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特開2022-12814推奨価格計算装置、推奨価格計算方法、およびプログラム
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  • 特開-推奨価格計算装置、推奨価格計算方法、およびプログラム 図1
  • 特開-推奨価格計算装置、推奨価格計算方法、およびプログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012814
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】推奨価格計算装置、推奨価格計算方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20220107BHJP
   G16Y 10/45 20200101ALI20220107BHJP
【FI】
G06Q30/02 318
G06Q30/02 310
G16Y10/45
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114907
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】517034581
【氏名又は名称】メトロエンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 良介
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB02
(57)【要約】
【課題】様々な商品の価格設定に適用できる、自動ダイナミックプライシングの方法を提供する。
【解決手段】対象日における商品の推奨提供価格を計算する推奨価格計算装置であって、ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する基準価格算出部と、対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する競合価格要素算出部と、対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する需要予測要素算出部と、基準価格と、競合価格要素と、需要予測要素に基づいて、対象日におけるユーザの商品の推奨価格を算出する推奨価格算出部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象日における商品の推奨提供価格を計算する推奨価格計算装置であって、
ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する基準価格算出部と、
前記対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する競合価格要素算出部と、
前記対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する需要予測要素算出部と、
前記基準価格と、前記競合価格要素と、前記需要予測要素に基づいて、前記対象日における前記ユーザの前記商品の推奨価格を算出する推奨価格算出部と、を備えた推奨価格計算装置。
【請求項2】
前記基準価格算出部は、
前記ユーザと前記競合者による過去の提供価格の平均値を、前記ユーザの過去の提供価格の平均値と前記競合者の過去の提供価格の平均値との差分で補正することにより、前記基準価格を算出する、請求項1に記載の推奨価格計算装置。
【請求項3】
前記競合価格要素算出部は、
前記対象日における競合者による提供価格を、競合者の過去の提供価格の平均と標準偏差で標準化することにより、競合価格要素を算出する、請求項1または2に記載の推奨価格計算装置。
【請求項4】
前記需要予測要素算出部は、
前記対象部における需要予測値を、過去の需要実績の平均と標準偏差で標準化することにより、需要予測要素を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の推奨価格計算装置。
【請求項5】
対象日における商品の推奨提供価格を計算する推奨価格計算方法であって、
ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する工程と、
前記対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する工程と、
前記対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する工程と、
前記基準価格と、前記競合価格要素と、前記需要予測要素に基づいて、前記対象日における前記ユーザの前記商品の推奨価格を算出する工程と、を備えた推奨価格計算方法。
【請求項6】
対象日における商品の推奨提供価格を計算するコンピュータを、
ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する基準価格算出部と、
前記対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する競合価格要素算出部と、
前記対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する需要予測要素算出部と、
前記基準価格と、前記競合価格要素と、前記需要予測要素に基づいて、前記対象日における前記ユーザの前記商品の推奨価格を算出する推奨価格算出部として、機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推奨価格計算装置、推奨価格計算方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
宿泊施設では、収益を拡大するため、適正な宿泊料金の設定を支援するシステムが利用されるようになっている。(例えば、特許文献1及び特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-027461号公報
【特許文献2】特開2016-167305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
宿泊施設や飛行機の価格については、需要予測等に応じたダイナミックプライシングが一般的になっている。近年では、レンタカーや高速バスなどの交通事業においても、ダイナミックプライシングを導入する例が増えている。しかし、現状では、情報収集から価格設定まで、担当者の経験と勘に頼っており、精度や労力の点からも、適切な方法で自動化することが望まれている。
【0005】
そこで本発明の目的は、様々な商品の価格設定に適用できる、自動ダイナミックプライシングの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る推奨価格計算装置は、対象日における商品の推奨提供価格を計算する推奨価格計算装置であって、ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する基準価格算出部と、前記対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する競合価格要素算出部と、前記対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する需要予測要素算出部と、前記基準価格と、前記競合価格要素と、前記需要予測要素に基づいて、前記対象日における前記ユーザの前記商品の推奨価格を算出する推奨価格算出部とを備えたものである。
【0007】
本発明に係る推奨価格計算方法は、対象日における商品の推奨提供価格を計算する推奨価格計算方法であって、ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する工程と、前記対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する工程と、前記対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する工程と、前記基準価格と、前記競合価格要素と、前記需要予測要素に基づいて、前記対象日における前記ユーザの前記商品の推奨価格を算出する工程とを備えたものである。
【0008】
本発明に係るプログラムは、対象日における商品の推奨提供価格を計算するコンピュータを、ユーザによる過去の提供価格に基づいて、基準価格を算出する基準価格算出部と、前記対象日における競合者による提供価格と、競合者の過去の提供価格に基づいて、競合価格要素を算出する競合価格要素算出部と、前記対象日における需要予測値と、過去の需要実績に基づいて、需要予測要素を算出する需要予測要素算出部と、前記基準価格と、前記競合価格要素と、前記需要予測要素に基づいて、前記対象日における前記ユーザの前記商品の推奨価格を算出する推奨価格算出部として機能させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、様々な商品の価格設定に適用できる、自動ダイナミックプライシングの方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による、推奨価格計算装置10の構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施の形態による、推奨価格計算装置10によるレンタカーの推奨価格の算出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による推奨価格計算装置10の構成を示すブロック図である。推奨価格計算装置10は汎用的なコンピュータである。推奨価格計算装置10は1台のコンピュータで構成される必要はなく、通信ネットワーク上に分散する複数のクラウドサーバや記憶装置から構成されていてもよい。
【0012】
推奨価格計算装置10は、制御装置11(基準価格算出部111、競合価格要素算出部112、需要予測要素算出部113、推奨価格算出部114)と、記憶装置12を備えている。制御装置11は、ハードウェアとして、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース及びこれらを結ぶバス等を備えている。制御装置11は、CPUがROM等に格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。記憶装置12は、ハードディスクドライブ等である。
【0013】
本実施形態では、推奨価格計算装置10は、レンタカー会社Aが提供するレンタカーの対象日(貸出日)における推奨価格の算出を行う。具体的には、レンタカー会社Aの過去の実績、競合他社の実績、需要予測等に基づいてダイナミックプライシングを行う。
【0014】
次に、推奨価格計算装置10によるレンタカーの推奨価格の算出処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。推奨価格は車両のクラスごとに設定する。以下の処理で用いるレンタカー会社Aや競合他社における料金のデータや、需要予測の算出に用いるデータは、自社データベースの他、ネットワーク上のクラウドサーバや、レンタカー情報のサイト、旅行サイト等から取得することができる。
【0015】
(自社の実績に基づく基準価格の算出)
まず、推奨価格計算装置10は、レンタカー会社A(以下、A社)のレンタカーの料金の過去実績に基づいて、基準価格base priceを算出する。まず、A社における過去の価格の平均値a1(全クラスの車両の価格の平均値)と、競合他社を含む全ての事業者における過去の価格の平均値a2(全クラスの車両の価格の平均値)の差分D1を求める(ステップS101)。
【0016】
次に、全ての事業者における車両クラス別(例えば、クラスI)の過去の料金の平均値a3と、平均値a2との差分D2を求める(ステップS102)。
【0017】
次に、平均値a2を差分D1とD2に応じて補正することにより、A社のクラスIの基準価格base priceを算出する(ステップS103)。
【0018】
(競合他社の料金に基づく競合価格要素の算出)
次に、推奨価格計算装置10は、競合他社のレンタカーの料金に基づいて、競合価格要素を算出する(ステップS104)。競合価格要素は、対象日における競合他社のレンタカー料金に応じた値である。
【0019】
競合他社は、貸し出している車両のクラスや貸出期間などの点でA社と一致点がある事業者を一定数以上(例えば、5社以上)設定する。競合他社は、A社からの距離が一定の範囲内にあるものの中から選択するようにしてもよい。
【0020】
推奨価格計算装置10は、下記の式(1)によって競合価格要素を算出する。
【0021】
α・σcustomer(Price competitor-μcompetitor/σcompetitor)…(1)
【0022】
式(1)において、αは、競合他社の価格への重み係数である。
【0023】
σcustomer は、自社の価格の過去実績の標準偏差である。Price competitorは、対象日における競合他社全社の料金の平均値を表している。各社の対象日における料金のデータは、レンタカー情報のサイトなどから取得することができる。
【0024】
μcompetitorは、競合他社全社の価格の過去実績の平均値であり、σcompetitorは、競合他社全社の価格の過去実績の標準偏差である。
【0025】
(需要予測に基づく需要予測要素の算出)
次に、推奨価格計算装置10は、需要予測に基づいて、需要予測要素を算出する(ステップS105)。
【0026】
本実施形態では、対象日における需要予測値に基づいて、需要予測要素を算出する。需要予測値は、1つ以上の外的要因に基づいて推定する。以下に外的要因の例について説明する。
【0027】
(気象情報)
外的要因として、対象日における天気や気温、湿度などの気象予測データを利用することができる。なお、気象庁などが提供する気象予測データは、1週間程度先の日付のものまでしかないため、それより先の対象日の気象予測データを入手することができない。そのため、本実施形態では、気象予測データと過去の気象データを用いて機械学習モデルにより予測した、対象日における天気(晴れ、曇り、雪など)、気温(最低気温、最高気温)、降水確率を使用する。
【0028】
(イベント)
外的要因として、対象日に行われるイベント(祭り、コンサート、花火大会、スポーツ、学会、セミナー、受験等)に関する情報(イベントの種類、動員数等)を利用することができる。外的要因として取り入れる判断基準としては、会場と店舗(レンタカー会社)からの距離が一定範囲内(近すぎず、遠すぎない)であることなどがあげられる。
【0029】
(休日・祝日)
外的要因には、対象日、およびその前後の日が休日または祝日であるかどうかを含めることができる。対象日が休日・祝日でない場合には、次の休日・祝日までの日数、対象日が連休に含まれる場合には、休みの連続日数なども外的要因とすることができる。
【0030】
(ホテル稼働率)
外的要因として、対象店舗(レンタカー会社)の周辺の宿泊施設の予約状況を利用してもよい。宿泊施設の稼働率とレンタカーの需要は関連性があると考えられるためである。宿泊施設の予約状況は、オンラインの宿泊予約サイトなどから取得することができる。
【0031】
推奨価格計算装置10は、下記の式(2)によって需要予測要素を算出する。
【0032】
β・σcustomer(Demand-μdemand/σdemand)…(2)
【0033】
βは、需要(予約数)への重み係数である。Demandは、対象日における需要予測値(予約数の予測値)であり、上記の外的要因の1つ以上に基づいて、機械学習モデルなどにより推定される値である。μdemandは、需要の過去実績の平均値であり、σdemandは、需要の過去実績の標準偏差である。
【0034】
次に、推奨価格計算装置10は、ステップS101~S105で求めたbase price、競合価格要素、需要予測要素を用いて、下記の式(3)により、対象日における推奨価格Price customerを算出する(ステップS106)。
【0035】
Price customer=base price+競合価格要素+需要予測要素 …(3)
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、対象日におけるユーザの推奨価格を、ユーザの過去の実績価格に基づく値を、競合他社の対象日における価格を標準化した値と、対象日における需要予測値を標準化した値で補正することにより算出するようにした。これにより、様々な業種にてきようできる自動ダイナミックプライシングの方法を提供することができる。
【0037】
需要予測値の算出においては、対象となる商品の価格に影響を与える外的要因に関する、過去の実績データおよび未来の予測データを利用するようにした。これにより、業種や商品に応じた適切な推奨価格を算出することができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【符号の説明】
【0039】
10…推奨価格計算装置
11…制御装置
12…記憶装置
111…基準価格算出部
112…競合価格要素算出部
113…需要予測要素算出部
114…推奨価格算出部
図1
図2