(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127983
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】波形管、複合管、複合管の設置方法および製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20220825BHJP
B29D 23/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F16L11/11
B29D23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026249
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 晶
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅己
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翔太
【テーマコード(参考)】
3H111
4F213
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA14
3H111CA15
3H111CA16
3H111CA43
3H111CB03
3H111CB13
3H111CB22
3H111DA15
3H111DA26
3H111DB03
3H111EA04
4F213AA04
4F213AA11
4F213AB02
4F213AG03
4F213AG10
4F213AG20
4F213AR07
4F213WA06
4F213WB02
4F213WB11
4F213WC01
(57)【要約】
【課題】 樹脂製可撓管内を通る流体の圧力、流量、温度の急変に伴う異音発生を抑制できるとともに、保温性を向上させることができる複合管を提供する。
【解決手段】
複合管1は、樹脂製可撓管2と、樹脂製可撓管2を被覆する可撓性の波形管3と、を備えている。波形管3は、単層の発泡樹脂からなり、環状の大径部10と小径部20を管軸方向に交互に有している。大径部10の断面形状は、いわゆる馬蹄形状をなし、第1方向に互いに離間対向する円弧部11(湾曲凸部)および直線部12と、円弧部11の両端と直線部12の両端との間に配置されるとともに第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部13とを有している。小径部20は、樹脂製可撓管2を管径方向に拘束する拘束部21a,22aを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製可撓管を被覆する可撓性の波形管であって、
発泡樹脂を含み、環状の大径部と小径部を管軸方向に交互に有し、
前記大径部の断面形状が、第1方向に互いに離間対向する湾曲凸部および直線部と、前記湾曲凸部の両端と前記直線部の両端との間に配置されるとともに前記第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部とを有し、
前記小径部が、前記樹脂製可撓管を管径方向に拘束する拘束部を有することを特徴とする波形管。
【請求項2】
樹脂製可撓管と、
発泡樹脂を含み、環状の大径部と小径部を管軸方向に交互に有し、前記樹脂製可撓管を被覆する可撓性の波形管と、
を備えた複合管であって、
前記大径部の断面形状が、第1方向に互いに離間対向する湾曲凸部および直線部と、前記湾曲凸部の両端と前記直線部の両端との間に配置されるとともに前記第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部とを有し、
前記小径部が、前記樹脂製可撓管を管径方向に拘束する拘束部を有することを特徴とする複合管。
【請求項3】
前記樹脂製可撓管は、前記小径部の前記拘束部によって、前記第1方向において前記大径部の前記湾曲凸部より前記直線部に近い位置で拘束されていることを特徴とする請求項2に記載の複合管。
【請求項4】
前記樹脂製可撓管は前記拘束部により、前記第2方向において前記大径部の前記一対の側部間の中央で拘束されていることを特徴とする請求項3に記載の複合管。
【請求項5】
前記小径部の断面形状が、前記大径部の前記湾曲凸部側に位置する第2湾曲凸部と、前記大径部の前記直線部側に位置し前記直線部と平行な第2直線部と、前記大径部の前記一対の側部に沿う一対の第2側部とを有し、前記第2湾曲凸部の中央部と前記第2直線部の中央部が前記拘束部として提供されることを特徴とする請求項4に記載複合管。
【請求項6】
前記小径部が、周方向に離間した少なくとも3つの拘束部を有していることを特徴とする請求項4に記載の複合管。
【請求項7】
前記小径部が、前記大径部の前記直線部側に位置し前記直線部と平行な第2直線部を有するとともに、前記第2直線部の両端から周方向に離間して径方向、内側に突出する2つの凸部を有し、前記第2直線部の中央部と前記凸部が、前記拘束部として提供されることを特徴とする請求項6に記載の複合管。
【請求項8】
請求項2~7のいずれかに記載の複合管の前記大径部の前記直線部を建物構造体の面に沿わせ、取付部材の円弧形状の頂部を前記大径部の前記湾曲凸部に被せた状態で、前記取付部材の一対の固定部を前記建物構造体の面に固定することにより、前記複合管を前記建物構造体の面に設置することを特徴とする複合管の設置方法。
【請求項9】
樹脂製可撓管と、環状の大径部と小径部が管軸方向に交互に形成され前記樹脂製可撓管を被覆する可撓性の波形管と、を備えた複合管を製造する方法であって、
前記樹脂製可撓管を押出ノズルの通過口から波形管成形部へ送り出し、
前記波形管となる樹脂を所定の発泡倍率で発泡されるようにして前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記通過口を囲む環状の押出口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出し、
前記波形管成形部は、前記大径部と前記小径部を管軸方向に交互に成形するための成形面を有し、前記成形面を管軸方向に移動させながら管状の樹脂を管径方向に拡げることにより、前記波形管を成形し、
前記波形管の成形工程において、前記大径部の断面形状を、第1方向に互いに離間対向する湾曲凸部および直線部と、前記湾曲凸部の両端と前記直線部の両端との間に配置されるとともに前記第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部とを有する形状にし、
前記前記波形管の成形工程において、前記樹脂の発泡により前記小径部の内周面を管径方向内側に変位させ、これにより、前記樹脂製可撓管を管径方向に拘束する拘束部を形成することを特徴とする複合管の製造方法。
【請求項10】
前記押出口が、前記第1方向に互いに離間対向する円弧形状の第1スリット部および直線状の第2スリット部と、前記第1スリット部の両端と前記第2スリット部の両端との間に配置されるとともに前記第2方向に対向する一対の第3スリット部とを有し、
前記波形管成形部は、前記小径部を、前記大径部の前記湾曲凸部側に位置する第2湾曲凸部と、前記大径部の前記直線部側に位置し前記直線部と平行な第2直線部と、前記大径部の前記一対の側部に沿う一対の第2側部と、を有する断面形状に成形し、
前記樹脂の発泡により、前記第2湾曲凸部の中央部と前記第2直線部の中央部が、前記樹脂製可撓管を拘束する前記拘束部として提供されることを特徴とする請求項9に記載の複合管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製可撓管を被覆する波形管、樹脂製可撓管と波形管を備えた複合管、この複合管の設置方法および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば給水給湯に用いられる樹脂製可撓管は表面が柔らかいため、そのまま配管施工すると構造物等に擦れて傷付く。そのため、樹脂製可撓管を可撓性の波形管で被覆した複合管が普及している。
特許文献1に開示されているように、波形管は、それぞれ断面円形の小径部(外部から見て環状の谷部となる)と大径部(外部から見て山部となる)を管軸方向に交互に配することにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の複合管では、波形管の大径部と樹脂製可撓管との間はもちろんのこと、小径部と樹脂製可撓管との間にも隙間が形成されている。そのため、複合管を所定位置に設置したとしても、樹脂製可撓管の内部を通る流体の圧力、流量、温度などが急変した時に、樹脂製可撓管がばたつき、異音(いわゆるウォーターハンマー音や熱伸縮音)が発生しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の一態様は、樹脂製可撓管を被覆する可撓性の波形管であって、
発泡樹脂を含み、環状の大径部と小径部を管軸方向に交互に有し、前記大径部の断面形状が、第1方向に互いに離間対向する湾曲凸部および直線部と、前記湾曲凸部の両端と前記直線部の両端との間に配置されるとともに前記第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部とを有し、前記小径部が、前記樹脂製可撓管を管径方向に拘束する拘束部を有することを特徴とする。
【0006】
前記構成によれば、小径部の拘束部で樹脂製可撓管を抑えることができるので、樹脂製可撓管を流れる流体の圧力、流量、温度などが急変しても異音の発生を抑制することができる。
波形管が発泡樹脂を含むので、保温性を高めることができる。大径部において、直線部と一対の側部とが交差する隅部が、断熱空気層として追加されるので、大径部が円形の断面形状を有する波形管を用いる場合に比べて、保温性をさらに高めることができる。
大径部の直線部を建物構造体の面に沿わせることにより、複合管を安定して建物構造体に設置することも可能となる。
【0007】
本発明の他の態様は、樹脂製可撓管と、発泡樹脂からなり、環状の大径部と小径部を管軸方向に交互に有し、前記樹脂製可撓管を被覆する可撓性の波形管と、を備えた複合管であって、
前記大径部の断面形状が、第1方向に互いに離間対向する湾曲凸部および直線部と、前記湾曲凸部の両端と前記直線部の両端との間に配置されるとともに前記第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部とを有し、前記小径部が、前記樹脂製可撓管を管径方向に拘束する拘束部を有することを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記樹脂製可撓管は、前記小径部の前記拘束部によって、前記第1方向において前記大径部の前記湾曲凸部より前記直線部に近い位置で拘束されている。
前記構成によれば、波形管の大径部の湾曲凸部と樹脂製可撓管との間に厚い断熱空気層が形成される。しかも、直線部を建物構造体の面に沿わせて配置すれば、樹脂製可撓管と構造体の面との間への冷気侵入を抑制できることにより、複合管の保温機能をさらに高めることができる。建物構造体が断熱性、蓄熱性を有する場合には、樹脂製可撓管を建物構造体に近づけることにより、さらに保温性を高めることができるとともに、温度急変を緩和できるので異音発生のさらなる抑制にも寄与することができる。
【0009】
好ましくは、前記樹脂製可撓管は前記拘束部により、前記第2方向において前記大径部の前記一対の側部間の中央で拘束されている。
前記構成によれば、波形管の大径部の側部と樹脂製可撓管との間のそれぞれに、所定の断熱空気層を形成することができ、保温性をさらに高めることができる。
【0010】
複合管の一実施形態では、前記小径部の断面形状が、前記大径部の前記湾曲凸部側に位置する第2湾曲凸部と、前記大径部の前記直線部側に位置し前記直線部と平行な第2直線部と、前記大径部の前記一対の側部に沿う一対の第2側部とを有し、前記第2湾曲凸部の中央部と前記第2直線部の中央部が前記拘束部として提供される。
前記構成によれば、小径部が拘束部のための特殊な形状例えば局所的に突出する凸部を有さず、しかも大径部と小径部が似た形状であるので、成形が容易になる。
【0011】
複合管の別の実施形態では、前記小径部が、周方向に離間した少なくとも3つの拘束部を有している。
前記構成によれば、安定して樹脂製可撓管を管径方向に拘束することができる。
【0012】
前記別の実施形態において、好ましくは、前記小径部が、前記大径部の前記直線部側に位置し前記直線部と平行な第2直線部を有するとともに、前記第2直線部の両端から周方向に離間して径方向、内側に突出する2つの凸部を有し、前記第2直線部の中央部と前記凸部が、前記拘束部として提供される。
前記構成によれば、3箇所で安定して樹脂製可撓管を管径方向に拘束することができる。しかも凸部は2つで済み成形も良好に行える。
【0013】
本発明の他の態様は、複合管の設置方法において、複合管の前記大径部の前記直線部を建物構造体の面に沿わせ、取付部材の円弧形状の頂部を前記大径部の前記湾曲凸部に被せた状態で、前記取付部材の一対の固定部を前記建物構造体の面に固定することにより、前記複合管を前記建物構造体の面に設置することを特徴とする。
前記方法によれば、波形管の特殊な形状を利用して取付部材により建物構造体の面に安定して設置することができる。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、樹脂製可撓管と、環状の大径部と小径部が管軸方向に交互に形成され前記樹脂製可撓管を被覆する可撓性の波形管と、を備えた複合管を製造する方法であって、
前記樹脂製可撓管を押出ノズルの通過口から波形管成形部へ送り出し、前記波形管となる樹脂を所定の発泡倍率で発泡されるようにして前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記通過口を囲む環状の押出口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出し、前記波形管成形部は、前記大径部と前記小径部を管軸方向に交互に成形するための成形面を有し、前記成形面を管軸方向に移動させながら管状の樹脂を管径方向に拡げることにより、前記波形管を成形し、前記波形管の成形工程において、前記大径部の断面形状を、第1方向に互いに離間対向する湾曲凸部および直線部と、前記湾曲凸部の両端と前記直線部の両端との間に配置されるとともに前記第1方向と直交する第2方向に対向する一対の側部とを有する形状にし、前記前記波形管の成形工程において、前記樹脂の発泡により前記小径部の内周面を管径方向内側に変位させ、これにより、前記樹脂製可撓管を管径方向に拘束する拘束部を形成することを特徴とする。
前記方法によれば、樹脂の発泡を利用して拘束部を形成することができる。
【0015】
好ましくは、前記押出口が、前記第1方向に互いに離間対向する円弧形状の第1スリット部および直線状の第2スリット部と、前記第1スリット部の両端と前記第2スリット部の両端との間に配置されるとともに前記第2方向に対向する一対の第3スリット部とを有し、前記波形管成形部は、前記小径部を、前記大径部の前記湾曲凸部側に位置する第2湾曲凸部と、前記大径部の前記直線部側に位置し前記直線部と平行な第2直線部と、前記大径部の前記一対の側部に沿う一対の第2側部とを有する断面形状に成形し、前記樹脂の発泡により、前記第2湾曲凸部の中央部と前記第2直線部の中央部が、前記樹脂製可撓管を拘束する前記拘束部として提供される。
前記方法によれば、特殊形状の小径部と大径部を容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂製可撓管内を通る流体の圧力、流量、温度の急変に伴う異音発生を抑制できるとともに、保温性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る複合管を示す側断面図である。
【
図5】同製造装置の押出ノズル先端面において、樹脂製可撓管を挿通するための挿通口と、樹脂材料を押し出す押出口とを示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る複合管を示す側断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る複合管を示す
図2相当断面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る複合管を示す
図2相当断面図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係る複合管を示す
図2相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図5)>
図1~
図3は、本発明の第1実施形態に係る複合管1を示す。複合管1は、例えば給水給湯用の配管として用いられる。複合管1は、水や湯等の流体が通る樹脂製可撓管2と、この樹脂製可撓管2の外周を被覆する被覆層としての可撓性の波形管3(コルゲート管)と、を備えている。
【0019】
樹脂製可撓管2の断面形状は、全長にわたって一定の円形をなす。樹脂製可撓管2の材質としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリエチレン(PE)、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、ポリブテン、ポリプロピレン(PP)その他の合成樹脂が挙げられる。さらに、樹脂製可撓管2は、ポリエチレン層を表皮に有した架橋ポリエチレン管(JISK6769のE種)であってもよく、金属強化多層構造などの金属を含む複合樹脂管であってもよい。樹脂製可撓管2の材質として、上記は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、特に制限はない。
【0020】
波形管3は、非発泡樹脂層を有さず、単層の発泡樹脂によって構成されている。波形管3の樹脂材料としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリエチレン(PE)、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、ポリブテン、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、プラストマーその他の合成樹脂が挙げられ、単一材質に限らず複数の材質を含む複合樹脂でもよい。上記は波形管3の材質の例示であり、可撓性、樹脂製可撓管2に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、波形管3の材質として特に制限はない。
【0021】
波形管3の発泡剤としては、例えば無機系の化学発泡剤や発泡性マイクロカプセルが用いられているが、これに限らず、フロンなどに代表される物理発泡剤や超臨界流体などを用いてよい。発泡剤の配合割合によって発泡倍率が調整される。波形管3を構成する発泡樹脂の発泡倍率は、好ましくは1.05倍~4倍であり、より好ましくは下限が1.1倍以上で、上限が2.0倍である。
【0022】
図1に示すように、波形管3は、管軸に沿う縦断面形状が波形をなし、管軸に沿って所定ピッチで交互に配置された環状の大径部10および環状の小径部20と、これら大径部10と小径部20を連ねる連接部30とを有している。
【0023】
図2、
図3に示すように、波形管3の大径部10の断面形状は、左右対称のいわゆる馬蹄形をなし、図において上下方向(第1方向)に対向する円弧部11(湾曲凸部)および直線部12と、図において左右方向(第1方向と直交する第2方向)に対向する一対の側部13とを有している。直線部12は第2方向に延びている。円弧部11はほぼ半円をなし、その中心は、直線部12の中心を通り上下方向に延びる線上に位置する。一対の側部13は円弧部11と直線部12の両端間に配置され、上下方向に直線状に延び直線部12と略直角をなしている。
【0024】
本実施形態では、波形管3の小径部20の断面形状も大径部10と同様に馬蹄形をなしており、大径部10の円弧部11側に配された円弧部21(第2円弧部)と、直線部11側に配された直線部22(第2直線部)と、一対の側部13に沿う一対の側部23(第2側部)と、を有している。大径部10と小径部20の直線部12,22は互いに平行をなし、側部13,23も互いに平行をなしている。
円弧部11,21の中央の内面間の間隔D1は、直線部12、22の内面間の間隔D2より大である。
【0025】
波形管3が樹脂製可撓管2を被覆した状態で、小径部20の円弧部21の中央部21a(拘束部)と直線部22の中央部22a(拘束部)の内面が、樹脂製可撓管2の外周面に接している。
【0026】
複合管の配管施工
上記構成の複合管1を建物内で配管する際、樹脂製可撓管2が波形管3で被覆されているので、引き摺っても傷つかない。また、波形管3自身も発泡倍率が4倍以下であるので、耐傷性を確保できる。
樹脂製可撓管2を継手に接続する時には、波形管3を樹脂製可撓管2に対して管軸方向に滑らしながら縮めることで、樹脂製可撓管2の端部を露出させることができ、継手に楽に接続することができる。波形管3は単層の発泡樹脂からなるので、容易に縮めることができる。
【0027】
複合管の床面設置
図2、
図3に示すように、複合管1は汎用のサドルバンド4(取付部材)により、コンクリート製の床面5(建物構造体の面)に固定される。サドルバンド4は、例えば金属板からなり、円弧形状の頂部4aと、その両側の脚部4bと、脚部4bの下端から直角に延びる固定部4cとを有している。波形管1の大径部10の直線部12を床面5にほぼ接するようにして沿わせ、円弧部11にサドルバンド4の頂部4aを被せた状態で、固定部4cを床面5に固定することにより、複合管1が床面5に設置される。壁面や天井面に複合管1を設置する場合も同様である。
【0028】
複合管の異音抑制効果
上述したように、複合管1がサドルバンド4により床面5に設置された状態で、樹脂製可撓管2が波形管3により管径方向に拘束されている。すなわち、小径部20の円弧部21の中央部21a(拘束部)と直線部22の中央部22a(拘束部)の内面が、樹脂製可撓管2の外周面に接しているため、樹脂製可撓管2は上下方向に拘束されている。また、円弧部21と直線部22との間の間隔が、中央部21a、22aから左右に向かうにしたがって狭くなるため、樹脂製可撓管2は左右方向にも拘束されている。そのため、樹脂製可撓管2の内部を通る水や湯などの流体の圧力、流量、温度などが急変しても、樹脂製可撓管2のバタツキを抑制でき、ウォーターハンマー(水撃)音や熱伸縮音等の異音が発生するのを抑制することができる。
【0029】
波形管3を構成する発泡樹脂が衝撃を吸収することによっても、異音発生をさらに抑制することができる。
樹脂製可撓管2は、蓄熱性を有するコンクリートの床面5に接近して配置されているので、温度の急変を緩和できる。また、異音を減衰することができる。この点からも、異音発生の抑制効果を高めることができる。
【0030】
複合管の保温機能
樹脂製可撓管2と大径部10の円弧部11との間の間隔D1が広いので、両者の間に厚い断熱空気層を形成することができる。また、樹脂製可撓管2と大径部10の側部13との間の間隔D3も、樹脂製可撓管2と直線部12との間隔D2より大きく、厚い断熱空気層が形成されている。樹脂製可撓管2と、小径部20の左右の側部23との間にも空気断熱層が形成されている。
さらに、大径部10の内部空間の下半分は、直線部12と一対の側部13により矩形状に画成されており、その両隅部にも断熱空気層が形成される。同様に、小径部20の両隅部にも断熱空気層が形成される。
上述したように大きな断面積の断熱空気層を確保することができるので、保温機能を高めることができる。
【0031】
波形管3の大径部10の直線部12が床面5と接するか僅かの隙間を介して対峙しており、また小径部20の直線部22と床面5との間の隙間も狭いので、これら直線部12,22と床面5との間への冷気の侵入を抑制することができる。さらに、床面5のコンクリートが断熱材として機能し、波形管3の発泡樹脂層も断熱層として機能する。そのため、保温機能をより一層高めることができる。
【0032】
複合管の製造装置
図4は、複合管1の製造装置100を示す。製造装置100は、発泡樹脂供給部110と、押出ノズル120と、波形管成形部130とを備えている。
詳細な図示は省略するが、発泡樹脂供給部110は、波形管3の原料となる樹脂を受け入れるホッパー、樹脂を加熱溶融するヒータ、発泡剤の添加部、樹脂と発泡剤を混錬して押し出すシリンダー及びスクリューを含む。ホッパー投入前の原料樹脂に発泡剤が含まれていてもよい。なお、発泡樹脂供給部110は図示のように垂直に配置してもよいし、水平に配置してもよい。
【0033】
図5に示すように、押出ノズル120は、樹脂製可撓管2が通過する通過口121と、この通過口121を囲むようにして形成された環状の押出口122とを有している。通過口121は円形をなし、その口径は、樹脂製可撓管2の外径とほぼ等しい。
押出口122は、いわゆる馬蹄形をなし、小径部20の円弧部21に対応する円弧形状の第1スリット部122aと、小径部20の直線部22に対応する直線状の第2スリット部122bと、小径部20の一対の側部23に対応する一対の第3スリット部122cと、を有している。
押出口122を画成する径方向外側の面122xは、上述した波形管3の小径部20の断面の外側輪郭とほぼ同形状、同サイズである。押出口122の径方向内側の面122yは、小径部20の断面の内側の輪郭より若干大きく、その第1スリット部122a、第2スリット部122bの中央と通過口121とは、例えば0.5~2mm離れている。
【0034】
波形管成形部130(コルゲーター)は、押出ノズル120の押出し方向の下流側(
図4において右側)に配置されている。波形管成形部130は、上下2つの長円形の環状軌道131、132と、環状軌道131、132に沿ってそれぞれ並べられ矢印で示すように循環する多数の割型133、134を備えている。2つの環状軌道131、132間に押出ノズル120の軸線が通っている。
【0035】
図において上側の環状軌道131に設けられた割型133は、例えば
図1~
図3に示す波形管20の約上半分を成形するための成形面(図示しない)を有しており、下側の環状軌道132に設けられた割型134は、波形管20の約下半分を成形するための成形面を有している。上下の割型133、134は、押出ノズル120近傍で合わさって筒状の金型対となり、その成形面により複数ピッチの大径部10と小径部20を成形することができる。割型133、134の各成形面において、大径部10を成形するための成形部には吸引口(図示しない)が形成されている。
【0036】
複合管の製造工程
複合管1は、次のようにして製造される。
予め、樹脂製可撓管2を成形して硬化させたり入手したりするなどして、用意しておく。この樹脂製可撓管2が、押出ノズル120の通過口121を通り、押出ノズル120から波形管成形部130へと一定速度で送り出され、循環軌道131,132に並べられて同速度で移動する割型133,134間に送られる。
【0037】
発泡樹脂供給部110において、樹脂が加熱溶融され、かつ所定の配合比の発泡剤を添加され所定の発泡倍率(好ましくは1.2倍~4倍)で発泡するようにされたうえで、押出ノズル120へ供給され、押出ノズル120の押出口122から波形管成形部32へ向けて、樹脂製可撓管2と同じ速度で押し出される。
【0038】
押出ノズル120内においては高圧のため樹脂は発泡を開始していない。押出によって樹脂に加わる圧力が低下するために、押出直後から発泡が開始される。
樹脂は、押出口122と実質的に同じ馬蹄形の断面形状の管となって押し出される。管状の樹脂の円弧部および直線部の中央の内面と樹脂製可撓管2の外周面との間には、0.5~2mmの間隙が形成されている。
【0039】
管状の樹脂は、合わさった割型133,134の中に入り、割型133,134の吸引口からのバキュームによって、拡径されて割型133,134の成形面に至り波形管3に成形される。
波形管3は、波形管成形部130を通過する過程で発泡により厚みが管径方向内側に増大する。その結果、小径部20の円弧部21の中央部21aと直線部22の中央部22aが樹脂製可撓管2の外周面と接し、
図1~
図3に示す断面形状が完成する。
後述する第5実施形態を除き、割型133,134の合わせ面は、拘束部を回避して設けられている。パーティングラインは、拘束部にできないので、拘束部は、設計どおりの柔軟性を得ることができる。また、先に波形管3を作り、後に樹脂製可撓管2を差し込む際、バリが邪魔にならない。
【0040】
本実施形態では管状の樹脂の押出断面形状を小径部20に合わせて馬蹄形状にしたので、小径部20を成形する際の管状の樹脂の拡径量を実質的にゼロにするか減じることができ、大径部10も類似形状に拡径するので、成形性を高めることができる。
本実施形態において、管状の樹脂の押出断面形状は馬蹄形に制約されず円形または他の形状であってもよい。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態に相当する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図6に示す第2実施形態は、基本的に第1実施形態と同様である。異なるのは、第1実施形態では、全ての小径部20の円弧部21の中央部が樹脂製可撓管2に接して樹脂製可撓管2を拘束していたが、本実施形態では1つおきまたは複数個おきの小径部20の円弧部21の中央部が樹脂製可撓管2に接し、他の小径部20Aの円弧部21Aは樹脂製可撓管2から離れている。この第2実施形態では小径部20と樹脂製可撓管2との間の断熱空気層を増やすことができ、保温性をさらに高めることができる。
【0042】
図6の実施形態では、全ての小径部20の直線部22の中央部が樹脂製可撓管2に接して樹脂製可撓管2を拘束したが、1つおきまたは複数個おきの小径部20の直線部22の中央部が樹脂製可撓管2に接し、他の小径部20の直線部が樹脂製可撓管2から離れていてもよい。
【0043】
<第3実施形態>
図7、
図8に示す第3実施形態では、小径部20Bの円弧部21Bの中央部が樹脂製可撓管2と接しない。その代わりに、円弧部21Bの両側部に管径方向内側に突出した凸部25(拘束部)が形成され、これら凸部25が樹脂製可撓管2と接している。
本実施形態では、直線部22の中央部22aと、この直線部22の両端から周方向に離れた2つの凸部25との3箇所で樹脂製可撓管2を安定して拘束することができる。
第3実施形態において、所定数おきの小径部20Bだけに凸部25を形成してもよい。
【0044】
<第4実施形態>
図9に示す第4実施形態では、第3実施形態と同様に小径部20Cの円弧部21Cの両側に凸部25が形成されるとともに、直線部22Cの両側にも管径方向内側に突出する凸部26(拘束部)が形成されている。本実施形態では、周方向に離れた4つの凸部25,26が樹脂製可撓管2の外周面に接することにより、樹脂製可撓管2が管径方向に安定して拘束されている。
第4実施形態でも、1つおきまたは複数個おきの小径部だけに凸部25を形成し、他の所定数おきの小径部だけに凸部26を形成してもよい。
なお、本実施形態では、直線部22Cの中央部は樹脂製可撓管2に接してもよいし離れていてもよい。小径部20Cの基本形状は馬蹄形でなくてもよく、円形や四角形にしてもよい。
【0045】
<第5実施形態>
図10に示す第5実施形態では、小径部20Dの断面形状が円形をなし全周にわたって樹脂製可撓管2の外周面に接している。すなわち、小径部20Dは全周にわたって拘束部を有している。
【0046】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。
小径部による樹脂製可撓管の拘束は、接する代わりに僅かな隙間を介在した状態での拘束を含む。
湾曲凸部は、上記実施形態の半径一定の円弧部に限らず、例えば3以上の直線で山形状としてもよいし、2つの放物線を連ねて山形状としてもよい。
樹脂製可撓管は、円形以外の断面形状であってもよい。例えば第1実施形態において、樹脂製可撓管が馬蹄形をなし、波形管も馬蹄形をなしてその全周が樹脂製可撓管に接していてもよい。
波形管3は、非発泡樹脂でもよく、複層構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば給水給湯管に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 複合管
2 樹脂製可撓管
3 波形管
4 サドルバンド(取付部材)
4a 頂部
4c 固定部
5 床面(建物構造体の面)
10 大径部
11 円弧部(湾曲凸部)
12 直線部
13 側部
20、20A,20B,20C、20D 小径部
21 円弧部(第2湾曲凸部)
21a 円弧部の中央部(拘束部)
22 直線部(第2直線部)
22a 第2直線部の中央部(拘束部)
25,26 凸部(拘束部)
100 製造装置
110 発泡樹脂供給部
120 押出ノズル
121 通過口
122 押出口
130 波型菅成形部