(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127988
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】リチウム空気電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20220825BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220825BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20220825BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M10/44 A
H01M10/48 P
H01M12/08 K
H01M4/96 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026263
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】安川 栄起
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸
(72)【発明者】
【氏名】山口 祥司
(72)【発明者】
【氏名】角田 宏郁
(72)【発明者】
【氏名】宮川 絢太郎
【テーマコード(参考)】
5H018
5H030
5H032
【Fターム(参考)】
5H018AA10
5H018AS03
5H018DD06
5H018EE05
5H018HH06
5H030AA01
5H030BB01
5H030BB02
5H030FF43
5H032AA02
5H032AS01
5H032AS12
5H032BB08
5H032CC01
5H032CC06
5H032CC11
5H032CC17
5H032EE02
5H032HH04
5H032HH08
(57)【要約】
【課題】 電解液の液量が比較的少ない場合であっても、極めて多量の界面活性剤を添加するなどのコスト的かつ環境的に不利益な手段に依存することなく、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池を利用し得る簡便な方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の方法によれば、特定の液量の非水電解液を含んだリチウム空気電池において、充電カットオフ電圧を特定の条件として充電することにより、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池を利用し得る簡便な方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解質層を備えるリチウム空気電池の充電方法であって、
該リチウム空気電池は、非水電解液を含み、且つ以下の式:
4.7≦E/C(mL/Ah)≦9.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm2)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm2)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm2)と定義する)を満たし、
充電カットオフ電圧が4.0V以下に設定される、上記リチウム空気電池の充電方法。
【請求項2】
前記のE/C(mL/Ah)の上限値が、8.4である、請求項1に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項3】
前記正極が、正極活物質としての酸素を取り込むための酸素流路として機能する正極集電体をさらに備える、請求項1又は2に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項4】
前記負極が、負極集電体をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム空気電池の充電方法
【請求項5】
前記非水電解質層が、1以上のセパレータを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項6】
前記非水電解質層が、固体電解質をさらに含む、請求項4又は5に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項7】
前記固体電解質が、酸化物系固体電解質を含む、請求項6に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項8】
前記非水電解質層が、2以上のセパレータを含み、当該セパレータ間に前記固体電解質の層を備える、請求項6又は7に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項9】
前記セパレータ上に前記固体電解質の層が形成されている、請求項5~7のいずれか一項に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項10】
前記セパレータの外縁が、前記正極層及び前記負極活物質層の外縁の外側にあり、且つ、前記固体電解質の層の外縁が、前記セパレータの外縁と略等しいか、又は前記セパレータの外縁よりも外側にある、請求項8又は9に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【請求項11】
前記充電カットオフ電圧が、3.7V以上4.0V以下に設定される、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム空気電池の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質として酸素を用い、負極活物質としてリチウムを用いるリチウム空気電池の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極活物質として空気中の酸素を用い、負極活物質としてリチウムを用いるリチウム空気電池は、リチウムと酸素が反応することによってリチウム酸化物が生じ、この反応によって放電がなされる。このように、リチウム空気電池では、大気中の酸素を正極活物質として用いるので、リチウムイオン電池と異なり正極活物質を電池に貯蔵する必要がなく、より高いエネルギー密度を示すことが期待されている。
【0003】
リチウム空気電池の例として、例えば、特許文献1では、長期に亘って安定作動が可能なリチウム空気電池を提供することが検討されている。特許文献1には、長期の電池作動時において、外部から混入した水分がリチウム空気電池の内部に浸入することによって負極である金属リチウムが腐食され、リチウム空気電池の長時間放電という特徴を損ねる要因になり得ることが記載され、これに対して、界面活性剤を添加することにより、外部から電解液に水分が浸入した場合においても、水分を界面活性剤が直ちに取り囲み、逆ミセル(w/oマイクロエマルション)が形成され、水分の金属リチウム負極への接触を防止し、同負極の腐食を抑制することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水分による金属リチウム負極の腐食は、特許文献1において指摘された態様である外部から混入した水分による場合に限られず、本発明者らの検討によれば、正極活物質である酸素と電解液とが反応し、その副反応として生じる水分によって生じる腐食についても対応を考慮する必要があることがわかった。このように、外部からの電解液への水分の混入のみならず、正極活物質である酸素と電解液との反応の副反応に起因して生じる水分も考慮して、負極である金属リチウムの腐食を抑制し、充放電特性の悪化を抑制し、ひいては充放電サイクル特性の悪化を抑制することを課題とした場合、特許文献1に開示されている界面活性剤を添加する方法では、極めて多量の界面活性剤が必要になることが懸念されるという問題があった。
また、特許文献1には、リチウム空気電池の電解液の液量については何ら開示されていないところ、電解液の液量を少なくすると、リチウム空気電池の正極(例えば、多孔質炭素材料を含む)及び負極(例えば、金属リチウムを含む)が、リチウムイオン電池で一般的に用いられる正極(例えば、LiCoO2やLiFePO4などのセラミックス材料を含む)及び負極(例えば、黒鉛やシリコンを含む)よりもいずれも軽量であるという特徴と相まって、重量エネルギー密度を高められる反面、本発明者らの検討によれば、上記の充放電サイクル特性が悪化するという問題があった。
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであって、電解液の液量が比較的少ない場合であっても、極めて多量の界面活性剤を添加するなどのコスト的かつ環境的に不利益な手段に依存することなく、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池を利用し得る簡便な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、意外なことに、リチウム空気電池に含まれる正極層の単位面積当たりの非水電解液の液量と、正極層の単位面積当たりの放電量とが一定の関係にある場合において、充電カットオフ電圧を特定の条件として充電することにより、充放電サイクル特性に顕著な効果をもたらすことを見出すに至り、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解質層を備えるリチウム空気電池の充電方法であって、
該リチウム空気電池は、非水電解液を含み、且つ以下の式:
4.7≦E/C(mL/Ah)≦9.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm2)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm2)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm2)と定義する)を満たし、
充電カットオフ電圧が4.0V以下に設定される、上記リチウム空気電池の充電方法。
[2] 前記のE/C(mL/Ah)の上限値が、8.4である、[1]に記載のリチウム空気電池の充電方法。
[3] 前記正極が、正極活物質としての酸素を取り込むための酸素流路として機能する正極集電体をさらに備える、[1]又は[2]に記載のリチウム空気電池の充電方法。
[4] 前記負極が、負極集電体をさらに備える、[1]~[3]のいずれかに記載のリチウム空気電池の充電方法
[5] 前記非水電解質層が、1以上のセパレータを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のリチウム空気電池の充電方法。
[6] 前記非水電解質層が、固体電解質をさらに含む、[4]又は[5]に記載のリチウム空気電池の充電方法。
[7] 前記固体電解質が、酸化物系固体電解質を含む、[6]に記載のリチウム空気電池の充電方法。
[8] 前記非水電解質層が、2以上のセパレータを含み、当該セパレータ間に前記固体電解質の層を備える、[6]又は[7]に記載のリチウム空気電池の充電方法。
[9] 前記セパレータ上に前記固体電解質の層が形成されている、[5]~[7]のいずれかに記載のリチウム空気電池の充電方法。
[10] 前記セパレータの外縁が、前記正極層及び前記負極活物質層の外縁の外側にあり、且つ、前記固体電解質の層の外縁が、前記セパレータの外縁と略等しいか、又は前記セパレータの外縁よりも外側にある、[8]又は[9]に記載のリチウム空気電池の充電方法。
[11] 前記充電カットオフ電圧が、3.7V以上4.0V以下に設定される、[1]~[10]のいずれかに記載のリチウム空気電池の充電方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、例えば、炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び正極層と負極活物質層との間に非水電解質を備え、特定の液量の非水電解液を含んだリチウム空気電池において、充電カットオフ電圧を特定の条件として充電することにより、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池を利用し得る簡便な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態であるリチウム空気電池の構造を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態であるリチウム空気電池の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例を示すために、
図1に記載されたリチウム空気電池100の構成について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
<リチウム空気電池の構成>
【0010】
図1は、本発明実地の形態におけるリチウム空気電池の構造を示す断面模式図である。
リチウム空気電池100は、正極101と負極104とが非水電解質層107を介して積層された積層構造体からなる。
非水電解質層107は、
図1の形態の他、
図2に示すように、複数のセパレータからなっていてもよいし、1枚のセパレータからなっていてもよい。この積層構造体は、スプリング115を介して、ガラスプレート110及びステンレス板111によって拘束されている。
【0011】
正極(空気極)101
正極(空気極)101は、正極層102及び酸素流路兼正極集電体103から構成される。正極(空気極)101は、さらに正極リード(図示せず)を備えていてもよい。
【0012】
酸素流路兼正極集電体103
酸素流路兼正極集電体103は酸素を透過することができ、集電機能を備える必要がある。すなわち、正極集電体103は、集電機能に加えて、正極活物質としての酸素を取り込むための酸素流路としても機能する。後述する実施例では、酸素流路兼正極集電体として、燃料電池のガス拡散層に使用されることがあるカーボンペーパー(TGP-060、東レ株式会社製)を用いたが、酸素を透過することができ、かつ集電機能を備えるものであれば必ずしもカーボンペーパーには限定されず、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)の群から選ばれる金属を有するメッシュなどを用いてもよい。
【0013】
正極層(空気極層)102
正極層(空気極層)102は導電性があり、多孔質構造であることが必要である。正極層の材質としては、炭素、金属、炭化物、酸化物などが挙げられるが、炭素が好ましく、炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極を好適に用いることができる。多孔質構造の正極層(空気極層)は、放電反応で生成する過酸化リチウムが析出する反応場となる。
正極層102、すなわち多孔質構造の空気極層は、材料混合工程、シート成型工程、溶媒浸漬工程、乾燥工程、及び焼成工程を含む製造方法によって得ることができる。
【0014】
正極層(空気極層)102の製造方法
材料混合工程は、例えば、多孔質炭素粒子を50重量%以上80重量%以下、炭素繊維を1重量%以上15重量%以下、結着用高分子材料を5重量%以上49重量%以下となるように秤量し、それらを均一に分散するため、N-メチルピロリドンからなる溶媒を用いて炭素多孔質体正極の塗料(合剤塗料)を調製する工程である。
ここで、多孔質炭素粒子としては、上述のとおり、ケッチェンブラック(登録商標)を含むカーボンブラック、その他テンプレート法にて形成された炭素粒子などを用いることができる。
炭素繊維としては、例えば、繊維径が0.1μm以上20μm以下、長さが1mm以上20mm以下の炭素繊維を用いることができる。
結着用高分子材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデンを用いることができる。
溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)などを用いることができる。
【0015】
シート成型工程は、前記合剤塗料を成型する工程である。シート成型方法は特に制限されないが、例えば、公知のドクターブレードなどを用いた湿式製膜法を挙げることができる。その他にも、ロールコーター法、ダイコーター法、スピンコート法、スプレーコーティング法などを挙げることもできる。成型後の形は、目的に応じて様々な形とすることができる。
【0016】
溶媒浸漬工程は、非溶媒誘起相分離法にて、結着用高分子材料に対する溶解度が低い溶媒中に前記シート成型工程で成型した試料(シート)を浸漬し、多孔質膜化する工程である。溶媒浸漬工程で用いられる溶媒としては、例えば、水、及びエチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、並びに、これらの混合溶媒などを挙げることができる。
【0017】
乾燥工程は、試料から各種溶媒を揮発させる工程である。乾燥方法としては、乾燥空気環境下に置く方法、減圧乾燥法、真空乾燥法などを挙げることができる。この乾燥工程では、乾燥速度を速めるために、溶媒の沸点を超える程度の温度で加温してもよい。
【0018】
焼成工程は、前記乾燥工程後の試料(シート)を焼成処理する工程である。焼成処理は、例えば、オーブン炉、赤外線照射、ベーク炉などを用いて行うことができる。
ここで、焼成工程は、一度の熱処理とすることもできるが、不融化と焼成の2段階熱処理とすることもできる。焼成の熱処理温度は800℃以上1400℃以下が好ましく、そのときの雰囲気はアルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガスなどによる不活性雰囲気が好ましい。
例えば、結着用高分子としてPANを用いた場合は、約300℃で空気中にて不融化させる熱処理を行い、その後、Arガス、N2ガスなどによる不活性雰囲気中にて800℃以上1400℃以下の熱処理を行うことが好ましい。
【0019】
以上の工程により、自立性を有するのに十分で実用的な機械的強度を有する正極層102(空気極層)が製造される。この正極層102(空気極層)は、自立性を有するとともに、高い空気透過性、高いイオン輸送効率及び広い反応場を兼ね備える。
【0020】
負極104
負極104は、リチウムを含む負極活物質層を含む必要があり、集電体をさらに備えてもよい。負極104として、例えば、集電体106と、その上にリチウムを含む負極活物質層105からなる構造体を挙げることができる。負極活物質層105としては、リチウムを吸放出する金属又は合金からなる材料を挙げることができ、代表的にはリチウム金属を挙げることができる。集電体106としては、例えば銅箔を用いることができる。
非水電界質層107
【0021】
正極(空気極)101と負極104の間には非水電解質層107が配置される。
非水電解質層は、1枚のセパレータのみからなっていてもよいが、1以上のセパレータを含んでもよく、2以上のセパレータを含んでもよく、固体電解質(層)をさらに含んでもよい。一例として、非水電解質層107は、固体電解質(層)108及びセパレータ109から構成される。一実施形態では、非水電解質層は、2以上のセパレータを含み、当該セパレータ間に固体電解質の層を備える。別の実施形態では、1以上のセパレータの上に、固体電解質の層が形成されている。さらに別の実施形態では、セパレータの外縁が、正極層及び負極活物質層の外縁の外側にあり、且つ、固体電解質の層の外縁が、セパレータの外縁と略等しいか、又はセパレータの外縁よりも外側にある。このように、非水電解質層が、セパレータと固体電解質(層)とを特定の位置関係において備える構成を採用することにより、正極側非水電解液と負極側非水電解液が、セパレータを通じて移動することを抑制することができる。
セパレータ109
【0022】
セパレータ109としては、リチウムイオンが通過可能であり、多孔質構造の絶縁性材料で、かつ、正極層(空気極層)102、負極活物質層105、及び電解液との反応性を有さない任意の無機材料、又は有機材料が適用される。また、セパレータ109は電解液を保液する役割も果たす。この条件を満たせば、特に制限はなく、既存の金属電池に使用されるセパレータを使用することができる。例えば、セパレータ109は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどの合成樹脂からなる多孔質膜(例えば、熱溶融性の微多孔質膜)、ガラス繊維及び不織布からなる群から選択される。
セパレータ109は、正極(空気極)101と負極104との間の短絡を防ぐため、各活物質層よりも大きなサイズにすることが好ましい。
【0023】
固体電解質(層)108
任意に固体電解質ないし固体電解質層108を設けてもよい。固体電解質ないし固体電解質層108は、リチウムイオンを選択的に透過することができ、それ以外の成分を確実に遮断できる緻密な構造体であり、かつ非水電解液と反応性を有さないことが必要である。この条件を満たせば、固体電解質ないし固体電解質層108には特に制限はなく、既存の酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、ポリマー系固体電解質が適用される。電解液の非透過性、非水電解液との反応性を考慮すると、酸化物系固体電解質が好ましい。例えば、固体電解質(層)108としては、Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12、Li1.5Al0.5Ge1.5P3O12(LAGP)、La0.55Li0.33TiO3、Li7La3Zr2O12などが挙げられる。
【0024】
固体電解質層108は、2つのセパレータに挟まれた位置に配置されてもよいし、セパレータ上に固体電解質の粒子を塗布することによってセパレータの上に固体電解質(層)が形成されていてもよい。
正極側非水電解液と負極側非水電解液が、セパレータを通じて移動することを抑制するため、固体電解質層108は、セパレータ109と同じサイズか、セパレータ109よりも大きなサイズにすることが好ましい。
【0025】
電解液
電解液としては、リチウム金属塩を含有する非水系の任意の電解液が好ましい。前記非水系電解液(非水電解液)において、リチウム金属塩としてリチウム塩を用いる場合は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiSiF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(FSO2)2N、LiCF3SO3(LiTfO)、Li(CF3SO2)2N(LiTFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiB(C2O4)2などのリチウム塩を挙げることができる。
前記非水電解液において、非水溶媒は、グライム類(モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム)、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,2-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ジメチル、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、トリエチルホスフィンオキシド、1,3-ジオキソラン及びスルホランからなる群から選択されるが、これらに制限されない。また、これらの溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。
固体電解質(層)108を介して、正極側非水電解液と負極側非水電解液は、同一組成の電解液でもよく、異なる組成の電解液でもよい。
【0026】
E/C(mL/Ah)
本発明の一実施形態では、リチウム空気電池は、以下の式を満たす特徴を有する。
4.7≦E/C(mL/Ah)≦9.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm2)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm2)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm2)と定義する)。
本発明の一実施形態では、リチウム空気電池が示すE/C(以下、液量係数、ないし液量係数E/Cと称することもある)の下限値は、好ましくは4.7であり、より好ましくは5.4であり、さらに好ましくは6.4であり、最も好ましくは7.4であり、上限値は9.4であり、より好ましくは9.2であり、さらに好ましくは9.0であり、最も好ましくは8.8である。
本発明の別の一実施形態では、リチウム空気電池が示すE/Cの下限値は、好ましくは4.1であり、より好ましくは4.3であり、さらに好ましくは4.5であり、上限値は6.4であり、より好ましくは5.5である。
E/Cが上限値以下であるメリットとしては、上限値を超えているリチウム空気電池に比べて、充放電サイクル特性が優れている場合があるということである。その理由として、本発明者らは、非水電解液の液量を精密かつ適切に制限することにより、非水電解液の機能を十分に発揮すると同時に、正極活物質である酸素が空気極層全体に容易に行きわたることによって、好ましからざる過酸化リチウムの偏析が抑制され、このことが、充放電サイクル特性が改善に寄与していると推測している。
一方で、E/Cが下限値以上であるメリットとしては、本発明のリチウム空気電池が機能する上で必須の構成要素である非水電解液について、その液量が不足することなく、機能を発揮する程度にその液量を確保することができ、優れた充放電特性及び充放電サイクル特性を発揮し得るということが考えられる。
【0027】
その他の構成
図1に示すリチウム空気電池100について、その他の構成について説明する。
リチウム空気電池100は、正極層102及び負極活物質層105が正方形の形状であり、ガラスプレート110、ステンレス板111、固定ねじ112、固定用座金113、支柱114、スプリング115、スペーサ116を備えている。
下側ステンレス板111のコーナー部4か所は、円柱状の4本の支柱114とあらかじめ接合されており、また、上側のステンレス板111には支柱114に相対する位置に、支柱114が通る穴が開けられている。
【0028】
正極101、非水電解質層107、負極104及び2枚のガラスプレート110は、2枚のステンレス板111によって上下から挟み込まれる構成となっており、上側ステンレス板111の4隅の穴に支柱114が通されて挟み込まれている。上側ステンレス板111の穴を通じて突き抜けた支柱114にスペーサ116、スプリング115、固定用座金113が通されている。支柱114にはねじが切ってあり、固定用ねじ112で固定され、固定ねじ112の締め付け度合によって、ステンレス板111の間にかかる圧力を制御することができる。
【0029】
ガラスプレート110は、ステンレス板111及び支柱114を通じて、正極101と負極104とが短絡することを防ぐ絶縁体として機能している。
【0030】
<リチウム空気電池の製造方法>
リチウム空気電池100ないし200の製造方法について、その一例を説明する。
【0031】
正極層(空気極層)102の製造方法に関しては、上述のとおりである。
【0032】
負極104は、例えば、次のようにして準備し、製造する。すなわち、矩形状に切り出された負極集電体106の上に、負極集電体106の短辺と同じ長さの正方形状のリチウムなどによる負極活物質層105を準備し、重なるように積層し、負極104を得る。
【0033】
次いで、負極活物質層105の上にセパレータ109を配置し、所定量の非水電解液をセパレータ109に充填させる。
セパレータは1枚のみでもよいが、さらに、任意選択で、
図1に示すように、セパレータ109の上に固体電解質層108を正方形の形状の中心が重なるように配置し、その上にセパレータ109を正方形の形状の中心が重なるように積層し、所定量の非水電解液をセパレータ109に充填させてもよい。また、任意選択で、
図2に示すように、セパレータ109の上にさらにセパレータ109を配置してもよい。セパレータからなる、又はセパレータを含む上記部材が、非水電解質層として機能し得る。
【0034】
次に、セパレータ109の上に正極層102を正方形の形状の中心が重なるように重ね、所定量の非水電解液を正極層102に充填させてもよい。
【0035】
その後、酸素流路兼正極集電体103(予め正極リード(図示せず)が取り付けられていてもよい)を、正極層102の3辺と重なるように積層する。このとき、正極と負極の短絡を抑制するため、正極層102と重ならない部分(例えば、正極リードが取り付けられた1辺)を、負極集電体106と反対方向に取り出すことが好ましい。
【0036】
次いで、正極101、負極104及び非水電解質層107(セパレータのみからなっていてもよい)からなる積層体を、ガラスプレート110及びステンレス板111により、スプリング115及びスペーサ116を用いて拘束し、工程用座金113及び固定ねじ112で固定する。このとき、正極101、負極104及び非水電解質層107に13~14N/cm2の圧力が印加されるように固定ねじで調整する。
【0037】
以上の工程で、リチウム空気電池100を得る。ここで、リチウム空気電池の組立は乾燥空気下、例えば露点温度-50℃以下の乾燥空気下で行うことが好ましい。
なお、リチウム空気電池200を製造する場合は、上述の工程において、固体電解質層108を含まない以外は、リチウム空気電池100と同様に組み立てればよい。
【0038】
<リチウム空気電池の充放電特性及び充放電サイクル測定の測定方法>
リチウム空気電池の充放電特性及び充放電サイクル特性の測定方法について説明する。
充放電サイクル特性の評価には、東洋システム製充放電評価装置(TOSCAT-3100)を用いて行った。
充電条件は、印加電流を電極面積当たり0.2mA/cm2の電流密度(4cm2の電極を持つセルに対し0.8mA)とし、所定のカットオフ電圧に達するまで充電することができる。本発明の充電カットオフ電圧の上限値は、好ましくは4.0Vであり、下限値は、好ましくは3.7Vである。
一方、放電条件は印加電流を電極面積当たり0.4mA/cm2の電流密度(4cm2の電極を持つセルに対し1.6mA)とし、10時間又は2.0Vのカットオフ電圧に達するまでとし、放電容量が初期放電容量の80%以下になるまで行った。すなわち、N+1回目の放電で初期放電容量の80%を下回った場合、そのセルのサイクル数をN回と定義した。
【実施例0039】
以下、実施例に基づき、本発明のリチウム空気電池の作成及びその特性について、更に詳しく説明する。なお、これらの記載は本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
正極の作製
最初に、多孔質炭素粒子65重量%、炭素繊維10重量%、結着用高分子材料25重量%及びそれらを均一に分散するN-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)からなる溶媒を用いて合剤塗料を調製した。
ここで、多孔質炭素粒子としてはケッチェンブラック(登録商標)を65重量%含むカーボンブラックを用いた。炭素繊維としては繊維平均径7mm、平均長さ3mmの炭素繊維を用いた。結着用高分子材料としてはポリアクリロニトリル(PAN)を用いた。
予めDMSO溶媒にPANを10重量%になるよう溶解しPAN溶液を作製した。次に、炭素繊維とPAN溶液に含まれるPANが、重量比で10:25になるよう秤量し、自転・公転ミキサーあわとり練太郎(ARE-310、株式会社シンキー製。以後、「あわとり練太郎」と表記する)を用いて、2000rpm、2分間混合した。続いて、炭素繊維10%に対して、多孔質炭素粒子が65重量%となるように秤量して前記塗料に加え、Nv値(乾燥前の塗料分質量に対する、乾燥後の塗料分質量に占める割合)が11%になるようN-メチルピロリドンを用いて塗料を希釈した。この塗料を再びあわとり練太郎を用いて再び2000rpm、2分間混合し、正極用塗料とした。
前記正極用塗料を、ドクターブレードを用いた湿式製膜法にて均一な厚みに成型してシート化した。成形後、非溶媒誘起相分離法にてメタノール(貧溶媒)中に浸漬して、成型試料を多孔質膜化した。
さらにシート状試料から揮発性の溶媒を取り除くため、50~80℃で10時間以上の乾燥工程を行い、引き続き大気中にて280℃、3時間の不融化熱処理を行った。その後、真空置換後の窒素ガス雰囲気下の焼成炉にて1050℃、3時間の焼成を行い、長さ140mm、幅100mm、厚さ300μmの炭素多孔質体試料を作製した。
この炭素多孔質体試料から20mm×20mmの形状に切り出すことで、正極を得た。
酸素流路兼正極集電体には、カーボンペーパー(TGP-060、東レ株式会社製)を25mmx20mmに切り出して、正極リード(図示せず)を取り付けて用いた。
【0041】
負極の作製
負極集電体には、厚み12μmの銅箔を60mm×20mm形状に切り出して用い、また負極活物質層には、厚み100μmのリチウム箔を20mm×20mm形状に切り出して用い、負極活物質層である20mm角のリチウム箔の3辺が負極集電体の3辺に重なるように貼り合わせることで、負極を得た。
【0042】
非水電解液の調製
非水電解液は、3種類の電解質、すなわち0.5mol/LのLi(CF3SO2)2N(LiTFSI)、0.5mol/LのLiNO3及び0.2mol/LのLiBrを、テトラグライム(TEGDME)溶媒に溶解することで得た。
【0043】
非水電解質層
セパレータについては後述する。
固体電解質には、株式会社オハラ製固体電解質LICGCTM AG-01(NASICON型Li1+x+yAlx(Ti,Ge)2-xSiyP3-yO12)(22mmx22m、厚さ180μm)を好適に用いることができるが、本実施例では非水電解質層に固体電解質を用いない形態で実験を行った。
セパレータ
セパレータ108には、W-SCOPE社製のポリエチレン微多孔質膜(厚み20μm)を22mm角に切り出して用いた。
【0044】
リチウム空気電池(セル)の組立
リチウム空気電池の組立は露点温度-50℃以下の乾燥空気下で行った。
前記負極の負極活物質層の上に、前記セパレータを配置し、前記非水電解液15μL(3.75μL/cm2)をセパレータに充填させた。
【0045】
さらに、セパレータの上に正極層を正方形の形状の中心が重なるように重ね、非水電解液120μL(30μL/cm2)を正極層に充填させた。これにより、後述するように、液量係数E/Cは8.4mL/Ahとなる。次いで、酸素流路兼正極集電体を正極層の3辺と重なるように積層した。
【0046】
前記積層体を、ガラスプレート及びステンレス板により、スプリングを介在させて拘束し、工程用座金及び固定ねじで固定した。このとき、正極、負極及び非水電解質層(セパレータ)に13~14N/cm2の圧力が印加されるように固定ねじで調整し、リチウム空気電池を得た。
【0047】
[例1]
上記リチウム空気電池について、0.1Cにおける放電容量を測定し、0.1Cにおける正極層の単位面積当たりの放電容量C/Aに換算した上で、正極層の単位面積当たりの非水電解液量Eを用いて、例1のE/C(液量係数、ないし液量係数E/Cとも称することがある)を計算したところ、8.4mL/Ahであった。
東洋システム製充放電評価装置(TOSCAT-3100)を用いて、このリチウム空気電池の充放電サイクル特性の評価を行った。
充電条件は、印加電流を電極面積当たり0.2mA/cm2の電流密度(4cm2の電極を持つセルに対し0.8mA)とし、例1では、3.7Vのカットオフ電圧に達するまで充電した。
一方、放電条件は、印加電流を電極面積当たり0.4mA/cm2の電流密度(4cm2の電極を持つセルに対し1.6mA)とし、10時間又は2.0Vのカットオフ電圧に達するまでとし、放電容量が初期放電容量の80%以下になるまで行った。すなわち、N+1回目の放電で初期放電容量の80%を下回った場合、そのセルのサイクル数をN回と定義した。
【0048】
[例2]
例1と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数は8.4mL/Ah)について、3.8Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、例1と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った。
【0049】
[例3]
例1と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数は8.4mL/Ah)について、3.9Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、例1と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った
【0050】
[例4]
例1と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数は8.4mL/Ah)について、4.0Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、例1と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った
【0051】
[比較例1]
例1と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数は8.4mL/Ah)について、4.1Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、例1と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った
【0052】
[比較例2]
セル組立の工程において、セパレータの上に正極層を正方形の形状の中心が重なるように重ねた後、非水電解液を、120μL(30μL/cm2)でなく、180μL/(45μL/cm2)の量、正極層に充填させた以外は、例1と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数E/Cは12.2mL/Ah)を準備した。
このリチウム空気電池を測定対象とし、充電条件について、印加電流を電極面積当たり0.2mA/cm2の電流密度(4cm2の電極を持つセルに対し0.8mA)とし、3.9Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、例1と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った。
【0053】
[比較例3]
比較例2と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数は12.2mL/Ah)について、4.0Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、比較例2と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った
【0054】
[比較例4]
比較例2と同じ工程で作製したリチウム空気電池(液量係数は12.2mL/Ah)について、4.1Vのカットオフ電圧に達するまで充電した以外は、比較例2と同じ測定条件で充放電サイクル特性の評価を行った
【0055】
<結果>
以上の実験結果を表1に示す。表1では、例1~4及び比較例1~4の充電カットオフ電圧(V)、液量係数E/C(mL/Ah)及びサイクル数を整理して表示した。表1における最右列のサイクル数とは、各充放電サイクルの放電過程において、初期サイクルの放電容量の80%以上を保持した充放電回数のことを指し、各々の例について、セルを2つずつ作製し、測定したサイクル数の平均値とした。
【0056】
【表1】
表1から明らかなとおり、電解液量が比較的多い比較例2~4(液量係数12.2mL/Ah)では、サイクル数がいずれも0であり、二次電池として機能していないことがわかる。
一方で、比較例2~4とは異なり、電解液量が比較的少ない例1~4及び比較例1(液量係数8.4mL/Ah)では、サイクル数は11~17.5の範囲内であり、二次電池として機能しているものの、充電カットオフ電圧が4.0Vの場合(例4)と4.1Vの場合(比較例1)との間にサイクル数の差異が明確に観測された。
表1から、電解液量が比較的少量のリチウム空気電池(液量係数8.4mL/Ah)では、充電カットオフ電圧を4.0V以下にすることでサイクル数が明確に改善されることが示された。
本発明によれば、特定の液量の非水電解液を含んだリチウム空気電池において、充電カットオフ電圧を特定の条件として充電することにより、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池を利用し得る簡便な方法を提供することができる。。そのため、本発明は、今後需要が大幅に拡大すると見込まれるリチウム空気電池に好んで用いられることが期待できる。