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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128135
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20220825BHJP
   B25D 16/00 20060101ALI20220825BHJP
   F16D 43/202 20060101ALI20220825BHJP
   F16D 7/04 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25D16/00
F16D43/202
F16D7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026500
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】町田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】飯田 斉
(72)【発明者】
【氏名】久野 太郎
【テーマコード(参考)】
2D058
3C064
3J068
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA06
2D058CB06
3C064AA04
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC01
3C064AC10
3C064BA03
3C064BA06
3C064BA10
3C064BA33
3C064BB22
3C064BB23
3C064CA03
3C064CA06
3C064CB03
3C064CB05
3C064CB08
3C064CB72
3J068AA02
3J068AA07
3J068BA02
3J068BB02
3J068CB03
3J068EE12
3J068GA07
3J068GA14
(57)【要約】
【課題】トルクリミッタのカム歯にダレが生じにくくなるようにする。
【解決手段】ハンマドリルは、モータと、モータの駆動により正逆方向へ共に回転可能な駆動側スリーブ40と、駆動側スリーブ40に軸線方向へ対向して設けられる従動側スリーブ60と有し、従動側スリーブ60での負荷の増大により、従動側スリーブ60が駆動側スリーブ40からの離間方向へ移動することでカム歯43,65の噛み合い面44A,44B及び66A,66B同士の係合を解除するトルクリミッタ72が形成される。そして、駆動側スリーブ40と従動側スリーブ60とのそれぞれのカム歯43,65は、正転側と逆転側とで噛み合い面44A,44B及び66A,66Bのリード角α,βが異なるように形成されて、且つ駆動側スリーブ40から従動側スリーブ60への伝達トルクは、正転と逆転とで等しくなっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動により正逆方向へ共に回転可能な駆動側部材と、
前記駆動側部材に軸線方向へ対向して設けられる従動側部材と、を有し、
前記駆動側部材と前記従動側部材との互いの対向面に、所定のリード角で傾斜する噛み合い面を有する複数のカム歯がそれぞれ同心円上に設けられ、互いの前記カム歯の噛み合い面同士が回転方向に係合することでトルクが伝達され、
前記駆動側部材と前記従動側部材との何れか一方の部材が、他方の部材に対して前記軸線方向へ移動可能に設けられると共に、弾性部材によって前記他方の部材側に付勢されており、前記従動側部材での負荷の増大により、前記一方の部材が前記他方の部材からの離間方向へ移動することで前記カム歯の噛み合い面同士の係合を解除するトルクリミッタが形成される電動工具であって、
前記駆動側部材と前記従動側部材とのそれぞれの前記カム歯は、正転側と逆転側とで前記噛み合い面のリード角が異なるように形成されて、且つ前記駆動側部材から前記従動側部材への伝達トルクは、正転と逆転とで等しくなっていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
各前記カム歯の前記リード角は、正転側の前記噛み合い面の方が、逆転側の前記噛み合い面よりも小さく形成されており、且つ前記他方の部材の前記カム歯における前記逆転側の噛み合い面は、前記正転側の噛み合い面よりも前記一方の部材側へのリフト量が小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
ビットが装着される最終出力軸を有して前記最終出力軸の回転作動及び/又は前記ビットの打撃作動が可能であり、
前記トルクリミッタは、前記最終出力軸より前段に配置されて前記モータのトルクを前記最終出力軸に伝達する回転軸に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記最終出力軸への回転伝達用の回転軸と、前記ビットの打撃作動用の回転軸とを有し、前記トルクリミッタが設けられる回転軸は、前記回転伝達用の回転軸であることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記他方の部材の前記カム歯は、前記一方の部材との対向面が、前記正転側から前記逆転側へ向かうに従って前記一方の部材から離れる方向へ傾斜することで、前記一方の部材側へのリフト量が小さくなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電動工具。
【請求項6】
前記対向面の傾斜は、回転方向の中央から形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記駆動側部材と前記従動側部材とは、前記回転軸に外装されるスリーブ形状であり、前記一方の部材の内周面と前記回転軸の外周面との少なくとも一方に、グリス溜まりが凹設されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電動工具。
【請求項8】
前記グリス溜まりは、前記回転軸の外周面に形成されたリング状の溝であることを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記回転軸には、前記一方の部材により押圧される前記他方の部材を前記軸線方向で受ける受け部材が、回転方向で一体に外装されており、前記他方の部材と前記受け部材との間には、複数のワッシャが、前記軸線方向に重ねて介在されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンマドリル等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリル等の電動工具は、モータの駆動で回転する駆動側部材と、駆動側部材からトルク伝達がなされる従動側部材とを含むトルク伝達機構を備えている。特にトルク伝達機構では、出力側となる従動側部材に過大な負荷が加わった際には、駆動側部材からのトルク伝達を遮断するトルクリミッタを設けるものが知られている。例えば特許文献1には、ビットを保持するツールホルダと、ツールホルダと平行な中間軸とにそれぞれギヤを設けて、中間軸の回転をギヤを介してツールホルダに伝達可能とするハンマドリルが開示されている。ここでのツールホルダ側のギヤ(駆動側部材)は、ツールホルダに対して回転可能に外装されて、ツールホルダに固定したフランジ(従動側部材)に対して互いのカム歯同士で係合している。ギヤは、コイルバネによってフランジに押圧されてフランジへトルク伝達を行うトルクリミッタを形成している。よって、ツールホルダに過大な負荷が加わると、コイルバネの付勢に抗してギヤがフランジからの離間側へ移動してカム同士の係合を解除し、トルク伝達を遮断するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5456555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなトルクリミッタでは、カム歯同士のバックラッシ量が小さいほど作動時の回転ガタが抑えられる。しかし、バックラッシ量が小さいと、トルクリミッタの作動時にカム歯が元の係合状態となる前に次のカム歯に衝突しやすくなる。このため、カム歯にダレ(変形)が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、トルクリミッタのカム歯にダレが生じにくい電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、モータと、
前記モータの駆動により正逆方向へ共に回転可能な駆動側部材と、
前記駆動側部材に軸線方向へ対向して設けられる従動側部材と、を有し、
前記駆動側部材と前記従動側部材との互いの対向面に、所定のリード角で傾斜する噛み合い面を有する複数のカム歯がそれぞれ同心円上に設けられ、互いの前記カム歯の噛み合い面同士が回転方向に係合することでトルクが伝達され、
前記駆動側部材と前記従動側部材との何れか一方の部材が、他方の部材に対して前記軸線方向へ移動可能に設けられると共に、弾性部材によって前記他方の部材側に付勢されており、前記従動側部材での負荷の増大により、前記一方の部材が前記他方の部材からの離間方向へ移動することで前記カム歯の噛み合い面同士の係合を解除するトルクリミッタが形成される電動工具であって、
前記駆動側部材と前記従動側部材とのそれぞれの前記カム歯は、正転側と逆転側とで前記噛み合い面のリード角が異なるように形成されて、且つ前記駆動側部材から前記従動側部材への伝達トルクは、正転と逆転とで等しくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、カム歯の噛み合い面のリード角を異ならせているので、トルクリミッタの作動時にカム歯同士が衝突しにくくなる。たとえカム歯同士が衝突したとしても衝撃が緩和される。よって、カム歯にダレが生じにくくなる。また、正転と逆転とでリード角を異ならせても伝達トルクは等しいため、トルクリミッタでの回転伝達に差が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ハンマドリルの一部中央縦断面図である。
図2】アウタハウジングを省略した駆動機構部分の斜視図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4図3のB-B線断面図である。
図5図3のC-C線断面図である。
図6】駆動側カム部及び従動側カム部の一部を展開して示すトルクリミッタの説明図である。
図7】駆動側カム部及び従動側カム部の一部を展開して示すトルクリミッタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、各カム歯のリード角は、正転側の噛み合い面の方が、逆転側の噛み合い面よりも小さく形成されており、且つ他方の部材のカム歯における逆転側の噛み合い面は、正転側の噛み合い面よりも一方の部材側へのリフト量が小さく形成されていてもよい。この構成によれば、正転時のカム歯同士の衝突を効果的に回避できる。また、噛み合い面のリフト量を小さくしても伝達トルクを正転と逆転とで容易に等しくできる。
本開示の一実施形態において、ビットが装着される最終出力軸を有して最終出力軸の回転作動及び/又はビットの打撃作動が可能であり、トルクリミッタは、最終出力軸より前段に配置されてモータのトルクを最終出力軸に伝達する回転軸に設けられていてもよい。この構成によれば、ハンマドリルにおけるドリルモード及びハンマドリルモードでのトルクリミッタが容易に適用できる。
【0010】
本開示の一実施形態において、最終出力軸への回転伝達用の回転軸と、ビットの打撃作動用の回転軸とを有し、トルクリミッタが設けられる回転軸は、回転伝達用の回転軸であってもよい。この構成によれば、回転伝達用の回転軸を利用してトルクリミッタを容易に形成可能となる。
本開示の一実施形態において、他方の部材のカム歯は、一方の部材との対向面が、正転側から逆転側へ向かうに従って一方の部材から離れる方向へ傾斜することで、一方の部材側へのリフト量が小さくなっていてもよい。この構成によれば、対向面に乗り上がったカム歯をカム歯の間へスムーズに案内でき、次のカム歯への衝突を効果的に回避できる。
本開示の一実施形態において、対向面の傾斜は、回転方向の中央から形成されていてもよい。この構成によれば、傾斜による逃がし部を設けてもカム歯の強度を確保できる。
【0011】
本開示の一実施形態において、駆動側部材と従動側部材とは、回転軸に外装されるスリーブ形状であり、一方の部材の内周面と回転軸の外周面との少なくとも一方に、グリス溜まりが凹設されていてもよい。この構成によれば、トルクリミッタで一方の部材が前後動する作動トルクを安定させることができる。
本開示の一実施形態において、グリス溜まりは、回転軸の外周面に形成されたリング状の溝であってもよい。この構成によれば、グリスが好適に保持できるグリス溜まりを容易に形成できる。
本開示の一実施形態において、回転軸には、一方の部材により押圧される他方の部材を軸線方向で受ける受け部材が、回転方向で一体に外装されており、他方の部材と受け部材との間には、複数のワッシャが、軸線方向に重ねて介在されていてもよい。この構成によれば、他方の部材と受け部材との間で発生する摩擦熱の発生を抑制可能となる。また、他方の部材と回転軸との間の摺動面でグリスを好適に保持できる。
【実施例0012】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、電動工具の一例であるハンマドリルの一部中央縦断面図である。ハンマドリル1は、外郭を形成するハウジング2を有する。ハウジング2は、前側のアウタハウジング3と、その後方のモータハウジング4と、その後方の図示しないハンドルハウジングとを有する。
モータハウジング4は、正面視の四隅で前方から4本のネジによってアウタハウジング3と連結されている。モータハウジング4には、モータ5が、出力軸6を前方に向けた姿勢で収容されている。出力軸6は、アウタハウジング3内に突出して、先端にピニオン7を形成している。
ハンドルハウジング内には、トリガを前方へ突出させた図示しないスイッチが収容されている。ハンドルハウジングには、出力軸6の回転方向を切り替えるための図示しない正逆切替ボタンが設けられている。
【0013】
アウタハウジング3は、前筒部8と後筒部9とを有する。前筒部8は、前方へ延びる横断面円形の筒状である。後筒部9は、前筒部8より大径の筒状である。前筒部8は、後筒部9の上側の偏心位置に配置されている。
前筒部8内には、筒状のツールホルダ10が同軸で収容されている。ツールホルダ10の前端は、前筒部8から前方へ突出している。前筒部8の前端には、ツールホルダ10の前部を支持する軸受11が保持されている。軸受11の前方には、前筒部8とツールホルダ10との間をシールするオイルシール12が設けられている。前筒部8から突出するツールホルダ10の前端には、操作スリーブ13が設けられている。操作スリーブ13は、ツールホルダ10の前端でビットBを着脱操作するために設けられる。
【0014】
アウタハウジング3内には、駆動機構15が設けられている。駆動機構15は、回転/打撃作動部16と、その下方の回転/打撃切替部17とを有している。
回転/打撃作動部16は、ツールホルダ10と、ピストンシリンダ18と、ストライカ19と、インパクトボルト20とを有している。ピストンシリンダ18は、前端を開口し、ツールホルダ10の後部で前後移動可能に収容されている。ストライカ19は、ピストンシリンダ18内に空気室21を介して前後移動可能に収容されている。インパクトボルト20は、ストライカ19の前方でツールホルダ10内へ前後移動可能に収容されている。ツールホルダ10の後部は、後筒部9内に突出している。後筒部9内でツールホルダ10の外周には、ギヤ22が設けられている。
後筒部9内には、インナハウジング25が収容されている。インナハウジング25は、図2にも示すように、前板部26と、中間部27と、後板部28とを有している。前板部26は、ツールホルダ10が貫通して後筒部9内に保持される。中間部27は、軸受メタル29を介してツールホルダ10の後部を支持している。後板部28は、外周面にOリング30を有して後筒部9との間をシールしている。後板部28は、出力軸6を支持している。
【0015】
インナハウジング25は、回転/打撃切替部17を支持している。回転/打撃切替部17は、図3に示すように、ツールホルダ10の下側で左右2本の第1、第2中間軸31,32を備えている。第1、第2中間軸31,32は、互いに平行で且つツールホルダ10と平行に配置されている。
左側の第1中間軸31は、図4及び図5に示すように、後端がインナハウジング25の後板部28に軸受33を介して回転可能に支持される。第1中間軸31の前端は、インナハウジング25の前板部26に軸受34を介して回転可能に支持される。第1中間軸31の後部には、受けスリーブ35が、圧入によって一体に外装されている。受けスリーブ35は、前端にフランジ36を備えている。受けスリーブ35と軸受33との間には、ワッシャ37が介在されている。
【0016】
受けスリーブ35には、第1ギヤ38が外装されている。第1ギヤ38は、出力軸6のピニオン7と噛合して、受けスリーブ35と別体で回転する。第1ギヤ38の前部には、前後方向に延びる複数の歯からなるギヤ側係合部39が設けられている。
受けスリーブ35の前側で第1中間軸31には、駆動側スリーブ40が外装されている。駆動側スリーブ40は、第1中間軸31とは別体で回転可能且つ軸線方向へ移動可能に設けられている。受けスリーブ35と駆動側スリーブ40との間で第1中間軸31には、2枚のワッシャ41A,41Bが軸線方向に重なって外装されている。前側のワッシャ41Aは、駆動側スリーブ40の後端に当接している。後側のワッシャ41Bは、受けスリーブ35のフランジ36に当接している。
【0017】
駆動側スリーブ40の前部には、駆動側カム部42が設けられている。駆動側カム部42は、リング状で、前面に、同心円上に配置されて前方へ突出する3つのカム歯43,43・・を有している。
図6Aは、駆動側カム部42の一部展開図である。カム歯43は、周方向の前後に噛み合い面44A,44Bを有して駆動側カム部42の径方向に延びる横断面台形状となっている。噛み合い面44Aが正転(前方に向かって左回り)側、噛み合い面44Bが逆転側となる。但し、カム歯43では、後述する従動側スリーブ60との対向面45が、周方向の中央から逆転側へ向かうに従って徐々に低くなるように傾斜する傾斜平面となっている。よって、対向面45の噛み合い面44B側には、切欠き状の逃がし部46が形成されている。これにより、噛み合い面44A,44Bのリフト量(従動側スリーブ60側への立ち上がり量)は、噛み合い面44Bの方が噛み合い面44Aよりも小さくなっている。
また、噛み合い面44Aのリード角(駆動側カム部42の軸線との直交面に対する角度)αは、噛み合い面44Bのリード角βよりも小さくなっている。
【0018】
駆動側カム部42の後側で駆動側スリーブ40の外周には、第1スプライン部50が形成されている。
第1スプライン部50には、第1クラッチ51がスプライン結合されている。第1クラッチ51は、駆動側スリーブ40と一体回転可能且つ前後移動可能に設けられている。第1クラッチ51は、複数の爪からなる前係合部52を備えている。第1クラッチ51は、前後方向に延びる複数の歯からなる後係合部53を備えている。第1クラッチ51は、後退位置で後係合部53が第1ギヤ38のギヤ側係合部39と係合可能となっている。よって、第1ギヤ38の回転は、第1クラッチ51を介して駆動側スリーブ40に伝達される。
駆動側スリーブ40の前側で第1中間軸31の外周面には、リング状の内溝54が形成されている。内溝54の位置で第1中間軸31の外周面には、3つの内嵌合溝55,55・・が形成されている。内嵌合溝55は、内溝54と交差して前後方向に延び、第1中間軸31の周方向に等間隔で形成されている。
【0019】
内溝54及び内嵌合溝55の位置で第1中間軸31には、従動側スリーブ60が外装されている。従動側スリーブ60の内周面には、リング状の外溝61が形成されている。外溝61は、第1中間軸31の内溝54と略同じ前後幅を有している。従動側スリーブ60の内周面には、3つの外嵌合溝62,62・・が形成されている。外嵌合溝62は、外溝61と交差して前後方向に延び、従動側スリーブ60の周方向に等間隔で形成されている。外嵌合溝62は、従動側スリーブ60の全長に亘って形成されている。
第1中間軸31の内嵌合溝55と従動側スリーブ60の外嵌合溝62との間には、両者に跨がって3本のピン63,63・・が嵌合している。このピン63により、従動側スリーブ60は、第1中間軸31と回転方向で一体で且つ前後方向へは別体で移動可能に連結される。
【0020】
従動側スリーブ60の後部には、従動側カム部64が設けられている。従動側カム部64は、リング状で、後面に、同心円上に配置されて後方へ突出する3つのカム歯65,65・・を有している。
カム歯65も、図6Aに示すように、周方向の前後に噛み合い面66A,66Bを有して従動側カム部64の径方向に延びる横断面台形状となっている。噛み合い面66Aが正転側、噛み合い面66Bが逆転側となる。但し、カム歯65では、駆動側スリーブ40との対向面67は、平坦となっている。噛み合い面66A,66Bのリード角α,βは、駆動側スリーブ40の駆動側カム部42の噛み合い面44A,44Bのリード角α,βと同じ角度で形成されている。すなわち、噛み合い面66Aのリード角αは、噛み合い面66Bのリード角βよりも小さくなっている。
【0021】
第1中間軸31の前部には、第2ギヤ70が形成されている。第2ギヤ70は、ツールホルダ10のギヤ22と噛合している。従動側スリーブ60と第2ギヤ70との間で第1中間軸31には、コイルバネ71が外装されている。コイルバネ71により、従動側スリーブ60は、後退位置に付勢される。この後退位置で従動側カム部64は、駆動側カム部42に当接してカム歯43,65同士が回転方向で係合する。すなわち、駆動側カム部42と従動側カム部64とが、コイルバネ71の付勢力によって回転方向で係合するトルクリミッタ72が形成される。
よって、第1クラッチ51の後退位置では、第1ギヤ38の回転が第1クラッチ51を介して駆動側スリーブ40に伝えられる。駆動側スリーブ40の回転は、駆動側カム部42と従動側カム部64との係合により、従動側スリーブ60に伝えられる。従動側スリーブ60の回転は、ピン63を介して第1中間軸31に伝えられる。よって、第2ギヤ70が回転してギヤ22を介してツールホルダ10を回転させることになる。
従動側スリーブ60の後退位置で従動側スリーブ60の外溝61は、第1中間軸31の内溝54と径方向でオーバーラップしている。よって、両溝61,54の間はグリス溜まりとなる。
【0022】
このトルクリミッタ72では、ビットBが不意にロックされる等すると、コイルバネ71の付勢力を越える負荷がツールホルダ10側から従動側スリーブ60に加わる。すると、正転の場合、図6Bに示すように、従動側カム部64(従動側スリーブ60)が、駆動側カム部42との間でカム歯43,65の噛み合い面44A,66A同士の案内で前進し、カム歯65がカム歯43に乗り上がる。そのまま駆動側カム部42(駆動側スリーブ40)は回転を続けるため、カム歯65は、図6Cに示すように、カム歯43の対向面45上で周方向に相対移動する。そして、カム歯65は、逃がし部46に達すると、図7A及び図7Bに示すように、コイルバネ71の付勢により逃がし部46に沿って後退しながら周方向へ相対移動する。よって、カム歯65は、カム歯43を相対的に乗り越えて、図7Cに示すように、周方向で隣接する次のカム歯43に再係合する。このときカム歯65は、逃がし部46に沿って後退するため、次のカム歯43に衝突することなくカム歯43,43の間に嵌まって再係合できる。
このカム歯43,65同士の乗り越えと再係合との繰り返しによって駆動側スリーブ40が従動側スリーブ60に対して空転する。よって、従動側スリーブ60及び第1中間軸31への回転伝達が遮断される。
【0023】
一方、第1クラッチ51が第1の前進位置へ前進すると、第1ギヤ38から離間する。よって、第1ギヤ38の回転は駆動側スリーブ40へ伝達されなくなる。よって、駆動側スリーブ40と係合する従動側スリーブ60及び第1中間軸31にはトルクが伝わらなくなる。
第1中間軸31の左下側には、ロックプレート75が設けられている。ロックプレート75は、ロック爪76を後ろ向きに備えている。ロックプレート75の前側には、コイルバネ77が設けられている。ロック爪76は、第1クラッチ51が第1の前進位置よりも前方の第2の前進位置まで前進すると、第1クラッチ51の前係合部52に係合する。よって、第1クラッチ51及び駆動側スリーブ40の回転はロックされる。従って、駆動側スリーブ40と係合する従動側スリーブ60を介して第1中間軸31及びツールホルダ10の回転はロックされる。
【0024】
右側の第2中間軸32は、図5に示すように、後端がインナハウジング25の後板部28に軸受80を介して回転可能に支持される。第2中間軸32の前端は、前板部26に軸受81を介して回転可能に支持される。第2中間軸32の後部には、出力軸6のピニオン7と噛合する第3ギヤ82が、一体回転可能に固定されている。第3ギヤ82の前方で第2中間軸32には、ボススリーブ83が別体で回転可能に外装されている。ボススリーブ83には、軸線を傾けたスワッシュベアリング84が設けられている。スワッシュベアリング84の外輪には、アーム85が上向きに突設されている。アーム85の先端は、ピストンシリンダ18の後端に連結されている。ボススリーブ83の内周には、前後方向へ延びる複数の歯を備えたボス側係合筒86が一体に結合されている。
【0025】
ボススリーブ83の前方で第2中間軸32には、第2スプライン部87が形成されている。第2スプライン部87には、第2クラッチ88がスプライン結合されている。第2クラッチ88は、第2中間軸32と一体回転可能且つ前後移動可能に設けられて、後部に、前後方向へ延びる複数の歯からなるクラッチ側係合部89を備えている。第2クラッチ88は、後退位置でクラッチ側係合部89がボススリーブ83のボス側係合筒86に係合する。よって、第2中間軸32の回転は、第2クラッチ88を介してボススリーブ83に伝達される。第2クラッチ88が前進すると、クラッチ側係合部89がボス側係合筒86から離間して第2中間軸32の回転はボススリーブ83に伝達されなくなる。
【0026】
図1図4に示すように、第1、第2中間軸31,32の下方には、モード切替機構90が設けられている。モード切替機構90は、ロッド91と、切替ツマミ92とを有している。
ロッド91は、第1、第2中間軸31,32と平行に設けられている。ロッド91は、後端が後板部28に支持され、前端が後筒部9に支持されている。ロッド91は、2つの第1、第2プレート93,94を前後移動可能に備えている。第1プレート93は、ロッド91の後部でロッド91に貫通されている。第2プレート94は、ロッド91の前部でロッド91に貫通されている。第1プレート93の前端は、第1クラッチ51の外周に係合している。第2プレート94の前端は、第2クラッチ88の外周に係合している。第1プレート93の前側でロッド91には、第1コイルバネ95が外装されている。第2プレート94の前側でロッド91には、第2コイルバネ96が外装されている。第1コイルバネ95は、第1プレート93を、後板部28の前面に当接する後退位置に付勢している。この後退位置は、第1プレート93と共に後退する第1クラッチ51の後退位置となる。第2コイルバネ96は、第2プレート94を、後述する第2偏心ピン98に当接する後退位置に付勢している。この後退位置は、第2プレート94と共に後退する第2クラッチ88の後退位置となる。
【0027】
第1、第2プレート93,94の位置は、切替ツマミ92によって変更可能である。切替ツマミ92は、後筒部9の下面へ回転操作可能に設けられている。切替ツマミ92には、後筒部9内へ突出する2本の第1、第2偏心ピン97,98が設けられている。第1偏心ピン97は、第1プレート93に後方から係合し、第2偏心ピン98は、第2プレート94に後方から係合している。
よって、切替ツマミ92を回転操作することで第1、第2偏心ピン97,98を介して第1、第2プレート93,94(第1、第2クラッチ51,88)の前後位置を切り替えることができる。すなわち、動作モードを、ドリルモード、ハンマドリルモード、ハンマモード(回転ロック)、ハンマモード(ニュートラル)に切替可能となっている。
【0028】
ドリルモードでは、第1クラッチ51が後退位置、第2クラッチ88が前進位置となる。よって、第1ギヤ38の回転は、ツールホルダ10に伝わる状態となる。一方、第3ギヤ82及び第2中間軸32の回転は、ボススリーブ83に伝わらない状態となる。よって、モータ5が駆動して出力軸6が回転すると、ツールホルダ10と共にビットBが回転のみを行う。
ハンマドリルモードでは、第1クラッチ51と第2クラッチ88とが共に後退位置となる。よって、第1ギヤ38の回転は、ツールホルダ10に伝わる状態となる。一方、第3ギヤ82及び第2中間軸32の回転も、ボススリーブ83に伝わる状態となる。よって、出力軸6が回転すると、ビットBは回転すると共に、ボススリーブ83が回転してアーム85を前後に揺動させる。従って、ピストンシリンダ18が往復動してストライカ19を往復動させ、インパクトボルト20を介してビットBを打撃する。
【0029】
ハンマモード(回転ロック)では、第1クラッチ51が第2の前進位置、第2クラッチ88は後退位置となる。よって、第1ギヤ38の回転は、ツールホルダ10に伝わらない状態となる。但し、第1クラッチ51はロックプレート75に係合するため、ツールホルダ10の回転はロックされる。一方、第3ギヤ82及び第2中間軸32の回転は、ボススリーブ83に伝わる状態となる。よって、出力軸6が回転すると、ビットBは軸線周りに固定されて回転せず、ボススリーブ83が回転してアーム85が前後に揺動する。従って、ビットBの打撃作動のみが行われる。
ハンマモード(ニュートラル)では、第1クラッチ51が第1の前進位置、第2クラッチ88は後退位置となる。よって、第1ギヤ38の回転は、ツールホルダ10に伝わらない状態となる。但し、第1クラッチ51はロックプレート75に係合しないため、ツールホルダ10の回転はフリーとなる。一方、第3ギヤ82及び第2中間軸32の回転は、ボススリーブ83に伝わる状態となる。よって、出力軸6が回転すると、ビットBは回転せず、ボススリーブ83が回転してアーム85が前後に揺動する。従って、ビットBの打撃作動のみが行われる。
【0030】
こうしてドリルモード又はハンマドリルモードで作動する際、トルクリミッタ72では、モータ5の正逆何れの回転であっても、駆動側スリーブ40の駆動側カム部42と従動側スリーブ60の従動側カム部64とのカム歯43,65同士の噛み合いにより、トルク伝達がなされる。ここで、駆動側カム部42のカム歯43では、逃がし部46により、逆転側の噛み合い面44Bが正転側の噛み合い面44Aよりもリフト量が小さくなっているが、リード角βは正転側の噛み合い面44Aのリード角αよりも大きくなっているため、伝達トルクは正逆同じとなる。
そして、トルクリミッタ72では、ビットBが不意にロックされる等すると、コイルバネ71の付勢力を越える負荷がツールホルダ10側から従動側スリーブ60に加わる。すると、前述のように従動側スリーブ60が前後動し、従動側カム部64のカム歯65を駆動側カム部42のカム歯43に対して繰り返し係脱させる。よって、駆動側スリーブ40が空転して従動側スリーブ60への回転伝達が遮断される。このとき、従動側カム部64のカム歯65は、駆動側カム部42のカム歯43に対して衝突することなく再係合するため、カム歯43,65にダレが生じにくくなる。
【0031】
上記形態のハンマドリル1(電動工具)は、モータ5と、モータ5の駆動により正逆方向へ共に回転可能な駆動側スリーブ40(駆動側部材)と、駆動側スリーブ40に軸線方向へ対向して設けられる従動側スリーブ60(従動側部材)とを有する。また、駆動側スリーブ40と従動側スリーブ60との互いの対向面には、所定のリード角α,βで傾斜する噛み合い面44A,44B及び66A,66Bを有する複数のカム歯43,65がそれぞれ同心円上に設けられ、互いのカム歯43,65の噛み合い面44A,44B及び66A,66B同士が回転方向に係合することでトルクが伝達される。さらに、従動側スリーブ60が、駆動側スリーブ40に対して軸線方向へ移動可能に設けられると共に、コイルバネ71(弾性部材)によって駆動側スリーブ40側に付勢されており、従動側スリーブ60での負荷の増大により、従動側スリーブ60が駆動側スリーブ40からの離間方向へ移動することでカム歯43,65の噛み合い面44A,44B及び66A,66B同士の係合を解除するトルクリミッタ72が形成される。そして、駆動側スリーブ40と従動側スリーブ60とのそれぞれのカム歯43,65は、正転側と逆転側とで噛み合い面44A,44B及び66A,66Bのリード角α,βが異なるように形成されて、且つ駆動側スリーブ40から従動側スリーブ60への伝達トルクは、正転と逆転とで等しくなっている。
【0032】
この構成によれば、カム歯43,65の噛み合い面44A,44B及び66A,66Bのリード角α,βを異ならせているので、トルクリミッタ72の作動時にカム歯43,65同士が衝突しにくくなる。たとえカム歯43,65同士が衝突したとしても衝撃が緩和される。よって、カム歯43,65にダレが生じにくくなる。また、正転と逆転とでリード角α,βを異ならせても伝達トルクは同じであるため、トルクリミッタ72での回転伝達に差が生じない。
【0033】
各カム歯43,65のリード角α,βは、正転側の噛み合い面44A,66Aの方が、逆転側の噛み合い面44B,66Bよりも小さく形成されており、且つ駆動側スリーブ40のカム歯43における逆転側の噛み合い面44Bは、正転側の噛み合い面44Aよりも従動側スリーブ60側へのリフト量が小さく形成されている。よって、正転時のカム歯43,65同士の衝突を効果的に回避できる。また、噛み合い面44Bのリフト量を小さくしても伝達トルクを正転と逆転とで容易に等しくできる。
ビットBが装着されるツールホルダ10(最終出力軸)を有してツールホルダ10の回転作動及び/又はビットBの打撃作動が可能であり、トルクリミッタ72は、ツールホルダ10より前段に配置されてモータ5のトルクをツールホルダ10に伝達する第1中間軸31(回転軸)に設けられている。よって、ハンマドリル1におけるドリルモード及びハンマドリルモードでのトルクリミッタ72が容易に適用できる。
【0034】
ツールホルダ10への回転伝達用の第1中間軸31(回転軸)と、ビットBの打撃作動用の第2中間軸32(回転軸)とを有し、トルクリミッタ72が設けられる回転軸は、回転伝達用の第1中間軸31となっている。よって、第1中間軸31を利用してトルクリミッタ72を容易に形成可能となる。
駆動側スリーブ40のカム歯43は、従動側スリーブ60との対向面45が、正転側から逆転側へ向かうに従って従動側スリーブ60から離れる方向へ傾斜することで、従動側スリーブ60側へのリフト量が小さくなっている。よって、対向面45に乗り上がったカム歯65をカム歯43,43の間へスムーズに案内でき、次のカム歯43への衝突を効果的に回避できる。
対向面45の傾斜は、回転方向の中央から形成されている。よって、傾斜による逃がし部46を設けてもカム歯43の強度を確保できる。
【0035】
駆動側スリーブ40と従動側スリーブ60とは、第1中間軸31に外装されるスリーブ形状であり、従動側スリーブ60の内周面と第1中間軸31の外周面とに、グリス溜まりとなる内溝54と外溝61とが凹設されている。よって、トルクリミッタ72で従動側スリーブ60が前後動する作動トルクを安定させることができる。
グリス溜まりは、第1中間軸31の外周面に形成されたリング状の内溝54(溝)である。よって、グリスが好適に保持できるグリス溜まりを容易に形成できる。
第1中間軸31には、従動側スリーブ60により押圧される駆動側スリーブ40を軸線方向で受ける受けスリーブ35(受け部材)が、回転方向で一体に外装されており、駆動側スリーブ40と受けスリーブ35との間には、2枚のワッシャ41A,41Bが、軸線方向に重ねて介在されている。よって、駆動側スリーブ40と受けスリーブ35との間で発生する摩擦熱の発生を抑制可能となる。また、駆動側スリーブ40と第1中間軸31との間の摺動面でグリスを好適に保持できる。
【0036】
以下、変更例について説明する。
カム歯に設ける逃がし部は、傾斜平面によるものに限らない。逃がし部は、傾斜曲面(凹曲面と凸曲面とを含む)としたり、凹状の切欠きとしたりして形成することもできる。
駆動側カム部と従動側カム部とのそれぞれのカム歯の数は、増減可能である。
上記形態では、逃がし部を設けるカム歯を駆動側カム部に設けているが、従動側カム部に設けてもよい。
但し、カム歯に逃がし部を設けず、噛み合い面のリード角の変更のみでもカム歯のダレは抑制できる。例えば正転側の噛み合い面のリード角を逆転側よりも小さくするだけでも、正転時のトルクリミッタの作動時にカム歯同士が衝突しにくくなる上、衝突しても衝撃は抑えられる。
また、カム歯に逃がし部を設けなくても、例えば正転時と逆転時とでトルクリミッタのコイルバネの圧縮量を機械的に変える等すれば、伝達トルクを正逆で等しくすることはできる。
【0037】
従動側スリーブの回り止めは、ピンによるものに限らない。キー結合やスプライン結合も採用できる。
上記形態では、グリス溜まりを、従動側スリーブと第1中間軸とにそれぞれ設けた溝により形成しているが、何れか一方に設けた溝でもよい。溝の幅も変更可能である。溝を複数設けることもできる。
上記形態では、従動側スリーブを前後移動可能に設けて駆動側スリーブに係脱させているが、これと逆でもよい。すなわち、駆動側スリーブを前後移動可能に設けて従動側スリーブに係脱させてもよい。
駆動側部材と従動側部材とは、スリーブ形状に限らない。弾性部材もコイルバネ以外に皿バネ等が採用できる。
【0038】
上記形態では、中間軸を2本備えてそのうちの1本にトルクリミッタを設けているが、トルクリミッタは、中間軸が1本タイプであればその中間軸に設ければよい。
また、トルクリミッタは、ツールホルダの前段の中間軸(回転軸)に設ける場合に限らない。例えばツールホルダに設けられるギヤをツールホルダと別体の駆動側部材とし、ツールホルダに一体の従動側部材を設けて、ギヤを従動側部材にコイルバネ等で付勢してトルクリミッタが形成される場合がある。このトルクリミッタにも本発明は適用可能である。
その他、モータの向きは、前後方向に限らず、適宜変更できる。
モータは、ブラシ付きモータに限らず、ブラシレスモータも採用できる。
電源は、商用電源でなく、バッテリパックであってもよい。
打撃作動は、ピストンシリンダでなく、固定されたシリンダ内でピストンが往復動する構造であってもよい。インパクトボルトがなく、ストライカが直接ビットを打撃する構造であってもよい。クランク機構を備えてモータの回転をピストンシリンダ等の往復動に変換する構造であってもよい。
本発明は、ハンマドリルに限らず、機械式のトルクリミッタを備えたものであれば、ドライバドリルやスクリュードライバ等の締結工具といった他の電動工具にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1・・ハンマドリル、2・・ハウジング、3・・アウタハウジング、4・・モータハウジング、5・・モータ、6・・出力軸、8・・前筒部、9・・後筒部、10・・ツールホルダ、15・・駆動機構、16・・回転/打撃作動部、17・・回転/打撃切替部、18・・ピストンシリンダ、19・・ストライカ、22・・ギヤ、25・・インナハウジング、31・・第1中間軸、32・・第2中間軸、35・・受けスリーブ、38・・第1ギヤ、40・・駆動側スリーブ、41A,41B・・ワッシャ、42・・駆動側カム部、43,65・・カム歯、44A,44B,66A,66B・・噛み合い面、45,67・・対向面、46・・逃がし部、51・・第1クラッチ、54・・内溝、660・・従動側スリーブ、61・・外溝、63・・ピン、64・・従動側カム部、70・・第2ギヤ、71・・コイルバネ、72・・トルクリミッタ、83・・ボススリーブ、88・・第2クラッチ、90・・モード切替機構、92・・切替ツマミ、B・・ビット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7