(1)表面層の形成面
上述した実施形態では、基材層32の両面に表面層34が形成されている。しかし、表面層は、基材層の両面に形成されている必要はなく、基材層の表面の少なくとも一方の面に形成されていればよい。但し、セパレータと電極体との接着性や、セパレータの熱収縮の抑制などを考慮すると、表面層は、基材層の両面に形成されている方が好ましい。なお、上述した通り、表面層は、負極板よりも正極板に対する接着性に優れている傾向がある。かかる点を考慮すると、基材層の表面の一方のみに表面層を形成する場合には、正極板と接する側の面に表面層を形成した方が好ましい。
【0080】
(2)捲回電極体の個数
上述の実施形態に係る二次電池100は、電池ケース50の内部に3個の捲回電極体40が収容されている。しかし、1つの電池ケース内に収容される電極体の数は、特に限定されず、2つ以上(複数)であってもよいし、1つであってもよい。なお、
図3に示すような複数個の捲回電極体40を備えた二次電池100では、各々の捲回電極体40の電極タブ群の近傍に局所的な極間距離の増大が生じ得る。これに対して、ここに開示される技術によると、複数個の捲回電極体40の各々に対して、局所的な極間距離の増大を抑制する構造を採用できる。このため、ここに開示される技術は、複数個の捲回電極体40を備えた二次電池100に特に好適に適用できる。
【0081】
また、上述の実施形態のように、複数個の捲回電極体40を有する二次電池100では、捲回電極体40の最外周に、表面層34を有するセパレータ30が配置されていることが好ましい。これによって、最外周のセパレータ30を介して、隣接した捲回電極体40同士が接着されるため、電池ケース50内部における捲回電極体40の移動を規制できる。この結果、外部からの衝撃や振動(外力)による捲回電極体40の破損を防止することができる。例えば、
図6に示すように、電極タブ群(正極タブ群42、負極タブ群44)を介して捲回電極体40と電極集電体(正極第2集電体72、負極第2集電体77)とが接続されている場合、外力によって捲回電極体40が移動することによって電極タブ群が破断するおそれがある。これに対して、セパレータ30を介して複数の捲回電極体40を接着することによって、各々の捲回電極体40の移動が規制し、電極タブ群の破損を防止できる。なお、セパレータ30を介して複数の捲回電極体40を接着する場合には、隣接した捲回電極体40同士の接着強度が、正極終端部10e(
図9参照)と表面層34の接着強度よりも大きいことが好ましい。これによって、捲回電極体40の移動をより確実に規制し、捲回電極体40(例えば電極タブ群)の破損をより好適に防止できる。
【0082】
また、捲回電極体40の最外周にセパレータ30が配置されている場合には、当該セパレータ30の表面層34を介して、奥行方向Xの両外側の捲回電極体40と電極体ホルダ98とを接着できる。これによって、電池ケース50内における捲回電極体40の移動をより確実に規制できるため、捲回電極体40の破損をさらに好適に防止できる。
【0083】
(3)捲回電極体の外形寸法
上述した通り、ここに開示される技術は、電極タブ群の近傍における局所的な極間距離の増大を抑制できるだけでなく、捲回電極体の平坦部の膨張(スプリングバック)を抑制することもできる。ここで、かかる捲回電極体のスプリングバックは、下記の外形寸法を有する捲回電極体において特に発生しやすい。しかし、ここに開示される技術によると、下記の外形寸法を有する捲回電極体を用いた場合でもスプリングバックを好適に抑制できる。すなわち、ここに開示される技術は、下記の外形寸法の捲回電極体を備えた二次電池に対して特に好適に適用できる。
【0084】
第1に、正極活物質層14の幅寸法w1(
図7参照)は、200mm以上が好ましい。この正極活物質層14の幅寸法w1が長くなるにつれて捲回電極体40が大型化するため、プレス成形後の湾曲部40rから生じる弾性作用が大きくなる傾向がある。なお、正極活物質層14の幅寸法w1は、200mm~400mmがより好ましく、250mm~350mmがさらに好ましく、260mm~300mmが特に好ましく、例えば280mm程度である。なお、上記「正極活物質層の幅寸法」とは、捲回電極体の捲回軸が延びる方向(捲回軸方向)における正極活物質層の長さを指す。
【0085】
第2に、捲回電極体40の厚み寸法t1(
図9参照)は、8mm以上が好ましい。かかる捲回電極体40の厚み寸法t1が長くなった場合も、プレス成形後の湾曲部40rからの弾性作用が大きくなる。かかる捲回電極体40の厚み寸法t1は、8mm~25mmがより好ましく、8mm~20mmがさらに好ましく、10mm~15mmが特に好ましく、例えば12mm程度である。なお、「捲回電極体の厚み寸法」とは、平坦部に対して垂直な方向における平坦部の長さを指す。
【0086】
第3に、捲回電極体40の高さ寸法h1(
図8参照)は、120mm以下が好ましい。かかる捲回電極体40の高さ寸法h1が短くなると、一対の湾曲部40rが近接するため、各々の湾曲部40rから生じる弾性作用が平坦部40fの全体に作用しやすくなる。かかる捲回電極体40の高さ寸法h1は、60mm~120mmがより好ましく、80mm~110mmがさらに好ましく、90mm~100mmが特に好ましく、例えば94mm程度である。なお、「捲回電極体の高さ寸法」は、一方の湾曲部の上端から他方の湾曲部の下端までの長さを指す。
【0087】
なお、複数の捲回電極体を備えた二次電池においては、上述した外形寸法が各々の捲回電極体で共通していても、異なっていてもよい。また、複数の捲回電極体の全てが上述の外形寸法を有している必要はなく、少なくとも1個の捲回電極体が上述の外形寸法を有していてもよい。但し、複数の捲回電極体の全てが上述した外形寸法を有している場合、各々の捲回電極体においてスプリングバックが生じやすくなるため、ここに開示される技術によるスプリングバック抑制効果がより好適に発揮される。
【0088】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の説明は例示にすぎない。すなわち、ここで開示される技術には上述した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 正極板
12 正極芯体
14 正極活物質層
16 保護層
20 負極板
22 負極芯体
24 負極活物質層
30 セパレータ
32 基材層
34 表面層
38 巻止めテープ
40 捲回電極体
40f 平坦部
40r 湾曲部
42 正極タブ群
44 負極タブ群
50 電池ケース
60 正極端子
65 負極端子
70 正極集電体
75 負極集電体
100 二次電池