(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127990
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】積層体、包装体、食品包装体、及び包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20220825BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220825BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026265
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 里美
(72)【発明者】
【氏名】中野 康宏
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB05
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3E086BB85
3E086CA01
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3E086CA27
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA32
3E086DA08
4F100AA37B
4F100AK01B
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
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4F100BA10A
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4F100GB15
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4F100JA11A
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4F100JN02B
4F100JN06
4F100JN21
4F100JN28
(57)【要約】
【課題】光沢感と奥行き感に優れる包装体を実現可能な積層体を提供する。
【解決手段】スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層と、着色剤を含む第2の層と、を含む積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層と、着色剤を含む第2の層と、を含む積層体。
【請求項2】
前記第1の層のポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上99モル%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1の層のポリプロピレンの130℃での結晶化速度が2.5min-1以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の層が造核剤を実質的に含まない、請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記第1の層が下記式を満たす、請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
H2/H1<1
(式中、H1は前記第1の層の内部ヘイズであり、H2は前記第1の層を前記ポリプロピレンの融点未満の条件で熱処理した後の内部ヘイズである。)
【請求項6】
前記第2の層が熱可塑性樹脂を含む、請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記第2の層の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる群から選択される1以上である、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記第2の層の熱可塑性樹脂がポリプロピレンである、請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
前記第2の層の全光線透過率が20%以下である、請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記第2の層における前記第1の層と反対側に、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第3の層を含む、請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
少なくとも一方の面の彩度C*が1.0以上である請求項1~10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
厚さが150μm以上2500μm以下である、請求項1~11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
包装体用である、請求項1~12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
飲食物包装体用である、請求項1~13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の積層体を用いて作成された包装体。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載の積層体を用いて作成された飲食物包装体。
【請求項17】
請求項1~14のいずれかに記載の積層体を、前記第1の層のポリプロピレンの融点以下の温度で加熱成型することを含む、包装体の製造方法。
【請求項18】
スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層と、着色剤を含む第2の層と、を含み
前記第1の層のポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上99モル%以下である、
包装体。
【請求項19】
前記第1の層側から測定した彩度C*が1.0以上である請求項18に記載の包装体。
【請求項20】
飲食物包装体である請求項18又は19に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、包装体、食品包装体、及び包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を包装する包装体として、意匠性向上等の目的で着色された包装体が用いられる場合がある。包装体に着色する方法として、包装体の材料となる樹脂シート又は積層体において、樹脂成分に顔料等の着色剤を添加する技術が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
近年、例えば贈答品用として包装体にも高級感が求められており、意匠性の高い包装体が要望されている。しかしながら、従来の包装体は光沢感や奥行き感が十分ではなかったことから、より高い意匠性を有する包装体の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-230121
【特許文献2】特開2006-219548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光沢感と奥行き感に優れる包装体を実現可能な積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、着色剤を含む層に、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む層を積層することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の積層体等が提供される。
1.スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層と、着色剤を含む第2の層と、を含む積層体。
2.前記第1の層のポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上99モル%以下である、1に記載の積層体。
3.前記第1の層のポリプロピレンの130℃での結晶化速度が2.5min-1以下である、1又は2に記載の積層体。
4.前記第1の層が造核剤を実質的に含まない、1~3のいずれかに記載の積層体。
5.前記第1の層が下記式を満たす、1~4のいずれかに記載の積層体。
H2/H1<1
(式中、H1は前記第1の層の内部ヘイズであり、H2は前記第1の層を前記ポリプロピレンの融点未満の条件で熱処理した後の内部ヘイズである。)
6.前記第2の層が熱可塑性樹脂を含む、1~5のいずれかに記載の積層体。
7.前記第2の層の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる群から選択される1以上である、6に記載の積層体。
8.前記第2の層の熱可塑性樹脂がポリプロピレンである、6又は7に記載の積層体。
9.前記第2の層の全光線透過率が20%以下である、1~8のいずれかに記載の積層体。
10.前記第2の層における前記第1の層と反対側に、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第3の層を含む、1~9のいずれかに記載の積層体。
11.少なくとも一方の面の彩度C*が1.0以上である1~10のいずれかに記載の積層体。
12.厚さが150μm以上2500μm以下である、1~11のいずれかに記載の積層体。
13.包装体用である、1~12のいずれかに記載の積層体。
14.飲食物包装体用である、1~13のいずれかに記載の積層体。
15.1~14のいずれかに記載の積層体を用いて作成された包装体。
16.1~14のいずれかに記載の積層体を用いて作成された飲食物包装体。
17.1~14のいずれかに記載の積層体を、前記第1の層のポリプロピレンの融点以下の温度で加熱成型することを含む、包装体の製造方法。
18.スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層と、着色剤を含む第2の層と、を含み
前記第1の層のポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上99モル%以下である、
包装体。
19.前記第1の層側から測定した彩度C*が1.0以上である18に記載の包装体。
20.飲食物包装体である18又は19に記載の包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光沢感と奥行き感に優れる包装体を実現可能な積層体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一態様に係る積層体の概略断面図である。
【
図2】本発明の積層体を製造するための製造装置の一例の概略構成図である。
【
図3】比較例1の積層体の製造に用いた製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る積層体、包装体、食品包装体、及び包装体の製造方法について説明する。本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。一の技術的事項に関して、「x以上」等の下限値が複数存在する場合、又は「y以下」等の上限値が複数存在する場合、当該上限値及び下限値から任意に選択して組み合わせることができるものとする。
【0009】
1.積層体
本発明の一態様に係る積層体は、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層(以下、「透明層」とも言う)と、着色剤を含む第2の層(以下、「着色層」とも言う)と、を含む。
スメチカ晶は準安定状態の中間相であり、一つ一つのドメインサイズが小さいことから、スメチカ晶を有するポリプロピレンは高い透明性を有する。このようなポリプロピレンを含む透明層を着色層上に積層することで、着色層が本来有する色合いに鮮やかさが加わり、また、高い光沢感を付与することができる。さらに、透明層の厚さと透明性に起因して、積層体全体に奥行き感(立体感)が生じ、より深みのある、意匠性の高い外観を実現することが可能となる。
以下、本発明の積層体の各構成について説明する。
【0010】
(1)第1の層(透明層)
第1の層は、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む。上述した通り、第1の層は高い透明性を有するため、第2の層(着色層)上に積層することで、全体として優れた意匠性を発揮することが可能となる。また、スメチカ晶は準安定状態であり、結晶化が進んだα晶と比較して低い熱量でシートが軟化することから、成形性に優れる。
【0011】
ポリプロピレンは、少なくともプロピレンを含む重合体である。具体的には、ホモポリプロピレン、プロピレンとオレフィンとの共重合体等が挙げられる。特に、耐熱性、硬度の理由からホモポリプロピレンが好ましい。
【0012】
ポリプロピレンの結晶構造としては、スメチカ晶の他に、α晶、β晶、γ晶、非晶部等他の結晶形を含んでもよい。
例えば、第1の層中のポリプロピレンの30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上又は90質量%以上がスメチカ晶であってもよい。
結晶構造の具体的な確認方法は、後述する実施例に記載の通りである。
【0013】
本発明の一態様において、ポリプロピレンは、好ましくはアイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上である。
アイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上であれば、十分な剛性を得られる。
ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率は、85モル%以上であることが好ましく、87モル%以上であることがさらに好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、また、99モル%以下であることが好ましく、98.5モル%以下であることがより好ましい。
アイソタクチックペンタッド分率が、80モル%以上かつ99モル%以下であれば、優れた剛性とともに十分な透明性を得られる。
また、アイソタクチックペンタッド分率は、80モル%以上99モル%以下であることが好ましく、85モル%以上99モル%以下であることがより好ましく、90モル%以上98.5モル%以下であることがより好ましい。
【0014】
アイソタクチックペンタッド分率とは、樹脂組成の分子鎖中のペンタッド単位(プロピレンモノマーが5個連続してアイソタクチック結合したもの)でのアイソタクチック分率である。この分率の測定法は、例えばマクロモレキュールズ(Macromolecules)第8巻(1975年)687頁に記載された方法を採用でき、13C-NMRにより測定できる。
アイソタクチックペンタッド分率の具体的な測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。
【0015】
プロピレンとオレフィンとの共重合体は、アイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上(好ましくは80~99モル%)であれば、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよく、これらの混合物でもよい。
オレフィンとしては、エチレン、ブチレン、シクロオレフィン等が挙げられる。
【0016】
本発明の一態様において、ポリプロピレンのメルトフローレート(以下、「MFR」と言う場合がある。)は、0.5g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましく、2g/10分以上であることがさらに好ましい。また、10g/10分以下であることが好ましく、8g/10分以下であることがより好ましく、6g/10分以下であることがさらに好ましい。この範囲内であれば、フィルム形状又はシート形状への成形性に優れる。ポリプロピレンのMFRは、JIS-K7210に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定する。
【0017】
本発明の一態様において、ポリプロピレンの130℃での結晶化速度は、成形性の観点から、2.5min-1以下であることが好ましく、2.0min-1以下であることがより好ましい。
結晶化速度が2.5min-1以下であると、意匠性のさらなる向上を図ることができる。
下限値は特に限定されないが、通常0.01min-1以上であり、0.05min-1以上である。
結晶化速度の具体的な測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0018】
本発明の一態様において、第1の層は造核剤を実質的に含まないか、含まないことが好ましい。
造核剤の含有量は、例えば、第1の層の1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。また、ポリプロピレンの量に対して、例えば、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。
造核剤としては、例えば、ソルビトール系結晶核剤等が挙げられ、市販品としてはゲルオールMD(新日本理化学株式会社)やリケマスターFC-1(理研ビタミン株式会社)等が挙げられる。
【0019】
一実施形態において、造核剤を添加しないでポリプロピレンの結晶化速度を2.5min-1以下とし、80℃/秒以上で冷却して上述したスメチカ晶を形成することにより、優れた透明性を得ることができる。
【0020】
アイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上99モル%以下、かつポリプロピレンの結晶化速度を2.5min-1以下で、透明性や光沢に優れた樹脂層とするには、通常、スメチカ晶を形成することが必要となる。
樹脂層の加熱を行うことによって、樹脂層のポリプロピレンはスメチカ晶由来の微細構造を維持したままα晶に転移するが、成形体(包装体)中のポリプロピレンが、アイソタクチックペンタッド分率が85モル%以上99モル%以下かつポリプロピレンの結晶化速度が2.5min-1以下であれば、スメチカ晶由来といえる。
【0021】
小角X線散乱解析法により散乱強度分布と長周期を算出することにより、樹脂層が80℃/秒以上で冷却して得られたものか、そうでないかを判断することができる。即ち、上記解析により樹脂層がスメチカ晶由来の微細構造を有しているか否かを判断することが可能である。測定は以下の条件で行う。
・X線発生装置はultraX 18HF(株式会社リガク製)を用い、散乱の検出にはイメージングプレートを使用する。
・光源波長:0.154nm
・電圧/電流:50kV/250mA
・照射時間:60分
・カメラ長:1.085m
・試料厚み:1.5~2.0mmになるようにシートを重ねる。製膜(MD)方向が揃うようにシートを重ねる。
尚、測定時間を短縮するため、1.5~2.0mmになるようにシートを重ねているが、測定時間を長くすれば、シートを重ねずに1枚でも測定可能である。
【0022】
本発明の一態様において、ポリプロピレンは、好ましくは示差走査熱量(DSC)測定で得られる曲線(DSC曲線)において、最大吸熱ピークの低温側に1J/g以上、好ましくは1.5J/g以上の発熱ピーク(「低温側発熱ピーク」ともいう。)を有する。上限値は特に限定されないが、通常10J/g以下である。
上記の具体的な測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。
【0023】
第1の層において、上述したポリプロピレンの他に、他の樹脂成分又は添加材を加えてもよい。他の樹脂成分としては、上述したポリプロピレン以外のポリプロピレン、ポリエチレン、石油樹脂等が挙げられる。
【0024】
ポリエチレンを含める場合の含有量に特に制限はないが、例えば第1の層の0.5質量%以上とすることができ、また、例えば、5.0質量%以下とすることができる。このような量でポリエチレンを添加することで、第1の層の透明性をさらに向上できることが期待される。
ポリエチレンとしては特に制限はないが、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は透明性をさらに高める効果が期待される。この場合、ポリエチレンの含有量は、0.7質量%以上とすることが好ましく、また、2.0質量%以下とすることが好ましい。また、バイオポリエチレンとすることで環境対応も可能である。
【0025】
一方、第1の層において、ポリエチレンを実質的に含めないか、又は全く含めない態様としてもよい。本態様におけるポリエチレンの含有量は、例えば、第1の層の1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。また、第1の層のポリプロピレンの量に対して、例えば、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。
【0026】
石油樹脂を含める場合の含有量に特に制限はないが、例えば第1の層の1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。また、通常、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下である。このような量で石油樹脂を添加することで、剛性及び透明性を向上できることが期待される。
石油樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン留分を熱重合したジシクロペンタジエン系樹脂;炭素数9の芳香族オレフィン類混合物をカチオン重合した芳香族系(C9系)石油樹脂;炭素数5の鎖状オレフィン類混合物をカチオン重合した脂肪族系(C5系)石油樹脂;スチレン系樹脂;アルキルフェノール樹脂;キシレン樹脂等が挙げられる。
【0027】
一方、第1の層において、石油樹脂を実質的に含めないか、又は全く含めない態様としてもよい。本態様における石油樹脂の含有量は、例えば、第1の層の1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。また、第1の層のポリプロピレンの量に対して、例えば、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。
【0028】
第1の層において、無機充填剤等の無機化合物を実質的に含まないか、含まないことが好ましい。このような成分を含めると透明性を阻害する恐れがある。
無機充填剤等の無機化合物を含む場合であっても、少量であることが好ましく、例えば、第1の層の1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。また、第1の層のポリプロピレンの量に対して、例えば、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下である。
【0029】
本発明の一態様において、第1の層の、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.8質量%以上、99.9質量%以上、99.99質量%以上又は100質量%が、スメチカ晶を有するポリプロピレン;スメチカ晶を有するポリプロピレン及びポリエチレン;又はスメチカ晶を有するポリプロピレン及び石油樹脂である。
【0030】
本発明の一態様において、第1の層の内部ヘイズ(H1)は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下である。また、通常、0.1%以上である。
また、第1の層をポリプロピレンの融点未満の条件で熱処理した後の内部ヘイズ(H2)は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。また、通常、0.1%以上である。
内部ヘイズは実施例に記載の方法で測定する。
なお、本発明において「透明」とは、内部ヘイズが20%以下であることを意味する。
【0031】
本発明の一態様において、H1とH2は、好ましくは下記式を満たす。
H2/H1<1
(H2/H1)は、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.98以下であり、さらに好ましくは0.86以下である。また、通常、0.1以上である。H1とH2が上記式を満たすことは、第1の層の内部ヘイズ(透明性)が熱処理により向上することを意味する。これにより、もとより高い第1の層の透明性は、成形品ではさらに高いものとなる。
【0032】
第1の層の厚さは、通常、1μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、例えば、10μm以上、30μm以上、又は50μm以上としてもよい。また、通常、500μm以下であり、好ましくは300μm以下である。このような厚さであれば、光沢感と奥行き感が十分に高い積層体(例えば包装体)とすることができる。
【0033】
(2)第2の層(着色層)
第2の層は着色剤を含む層であり、通常、熱可塑性樹脂と着色剤とを含む。
【0034】
着色剤としては、公知の染料、無機顔料、及び有機顔料等を使用することができる。予め熱可塑性樹脂に配合する場合があることを考慮すると、無機顔料、有機顔料等の顔料を採用するのが好ましい。
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、アゾイック染料、ナフトール染料、トリフェニルメタン染料、ポリメチン染料、金属錯塩染料、含金属染料、反応染料、直接染料、ビスアゾ染料、トリスアゾ染料、硫化染料、硫化建染染料、建染染料、インジゴイド染料、アイス染料、媒染染料、酸性媒染染料、蛍光性増白剤、複合染料、有機溶剤溶解染料、塩基性染料、顔料樹脂捺染料(ピグメントレジンカラー)等が挙げられる。
【0035】
無機顔料としては、カーボンブラック、雲母状酸化鉄、鉛白、鉛丹、銀朱、群青、紺青、酸化コバルト、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、ストロンチウムクロメート、チタニウム・イエロー、チタンブラック、ジンククロメート、鉄黒、モリブデン赤、モリブデンホワイト、リサージ、リトポン、エメラルドグリーン、ギネー緑、コバルト青等が挙げられる。
【0036】
有機顔料としては、ナフトール溶性アゾ顔料、ナフトール不溶性アゾ顔料、オキシナフトエ酸系アゾ顔料、ナフトールAS系溶性アゾ顔料、ナフトールAS系不溶性アゾ顔料、アセトアセトアニリド系溶性アゾ顔料、アセトアセトアニリド系不溶性アゾ顔料、ピラゾロン系アゾ顔料、ナフトールAS系不縮合アゾ顔料、アセトアセトアニリド系縮合溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ、イソインドリノン、キナクリドン、ジオキサジンバイオレッド、ペリノン、ペリレン、アズレン等が挙げられる。
【0037】
第2の層に着色を施す方法としては、特に制限されず、例えば、着色剤を予め原料樹脂に配合し、溶融混練した後、シート状に成形する方法を採用できる。また、予め着色剤を原料樹脂や他の樹脂に配合し、溶融混練した後に押し出してマスターバッチ化したものを、原料樹脂に配合してシート状に成形する方法を採用することもできる。
【0038】
このように、予め原料樹脂に着色剤を添加して第2の層を製造することで、印刷で着色層を製造する場合のように、シート表面に特殊処理を施す必要がなくなり、製造工程を簡略化でき、コスト低減につながる。
【0039】
着色の色は特に限定されないが、例えば、黒色、白色、赤色、黄色、緑色、青色等である。本発明の一態様による積層体によれば、どのような色であっても、その色に応じた意匠性を高めることができる。
【0040】
第2の層における着色剤の含有量は、通常、0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上である。また、通常、10質量%以下であり、好ましくは7質量%以下である。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられ、好ましくはポリプロピレンである。
第2の層の樹脂成分としてポリプロピレンを用いる場合、第1の層に用いるポリプロピレンと同一でもよいし、異なってもよい。同一とは、上述したポリプロピレンの各種物性が同一であることを意味する。
【0042】
第2の層における熱可塑性樹脂の含有量は、通常、90質量%以上であり、好ましくは93質量%以上である。また、通常、99.9質量%以下であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98.5質量%以下である。
【0043】
本発明の一態様において、第2の層の全光線透過率は20%以下であり、例えば、15%以下、10%以下、5%以下、又は3%以下であってもよい。また、下限値は特に限定はないが、通常、0%である。
全光線透過率は実施例に記載の方法により測定する。
【0044】
第2の層の厚さは、通常、20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。また、通常、1000μm以下であり、好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。
【0045】
(3)第3の層(透明層)
本発明の一態様において、積層体は、第2の層における第1の層と反対側に、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第3の層を含む。これにより、積層体の表裏両面に透明層が設けられることで、例えば包装体とした場合には、包装体の外側のみならず内側においても高い意匠性が付与されたものとすることができる。
【0046】
第3の層を設けた積層体の概略断面図を
図1に示す。積層体Aは、第3の層3、第2の層2、第1の層1がこの順に積層された構造であり、着色層2の両面それぞれに透明層が設けられたものである。
なお、
図1における縦横比や膜厚比は必ずしも正確ではない。
【0047】
第3の層に用いるポリプロピレン及び組成は、第1の層で説明した通りである。第3の層に用いるポリプロピレンと第1の層で用いるポリプロピレンは、同一でもよいし、異なってもよい。第3の層の組成と第1の層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。
第3の層の内部ヘイズ及び膜厚は、第1の層で説明した通りである、第3の層の内部ヘイズ及び膜厚は、それぞれ、第1の層と同一でもよいし、異なってもよい。
【0048】
第3の層と第1の層の構成を異なるものとする場合、例えば、第1の層(包装体の内側)のみに接着性を付与する態様が挙げられ、例えばトップシールする容器(トレー)として好適である。また、第3の層(包装体の外側)のみに石油樹脂を添加する態様が挙げられ、積層体の剛性と透明層の向上が期待される。
【0049】
本発明の一態様に係る積層体は、上述した第1~第3の層に加え、さらに他の層を積層してもよい。他の層としては、例えば、無機フィラー含有層、高透明層、バリア層、防曇層、接着層等が挙げられる。
【0050】
無機フィラー含有層に用いる無機フィラーとしては、例えば、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、鉄及びシリコンからなる群から選択される単体金属、当該群から選択される2種以上の合金もしくは混合物、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、又はマイカ等が挙げられる。なお、シリコンは半金属であり、前記金属種に含まれるものとする。
無機フィラー含有層に用いる樹脂成分としては、上記第1の層の樹脂成分と同様である。無機フィラー含有層に用いるポリプロピレンと第1の層で用いるポリプロピレンは、同一でもよいし、異なってもよい。
【0051】
無機フィラー含有層の厚さは、通常、20μm以上であり、好ましくは50μm以上である。また、通常、900μm以下であり、好ましくは500μm以下である。
本発明の一態様に係る積層体において、無機フィラー含有層を複数設けてもよい。無機フィラー含有層を複数含む場合、当該複数の無機フィラー含有層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、当該複数の無機フィラー含有層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0052】
高透明層は、積層体の透明性をより高めるために用いる層である。
高透明層としては、例えば、ポリプロピレン(好ましくはホモポリプロピレン)に、MFRの高いポリプロピレン(MFRは、例えば、2g/10分以上であり、好ましくは4g/10分であり、より好ましくは6g/10分以上であり、さらに好ましくは8g/10分以上である)、及び造核剤(例えば、ソルビトール系結晶核剤等)を添加した層が挙げられる。また、高透明層にはポリエチレンを含めてもよく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は透明性をさらに高める効果が期待される。また、バイオポリエチレンとすることで環境対応も可能である。
【0053】
また、高透明層は、好ましくは隣接する下層(例えば透明層)よりMFRが大きく、かつ隣接する下層(例えば透明層)より緩和時間が短い結晶性樹脂(例えばポリプロピレン)により形成される。具体的には、高透明層は、隣接する下層(例えば透明層)よりMFRが1.5倍以上大きいことが好ましい。MFRが1.5倍未満では、透明性の改善効果が小さい場合がある。また、高透明層の緩和時間は隣接する下層(例えば透明層)の80%以下であることが好ましい。緩和時間が80%より大きいと透明性の改善効果が小さい場合がある。
緩和時間は下記に従って求める。すなわち、樹脂ペレットについて測定した複素弾性率G*(iω)を下記式(4)に示すように、応力σ*と歪γ*によりσ*/γ*で定義し、緩和時間τを下記式(5)により求める。
G*(iω)=σ*/γ*=G’(ω)+IG''(ω)・・・(4)
τ(ω)=G’(ω)/(ωG''(ω))・・・(5)
(式中、G’は貯蔵弾性率を示し、G''は損失弾性率を示す。)
【0054】
高透明層の厚さは、通常、1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。また、通常、300μm以下であり、好ましくは200μm以下である。
本発明の一態様に係る積層体において、高透明層を複数設けてもよい。高透明層を複数含む場合、当該複数の高透明層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、当該複数の高透明層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0055】
バリア層(バリアフィルム)は、酸素バリア性を有する層であり、包装体として用いた場合に内容物の酸化劣化を抑制することができる。
バリア層に用いられる材料としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、バリア層はコーティング法により形成することも可能であり、この場合に使用できる材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミ、及び窒化ケイ素等の無機系材料、ポリビニルアルコール(PVA)等の有機系材料、並びにシリカ/PVA等の有機無機ハイブリッド材料等からなる群から選択されるコート材料等が挙げられる。
【0056】
また、バリア層(バリアフィルム)は、無機粒子及び樹脂を含有する組成物からなる構成としてもよい。
無機粒子は、無機層状化合物であることが好ましく、例えば、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物等が挙げられる。粘土系鉱物としては、カオリナイト等のカオリナイト-蛇紋石族の粘土鉱物、タルク等のタルク-パイロフィライト族の粘土鉱物、モンモリロナイト等のスメクタイト族の粘土鉱物、バーミキュライト族の粘土鉱物、テトラシリリックマイカ等のマイカ族の粘土鉱物、ザンソフィライト等の脆雲母族の粘土鉱物、クリノクロア等の緑泥石族の粘土鉱物等が挙げられる。
上記樹脂としては、例えばPVA、EVOH、PVDC、PAN、多糖類、ポリアクリル酸及びそのエステル類、ポリメタアクリル酸及びそのエステル類、アミド樹脂、イミド樹脂、エステル樹脂、一分子中に2種類以上の官能基を有する樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
本発明の一態様に係る積層体において、バリア層を複数設けてもよい。バリア層を複数含む場合、当該複数のバリア層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、当該複数のバリア層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0057】
接着層は、積層体の各層の密着性を高めるために必要に応じて用いる層であり、例えば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、又はエチレン酢酸ビニル(EVA)などが使用可能であり、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0058】
接着層の厚さは、通常、1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。また、通常、20μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
本発明の一態様に係る積層体において、接着層を複数設けてもよい。接着層を複数含む場合、当該複数の接着層の組成は同一でもよいし、異なってもよい。また、当該複数の接着層の厚さは同一でもよいし、異なってもよい。
【0059】
本発明の一態様に係る積層体の積層構造としては、例えば下記に示す構造が挙げられる。なお、下記において、「透明層」は上記第1の層又は第3の層を示し、「着色層」は上記第2の層を示す。
(1)透明層/着色層
(2)透明層/無機フィラー含有層/着色層
(3)透明層/着色層/透明層
(4)高透明層/透明層/着色層
(5)高透明層/透明層/着色層/透明層/高透明層
(6)透明層/着色層/バリア層
(7)透明層/着色層/接着層/バリア層
(8)透明層/着色層/バリア層/着色層/透明層
(9)透明層/着色層/接着層/バリア層/接着層/着色層/透明層
(「/」は積層界面を示す。)
【0060】
(4)積層体のその他の物性等
本発明の一態様に係る積層体の厚さは、通常、150μm以上であり、好ましくは200μm以上である。また、通常、2500μm以下であり、好ましくは1200μm以下である。
【0061】
本発明の一態様に係る積層体は、好ましくは光沢度が85%以上であり、より好ましくは87%以上である。
光沢度は実施例に記載の方法で測定する。
【0062】
本発明の一態様に係る積層体は、好ましくは少なくとも一方の面の彩度C*が1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。
彩度は実施例に記載の方法で測定する。
【0063】
(5)積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は特に制限されないが、例えば押出法(共押出法)等が挙げられる。押出法では上述した本発明の積層体の溶融物(以下、溶融樹脂と称する。)の冷却を含み、当該冷却は、好ましくは80℃/秒以上の冷却速度で行い、樹脂シートの内部温度が結晶化温度以下となるまで行う。これにより、樹脂シートに含まれるポリプロピレンの結晶構造を、上述のスメチカ晶とすることができる。冷却速度は、90℃/秒以上がより好ましく、150℃/秒以上がさらに好ましい。
具体的な製造方法は、実施例において詳述する。
【0064】
2.包装体
本発明の一態様に係る積層体は、包装体として用いることができ、好ましくは食品包装体として使用できる。本発明の一態様に係る積層体を用いることにより、高い光沢感と奥行き感を実現できるため、見栄えの良い高級感のある包装体とすることができる。
当該包装体における積層体を構成する各成分の条件や各層の厚さは、上記で説明したものと同じである。
【0065】
包装体の形状は特に限定されず、シート状であってもよいし、立体形状の容器であってもよい。容器の形状としては、円形、角形、楕円形の他、各種形状とすることができる。
【0066】
本発明の一態様に係る包装体は、以下のように表現することもできる。すなわち、スメチカ晶を有するポリプロピレンを含む第1の層と、着色剤を含む第2の層と、を含み前記第1の層のポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率が80モル%以上99モル%以下である、包装体。
【0067】
本発明の一態様に係る包装体の製造方法は特に限定されないが、本発明の一態様に係る積層体を、第1の層のポリプロピレン(又は第1の層のポリプロピレン及び第3の層のポリプロピレン)の融点以下の温度で加熱成型することが好ましい。このようにすることで、微細な結晶構造が保たれ、高い透明性を維持することができる。
【0068】
本発明の一態様に係る包装体は、好ましくは少なくとも一方の面の彩度C*が1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。
彩度は実施例に記載の方法で測定する。
【0069】
被包装品としては、特に限定されないが、例えば、食品、飲料等の飲食物、医薬品、医療品、化粧品、工業部材、電子部品等が挙げられる。食品や飲料等の飲食物に用いる場合、本発明の一態様に係る包装体の優れた意匠性により高い付加価値を与えられることから、贈答用等として好適である。
【実施例0070】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されない。
【0071】
実施例1
(1)積層体の製造
積層体の製造にあたり、下記材料を準備した。
・第1の層のポリプロピレン:ホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製「F-300SP」、融点:160℃、アイソタクチックペンタッド分率:[mmmm]=92%、MFR:3g/10分、以下、「PP-1」とも言う。)
・第2の層の熱可塑性樹脂:PP-1
・第2の層の着色剤:合成樹脂用マスターバッチ(東京インキ社製:カーボンブラック成分含有率35~45%ポリオレフィン系マスターバッチ)
・第3の層のポリプロピレン:PP-1
【0072】
図2に示す装置を用いて、下記方法により、第1の層(厚さ50μm)/第2の層(厚さ700μm)/第3の層(厚さ50μm)の三層からなる積層体を共押出し法により製造した。
【0073】
(積層体の製造方法(以下、「製法1」とも言う。))
上記三層用の溶融樹脂を、シート状物1aとして押出機のTダイ11より共押出し、シート状物1aを第1冷却ロール21上で金属製エンドレスベルト25と第4冷却ロール22との間に挟み込んだ。この状態で、シート状物1aを、第1冷却ロール21の中心角度θ1に対応する円弧部分で、第1冷却ロール21および第4冷却ロール22で圧接するとともに急冷した。
続いて、第4冷却ロール22の略下半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト25と第4冷却ロール22とにシート状物1aが挟まれた状態で面状圧接するとともに、冷却水吹き付けノズル26による金属製エンドレスベルト25の裏面側への冷却水の吹き付けにより、さらにシート状物1aを急冷した。なお、吹き付けられた冷却水は、水槽27に回収されるとともに、回収された水は排水溝27aにより排出した。
第4冷却ロール22で面状圧接および冷却した後、金属製エンドレスベルト25に密着したシート状物1aを、金属製エンドレスベルト25の回動とともに第2冷却ロール23上に移動した。ここで、剥離ロール29によりガイドされて第2冷却ロール23側に押圧されたシート状物1aを、前述同様、第2冷却ロール23の略上半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト25により面状圧接し、再び冷却した。なお、金属製エンドレスベルト25の裏面に付着した水は、第4冷却ロール22から第2冷却ロール23への移動途中に設けられている吸水ロール28により除去した。
第2冷却ロール23上で冷却されたシート状物1aを、その後剥離ロール29により金属製エンドレスベルト25から剥離した。
なお、第1冷却ロール21の表面には、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)製の弾性材21aが被覆されている。また、第2冷却ロール23の表面にも、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)製の弾性材(図示省略)が被覆されている。
また、第3冷却ロール24等に内蔵された水冷式等の冷却手段(図示省略)により、金属製エンドレスベルト25の温度調節が可能となっている。
【0074】
積層体の製造条件は以下の通りである。
・第2の層の配合:PP-1(98質量%)+着色剤(2質量%)
・第1の層の押出機の直径:65mm
・第2の層の押出機の直径:75mm
・第3の層の押出機の直径:65mm
・Tダイ11の幅(ダイスの端のサイズ):900mm
・積層体の引き取り速度:1m/分
・第4冷却ロール22及び金属製エンドレスベルト25の表面温度:20℃
・冷却速度:10,800℃/分(180℃/秒)
【0075】
(2)積層体の評価(熱処理前)
得られた積層体について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(a1)アイソタクチックペンタッド分率
PP-1について13C-NMRスペクトルを評価することでアイソタクチックペンタッド分率を測定した。具体的には、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案されたピークの帰属に従い、下記の装置、条件及び計算式を用いて行った。
(装置・条件)
装置:13C-NMR装置(日本電子株式会社製「JNM-EX400」型)
方法:プロトン完全デカップリング法(濃度:220mg/ml)
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
(計算式)
アイソタクチックペンタッド分率[mmmm]=m/S×100
ラセミペンタッド分率[rrrr]=γ/S×100
ラセミメソラセミメソペンタッド分率[rmrm]=Pββ+Pαβ+Pαγ
S:全プロピレン単位の側鎖メチル炭素原子のシグナル強度
Pββ:19.8~22.5ppm
Pαβ:18.0~17.5ppm
Pαγ:17.5~17.1ppm
γ:ラセミペンタッド連鎖:20.7~20.3ppm
m:メソペンタッド連鎖:21.7~22.5ppm
【0077】
(a2)結晶化速度
示差走査熱量測定器(DSC)(パーキンエルマー社製「Diamond DSC」)を用いて、第1の層のPP-1の結晶化速度を測定した。具体的には、ポリプロピレンを10℃/分にて50℃から230℃に昇温し、230℃にて5分間保持し、80℃/分で230℃から130℃に冷却し、その後130℃に保持して結晶化を行った。130℃になった時点から熱量変化について測定を開始し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、以下の手順(i)~(iv)により結晶化速度を求めた。なお、第3の層のPP-1も同一の結晶化速度となる。
(i)測定開始から最大ピークトップまでの時間の10倍の時点から、20倍の時点までの熱量変化を直線で近似したものをベースラインとした。
(ii)ピークの変曲点における傾きを有する接線とベースラインとの交点を求め、結晶化開始及び終了時間を求めた。
(iii)得られた結晶化開始時間から、ピークトップまでの時間を結晶化時間として測定した。
(iv)得られた結晶化時間の逆数から、結晶化速度を求めた。
【0078】
(a3)融点
PP-1の融点は、以下のようにして測定した。すなわち、示差走査熱量測定器(DSC)(株式会社パーキンエルマージャパン製「Diamond DSC」)を用いて、ポリプロピレンを10℃/分にて50℃から200℃に昇温し、220℃にて5分間保持し、10℃/分にて220℃から50℃に冷却した。この時得られた吸熱ピークの最大値を示す温度を、ポリプロピレンの融点とした。
【0079】
(a4)結晶構造
PP-1の結晶構造を、X線発生装置(株式会社リガク製「model ultra X 18HB」)を用いて、広角X線の散乱パターンを下記測定条件で測定し、同定した。その結果、積層体において、ピーク分離してもスメチカ晶型のピークが見られたため、積層体中にスメチカ晶が存在することが確認できた。
(測定条件)
・光源波長:300mAのCuKα線(波長=1.54Å)の単色光
・線源出力 電圧/電流:50kV/250mA
・照射時間:60分
・カメラ長:1.085m
・試料厚み:1.5~2.0mmになるようにシートを重ねる。製膜(MD)方向が揃うようにシートを重ねる。
なお、測定時間を短縮するため、1.5~2.0mmになるようにシートを重ねているが、測定時間を長くすれば、シートを重ねずに1枚でも測定可能である。
【0080】
(b1)第1の層の内部ヘイズ(H1)
「(1)積層体の製造」と同じ方法で第1の層のみからなる樹脂シートを製造した。得られた樹脂シートについて、JISK7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製「NDH2000」)を用いて、内部ヘイズ(H1)を測定した。
【0081】
(b2)第2の層の全光線透過率
「(1)積層体の製造」と同じ方法で第2の層のみからなる樹脂シートを製造した。得られた樹脂シートについて、JISK7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製「NDH2000」)を用いて、全光線透過率を測定した。
【0082】
(b3)光沢度
JIS Z 8741の60度鏡面光沢の測定方法に準拠し、自動式測色色差計(スガ試験機株式会社製、AUD-CH-2型-45,60)を使用し、光を第1の層側から入射角60度で照射し、同じく60度で反射光を受光したときの反射光束ψsを測定し、屈折率1.567のガラス表面からの反射光束ψ0sとの比により、下記式(1)により光沢度を求めた。
光沢度(Gs)=(ψs/ψ0s)*100・・・(1)
【0083】
(b4)分光測色評価
下記条件により、L*a*b*表色系及びL*C*h表色系それぞれについて第1の層側から測色評価を行い、明度(L*)と彩度(C*)を評価した。
・分光測色計:CM-2600d(コニカミノルタジャパン株式会社製)
・UV:100%(UVを100%含んだ光源で測定)
・光源:D65(標準イルミナント D65昼光、色温度6504K)
・観察視野:10°
・SCE(正反射光除去)方式
【0084】
(3)積層体の評価(熱処理後)
得られた積層体について160℃オーブンで1分間の条件で熱処理を行った。当該処理後の積層体について、「(2)積層体の評価(熱処理前)」の(b1)(熱処理後の第1の層の内部ヘイズをH2とする)と(b4)と同じ評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
また、当該処理後の積層体の意匠性について以下の評価を行った。
(b5)意匠性
得られた積層体について、真空圧空成形法により、融点以下の固相成形領域の条件で熱成形を行い、成形容器とした。得られた成形容器を目視にて確認し、奥行き感(立体感)、色の深み及び鮮やかさを総合的に考慮して意匠性を評価した。評価基準は以下の通りである。
A:極めて高い奥行き感(立体感)が生じており、それに起因して、より鮮やかで深みのある優れた意匠性を発現している。
B:奥行き感(立体感)が生じており、色の深みと鮮やかさも良好である。
C:奥行き感(立体感)が乏しく、色の深みと鮮やかさも不十分である。
D:奥行き感(立体感)は認められず、色の深みと鮮やかさもほとんど感じられない。
【0086】
実施例2,3
各層の厚さを表1に記載の通り変更した以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表1及び2に示す。なお、表中、「-」は評価を行っていないことを示す。
【0087】
比較例1
積層体の製造方法を下記方法とした以外は、実施例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表1及び2に示す。
(樹脂シートの製造方法(以下、「製法2」とも言う。))
図3に示す製造装置を用いて、下記方法により積層体を製造した。具体的には、当該製造装置において、押出機のTダイ72より共押出された溶融樹脂を、エアナイフ74により冷却ロール76に密着し、冷却ロール76及び78により冷却して積層体71を製造した。
製造条件は以下の通りである。
・第1の層の押出機の直径:30mm
・第2の層の押出機の直径:40mm
・第3の層の押出機の直径:30mm
・Tダイ72の幅:350mm
・積層体71の引取速度:1m/分
・冷却ロール76及び78の表面温度:95℃
・冷却速度:2,300℃/分(38℃/秒)
【0088】
比較例2,3
各層の厚さを表1に記載の通り変更した以外は、比較例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表1及び2に示す。
【0089】
比較例4~6
第1の層と第3の層の組成を以下のように変更し、各層の厚さを表1に記載の通り変更した以外は、比較例1と同じ方法で積層体を製造し、評価した。結果を表1及び2に示す。
・第1の層:PP-1(98.5質量%)と造核剤(1.5質量%、ソルビトール系造核剤、理研ビタミン社製「FC-1」、以下「造核剤-1」とも言う)
・第3の層:PP-1(98.5質量%)と造核剤-1(1.5質量%)
【0090】
【0091】