(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128077
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】錠剤、錠剤の製造方法、及び錠剤の製造方法に用いられるフィラメント
(51)【国際特許分類】
A61K 9/20 20060101AFI20220825BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220825BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220825BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220825BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20220825BHJP
A61K 31/522 20060101ALN20220825BHJP
A61K 31/554 20060101ALN20220825BHJP
A61K 31/549 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/32
A61K9/22
A61K31/522
A61K31/554
A61K31/549
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026396
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】濱野 彩香
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA39
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC17
4C076DD26
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD67
4C076EE06
4C076EE13
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE48
4C076EE50
4C076FF31
4C076FF33
4C076FF36
4C086CB07
4C086CB29
4C086CB30
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA12
4C086ZA39
4C086ZA59
4C086ZA83
(57)【要約】
【課題】特徴的な形状によって有効成分の溶出速度を最適に制御することを可能とし、且つ錠剤の強度を高くすることができる錠剤を提供する。
【解決手段】少なくとも有効成分と水溶性の熱可塑性高分子とを含む材料で形成された錠剤10であって、錠剤10の全体は、互いに重なり合う複数の層によって構成され、前記層のそれぞれは、前記材料で形成された一定の幅及び厚さを有する線状又は面状の要素11、12によって構成され、異なる前記層を構成する要素11、12どうしが、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有効成分と水溶性の熱可塑性高分子とを含む材料で形成された錠剤であって、
前記錠剤の全体は、互いに重なり合う複数の層によって構成され、
前記層のそれぞれは、前記材料で形成された一定の幅及び厚さを有する線状及び/又は面状の要素によって構成され、
異なる前記層を構成する前記要素どうしが、前記錠剤の厚さ方向に連続する複数の空間を形成することを特徴とする錠剤。
【請求項2】
異なる前記層を構成する前記要素どうしが、互いに交差することによって、前記複数の空間を形成する請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記層を構成する前記面状の要素の幅が、前記線状の要素の幅の倍数である請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
少なくとも1つの前記層が、前記線状の要素と前記面状の要素とで構成された請求項1~3のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項5】
前記錠剤の輪郭形状が、略円形、略楕円形、略長楕円形又は多角形のいずれかである請求項1~4のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項6】
前記水溶性の熱可塑性高分子が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール-グラフトコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニル酢酸-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE及びポリ(N-ビニルピロリドン/酢酸ビニル)からなる群から選択される1種以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項7】
前記錠剤を形成する前記材料が、疎水性の流動化剤をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項8】
前記疎水性の流動化剤が、疎水性フュームドシリカ、タルク、リン酸三カルシウムから選ばれる1種以上である請求項7に記載の錠剤。
【請求項9】
前記錠剤を形成する前記材料が、水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールをさらに含む請求項1~8のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項10】
前記水溶性の糖及び/又は前記水溶性の糖アルコールが、ソルビトール、キシリトール、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロースからなる群から選択される1種以上である請求項9に記載の錠剤。
【請求項11】
3Dプリンタを用いた熱溶解積層法によって、請求項1~10のいずれか1項に記載の錠剤を製造するための方法であって、
前記材料からなるフィラメントを熱によって溶解させる工程と、
溶解された前記材料をノズルからテーブルの上へ押し出す工程と、
前記ノズル又は前記テーブルを動かし、前記材料からなる線状及び/又は面状の前記要素をプリントすることにより、前記テーブルの上に第1の前記層を構成する工程と、
前記ノズル又は前記テーブルを動かし、前記材料からなる線状及び/又は面状の前記要素をプリントすることにより、第1の前記層の上に第2の前記層を構成する工程と、
を含むことを特徴する錠剤の製造方法。
【請求項12】
少なくとも有効成分と水溶性の熱可塑性高分子とを含む材料で形成されたことを特徴とする請求項11に記載の錠剤の製造方法に用いられるフィラメント。
【請求項13】
前記材料が、疎水性の流動化剤をさらに含む請求項12に記載のフィラメント。
【請求項14】
前記材料が、水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールをさらに含む請求項13に記載のフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤、錠剤の製造方法、及び錠剤の製造方法に用いられるフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタは、3D-CAD(Conputer Aided Design)や3DCG(Conputer Graphics)などのデータに基づいて、現実の三次元造形物を作る装置である。3Dプリンタの造形方式として、例えば、以下の6つの方式が知られている。
・熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling, FDM)
・結合剤噴射法(Binder Jetting, BJ)
・材料噴射法(Material Jetting)
・粉末焼結積層造形法(Selective Laser Sintering, SLS)
・ステレオリソグラフィー法(Stereo Lithography Apparatus)
・バイオプリンティング法(Bio Printing)
近年、医薬品の錠剤を3Dプリンタによって製造する技術が注目されている。
【0003】
例えば、国際公開第2017/175792号には、熱溶解積層法(FDM)によって、有効成分の溶出速度がより速くなる三次元造形物を製造することが開示されている。この三次元造形物は、有効成分と、水溶性の熱可塑性高分子と、水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールと、可塑剤成分とを含有する。三次元造形物は、従来から知られている円柱形状及び楕円形状としてもよいが、1つ以上のリング形状とすることが好ましい。1つ以上のリング形状とすることによって、三次元造形物の溶出速度がより速くなる。
【0004】
また例えば、Fabrizio Finaらの論文“3D printing of drug-loaded gyroid lattices using selective laser sintering”には、粉末焼結積層造形法(SLS)によって、ジャイロイド格子構造の錠剤を製造することが開示されている。SLSによって製造されるジャイロイド格子構造の錠剤は、有効成分の速い溶出特性を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fabrizio Fina, Alvaro Goyanes, Christine M. Madla, Atheer Awad, Sarah J. Trenfield, Jia Min Kuek, Pavanesh Patel, Simon Gaisford, Abdul W. Basit “3D printing of drug-loaded gyroid lattices using selective laser sintering”International Journal of Pharmaceutics Volume 547, Issues 1-2, 25 August 2018, Pages 44-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
国際公開第2017/175792号の三次元構造物は、2つの特徴によって有効成分の溶出速度を速くしている。第1の特徴は、三次元構造物の材料の組成である。水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールの含有量を増やすことによって、有効成分の溶出速度がより速くなる。第2の特徴は、三次元構造物の形状である。三次元造形物の溶出速度は、1つ以上のリング形状とすることによって速くなる。リング形状の数を増やすことによって、有効成分の溶出速度がより速くなる。
【0008】
しかし、国際公開第2017/175792号の三次元構造物は、有効成分の溶出速度に関する2つの問題を有する。第1の問題は、三次元構造物の材料の組成が限定されることである。有効成分の溶出速度を速くするためには、三次元構造物の材料に糖又は糖アルコールを含有しなければならない。さらに、溶出速度をより速くするためには、糖又は糖アルコールの含有量を増やさなければならない。第2の問題は、リング形状の数によって、有効成分の溶出速度を最適に制御できないことである。三次元構造物の材料の組成を一定にした場合に、リング形状の数を増減させるだけでは、有効成分の溶出速度を大きく変化させたり、小さく変化させたりすることができない。
【0009】
一方、“3D printing of drug-loaded gyroid lattices using selective laser sintering” のジャイロイド格子構造の錠剤は、衝撃や摩擦に対する強度が低いという問題がある。ジャイロイド格子構造の錠剤は、粉末を焼結させることによって作られている。このため、ジャイロイド格子構造の錠剤は、15N程度の強度しかなく、衝撃や摩擦に対して非常に脆い。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、特徴的な形状によって有効成分の溶出速度を最適に制御することを可能とし、且つ錠剤の強度を高くすることができる錠剤、錠剤の製造方法、及び錠剤の製造方法に用いられるフィラメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明の錠剤は、少なくとも有効成分と水溶性の熱可塑性高分子とを含む材料で形成された錠剤であって、前記錠剤の全体は、互いに重なり合う複数の層によって構成され、前記層のそれぞれは、前記材料で形成された一定の幅及び厚さを有する線状及び/又は面状の要素によって構成され、異なる前記層を構成する前記要素どうしが、前記錠剤の厚さ方向に連続する複数の空間を形成する。
【0012】
(2)好ましくは、上記(1)の錠剤において、異なる前記層を構成する前記要素どうしが、互いに交差することによって、前記複数の空間を形成する。
【0013】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)の錠剤において、前記層を構成する前記面状の要素の幅が、前記線状の要素の幅の倍数である。
【0014】
(4)好ましくは、上記(1)~(3)のいずれかの錠剤において、少なくとも1つの前記層が、前記線状の要素と前記面状の要素とで構成される。
【0015】
(5)好ましくは、上記(1)~(4)のいずれかの錠剤において、前記錠剤の輪郭形状が、略円形、略楕円形、略長楕円形又は多角形のいずれかである。
【0016】
(6)好ましくは、上記(1)~(5)のいずれかの錠剤において、前記水溶性の熱可塑性高分子が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール-グラフトコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニル酢酸-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE及びポリ(N-ビニルピロリドン/酢酸ビニル)からなる群から選択される1種以上である。
【0017】
(7)好ましくは、上記(1)~(6)のいずれかの錠剤において、前記錠剤を形成する前記材料が、疎水性の流動化剤をさらに含む。
【0018】
(8)好ましくは、上記(7)の錠剤において、前記疎水性の流動化剤が、疎水性フュームドシリカ、タルク、リン酸三カルシウムから選ばれる1種以上である。
【0019】
(9)好ましくは、上記(1)~(8)のいずれかの錠剤において、前記錠剤を形成する前記材料が、水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールをさらに含む。
【0020】
(10)好ましくは、上記(9)の錠剤において、前記水溶性の糖及び/又は前記水溶性の糖アルコールが、ソルビトール、キシリトール、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロースからなる群から選択される1種以上である。
【0021】
(11)上記目的を達成するために、本発明の錠剤の製造方法は、3Dプリンタを用いた熱溶解積層法によって、上記(1)~(10)のいずれかの錠剤を製造するための方法であって、前記材料からなるフィラメントを熱によって溶解させる工程と、溶解された前記材料をノズルからテーブルの上へ押し出す工程と、前記ノズル又は前記テーブルを動かし、前記材料からなる線状及び/又は面状の前記要素をプリントすることにより、前記テーブルの上に第1の前記層を構成する工程と、前記ノズル又は前記テーブルを動かし、前記材料からなる線状及び/又は面状の前記要素をプリントすることにより、第1の前記層の上に第2の前記層を構成する工程と、を含む。
【0022】
(12)上記目的を達成するために、本発明のフィラメントは、上記(11)の錠剤の製造方法に用いられるフィラメントであって、少なくとも有効成分と水溶性の熱可塑性高分子とを含む材料で形成される。
【0023】
(13)好ましくは、上記(12)のフィラメントにおいて、前記材料が、疎水性の流動化剤をさらに含む。
(14)好ましくは、上記(13)のフィラメントにおいて、前記材料が、水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールをさらに含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の錠剤は、錠剤の比表面積を自由に変化させることができる。これにより、有効成分の溶出速度を最適に制御することが可能となる。すなわち、本発明の錠剤は、線状及び/又は面状の要素によって構成された複数の層からなる。そして、異なる層を構成する要素どうしは、錠剤の厚さ方向に連続する複数の空間を形成する。つまり、各要素は、多孔質の物体のように、錠剤の外側と内側とに表面を形成する。したがって、各要素の幅を変えたり、各要素のパターンを変えたりすることによって、錠剤の体積当たりの表面積(以下「比表面積」という)を大きくしたり、小さくしたり、自由に調整することができる。錠剤の比表面積を自由に調整することにより、有効成分の溶出速度を最適に制御することが可能となる。
【0025】
また、線状及び/又は面状の要素は、錠剤の骨格となる構造体である。異なる層を構成する要素どうしが互いに重なり合うことによって、錠剤の強度は高くなる。さらに、異なる層を構成する要素どうしが互いに交差する構成とした場合、本発明の錠剤の強度はより高くなる。これに加えて、本発明の錠剤を、3Dプリンタを用いた熱溶解積層法によって製造した場合、錠剤の強度はより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の錠剤の製造方法の実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、前記錠剤の製造方法に用いられる3Dプリンタの構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、前記3Dプリンタによって3層の錠剤が製造されるまでの各工程を示すものある。
図3Aは、第1層のプリントパターンを示す平面図である。
図3Bは、第2層のプリントパターンを示す平面図である。
図3Cは、第3層のプリントパターンを示す平面図である。
図3Dは、前記3層の錠剤を示す平面図である。
図3Eは、前記3層の錠剤を示す側面図である。
図3Fは、前記3層の錠剤を示す正面図である。
【
図4】
図4Aは、本発明の第1実施形態の錠剤を示す斜視図である。
図4Bは、本発明の第2実施形態の錠剤を示す斜視図である。
図4Cは、本発明の第3実施形態の錠剤を示す斜視図である。
【
図9】
図9Aは、本発明の第8実施形態の錠剤を示す斜視図である。
図9Bは、本発明の第9実施形態の錠剤を示す斜視図である。
【
図17】
図17Aは、本発明の第17実施形態の錠剤を示す斜視図である。
図17Bは、第17実施形態の錠剤を示す平面図である。
図17Cは、本発明の第18実施形態の錠剤を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の第1~第4実施例の試料として用いた錠剤を示す斜視図である。
図18Aは、実施例に係る特徴的な形状の錠剤を示す。
図18Bは、第1の比較例に係る円柱形状の錠剤を示す。
図18Cは、第2の比較例に係るリング形状の錠剤を示す。
【
図19】
図19は、本発明の第1実施例の溶出試験の結果を示すグラフである。
図19Aは、実施例1-1及び比較例1-1の試験結果を示す。
図19Bは、実施例1-2及び比較例1-2の試験結果を示す。
図19Cは、実施例1-3及び比較例1-3の試験結果を示す。
【
図20】
図20は、本発明の第1実施例の溶出試験の結果を示すグラフである。
図20Aは、実施例1-4及び比較例1-4の試験結果を示す。
図20Bは、実施例1-5及び比較例1-5の試験結果を示す。
【
図21】
図21は、本発明の第2実施例の溶出試験の結果を示すグラフである。
図21Aは、実施例2-1及び比較例2-1の試験結果を示す。
図21Bは、実施例2-2及び比較例2-2の試験結果を示す。
図21Cは、実施例2-3及び比較例2-3の試験結果を示す。
【
図22】
図22は、本発明の第1及び第3実施例の溶出試験の結果を比較するためのグラフであり、実施例1-2、1-3、1-4、3-1、3-2、3-3の試験結果を示す。
【
図23】
図23は、本発明の第4実施例の溶出試験の結果を示すグラフである。
図23Aは、実施例4-1及び比較例4-1の試験結果を示す。
図23Bは、実施例4-2及び比較例4-2の試験結果を示す。
【
図24】
図24は、本発明の第5実施例の試料として用いた錠剤を示す斜視図である。
図24Aは、実施例5-1の特徴的な形状の錠剤を示す。
図24Bは、実施例5-2の特徴的な形状の錠剤を示す。
図24Cは、実施例5-3の特徴的な形状の錠剤を示す。
図24Dは、比較例5-1に係る円柱形状の錠剤を示す。
図24Eは、比較例5-2に係るリング形状の錠剤を示す。
図24Fは、比較例5-3に係る円筒形状の錠剤を示す。
【
図25】
図25は、本発明の第5実施例の溶出試験の結果を示すグラフである。
図25Aは、実施例5-1、5-2、5-3及び比較例5-1の試験結果を示す。
図25Bは、比較例5-1、5-2、5-3の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の錠剤、錠剤の製造方法、及び錠剤の製造方法に用いられるフィラメントのそれぞれの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言は、いかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。
【0028】
1.錠剤の製造方法
図1に示されるように、本実施形態の錠剤10の材料1は、混合機2及び押出機3によってフィラメント4に加工される。このフィラメント4が、3Dプリンタ5を用いた熱溶解積層法(FDM)によって錠剤10に加工される。
【0029】
1-1.材料
材料1は、少なくとも有効成分及び水溶性の熱可塑性高分子を含む。有効成分とは、医薬品又は医薬部外品に含まれる物質のうち生理活性を示す1種類以上の成分をいい、特に限定されるものではない。
【0030】
有効成分は、好ましくは薬物である。薬物とは、疾患の治療、予防、診断に用いられる、経口投与可能な成分であれば特に限定されない。本発明の錠剤は高齢者、小児又は嚥下困難な患者に投与される薬物が特に適しており、例えば、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、睡眠鎮静剤、抗うつ薬、中枢神経作用薬、統合失調症治療剤、抗てんかん剤、抗けいれん剤、抗痙縮剤、抗パーキンソン病症候群治療剤、糖尿病治療剤、肝臓疾患用剤、排尿障害改善薬、胃腸薬、抗潰瘍剤、制酸剤、脳代謝改善薬、鎮咳去痰薬、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、強心薬、抗不整脈薬、抗心不全薬、抗心房細動薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、血圧降下薬、抗動脈硬化薬、臓器保護薬、血管収縮薬、利胆薬、抗高脂血症薬、冠血管拡張薬、抹消血管拡張薬、抗プラスミン剤、抗凝固薬、抗血小板剤、抗生物質、抗菌剤、抗インフルエンザ薬、肝機能改善剤、痛風治療薬、アルツハイマー型認知症の治療薬及びがん性疼痛の治療薬などが挙げられる。
【0031】
解熱鎮痛消炎薬としては、例えば、ロキソプロフェンナトリウム水和物、N-メチルスコポラミンメチル硫酸塩、塩酸ペンタゾシン、メフェナム酸、エピリゾールなどが挙げられる。抗不安薬としては、例えば、クロキサゾラム、オキサゾラム、チミペロン、ニトラゼパム、エチゾラムが挙げられ、睡眠鎮静剤としては、ハロキサゾラムなどが挙げられる。抗うつ薬としては、ロフェプラミン塩酸塩、ミアンセリン塩酸塩、炭酸リチウムが挙げられる。統合失調症治療剤としてはオキシペリチンが挙げられる。抗てんかん剤としては、バルプロ酸ナトリウム、フェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。抗けいれん剤としては、フェノバルビタールなどが挙げられる、抗痙縮剤としては、バクロフェンなどが挙げられる。抗パーキンソン病症候群治療剤としては、レボドパ、トリヘキシフェニジル塩酸塩などが挙げられる。糖尿病治療剤としては、メトホルミン、ピオグリタゾン塩酸塩、テネリグリプチン臭化水素酸塩、シタグリプチンリン酸塩水和物、ビルダグリプチン、アログリプチン安息香酸塩、リナグリプチン、アナグリプチンなどが挙げられる。肝臓疾患用剤としては、マロチラート、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンなどが挙げられる。排尿障害改善薬としては、塩酸タムスロシン、ナフトピジルなどが挙げられる。抗潰瘍剤としては、ファモチジン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウムなどが挙げられる。制酸剤としては、アルギン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。脳代謝改善薬としては、ガンマ-アミノ酪酸などが挙げられる。鎮咳去痰薬としては、カルボシステインなどが挙げられる。抗アレルギー薬としては、セチリジン塩酸塩などが挙げられる。気管支拡張薬としては、テオフィリンなどが挙げられる。強心薬としては、ジゴキシンなどが挙げられる。抗不整脈薬としては、プロカインアミド塩酸塩、ベプチジル塩酸塩水和物などが挙げられる。利尿薬としては、ヒドロクロロチアジド、フロセミド、ブメタニドなどが挙げられる。抗心不全薬としては、カルベジロール、ビソプロロールフマル酸塩などが挙げられる。血圧降下薬としては、カルベジロール、ビソプロロールフマル酸塩、メトプロロール酒石酸塩、レセルピン、テモカプリル塩酸塩、オルメサルタンメドキソミル、カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、ロサルタンカリウム、アジルサルタン、アリスキレンフマル酸塩、アゼルニジピン、アムロジピンベシレート、ブドララジンなどが挙げられる。血管収縮薬としては、塩酸ミドドリンなどが挙げられる。利胆薬としては、ウルソデオキシコール酸などが挙げられる。抗高脂血症薬としては、プラバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンなどが挙げられる。冠血管拡張薬としては、ジピリダモール、ニコランジルなどが挙げられる。抹消血管拡張薬としては、イソクスプリン塩酸塩などが挙げられる。抗プラスミン剤としては、トラネキサム酸などが挙げられる。抗凝固薬としては、エドキサバントシル酸塩水和物などが挙げられる。抗血小板剤としては、チクロピジン塩酸塩、シロスタゾールなどが挙げられる。抗菌剤としては、ナリジクス、レボフロキサシン水和物、シタフロキサシン水和物、オフロキサシンなどが挙げられ、抗インフルエンザ薬としては、オセルタミビルが挙げられ、抗生物質としては、セフロキシムアキセチル、クロラムフェニコール、セフポドキシムプロキセチルなどが挙げられる。痛風治療薬としては、アロプリノール、フェブキソスタットなどが挙げられる。アルツハイマー型認知症治療薬としては、メマンチン、ドネペジルなどが挙げられる。がん性疼痛の治療薬としてはヒドロモルフォンなどが挙げられる。
【0032】
中でも、解熱鎮痛消炎薬として用いられるロキソプロフェンナトリウム水和物、抗心不全薬又は血圧降下薬として用いられるカルベジロール、ビソプロロールフマル酸塩、血圧降下薬として用いられるオルメサルタンメドキソミル、アジルサルタン、抗高脂血症薬として用いられるプラバスタチンナトリウム、抗菌剤として用いられるレボフロキサシン水和物、シタフロキサシン水和物、抗凝固薬として用いられるエドキサバントシル酸塩水和物、アルツハイマー型認知症の治療薬として用いられるメマンチン又はその薬理上許容される塩(特にメマンチン塩酸塩)、ドネペジル又はその薬理上許容される塩(特にドネペジル塩酸塩)や、がん性疼痛の治療薬として用いられるヒドロモルフォンに適する。
【0033】
薬物は、目的とする疾患の治療、予防、診断の効果を発揮させるために、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0034】
熱可塑性高分子は、フィラメント4及び錠剤10の形を作るための成分である。熱可塑性高分子は、加熱することによって自由な変形が可能となり、冷却することによって変形がしにくくなる性質を有する。熱可塑性高分子は、水に対する有効成分の溶出性を良好にするために、水溶性のものに限定される。熱可塑性高分子は、身体に何ら作用しない成分であるが、例えば、有効成分の吸収を支援する成分であってもよい。水溶性の熱可塑性高分子は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール-グラフトコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニル酢酸-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE及びポリ(N-ビニルピロリドン/酢酸ビニル)からなる群から選択される1種以上である。
【0035】
材料1は、疎水性の流動化剤をさらに含んでもよい。材料1は、粉末の状態で混合機2によって混合され、押出機3によって溶解混練される。流動化剤は、粉末の材料1が混合器2や押出機3の中で閉塞しないように、混合される粉末に均一性を与える。疎水性の流動化剤は、例えば、疎水性フュームドシリカ、タルク、リン酸三カルシウムから選ばれる1種以上であり、好ましくは、疎水性フュームドシリカである。
【0036】
材料1は、水溶性の糖及び/又は水溶性の糖アルコールをさらに含んでもよい。糖及び糖アルコールは、材料1に可塑性を与え、溶解させた材料1の押し出し及び成形を良好にする。糖及び糖アルコールは、水に対する有効成分の溶出性を良好にするために、水溶性のものに限定される。水溶性の糖及び糖アルコールは、例えば、ソルビトール、キシリトール、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロースからなる群から選択される1種以上である。
【0037】
1-2.フィラメントの製造
上述した材料1は、粉末の状態で混合機2に供給される。混合器2は、粉末の材料1を均一に混合する。均一に混合された粉末の材料1は、押出機3に供給される。押出機3は、粉末の材料1を加熱溶解させ、フィラメント4に成形する。フィラメント4は、図示しないワインダーにセットされたスプールに巻き付けられる。なお、フィラメント4は、スプールに巻き付けずに、そのままの状態で3Dプリンタ5に供給してもよい。
【0038】
1-3.錠剤の製造
フィラメント4が巻き付けられたスプールは、3Dプリンタ5にセットされる。
図2に示されるように、3Dプリンタ5は、一対のプーリ5a、ノズル5b及びテーブル5cを備える。一対のプーリ5aは、
図2中の矢印の方向に回転することによって、フィラメント4をノズル5b側へ送り出す。フィラメント4は、ノズル5b側で加熱されることにより溶解される。溶解された材料は、ノズル5bからテーブル5cの方向に押し出される。3Dプリンタ5は、ノズル5b又はテーブル5cのいずれか一方を移動させながら、溶解された材料1をノズル5bから押し出すことによって、テーブル5cの上に錠剤10の三次元構造をプリントする。
【0039】
例えば、3層の錠剤10の製造工程を
図3に示す。まず、
図3Aに示されるように、錠剤10の第1層を構成するパターン(線状の要素11)が、テーブル5c上にプリントされる。次に、
図3Bに示されるように、錠剤10の第2層を構成するパターンが、第1層の上にプリントされる。その後、
図3Cに示されるように、錠剤10の第3層を構成するパターンが、第2層の上にプリントされる。この結果、
図3D~
図3Fに示されるような3層の錠剤10が製造される。
【0040】
ここで、ノズル5bは交換可能であり、例えば、口径0.1mm~1.75mmのいずれかのノズル5bを選択的に用いることができる。錠剤10の各層を構成する線状の要素11の幅及び厚さは、ノズル5bの口径によって決まる。ノズル5bの口径は、好ましくは、0.1mm~1.0mmとし、より好ましくは、0.2mm~1.0mmとする。
【0041】
2.錠剤
図3D~
図3Fに示されるように、本実施形態の錠剤10は、異なる層を構成する要素11どうしが、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13を形成することを特徴とする。各層を構成する線状の要素11は、多孔質の物体のように、錠剤10の外側と内側とに表面積を形成する。したがって、各層を構成する線状の要素11の幅を変えたり、パターンを変えたりすることによって、錠剤10の比表面積を大きくしたり、小さくしたり、自由に調整することができる。錠剤10の比表面積を自由に調整することにより、有効成分の溶出速度を最適に制御することが可能となる。例えば、錠剤10の比表面積を大きくすることによって、有効成分の溶出速度は速くなる。逆に、錠剤10の比表面積を小さくすることによって、有効成分の溶出速度は遅くなる。
【0042】
2-1.第1実施形態の錠剤
図4Aは、本発明の第1実施形態の錠剤10を示す。第1実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う複数の層によって構成される。各層は、連続する1つの線状の要素11で構成される。各層を構成する線状の要素11は、ノズル5bから押し出された1つの連続する材料1でプリントされており、ノズル5bの口径と略同一の幅と高さとを有する。線状の要素11は、錠剤10の略正方形の輪郭の対向する2辺と平行な直線部分が、対向する他の2辺に沿って交互にターンするパターンを描く。線状の要素11の直線部分と直線部分との間には、線状の要素11の幅と略同一の幅の間隔が設けられている。各層を構成する線状の要素11のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に90°シフトしている(
図3A~
図3Cを参照)。これにより、互いに重なり合う層を構成する線状の要素11どうしが90°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。
【0043】
2-2.第2実施形態の錠剤
図4Bは、本発明の第2実施形態の錠剤10を示す。第2実施形態の錠剤10は、各層を構成する線状の要素11の幅が、
図4Aに示される線状の要素11の幅の約2倍となっている。また、
図4Bに示される各層を構成する線状の要素11は、
図4Aに示される線状の要素11と比較して、直線部分の数が少なく、直線部分と直線部分との間隔が広い。すなわち、
図4Bに示される各層を構成する線状の要素11のパターンは、
図4Aに示される線状の要素11のパターンよりも単純化されている。このため、
図4Bに示される錠剤10は、
図4Aに示される錠剤10と比較して、少ない数の大きな空間13が形成される。
【0044】
ここで、
図4Bに示されるように、線状の要素11の幅を大きくするには、2つの方法がある。第1の方法は、線状の要素11をプリントするためのノズル5bの口径を大きくすることである。この第1の方法により、線状の要素11の幅と高さとが大きくなる。第2の方法は、ノズル5bから押し出された材料1を同一平面状で往復させることによって、線状の要素11の幅を広く描く。この第2の方法により、線状の要素11の幅は倍々に大きくなる。この場合、線状の要素11の高さは変わらない。
【0045】
2-3.第3実施形態の錠剤
図4Cは、本発明の第3実施形態の錠剤10を示す。第3実施形態の錠剤10は、各層が面状の要素12によって構成されている。
図4Cに示される面状の要素12の幅は、
図4Bに示される線状の要素11の幅の約2倍となっている。また、
図4Cに示される面状の要素12は、
図4Bに示される線状の要素11と比較して、直線部分の数が少なく、直線部分と直線部分との間隔が広い。すなわち、
図4Cに示される各層を構成する面状の要素12のパターンは、
図4Bに示される線状の要素11のパターンよりもさらに単純化されている。このため、
図4Cに示される錠剤10は、
図4Bに示される錠剤10と比較して、さらに少ない数のさらに大きな空間13が形成される。
【0046】
2-4.第4実施形態の錠剤
図5A~
図5Cは、本発明の第4実施形態の錠剤10を示す。第4実施形態の錠剤10の各層は、一定の間隔をおいて平行に並ぶ複数の線状の要素11で構成される。1つの線状の要素11は、ノズル5bの口径と略同一の幅と高さとを有する。隣り合う2つの線状の要素11どうしの間隔の幅は、線状の要素11の幅と略同一である。各層を構成する複数の線状の要素11のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に90°シフトしている。これにより、互いに重なり合う層を構成する線状の要素11どうしが90°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。
【0047】
2-5.第5実施形態の錠剤
図6A及び
図6Bは、本発明の第5実施形態の錠剤10を示す。第5実施形態の錠剤10は、
図5A及び
図5Bに示される第4実施形態の錠剤10の輪郭形状を略円形にした構成となっている。輪郭形状が略円形であること以外、第5実施形態の錠剤10は、第4実施形態の錠剤10と同じ構成である。
【0048】
このように、錠剤10の輪郭形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略円形、略楕円形、略長楕円形又は多角形などのいずれであってもよい。錠剤10の輪郭形状によって、錠剤10の外側と内側とに形成される表面積が変化する。すなわち、錠剤10の輪郭形状は、有効成分の溶出速度を制御する1つの要素になる。
【0049】
2-6.第6実施形態の錠剤
図7A及び
図7Bは、本発明の第6実施形態の錠剤10を示す。第6実施形態の錠剤10の各層は、連続する1つの線状の要素11で構成される。各層を構成する線状の要素11は、ノズル5bから押し出された1つの連続する材料1でプリントされており、ノズル5bの口径と略同一の幅と高さとを有する。線状の要素11は、錠剤10の略正方形の輪郭の対向する2辺と平行な直線部分が、対向する他の2辺に沿って交互にターンするパターンを描く。線状の要素11の直線部分と直線部分との間には、線状の要素11の幅の約2倍の幅の間隔が設けられている。各層を構成する線状の要素11のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に45°シフトしている。これにより、互いに重なり合う層を構成する線状の要素11どうしが45°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。
【0050】
このように、線状の要素11どうしの交差角度は、特に限定されるものではなく、任意の角度に設定することができる。線状の要素11どうしの交差角度によって、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13の形状が変化する。この結果、複数の空間13へ流入する水の流量や流速が変化し、有効成分の溶出速度に影響を与える。すなわち、線状の要素11どうしの交差角度は、有効成分の溶出速度を制御する1つの要素になる。
【0051】
2-7.第7実施形態の錠剤
図8A及び
図8Bは、本発明の第7実施形態の錠剤10を示す。第7実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う6つの層によって構成される。6つの層のそれぞれは、
図7A及び
図7Bに示される第6実施形態の錠剤10と同一パターンの線状の要素11によって構成される。
図8A及び
図8B中の下から数えて、第1層、第3層及び第5層を構成する線状の要素11は、水平方向にシフトしていない。一方、第2層、第4層及び第6層を構成する線状の要素11は、それぞれ水平方向に15°、30°及び45°シフトしている。これにより、互いに重なり合う層を構成する線状の要素11どうしが15°、30°及び45°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。
【0052】
このように、線状の要素11どうしの交差角度は、1つに限定されるものではなく、互いに重なり合う層どうしの間で、線状の要素11どうしの交差角度を相違させることができる。これにより、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13の形状を変化させ、有効成分の溶出速度を制御することが可能である。
【0053】
2-8.第8実施形態の錠剤
図9Aは、本発明の第8実施形態の錠剤10を示す。第8実施形態の錠剤10は、
図7A及び
図7Bに示される第6実施形態の錠剤10の輪郭形状を略円形にした構成となっている。輪郭形状が略円形であること以外、第8実施形態の錠剤10は、第6実施形態の錠剤10と同じ構成である。
【0054】
2-9.第9実施形態の錠剤
図9Bは、本発明の第9実施形態の錠剤10を示す。第9実施形態の錠剤10は、
図8A及び
図8Bに示される第7実施形態の錠剤10の輪郭形状を略円形にした構成となっている。輪郭形状が略円形であること以外、第9実施形態の錠剤10は、第7実施形態の錠剤10と同じ構成である。
【0055】
2-10.第10実施形態の錠剤
図10A~
図10Cは、本発明の第10実施形態の錠剤10を示す。第10実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う4つの層によって構成される。
図10Aに示されるように、各層は、錠剤10の略正方形の輪郭の1/2の領域に配置された5本の長い線状の要素11aと、残りの1/2の領域に配置された10本の短い線状の要素11bとで構成される。長い線状の要素11aと短い線状の要素11bとは、水平方向に90°シフトしている。
【0056】
図10B及び
図10Cに示されるように、各層を構成する線状の要素11a、11bのパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に90°シフトしている。具体的に、
図10C中の下から数えて、第2層及び第4層のパターンは、第1層及び第3層のパターンに対して水平方向に90°シフトしている。
図10Bに示されるように、錠剤10の略正方形の輪郭の上半分右側の1/4の領域、及び下半分左側の1/4の領域においては、線状の要素11a、11bが90°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。一方、錠剤10の略正方形の輪郭の上半分左側の1/4の領域、及び下半分右側の1/4の領域においては、線状の要素11a、11bが交差しないで重なり合い、第1層から第4層まで連続する5つの平行な壁を形成する。この5つの平行な壁の間には、それぞれ空間13が形成される。
【0057】
上述した第1~第9実施形態では、1つの層を構成する線状の要素11が、錠剤10の輪郭内で1つのパターンを描く構成となっている。しかし、この構成に限定されるものではない。本実施形態の線状の要素11a、11bのように、錠剤10の輪郭内で2つ以上のパターンを描く構成であってもよい。また、上述した第1~第9実施形態では、各層を構成する線状の要素11どうしが全体的に交差する構成となっている。しかし、この構成に限定されるものではない。本実施形態の線状の要素11a、11bのように、部分的に交差し、且つ部分的に交差しない構成であってもよい。本実施形態のような線状の要素11a、11bのパターンを採用することにより、錠剤10の外側と内側とに形成される表面積を変化させ、有効成分の溶出速度を制御することが可能である。
【0058】
2-11.第11実施形態の錠剤
図11A~
図11Cは、本発明の第11実施形態の錠剤10を示す。第11実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う6つの層によって構成される。各層は、複数の短い線状の要素11bで構成される。
図11Aに示されるように、1つの層を構成する線状の要素11bは、錠剤10の略正方形の輪郭の1/4の領域ごとに、水平方向に90°シフトして平行に並べられ、2つのパターンを描く。
【0059】
図11B及び
図11Cに示されるように、各層を構成する線状の要素11bのパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に90°シフトしている。具体的に、
図11C中の下から数えて、第2層、第4層及び第6層のパターンは、第1層、第3層及び第4層のパターンに対して水平方向に90°シフトしている。
図11Bに示されるように、互いに重なり合う層を構成する線状の要素11bどうしが90°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。
【0060】
上述した第10実施形態の錠剤10は、各層を構成する線状の要素11a、11bが部分的に交差し、且つ部分的に交差しない構成となっている。これに対し、本実施形態の錠剤10は、各層を構成する線状の要素11bどうしが全体的に交差する構成となっている。本実施形態のような線状の要素11bのパターンを採用することにより、錠剤10の外側と内側とに形成される表面積を変化させ、有効成分の溶出速度を制御することが可能である。
【0061】
2-12.第12実施形態の錠剤
図12A~
図12Cは、本発明の第12実施形態の錠剤10を示す。第12実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う15の層によって構成される。15の層には、線状の要素11によって構成された11の層と、面状の要素12によって構成された4つの層とが含まれる。具体的に、
図12C中の下から数えて、第3層、第6層、第9層及び第12層は、1つの面状の要素12によって構成される。これら以外の11の層は、連続する1つの線状の要素11によって構成される。
図12B及び
図12Cに示されるように、面状の要素12は、錠剤10の略正方形の輪郭の約1/2の大きさであり、図中の右側と左側とに交互に配置される。面状の要素12は、
図2に示されるノズル5bから押し出された材料1を同一平面状で往復させることによって形成される。
【0062】
錠剤10を構成する一部の層を面状の要素12とすることにより、錠剤10の内側の表面積を大きくすることができる。このような面状の要素12によって、有効成分の溶出速度が速くなる。
【0063】
2-13.第13実施形態の錠剤
図13A及び
図13Bは、本発明の第13実施形態の錠剤10を示す。第13実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う複数の層によって構成される。各層は、連続する1つの線状の要素11と、4つの面状の要素12とで構成される。4つの面状の要素12は、錠剤10の略正方形の輪郭の四隅に配置される。各層を構成する線状の要素11及び面状の要素12のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に90°シフトしている。これにより、互いに重なり合う層を構成する線状の要素11どうしが90°に交差し、錠剤10の厚さ方向に連続する複数の空間13が形成される。一方、各層の四隅に配置された面状の要素12は、錠剤10の厚さ方向に連続する4本の四角柱を形成する。
【0064】
これまでに述べた線状の要素11、11a、11bは、錠剤10の骨格となる構造体である。異なる層を構成する線状の要素11、11a、11bが互いに重なり合うことによって、錠剤10の強度は高くなる。また、異なる層を構成する線状の要素11、11a、11bが互いに交差する構成とした場合、錠剤10の強度はより高くなる。さらに、本実施形態では、各層の四隅に配置された面状の要素12が、錠剤10の厚さ方向に連続する4本の四角柱を形成する。これにより、錠剤10の強度はさらに高くなる。
【0065】
2-14.第14実施形態の錠剤
図14A及び
図14Bは、本発明の第14実施形態の錠剤10を示す。第14実施形態の錠剤10は、錠剤10の中央に大きな開口(空間)14を形成した構成となっている。本実施形態の錠剤10のその他の構成は、上述した第13実施形態の錠剤と同様である。
【0066】
錠剤10の中央に大きな開口14を形成することにより、錠剤10の内側の表面積を大きく変化させるができる。これにより、有効成分の溶出速度を制御することが可能である。また、錠剤10の中央に大きな開口14を形成した場合でも、錠剤10の強度は、複数の面状の要素12からなる4本の四角柱によって十分に維持される。
【0067】
2-15.第15実施形態の錠剤
図15A及び
図15Bは、本発明の第15実施形態の錠剤10を示す。第15実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う7つの層によって構成される。各層を構成する線状の要素11は、複数の三角形の集合体からなるパターンを描く。具体的に、1つの層を構成する線状の要素11は、6角形の外枠部分と、6角形の3つの対角線に相当する放射状の内枠部分とからなる。各層を構成する線状の要素11のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に30°シフトしている。
【0068】
三角形の構造体は、四角形の構造体よりも外力に対して変形しにくい。各層を構成する線状の要素11のパターンを複数の三角形の集合体とすることにより、錠剤10の強度が高くなる。この結果、線状の要素11を単純な枠状のパターンにした場合でも、十分な強度が得られる。
【0069】
2-16.第16実施形態の錠剤
図16A及び
図16Bは、本発明の第16実施形態の錠剤10を示す。第16実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う6つの層によって構成される。上述した第15実施形態と同様に、各層を構成する線状の要素11もまた、複数の三角形の集合体からなるパターンを描く。具体的に、1つの層を構成する線状の要素11は、大きな三角形の外枠部分と、小さな三角形の内枠部分で構成される。内枠部分は、外枠部分に対して180°シフトしている。内枠部分の3つの頂点は、外枠部分の3つの辺に内接する。各層を構成する線状の要素11のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に180°シフトしている。このような構成からなる本実施形態の錠剤10もまた、上述した第16実施形態の錠剤10と同様の効果を奏する。
【0070】
2-17.第17実施形態の錠剤
図17A及び
図17Bは、本発明の第17実施形態の錠剤10を示す。第17実施形態の錠剤10は、互いに重なり合う4つの層によって構成される。上述した第15及び第16実施形態と同様に、各層を構成する線状の要素11もまた、複数の三角形の集合体からなるパターンを描く。具体的に、1つの層を構成する線状の要素11は、錠剤の輪郭を形成する大きな正方形の内側を4×4の小さな正方形に区画し、小さな正方形のそれぞれの内側に1つの対角線を対称的に設けることにより、複数の三角形の集合体を形成する。各層を構成する線状の要素11のパターンは同一であるが、互いに重なり合う層どうしが水平方向に僅かにシフトしている。このような構成からなる本実施形態の錠剤10もまた、上述した第16実施形態の錠剤10と同様の効果を奏する。
【0071】
2-18.第18実施形態の錠剤
図17Cは、本発明の第18実施形態の錠剤10を示す。第18実施形態の錠剤10は、
図17A及び
図17Bに示される第17実施形態の錠剤10の輪郭形状を略円形にした構成となっている。輪郭形状が略円形であること以外、第18実施形態の錠剤10は、第17実施形態の錠剤10と同じ構成である。
【0072】
3.実施例
以下、本発明の錠剤の実施例について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言は、いかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。
【0073】
3-1.第1実施例
<形状及び熱可塑性高分子の成分が異なる錠剤>
第1実施例では、形状及び熱可塑性高分子の成分が異なる15種類の錠剤を製造し、各錠剤に含まれる有効成分の溶出率(%)を比較した。15種類の錠剤の成分(重量%)及び平均重量(mg)は、下記の表1に示される。
【0074】
【0075】
表1中の7種類の成分として、下記1)~7)の製品を用いた。また、15種類の錠剤を製造するために、下記8)の加熱溶融混練機及び下記9)の3Dプリンタを用いた。
【0076】
1)テオフィリン:富士フィルム和光純薬株式会社の製品名「テオフィリン」
2)疎水性フュームドシリカ:Evonik Resource Efficiency GmbHの製品名「AEROSIL R972」
3)ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達株式会社の製品名「HPC-L」
4)ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達株式会社の製品名「HPC-SSL」
5)ヒドロキシプロピルメチルセルロース:The Dow Chemical Companyの製品名「Affinisol HPMC HME 15 LV」
6)ポリエチレングリコール-ポリビニルアルコール-グラフトコポリマー:BASF SEの製品名「Kollicoat IR」
7)ポリビニルカプロラクタム-ポリビニル酢酸-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー:製品名:BASF SEの製品名「Soluplus」
8)加熱溶融混練機:Three-Tec GmbHの製品名「Parallel Twin-Screw Extruder ZE 9」
9)3Dプリンタ:武藤工業株式会社の製品名「Value3D MagiX MF-2200D」
【0077】
上記1)~7)の7種類の成分のうち、テオフィリンは有効成分であり、疎水性フュームドシリカは流動化剤であり、その他の5種類は全て熱可塑性高分子である。表1に示されるように、テオフィリン、疎水性フュームドシリカ、及びいずれか1つの熱可塑性高分子を配合することによって、熱可塑性高分子の成分が異なる5種類の材料を製造した。
【0078】
上記8)の加熱溶融混練機を用いて、5種類の材料のそれぞれをフィラメントに加工した。その後、上記9)の3Dプリンタを用いて、5種類のフィラメントのそれぞれを
図18A~
図18Cに示される3種類の形状の錠剤10、110、210に加工した。これにより、形状及び熱可塑性高分子の成分が異なる15種類の錠剤を得た。
【0079】
図18Aは、実施例に用いた特徴的な形状の錠剤10を示す。
図18Aに示される錠剤10の形状は、
図4Aに示される第1実施形態の錠剤10の形状と同一である。表1の実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5の配合に従って、熱可塑性高分子の成分が異なる5種類の錠剤10を3個ずつ製造し、合計で15個の錠剤10を得た。
【0080】
図18Bは、第1の比較例に用いた円柱形状の錠剤110を示す。表1の比較例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5の配合に従って、熱可塑性高分子の成分が異なる5種類の錠剤110を3個ずつ製造し、合計で15個の錠剤110を得た。
【0081】
図18Cは、第2の比較例に用いたリング形状の錠剤210を示す。表1の比較例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5の配合に従って、熱可塑性高分子の成分が異なる5種類の錠剤210を3個ずつ製造し、合計で15個の錠剤210を得た。
【0082】
図18Aに示される実施例の錠剤10は、体積あたりの比表面積が6.5(mm
2/mm
3)であった。
図18Bに示される第1の比較例の錠剤110は、体積あたりの比表面積が1.2(mm
2/mm
3)であった。
図18Cに示される第2の比較例の錠剤210は、体積あたりの比表面積が2.4(mm
2/mm
3)であった。
【0083】
表1の実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5の錠剤10、比較例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5の錠剤110、210を試料として、第十七改正日本薬局方の「6.10 溶出試験法」に規定された「パドル法」に従い、各試料の溶出試験を行った。溶出試験に用いた試験液は、日本薬局方に準拠した「溶出試験第1液」を900ml使用した。パドルの回転数は50rpmとした。パドルを回転させる前に、溶出試験第1液を入れた容器の底に試料を沈めた。試験中の容器内の温度が37±0.5℃となるように管理した。パドルを回転させた後、紫外可視吸光光度法によって、試料から溶出される有効成分の溶出率(%)を測定した。
【0084】
具体的には、上述した15個の錠剤10を試料とし、実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5のそれぞれについて3回の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5のそれぞれの試験結果とした。第1及び第2の比較例の錠剤110、210についても、同様の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、比較例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5のそれぞれの試験結果とした。
【0085】
第1実施例の溶出試験の結果は、
図19A、
図19B、
図19C、
図20A及び
図20Bの各グラフに示される。グラフの横軸は、試験開始後の時間(hr)を示す。グラフの縦軸は、有効成分の溶出率(%)を示す。各グラフに示されるように、実施例の錠剤10は、第1及び第2の比較例の錠剤110、210と比較して、試験開始直後から急速に溶出率(%)が増加している。つまり、実施例の錠剤10は、
図18Aに示される特徴的な形状であるが故に、第1及び第2の比較例の錠剤110、210よりも比表面積が大きく、速やかな溶出性を示す。
【0086】
3-2.第2実施例
<糖アルコールを配合した錠剤>
糖アルコールは、
図1に示されるフィラメント4の製造工程において、材料1に可塑性を与え、溶解させた材料1の押し出し及び成形を良好にするためのものである。第2実施例では、糖アルコールが本発明の錠剤の溶出性に与える影響を考察する。
【0087】
第2実施例では、
図18A~
図18Cに示される錠剤10、110、210の成分に糖アルコールを配合して溶出試験を行い、有効成分の溶出率(%)を比較した。溶出試験の試料とした9種類の錠剤10、110、210の成分(重量%)及び平均重量(mg)は、下記の表2に示される。
【0088】
【0089】
表2中の6種類の成分として、下記1)~6)の製品を用いた。また、
図18A~
図18Cに示される錠剤10、110、210を製造するために用いた加熱溶融混練機及び3Dプリンタは、上述した第1実施例と同じである。
【0090】
1)テオフィリン:富士フィルム和光純薬株式会社の製品名「テオフィリン」
2)疎水性フュームドシリカ:Evonik Resource Efficiency GmbHの製品名「AEROSIL R972」
3)ソルビトール:Merck KGaAの製品名「Parteck SI 150」
4)ポリビニルアルコール:Merck KGaAの製品名「Parteck MXP」
5)アミノアルキルメタクリレートコポリマーE:Evonik Industries AGの製品名「EUDRAGIT EPO」
6)ポリ(N-ビニルピロリドン/酢酸ビニル):Ashland Inc.の製品名「Plasdon S-630」
【0091】
上記1)~6)の6種類の成分のうち、テオフィリンは有効成分であり、疎水性フュームドシリカは流動化剤であり、ソルビトールは糖アルコールであり、その他の3種類は全て熱可塑性高分子である。表2に示されるように、テオフィリン、疎水性フュームドシリカ、ソルビトール、及びいずれか1つの熱可塑性高分子を配合することによって、熱可塑性高分子の成分が異なる3種類の材料を製造した。
【0092】
第1実施例と同じ加熱溶融混練機を用いて、3種類の材料のそれぞれをフィラメントに加工した。その後、第1実施例と同じ3Dプリンタを用いて、3種類のフィラメントのそれぞれを
図18A~
図18Cに示される3種類の形状の錠剤10、110、210に加工した。
【0093】
第1実施例と同様に、表2の実施例2-1、2-2、2-3の錠剤10を3個ずつ製造し、合計で9個の錠剤10を得た。表2の比較例2-1、2-2、2-3の錠剤110を3個ずつ製造し、合計で9個の錠剤110を得た。表2の比較例2-1、2-2、2-3の錠剤210を3個ずつ製造し、合計で9個の錠剤210を得た。
【0094】
表2の実施例2-1、2-2、2-3の錠剤10、比較例2-1、2-2、2-3の錠剤110、210を試料として、第十七改正日本薬局方の「6.10 溶出試験法」に規定された「パドル法」に従い、各試料の溶出試験を行った。溶出試験に用いた試験液は、日本薬局方に準拠した「溶出試験第1液」を900ml使用した。パドルの回転数は50rpmとした。パドルを回転させる前に、溶出試験第1液を入れた容器の底に試料を沈めた。試験中の容器内の温度が37±0.5℃となるように管理した。パドルを回転させた後、紫外可視吸光光度法によって、試料から溶出される有効成分の溶出率(%)を測定した。
【0095】
第1実施例と同様に、上述した9個の錠剤10を試料とし、実施例2-1、2-2、2-3のそれぞれについて3回の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、実施例2-1、2-2、2-3のそれぞれの試験結果とした。第1及び第2の比較例の錠剤110、210についても、同様の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、比較例2-1、2-2、2-3のそれぞれの試験結果とした。
【0096】
第2実施例の溶出試験の結果は、
図21A、
図21B及び
図21Cの各グラフに示される。グラフの横軸は、試験開始後の時間(hr)を示す。グラフの縦軸は、有効成分の溶出率(%)を示す。各グラフに示されるように、成分に糖アルコールを配合した場合でも、第1実施例と同様の試験結果が得られた。すなわち、実施例の錠剤10は、第1及び第2の比較例の錠剤110、210と比較して、試験開始直後から急速に溶出率(%)が増加している。つまり、実施例の錠剤10は、
図18Aに示される特徴的な形状であるが故に、第1及び第2の比較例の錠剤110、210よりも比表面積が大きく、速やかな溶出性を示す。この結果から、糖アルコールの有無は、
図18Aに示される錠剤10の速やかな溶出性を低下させるものではないことが理解できる。
【0097】
3-3.第3実施例
<流動化剤を配合しない錠剤>
流動化剤は、
図1に示されるフィラメント4の製造工程において、粉末の材料1に均一性を与えるためのものである。第3実施例では、流動化剤が本発明の錠剤の溶出性に与える影響を考察する。
【0098】
第3実施例では、有効成分及び熱可塑性高分子の2種類の成分だけで、
図18Aに示される特徴的な形状の錠剤10を製造した。つまり、第3実施例の錠剤10は、第1及び第2実施例の錠剤10のような流動化剤(疎水性フュームドシリカ)を含まない。第3実施例の錠剤10の溶出試験を行い、流動化剤を含む第1実施例の錠剤10と有効成分の溶出率(%)を比較した。第3実施例の3種類の錠剤10の成分(重量%)及び平均重量(mg)は、下記の表3に示される。
【0099】
【0100】
表3中の4種類の成分は、いずれも第1実施例と同じである。また、
図18Aに示される錠剤10を製造するために用いた加熱溶融混練機及び3Dプリンタも、第1実施例と同じである。表3中の4種類の成分のうち、テオフィリンは有効成分であり、その他の3種類は全て熱可塑性高分子である。テオフィリン、及びいずれか1つの熱可塑性高分子を配合することによって、熱可塑性高分子の成分が異なる3種類の材料を製造した。
【0101】
第1実施例と同じ加熱溶融混練機を用いて、3種類の材料のそれぞれをフィラメントに加工した。その後、第1実施例と同じ3Dプリンタを用いて、3種類のフィラメントのそれぞれを
図18Aに示される特徴的な形状の錠剤10に加工した。
【0102】
第1実施例と同様に、表3の実施例3-1、3-2、3-3の錠剤10を3個ずつ製造し、合計で9個の錠剤10を得た。
【0103】
表3の実施例3-1、3-2、3-3の錠剤10を試料として、第十七改正日本薬局方の「6.10 溶出試験法」に規定された「パドル法」に従い、各試料の溶出試験を行った。溶出試験に用いた試験液は、日本薬局方に準拠した「溶出試験第1液」を900ml使用した。パドルの回転数は50rpmとした。パドルを回転させる前に、溶出試験第1液を入れた容器の底に試料を沈めた。試験中の容器内の温度が37±0.5℃となるように管理した。パドルを回転させた後、紫外可視吸光光度法によって、試料から溶出される有効成分の溶出率(%)を測定した。
【0104】
第1実施例と同様に、上述した9個の錠剤10を試料とし、実施例3-1、3-2、3-3のそれぞれについて3回の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、実施例3-1、3-2、3-3のそれぞれの試験結果とした。これらの試験結果を、表1の実施例1-2、1-3、1-4のそれぞれの試験結果と比較した。
【0105】
流動化剤を含む実施例1-2、1-3、1-4、及び流動化剤を含まない実施例3-1、3-2、3-3のそれぞれの試験結果は、
図22のグラフに示される。グラフの横軸は、試験開始後の時間(hr)を示す。グラフの縦軸は、有効成分の溶出率(%)を示す。
図22のグラフに示されるように、第1実施例と第3実施例との試験結果の間に大きな差異はない。この結果から、流動化剤の有無は、
図18Aに示される錠剤10の速やかな溶出性を低下させるものではないことが理解できる。
【0106】
3-4.第4実施例
<形状及び有効成分が異なる錠剤>
第4実施例では、第1~第3実施例のテオフィリンと異なる有効成分を配合して、
図18A及び
図18Bに示される錠剤10、110を製造し、これらの錠剤10、110の有効成分の溶出率(%)を比較した。第4実施例の4種類の錠剤10、110の成分(重量%)及び平均重量(mg)は、下記の表4に示される。
【0107】
【0108】
表4中の4種類の成分のうち、ジルチアゼム塩酸塩及びヒドロクロロチアジドが有効成分であり、下記1)、2)の製品を用いた。流動化剤としての疎水性フュームドシリカ、及び熱可塑性高分子としてのヒドロキシプロピルセルロースは、いずれも第1実施例と同じである。また、
図18A及び
図18Bに示される錠剤10、110を製造するために用いた加熱溶融混練機及び3Dプリンタも、第1実施例と同じである。
【0109】
1)ジルチアゼム塩酸塩:富士フィルム和光純薬株式会社の製品名「ジルチアゼム塩酸塩」
2)ヒドロクロロチアジド:東京化成工業株式会社の製品名「Hydrochlorothiazide」
【0110】
表4に示されるように、ジルチアゼム塩酸塩及びヒドロクロロチアジドのいずれか1つと、疎水性フュームドシリカ、及びヒドロキシプロピルセルロースを配合することによって、有効成分が異なる2種類の材料を製造した。
【0111】
第1実施例と同じ加熱溶融混練機を用いて、2種類の材料のそれぞれをフィラメントに加工した。その後、第1実施例と同じ3Dプリンタを用いて、2種類のフィラメントのそれぞれを
図18A及び
図18Bに示される錠剤10、110に加工した。
【0112】
第1実施例と同様に、表4の実施例4-1、4-2の錠剤10を3個ずつ製造し、合計で6個の錠剤10を得た。表4の比較例4-1、4-2の錠剤110を3個ずつ製造し、合計で6個の錠剤110を得た。
【0113】
表4の実施例4-1、4-2の錠剤10、比較例4-1、4-2の錠剤110を試料として、第十七改正日本薬局方の「6.10 溶出試験法」に規定された「パドル法」に従い、各試料の溶出試験を行った。溶出試験に用いた試験液は、日本薬局方に準拠した「溶出試験第1液」を900ml使用した。パドルの回転数は50rpmとした。パドルを回転させる前に、溶出試験第1液を入れた容器の底に試料を沈めた。試験中の容器内の温度が37±0.5℃となるように管理した。パドルを回転させた後、紫外可視吸光光度法によって、試料から溶出される有効成分の溶出率(%)を測定した。
【0114】
第1実施例と同様に、上述した6個の錠剤10を試料とし、実施例4-1、4-2のそれぞれについて3回の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、実施例4-1、4-2のそれぞれの試験結果とした。比較例の錠剤110についても、同様の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、比較例4-1、4-2のそれぞれの試験結果とした。
【0115】
第4実施例の溶出試験の結果は、
図23A及び
図23Bの各グラフに示される。グラフの横軸は、試験開始後の時間(hr)を示す。グラフの縦軸は、有効成分の溶出率(%)を示す。各グラフに示されるように、有効成分が異なる場合でも、第1実施例と同様の試験結果が得られた。すなわち、実施例の錠剤10は、比較例の錠剤110と比較して、試験開始直後から急速に溶出率(%)が増加している。つまり、実施例の錠剤10は、
図18Aに示される特徴的な形状であるが故に、比較例の錠剤110よりも比表面積が大きく、速やかな溶出性を示す。
【0116】
3-5.第5実施例
<形状が異なる錠剤>
第5実施例では、
図24A~
図24Fに示される形状の異なる6つの錠剤10A、10B、10C、110、210、310を製造し、これらの錠剤10A、10B、10C、110、210、310の有効成分の溶出率(%)を比較した。
【0117】
図24Aは、実施例5-1の特徴的な形状の錠剤10Aを示す。実施例5-1の錠剤10Aは、幅の小さい線状の要素11で構成され、錠剤10Aの厚さ方向に連続する多数の微細な空間13を有する。錠剤10Aは、他の錠剤10B、10C、110、210、310と比較して、最も複雑な形状であり、且つ1番目に大きな比表面積を有する。なお、錠剤10Aの形状は、
図4A及び
図18Aに示される錠剤10の形状と同一である。
【0118】
図24Bは、実施例5-2の特徴的な形状の錠剤10Bを示す。実施例5-2の錠剤10Bは、幅の大きい線状の要素11で構成され、錠剤10Bの厚さ方向に連続する複数の空間13を有する。錠剤10Bは、実施例5-1の錠剤10Aよりも単純な形状であり、2番目に大きな比表面積を有する。なお、錠剤10Bの形状は、
図4Bに示される第2実施形態の錠剤10の形状と同一である。
【0119】
図24Cは、実施例5-3の特徴的な形状の錠剤10Cを示す。実施例5-3の錠剤10Cは、面状の要素12で構成され、錠剤10Cの厚さ方向に連続する複数の空間13を有する。錠剤10Cは、実施例5-2の錠剤10Bよりもさらに単純な形状であり、4番目に大きな比表面積を有する。なお、錠剤10Cの形状は、
図4Cに示される第3実施形態の錠剤10の形状と同一である。
【0120】
図24Dは、比較例5-1の円柱形状の錠剤110Cを示す。錠剤110は、他の錠剤10A、10B、10C、210、310と比較して、6番目に大きな比表面積を有する。なお、錠剤110の形状は、
図18Bに示される第1の比較例の錠剤110の形状と同一である。
【0121】
図24Eは、比較例5-2のリング形状の錠剤210を示す。錠剤210は、他の錠剤10A、10B、10C、110、310と比較して、5番目に大きな比表面積を有する。なお、錠剤210の形状は、
図18Cに示される第2の比較例の錠剤210の形状と同一である。
【0122】
図24Fは、比較例5-3の円筒形状の錠剤310を示す。錠剤310は、他の錠剤10A、10B、10C、110、310と比較して、3番目に大きな比表面積を有する。
【0123】
第5実施例の6種類の錠剤10A、10B、10C、110、210、310の成分(重量%)、比表面積(mm2/mm3)及び平均重量(mg)は、下記の表5に示される。
【0124】
【0125】
表5中の3種類の成分であるテオフィリン、疎水性フュームドシリカ及びヒドロキシプロピルセルロースは、いずれも第1実施例と同じである。また、錠剤10A~10C、110、210、310を製造するために用いた加熱溶融混練機及び3Dプリンタも、第1実施例と同じである。
【0126】
表5に示されるように、テオフィリン、疎水性フュームドシリカ及びヒドロキシプロピルセルロースを配合することによって、1種類の材料を製造した。第1実施例と同じ加熱溶融混練機を用いて、1種類の材料をフィラメントに加工した。その後、第1実施例と同じ3Dプリンタを用いて、1種類のフィラメントを
図24A~
図24Fに示される錠剤10A、10B、10C、110、210、310に加工した。
【0127】
第1実施例と同様に、表5の実施例5-1、5-2、5-3の錠剤10A、10B、10Cを3個ずつ製造し、合計で9個の錠剤10A、10B、10Cを得た。表5の比較例5-1、5-2、5-3の錠剤110、210、310を3個ずつ製造し、合計で9個の錠剤110、210、310を得た。
【0128】
表5の実施例5-1、5-2、5-3の錠剤10A、10B、10C、比較例5-1、5-2、5-3の錠剤110、210、310を試料として、第十七改正日本薬局方の「6.10 溶出試験法」に規定された「パドル法」に従い、各試料の溶出試験を行った。溶出試験に用いた試験液は、日本薬局方に準拠した「溶出試験第1液」を900ml使用した。パドルの回転数は50rpmとした。パドルを回転させる前に、溶出試験第1液を入れた容器の底に試料を沈めた。試験中の容器内の温度が37±0.5℃となるように管理した。パドルを回転させた後、紫外可視吸光光度法によって、試料から溶出される有効成分の溶出率(%)を測定した。
【0129】
第1実施例と同様に、上述した9個の錠剤10A、10B、10Cを試料とし、実施例5-1、5-2、5-3のそれぞれについて3回の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、実施例5-1、5-2、5-3のそれぞれの試験結果とした。比較例の錠剤110、210、310についても、同様の溶出試験を行った。3回の溶出試験の測定値の平均値を算出し、比較例5-1、5-2、5-3のそれぞれの試験結果とした。
【0130】
第5実施例の溶出試験の結果は、
図25A及び
図25Bの各グラフに示される。グラフの横軸は、試験開始後の時間(hr)を示す。グラフの縦軸は、有効成分の溶出率(%)を示す。各グラフに示されるように、6種類の錠剤10A、10B、10C、110、210、310は、比表面積(mm
2/mm
3)が大きいほど、急速に溶出率(%)が増加している。
【0131】
ここで、比較例5-2のリング形状の錠剤210の重量(mg)をほとんど変化させずに比表面積を増加させるためには、錠剤210の高さを大きくする必要がある。例えば、
図24Eのリング形状の錠剤210の重量(mg)をほとんど変化させずに比表面積を増加させると、錠剤210は、
図24Fの円筒形状の錠剤310になる。錠剤210と錠剤310を比較すると明らかなように、錠剤210の比表面積を大きくすると、錠剤210の体積が大きくなるという問題がある。例えば、錠剤210が経口剤であるならば、錠剤210の体積が大きいほど、口からの摂取が困難になる。
【0132】
これに対し、実施例5-1、5-2、5-3の錠剤10A、10B、10Cは、体積を大きく変化させることなく、比表面積を大きくしたり、小さくしたり、自由に調整することができる。
図24A~
図24Cに示されるように、錠剤10A、10B、10Cは、線状又は面状の要素11、12によって構成された複数の層からなる。そして、異なる層を構成する要素11、12どうしは、錠剤10A、10B、10Cの厚さ方向に連続する複数の空間13を形成する。つまり、各要素11、12は、多孔質の物体のように、錠剤10A、10B、10Cの外側と内側とに表面積を形成する。したがって、各要素11、12の幅を変えたり、各要素11、12のパターンを変えたりすることによって、錠剤10A、10B、10Cの体積を大きく変化させることなく、比表面積を大きくしたり、小さくしたり、自由に調整することができる。錠剤の比表面積を自由に調整することにより、有効成分の溶出速度を最適に制御することが可能となる。
【0133】
例えば、
図24Eのリング形状の錠剤210の外径が12mm、内径が10mm、高さが5mmであると仮定すると、錠剤210の比表面積は、2.4mm
2/mm
3である。錠剤210の重量(mg)をほとんど変化させずに比表面積を4.2mm
2/mm
3に増加させると仮定すると、錠剤210の外径は11mm、内径は10mm、高さは10mmになる。つまり、錠剤210の外径はほとんど変わらず、高さが2倍に大きくなる。
【0134】
このように、リング形状の錠剤210の重量を変化させずに表面積を増加させるためには、リングの肉厚を薄くし、且つリングの高さを大きくしなければならない。つまり、錠剤210の表面積を増加させると、錠剤210の体積は大きくなり、肉厚が薄くなる。この結果、錠剤210は、飲みやすさと強度が低下してしまう。
【0135】
これに対し、
図24A、
図24B、
図24Cに示される本発明の特徴的な形状の錠剤10A、10B、10Cは、重量及び体積をほとんど変化させることなく、比表面積を幅広く変化させることができる。例えば、錠剤10Aの辺長を10.5mmで一定にすると仮定する。この場合、錠剤10Aの各層を構成する線状の要素11の幅を0.5mm~2.0mmの範囲で変化させ、且つ錠剤10Aの高さを3.5mm~4.5mmの範囲で変更させることにより、錠剤10Aの比表面積を3.2mm
2/mm
3~6.6mm
2/mm
3に変化させることができる。錠剤10Aは、高さが1mmの範囲で変化するが、重量及び体積をほとんど変化させることなく、比表面積を幅広く変化させることができる。
【0136】
このように、本発明の特徴的な形状の錠剤10A、10B、10Cは、各層を構成する線状及び/又は面状の要素11、12の幅を変化させること、及び/又は各層を構成する線状及び/又は面状の要素11、12のパターンを変化させることによって、錠剤10A、10B、10Cの重量及び体積をほとんど変化させることなく、比表面積を幅広く変化させることができる。さらに、錠剤10A、10B、10Cの比表面積を大きくした場合でも、飲みやすさと強度は低下しない。
【0137】
3-6.第6実施例
<錠剤の強度>
第6実施例では、小型卓上試験機によって、表5の実施例5-1の錠剤10A、及び比較例5-3の錠剤310の強度を測定した。小型卓上試験機には、株式会社島津製作所の製品名「EZ-SX」を用いた。錠剤10A、310を試料とし、試験速度16.6mm/secの条件で圧縮試験を行なった。錠剤10A、310の強度(N)は、下記の表6に示される。
【0138】
【0139】
表6に示されるように、比較例5-3の錠剤310の強度は10.9Nであった。これに対して、実施例5-1の錠剤10Aの強度は、29.8Nであった。つまり、特徴的な形状の錠剤10Aは、円筒状の錠剤310と比較して、約3倍の強度を有する。
【0140】
図24Aに示されるように、錠剤10Aを構成する線状の要素11は、錠剤10Aの骨格となる構造体である。異なる層を構成する要素11どうしが互いに交差し、錠剤10Aの強度を高くする。これにより、実施例5-1の錠剤10Aは、製造、輸送、保存、服用のいずれの状況においても破損しにくい。さらに、実施例5-1の錠剤10Aは、口からの摂取に適した大きさを変えずに、比表面積を自由に調整することができ、有効成分の溶出速度を最適に制御することが可能である。したがって、錠剤10Aは、経口剤に応用した場合に優れた性能を発揮する。
【符号の説明】
【0141】
1 材料
2 混合機
3 押出機
4 フィラメント
5 3Dプリンタ
5a プーリ
5b ノズル
5c テーブル
10、10A、10B、10C 錠剤
11、11a、11b 線状の要素
12 面状の要素
13 空間
14 開口(空間)
110 錠剤(第1の比較例)
210 錠剤(第2の比較例)
310 錠剤(第3の比較例)