(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127960
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】伸縮竿
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20220825BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026220
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】302005695
【氏名又は名称】株式会社希望電機
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉村 周平
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AE05
5G352AM02
5G352AM05
5G367BB14
(57)【要約】
【課題】 小径のパイプが、意図しないタイミングで大径のパイプから出てしまうことを抑制可能な伸縮竿の一例を開示する。
【解決手段】 複数のパイプのうち最も直径が大きい把持パイプ31Aの外周面を覆う把持チューブ32と、複数のパイプのうち最も直径が小さい先端パイプ31Fの先端部に固定された筒状のキャップ33であって、当該先端パイプ31Fが把持パイプ31A内に収納されたときに、内周面が把持チューブ32の外周面と接触することより当該把持チューブ32に保持されるキャップ33とを備える。これにより、キャップ33が把持パイプ31Aの端部側に被さった状態では、当該キャップ33の内周面と把持チューブ32の外周面との接触部で発生する摩擦力により、キャップ33が把持パイプ31Aに保持される。したがって、把持パイプ31Aに収納されたパイプ31B~31Fが把持パイプ31Aから出てしまうことが規制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線工事又は架線点検の際に利用されるテレスコープ方式の伸縮竿において、
互いに直径が異なる複数のパイプにより構成された竿本体であって、直径の小さいパイプが直径の大きいパイプ内に出没可能に収納された竿本体と、
前記複数のパイプのうち最も直径が大きいパイプ(以下、把持パイプという。)の外周面を覆う把持チューブと、
前記複数のパイプのうち最も直径が小さいパイプ(以下、先端パイプという。)の先端部に固定された筒状のキャップであって、当該先端パイプが前記把持パイプ内に収納されたときに、内周面が前記把持チューブの外周面と接触することより当該把持チューブに保持されるキャップと
を備えるテレスコープ方式の伸縮竿。
【請求項2】
前記把持チューブ及び前記把持パイプの端部であって、前記キャップ側の端部を先端としたとき、
前記把持チューブの先端は、前記把持パイプの先端より前記キャップ側に位置し、
さらに、前記把持チューブの先端の内周直径は、前記把持パイプの先端の外周直径より小さい請求項1に記載のテレスコープ方式の伸縮竿。
【請求項3】
前記キャップの端部であって、前記把持チューブ側の端部を先端としたとき、
前記キャップの先端側内周面には、当該先端に近づくほど内径が大きくなるテーパ部が設けられている請求項1又は2に記載のテレスコープ方式の伸縮竿。
【請求項4】
前記キャップの内周面のうち前記把持チューブの外周面と接触する部位には、他の部位に比べて面粗度が粗い滑止部が設けられている請求項3に記載のテレスコープ方式の伸縮竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架線工事又は架線点検の際に利用されるテレスコープ方式の伸縮竿に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される伸縮竿は、互いに直径が異なる複数のパイプにより構成され、かつ、直径の小さいパイプが直径の大きいパイプ内に出没可能に収納されたテレスコープ方式の竿である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の伸縮竿では、大径のパイプに収納された小径のパイプが、意図しないタイミングで当該大径のパイプから出てしまう可能性が極めて高い。本開示は、当該点に鑑み、小径のパイプが、意図しないタイミングで大径のパイプから出てしまうことを抑制可能な伸縮竿の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
架線工事又は架線点検の際に利用されるテレスコープ方式の伸縮竿は、例えば、互いに直径が異なる複数のパイプ(31A~31F)により構成された竿本体(31)であって、直径の小さいパイプが直径の大きいパイプ内に出没可能に収納された竿本体(31)と、複数のパイプのうち最も直径が大きいパイプ(以下、把持パイプ(31A)という。)の外周面を覆う把持チューブ(32)と、複数のパイプのうち最も直径が小さいパイプ(以下、先端パイプ(31F)という。)の先端部に固定された筒状のキャップ(33)であって、当該先端パイプ(31F)が把持パイプ(31A)内に収納されたときに、内周面が把持チューブ(32)の外周面と接触することより当該把持チューブ(32)に保持されるキャップ(33)とを備えることが望ましい。
【0006】
これにより、キャップ(33)が把持パイプ(31A)の端部側に被さった状態では、当該キャップ(33)の内周面と把持チューブ(32)の外周面との接触部で発生する摩擦力により、キャップ(33)が把持パイプ(31A)に保持される。したがって、把持パイプ(31A)に収納されたパイプ(31B~31F)が把持パイプ(31A)から出てしまうことが規制される。
【0007】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る伸縮竿が延びた状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る伸縮竿が縮んだ状態を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る伸縮竿が縮んだ状態を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るキャップを示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るキャップを示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るキャップを示す図である。
【
図7】第2実施形態に係るキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0010】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0011】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された伸縮竿は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態は、架線工事又は架線点検の際に用いられ検電器用の伸縮竿に本開示に係る伸縮竿の一例が適用されたものである。
【0013】
<1.検電器の概要>
本実施形態に係る検電器1は、
図1に示されるように、検電部2及び伸縮竿3等を有して構成されている。検電部2は、検電対象となる架線に電荷が残存するか否かを検出するための検電装置である。
【0014】
本実施形態に係る検電部2は、架線に残存する電荷を利用して内部でコロナ放電を発生させることにより、架線に残存する電荷を視認可能としたものである。具体的には、架線に電荷が残存する状態で検電部2の先端2Aが当該架線に接触すると、風車状の回転体2Bが回転する。
【0015】
検電作業を行う作業者は、当該回転体2Bが回転したか否かを目視することにより、電荷の有無を検査する。伸縮竿3は、検電部2を支持するテレスコープ方式の伸縮竿である。具体的には、伸縮竿3の先端に検電部2が装着されている。
【0016】
<2.伸縮竿の構成>
伸縮竿3は、竿本体31、把持チューブ32及びキャップ33等を有して構成されている。竿本体31は、互いに直径が異なる複数(本実施形態では、6本)のパイプ31A~31Fにより構成されている。
【0017】
そして、各パイプ31A~31Fは、直径の小さいパイプが直径の大きいパイプ内に出没可能に収納されている。このため、竿本体31は、
図1及び
図2に示されるように、テレスコープ(望遠鏡)のごとく、伸縮することができる。
【0018】
なお、
図1は、竿本体31が最も伸張した状態を示す。
図2は、最も縮小した状態を示す。以下、複数のパイプのうち最も直径が大きいパイプを把持パイプ31Aという。複数のパイプのうち最も直径が小さいパイプを先端パイプ31Fという。
【0019】
把持チューブ32は、
図1に示されるように、把持パイプ31Aの外周面を覆うゴム製のチューブである。
図3に示されるように、把持チューブ32の先端32Aは、把持パイプ31Aの先端31Gよりキャップ33側(
図3では、上方側)に位置する。
【0020】
そして、把持チューブ32の先端32Aの内周直径D1は、把持パイプ31Aの先端31Gの外周直径D2より小さい。なお、本実施形態に係る把持チューブ32は、加熱すると収縮する材質にて構成されている。
【0021】
つまり、内周直径D1は、収縮後の把持チューブ32の内径である。このため、把持チューブ32のうち把持パイプ31Aの外周面と接触している部位は、大きな接触面圧にて接触している。つまり、把持チューブ32と把持パイプ31Aとは、把持パイプ31Aが把持チューブ32に圧入された場合と同様な状態となっている。
【0022】
キャップ33は、
図4に示されるように、先端パイプ31Fの先端部、つまり先端パイプ31Fのうち検電部2側の端部に固定されている。具体的には、以下の通りである。
【0023】
すなわち、先端パイプ31Fの先端には、固定キャップ2Cが固定されている。固定キャップ2Cは、検電部2を固定するため略円筒状の金属部材である。なお、本実施形態に係る固定キャップ2Cは、Pねじ2D等の締結具にて先端パイプ31Fに固定されている。
【0024】
そして、キャップ33は、固定キャップ2Cに圧入された状態で接着剤にて当該固定キャップ2Cに固定されている。つまり、本実施形態に係るキャップ33は、固定キャップ2Cを介して先端パイプ31Fの先端部に固定されている。
【0025】
図5に示されるように、先端パイプ31Fが把持パイプ31A内に収納されたときに、キャップ33の内周面が把持チューブ32の外周面と接触する。これにより、当該キャップ33は、把持チューブ32に保持される。
【0026】
つまり、キャップ33が把持パイプ31Aの先端側に被さった状態(
図5参照)では、当該キャップ33の内周面と把持チューブ32の外周面との接触部で発生する摩擦力により、キャップ33が把持パイプ31Aに保持される。
【0027】
<2.1 キャップの詳細>
本実施形態に係るキャップ33は、CR70等のゴム製である。そして、
図6に示されるように、キャップ33の先端33A側(本実施形態では、把持チューブ32側)の端部、つまり、
図6の下端側の内周面にはテーパ部33Bが設けられている。テーパ部33Bは、先端33Aに近づくほど内径が大きくなる略円錐状の傾斜面にて構成されている。
【0028】
さらに、キャップ33の内周面のうち把持チューブ32の外周面と接触する部位には滑止部33Cが設けられている。本実施形態に係る滑止部33Cは、他の部位に比べて面粗度が粗い部位である。
【0029】
滑止部33Cは、テーパ部33Bのうち最も内径寸法が小さくなる部位から所定範囲内のみに設けられている。具体的には、当該滑止部33Cは、
図5に示されるように、把持チューブ32と接触し得る範囲のみに設けられている。
【0030】
キャップ33の内周面のうち滑止部33Cより検電部2側は、滑止部33Cの内径寸法より大きな内径寸法となっている。これは、キャップ33の剛性が過度に大きくなることを抑制するためである。
【0031】
なお、本実施形態では、キャップ33のうち固定キャップ2Cに固定される部位の厚み寸法は、テーパ部33B及び滑止部33Cが設けられた部位の厚み寸法に比べて大きい。さらに、把持チューブ32の外周面のうち滑止部33Cと接触し得る部位に、面粗度を粗くする滑止加工が施されている
<3.本実施形態に係る伸縮竿の特徴>
キャップ33が把持パイプ31Aの端部側に被さった状態では、当該キャップ33の内周面と把持チューブ32の外周面との接触部で発生する摩擦力により、キャップ33が把持パイプ31Aに対して保持される。したがって、把持パイプ31Aに収納されたパイプ31B~31Fが把持パイプ31Aから出てしまうことが規制される。
【0032】
把持チューブ32の先端32Aの内周直径D1は、把持パイプ31Aの先端31Gの外周直径D2より小さい。これにより、キャップ33が把持パイプ31Aに装着される際に、把持チューブ32が案内されて確実にキャップ33の内周側に嵌り込む。
【0033】
キャップ33の先端33C側の内周面には、テーパ部33Bが設けられている。これにより、キャップ33が把持パイプ31Aに装着される際に、把持チューブ32が案内されてより確実にキャップ33の内周側に嵌り込む。
【0034】
キャップ33の内周面のうち把持チューブ32の外周面と接触する部位には、滑止部33Cが設けられている。これにより、キャップ33が確実に把持パイプ31A(把持チューブ32)に保持され得る。
【0035】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係るキャップ33の内周面には、Pねじ2Dが嵌り込み可能な凹部33Dが設けられていた(
図5参照)。そして、その凹部33Dは、キャップ33の中心線方向と平行に延びる溝状であった。
【0036】
これに対して、本実施形態に係る凹部33Eは、
図7に示されるように、キャップ33の中心線方向と平行に延びる第1溝部33F、及び当該中心線方向と直交する方向に延びる第2溝部33Gを有している。具体的には、本実施形態に係る凹部33Eは、略L字状に構成されている。
【0037】
そして、キャップ33が先端パイプ31Fに固定された状態では、Pねじ2Dは、第2溝部33G内に位置する。つまり、キャップ33が先端パイプ31Fに固定された状態では、Pねじ2Dは、第2溝部33Gに係止された(引っ掛かった)状態となる。これにより、キャップ33が先端パイプ31Fに確実に固定された状態となり得る。
【0038】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0039】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、検電器に本開示に係る伸縮竿が適用された例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、接地器等にも本開示に係る伸縮竿が適用可能である。
【0040】
上述の実施形態に係るキャップ33は、固定キャップ2Cを介して先端パイプ31Fの先端部に固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、固定キャップ2Cを介すことなく、直接的に先端パイプ31Fに固定された構成であってもよい。
【0041】
上述の実施形態に係るキャップ33は、固定キャップ2Cに圧接した状態で接着剤にて当該固定キャップ2Cに固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、固定キャップ2Cに圧接した状態でねじにて固定された構成であってよい。
【0042】
上述の実施形態に係るキャップ33では、テーパ部33B及び滑止部33Cが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、テーパ部33B及び滑止部33Cのうち少なくとも一方が廃止された構成であってもよい。
【0043】
上述の実施形態に係るキャップ33及び把持チューブ32は、CR70等のゴム製であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、キャップ33及び把持チューブ32がCR70以外の樹脂製又はゴム製であってもよい。
【0044】
上述の実施形態では、把持チューブ32の先端32Aの内周直径D1は、把持パイプ31Aの先端31Gの外周直径D2より小さい構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、把持チューブ32の先端32Aが把持パイプ31Aの先端31Gから突出していない構成であってもよい。
【0045】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1… 検電器
2… 検電部
2C… 固定キャップ
3… 伸縮竿
31… 竿本体
31A… 把持パイプ
31F… 先端パイプ
32… 把持チューブ
33… キャップ
33B… テーパ部
33C… 滑止部