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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128100
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】X線撮影装置およびX線撮影方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220825BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
G01N23/046
A61B6/03 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026442
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【弁理士】
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】謝 志敏
(72)【発明者】
【氏名】小桧山 朝華
(72)【発明者】
【氏名】白井 太郎
【テーマコード(参考)】
2G001
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001EA03
2G001FA08
2G001HA01
2G001HA14
2G001JA08
4C093AA22
4C093CA06
4C093EA07
4C093EB28
4C093FD08
4C093FD09
(57)【要約】
【課題】X線フォトンを検出してエネルギー範囲画像を取得する場合に、エネルギー範囲画像の画質を向上させることが可能なX線撮影装置を提供することである。
【解決手段】このX線撮影装置100は、X線源1と、X線源1から照射され、被写体200を透過したX線フォトンを検出するX線検出部2と、データ処理を行う制御部4と、を備える。制御部4は、X線検出部2により検出されたX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データ5の1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータ6を取得する処理、取得したエネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理を行う処理、及び、ノイズ除去処理を行ったエネルギースペクトルデータ6に基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データ5を取得する処理を行うように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、
前記X線源から照射され、被写体を透過したX線フォトンを検出するX線検出部と、
データ処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記X線検出部により検出された前記X線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得する処理、
取得した前記エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行う処理、及び、
前記ノイズ除去処理を行った前記エネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数の前記エネルギー範囲画像データを取得する処理を行うように構成されている、X線撮影装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記X線検出部により検出された前記X線フォトンの検出結果に基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データを取得するとともに、取得した前記複数のエネルギー範囲画像データに基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データ間の画素のエネルギー分布を表す前記エネルギースペクトルデータを取得するように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うように構成されている、請求項1または2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギースペクトル部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うように構成されている、請求項3に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータに対して、前記ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理を行うように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータに対して、自然指数関数による前記カーブフィッティング処理を行うように構成されている、請求項5に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記エネルギー範囲画像データは、サイノグラム画像データ、または、再構成画像データである、請求項1~6のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
被写体を透過したX線フォトンを検出するステップと、
前記X線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得するステップと、
前記エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行うステップと、
前記ノイズ除去処理を行った前記エネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数の前記エネルギー範囲画像データを取得するステップと、を備える、X線撮影方法。
【請求項9】
前記エネルギースペクトルデータを取得するステップは、前記X線フォトンの検出結果に基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データを取得するとともに、取得した前記複数のエネルギー範囲画像データに基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データ間の画素のエネルギー分布を表す前記エネルギースペクトルデータを取得するステップを含む、請求項8に記載のX線撮影方法。
【請求項10】
前記ノイズ除去処理を行うステップは、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うステップを含む、請求項8または9に記載のX線撮影方法。
【請求項11】
前記ノイズ除去処理を行うステップは、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギー部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うステップを含む、請求項10に記載のX線撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置およびX線撮影方法に関し、特に、X線フォトンを検出するX線撮影装置およびX線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたフォトンカウンティングCT装置は、X線発生部から発生され、被検体を透過したX線フォトンを検出し、検出されたX線フォトンの数を表現する計数データを複数のエネルギー範囲について収集するように構成されている。また、このフォトンカウンティングCT装置は、複数のエネルギー範囲のうちの画像化対象のエネルギー範囲に関するフォトンカウンティングCT画像(エネルギー範囲画像)を再構成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-131028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフォトンカウンティングCT装置では、撮影時間、被写体の材料および被写体のサイズなどの撮影条件に起因して、多くのノイズを含むデータが得られる場合がある。そして、多くのノイズを含むデータに基づいて、エネルギー範囲画像を取得する場合、エネルギー範囲画像の画質が低下するという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、X線フォトンを検出してエネルギー範囲画像を取得する場合に、エネルギー範囲画像の画質を向上させることが可能なX線撮影装置およびX線撮影方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるX線撮影装置は、X線源と、X線源から照射され、被写体を透過したX線フォトンを検出するX線検出部と、データ処理を行う処理部と、を備え、処理部は、X線検出部により検出されたX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得する処理、取得したエネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行う処理、及び、ノイズ除去処理を行ったエネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データを取得する処理を行うように構成されている。
【0007】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面におけるX線撮影方法は、被写体を透過したX線フォトンを検出するステップと、X線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得するステップと、エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行うステップと、ノイズ除去処理を行ったエネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データを取得するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記第1の局面におけるX線撮影装置および上記第2の局面によるX線撮影方法では、X線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得し、取得したエネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行い、ノイズ除去処理を行ったエネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データを取得する。これにより、1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルが、エネルギーに対する線減弱係数(X線フォトンが物質を透過する際にどれくらい減弱するかを表す係数)の変化曲線に対応することに着目して、1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータに対してノイズ除去処理を行うことにより、ノイズの影響により本来の値でない外れの値を含むエネルギースペクトルを線減弱係数の変化曲線に対応する本来のエネルギースペクトルに整形することができる。その結果、本来のエネルギースペクトルに基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データを取得することができるので、X線フォトンを検出してエネルギー範囲画像を取得する場合に、エネルギー範囲画像の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるX線撮影装置の構成を示した模式図である。
図2】エネルギーに対する樹脂の線減弱係数の変化およびエネルギーに対する金属の線減弱係数の変化を示した模式的なグラフである。
図3】一実施形態によるX線撮影装置によるエネルギースペクトルデータに対するノイズ除去処理を説明するための模式図である。
図4】一実施形態によるX線撮影装置によるエネルギースペクトルデータに対するノイズ除去処理を説明するための模式図である。
図5】一実施形態によるX線撮影装置によるX線撮影処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(X線撮影装置の構成)
図1図4を参照して、本発明の一実施形態によるX線撮影装置100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、X線撮影装置100は、被写体200を透過したX線フォトンを利用して、被写体200の内部の画像を生成するフォトンカウンティング型のX線撮影装置である。具体的には、X線撮影装置100は、PCCT(Photon Counting Computed Tomography:フォトンカウンティングコンピュータ断層撮影)装置である。また、X線撮影装置100は、被写体200を透過したX線フォトンのエネルギー値の特性が物質ごとに異なることを利用して、物質弁別を行うことが可能なように構成されている。
【0013】
X線撮影装置100は、X線源1と、X線検出部2と、回転ステージ3と、制御部4とを備えている。なお、制御部4は、特許請求の範囲の「処理部」の一例である。
【0014】
X線源1は、被写体200にX線を照射するように構成されている。X線源1は、X線管を含み、高電圧が印加されることにより、X線を発生させるとともに、発生されたX線をX線検出部2に向かって照射するように構成されている。
【0015】
X線検出部2は、フォトンカウント型のX線検出部である。X線検出部2は、X線源1から照射され、被写体200を透過したX線フォトンを検出するように構成されている。また、X線検出部2は、検出されたX線フォトンを電気信号に変換し、変換された電気信号を出力するように構成されている。具体的には、X線検出部2は、エネルギー値ごとのX線フォトンの数を計数することが可能なように、X線フォトンに対応する電気信号を出力するように構成されている。これにより、エネルギー範囲ごとのX線フォトンの数を計数(カウント)することが可能である。
【0016】
エネルギー範囲は、特に限られないが、たとえば、11~20keV、21~30keV、31~40keV、41~50keV、および、51~60keVなどの複数のエネルギー範囲の各々のX線フォトンの数を計数(カウント)することが可能である。
【0017】
また、X線検出部2は、X線フォトンを電気信号に変換する複数の検出素子を含んでいる。検出素子としては、たとえば、X線フォトンを直接的に電気信号に変換する直接変換型の半導体素子を採用することができる。このような半導体素子としては、たとえば、カドウミウムテルル系の半導体素子を挙げることができる。また、検出素子としては、たとえば、X線フォトンを光に変換するシンチレータと、光を電気信号に変換するフォトダイオードとを含み、X線フォトンを間接的に電気信号に変換する間接変換型の検出素子を採用してもよい。
【0018】
回転ステージ3は、被写体200を回転させるように構成されている。回転ステージ3は、被写体200を載置するための載置台と、載置台を回転駆動させるモータなどの駆動部とを含んでいる。回転ステージ3により被写体200を回転させることにより、被写体200をX線源1とX線検出部2とを含む撮影系に対して回転させることができる。これにより、被写体200に対するX線の照射位置を変更しながら、X線撮影を行うことができる。
【0019】
制御部4は、X線撮影装置100の各部を制御するように構成されている。制御部4は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、メモリとを含んでいる。また、制御部4は、画像に関するデータ処理を行う画像処理部として機能する。具体的には、制御部4は、X線検出部2によるX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲に対応する複数のエネルギー範囲画像データ5(図3参照)を取得するように構成されている。
【0020】
より具体的には、制御部4は、複数のエネルギー範囲の各々のX線フォトンのカウント数に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5の各々を取得するように構成されている。たとえば、制御部4は、11~20keVのエネルギー範囲のX線フォトンのカウント数に基づいて、11~20keVのエネルギー範囲画像データ5を取得する。また、たとえば、制御部4は、21~30keVのエネルギー範囲のX線フォトンのカウント数に基づいて、21~30keVのエネルギー範囲画像データ5を取得する。
【0021】
また、本実施形態では、エネルギー範囲画像データ5は、サイノグラム画像データである。サイノグラム画像データは、X線検出部2によるX線フォトンの検出結果を、検出素子の番号(検出器番号)と、回転角度とにより、2次元的に配置した画像データである。サイノグラム画像データは、被写体200に対応する被写体領域と、被写体200外に対応する被写体外領域(被写体外の空気領域)とを含んでいる。
【0022】
制御部4は、サイノグラム画像データに対して、FBP(Filtered Back Projection)などの再構成処理を行うことにより、再構成画像データを取得するように構成されている。なお、再構成画像データは、サイノグラム画像データごとに取得することが可能である。すなわち、複数のサイノグラム画像データに基づいて、複数の再構成画像データを取得することが可能である。また、制御部4は、複数の再構成画像データに基づいて、被写体200の物質弁別を行うように構成されている。
【0023】
(エネルギーに対する線減弱係数の変化)
次に、図2を参照して、エネルギーに対する線減弱係数の変化について説明する。なお、線減弱係数とは、X線フォトンが物質を透過する際にどれくらい減弱するかを表す係数である。
【0024】
図2では、エネルギーに対する樹脂の線減弱係数の変化を示すグラフと、エネルギーに対する金属の線減弱係数の変化を示すグラフとを示している。また、図2に示す2つのグラフでは、縦軸は線減弱係数を示し、横軸はX線フォトンのエネルギーを示している。図2に示すように、樹脂の線減弱係数は、X線フォトンのエネルギーが小さいほど大きく、X線フォトンのエネルギーが大きいほど小さくなる変化傾向を有している。すなわち、樹脂は、X線フォトンのエネルギーが小さいほど、吸収が大きく、X線フォトンのエネルギーが大きいほど、吸収が小さくなるという性質を有している。このような樹脂としては、たとえば、ABS、PMMAおよびPETなどが挙げられる。
【0025】
また、金属の線減弱係数は、K吸収端以外の範囲では、樹脂と同様に、X線フォトンのエネルギーが小さいほど大きく、X線フォトンのエネルギーが大きいほど小さくなる変化傾向を有している。すなわち、金属は、K吸収端以外の範囲では、樹脂と同様に、X線フォトンのエネルギーが小さいほど、吸収が大きく、X線フォトンのエネルギーが大きいほど、吸収が小さくなるという性質を有している。また、金属の線減弱係数は、K吸収端の部分では、急激に増加し、不連続になる傾向を有している。なお、K吸収端とは、K殻に存在する電子が外側の電子軌道に移るエネルギーを吸収することに対応している。このような樹脂としては、たとえば、Fe、Al、CuおよびZnなどが挙げられる。
【0026】
なお、詳細な説明は省略するが、線減弱係数を密度で除した質量減弱係数も、線減弱係数と同様の傾向がある。
【0027】
ここで、複数のエネルギー範囲画像データ5の画素に着目したエネルギースペクトルデータ6(図3および図4参照)を見ると、エネルギーに対する線減弱係数(または質量減弱係数)の変化曲線と同様の傾向を示す。すなわち、被写体200が樹脂を含む場合、樹脂に対応する部分では、複数のエネルギー範囲画像データ5のエネルギースペクトルデータ6(図3参照)は、図2に示す樹脂の線減弱係数の変化曲線と同様の傾向を示す。また、被写体200が金属を含む場合、金属に対応する部分では、複数のエネルギー範囲画像データ5のエネルギースペクトルデータ6(図4参照)は、図2に示す金属の線減弱係数の変化曲線と同様の傾向を示す。なお、エネルギースペクトルデータ6は、複数のエネルギー範囲画像データ5間の画素のエネルギー分布を表すものであり、図3および図4では、吸収係数を縦軸とし、X線フォトンのエネルギーを横軸として表されている。
【0028】
また、複数のエネルギー範囲画像データ5のエネルギースペクトルデータ6は、エネルギーに対する線減弱係数の変化曲線と同様の傾向を示すが、ノイズの影響により本来の値でない外れの値を含んでいる。
【0029】
(ノイズ除去処理)
そこで、本実施形態では、図3に示すように、制御部4は、X線検出部2により検出されたX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データ5の1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータ6を取得する処理、取得したエネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理を行う処理、及び、ノイズ除去処理を行ったエネルギースペクトルデータ6に基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データ5を取得する処理を行うように構成されている。この際、制御部4は、X線検出部2により検出されたX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5を取得するとともに、取得した複数のエネルギー範囲画像データ5に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5間の画素のエネルギー分布を表すエネルギースペクトルデータ6を取得するように構成されている。なお、エネルギー範囲画像データ5の数は、正確なスペクトルを得る観点から、3つ以上が好ましい。
【0030】
また、本実施形態では、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理を行うように構成されている。具体的には、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6に対して、自然指数関数によるカーブフィッティング処理を行うように構成されている。なお、自然指数関数とは、ネイピア数(e)を底とする指数関数を意味している。
【0031】
図3では、特定の画素7に対して、ノイズ除去処理(カーブフィッティング処理)を行う例を示している。この例では、図3(a)に示すように、まず、制御部4は、複数のエネルギー範囲画像データ5の各々の画素7の吸収係数値を取得する。画素7の吸収係数値は、X線フォトンのカウント数に基づいて、取得することが可能である。図3(a)では、複数のエネルギー範囲画像データ5の各々の画素7の吸収係数値が、棒グラフとして図示されている。
【0032】
そして、制御部4は、複数のエネルギー範囲画像データ5の各々の画素7の吸収係数値に基づいて、連続スペクトル6a(破線により示す)を含むエネルギースペクトルデータ6を取得する。そして、図3(b)に示すように、制御部4は、連続スペクトル6aを含むエネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理を行う。すなわち、制御部4は、連続スペクトル6aに最もよく当てはまる自然指数関数の変化曲線をノイズ除去された連続スペクトル6b(実線により示す)として取得する。そして、図3(c)に示すように、制御部4は、連続スペクトル6bを含むエネルギースペクトルデータ6に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5の各々の画素7の吸収係数値(ノイズ除去された吸収係数値)を取得(復元)する。
【0033】
制御部4は、このようなノイズ除去処理を、エネルギー範囲画像データ5の被写体領域および被写体外領域の両方を含む全画素に対して行う。そして、制御部4は、ノイズ除去された吸収係数値に基づいて、ノイズ除去されたエネルギー範囲画像データ5を取得(復元)する。なお、ノイズ除去処理は、1画素単位で行われてもよいし、複数の画素を含む画素ブロック単位で行われてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、図4に示すように、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行うように構成されている。具体的には、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギースペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行うように構成されている。たとえば、制御部4は、被写体200が金属を含む場合、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行うように構成されている。
【0035】
たとえば、エネルギースペクトルデータ6に基づいて、K吸収端を識別することが可能な場合には、制御部4は、K吸収端の識別結果に基づいて、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行う。また、K吸収端が現れるエネルギー範囲が予め分かっており、ユーザがノイズ除去処理を行うエネルギー範囲を予め指定することが可能な場合には、制御部4は、ユーザの指定に基づいて、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行う。
【0036】
(X線撮影処理)
次に、図5を参照して、本実施形態のX線撮影装置100によるX線撮影処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部4により行われる。
【0037】
図5に示すように、まず、ステップ101において、被写体200に対するスキャン撮像が行われる。ステップ101では、回転ステージ3により被写体200を回転させながら、X線源1とX線検出部2とを含む撮影系によるX線撮影が行われる。
【0038】
そして、ステップ102において、スキャン撮影におけるX線検出部2によるX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のサイノグラム画像データ(エネルギー範囲画像データ5)が作成される。
【0039】
そして、ステップ103において、複数のエネルギー範囲画像データ5に基づいて、エネルギースペクトルデータ6が作成される。
【0040】
そして、ステップ104において、エネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理(フィッティング処理)が行われる。
【0041】
そして、ステップ105において、ノイズ除去処理が行われたエネルギースペクトルデータ6に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5の各々の数値(吸収係数値)が取得される。
【0042】
なお、ステップ103~105の処理は、エネルギー範囲画像データ5の全画素に対して行われる。
【0043】
そして、ステップ106において、ノイズ除去された吸収係数値に基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データ5(サイノグラム画像データ)が取得される。すなわち、ステップ106では、複数のエネルギー範囲画像データ5(サイノグラム画像データ)が、ノイズ除去された状態で復元される。
【0044】
そして、ステップ107において、ノイズ除去されたエネルギー範囲画像データ5(サイノグラム画像データ)に基づいて、画像再構成が行われる。その後、X線撮影処理が終了される。
【0045】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態では、上記のように、X線撮影装置100は、X線源1と、X線源1から照射され、被写体200を透過したX線フォトンを検出するX線検出部2と、データ処理を行う制御部4と、を備え、制御部4は、X線検出部2により検出されたX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データ5の1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータ6を取得し、取得したエネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理を行い、ノイズ除去処理を行ったエネルギースペクトルデータ6に基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データ5を取得するように構成されている。
【0047】
これにより、1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルがエネルギーに対する線減弱係数(または質量減弱係数)の変化曲線に対応することに着目して、1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータ6に対してノイズ除去処理を行うことにより、ノイズの影響により本来の値でない外れの値を含むエネルギースペクトルを線減弱係数の変化曲線に対応する本来のエネルギースペクトルに整形することができる。その結果、本来のエネルギースペクトルに基づいて、ノイズ除去された複数のエネルギー範囲画像データ5を取得することができるので、X線フォトンを検出してエネルギー範囲画像を取得する場合に、エネルギー範囲画像の画質を向上させることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、以下のように構成したことによって、下記のような更なる効果が得られる。
【0049】
すなわち、本実施形態では、上記のように、制御部4は、X線検出部2により検出されたX線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5を取得するとともに、取得した複数のエネルギー範囲画像データ5に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5間の画素のエネルギー分布を表すエネルギースペクトルデータ6を取得するように構成されている。これにより、複数のエネルギー範囲画像データ5に基づいて、複数のエネルギー範囲画像データ5間の画素のエネルギー分布を表すエネルギースペクトルデータ6を容易に取得することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行うように構成されている。これにより、検出されるエネルギースペクトル範囲内にK吸収端を含む材料(たとえば、金属材料)を被写体200が含む場合に、K吸収端に対応するスペクトル部分がノイズ除去処理に起因して消去されることを抑制することができる。その結果、ノイズ除去処理を行ったとしても、物質弁別などに利用されるK吸収端の情報が消去されることを抑制することができる。これにより、物質弁別などに利用される有用なK吸収端の情報を残しつつ、エネルギー範囲画像の画質を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6のK吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギースペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行うように構成されている。これにより、K吸収端に対応するスペクトルが比較的低エネルギー側に現れることを利用して、K吸収端の情報を残しつつ、K吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギースペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を効果的に行うことができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6に対して、ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理を行うように構成されている。これにより、エネルギースペクトルデータ6に対してノイズ除去効果の高いカーブフィッティング処理を行うことができるので、ノイズを含むエネルギースペクトルを線減弱係数の変化曲線(カーブ)に対応する本来のエネルギースペクトルに容易に整形することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、制御部4は、エネルギースペクトルデータ6に対して、自然指数関数によるカーブフィッティング処理を行うように構成されている。なお、自然指数関数とは、ネイピア数を底とする指数関数を意味している。これにより、線減弱係数の変化曲線が自然指数関数により表せることから、線減弱係数の変化曲線に対応する本来のエネルギースペクトルが自然指数関数により表せることを利用して、自然指数関数によるカーブフィッティング処理により、ノイズを含むエネルギースペクトルを線減弱係数の変化曲線に対応する本来のエネルギースペクトルに精度よく整形することができる。その結果、エネルギー範囲画像の画質を大幅に向上させることができる。また、ノイズを含むエネルギースペクトルを線減弱係数の変化曲線に対応する本来のエネルギースペクトルに精度よく整形することができるので、エネルギー範囲画像の画素の値の定量性(正確さ)を大幅に向上させることができる。その結果、エネルギー範囲画像の画素の値に基づいて、定量性を必要とする物質の密度および実効原子番号などの定量情報を正確に取得することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、エネルギー範囲画像データ5は、サイノグラム画像データである。これにより、エネルギー範囲画像としての、サイノグラム画像の画質を向上させることができる。
【0055】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0056】
たとえば、上記実施形態では、CT装置としてのX線撮影装置に、本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、CT装置以外のX線撮影装置に適用されてもよい。たとえば、本発明は、透視撮影を行うX線撮影装置に適用されてもよいし
トモシンセシス撮影を行うX線撮影装置に適用されてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、被写体をX線源とX線検出部とを含む撮影系に対して回転させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、X線源とX線検出部とを含む撮影系を被写体に対して回転させることによって、被写体に対するX線の照射位置を変更しながら、X線撮影を行ってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、制御部が、画像処理部として機能する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部とは別個に独立して、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを含む画像処理部が設けられていてもよい。この場合、画像処理部が本発明の「処理部」として機能してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、エネルギー範囲画像データが、サイノグラム画像データである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エネルギー範囲画像データが、再構成画像データであってもよい。この場合、エネルギー範囲画像としての再構成画像の画質を向上させることが可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、被写体が金属を含む場合、エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、ノイズ除去処理を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、K吸収端に対応するスペクトル部分の特徴を残しつつ、ノイズ除去処理を行うことが可能であれば、被写体が金属を含む場合にも、エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応するスペクトル部分を含む全スペクトルに対して、ノイズ除去処理を行ってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理以外の処理を行ってもよい。たとえば、ノイズ除去処理として、エネルギースペクトルのノイズに起因する凹凸をならすような処理を行ってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、エネルギースペクトルデータに対して、自然指数関数によるカーブフィッティング処理を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、実用上問題ない程度にノイズ除去可能であれば、エネルギースペクトルデータに対して、自然指数関数以外の指数関数によるカーブフィッティング処理を行ってもよいし、指数関数以外の関数によるカーブフィッティング処理を行ってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ノイズ除去処理を、エネルギー範囲画像データの被写体領域および被写体外領域の両方を含む全画素に対して行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ノイズ除去処理を、エネルギー範囲画像データの被写体領域の画素に対してのみ行ってもよい。
【0064】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0065】
(項目1)
X線源と、
前記X線源から照射され、被写体を透過したX線フォトンを検出するX線検出部と、
データ処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記X線検出部により検出された前記X線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得する処理、
取得した前記エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行う処理、及び、
前記ノイズ除去処理を行った前記エネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数の前記エネルギー範囲画像データを取得する処理を行うように構成されている、X線撮影装置。
【0066】
(項目2)
前記処理部は、前記X線検出部により検出された前記X線フォトンの検出結果に基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データを取得するとともに、取得した前記複数のエネルギー範囲画像データに基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データ間の画素のエネルギー分布を表す前記エネルギースペクトルデータを取得するように構成されている、項目1に記載のX線撮影装置。
【0067】
(項目3)
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うように構成されている、項目1または2に記載のX線撮影装置。
【0068】
(項目4)
前記処理部は、前記被写体が金属を含む場合、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギースペクトル部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うように構成されている、項目3に記載のX線撮影装置。
【0069】
(項目5)
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータに対して、前記ノイズ除去処理としてカーブフィッティング処理を行うように構成されている、項目1~4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0070】
(項目6)
前記処理部は、前記エネルギースペクトルデータに対して、自然指数関数による前記カーブフィッティング処理を行うように構成されている、項目5に記載のX線撮影装置。
【0071】
(項目7)
前記エネルギー範囲画像データは、サイノグラム画像データ、または、再構成画像データである、項目1~6のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【0072】
(項目8)
被写体を透過したX線フォトンを検出するステップと、
前記X線フォトンの検出結果に基づいて、複数のエネルギー範囲にそれぞれ対応するエネルギー範囲画像データの1つ以上の画素を単位とするエネルギースペクトルデータを取得するステップと、
前記エネルギースペクトルデータに対して、ノイズ除去処理を行うステップと、
前記ノイズ除去処理を行った前記エネルギースペクトルデータに基づいて、ノイズ除去された複数の前記エネルギー範囲画像データを取得するステップと、を備える、X線撮影方法。
【0073】
(項目9)
前記エネルギースペクトルデータを取得するステップは、前記X線フォトンの検出結果に基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データを取得するとともに、取得した前記複数のエネルギー範囲画像データに基づいて、前記複数のエネルギー範囲画像データ間の画素のエネルギー分布を表す前記エネルギースペクトルデータを取得するステップを含む、項目8に記載のX線撮影方法。
【0074】
(項目10)
前記ノイズ除去処理を行うステップは、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応するスペクトル部分を除いたスペクトル部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うステップを含む、項目8または9に記載のX線撮影方法。
【0075】
(項目11)
前記ノイズ除去処理を行うステップは、前記エネルギースペクトルデータのK吸収端に対応する低エネルギースペクトル部分を除いた高エネルギー部分に対して、前記ノイズ除去処理を行うステップを含む、項目10に記載のX線撮影方法。
【符号の説明】
【0076】
1 X線源
2 X線検出部
4 制御部(処理部)
5 エネルギー範囲画像データ
6 エネルギースペクトルデータ
100 X線撮影装置
200 被写体
図1
図2
図3
図4
図5