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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128039
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20220825BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F28F3/08 311
F28D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026343
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】王 凱建
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA18
3L103DD15
3L103DD17
3L103DD58
(57)【要約】
【課題】流体を熱交換流路部に適切に分配する。
【解決手段】熱交換器は、流体が流入する流入口と、上記流体が流出する流出口と、上記流入口と上記流出口との間に熱交換流路部が設けられた複数の金属板を含む。上記複数の金属板は、互いに積層される。上記複数の金属板の少なくとも1つは、上記流入口と上記熱交換流路部との間において、上記流入口から上記熱交換流路部に流入する上記流体を上記熱交換流路部に分配する第1分流部を有する。上記第1分流部は、複数の線状ガイドを有する。上記複数の線状ガイドが上記流入口と上記熱交換流路部との間において千鳥状に配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口と、前記流体が流出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に熱交換流路部が設けられた複数の金属板を含み、
前記複数の金属板は、互いに積層され、
前記複数の金属板の少なくとも1つは、前記流入口と前記熱交換流路部との間において、前記流入口から前記熱交換流路部に流入する前記流体を前記熱交換流路部に分配する第1分流部を有し、
前記第1分流部は、複数の線状ガイドを有し、
前記複数の線状ガイドが前記流入口と前記熱交換流路部との間において千鳥状に配置された
熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載された熱交換器であって、
前記複数の線状ガイドのそれぞれは、前記複数の線状ガイドのそれぞれが延在する方向に長手方向を有し、
前記第1分流部においては、前記長手方向において破線状に配列された複数の線状ガイドによって線状ガイドのガイド列が形成され、
前記ガイド列が前記流入口から前記熱交換流路部に向けて放射状に複数配置され、
隣り合う前記ガイド列における相互の間隔が前記流入口から前記熱交換流路部に向かうにつれ広くなる
熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載された熱交換器であって、
隣り合う前記ガイド列との間における前記長手方向における線状ガイドの配列位相が互いにずれている
熱交換器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載された熱交換器であって、
前記熱交換流路部と前記第1分流部との間に、前記第1分流部によって分配された前記流体を再度分配する第2分流部が設けられ、
前記第2分流部は、複数の柱状ガイドを有し、
前記複数の柱状ガイドが前記第1分流部と前記熱交換流路部との間において千鳥状に配置された
熱交換器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載された熱交換器であって、
蒸発器として機能する
熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路が形成された金属板を積層した熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換部として機能させるための流路が形成された薄い金属板を複数積層した熱交換器(例えば、マイクロチャンネル熱交換器)では、流入口から流入した流体が流路が形成された領域部(以下、熱交換流路部)に均等に流れるように、流入口と熱交換流路部との間に分流部を設ける場合がある。この分流部は流入口から流入した流体を熱交換流路部に分配する。例えば、分流部として、流入口と熱交換流路部との間に複数の線状ガイドを放射状に配置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような熱交換器においては、一般的には熱交換器内の圧力損失を低減するため、流体が流れる流路の長さが短く設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-534840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、流路の長さを短く設定すると熱交換器における十分な伝熱面積を確保できなくなる。このため、熱交換器においては流路の長さを短く設定する代わりに熱交換流路部を幅広く形成する必要性が生じる。
【0006】
但し、流入口の幅に比べて熱交換流路部が広く形成されると、流体の流れ方向の慣性力によって、流体は熱交換流路部の流入口付近に流入しやすく、熱交換流路部の流入口から離れた両端部には流体が流れにくくなる現象が起き得る。例えば、流入口と熱交換流路部との間に線状ガイドを設けたとしても、ガイドの長さや本数、角度などの機械的な制約により適切に流体を分配できない。従って、単に流入口と熱交換流路部との間に分流部を設けただけでは、流体を熱交換流路部に適切に分配できないという問題があった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、流体を熱交換流路部に適切に分配させる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱交換器は、流体が流入する流入口と、上記流体が流出する流出口と、上記流入口と上記流出口との間に熱交換流路部が設けられた複数の金属板を含む。
上記複数の金属板は、互いに積層される。
上記複数の金属板の少なくとも1つは、上記流入口と上記熱交換流路部との間において、上記流入口から上記熱交換流路部に流入する上記流体を上記熱交換流路部に分配する第1分流部を有する。
上記第1分流部は、複数の線状ガイドを有する。
上記複数の線状ガイドが上記流入口と上記熱交換流路部との間において千鳥状に配置されている。
【0009】
このような熱交換器であれば、複数の線状ガイドが流入口と熱交換流路部との間において千鳥状に配置されていることから、流体が適切に熱交換流路部に分配される。
【0010】
上記熱交換器においては、上記複数の線状ガイドのそれぞれは、上記複数の線状ガイドのそれぞれが延在する方向に長手方向を有し、上記第1分流部においては、上記長手方向において破線状に配列された複数の線状ガイドによって線状ガイドのガイド列が形成され、上記ガイド列が上記流入口から上記熱交換流路部に向けて放射状に複数配置され、隣り合う上記ガイド列における相互の間隔が上記流入口から上記熱交換流路部に向かうにつれ広くなってもよい。これにより、流体がより適切に熱交換流路部に分配される。
【0011】
上記熱交換器においては、隣り合う上記ガイド列との間における上記長手方向における線状ガイドの配列位相が互いにずれてもよい。これにより、流体がより適切に熱交換流路部に分配される。
【0012】
上記熱交換器においては、上記熱交換流路部と上記第1分流部との間に、上記第1分流部によって分配された上記流体を再度分配する第2分流部が設けられ、上記第2分流部は、複数の柱状ガイドを有し、上記複数の柱状ガイドが上記第1分流部と上記熱交換流路部との間において千鳥状に配置されてもよい。これにより、流体がより適切に熱交換流路部に分配される。
【0013】
上記熱交換器においては、蒸発器として機能させてもよい。これにより、流体がより適切に熱交換流路部に分配される。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、流体を熱交換流路部に適切に分配させる熱交換器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の熱交換器を示す模式的斜視図である。
図2】熱交換器本体を熱交換器本体の積層方向に分解したときの模式的斜視図である。
図3】金属板を示す模式的平面図である。
図4】金属板を示す模式的平面図である。
図5】金属板に設けられた流路を示す模式的平面図である。
図6】分流部及び熱交換流路部の流路を示す模式的平面図である。
図7】金属板に設けられた流路を示す模式的平面図である。
図8】参考例の熱交換器に含まれる金属板の流路を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0017】
(熱交換器の構造)
図1は、本実施形態の熱交換器を示す模式的斜視図である。
【0018】
熱交換器1は、例えば、積層型マイクロ流路熱交換器に適用される。熱交換器1は、熱交換器本体2と、流入管5と、流出管6と、流出管7と、流入管8とを具備する。流入管5から流出管6に向かう方向と、流入管8から流出管7に向かう方向とは交差する。
【0019】
熱交換器1を蒸発器として機能させる場合、例えば、高温流体(例えば、水、温水)を流入管5を介して熱交換器本体2に流入させる。熱交換器本体2で低温流体と熱交換された高温流体は、流出管6を介して熱交換器本体2から熱交換器本体2の外部に流出する。低温流体(例えば、液冷媒)は、流入管8を介して熱交換器本体2に流入させる。熱交換器本体2で高温流体と熱交換された低温流体は加熱されることにより蒸発して、例えばガス冷媒となり、流出管7を介して熱交換器本体2から熱交換器本体2の外部に流出する。
【0020】
流出管7の管径と、流入管8の管径とが異なるのは、熱交換器1内を流れる低温流体が高温流体と熱交換を行って、低温流体が液とガスの間で相変化をすることを考慮したことによる。例えば、液よりも体積が大きくなるガスが流出する流出管7の管径は、液が流入する流入管8の管径より大きく形成されている。一方、流入管5と流出管6との間を流れる高温流体は、液体のまま相変化をしないので、流入管5及び流出管6のそれぞれの管径は、略等しく形成されている。
【0021】
図2は、熱交換器本体を熱交換器本体の積層方向に分解したときの模式的斜視図である。図2では、図1に示す熱交換器1が流出管7または流入管8の管軸を中心に180度回転した状態が示されている。
【0022】
熱交換器本体2は、積層体10と、金属板11と、金属板12とを有する。金属板11と金属板12とは、積層方向10sにおいて積層体10を挟む。金属板11及び金属板12は、積層体10の積層方向10sにおける外殻板である。
【0023】
積層体10は、主面S1と、主面S1とは反対側の主面S2と、主面S1、S2に連設された側面10wとを有する。金属板11は、積層体10の一方の主面S1を覆い、金属板12は、積層体10の主面S1とは反対側の主面S2を覆う。金属板11、12のそれぞれは、拡散接合によって積層体10を形成する複数の金属板とともに一体に固定されている。
【0024】
熱交換器本体2には、流入口14と、流出口15と、流入口16と、流出口17とが形成されている。流入口14、流出口15、流入口16、及び流出口17は、積層方向10sにおいて積層体10を貫通する。また、流入口14、流出口15、流入口16、及び流出口17は、積層体10の積層方向10sにおいて、金属板11と金属板12とにより閉塞される。金属板11及び金属板12のそれぞれは、1枚の金属板に限らず、複数の金属板が拡散接合によって積層方向10sに接合された金属板であってもよい。
【0025】
積層体10の側面10wには、流出口15に通じる開口18と、流入口16に通じる開口19とが形成されている。開口18は、流出口15の近傍の側面10wに形成される。流出管6は、開口18に挿入され、開口18を介して流出口15に連通する。流出管6は、例えば、ロウ付けによって、開口18に接合される。
【0026】
開口19は、流入口16の近傍の側面10wに形成される。流入管8は、開口19に挿入され、開口19を介して流入口16に連通する。流入管8は、例えば、ロウ付けによって、開口19に接合される。なお、開口18、19は、熱交換器本体2が形成された後に、例えば、ドリル加工、レーザ加工等の加工によって形成される。
【0027】
開口18の反対側の積層体10の側面10wには、流入口14の近傍に流入口14に通じる開口(不図示)が形成されている。開口19の反対側の側面10wには、流出口17の近傍に流出口17に通じる開口(不図示)が形成されている。流入管5は、流入口14の近傍の側面10wに形成された開口(不図示)に挿入され、この開口を介して流入口14に連通する。流入管5は、例えば、ロウ付けによって、この開口に接合される。
【0028】
流出管7は、流出口17の近傍の側面10wに形成された開口(不図示)に挿入され、この開口を介して、流出口17に連通する。流出管7は、例えば、ロウ付けによって、この開口に接合される。なお、これらの開口は、熱交換器本体2が形成された後に、例えば、ドリル加工、レーザ加工等の加工によって形成される。
【0029】
積層体10は、伝熱板(熱交換板)である複数の金属板20を有する。複数の金属板20は、それぞれ板状に形成されている。複数の金属板20は、積層方向10sに垂直に配置され、拡散接合によって互いに密着するように積層されている。
【0030】
複数の金属板20は、複数の金属板21と複数の金属板22とを有する。すなわち、複数の金属板20の少なくとも1つは、金属板21または金属板22である。金属板20は、金属板21及び金属板22の総称である。金属板21と金属板22とは、積層方向10sにおいて互いに交互に積層される。交互に積層された金属板21と金属板22とは、拡散接合によって互いに接合されている。
【0031】
なお、図2では、積層方向に積層された複数の金属板のそれぞれの境界に実線が描かれているが、拡散接合後、実線は消滅することがある。
【0032】
図3及び図4は、金属板を示す模式的平面図である。ここで、図3には、金属板21の平面が示され、図4には、金属板22の平面が示されている。金属板21、22のそれぞれは、流体が流入する流入口と、流体が流出する流出口と、流入口と流出口との間に熱交換流路部が設けられている。また、図3及び図4では、流路が略されている。
【0033】
図3に示す金属板21には、流入口14と、流出口15と、流入口16と、流出口17とが形成されている。流入口14、流出口15、流入口16、及び流出口17は、金属板21の一方の主面S3から他方の主面S4に貫通している。
【0034】
金属板21においては、主面S3に、流体の熱交換流路部(後述)が配置される凹部21aと、流体の分流部(後述)が配置される凹部21bと、流体の合流部(後述)が配置される凹部21cとが形成されている。凹部21aは、金属板21の中央部分に設けられる。凹部21bは、凹部21aと流入口14との間に設けられる。凹部21cは、凹部21aと流出口15との間に設けられる。凹部21a、21b、21cのそれぞれの深さは、段差による圧力損失の増加を抑えるため、例えば、同じである。金属板21においては、主面S3と平行な方向において、流入口14、凹部21a、21b、21c、及び流出口15が互いに連通している。
【0035】
高温流体は、積層方向10sに垂直であって金属板21に平行な流れ方向21fに流れる。例えば、高温流体は、流入口14、凹部21b、凹部21a、凹部21c、及び流出口15の順に流れる。なお、高温流体の流れる方向は、用途に応じて可逆的となる。図3においては、流体の平均的な流れ方向21fが両矢印で示されている。
【0036】
図4に示す金属板22は、流入口14と、流出口15と、流入口16と、流出口17とが形成されている。流入口14、流出口15、流入口16、及び流出口17は、金属板22の一方の主面S5から他方の主面S6に貫通している。
【0037】
金属板22は、主面S5に、熱交換流路(後述)が配置される凹部22aと、分流部(後述)が配置される凹部22bと、合流部(後述)が配置される凹部22cとが形成されている。凹部22aは、金属板22の中央部分に設けられる。凹部22bは、流入口16と凹部22aとの間に設けられる。凹部22cは、流出口17と凹部22aとの間に設けられる。凹部22a、22b、22cのそれぞれの深さは、段差による圧力損失の増加を抑えるために、例えば、同じである。金属板22においては、主面S5と平行な方向において、流入口16、凹部22a、22b、22c、及び流出口17が互いに連通している。
【0038】
低温流体は、積層方向10sに垂直であって金属板22に平行な流れ方向22fに流れる。例えば、低温流体は、流入口16、凹部22b、凹部22a、凹部22c、及び流出口17の順に流れる。低温流体の流れる方向は、用途に応じて可逆的となる。図4においては、流体の平均的な流れ方向22fが両矢印で示されている。
【0039】
金属板22の中央部分に設けられた凹部22aは、積層方向10sにおいて金属板21の凹部21aと重なっている。これにより、凹部22aに設けられた熱交換流路に流れる低温流体と、凹部21aに設けられた熱交換流路に流れる高温流体との間での熱交換が行われる。
【0040】
また、金属板21と金属板22とが交互に積層方向10sに積層されたときに、金属板21の流入口14と金属板22の流入口14とが積層方向10sの方向に繋がって空間が形成される(図2)。同様に、金属板21と金属板22とが交互に積層方向10sに積層されたときに、金属板21の流出口15と金属板22の流出口15とが積層方向10sの方向に繋がって空間が形成され、金属板21の流入口16と金属板22の流入口16とが積層方向10sの方向に繋がって空間が形成され、金属板21の流出口17と金属板22の流出口17とが積層方向10sの方向に繋がって空間が形成される(図2)。
【0041】
金属板11、12、20は、熱伝導率が高く、例えば、同じ材質の金属板である。これらの金属板は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、アルミニウム合金、チタン、マグネシウム合金等の少なくともいずれか一つを含む。
【0042】
なお、分流部と合流部とは、熱交換器1を並流型として用いるか向流型として用いるか、また蒸発器として機能させるか凝縮器として機能させるか、などの用途に応じて、流入口が流出口、流出口が流入口となった場合には、分流部が合流部に、合流部が分流部にそれぞれが入れ替わる。また、熱交換器1に対して流体が流入、または、流出する方向が変わることを考慮して、流入口と流出口をまとめて流出入口、流入管と流出管をまとめて流出入管と呼ぶことがある。本実施形態では、金属板21において、流入口14から流出口15に流体が流れ、金属板22において、流入口16から流出口17に流体が流れる例をあげて、熱交換器1の作用を説明する。これは熱交換器1が並流型であり、蒸発器として機能する場合である。
【0043】
次に、凹部21a、21b、21c、または、凹部22a、22b、22cに形成される流路について説明する。
【0044】
図5は、金属板に設けられた流路を示す模式的平面図である。図5では、金属板20の中、金属板21の流路が示されている。
【0045】
図5に示すように、金属板21は、凹部21aに配置された熱交換流路部211と、凹部21bに配置された分流部212と、凹部21cに配置された合流部213とを有する。熱交換流路部211は、分流部212と合流部213との間に設けられる。分流部212は、分流部212A(第1分流部)と分流部212B(第2分流部)とに分けられている。合流部213は、合流部213Aと合流部213Bとに分けられている。金属板21では、例えば、流入口14から流出口15に向けて流体が流れる。
【0046】
分流部212は、流入口14と熱交換流路部211との間に設けられる。また、分流部212Aは、流入口14と分流部212Bとの間に設けられる。分流部212Aは、分流部212Bよりも流入口14の側に設けられる。分流部212Bは、熱交換流路部211と分流部212Aとの間に設けられる。分流部212Aは、流入口14から流入する流体を熱交換流路部211に向けて分配する。分流部212Bは、分流部212Aによって分配された流体を熱交換流路部211に向けて再度分配する。熱交換流路部211を流れる流体は、積層方向10cにおいて金属板21の上下に配置された金属板22を介して金属板22の熱交換流路部(図示せず)を流れる流体と熱交換を行う。
【0047】
また、合流部213は、流出口15と熱交換流路部211との間に設けられる。また、合流部213Aは、流出口15と合流部213Bとの間に設けられる。合流部213Aは、合流部213Bよりも流出口15の側に設けられる。合流部213Bは、熱交換流路部211と合流部213Aとの間に設けられる。合流部213Bは、熱交換流路部211から流出した流体を合流部213Aに向けて合流させる。合流部213Aは、合流部213Bによって合流させた流体を流出口15に向けて集中させる。
【0048】
金属板21に設けられた、分流部212及び熱交換流路部211の流路について詳細に説明する。
【0049】
図6は、分流部及び熱交換流路部の流路を示す模式的平面図である。図6には、金属板21の分流部212及び熱交換流路部211の流路が示されている。
【0050】
分流部212Aは、複数の線状ガイド212Lを有する。複数の線状ガイド212Lのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部21bから突出している。複数の線状ガイド212Lの高さは、例えば、凹部21bの深さと同じである。複数の線状ガイド212Lは、流入口14と熱交換流路部211との間において千鳥状に配置されている。複数の線状ガイド212Lのそれぞれは、複数の線状ガイド212Lのそれぞれが延在する方向に長手方向を有する。複数の線状ガイド212Lのそれぞれは、長手方向に直線状に延在する。分流部212Aでは、複数の線状ガイド212Lのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0051】
分流部212Aにおいては、線状ガイド212Lの長手方向において、複数の線状ガイド212Lのそれぞれが連続した線状でなく破線状に配列されている。例えば、長手方向に隣り合う線状ガイド212Lの間には、線状ガイドがない非ガイド部分212nが形成されている。また、長手方向に配列された複数の線状ガイド212Lによって、線状ガイド212Lによるガイド列212cが形成されている。ガイド列212cは、流れ方向21fに対して交差する方向に複数配置されている。
【0052】
ガイド列212cは、流入口14から熱交換流路部211に向けて放射状に配置されている。隣り合うガイド列212cにおける相互の間隔は、流入口14から熱交換流路部211に向かうにつれ広くなっている。また、隣り合うガイド列212c間では、線状ガイド212Lの長手方向における線状ガイド212Lの配列の位相が互いにずれている。この配列の位相(配列位相とも呼ぶ)はガイド列212cが放射状に形成される放射線上において、周期的に配列される線状ガイド212Lと非ガイド部212nの位置を表す。図6のガイド列212cでは、放射線上で隣り合う線状ガイド212Lと非ガイド部212nの配置を位相が360度の1周期とする。例えば、図6の隣り合うガイド列212c間では、放射線上の線状ガイド212Lと非ガイド部212nの配列の位相が180度ずれている。
【0053】
分流部212Bは、複数の柱状ガイド212Pを有する。複数の柱状ガイド212Pのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部21bから突出している。複数の柱状ガイド212Pの高さは、例えば、凹部21bの深さと同じである。複数の柱状ガイド212Pは、分流部212Aと熱交換流路部211との間において千鳥状に配置されている。分流部212Bでは、複数の柱状ガイド212Pのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。柱状ガイドとは、例えば、円柱状のガイドである。
【0054】
分流部212Bにおいては、流入口14から熱交換流路部211に向かう方向に対して略直交する方向21dにおいて複数の柱状ガイド212Pによるガイド列212dが形成されている。また、ガイド列212dは、流れ方向21fに複数配置されている。
【0055】
例えば、ガイド列212dは、流入口14から熱交換流路部211に向けて、等間隔で複数配置されている。また、隣り合うガイド列212dは、平行になっている。また、隣り合うガイド列212d間では、ガイド列212dの方向における柱状ガイド212Pの配列の位相が互いにずれている。例えば、隣り合うガイド列212d間では、ガイド列212dの方向における柱状ガイド212Pの配列の位相が180度ずれている。また、各ガイド列212dに配置された複数の柱状ガイド212Pのそれぞれの間隔は、分流部212Bの近傍における、分流部212Aの隣り合うガイド列212cの間隔よりも短くなっている。
【0056】
熱交換流路部211は、例えば、S字状の複数の流路壁211Sを有する。複数の流路壁211Sのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部21aから突出している。複数の流路壁211Sの高さは、例えば、凹部21aの深さと同じである。複数の流路壁211Sは、熱交換流路部211において縦横に配列されている。例えば、複数の流路壁211Sのそれぞれの中心は、凹部21aにおいてマトリクス状に配置されている。熱交換流路部211では、複数の流路壁211Sのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0057】
また、合流部213Aは、図5に示すように、複数の線状ガイド213Lを有する。複数の線状ガイド213Lのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部21cから突出している。複数の線状ガイド213Lの高さは、例えば、凹部21cの深さと同じである。複数の線状ガイド213Lは、流出口15と熱交換流路部211との間において千鳥状に配置されている。複数の線状ガイド213Lのそれぞれは、複数の線状ガイド213Lのそれぞれが延在する方向に長手方向を有する。複数の線状ガイド213Lのそれぞれは、長手方向に直線状に延在する。合流部213Aでは、複数の線状ガイド213Lのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0058】
合流部213Aにおいては、方向21dにおいて隣り合う線状ガイド213Lにおける相互の間隔が熱交換流路部211からに流出口15に向かうにつれ狭くなっている。合流部213Aは、合流部213Bから流れてきた流体を複数の線状ガイド213Lによって合流させて流出口15に流出させる。
【0059】
合流部213Bは、複数の柱状ガイド213Pを有する。複数の柱状ガイド213Pのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部21cから突出している。複数の柱状ガイド213Pの高さは、例えば、凹部21cの深さと同じである。複数の柱状ガイド213Pは、合流部213Aと熱交換流路部211との間において、分流部212Bと同様に千鳥状に配置されている。合流部213Bでは、複数の柱状ガイド213Pのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0060】
図7は、金属板に設けられた流路を示す模式的平面図である。図7では、金属板20の中、金属板22の流路が示されている。
【0061】
金属板22は、凹部22aに配置された熱交換流路部221と、凹部22bに配置された分流部222と、凹部22cに配置された合流部223とを有する。熱交換流路部221は、分流部222と合流部223との間に設けられる。分流部222は、分流部222Aと分流部222Bとに分けられている。合流部223は、合流部223Aと合流部223Bとに分けられている。金属板22では、例えば、流入口16から流出口17に向けて流体が流れる。
【0062】
分流部222は、流入口16と熱交換流路部221との間に設けられる。また、分流部222Aは、流入口16と分流部222Bとの間に設けられる。分流部222Aは、分流部222Bよりも流入口16の側に設けられる。分流部222Bは、熱交換流路部221と分流部222Aとの間に設けられる。分流部222Aは、流入口16から流入する流体を熱交換流路部221に向けて分配する。分流部222Bは、分流部222Aによって分配された流体を熱交換流路部221に向けて再度分配する。熱交換流路部221は、積層方向10cにおいて金属板22の上下に配置された金属板22の熱交換流路部211と流体を介して熱交換を行う。
【0063】
また、合流部223は、流出口17と熱交換流路部221との間に設けられる。また、合流部223Aは、流出口17と合流部223Bとの間に設けられる。合流部223Aは、合流部223Bよりも流出口17の側に設けられる。合流部223Bは、熱交換流路部221と合流部223Aとの間に設けられる。合流部223Bは、熱交換流路部221から流出した流体を合流部223Aに向けて合流させる。合流部223Aは、合流部223Bによって合流させた流体を流出口17に向けて集中させる。
【0064】
分流部222Aは、複数の線状ガイド222Lを有する。複数の線状ガイド222Lのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部22bから突出している。複数の線状ガイド222Lの高さは、例えば、凹部22bの深さと同じである。複数の線状ガイド222Lは、流入口16と熱交換流路部221との間において千鳥状に配置されている。複数の線状ガイド222Lのそれぞれは、複数の線状ガイド222Lのそれぞれが延在する方向に長手方向を有する。複数の線状ガイド222Lのそれぞれは、長手方向に直線状に延在する。分流部222Aでは、複数の線状ガイド222Lのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0065】
複数の線状ガイド222Lは、分流部222Aにおいて千鳥状に配置されている。複数の線状ガイド222Lのそれぞれは、流入口16から分流部222Bに向かう方向に直線状に延在する。例えば、流れ方向22fと略直交する方向を22d、流れ方向22f及び方向22dのそれぞれに交差する方向を方向22eとしたときに、方向22eにおいて、隣り合う線状ガイド222Lの少なくとも一組の相互の間隔は、流入口16から分流部222Bに向かうにつれ広くなり、残りの線状ガイド222L同士は、互いに略平行に配置されている。このような配置であれば、流体が幅の狭い流入口16から流入口16よりも幅の広い分流部222Bに流れるとき、流れ(流路)の幅が流入口16から分流部222Bに向かって広がったとしても、流体の流れの幅は急激に広がることなく、流体は連続的に滑らかに広がる。
【0066】
分流部222Bは、複数の柱状ガイド222Pを有する。複数の柱状ガイド222Pのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部22bから突出している。複数の柱状ガイド222Pの高さは、例えば、凹部22bの深さと同じである。複数の柱状ガイド222Pは、分流部222Aと熱交換流路部221との間において、分流部212Bと同様に千鳥状に配置されている。千鳥状に配置されている。分流部222Bでは、複数の柱状ガイド222Pのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0067】
熱交換流路部221は、例えば、S字状の複数の流路壁221Sを有する。複数の流路壁221Sのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部22aから突出している。複数の流路壁221Sの高さは、例えば、凹部22aの深さと同じである。複数の流路壁221Sは、熱交換流路部221において縦横に配列されている。例えば、複数の流路壁221Sのそれぞれの中心は、凹部22aにおいてマトリクス状に配置されている。複数の流路壁221Sは、千鳥状に配置されてもよい。熱交換流路部221では、複数の流路壁221Sのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0068】
合流部223Aは、複数の線状ガイド223Lを有する。複数の線状ガイド223Lのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部22cから突出している。複数の線状ガイド223Lの高さは、例えば、凹部22cの深さと同じである。複数の線状ガイド223Lは、流出口17と熱交換流路部221との間において千鳥状に配置されている。複数の線状ガイド223Lのそれぞれは、複数の線状ガイド223Lのそれぞれが延在する方向に長手方向を有する。複数の線状ガイド223Lのそれぞれは、長手方向に直線状に延在する。合流部223Aでは、複数の線状ガイド223Lのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0069】
合流部223Aにおいては、方向22eにおいて、隣り合う線状ガイド223Lの少なくとも一組の相互の間隔が熱交換流路部221からに流出口17に向かうにつれ狭くなり、残りの線状ガイド223L同士は、互いに略平行に配置されている。合流部223Aは、合流部223Bから流れてきた流体を複数の線状ガイド223Lによって合流させて流出口17に流出させる。このような配置であれば、流体が幅の広い合流部223Bから合流部223Bよりも幅の狭い流出口17に流れるときに、流れ(流路)の幅が合流部223Bから分流出口17に向かって狭くなったとしても、流体の流れの幅は急激に狭くなることなく、流体は連続的に滑らかに狭くなる流体となる。
【0070】
合流部223Bは、複数の柱状ガイド223Pを有する。複数の柱状ガイド223Pのそれぞれは、積層方向10cにおいて凹部22cから突出している。複数の柱状ガイド223Pの高さは、例えば、凹部22cの深さと同じである。複数の柱状ガイド223Pは、合流部223Aと熱交換流路部221との間において、例えば、分流部212Bと同様に、千鳥状に配置されている。合流部223Bでは、複数の柱状ガイド223Pのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0071】
各流入口、各流出口、各凹部、及び各ガイドは、エッチング処理、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などで行われる。また、この処理として、3Dプリンター等の積層造形技術も用いることができる。
【0072】
(熱交換器の作用)
本実施形態の熱交換器1の作用を説明する前に、参考例に係る熱交換器の作用について説明する。
【0073】
図8は、参考例の熱交換器に含まれる金属板を示す模式的平面図である。図8に示される金属板25は、高温流体用の金属板である。すなわち、参考例の金属板25は、金属板21に対応し、参考例においては、金属板25と金属板22とが交互に積層されて、積層体10が形成される。
【0074】
金属板25においては、分流部215が分流部215Aと分流部212Bとを有する。金属板25において、分流部215A以外の構造は、金属板21の構造と同じである。すなわち、金属板21の分流部212Aを分流部215Aに置き換えたものが金属板25になっている。
【0075】
金属板25においては、分流部215Aに複数の線状ガイド215Lが設けられている。複数の線状ガイド215Lのそれぞれは、複数の線状ガイド215Lのそれぞれが延在する方向に長手方向を有する。また、隣り合う線状ガイド215Lにおける相互の間隔は、隣り合うガイド列212cにおける相互の間隔と同じである。分流部215Aでは、複数の線状ガイド215Lのそれぞれの間の空間が流体の流路となる。
【0076】
但し、分流部215Aは、非ガイド部分212nを持たない。分流部215Aでは、複数の線状ガイド215Lのそれぞれが連続的に形成されている。複数の線状ガイド215Lは、流入口14から熱交換流路部211に向けて放射状に配置され、隣り合う線状ガイド215Lにおける相互の間隔が流入口14から熱交換流路部211に向かうにつれ広くなっている。
【0077】
ここで、微細な流路を有する積層型マイクロ流路熱交換器では、熱交換器内での流体の圧力損失を低減するため、流路の長さが短く形成される。このため所望の伝熱面積を確保するために、熱交換流路部211が方向21dの方向に拡大される。
【0078】
例えば、金属板25では、方向21dにおいて、熱交換流路部211の幅が広く、流入口14の幅または流出口15の幅が熱交換流路部211の幅よりも狭く形成されている。このような場合、流入口14から流入する流体の流れを熱交換流路部211の手前で広げるために、流入口14側の線状ガイド215Lの間隔を狭く設定し、数多くの線状ガイド215Lが配置される。
【0079】
しかし、非ガイド部分212nを持たない複数の線状ガイド215Lで分流部215Aが形成されると、流入口14から流入した流体が線状ガイド215Lに沿って熱交換流路部211にまで導かれるため、隣り合う線状ガイド215Lを乗り超えて流体が交じり合うことができない。
【0080】
また、非ガイド部分212nを持たない複数の線状ガイド215Lで分流部215Aが形成されると、熱交換流路部211の手前で方向21dの方向に流体を広げる都合上、流入口14近傍の線状ガイド215Lの間隔は狭くなって、複数の線状ガイド215Lのそれぞれの長さが長くなってしまう。これにより、流体の圧力損失が増大してしまう。流体の圧力損失は、線状ガイドの長さが長くなるほど大きくなる。
【0081】
このように、方向21dにおいて、流入口14の幅が狭く、熱交換流路部211の幅が広い金属板を用いた場合、線状ガイドの長さ、数、放射角などの機械的な制約によって、流入口14から流入した冷媒を適切に熱交換流路部211に分配できなくなる。
【0082】
これに対して、図5、6に示す金属板21を用いれば、複数の線状ガイド212Lが千鳥状に配置されていることから、方向21dにおいて隣り合う線状ガイド212L間を流れる流体が流れる途中で線状ガイド212Lに衝突する。これにより、分流部212Aでは、流体が流れる途中で方向21dにおいて分散し、流体が熱交換流路部211に適切に分配される。
【0083】
さらに、金属板21では、複数の線状ガイド212Lが千鳥状に配置されていることから、流体が流れる方向と交差する方向に隣り合う線状ガイド212Lの数が参考例に比べて少なくなっている。これにより、流入口14近傍の線状ガイド212Lの間隔がより広くなる。また、線状ガイド212Lは、ガイド列212c上で途切れ、破線状に配置されることから、一つのガイド列212c上の線状ガイド212Lの合計の長さが参考例に比べてより短くなる。これにより、金属板21では、流体の圧力損失の増加が抑えられる。
【0084】
また、分流部212Aには、非ガイド部分212nが形成されている。これにより、分流部212Aでは、流体が流れる途中、方向21dに隣り合う流体同士が非ガイド部分212nを介して互いに交じり合う。この結果、流路の断面積が等価的に広がって、流入口14で高圧であった流体が急減に熱交換流路部211に流入することが回避される。
【0085】
すなわち、分流部212Aは、流体の急激な圧力の変化(または、流速の変化)を緩和する圧力緩衝部(圧力調整部)として機能する。すなわち、流体は、流入口14で高圧であった圧力が徐々に低下しながら熱交換流路部211に流入する。合流部213Aでは、この現象と反対の現象が起きる。すなわち、熱交換流路部211で流入口14よりも低圧となった流体は、流出口15で急減に圧力が上昇することなく、徐々に圧力が高まりながら流出口15に流出される。
【0086】
また、分流部212Bでは、複数の柱状ガイド212Pが千鳥状に配置されている。狭い流入口14から流入した流体は球面状の波面を有する球面波として熱交換流路部211に向かって流れる。流入口14から分流部212Aに流入した流体は、分流部212Aの千鳥状に配列された複数の直線状ガイド212Lにより流れが矯正されて流れの幅が拡大し、波面の曲率が大きくなる。さらに分流部212Bでは、流体が複数の柱状ガイド212Pのそれぞれに衝突しながら狭い間隔で配置された複数の柱状ガイド212Pの間を流れ、流体の流れの幅がさらに広がることから、流体は、熱交換流路部211に近づくにつれ、波面が平面である平面波に近づいていく。
【0087】
平面波に近づいた流体は、熱交換流路部211の手前で、圧力、流速、流量が幅方向により均一な状態になっている。このような均一な状態の流体が熱交換流路部211に流入することにより、熱交換流路部211における死水域(流体が流れず滞留する領域)の発生が抑えられる。また熱交換流路部211に流入する位置での流体の位相が等しくなるため、その位置で流体の状態が一様となる。この結果、熱交換器1では、熱交換流路部211における伝熱量の偏りがなくなり、より熱交換部の能力を発揮させることができる。
【0088】
また、分流部212と同様の構造で形成された合流部213は、流れる流体に対して分流部212が与える作用と反対の作用を与える。つまり、熱交換流路部211から平面波の状態で流出する流体に対して、千鳥状に配置された複数の柱状ガイド213Bを備える合流部213Bは流体の流れの幅が徐々に狭まって合流部213Aに流入し、合流部213Aに流入した流体は千鳥状に配置された複数の線状ガイド213Lにより流体の流れの幅が矯正されて縮小し、流出口15に流出する。このように合流部213に流入した流体は、平面波から球面波に近づくとともに徐々に圧力が高まり、熱交換流路部211から流出口15に流出する流体の圧力損失を低減し滑らかに流すことができる。
【0089】
なお、以上の実施形態では金属板21と金属板22の双方に分流部、熱交換流路部、合流部を設けたものとして説明したが、熱交換器本体2を形成する積層体10が有する伝熱板(熱交換板)である複数の金属板20(金属板21、金属板22)のうちの少なくとも一つが、少なくとも分流部(特に第1分流部)と熱交換流路部を備えていればよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本実施形態は、積層型マイクロチャンネル熱交換器だけでなく、プレート型熱交換器にも適用できる。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0091】
1…熱交換器
2…熱交換器本体
5、8…流入管
6、7…流出管
10…積層体
10s…積層方向
10w…側面
11、12、20、21、22、25…金属板
14、16…流入口
15、17…流出口
18、19…開口
21a、21b、21c、22a、22b、22c…凹部
21f、22f…流れ方向
21d、22d、22e…方向
211、221…熱交換流路部
212L、213L、222L、223L、215L…線状ガイド
211S、221S…流路壁
212、212A、212B、222、222A、222B、215A…分流部

212P、213P、222P、223P…柱状ガイド
212c、212d…ガイド列
212n…非ガイド部分
213、213A、213B、223、223A、223B…合流部
S1、S2、S3、S4、S5、S6…主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8