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  • 特開-二次電池、及び封止部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128007
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】二次電池、及び封止部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/60 20210101AFI20220825BHJP
   H01M 50/147 20210101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M2/36 101D
H01M2/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026287
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加奈
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂樹
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
【Fターム(参考)】
5H011AA17
5H011CC06
5H011DD13
5H011KK04
5H023AA03
5H023AS01
5H023BB10
5H023CC11
5H023CC14
5H023CC19
5H023CC27
5H023CC30
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で密閉性に優れた二次電池、及び封止部材を提供すること。
【解決手段】二次電池1は、電極体を収納するケース本体と、電解液Eを注入する注入口11が設けられ、ケース本体の開口部を密封する蓋10と、注入口11に嵌め込まれ、蓋10と固相接合されて注入口11を密封する封止部材20と、を有し、蓋10及び封止部材20は同種又は異種の金属材料で形成され、互いに固相接合された蓋10と封止部材20との間の少なくとも一部には、蓋10及び封止部材20を形成する金属材料の接合温度以下の融点を有する金属材料であるフィル材33aが介在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体を収納するケース本体と、
電解液を注入する注入口が設けられ、ケース本体の開口部を密封する蓋と、
前記注入口に嵌め込まれ、前記蓋と固相接合されて前記注入口を密封する封止部材と、
を有し、
前記蓋及び前記封止部材は同種又は異種の金属材料で形成され、互いに固相接合された前記蓋と前記封止部材との間の少なくとも一部には、前記蓋及び前記封止部材を形成する金属材料の接合温度以下の融点を有する金属材料であるフィル材が介在する二次電池。
【請求項2】
前記封止部材は、超音波接合によって前記蓋と固相接合される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記封止部材の面のうち少なくとも前記蓋に対向する側の面に前記フィル材で形成されるメッキ層を有する、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記フィル材は、スズを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記蓋及び前記封止部材は、アルミニウム系金属材料で形成される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
二次電池のケース本体を密封する蓋に設けられる注入口に嵌め込まれる封止部材であって、
前記蓋と同種又は異種の金属材料で形成される本体部材と、
前記本体部材の面のうち少なくとも前記蓋に対向する側の面に形成されるメッキ層と、
を有し、
前記メッキ層は、前記本体部材を形成する金属材料が前記蓋と固相接合される接合温度以下の融点を有する金属材料であるフィル材で形成される封止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池、及び封止部材に関し、特に電解液を注入する注入口が設けられる二次電池、及び二次電池の注入口を塞ぐ封止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返し充放電可能な蓄電デバイスとして、ニッケル水素電池及びリチウムイオン二次電池等に代表される二次電池がある。二次電池は、電子機器のポータブル電源や車両駆動用電源として広く用いられている。
【0003】
二次電池は、電池ケースの内部に発電要素としての電極体及び電解液を収納している。このような二次電池では、電解液の液漏れ等を防止するために、電池ケースの内部は気密状態で密封される。このような密閉型の二次電池の一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1には、ケースと蓋体とを備える電槽の内側の空間に極板群を収容してなる二次電池であって、蓋体は、電槽の外側から内側に貫通し、電解液が注入される注入口と、注入口の内側に設けられたフィルタ部とを備える。フィルタ部は、電槽の外側から内側に貫通する複数の細孔部を有し、細孔部は、電槽の外側になる第1開口の内径が、電槽の内側になる第2開口の内径よりも大きい二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-220353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池では、注入口を介して電解液が注入される際に、注入口に対して飛散した電解液が付着することを防ぐために、注入口を複雑な構造に加工する必要がある。このように、注入口が複雑な構造であると、電解液の注入に時間を要する場合や、複雑な構造を形成する加工作業の負担が生じる場合があり、生産性が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、簡素な構造で密閉性に優れた二次電池、及び封止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態にかかる二次電池は、電極体を収納するケース本体と、電解液を注入する注入口が設けられ、ケース本体の開口部を密封する蓋と、注入口に嵌め込まれ、蓋と固相接合されて注入口を密封する封止部材と、を有し、蓋及び封止部材は同種又は異種の金属材料で形成され、互いに固相接合された蓋と封止部材との間の少なくとも一部には、蓋及び封止部材を形成する金属材料の接合温度以下の融点を有する金属材料であるフィル材が介在する。
【0009】
また、一実施の形態にかかる封止部材は、二次電池のケース本体を密封する蓋に設けられる注入口に嵌め込まれる封止部材であって、蓋と同種又は異種の金属材料で形成される本体部材と、本体部材の面のうち少なくとも蓋に対向する側の面に形成されるメッキ層と、を有し、メッキ層は、前記本体部材を形成する金属材料が前記蓋と固相接合される接合温度以下の融点を有する金属材料であるフィル材で形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、簡素な構造で密閉性に優れた二次電池、及び封止部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す断面図、及びその一部の拡大図である。
図2】実施の形態1にかかる二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す平面図である。
図3】実施の形態1にかかる二次電池が備える封止部材の断面図である。
図4】比較例の二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す断面図、及びその一部の拡大図である。
図5】比較例の二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。図中に示したものは、全体の一部であり、図示しないその他の構成が実際には多く含まれる。なお、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1及び図2を参照して、本実施形態にかかる二次電池1について説明する。図1は、実施の形態1にかかる二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す断面図、及びその一部の拡大図である。図2は、実施の形態1にかかる二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す平面図である。なお、図1の上側には、注入口11に封止部材20が嵌め込まれた蓋10の垂直断面図を示しており、破線で囲む領域を拡大した拡大図を下側に示している。図2は、注入口11に封止部材20が嵌め込まれた蓋10の接合部30aを含んだ水平断面図を示しており、電池ケースの外部側から見た図である。また、図1及び図2において、黒矢印は電解液Eを表している。
【0014】
まず、本実施形態にかかる二次電池1の概要を説明する。二次電池1は、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスを指し、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)を包含する。本実施形態では、二次電池1の一具体例として、リチウムイオン二次電池を挙げて説明する。リチウムイオン二次電池は、パソコンや携帯端末等の電子機器のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源等として用いることができる。
【0015】
二次電池1は、電池ケースの内部に発電要素としての電極体及び電解液Eを収容した密閉型電池である。電極体は、正極、負極、及びセパレータ等の材料で構成される。電極体を構成する各材料は、特に制限されるものではなく、リチウムイオン二次電池に用いられ得る材料を適宜組み合わせて構成することができる。リチウムイオン二次電池では、電気化学反応に際し、正極と負極との間で電荷担体であるリチウムイオンが電解液E中を伝導することで、充放電が実現される。
【0016】
電解液Eは、溶媒に電解質を溶解して用いられる。電解質は、電荷担体としての機能を有するものであれば、特に制限されず、電解液の機能を向上するための添加剤を含んでも良い。また、電解液Eに含まれる溶媒は、当該電解質を溶解し得るものであれば水系及び非水系の種々の溶媒を適宜選択して用いることができる。
【0017】
電解質としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、Li(CFSON、LiCFSO等のリチウム塩を1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の各種の非水溶媒が挙げられる。これらもまた、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
図1及び図2に示すように、電池ケースは、ケース本体と、蓋10と、を備える。ケース本体は、有底筒形状を有し、上端が開口した開口部が設けられる。電極体は、開口部を介してケース本体の内側に挿入される。蓋10は、平板形状を有し、ケース本体の開口部を閉塞するように、溶接等によってケース本体に接合される。例えば、二次電池1が角型電池である場合、電池ケースの外形は直方体形状を有する。そして、ケース本体は、有底角筒形状を有し、蓋10は、ケース本体の開口部の形状に応じた矩形平板形状を有する。
【0019】
ケース本体及び蓋10は、共に軽量で熱伝導性が良好な金属材料を主体に構成されることが好ましい。例えば、ケース本体及び蓋10には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、及び鉄系金属等を用いることができ、特にアルミニウム、又はその合金であるアルミニウム系金属材料により形成されることが好ましい。本実施形態では、ケース本体及び蓋10は、アルミニウムにより形成される。蓋10には、正極端子、負極端子、安全弁、注入口11、及び封止部材20が設けられる。
【0020】
正極端子及び負極端子は、それぞれ蓋10を表面10aから反対側の裏面10bに向かって電池ケースの内外を貫通しており、各一端が電池ケースの外側に突出して外部機器と電気的に接続される。正極端子及び負極端子の各他端は、電池ケース内部に収納される電極体と電気的に接続される。正極端子及び負極端子は、電極体に対して電流の入出力を行うための電極である。安全弁は、電池ケース内部が所定圧力に達した場合に開弁して、電池ケース内部に発生したガスを排出する機能を果たす。
【0021】
注入口11は、蓋10を表面10aから裏面10bに向かって電池ケースの内外を貫通する注入開口部14を有する。蓋10の表面10aは、電池ケースの外部に面しており、蓋10の裏面10bは電池ケース内部に面している。注入口11の形状は特に制限されないが、本実施形態では、円形状の注入口11を例示して説明する。
【0022】
注入口11には、その内周面のうち裏面10b側の内周面から内側に突出した円環形状の段差部13が設けられ、内周面全体に亘って段差が形成されている。段差部13の内側には、電解液Eが通過する円形状の注入開口部14が形成される。また、段差部13の上端面と、段差部13を除いた注入口11の内周面(表面10a側の内周面)と、の内側には、封止部材20を収容可能な溝15が形成される。当該溝15は、プレス加工、切削加工、及びレーザ加工等の加工方法を用いて形成することができる。
【0023】
注入口11の注入開口部14は、封止部材20を用いて密封される。封止部材20は、蓋10を構成する金属材料と固相接合が可能な金属材料で形成される本体部材21を有する。例えば、本体部材21には、蓋10と同様の金属材料を用いることができ、特にアルミニウム、又はその合金であるアルミニウム系金属材料により形成されることが好ましい。本実施形態では、本体部材21は、蓋10と同種の金属材料であるアルミニウムにより形成される。なお、本体部材21及び蓋10は、所望の接合強度を確保できれば同種の金属材料であっても良く、異種の金属材料であっても良い。
【0024】
また、本体部材21の形状は、溝15の直径より小径に形成されるとともに、注入開口部14の直径より大径に形成される。本実施形態では、本体部材21は、中央部分が窪んだ略円盤形状を有する。なお、本体部材21の形状は、注入口11の形状に応じて適宜設計されるものである。
【0025】
封止部材20は、段差部13の上端面に載置された状態で、所要の重ね代を有して溝15に嵌め込まれている。注入口11(溝15)に嵌め込まれた封止部材20の外周端部と段差部13とが互いに接触する被接合面同士は、固相接合されている。すなわち、蓋10と封止部材20とは、互いに固相接合されて、円環状の接合部30aを形成している。本実施形態では、各被接合面が非平滑に形成される場合を例に挙げて接合部30aについて詳細を説明する。
【0026】
蓋10と封止部材20との間に形成される接合部30aは、固相接合部32及び非固相接合部を有する。固相接合部32は、アルミニウムの母材同士(蓋10及び本体部材21)が固相接合により接合した部分である。このような固相接合部32は、少なくとも一方の被接合面の表面性状が非平滑である場合に、その表面粗さが大きい程、部分的に形成されるものである。具体的には、被接合面の表面性状が凹凸を有する場合、固相接合時の接触が局部的になり、凸の部分は接合されて固相接合部32を形成するが、凹の部分は接合されず非固相接合部を形成する。
【0027】
つまり、非固相接合部は、接合部30aのうち被接合面同士が固相接合されていない部分を指し、固相接合部32間に形成される。そして、非固相接合部には、蓋10及び本体部材21を形成する金属材料の接合温度以下の融点を有する金属材料であるフィル材33aが設けられている。
【0028】
本実施形態では、超音波接合によって封止部材20が蓋10に固相接合されている。超音波接合は、被接合面に一定の圧力を加えた状態で超音波振動を加えることにより、被接合面同士の間に存在する酸化被膜や不純物を機械的に除去するとともに、被接合面同士の間で互いに原子拡散を生じさせて固相接合する方法である。固相接合では、母材の融点未満の固相状態で加熱及び加圧して、母材の溶融を伴わずに母材同士を接合することができる。
【0029】
共にアルミニウムにより形成される蓋10及び本体部材21の場合、フィル材33aを構成する金属材料は、アルミニウムの母材同士を固相接合することが可能な接合温度以下の融点を有する。超音波接合を行う際の接合条件(接合温度、加圧力、接合時間)は、実験等によって最適化されるものであるが、母材がアルミニウムの場合、接合温度は、少なくともアルミニウムの融点未満であって、例えば400℃程度に設定することができる。
【0030】
接合温度を400℃とした場合、フィル材33aを構成する金属材料の融点は400℃以下であることが好ましい。このようなフィル材33aを構成する金属材料には、スズ、又はスズを含む合金等の低融点金属又は低融点合金を用いることができる。スズを含む合金としては、例えば、銅、銀、ニッケル、ビスマス、インジウム、亜鉛等の金属を含むスズ合金が挙げられる。本実施形態では、フィル材33aを構成する金属材料は、スズの単体金属である。このように、互いに固相接合された蓋10と封止部材20との間に形成される接合部30aの少なくとも一部には、フィル材33aが介在している。
【0031】
続いて、上記の接合部30aを形成可能な封止部材20の構成について、図3を参照しつつ説明する。図3は、実施の形態1にかかる二次電池が備える封止部材の断面図である。図3には、蓋10に接合される前の封止部材20を示している。
【0032】
図3に示すように、封止部材20は、上記で説明した本体部材21の外面全体がメッキ層22で被覆されている。本体部材21の外面は、表面21a、裏面21b、及び側面21cで構成される。封止部材20が注入口11に嵌め込まれた場合、裏面21bは、蓋10に対向する側の面であって、電池ケース内部に面する。この場合、表面21aは、電池ケースの外部に面する。表面21aと裏面21bとは、互いに対向する面であり、側面21cは、表面21aと裏面21bとを繋ぐ面である。
【0033】
図3に示す例では、本体部材21は、表面21a、裏面21b、及び側面21cの全ての面に亘ってメッキ層22が形成されている。メッキ層22は、金属材料からなる薄膜であり、その膜厚は、例えば2μm~5μm程度である。本体部材21がメッキ層22で被覆された封止部材20は、全体として、溝15の直径より小径に形成されるとともに、注入開口部14の直径より大径に形成される。本実施形態では、封止部材20は、中央部分が電池ケース内部に向かって窪んだ略円盤形状を有する。注入口11に嵌め込まれた封止部材20の表面20aは、電池ケースの外部に面しており、封止部材20の裏面20bは電池ケース内部に面している。
【0034】
メッキ層22を構成する金属材料には、スズ、又はスズを含む合金等の低融点金属又は低融点合金を用いることができる。スズを含む合金としては、例えば、銅、銀、ニッケル、ビスマス、インジウム、亜鉛等の金属を含むスズ合金が挙げられる。
【0035】
メッキ層22は、蓋10と本体部材21とを固相接合する際に、接合温度まで上昇する母材から伝達した熱により溶融した後、凝固してフィル材33aとなる。したがって、メッキ層22は、接合温度において溶融状態である金属材料であって、フィル材33aと同種の金属材料で形成される。すなわち、本実施形態では、メッキ層22を構成する金属材料は、スズの単体金属である。スズを含む金属材料は、母材に対する良好な濡れ性を確保できるため、メッキ層22として好ましい。
【0036】
本体部材21に対しては、電解メッキ法や無電解メッキ法等の処理方法を用いてメッキ加工を施すことにより、上記メッキ層22を形成することができる。封止部材20は、少なくとも被接合面、又は蓋10に対向する側であって被接合面を含む裏面20bにメッキ層22を有していれば良い。ただし、加工性の観点から、本体部材21の外面全体(表面21a、裏面21b、及び側面21cの全ての面)にメッキ加工を施し、メッキ層22を形成することが好ましい。
【0037】
このように、メッキ層22を有する封止部材20を蓋10に固相接合するにあたっては、超音波接合装置を用いる。超音波接合装置は、主に、超音波発振部、ホーン、及びアンビルを備え、超音波接合を行う装置である。ホーンは、発振部から発振される超音波振動に共振し、超音波の周波数域以上の周波数の振動を接合対象物に付与するものである。アンビルは接合対象物を支持する台座である。
【0038】
超音波接合では、電池ケースの蓋10に封止部材20を重ね合わせてアンビルに配置し、蓋10と封止部材20とが重なり合った重ね代をホーンで加圧しつつ、ホーンを加圧方向と直交する方向に超音波振動させる。接合時には、温度上昇した母材から伝達した熱によってメッキ層22のみが溶融する。さらに、溶融したメッキ層22は、被接合面同士の摺動に伴って毛細管現象により濡れ広がり、母材が接合温度に達して接合された固相接合部32間に浸透する。浸透した溶融状態のメッキ層22が非固相接合部において凝固することによりフィル材33aを形成する。メッキ層22として、良好な濡れ性を有するスズを用いることにより、被接合面同士がより効率的に摺動する。この方法によれば、蓋10及び本体部材21は、溶融を伴わずに固相接合部32を形成する一方、フィル材33aで満たされた非固相接合部を得ることができる。
【0039】
このように、母材とフィル材33aとの融点の差を利用して超音波接合を行うと、接合部30aにおいては、固相接合された固相接合部32によって機械的強度(耐圧性)を確保しつつ、非固相接合部に充満したフィル材33aによって、注入口11は気密且つ液密に密封される。その結果、電池ケース内部の密閉性が向上する。よって、上記構成を有する二次電池1においては、接合部30aに対する電解液Eの進入又は通過が阻止されるため、電池ケース内部からの電解液Eの液漏れや揮発を抑制することができる。
【0040】
次に、図4及び図5を参照して、比較例の二次電池100について説明する。図4は、比較例の二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す断面図、及びその一部の拡大図である。図5は、比較例の二次電池が備える蓋と封止部材との接合状態を示す平面図である。なお、図4の上側には、注入口11に封止部材200が嵌め込まれた蓋10の垂直断面図を示しており、破線で囲む領域を拡大した拡大図を下側に示している。図5は、注入口11に封止部材200が嵌め込まれた蓋10の接合部30bを含んだ水平断面図を示しており、電池ケースの外部側から見た図である。また、図4及び図5において、黒矢印は電解液Eを表している。
【0041】
図4及び図5に示す比較例の二次電池100は、蓋10に接合された封止部材200及びその接合状態が異なることを除いて、二次電池1と同様の構成を有する。そのため、二次電池1との相違点を中心に説明する。
【0042】
図4及び図5に示すように、二次電池100の蓋10に設けられる注入口11は、封止部材200を用いて封止される。この封止部材200は、メッキ層22が形成されていない本体部材21のみで構成される。蓋10及び封止部材200(本体部材21)は、共にアルミニウムにより形成される。
【0043】
封止部材200は、注入口11の内周面から内側に突出した段差部13の上端面に載置された状態で、段差部13と所要の重ね代を有して溝15に嵌め込まれている。封止部材200が注入口11(溝15)に嵌め込まれた場合、封止部材200の裏面21bは、蓋10に対向する側の面であって、電池ケース内部に面する。封止部材200の表面21aは、電池ケースの外部に面する。注入口11に嵌め込まれた封止部材200の外周端部と段差部13とが互いに接触する被接合面同士は、固相接合されている。すなわち、蓋10と封止部材200とは、互いに固相接合されて、円環状の接合部30bを形成している。
【0044】
蓋10と封止部材200との間に形成される接合部30bは、固相接合部32及び非固相接合部を有する。固相接合部32は、アルミニウムの母材同士が固相接合により接合した部分である。二次電池100の場合、固相接合されるのは、蓋10及び本体部材21であり、本体部材21とは、すなわち封止部材200である。
【0045】
被接合面の表面性状は非平滑であるため、固相接合部32は部分的に形成される。非固相接合部は、接合部30bのうち被接合面同士が固相接合されていない部分を指し、固相接合部32間に形成される空孔33bである。このように、非固相接合部に空孔33bが形成される二次電池100では、例えば、電解液Eが空孔33bを通過して、電池ケース内部からの電解液Eの液漏れや揮発等を引き起こす虞がある。したがって、電池ケース内部の密閉性が不十分である。
【0046】
そこで、接合部30bの全体に均一な固相接合部32を形成するための1つの方法として、被接合面を平滑に加工することが考えられる。しかしながら、被接合面を均一な平滑面とするには、高い部品精度及び表面粗さの管理等を要するため、コストが増大する。
【0047】
これに対し、本実施形態にかかる二次電池1は、蓋10と蓋10の注入口11を密封する封止部材20とがフィル材33aを介して固相接合されている。当該フィル材33aは、蓋10と封止部材20との間の接合部30aのうち、被接合面の凹の部分に起因して固相接合されていない非固相接合部に充満している。このような構成を有する二次電池1においては、接合部30aに対する電解液Eの進入又は通過が阻止されるため、電池ケース内部からの電解液Eの液漏れや揮発を抑制することができる。したがって、被接合面の表面性状が凹凸を有する場合でも、封止部材20が接合された二次電池1では、優れた密閉性を確保することができる。
【0048】
また、フィル材33aは、母材の接合温度以下の融点を有する金属材料により形成される。フィル材33aは、固相接合時に温度上昇した母材から伝達した熱により、封止部材20のメッキ層22が溶融した後、凝固して形成されるものである。さらに、メッキ層22(フィル材33a)を形成する金属材料として、スズを用いることにより、スズは溶融状態で良好に濡れ広がる。そして、母材が接合温度に達して接合された固相接合部32間にスズが万遍なく浸透することができる。一方で、母材は溶融を伴わずに固相接合部32を形成する。このような構成により、母材同士が固相接合される一方で、フィル材33aが非固相接合部に充満するため、接合部30aに空孔33bが形成されることが防止される。よって、注液口は封止部材20により気密且つ液密に密封される。
【0049】
ここで、蓋10と封止部材200とを接合する他の形態として、例えば、溶融接合法が挙げられる。しかしながら、例えば、溶融接合法の1種であるレーザ溶接では、溶接中に生じるスパッタが電池ケース内部に混入する場合や、溶接中の溶融部分の内部にボイドが発生して接合強度が低下する場合がある。特に、二次電池の蓋や封止部材は厚みが薄いため、これらの接合にレーザ溶接を用いると、溶接不良が生じやすいという問題がある。
【0050】
例えば、特許文献1に記載の二次電池では、溶融部分に対する電解液Eの付着がボイドの発生原因となることが指摘されており、これを防止するために、電解液Eを注入するための注入口には複数の細孔を形成したフィルタが設けられる。そのため、当該注入口を複雑な構造に加工する必要がある。したがって、特許文献1に記載の二次電池では、注入口における複雑な構造を形成するための加工作業の負担が生じるとともに、加工作業に時間とコストを要し、生産性が低下する。また、このような構成では、電解液Eの通過を許容する注入口の開口が小さくなるため、二次電池の製造工程において、電解液Eの注入時間が増大し、生産性低下の一因となる。
【0051】
これに対し、本実施形態にかかる二次電池1では、蓋10と封止部材20とを接合する方法として、超音波接合を適用することができる。超音波接合では、レーザ溶接のようにスパッタが発生しないため、電池ケース内部への異物の混入を抑制できる。
【0052】
また、超音波接合等の固相接合法を用いることにより、溶融を伴うレーザ溶接等の溶融接合法と比べて被接合面の温度上昇が抑制される。そのため、接合に伴って生じ得る電解液Eの揮発を抑制することができる。また、固相接合法を用いれば、溶融接合法と比べて小さなエネルギー量で接合部30aを形成することができるため、コストを低減できる。
【0053】
さらに、本実施形態にかかる封止部材20は、被接合面にメッキ層22を有している。このメッキ層22は、スズ等の低融点金属により形成される。このような構成によれば、アルミニウムのように大気中において表面に酸化皮膜が形成されやすい金属材料同士を固相接合する場合であっても、接合界面に溶融したメッキ層22が介在することにより、酸化皮膜が形成されにくい。したがって、接合部30aにおける不必要な金属間化合物の生成を抑制することができるため、接合強度の高い接合部30aを得ることができる。
【0054】
また、このようなメッキ層22は、被接合材(本体部材21)の外面をメッキ加工して形成することができるため、封止部材20は簡易で安価に製造することができる。また、封止部材20が接合される注入口11に対して、電解液Eの液はねを防止するためのフィルタ等の複雑な構造を構築する必要がなく、注入口11の構造を簡素化することができる。これにより、加工作業の負担を軽減することができる。そして、蓋10と封止部材20との接合部30aは、重ね接合の構造を採用することができるため、接合部30aにおける耐圧強度と気密性が得られやすい。
【0055】
また、本実施形態にかかる二次電池1では、二次電池1の製造工程において、注入口11に対する電解液Eの付着に関するケアを行う必要がないため、注入口11を拡径することができる。注入口11が拡径されると、電解液Eの注入時間を短縮することが可能であるため、生産性を向上することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態にかかる二次電池1、及び封止部材20は、簡素な構造で密閉性に優れたものであり、二次電池の信頼性を向上することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、メッキ層22の膜厚は、メッキ処理のコストや被接合面の表面粗さを考慮して適宜設計されるものである。
【0058】
また、フィル材33aを形成する他の方法として、溶射、蒸着、皮膜コーティング等により、予め本体部材21の少なくとも被接合面に対してフィル材33aを構成する金属材料を付着させてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、固相接合法として超音波接合を適用した場合について説明したが、これに限らず、母材が溶融しない程度に加熱され、接合界面に原子拡散を生じることにより接合される方法であればよい。例えば、摩擦撹拌接合、摩擦圧接等の他の固相接合法であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1、100 二次電池
10 蓋
10a 表面
10b 裏面
11 注入口
13 段差部
14 注入開口部
15 溝
20、200 封止部材
20a 表面
20b 裏面
21 本体部材
21a 表面
21b 裏面
21c 側面
22 メッキ層
30a、30b 接合部
32 固相接合部
33a フィル材
33b 空孔
E 電解液
図1
図2
図3
図4
図5