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特開2022-128050カラスミの製造方法、カラスミの輸送方法及びカラスミ製造用海苔食材
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  • 特開-カラスミの製造方法、カラスミの輸送方法及びカラスミ製造用海苔食材 図1
  • 特開-カラスミの製造方法、カラスミの輸送方法及びカラスミ製造用海苔食材 図2
  • 特開-カラスミの製造方法、カラスミの輸送方法及びカラスミ製造用海苔食材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128050
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】カラスミの製造方法、カラスミの輸送方法及びカラスミ製造用海苔食材
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/30 20160101AFI20220825BHJP
   A23L 17/60 20160101ALI20220825BHJP
   A23B 5/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A23L17/30
A23L17/60 103A
A23B5/00 Z
A23B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026362
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】521078595
【氏名又は名称】田島 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】田島 和彦
【テーマコード(参考)】
4B019
4B042
【Fターム(参考)】
4B019LC02
4B019LE04
4B019LK12
4B019LP03
4B019LP07
4B019LP17
4B042AC09
4B042AD39
4B042AE10
4B042AH09
4B042AK11
4B042AP01
4B042AP07
4B042AP17
4B042AP22
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】容易な方法でカラスミに独自の特徴を与えることができるカラスミの製造方法を提供する。
【解決手段】魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミを、海苔食材の中に投入して所定の保存期間の間保存する熟成工程を備える。海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉が好ましく、さらに、保存期間は1週間~3週間、熟成工程を0~10℃の雰囲気温度で行い、海苔食材の中に投入するカラスミに含まれる水分が70~90%が好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミを、海苔食材の中に投入して所定の保存期間の間保存する熟成工程を備える、カラスミの製造方法。
【請求項2】
前記海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉である、請求項1に記載のカラスミの製造方法。
【請求項3】
前記保存期間は、1週間~3週間である、請求項1または2に記載のカラスミの製造方法。
【請求項4】
前記海苔食材の中に投入するカラスミに含まれる水分が、70~90%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のカラスミの製造方法。
【請求項5】
前記熟成工程を、0~10℃の雰囲気温度で行う、請求項1~4のいずれか1項に記載のカラスミの製造方法。
【請求項6】
海苔食材を充填した輸送容器の中にカラスミを収容して輸送する、カラスミの輸送方法。
【請求項7】
前記海苔食材は、乾燥した海苔を粉末状または粒状に加工した青粉である、請求項6に記載のカラスミの輸送方法。
【請求項8】
魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミが投入される、カラスミ製造用海苔食材。
【請求項9】
乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉である、請求項8に記載のカラスミ製造用海苔食材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラスミの製造方法、カラスミの輸送方法及びカラスミ製造用海苔食材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボラの卵巣を塩干した海産加工食品であるカラスミは、加工に熟練を要するとともに、工程数が多く長期間の製造日数が掛かることもあって、高級珍味として珍重されている。カラスミの食感や風味、見た目の風合い等は、製造者によって多少の差異はあるものの、基本的な工程はほぼ同じであることから大きな違いを感じることは少ない。ここで、特許文献1には、乾燥工程を経て製造されたカラスミを、複数の調味料や酒類等を水とともに調合した漬け込み液に漬け込むことにより、本来の形や味を損なうことなく、柔らかくしっとりとしたなめらかな食感を備えたカラスミが得られるカラスミの加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-14911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食品が備える通常の形や味を備えながら、さらに独自の特徴を併せ持つことは、その食品の商品価値が高まり、製造者や販売者にとっては有益である。ところで、上記のカラスミの食感に特性を持たせる加工方法は、複数の調味料を用いる必要がある点や、それら複数の調味料を所定の混合比率で調製する必要があることなどから、煩雑であるという不都合な面がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、容易な方法でカラスミに独自の特徴を与えることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のカラスミの製造方法は、魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミを、海苔食材の中に投入して所定の保存期間の間保存する熟成工程を備える。
【0007】
(2)上記(1)において、前記海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉であることが好ましい。
【0008】
(3)上記(1)または(2)において、前記保存期間は、1週間~3週間であることが好ましい。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、前記海苔食材の中に投入するカラスミに含まれる水分が、70~90%であることが好ましい。
【0010】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、前記熟成工程を、5°~20°の雰囲気温度で行うことが好ましい。
【0011】
(6)本発明のカラスミの輸送方法は、輸送容器の中に充填した海苔食材の中にカラスミを収容し、前記輸送容器ごと輸送する。
【0012】
(7)上記(6)において、前記海苔食材は、乾燥した海苔を粉末状または粒状に加工した青粉であることが好ましい。
【0013】
(8)本発明のカラスミ製造用海苔食材は、魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミが投入されるものである。
【0014】
(9)上記(8)のカラスミ製造用海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容易な方法でカラスミに独自の特徴を与えることができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るカラスミの製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係るカラスミの製造方法において、風干しによる乾燥工程の後にカラスミを青粉の中に投入した状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るカラスミの輸送方法を示す図であって、輸送容器の中にカラスミを収容した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係るカラスミの製造工程を示している。
図1に示すように、本実施形態では、はじめに材料となる適宜な数の魚卵巣を準備する(ステップS1)。魚卵巣としては新鮮な生の状態の魚の卵巣である。材料の魚の種類は任意であるが、ボラが代表的である。材料の魚としてはこの他に、サワラ、ブリ、サバ、タラ、マグロ等が挙げられる。
【0019】
魚卵巣に対する加工作業のはじめとして、臭みの元となる血抜きを行う(ステップS2)。血抜きは、例えば魚卵巣の血管に針を刺して流出させる作業をできるだけ行った後、魚卵巣を氷水にさらし、残りの血を全て抜き取る。
【0020】
次いで、血抜きした魚卵巣を大量の塩の中に投入して塩漬けする(ステップS3)。塩漬けは、適宜な容器に入れた塩の中に魚卵巣を漬けた状態を1週間程度続け、その期間においては、例えば1日おきに、塩分を含むことによって魚卵巣から排出した水分を容器から捨てて再び魚卵巣を塩の中に投入する作業を繰り返す。
【0021】
次いで、塩漬けの工程を経た魚卵巣の塩抜きを行う(ステップS4)。塩抜きは、魚卵巣の表面に付着する塩分を水で洗い流してから、大量の水の中に魚卵巣を漬けて、塩分を水中で抜く。水中で塩抜きを行うにあたっては、2~3時間ごとに水を入れ替えることを繰り返し行い、このような水の入れ替えを、例えば5日間程度にわたって行う。塩抜きにより、塩漬け工程を経て硬くなった魚卵巣に水分が与えられるため、魚卵巣は柔らかくなっていく。硬い部分である芯が1/3程度残る状態となったら、魚卵巣を水の中から取り出して塩抜き工程を終える。
【0022】
次いで、塩抜きした魚卵巣を日本酒に漬け込む酒漬け工程を行う(ステップS5)。日本酒に漬け込まれる魚卵巣は、若干塩抜きされるとともに柔らかくなる。塩抜き工程を経た段階で残っていた硬い部分である芯を、この酒漬けの工程でほぼなくすようにする。日本酒としては、アルコール度数が一般的な13~14%度程度のものが用いられる。なお、酒漬け工程で用いる酒としては主に日本酒が好適であるが、焼酎等の他の種類の酒を代用してもよい。
【0023】
次いで、焼酎漬け工程を経た魚卵巣に風を当てて乾燥させる乾燥工程を行う(ステップS6)。乾燥工程は、魚卵巣をネットの上に並べ、風通しのよい場所に設置して行う。乾燥工程では、魚卵巣の表面に水分や油分が滲出してくるので、それら水分や油分を適宜にふき取りながら行う。また、水分や油分をふき取った後、表面にブランデー等の酒を塗布する。乾燥工程は、魚卵巣の水分が70%~90%、好ましくは80%程度になるまで行い、期間としては例えば2~3週間程度である。乾燥工程を経て、魚卵巣はカラスミに加工されたものとなる。
【0024】
次いで、乾燥工程を経て得られたカラスミを、本発明における海苔食材及びカラスミ製造用海苔食材としての青粉の中に投入して所定の保存期間の間保存する熟成工程を行う(ステップS7)。図2はその状態、すなわち、保存容器20の中に充填された青粉30の中に、複数のカラスミ10が投入されている状態を示している。
【0025】
複数のカラスミ10は、保存容器20の底面に敷き詰められた青粉30の上に載置される。青粉30は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工したものである。青粉30は複数のカラスミ10に被さって表面を覆った状態となることが好ましい。青粉30は、カラスミ10の表面の全面を覆ってもよく、表面の一部が露出する状態であってもよい。保存容器20を不図示の蓋で密閉し、青粉30の中にカラスミ10を投入した状態を保持する。このようにして熟成工程を行うにあたり、保存容器20を冷蔵庫に保存して0~10℃程度の低温雰囲気で熟成させることが好ましい。この熟成工程は、例えば1週間~3週間程度行うものとし、2週間程度が好ましい。
【0026】
熟成工程を経たカラスミ10は、食品として食される。
本実施形態の製造方法によって製造されたカラスミ10は、粉末状または粒状の青粉30の中に長期間収容されて熟成される。これにより、製造されたカラスミ10を食すると、青粉30の香りや味わいを感じることができる。したがって本実施形態の製造方法によれば、容易な方法でカラスミ10に海苔風味といった独自の特徴を与えることができる。
【0027】
ところで、上述したようにして製造されたカラスミ10は、カラスミ10の製造者から、カラスミ10を販売する販売店やカラスミ10を提供する飲食店等に輸送される場合がある。カラスミ10の輸送は、上述した熟成工程で行ったように、輸送中において青粉20の中に投入した状態で行われると好ましい。
【0028】
カラスミ10を輸送するにあたっては、本実施形態では図3に示すように、輸送容器40の中に充填した青粉30の中に複数のカラスミ10を収容し、輸送容器40ごと冷蔵して輸送する。輸送容器40は、上方に開口する箱状の容器本体40aと、容器本体40aの開口を密閉可能な蓋体40bとを有する密閉容器である。容器本体40aの中に青粉30が充填され、その青粉30の中に複数のカラスミ10が収容される。蓋体40bで容器本体40aを密閉した輸送容器40を例えばトラック等の低温輸送室内に積載して、カラスミ10を輸送容器40により輸送する。
【0029】
このように青粉10の中に収容した状態で輸送することにより、カラスミ10は輸送中に青粉30の風味が付与されながら熟成され、効率よくカラスミ10を製造することができる。
【0030】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係るカラスミの製造方法は、魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミ10を、海苔食材としての青粉30の中に投入して所定の保存期間の間保存する熟成工程を備える。
【0031】
これにより、容易、かつコストの抑制が図られながら、カラスミ10に海苔風味といった独自の特徴を与えることができたり、レア感を味の特徴として加えることができたりする。
【0032】
(2)本実施形態に係るカラスミの製造方法において、海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉30であることが好ましい。
【0033】
これにより、カラスミ10を海苔食材の中に収容しやすく、かつカラスミ10の表面に海苔食材を付着させやすい。
【0034】
(3)本実施形態に係るカラスミの製造方法において、熟成工程での上記保存期間は、1週間~3週間であることが好ましい。
【0035】
これにより、青粉30の風味を十分にカラスミ10に付与することができる。
【0036】
(4)本実施形態に係るカラスミの製造方法において、青粉30の中に投入するカラスミ10に含まれる水分は70~90%であることが好ましい。
【0037】
これにより、カラスミ10に青粉30の風味が付与されやすい。また、適度な水分を有することにより、もっちりとした、あるいはしっとりとしたカラスミ特有の食感を感じながら食することができる。
【0038】
(5)本実施形態に係るカラスミの製造方法においては、上記熟成工程を、0~10℃の雰囲気温度で行うことが好ましい。
【0039】
これにより、高温による傷みを生じさせることなく、カラスミ10を安全に熟成させることができる。
【0040】
(6)本実施形態に係るカラスミの輸送方法は、海苔食材としての青粉30を充填した輸送容器40の中にカラスミ10を収容して輸送する。
【0041】
これにより、カラスミ10は輸送中に青粉30の風味が付与されながら熟成され、効率よくカラスミ10を製造することができる。
【0042】
(7)本実施形態に係るカラスミの輸送方法においては、海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉30であることが好ましい。
【0043】
これにより、カラスミ10を海苔食材の中に収容しやすく、かつカラスミ10の表面に海苔食材を付着させやすい。
【0044】
(8)本実施形態に係るカラスミ製造用海苔食材としての青粉30は、魚卵巣に所定の処理を施し、乾燥工程を経て得たカラスミ10が投入されるものである。
【0045】
これにより、容易、かつコストの抑制が図られながら、カラスミ10に海苔風味といった独自の特徴を与えることができる。
【0046】
(9)本実施形態に係るカラスミ製造用海苔食材は、乾燥した海苔を粉状または粒状に加工した青粉30である。
【0047】
これにより、カラスミ10を海苔食材の中に収容しやすく、かつカラスミ10の表面に海苔食材を付着させやすい。
【符号の説明】
【0048】
10 カラスミ
30 青粉(海苔食材、カラスミ製造用海苔食材)
40 輸送容器
図1
図2
図3