(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128121
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/13 B
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026483
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】信國 真吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB11
3D131BB12
3D131BC12
3D131BC13
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3D131EB11V
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3D131EB39V
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3D131EB46V
3D131EC14V
3D131EC14W
3D131EC14X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】騒音性能を損ねずに、マッド性を向上させたタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を含むタイヤである。トレッド部2には、一対の溝壁4を含む溝3が設けられている。溝壁4の表面4sは、複数の微小突起8が形成されたパターン部7を含んでいる。パターン部7は、溝壁面積1mm
2当たり1~5個の密度で微小突起8が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を含むタイヤであって、
前記トレッド部には、溝が設けられており、
前記溝は、一対の溝壁を含み、
前記一対の溝壁の少なくとも一方の溝壁の表面には、複数の微小突起が形成されたパターン部を含み、
前記パターン部は、溝壁面積1mm2当たり1~5個の密度で前記微小突起が設けられている、
タイヤ。
【請求項2】
前記パターン部は、前記一対の溝壁の両方に設けられている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記溝は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる横溝とを含み、
前記パターン部は、前記周方向溝の溝壁、及び、前記横溝の溝壁に設けられる、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記パターン部は、前記溝壁のタイヤ半径方向の外端から、タイヤ半径方向内側に、前記溝の溝深さの20%~60%の範囲に形成される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記微小突起の突起高さは、0.1~0.5mmである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記微小突起の外径は、0.1~0.5mmである、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記微小突起は、円錐台状である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記微小突起は、突起頂部に凹部が設けられる、請求項1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記凹部の深さは、前記微小突起の突起高さの70%~100%である、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記凹部は、突起高さ方向の内方に向かって、開口面積が小さくなる、請求項8又は9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記凹部の開口形状は、円形である、請求項8ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記溝は、溝底を含み、
前記パターン部は、前記溝底には形成されていない、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ミドル陸部に第1ミドル横溝が設けられたタイヤが記載されている。前記第1ミドル横溝は、ショルダー主溝からタイヤ軸方向内側に延びる外側溝を含んでいる。前記外側溝は、前記ショルダー主溝に向かって、溝幅が滑らかに漸増している。このような外側溝は、泥を強く押し固めることができ、マッド性能を高めるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溝幅の増加は、溝の容積を増大させ、ひいては走行時の騒音が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、騒音性能を損ねずに、マッド性能を向上させることができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を含むタイヤであって、前記トレッド部には、溝が設けられており、前記溝は、一対の溝壁を含み、前記一対の溝壁の少なくとも一方の溝壁の表面には、複数の微小突起が形成されたパターン部を含み、前記パターン部は、溝壁面積1mm2当たり1~5個の密度で前記微小突起が設けられているのが望ましい。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記パターン部が、前記一対の溝壁の両方に設けられている、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記溝が、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる横溝とを含み、前記パターン部は、前記周方向溝の溝壁、及び、前記横溝の溝壁に設けられる、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、前記パターン部が、前記溝壁のタイヤ半径方向の外端から、タイヤ半径方向内側に、前記溝の溝深さの20%~60%の範囲に形成される、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記微小突起の突起高さが、0.1~0.5mmである、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記微小突起の外径が、0.1~0.5mmである、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記微小突起が、円錐台状である、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記微小突起が、突起頂部に凹部が設けられる、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記凹部の深さが、前記微小突起の突起高さの70%~100%である、のが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤは、前記凹部が、突起高さ方向の内方に向かって、開口面積が小さくなる、のが望ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤは、前記凹部の開口形状が、円形である、のが望ましい。
【0017】
本発明に係るタイヤは、前記溝が、溝底を含み、前記パターン部は、前記溝底には形成されていない、のが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用することで、騒音性能を損ねずに、マッド性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の平面図である。
【
図2】(a)は、
図1の溝の斜視図、(b)は、(a)の横断面図である。
【
図5】(a)は、他の実施形態の溝の斜視図、(b)は、他の実施形態の微小突起の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の平面図である。
図1には、好ましい態様として、乗用車用の空気入りタイヤ1のトレッド部2が示される。但し、本発明は、例えば、重荷重用の空気入りタイヤ1や、他のカテゴリーのタイヤ1にも採用し得る。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、溝3が設けられている。溝は、本明細書では、幅が1.5mm以上の溝状体をいう。
【0022】
図2(a)は、
図1の溝3の斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)の横断面図である。
図2(a)、(b)に示されるように、本実施形態の溝3は、一対の溝壁4、4を含んでいる。また、溝3は、一対の溝壁4、4のタイヤ半径方向の内端間を継ぐ溝底5を含んでいる。溝壁4は、トレッド部2の踏面2aからタイヤ半径方向の内側に延びている。溝底5は、溝3の最大深さ部3eから溝深さDの10%以内の領域である。
【0023】
一対の溝壁4、4の少なくとも一方の溝壁4の表面4sには、複数の微小突起8が形成されたパターン部7を含んでいる。パターン部7は、溝壁面積1mm2当たり1~5個の密度で微小突起8が設けられている。微小突起8は、溝3内に入り込んだ泥土に対する引掻き力、せん断力及び摩擦力を増大させ、マッド性能を向上させることができる。また、微小突起8は、走行時のトレッド部2の振動を溝壁4に付着した泥土に伝達し、溝壁4と泥土との剥離を促進する。これにより、本実施形態のタイヤ1は、溝3の泥詰まりを抑制することができ、ひいては、走行中、優れたマッド性能が長期に亘って持続する。さらに、上記作用は、溝容積の増加を伴わずに得られることから、本実施形態のタイヤ1は、騒音性能を損ねることもない。
【0024】
とりわけ、微小突起8の密度が溝壁面積1mm2当たり1個以上であるので、走行時の前記振動を溝壁4に付着した泥土に効果的に伝達することができる。また、微小突起8の密度が溝壁面積1mm2当たり5個以下であるので、微小突起8の剛性が高く維持されて、上記作用が長期にわたり発揮される。
【0025】
本明細書では、タイヤ1の各部の寸法等は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態において測定された値である。前記「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0026】
前記「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤ1が乗用車用である場合、正規内圧は、180kPaである。
【0027】
パターン部7は、本実施形態では、一対の溝壁4の両方に設けられている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0028】
図1に示されるように、溝3は、例えば、タイヤ周方向に延びる周方向溝10と、タイヤ軸方向に延びる横溝11とを含んでいる。本明細書では、「タイヤ周方向に延びる」とは、タイヤ軸方向に対して45度以上の角度で延びる態様をいう。また、「タイヤ軸方向に延びる」とは、タイヤ軸方向に対して45度未満の角度で延びる態様をいう。さらに、便宜上、
図1の溝3は着色して示される。
【0029】
周方向溝10は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びている。本実施形態の周方向溝10は、タイヤ赤道Cの両側に配された一対のクラウン周方向溝10Aと、クラウン周方向溝10Aのタイヤ軸方向の外側に配された一対のショルダー周方向溝10Bとを含んでいる。
【0030】
本実施形態の横溝11は、クラウン横溝11Aとミドル横溝11Bとショルダー横溝11Cとショルダー小横溝11Dとを含んでいる。クラウン横溝11Aは、例えば、一対のクラウン周方向溝10Aからタイヤ軸方向の内側に延びている。ミドル横溝11Bは、例えば、クラウン周方向溝10Aとショルダー周方向溝10Bとを継いでいる。ショルダー横溝11Cは、例えば、ショルダー周方向溝10Bとトレッド端Teとを継いでいる。ショルダー小横溝11Dは、例えば、トレッド端Teからタイヤ軸方向の内側に向かって延び、ショルダー横溝11Cよりも小さい長さで形成されている。溝3は、このような態様に限定されるものではなく、種々の態様が採用される。
【0031】
また、本実施形態のトレッド部2には、サイプ12が設けられている。サイプ12は、例えば、第1サイプ12A、第2サイプ12B、第3サイプ12C及び第4サイプ12Dを含んでいる。第1サイプ12Aは、クラウン周方向溝10Aからタイヤ軸方向の外側に向かって延びて、ショルダー周方向溝10Bに連なることなく終端している。第2サイプ12Bは、クラウン周方向溝10Aとショルダー周方向溝10Bとを継いでいる。第3サイプ12Cは、ショルダー周方向溝10Bからタイヤ軸方向の内側に向かって延び、クラウン周方向溝10Aに連なることなく終端している。第4サイプ12Dは、ショルダー周方向溝10Bからタイヤ軸方向の外側に向かって延びている。また、サイプは、本明細書では、幅が1.5mm未満の切れ込み状体である。
【0032】
トレッド端Teとは、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重を付加しかつキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を意味している。「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0033】
サイプ12は、一対のサイプ壁12aを有している。サイプ壁12aには、パターン部7が形成されていない。本実施形態では、全てのサイプ12のサイプ壁12aには、パターン部7が形成されていない。
【0034】
パターン部7は、本実施形態では、周方向溝10の溝壁13、及び、横溝11の溝壁14に設けられている。パターン部7は、例えば、クラウン周方向溝10Aの溝壁13A、及び、ショルダー周方向溝10Bの溝壁13Bに設けられている。また、パターン部7は、クラウン横溝11Aの溝壁14A、ミドル横溝11Bの溝壁14B、ショルダー横溝11Cの溝壁14C、及び、ショルダー小横溝11Dの溝壁14Dに設けられている。
【0035】
図2(a)、(b)に示されるように、パターン部7は、溝底5には形成されないのが望ましい。溝底5は、泥土と接触する可能性が小さいので、ここにパターン部7を設けても、マッド性能の向上が図れないおそれがある。また、溝底5は、溝壁4に比べると、走行時の振動が伝達されにくい。このため、溝底5に微小突起8を設けると、溝の泥詰まりが生じやすく、マッド性能を高めることができないおそれがある。
【0036】
パターン部7は、溝壁4のタイヤ半径方向の外端4e(踏面2a)から、タイヤ半径方向内側に、溝3の溝深さDの20%~60%の範囲に形成されるのが望ましい。換言すると、パターン部7のタイヤ半径方向の外端7eが、外端4eから溝深さDの20%以上の位置にあるので、外端4e(溝3のエッジ)によるタイヤ半径方向のせん断力と、微小突起8によるせん断力、引掻き力及び摩擦力とが両立してマッド性能を向上する。また、パターン部7のタイヤ半径方向の内端7iが、外端4eから溝深さDの60%以下の位置であるので、溝3内の泥詰まりが効果的に抑制される。このような観点より、パターン部7の外端7eは、外端4eから溝深さDの30%以上に位置するのがより望ましく、パターン部7の内端7iは、50%以下に位置するのがより望ましい。
【0037】
上述の作用を効果的に発揮させるために、パターン部7のタイヤ半径方向の長さHは、溝深さDの20%以上が望ましく、25%以上がより望ましく、40%以下が望ましく、35%以上がより望ましい。
【0038】
パターン部7は、マッド性能を高めるために、溝3の長手方向の長さ(図示省略)の50%以上に形成されるのが望ましく、70%以上に形成されるのがより望ましい。本実施形態では、パターン部7は、溝3の長手方向の長さの100%(溝3の長手方向の全部)に形成されている。
【0039】
図3は、微小突起8の拡大平面図である。
図4は、微小突起8の斜視図である。
図3、4に示されるように、微小突起8は、本実施形態では、円錐台状である。これにより、微小突起8は、その剛性が高く維持されるとともに、多方向にせん断力等を発揮するころができる。なお、微小突起8の形状は、円錐台状に限定されるものではなく、例えば、円柱状や角錐状のものでも良い。
【0040】
微小突起8の突起高さH1は、0.1~0.5mmであるのが望ましい。微小突起8の突起高さが0.1mm以上であるので、せん断力等が効果的に発揮され、マッド性能を高めることができる。微小突起8の突起高さが0.5mm以下であるので、泥土の付着が抑制される他、欠けやクラック等が抑えられてマッド性能が持続する。このような観点より、微小突起8の突起高さH1は、0.15mm以上がより望ましく、0.45mm以下がより望ましい。
【0041】
微小突起8の外径φは、0.1~0.5mmであるのが望ましい。微小突起8の外径φが0.1mm以上であるので、マッド性能を高めることができる。微小突起8の外径φが0.5mm以下であるので、微小突起8の耐久性能が維持されて、マッド性能の低下が抑制際される。このような観点より、微小突起8の突起高さは、0.15mm以上がより望ましく、0.45mm以下がより望ましい。
【0042】
隣接する微小突起8、8間の距離Laは、0.2mm以下が望ましく、0.15mm以下がさらに望ましく、0.10mm以下がさらに望ましい。このような間隔Laで微小突起8が配されることで、溝3内に入り込んだ泥土に対する引掻き力、せん断力及び摩擦力を増大させることができる。
【0043】
微小突起8は、突起頂部8aに凹部15が設けられる。このような凹部15は、凹部15内において泥土をせん断することができるので、さらに、マッド性能を高める。
【0044】
凹部15の開口形状は、例えば、円形である。このような凹部15は、微小突起8の剛性の低下を抑制する。凹部15の開口形状は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、楕円状、三角状又は矩形状でもよい。
【0045】
凹部15の深さd1は、微小突起8の突起高さH1の70%~100%であるのが望ましい。凹部15の深さd1が突起高さH1の70%以上であるので、凹部15内に入り込む泥土量を大きく確保することができる。凹部15の深さd1が突起高さH1の100%以内であるので、微小突起8の剛性が高く維持されるため、長期間に亘ってマッド性能を高く維持することができる。
【0046】
凹部15は、本実施形態では、突起高さ方向の内方に向かって、開口面積Aが小さくなっている。このような凹部15は、微小突起8の剛性をさらに高く維持するのに役立つ他、凹部15内に埋まった泥土の排出を容易にしている。
【0047】
このような作用を効果的に発揮させるために、凹部15の突起高さ方向の外端15e(突起頂部8a)での開口面積A1と、凹部15の突起高さ方向の内端15iでの開口面積A2との比(A2/A1)は、20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、60%以下が望ましく、50%以下がさらに望ましい。
【0048】
凹部15の突起頂部8aの幅w1は、0.03~0.08mmであるのが望ましい。幅w1が0.03mm以上であるので、微小突起8の剛性が高く維持される。幅w1が0.08mm以下であるので、開口面積Aが確保されて、泥土に対するせん断力が高められる。
【0049】
図5(a)は、他の実施形態の溝3の斜視図である。本実施形態と同じ構成要素には、同じ符号が付されてその説明が省略される。
図5(a)に示されるように、この実施形態では、パターン部7は、複数の微小突起8からなる微小突起群9が複数設けられるように形成されている。各微小突起群9は、それぞれ、微小突起8の外径φよりも大きな隙間Sを設けて配されている。このようなパターン部7は、溝3の溝容積の減少を抑制するので、より多くの泥土に対してせん断力や摩擦力、引掻き力を発揮することができる。
【0050】
図5(b)は、他の実施形態の微小突起8の斜視図である。本実施形態と同じ構成要素には、同じ符号が付されてその説明が省略される。
図5(b)に示されるように、この実施形態では、微小突起8の凹部15は、開口面積Aが突起高さ方向に同じで形成されている。このような凹部15は、多くの泥土をせん断することができるので、マッド性能を高めることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0052】
図1の基本パターンを有するサイズ265/65R18のタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのマッド性能及び騒音性能がテストされた。パターン部の基本構成は、
図2(a)、(b)に示されている。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。なお、この試供タイヤは、所謂、SUV用のオールシーズンタイヤである。
【0053】
<マッド性能>
各試供タイヤが、下記の条件で車両の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、前記車両を泥濘地のテストコースで走行させた。テストドライバーは、このときのハンドル応答性、トラクション及びグリップ等に関する走行特性を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で表示している。数値が大きいほど良好である。
内圧(全輪):230kPa
車両:4輪駆動の乗用車(SUV)
車両の排気量:2500cc
微小突起の高さ:0.3mm
微小突起の外径:0.3mm
【0054】
<騒音性能>
上記車両を用い、テストドライバーがドライアスファルト路面を時速70km/hで走行した。テストドライバーは、そのときの騒音を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど騒音性能に優れている。
テストの結果が表1に示される。
【0055】
【0056】
テストの結果、実施例のタイヤは、騒音性能が損なわれずに、マッド性が向上しているのが確認された。