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特開2022-128167導光板、面発光装置、及び、その導光板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128167
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】導光板、面発光装置、及び、その導光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20220825BHJP
【FI】
F21S2/00 433
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026544
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】505408158
【氏名又は名称】株式会社マツダスクリーン
(72)【発明者】
【氏名】松田 好隆
(72)【発明者】
【氏名】稲谷 正敏
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA31
3K244BA50
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244EC19
3K244EE05
3K244LA02
(57)【要約】
【課題】 透光基板面にパターン配列された光拡散ドット等を形成してなる導光板で、抗菌効果を出すためには、抗菌フィルムや抗菌剤の処理では光屈折率が変わり見た目が悪くなる。
【解決手段】 バインダー樹脂と、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光触媒機能を有する光拡散物質粒子と、疎水性基を結合させた疎水性フュームドシリカを無機物粒子として含み、複数のドット又はホールを有する印刷層からなる発光部で、導光板の表面をきめ細かく覆うことにより、可視光応答性光触媒と可視光LED光源とで導光板表面の抗菌効果を出現させる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面に、複数の印刷されない略円形状のホールを有する印刷層、又は、複数の印刷された略円形状のドットでなる印刷層を備え、前記印刷層は、透光性を有するバインダー樹脂と、光触媒物質粒子と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子と、を含むことを特徴とする導光板。
【請求項2】
両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面に、複数の印刷されない略円形状のホールを有する印刷層、又は、複数の印刷された略円形状のドットでなる印刷層を備え、前記印刷層は、透光性を有するバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持ち、金属イオンがドーピング、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を有する光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子と、を含むことを特徴とする導光板。
【請求項3】
前記印刷層の範囲内で、前記ホールは、一つ一つが独立するもので、所定の条件でパターン配列して形成され、前記複数のホール内面は、前記透光基板の主面素地部となることを特徴とする請求項1と2に記載の導光板。
【請求項4】
前記印刷層の範囲内で、前記ドットは、一つ一つが独立するもので、所定の条件でパターン配列して形成され、前記複数のドット形成部外面は、前記透光基板の主面素地部となることを特徴とする請求項1と2に記載の導光板。
【請求項5】
前記印刷層の範囲内では、印刷された前記ドット以外の主面素地部、又は、印刷されない前記ホールの主面素地部には、2mm以上の径寸法となる仮想円を描くことができない、隣接する前記ドット間隔、又は前記ホールの大きさにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の導光板。
【請求項6】
前記疎水基を結合させた無機物粒子は、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカとしたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の導光板。
【請求項7】
前記バインダー樹脂と、前記光触媒物質粒子と、前記光拡散物質粒子と、前記疎水性フュームドシリカとの総重量を印刷層重量とした時、前記印刷層重量に対して、前記疎水性フュームドシリカが5wt%以上で35wt%以下の量を含むことを特徴とする請求項6に記載の導光板。
【請求項8】
前記バインダー樹脂は、アクリル樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の導光板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載された導光板と、前記透光基板の両主面と接する端面に配置されたLED光源と、前記導光板の前記一端面と前記LED光源とを支持するハウジング体からなる固定治具体とを備えたことを特徴とする面発光装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載された導光板と、前記透光基板の両主面と接する少なくとも一端面に配置されたLED光源と、前記導光板の前記一端面と前記LED光源とを支持する固定治具体とを備え、前記導光板とは別のUV導光板を前記導光板の片方の主面に重ねて配置し、前記UV導光板の少なくとも一端面にはピーク波長350~390nmの波長を発する近紫外線UV光源を支持する第二固定治具体を設け、前記UV導光板の前記導光板と接する反対面には反射シートを設けてなることを特徴とする面発光装置。
【請求項11】
疎水基を結合させたチキソトロピー特性を有する無機物粒子と、溶剤とを混合して溶液組成物(S)を作成する第一工程と、前記溶液組成物(S)に、金属イオンがドーピング、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を有する前記光拡散物質粒子とを混ぜることにより光拡散物質ペースト(P)を作成する第二工程と、前記バインダー樹脂を主体に含むスクリーン印刷用クリアーインキ(C)と、前記光拡散物質ペースト(P)とを混合して複合物インキ(G)を作成する第三工程と、前記複合物インキ(G)を用いて両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷工法で印刷塗布する第四工程と、前記複合物インキ(G)の溶剤等の揮発物を揮散して固形化する第五工程と、により前記透光基板の表面に複数のドットでなる印刷層、又は、複数のホールでなる印刷層を備える導光板を形成し、前記チキソトロピー特性を有する無機物粒子を合成非晶質シリカのひとつで、疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカでコーティングされた前記光触媒機能を有する光拡散物質粒子を印刷層の表面に分布するようにしたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の導光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光基板の表面にスクリーン印刷により光触媒としての機能を発揮する光拡散物質粒子を含む発光部を形成した導光板と、その導光板を用いた面発光装置、及び、その導光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置などの面状の照明を必要とする表示機器に対して、種々の面発光装置が使用されている。特に、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンやTVの液晶表示パネルの被表示体の背面に配置する面発光装置が、バックライトユニットとしてよく知られている。また、表示物を前から照らし出す、導光板自体の透光性を重視するフロントライトユニットや、さらには、導光板の両面からの光を利用した照明や、また、絵文字等の情報を表示するピクトグラムのような両面発光型パネルにも面発光装置が用いられる。
【0003】
図14は、従来技術による代表的なフロントライトユニットに用いられる面発光装置1の構成を示す概略断面図である。この面発光装置1の下部には、液晶表示素子2と反射シート3が配置され、導光板4とLED光源5とを有しており、LED光源5の光は、導光板4の入光端面部6より導光板4内部に照射される構造となっている。
【0004】
また、図15は面発光装置1の上部から見た平面図であり、図16導光板4の一部断面拡大図である。
【0005】
図15図16に示す様に、導光板4の上面には、光拡散物質粒子が含まれるドット7がパターン化されて形成され、LED光源5に面する入光端面部6は滑らかに研磨され、入光端面部6と対向する離隔端面部8及びその他の端面部には反射テープ9が貼りつけられている。
【0006】
次に、このような従来例の面発光装置1の構成における光の状態を説明する。
【0007】
LED光源5の光は、入光端面部6から入射光としてアクリル樹脂等の透光基板からなる導光板4内に入ると、アクリル樹脂と空気との光屈折率の違いによりアクリル樹脂板内で全反射し、また、側壁の離隔端面部8を含む三つの端面部に到達した光は反射テープ9で反射し導光板4内にはね返されて導光板4内部にもどり閉じこもろうとする。
【0008】
しかし、入射光が、導光板4の上面に形成された光拡散物質粒子を含む複数のドット7に当たると、ドット7内に含まれる光拡散物質粒子、又は、ドット7の表面に形成された凹凸、により拡散及び乱反射することになる。その結果、拡散及び乱反射して導光板4の下面に向かって垂直に近い角度で当たる光は下面から、ドット7を通り抜けた光は導光板4の上面から出射光として飛び出すことになる。尚、下面から飛び出した出射光は液晶表示素子2を照らすと共に、反射シート3にて反射され再度、液晶表示素子2を通り抜け、導光板4内に戻り上面からの光として出射光に加わることになる。
【0009】
導光板4の上面全体に薄く形成された光拡散物質粒子を含むドット7があると、光拡散物質粒子の表面に反射して比較的多くの光が下方に向かい下面から出射するので、液晶表示素子2を効率的に照らし出すことになり、フロントライトとしての役割を担うことができる。
【0010】
なお、このような従来の面発光装置1に使用されている導光板4は、透光基板表面にドット7をスクリーン印刷工法により、LED光源5近傍の入光端面部6側はドット7の面積比率を小さくし、LED光源5から離れるにつれ離隔端面部8に向かって徐々にドット7の面積比率を高めていくようにパターン配列化されて形成するものが主流となっている。
【0011】
このようなフロントライトとしての用途には、昨今はタブレットやスマートフォンのように直接人の指先に、また、直接外気と触れて使用する照明器具製品が増えており、特にパンデミックを引き起こすCOVID-19の様なコロナウイルスや、O-157のような集団食中毒を引き起こす大腸菌種の存在が世間を騒がしている中では、照明器具表面に抗菌・抗ウイルス特性を持たせ、安全と安心を付加することは大きな課題であり重要なニーズとなってきている。
【0012】
また、抗菌・抗ウイルスを付加する商品として、表面が抗菌処理された粘着層付抗菌フィルムや、スプレイ式の抗菌剤もあるが、導光板4のような光学シートには、粘着剤やスプレイ液体が表面に付着すると、光の屈折率が変わり、均一な出射光とならない問題点があり、表面への貼合わせやスプレイ処理は困難とされている。
【0013】
その課題を解決するために、特許文献1では、本体内に設けられた照明用発光ダイオードと、本体内に併設して設けられた紫外線発光ダイオードと、本体に前記各ダイオードに対向して設けられた透光体と、その透光体に設けられ可視光を透過する光触媒体とを具備する構成の照明装置が記載されている。
【0014】
確かに、照明装置の本体内に照明用発光ダイオードと紫外線発光ダイオードとを併設して設ければ省スペースであり、照明用発光ダイオードは、波長380~780nmの連続した白色の可視光線を発光するものなので庫内は明るくなる。また、紫外線発光ダイオードは、波長360~380nmの近紫外線を発光するもので、光触媒体を効果的にその光で持って励起させるので、脱臭、殺菌、防汚等の機能を発揮させることができる。
【0015】
しかし、透光体に設けられた光触媒に、後ろから照射する構成の場合、発光ダイオードの出射光の指向性を考慮すると、ひとつの発光ダイオードで照明として使える有効面積は非常に小さくなり、広い面積の照明として製品化するには、照明用発光ダイオードと紫外線発光ダイオードとを大量に必要となるので、省スペースとは言い難い。また、透光体の全面に光触媒を設けるために、透明性が失われ、酸化チタンを主成分とした光触媒であると、紫外線発光ダイオードを用いた、波長360~380nmの近紫外線を発光するものでも活性能力が弱くなる。また、近紫外線の発光強度を電圧調整で強くすることも可能であるが、後ろからの照射であると人体への影響、特に目に支障を与えるとのデータもあり問題であった。
【0016】
また、光触媒膜や光触媒粒子を素材に密着させて用いる場合は、無機基材の上では問題はないが、一部の有機材料を除き、一般に有機基材の上に光触媒膜や光触媒粒子を支持して用いると、上記光触媒作用により有機基材表面部が劣化するため、様々な問題が発生する。具体的には、有機基材表面部が劣化すると、その上に存在している光触媒層が足場を失うため、光触媒粒子が脱落する。またそれにより、光触媒作用の目的である、防汚性、抗菌性、脱臭性などの機能が失われるだけでなく、表面光沢が低下し、粉吹き状態になるなど、本来の外観特性や意匠性も失われてしまう。
【0017】
特許文献2では、ピーク波長350~390nmの光を発する近紫外線LEDと、可視光の白色光を発する白色LEDとからなるLED光源で、そのLED光源を側端部に配設され、光源からの光で発光する面発光体を有するもので、ピーク波長350~390nmの光を発する近紫外線LEDの発光時間を、可視光又は白色光LEDの単位発光時間当たり1/100~99/100の発光時間とするように制御されている表示体が記載されている。
【0018】
また、側端部にLED光源が配設され、光拡散剤を含む基材層と皮膜層とからなり、LED光源からの光により発光する面発光体で、基材層の厚さに対する皮膜層の厚さの比が1/300~1/7に、また、基材層の光散乱剤濃度に対する皮膜層の光散乱剤濃度の比を100/1~2000/1に制御することにより、LED光源近傍と離反面部との輝度を均一にする表示体が記載されている。
【0019】
また、面発光体の主面に、光触媒とバインダー成分とを含む光触媒組成物からなる光触媒層が被覆されている表示体が記載されている。この特許文献2の発明の詳細な説明文の中には、光触媒として使用できるものは、例えばTiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3、BaTiO4、BaTi49、K2NbO3、Nb25、Fe23、Ta25、K3Ta3Si23、WO3、SnO2、Bi23、BiVO4、NiO、Cu2O、SiC、MoS2、InPb、RuO2、CeO2、Ta35等、更にはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(特開昭62-74452号公報、特開平2-172535号公報、特開平7-24329号公報、特開平8-89799号公報、特開平8-89800号公報、特開平8-89804号公報、特開平8-198061号公報、特開平9-248465号公報、特開平10-99694号公報、特開平10-244165号公報等参照)や、窒素ドープ酸化チタン(特開平13-278625号公報、特開平13-278627号公報、特開平13-335321号公報、特開平14-029750号公報、特開平13-207082号公報等参照)や、酸素欠陥型の酸化チタン(特開平13-212457号公報参照)の如き、可視光応答型酸化チタン光触媒も好適に使用することができ、また、TaON、LaTiO2N、CaNbO2N、LaTaON2、CaTaO2N等のオキシナイトライド化合物やSm2Ti227等のオキシサルファイド化合物は可視光による光触媒活性が大きく、好適に使用することができる、と多くの光触媒種が記載されている。
【0020】
更に、これらの光触媒材料に、Pt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加或いは固定化したものや、多孔質リン酸カルシウム等で被覆された光触媒材料(特開平10-244166号公報参照)等を使用することもできる、と記載されている。
【0021】
また、この光触媒を、変性剤化合物を用いて変性処理した変性光触媒とすることが好ましいとし、光触媒の変性とは、1種の変性剤化合物を光触媒粒子の表面に固定化することを意味する。変性剤化合物の光触媒粒子の表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)やクーロン力又は化学結合によるものと考えられる。特に、化学結合を利用した変性は、変性剤化合物と光触媒との相互作用が強く、変性剤化合物が光触媒粒子の表面に強固に固定化されるので好ましい、とある。
【0022】
この表示体においては、光触媒を変性光触媒とすることにより、面発光体上に、光触媒を含む光触媒層を形成する場合に、該光触媒層中における光触媒の濃度が、面発光体に接する側から他方の露出面に向かって高くなる構造の形成が容易になり、変性光触媒を効率的に光触媒層の表面(露出面)に存在させることができるため好ましい、とある。
【0023】
また、 これらの光触媒としては、以下の理由から、光触媒粉体ではなく光触媒ゾルを使用することが好ましい、としている。すなわち、 一般に微細な粒子からなる粉体は、単結晶粒子(一次粒子)が強力に凝集した二次粒子を形成するため、無駄にする表面特性が多いが、一次粒子にまで分散させるのは非常に困難である。これに対して、光触媒ゾルの場合、光触媒粒子は溶解せずに一次粒子に近い形で存在しているため表面特性を有効に利用でき、それから生成する変性光触媒は分散安定性、成膜性等に優れるばかりか、種々の機能を有効に発現するので好ましく使用することができると、記載されている。
【0024】
また、光触媒組成物において、バインダー成分に使用できる化合物としては、変成光触媒より、表面エネルギーが2mN/m以上、好ましくは5mN/m以上大きい樹脂を選択すると、自己傾斜性が大きくなり非常に好ましい。各種単量体、合成樹脂及び天然樹脂等が挙げられ、また被膜の形成後に、乾燥、加熱、吸湿、光照射等により硬化するものも挙げることができる。また、その形態については、無溶媒の状態であっても溶媒に溶解或いは分散した形態であっても良く、具体的には、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン-アクリル樹脂等を挙げることができ、また、天然高分子としては、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、天然ゴム等のイソプレン系樹脂、カゼイン等のタンパク質系樹脂やでんぷん等を挙げることができる。最も良いのはフェニル基含有シリコーン(BP)が、変性光触媒より表面エネルギーが高く、その骨格を成すシロキサン結合(-O-Si-)は光触媒作用による酸化分解が起こらないため、最も好適に使用できる、とある。
【0025】
以上の特許文献2に記載された内容について考察する。
【0026】
確かに、ピーク波長350~390nmの光を発するLEDの発光時間を、可視光又は白色光LEDの単位発光時間当たり発光時間を短く制御すれば、光触媒作用により有機基材表面部が分解したりする問題は少なくなる。
【0027】
しかしながら、照射時間を短時間で制御することは、光触媒が活性化している時間も同時に短くなり、本来の脱臭効果や有機物の分解や抗菌効果が犠牲となるもので、良い対応策とはなり得なかった。
【0028】
また、確かに、側端部にLED光源が配設され、光拡散剤を含む基材層と皮膜層とからなり、LED光源からの光により発光する面発光体で、基材層の厚さに対する皮膜層の厚さの比を極力薄くし、基材層の光散乱剤濃度に対する皮膜層の光散乱剤濃度の比を高めるようなに制御すれば、LED光源近傍と離反面部との輝度は均一になる傾向を示す。
【0029】
また、側端部にLED光源を置き、その光により発光する面発光体(導光板)とし、光拡散物質の濃度制御により乱反射を高め、LED光の低い指向性を導光板に広げることは可能であり、大きな面積のものも照明ができ、コスト的にもメリットがある。
【0030】
しかしながら、如何に、傾斜化技術を駆使して、相性の良い素材を探索して適用したとしても、発光体の厚み方向に対し基材層と皮膜層の比率を制御するだけで、また、厚み方向に対し光拡散物質の濃度を制御して、奥行きに光をとおりやすくしても、LED光源付近から奥行きに向かって乱反射して出てくる光の量は減衰し、奥行きに向かって暗くなる問題点は残され解決できるものではなかった。
【0031】
また、面発光体の主面に、光触媒とバインダー成分とを含む光触媒組成物からなる光触媒層が被覆されている表示体が記載されており、光触媒として使用できるものとして、例えばTiO2、ZnO、Fe23、WO3、等の他、更にはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物や、窒素ドープ酸化チタンや、酸素欠陥型の酸化チタンの如き、可視光応答型酸化チタン光触媒も好適に使用することができ、また、これらの光触媒材料に、Pt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加或いは固定化したものや、多孔質リン酸カルシウム等で被覆された光触媒材料等を使用することもできるとあるが、結局、どれも有機物との混合化においては光触媒としての活性を発揮すれば有機物を劣化させることとなるものである。
【0032】
また、この光触媒を、変性剤化合物を用いて変性処理した変性光触媒とすることで、変性剤化合物と光触媒との相互作用が強く、変性剤化合物が光触媒粒子の表面に強固に固定化されるので好ましいとされ、バインダー成分に適度に使用できる化合物を選択して、傾斜化を使って光触媒の濃度が、面発光体に接する側から他方の露出面に向かって高くなる構造の形成が容易になるとしても、導光板としての光の均一化を良好にする解決策にはなりえないものであった。
【0033】
特許文献3では、導光板と、導光板の側面に設けられたLED光源部とを備えた照明装置であって、前記導光板から出射される光線の通過位置に光触媒が配設されており、LED光源部が、前記導光板の対向する側面に設けられた一対の白色系LEDユニットと、前記白色系LEDユニットと直交する前記導光板の対向する側面に設けられた一対の紫外線を含む光線を照射する青色系LEDユニットとを用いて構成されている、また、反射シート上には、複数の反射ドットが形成された照明装置が記載されている。
【0034】
確かに、導光板から出射される光線の通過位置に光触媒が配置されており、LED光源部が、光触媒を励起し得る波長の光線を照射すべく、白色系LEDと直行する位置の側壁から、紫外線を含むLED光線を照射することで構成されているので、光触媒が励起し、空気清浄機能を有する照明装置とすることができる。また、反射シート面のドットをパターン化することでLED光源近傍と奥行きとの照度を均一化することも可能となり、すなわち、LED光源を用いて、省エネルギー、長寿命を実現可能であると共に、空気清浄機能を備え、室内での使用に適した、面状の照明装置を得ることができる。
【0035】
しかしながら、この照明装置は、導光板とは別部品となる触媒を形成した拡散シートが必要であり、部材点数が多くなることにより製品コストが高くなる。また、同じ導光板を使用して、白色系LEDと、直行する位置の側壁から近紫外線を含むLED光線を照射する構成であると、同じドットパターンでのドットを使用するので、白色光での導光板全体の均一性が保たれたとしても、近紫外線を含む青色LED光については、屈折率が大きい分LED光源近傍の導光板付近のみが強い紫外線光を受けることとなり、紫外線を発するLED光源から離れるにつれ、極端に強度が弱まることとなる。すなわち、導光板の紫外線LED近傍だけが、空気清浄効果を持つものとなって、十分な清浄効果が生まれない問題点があった。
【0036】
本発明は、可視光応答性の光触媒を光拡散材として兼用することにより、導光板表面の抗菌と抗ウイルス特性を有効にすることができる、新しい機能を持つ導光板と面発光装置とその製造方法として開発したものである。
なお、スクリーン印刷用のインキに手垢や指紋等の汚れが付かない機能を持たせ、導光板の印刷層および透光基板素地表面を含む全面での手垢や指紋の汚れ付着防止機能を持つ導光板と面発光装置とその製造方法としては、特許第4800813号公報で開発したものがあり、本発明はその発明に付加した機能として対応するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2006-12511号公報
【特許文献2】特開2007-273309号公報
【特許文献3】特開2013-114875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
以上の特許文献1から3に示したように、通常の平面型照明器具として、また、フロントライトのように出射光で面発光する導光板の面が、外気に触れる表面に来る照明器具は、防汚対策や脱臭効果のほかに抗菌や抗ウイルスの効果を期待されている。光学シート類への抗菌フィルムや抗菌スプレイの活用は多くの製品に見られるが、導光板を使用して端面からLED光源等により光を入射させ、均一に面発光させる照明器具では表面に異物が付くと光の乱れを生じ製品への採用は困難と言われている。
【0039】
そこで、光触媒を利用する方法が提案されており、特許文献1~3以外にも、光拡散剤として使用する方法が多く見られる。照明器具の光を利用するので、非常に効率的であると言えるが、照明器具としての発光面全体が均一な輝度を保ち、また、抗菌や抗ウイルス効果を出すのに安全な光である可視光だけでは光触媒を活性化することができず実用化が困難となっていた。
【0040】
特に、従来使用されている、拡散ドットを透光板にパターン設計されて面を均一に発光させる導光板面については、印刷面ではない部分も多く存在することで、抗菌効果を出すことはさらに困難であると推測されていた。
【0041】
また、光触媒が活性化されたとしても、そのバインダーとして使用されるインキ成分樹脂である有機物の分解が生じ、表面のチョーキングを起こし劣化が課題となっていた。
【0042】
さらには、可視光で応答する光触媒の開発も進む中で、その光触媒をバインダーに混ぜ込み印刷すると、バインダー樹脂内に光触媒が埋もれた状態となり、光触媒としての本来の機能が働かなくなり、抗菌効果が出現しないことも大きな課題となっていた。
【0043】
そこで、本発明は、従来の上記の課題を解決するため、導光板の印刷層となる範囲で表面をきめ細かく覆うドット等の印刷をし、導光板の表面から均一な光を取り出せるようにすると共に、スクリーン印刷用インキ組成物を改良することにより、また、可視光応答性の光触媒を改良して用いることと、製造方法を工夫することで、印刷面においても光触媒としての効果を維持し、光触媒によるバインダーの劣化(チョーキング)による脱落がない印刷層を形成する導光板である。また、拡散ドットをパターン設計された導光板は、印刷面ではない部分が多く存在するにもかかわらず、均一に面発光させながらも抗菌効果を維持する導光板であり、その導光板を用いた面光源装置、及び、その導光板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様にかかる導光板は、両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面に、複数の印刷されない略円形状のホールを有する印刷層、又は、複数の印刷された略円形状のドットでなる印刷層を備え、前記印刷層は、透光性を有するバインダー樹脂と、光触媒物質粒子と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子と、を含む導光板である。
【0045】
この構成によれば、印刷されない部分は光を拡散しない非発光部で、印刷された部分が発光部となり、印刷面積によって輝度のコントロールが容易となる。また、印刷層に含まれるバインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子が、導光板内に導かれた光を拡散及び乱反射させることで必要な輝度強度を確保し、光拡散物質粒子の所定の含有量により安定した輝度を持つ発光部を提供するものである。
【0046】
また、拡散及び乱反射された光を受けて光触媒物質粒子が活性化することにより表面に付着した菌やウイルスを不活化させるものである。光触媒物質粒子については光屈折率を指定するものではないが、バインダー樹脂と同じ光屈折率を持つものでも、粒子の塊を形成したクラスターの状態によっては光の拡散を示すものもあり、光触媒の素材粒子に対して金属イオン等をドーピングするとか、金属粒子を担持するなどの改質で光屈折率が変化するため、輝度の度合いによっては、光拡散物質粒子とのバランスを考慮していくことで、光触媒の効果と光拡散効果とを両立させるものである。
【0047】
なお、疎水基を結合させた無機物粒子は、屈折率がバインダー樹脂と近似しており光の拡散効果は少ないが、スクリーン印刷用インキの溶液内に含有されるとチキソトロピー特性を発揮し、インキ性状に必要なタレを防止するので、印刷層を薄膜にする役割を担うものである。
【0048】
また、無機物粒子の役割としては、比較的多量の無機物粒子を混合させることにより、光触媒物質粒子表面の一部、又は全面に介在し、光触媒物質粒子をコーティングすることになるので、インキとしての透光性を有するバインダー樹脂のチョーキングを防止する役割も担うものである。光触媒物質粒子が有機物に直接接触していると光触媒の活性力でバインダー樹脂が劣化するのに対し、無機物粒子を介しての光触媒の影響となるので、有機物の劣化は抑制できる。
【0049】
なお、本発明において「導光板」という用語は、通常の意味での「板」状体に限らず、「シート」、「フィルム」など、厚みがより小さいもの、あるいは柔軟に屈曲するものをも包含するものとして用いられる。また、本発明において「光透過性」は、無色で光を透すものに限られるものではなく、例えば着色されつつも、なお光を透過するものなど、一般に光を部分的に散乱又は吸収しつつも、なお透過する性質を保持するものを広く包含する。また、「印刷層」とは少なくとも一方の主面における印刷する範囲全体を示し、「発光部」と「非発光部」のどちらも含むものである。「発光部」とは、印刷層の実際印刷物が形成された部分、すなわち、前記主面の素地面部を覆うドット形成部、又は、ホール部以外の部分を示し、「非発光部」とはドット形成部外面、又は、ホール内面の印刷物が形成されていない主面素地部分をいう。
【0050】
本発明の第2の態様にかかる導光板は、両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面に、複数の印刷されない略円形状のホールを有する印刷層、又は、複数の印刷された略円形状のドットでなる印刷層を備え、前記印刷層は、透光性を有するバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持ち、金属イオン等がドーピング、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を有する光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子と、を含む導光板である。
【0051】
この構成によれば、本発明の第1の態様にかかる導光板と同じく、印刷されない部分は光を拡散しない非発光部で、印刷された部分が発光部となり、印刷面積によって輝度のコントロールが容易となる。また、印刷層に含まれるバインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子が、導光板内に導かれた光を拡散及び乱反射させることで必要な輝度強度を確保し、光拡散物質粒子の所定の含有量により安定した輝度を持つ平面発光部を提供するものである。
【0052】
また、光拡散物質粒子自身が光触媒効果を有するので、拡散及び乱反射された光を受けて光拡散物質粒子の光触媒機能が働き活性化することにより外気と接する印刷表面に付着した菌やウイルスを不活化させるものである。一般にある光触媒物質粒子はバインダー樹脂と同じ光屈折率を持つものでも、粒子の塊を形成したクラスターの状態によっては光の拡散を示すものもあり、光触媒の素材粒子に対して金属イオン等をドーピングするとか、金属粒子を担持するなどの改質で光屈折率が変化するため、試行錯誤での輝度測定の結果によっては、ドット又はホールの印刷密度を変えたパターン配列設計により、又は、光拡散物質粒子の濃度のバランスを考慮していくことで、光触媒の効果と光拡散効果とを両立させるものである。
【0053】
なお、本発明の第1の態様と同じく、疎水基を結合させた無機物粒子は、屈折率がバインダー樹脂と近似しており光の拡散効果は少ないが、スクリーン印刷用インキの溶液内に含有されるとチキソトロピー特性を発揮し、インキ性状に必要なタレを防止するので、印刷層を薄膜にする役割を担うものである。
【0054】
また、無機物粒子の役割としては、第1の態様にかかわる導光板でも述べたように、比較的多量の無機物粒子を混合させることにより、光触媒物質粒子表面の一部、又は全面をコーティングされることになるので、インキとしての透光性を有するバインダー樹脂のチョーキングを防止する役割を担うものである。光触媒物質粒子が有機物に直接接触していると劣化するのに対し、無機物粒子を介しての光触媒の影響となるので、有機物の劣化は抑制できる。
【0055】
本発明の第3の態様にかかる導光板は、前記印刷層の範囲内で、前記ホールは、一つ一つが独立するもので、所定の条件でパターン配列して形成され、前記複数のホール内面は、前記透光基板の主面素地部となることを特徴とする請求項1と2に記載の導光板。
【0056】
この構成によれば、印刷層のホールが一つ一つ独立することで、各ホール内面が透光基板の主面素地部であり非発光部となるので、発光部と非発光部との区別が明確となる。印刷層の中でも非発光部の面積比率を入光端面から離隔端面へパターン配列させるのに計算で求めやすく都合がよい。すなわち、主面各部における印刷層面積に対する発光部の面積比率と光の輝度強度とは比例関係を有するので、非発光部である主面素地部のホール内面の総面積と発光部の実面積を計算で求め論理的に比率変化させることが可能であり、透光基板の表面においてホールの数と、ひとつひとつの面積との総和により所定の条件のパターン配列設計ができ、容易に導光板表面の輝度と均一性をコントロールすることができる。
【0057】
本発明の第4の態様にかかる導光板は、前記印刷層の範囲内で、前記ドットは、一つ一つが独立するもので、所定の条件でパターン配列して形成され、前記複数のドット形成部外面は、前記透光基板の主面素地部となるものである。
【0058】
この構成によれば、印刷層のドットが一つ一つ独立し、ドットが発光部でドット形成外面部が透光基板の主面素地であり非発光部となっており、発光部と非発光部とが明確に区別され、非発光部となる面積比率を入光端面から離隔端面へパターン配列を計算で求めやすく都合がよい。すなわち、発光部であるドットの総面積と非発光部のドット形成外面部との実面積を計算で求め論理的に比率変化させることにより所定の条件のパターン配列設計が可能で、容易に導光板表面の輝度と均一性をコントロールすることができる。
【0059】
本発明の第5の態様にかかる導光板は、前記印刷層の範囲内では、印刷された前記ドット以外の主面素地部、又は、印刷されない前記ホールの主面素地部には、2mm以上の径寸法となる仮想円を描くことができない、隣接する前記ドット間隔、又は前記ホールの大きさにしたものである。
【0060】
通常、印刷された前記ドット以外の主面素地部、又は、印刷されない前記ホールの主面素地部には光触媒物質粒子や光触媒機能を有する光拡散物質粒子が介在しないために、光触媒効果として期待する抗菌や抗ウイルスの効果は見られず、このような主面素地部に付着した菌は不活化できない。しかしながら、この構成のように、印刷されたドット部から1mm程度の距離であれば、金属イオンをドープした抗菌剤の一部が溶出される等の要因により、菌の発育阻止帯(ハロー)が発生することで、印刷層全面の抗菌効果が維持されることとなる。
【0061】
従来使用されていた酸化チタン等の単一成分の光触媒であれば、光を受けて活性化しても菌の発育阻止帯を形成することはなかったが、可視光応答性の光触媒には金属イオンがドープされているものが多くあり、段落(0031)にも列記したが、それらの金属イオンの溶出によって菌の発育阻止帯は出現するものであり、1mm以上の発育阻止帯は一般的にある。
【0062】
本発明の第6の態様にかかる導光板は、前記疎水基を結合させた無機物粒子を、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカとしたものである。
【0063】
この構成によれば、合成非晶質シリカのひとつである疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカは、導光板素材やバインダー樹脂であるアクリル系樹脂の光屈折率とほぼ同じで、光の透過を邪魔することなく透光性は維持される。また、市販されている汎用性のある無機物粒子で比較的安価であり、また、個体であるので、液状の添加物のようなブレード現象等の光屈折率を変化させる様な表面への悪影響はない。
【0064】
さらに、疎水性フュームドシリカはスクリーン印刷用インキの溶液内に含有されるとチキソトロピー特性を発揮し、インキ性状に必要なタレを防止し、溶剤成分を多く入れることが可能となるのでスクリーン印刷後の印刷厚みを薄く仕上げることが可能となる。
【0065】
また、疎水性フュームドシリカは、凝集力が強く働くことで、光触媒物質粒子や光拡散物質粒子と事前に混合することで、光触媒物質粒子や光拡散物質粒子の表面に吸着するようにコーティングされる。よって、光触媒が光に当たり活性化を帯びたときには印刷層中のバインダー樹脂との緩衝材となって働くので、有機物を分解して劣化させることが少なくなる。
【0066】
本発明の第7の態様にかかる導光板は、前記バインダー樹脂と、前記光触媒物質粒子と、前記光拡散物質粒子と、前記疎水性フュームドシリカとの総重量を印刷層重量とした時、前記印刷層重量に対して、前記疎水性フュームドシリカが5wt%以上で35wt%以下の量を含むものである。
【0067】
この構成にすれば、本発明の課題である光触媒による印刷層のバインダー樹脂のチョーキングによる劣化を抑制することができる。すなわち、疎水性フュームドシリカの混合量はバインダー樹脂等の印刷層重量に対して5wt%以上となるとバインダー樹脂の劣化抑制効果が出始め、5wt%以下では十分なバインダー樹脂の劣化抑制が発揮できない。また、疎水性フュームドシリカの混合量がバインダー樹脂等の印刷層重量に対して35wt%以上では印刷物が脆くなりスクリーン印刷が可能なインキ性状とならない。
【0068】
なお、本発明においての「印刷層重量」とは、揮発物を揮散させた乾燥後のインキ残渣分であり、スクリーン印刷用インキの成分量のうち溶剤分量を除く重量である。すなわち、バインダー樹脂と光触媒物質粒子と光拡散物質粒子と無機物粒子とその他の微量の添加剤を含む量を示す。
【0069】
本発明の第8の態様にかかる導光板は、前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂を主成分とするものである。
【0070】
この構成にすれば、透光性を有する透光基板と同じ光屈折率を持つアクリル樹脂であり、透光基板の主面と印刷層との界面で光を屈折させることも無く、乱反射させることも無いので、透光性を維持することができ、密着性も良い。
【0071】
本発明の第9の態様にかかる面発光装置は、請求項1から8のいずれかに記載された導光板と、前記透光基板の両主面と接する端面に配置された光源と、前記導光板の前記一端面と前記光源とを支持するハウジング体からなる固定治具体とを備えたものである。
【0072】
この構成によれば、両主面を有する透光基板と、前記透光基板の少なくとも一方の主面全体に、複数のドット又はホールでの発光部と非発光部とを有する印刷層を備えた前記導光板面は、前記発光部が、光源からの光を受けて光触媒物質粒子が活性化し表面に着いた菌やウイルスを不活化する効果を持つ。
【0073】
本発明の第10の態様にかかる面発光装置は、請求項1から8のいずれかに記載された導光板と、前記透光基板の両主面と接する少なくとも一端面に配置された可視光及び白色LED光源と、前記導光板の前記一端面と前記可視光及び白色LED光源とを支持する第一固定治具体とを備え、前記導光板とは別のUV導光板を前記導光板の印刷層が無い主面に対向して重ねて配置し、前記UV導光板の一端面にはピーク波長350~390nmの波長の近紫外線を発するUV-LED光源を支持する第二固定治具体を設け、前記UV導光板の前記導光板の反対面には反射シートを設けてなるものである。
【0074】
この構成によれば、第9の態様と同じく、両主面を有する透光基板と、前記透光基板の少なくとも一方の主面全体に、複数のドット又はホールでの発光部と非発光部とを有する印刷層を備えた前記導光板面は、前記発光部が、光源からの光を受けて光触媒物質粒子が活性化し表面に着いた菌やウイルスを不活化する効果を持つ。
【0075】
さらには、UV導光板でUV光源からの光を面発光することにより、印刷層にある光触媒物質粒子の活性化がより一層活発となるので、前記導光板印刷表面の抗菌効果がより一層高められる。なお、UV光源の光は可視光LEDの光と屈折率が異なるために、UV光源も同じパターン配列の導光板を使用すると、光源近辺だけをUV強度が強くなり奥へ光は行き届かなくなり奥部での抗菌効果が弱くなる。よってUV光源専用の導光板を使用することで均一なUV強度を得ることができる。UV専用の導光板とは、酸化チタン等の拡散剤を数%含むスクリーン印刷用インキを用いて、比較的印刷密度の低いドットパターン配列された導光板としたものである。
【0076】
本発明の第11の態様にかかる導光板の製造方法は、疎水基を結合させたチキソトロピー特性を有する無機物粒子と、溶剤とを混合して溶液組成物(S)を作成する第一工程と、前記溶液組成物(S)に、金属イオンがドーピング、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を兼ねる前記光拡散物質粒子とを混ぜることにより光拡散物質ペースト(P)を作成する第二工程と、前記バインダー樹脂を主体に含むスクリーン印刷用クリアーインキ(C)と、前記光拡散物質ペースト(P)とを混合して複合物インキ(G)を作成する第三工程と、前記複合物インキ(G)を用いて両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷工法で印刷塗布する第四工程と、前記複合物インキ(G)の溶剤等の揮発物を揮散して固形化する第五工程と、により前記透光基板の表面に複数のドットでなる印刷層、又は、複数のホールでなる印刷層を備える導光板を形成し、前記チキソトロピー特性を有する無機物粒子を合成非晶質シリカのひとつで、疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカでコーティングされた前記光触媒物質粒子を兼ねた光拡散物質粒子を印刷層の表面に分布するようにしたものである。
【0077】
この構成によれば、スクリーン印刷用疎水性フュームドシリカを多量に含む溶剤組成物を混ぜることで、印刷層重量に対して、溶剤量を多く混合可能となり、乾燥後の印刷層膜状態では、光触媒機能を有する光拡散物質粒子が印刷層の発光部表面に頭を出して分布するようになり、光触媒としての効力を発揮するばかりか、疎水性フュームドシリカの無機物粒子に光拡散物質が覆われることになるため、有機物であるバインダー樹脂を光触媒の劣化から防止する。
【0078】
また、増粘性やチキソトロピー性を改良する合成非晶性シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを無機物粒子として選定することで、印刷用の複合物インキはバインダー樹脂中のモノマー成分や溶剤を大量に含んでいても増粘特性を持ちチキソトロピー性を保持するので印刷性を悪化させることがない。
【0079】
すなわち、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光触媒機能を有する光拡散物質粒子を含むスクリーン印刷用拡散インキと、溶剤とチキソトロピー特性を有する無機物粒子とを混合し粘度調整した溶液組成物とを、個々にブレンドすることで、乾燥により溶剤を揮散させた後の印刷層重量に対し、従来出来なかった分量の疎水性フュームドシリカの混合が可能となる。このことは、印刷層の厚みを薄くすることが可能となり、発光部表面には、比較的多くの光触媒機能を有する光拡散物質粒子が出現形成することになり、光触媒機能を有効に活用することができ、抗菌と抗ウイルス効果を確実に発揮させることができる。また、光触媒機能を有する光拡散物質粒子の周りに無機物粒子が介在することで、有機物であるバインダー樹脂の劣化を抑制することにもなる。
【発明の効果】
【0080】
以上の通り、本発明によれば、発光部と非発光部とを有する印刷層が導光板表面をきめ細かく覆うことで、導光板の適度な輝度強度を持ち、均一で安定した発光面となり、しかも、表面に付着した汚れや雑菌等の抗菌効果を発揮することにより生活空間の衛生環境を向上させることができる導光板となる。また、それを用いた面発光装置は光拡散シートや保護カバーを必要とせず安価となる。さらに、通常のスクリーン印刷工法で、容易に適度な輝度強度と均一性を有し抗菌効果のある導光板の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】本発明の第一実施形態による導光板をフロントライトユニットとして用いられた面発光装置の一例を示す概略断面構成図である。
図2】本発明の第一実施形態による導光板部分の縦断面図である。
図3】本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールをパターン配列により形成した印刷層からなる発光部の一例を示す平面図である。
図4】本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールの一部を示す拡大平面図である。
図5】本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールの一部を示す拡大断面図である。
図6】本発明の第二実施形態による導光板をピクトグラムに用いられた両面発光可能な面発光装置の一例を示す概略断面構成図である。
図7】本発明の第二実施形態による導光板の部分の縦断面図である。
図8】本発明の第二実施形態による複数のドットのパターン配列により形成した印刷層からなる発光部の一例を示す平面図である。
図9】本発明の第二実施形態による複数のドット部の一部を示す拡大平面図である。
図10】本発明の第二実施形態による複数のドット部の一部を示す拡大断面図である。
図11】本発明の第三実施形態による近紫外線UV-LED光源とUV導光板を付加した面発光装置の一例を示す概略断面構成図である。
図12】本発明の複合物インキを用いてスクリーン印刷で透光基板面に塗布したインキ状態を示す拡大断面図である。
図13】本発明の複合物インキを用いてスクリーン印刷して乾燥した発光部のインキ固形分の状態を示す拡大断面図である。
図14】従来技術による代表的な面発光装置の構成を示す概略図である。
図15】従来技術による代表的な光拡散用ドットを形成した導光板の縦断面図である。
図16】従来技術による代表的な光拡散用ドットを形成した導光板の平面図である。
図17】本発明の抗菌効果をスタンプ式培地で評価した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、本発明の第一実施形態について、図1から図5を参照にしつつ説明する。
【0083】
図1は本発明の第一実施形態による導光板をフロントライトユニットとして用いられた面発光装置の一例を示す概略断面構成図であり、図2は本発明の第一実施形態による導光板部分の縦断面図であり、図3は本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールをパターン配列により形成した印刷層からなる発光部の一例を示す平面図であり、図4は本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールの一部を示す拡大平面図であり、図5は本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールの一部を示す拡大A-A断面図である。
【0084】
図1に例示する第一実施形態の面発光装置31は、例えば写真、絵画、あるいは反射板を有する液晶画面等の不透光な被表示体32を、上方から照射する発光器具33と、ハウジング体からなる固定治具体34とで構成されている。発光器具33は、導光板35と、LED光源36とを有しており、導光板35の両主面と接する端面の入光端面部37に配置されたLED光源36の光が、導光板35の入光端面部37より導光板35内部に照射される構造となっている。導光板35は、例えば透光性のあるアクリル樹脂からなる透光基板38と、透光基板38の両主面のうち、透光性のない被表示体32に対向する下面39とは反対の上面40に、スクリーン印刷法により非発光部となる主面素地部53と発光部42とで形成された印刷層41が構成されている。
【0085】
なお、透光基板38は、導光板35の本体部であるので、時に、両者を区別することなく記載する場合がある点に注意されたい。以下の説明では、一例として、透光基板38は透光性のあるアクリル樹脂板であるとする。
【0086】
ハウジング体からなる固定治具体34は、導光板35とLED光源36からなる発光器具33を一体に固定するとともに、LED光源36や導光板35の端面部を保護する役目を持つもので、ハウジング体からなる固定治具体34の表開口部43には保護カバー的なものは無く導光板35上面部が直接外気に触れることができるように取り付けられ、裏開口部45には裏板46が留め金47により取り付けられてある。ハウジング体からなる固定治具体34の内部にある不透光な被表示体32を取り替えたい場合には、この留め金47をはずして裏板46を開口して取り換えることができる。
【0087】
なお、導光板35上面部の表開口部43には、導光板35自体が光触媒により汚れを分解し抗菌効果のあるものなので、保護カバー的なものは不要であり、外気にさらされている状態となる。
【0088】
LED光源36は、電源コード48によりON-OFFスイッチ49と変圧器50とコンセント51とに連結されている。
【0089】
第一実施の形態の導光板35は、透光基板38の上面40全体を非発光部となる主面素地部53と発光部42とを持つ複数のホール52で構成する印刷層41をスクリーン印刷で形成したものである。この発光部42は、アクリル樹脂等の透光性のバインダー樹脂と、光触媒物質粒子と、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子と、疎水基を結合させた無機物粒子と、比較的多量の溶剤とを含むスクリーン印刷用の複合物インキ(G)を用いて印刷され、印刷処理後に乾燥処理で溶剤を揮散させて形成したものである。
【0090】
ここでの、光触媒物質粒子とは、その物質の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギーを持つ光、即ち、より波長の短い励起光を照射すると、光エネルギーによって価電子帯中の電子の励起が起こり、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が生成するものである。この電子の還元力及び/又は正孔の酸化力で種々の化学反応を行われ、上記のような物質は、励起光照射下において触媒のように用いることができるので、光触媒と呼ばれている。その最も代表的な例として酸化チタンが知られている。
【0091】
酸化チタンのほかに、光触媒として使用できるものとして、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン、等の他、更にはチタン、ニオブ、タンタル、バナジウムから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物や、窒素ドープ酸化チタンや、酸素欠陥型の酸化チタンの如き、可視光応答型酸化チタン光触媒も好適に使用することができ、また、これらの光触媒材料に、白金、ロジウム、ルテニウム、ニオブ、銅、錫、ニッケル、鉄、銀などの金属及び/又はこれらの酸化物を添加或いは固定化したものや、多孔質リン酸カルシウム等で被覆された光触媒材料等を使用することもできる。
【0092】
図2図3で示す様に、導光板35の上面40全体には、スクリーン印刷法により、非発光部となる主面素地部53の複数のホール52とその周りの発光部42とからなる印刷層41が形成されている。また、LED光源36に対向する入光端面部37は鏡面仕上げされ、他の側2つの側壁端面と離隔端面部54には反射テープ55が貼り付けられている。
【0093】
また、印刷層41にあるホール52は一つ一つが独立してなり、複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53は透光基板38の主面素地が露出してなるものである。
【0094】
また、透光基板38主面の上面40全体が概ね印刷層41となるが、印刷層41に対する複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53の面積比率が、LED光源36に面する入光端面部37から、対向する離隔端面部54に向かって徐々に減少する条件で透光基板38の上面40全体に複数のホール52がきめ細かにパターン配列されてある。
【0095】
なお、ここでは印刷層41にある複数のホール52内面は、透光基板38の主面素地部53となる非発光部を形成させたが、スクリーンインキ内の光拡散物質粒子の量を調整さえすれば、複数のホール52の位置に複数のホール52と同じ大きさのドット形状を形成させ、入光端面部37と離隔端面部53とを反転させ取り付ければ、ほぼ同じ効果が得られる。本実施例では、複数のホール52のパターン設計を事例としてあげているが、複数のドットによるパターン設計でも主面全体がきめ細かく覆われていれば問題はなく、複数のホール52に限定するものではない
【0096】
また、図4は、本発明の第一実施形態による導光板の複数のホール52の一部を示す拡大平面図で、図3中に示す(M)の囲い部を拡大して示すものである。図5は、本発明の第一実施形態による導光板の複数のホール52の一部を示す拡大断面図で、(M)囲い部のA-A断面を示している。
【0097】
印刷層41に形成した複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53に描く仮想円56の径の大きさ(W)は、2mm以下の寸法とした。一般的に金属イオン等を含む抗菌剤は、ハローと呼ばれる菌の発育阻止帯を持つものであり、銀イオンをドープした可視光応答性の光触媒では1mm以上の発育阻止帯を有し、非発光部となる主面素地部53にも抗菌効果を行き届かせるためには両側の発光部42端面から1mmとして、仮想円56の径は2mm以下の寸法とした。
【0098】
また、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子は酸化チタンの粒子とした。酸化チタンの光屈折率は約2.7であり、導光板材やバインダー樹脂として使用されるアクリル樹脂等の光屈折率の約1.47に比べ2倍近く大きく、バインダー樹脂内に埋没されていても、その境界部分で光が屈折及び反射し、酸化チタン粒子の界面で効率よく発光することになる。
【0099】
また、バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子としては合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを選定した。合成非晶質シリカには乾式法シリカと湿式法シリカとがある。乾式法シリカも湿式法シリカも一次粒子径は数nmの大きさであるが、湿式法シリカは凝集力が強く数μmの粒子径の二次粒子として存在し、プラスチックやゴム等の合成樹脂の補強材や艶消し等の充填剤、及び、水分吸着力を利用して乾燥剤に応用されている。
【0100】
一方、乾式法シリカは別名フュームドシリカと呼ばれ、緩い凝集性を有し液体への分散性に優れており、液体中に添加するとシリカ表面のシラノール基が互いに水素結合することにより液体中で三次元の網目構造を形成してその組成物液の粘度は高くなりチキソトロピー特性を付与し、沈降を抑え液体の垂れを防止するのに利用されている。
【0101】
フュームドシリカの表面には、親水性のシラノール基(Si-OH)と疎水性のシロキサン(Si-O-Si)が存在するが、そのままではシラノール基が勝り水との相溶性が良く水溶性の液体に溶け込みやすい。しかし、一般的に、導光板に用いるスクリーン印刷用インキは溶剤タイプであるので、疎水性フュームドシリカに改質して用いる。疎水性フュームドシリカはシラノール基をクロロシラン類等のシラン化合物と反応させることにより、(化学式1)から(化学式3)で示す疎水基を結合させたものである。市販されている疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカとしては、日本アエロジル社製のR972、R974、R809、R812、R202、等がある。
【0102】
【0103】
クロロシラン類等のシラン化合物としては、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリル、等の中から選ばれるものである。
【0104】
一般的に、フュームドシリカは親水性、疎水性を問わず、チキソトロピー効果を期待して塗料やインキの液体組成物の粘度調整やたれ防止剤として用いられ、その量は比較的少量で効果があることから、バインダー樹脂と光触媒物質粒子と光拡散物質粒子と疎水性フュームドシリカとの総重量を印刷層重量とした時、その印刷層重量に対して1wt%以下の混合量であった。しかし、光触媒物質粒子のコーティング剤としての公知例は無く知られていない。本発明においては、疎水性フュームドシリカの溶液中での凝集力をさらに発揮させ、溶剤過多のインキ性状で持ってスクリーン印刷を行い、印刷層41を薄くし、光触媒物質粒子コーティング処理剤としての効果に繋げるために、疎水性フュームドシリカの混合量は印刷層重量に対して、5wt%以上で35wt%以下の混合量となるように調合した。
【0105】
次に、このようなフロントライトユニット構造の面発光装置31における光の動きと、導光板35としての機能的な作用について説明する。
【0106】
まず、コンセント51を商用電源につなぎ、ON-OFFスイッチ49をONにすると直流変圧器50で直流12Vに変化した電圧が電源コード48に繋がったLED光源36に加わり点灯する。
【0107】
LED光源36に面する入光端面部37から導光板35内に進入した入射光は、アクリル樹脂と空気との屈折率の関係から全反射を導光板35内で繰り返すことにより、また、離隔端面部53及び側壁端面部に到達した光は反射テープ55で反射し導光板35内に跳ね返されることにより、通常はアクリル樹脂の導光板35内部に閉じ込められる。
【0108】
しかし、不透光な被表示体32に対向する面の反対側の導光板35の上面40全体に形成された複数のホール52持つ印刷層41の発光部42の中に含まれる光触媒物質粒子や光拡散物質粒子に光が当たると、この光は拡散及び乱反射し、導光板35の上下に分散して一部が出射光として飛び出すことになる。
【0109】
下面39に飛び出した光は、不透光の被表示体32にあたり、被表示体32の表面を明るく照らし、かつ上方に反射される。反射された光は、導光板35を鋭角に通り抜け、また発光部42の印刷層41の厚みが1μmから7μm程度で薄く、光触媒物質粒子と光拡散物質粒子の合算含有量もバインダー樹脂量に対して10%程度であっても、粒子径も2μm以下と小さいので、大きく減衰されることがなくほとんどの光は通り抜け、よって、被表示体32で反射された光は、被表示体32全体のきれいな画像として視認される。
【0110】
ただし、拡散光の場合には、発光部42内の一つの光拡散物質粒子に光が衝突すると拡散及び乱反射により光が大きく広がることになり導光板35の面を広く光らせることになる。また、発光部42内の光拡散物質粒子に衝突しない光は、バインダー樹脂と空気との界面で全反射することになるので、発光部42の無い非発光部となる主面素地部53の複数のホール52の面と同様に、離隔端面部54に向かって進む。
【0111】
ただし、被表示体32で反射された光は、非発光部となる主面素地部53の導光板35面に鋭角に入射し、出射するので被表示体32はきれいな画面のままで、また、主面に対する印刷面積比率は10%程度であるので、LED光源36が消灯していても印刷面が邪魔をして見えにくくなることはほとんどなく、フロントライトとしての機能は維持される。
【0112】
すなわち、光拡散物質粒子の粒径が小さくて含有量が10%以下と少なく、印刷された発光部42が薄くて表面にはほとんど凹凸がないので、発光部42が導光板35全面を占めていても、光拡散物質粒子に衝突しない光は全反射することで、さらに奥へ光を送る機能が残り、均一で安定した面発光体となりうる。
【0113】
また、直接上方に向かう光は、LED光源36からの直接的な光でなく、光拡散物質粒子である酸化チタンの粒子により拡散及び乱反射された光であり、逆光としての被表示体32の画像の視認性への悪影響は少ないものである。よって、点灯時も消灯時も透光度は良好であり、フロントライトユニットとして面発光装置31の役割を十分担うものである。
【0114】
また、印刷層41の発光部42に含まれる光拡散物質粒子を光の屈折率が高い酸化チタンとすることで、バインダー樹脂内に埋没したとしても光を反射し拡散する効果を得る。すなわち、酸化チタンの光屈折率は約2.7であり、導光板材やバインダー樹脂として使用されるアクリル樹脂等の光屈折率の約1.47に比べ2倍近く大きく、バインダー樹脂内に埋没されていても、その界面部分で光が拡散及び乱反射するため酸化チタンの粒子の界面で効率よく全方位に向かい発光することになる。なお、光屈折率の高い他の光拡散物質粒子としては、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、カーボン等が考えられるが、安全性と色目と透光性で酸化チタンが最も優れるが限定するものではない。
【0115】
しかしながら、本発明の場合は、光触媒物質粒子と光拡散物質粒子とが10%程度含まれ、チキソトロピー特性の高い疎水性ヒュームドシリカの無機物質粒子を比較的多く加え溶剤量の多いインキ材としてスクリーン印刷をするので、乾燥後には印刷層の膜厚が2μm程度のものとなり、光触媒物質粒子は樹脂に埋もれることなく頭出しができ、光触媒による抗菌効果は維持されることになる。
【0116】
また、印刷層41からなる発光部42の厚み(t)は、1μm以上、7μm以下で形成する。発光部の厚みが1μm以上であれば、ほぼ光拡散物質粒子の径以上の高さとなり、光触媒物質粒子は単一粒子の塊、クラスターを作る傾向があり、数ミクロンのものが多く含まれるため光触媒機能も十分発揮されるものである。
【0117】
また、印刷層41に形成した複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53に描く仮想円56の径の大きさ(W)は、2mm以下の寸法としたことで、銀イオンをドープした可視光応答性の光触媒が有する1mm以上の発育阻止帯の効果で、非発光部となる主面素地部53にも抗菌効果が出現する。すなわち、仮想円56を印刷層41に多く形成させることで、フロントライトとしての透光度を維持しながら、光触媒のハロー効果により抗菌性も保持するものとなる。
【0118】
さらに、疎水基を結合させた無機物粒子として、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを使うと、乾燥後の印刷層41の発光部42として固形化された状態では、透光性を失わずに、乾燥工程途上時には凝集力を利用して光触媒物質粒子の周りに食らいつくようにコーティングされるので、バインダー樹脂の劣化を防止できる。
【0119】
また、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカは、バインダー樹脂成分や溶剤に良く溶け込み、スクリーン印刷用インキ状態においては増粘効果を持ち、チキソトロピー剤として、流動性を制御するものでありダレを防止するものであるので、溶剤過多のタイプのスクリーン印刷用のインキ組成物とするには好都合な無機物粒子である。
【0120】
また、市販されている無機物粒子であり汎用性が高く比較的安価であり、さらに、固体であるので、液状の添加物のようなブレード現象等の光屈折率を阻害させる表面への悪影響はない。
【0121】
従来、塗料やインキの液体組成物の粘度調整やたれ防止剤としてチキソトロピー効果を発揮するフュームドシリカの混合量は、バインダー樹脂量等の印刷層重量に対して1wt%以下の混合量であった。しかし、本発明の課題は、光触媒物質粒子表面へのコーティングによるバインダー樹脂の劣化防止と乾燥後の膜厚の低いインキ層の形成にあるので、疎水性フュームドシリカの混合量はバインダー樹脂量等の印刷層重量に対して、5wt%以上となるように印刷層41を形成させている。前にも述べたが、疎水性フュームドシリカの混合量がバインダー樹脂等の重量に対して5wt%以下では光触媒物質粒子を包み込むには十分な量ではなく、また、35wt%以上では印刷物が脆くなりスクリーン印刷出来るインキ性状とならなかった。
【0122】
バインダー樹脂と光屈折率が近似する光透過性材料の無機物粒子としては、天然の酸化ケイ素、ガラスビーズ、等の無機物や、ポリスチレン、ポリカーボネートのような有機物、又は、湿式法で作られるゲル法合成非晶質シリカが考えられるが、溶剤との相溶性と凝集力を維持するにはナノオーダーの微粉末にする必要があり製造コストが高くなる。
【0123】
また、機能として期待する、増粘性、チキソトロピー性、防汚性、が合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカ以外では不十分となる。よって、すでに日本アエロジル社等で商業化されている安価で機能性の高い合成非晶質シリカのひとつである疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカを使用するのが得策である。
【0124】
また、複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53が、一つ一つ独立し、透光基板38の主面素地にまで達する面とすることで、発光部42と非発光部となる主面素地部53とが明確であり、発光部42となる面積比率を入光端面から離隔端面へパターン配列を計算するのに都合がよい。すなわち、印刷層41面積に対する発光部42の面積比率と光の輝度強度とは比例関係を有するので、複数のホール52の面積比により発光部の実面積を計算で求め論理的な比率変化させることが可能であり、透光基板38の表面においてホールの数と、ひとつ当たりの面積との総和により所定の条件でパターン配列設計が容易にでき、導光板35表面の輝度と均一性をコントロールすることができる。
【0125】
なお、本発明の第一実施形態では、透光基板38の上面40の主面全体に複数のホール52を有する印刷層41からなる発光部42を形成したが、フロントライトユニット用の導光板としては下面39に発光部42を形成すると逆光の光となりまぶしく感じ、被表示体32が見にくくなるため上面40だけの処理としたものである。しかし、片面であることを限定するものではない。
【0126】
次に、図6図10を参照にして、本発明の第二実施形態としてピクトグラムに用いられる両面発光可能な面発光装置61について説明する。尚、先の第一実施形態と同じ部品で同じ機能のものについては同じ番号を付け説明を省略する。
【0127】
図6は本発明の第二実施形態による導光板をピクトグラムに用いられた両面発光可能な面発光装置の一例を示す概略断面構成図で、図7は本発明の第二実施形態による導光板の部分の縦断面図で、図8は本発明の第二実施形態による複数のドットのパターン配列により形成した印刷層からなる発光部の一例を示す平面図で、図9は本発明の第二実施形態による複数のドット部の(M)の囲い部を示す拡大平面図で、図10は本発明の第二実施形態による複数のドット部のB-B断面を示す拡大断面図である。
【0128】
図6に例示する面発光装置61は、導光板62と、LED光源63と、上下が開口された上開口部64と下開口部65とを有し、導光板62とLED光源63とを固定するハウジング体66からなる固定治具体67とで構成されている。
【0129】
導光板62は、透光基板68の上面69及び下面70の両主面全体に非発光部となる主面素地部77と発光部73とを有し、非発光部となる主面素地部77又は発光部73を所定の条件でパターン配列した印刷層71を備え、複数のドット72を発光部73とする印刷層71としたものである。この発光部73は、第一実施形態と同じく、アクリル樹脂等の透光性を有するバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持ち、金属イオンがドーピングされた、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を有する光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた疎水性無機物粒子とを含むもので、スクリーン印刷でのインキ塗布後に乾燥処理して溶剤を揮散させることで発光部73を形成するものである。
【0130】
導光板62となる透光基板68の上面69と下面70の両主面には、スクリーン印刷法により印刷層71全体に複数のドット72からなる発光部73が形成されている。また、LED光源63に対向する入光端面部74は鏡面仕上げされ、離隔端面部75等と2つの側壁端面には反射テープ76が貼り付けられている。
【0131】
また、印刷層71に形成された発光部73の複数のドット72は一つ一つが独立してなり、複数のドット72外面の非発光部となる主面素地部77は透光基板68の主面素地が露出した面となる。
【0132】
また、透光基板68の上面69と下面70の両主面全体が概ね印刷層71となり、印刷層71に対する複数のドット72の面積比率が、LED光源63に面する入光端面部74から、対向する離隔端面部75に向かって徐々に増加する条件で透光基板68の上面69と下面70の両主面全体に複数のドット72がきめ細かにパターン配列されてある。
【0133】
また、図9は、図8中に示す(M)の囲い部を拡大して示すもので、図10は(M)囲い部のB-B断面を示している。印刷層71は発光部層73と非発光部となる主面素地部77とからなり、複数のドット72形成部外面の非発光部となる主面素地部77の面の大きさは、2mm以上の径寸法となる仮想円を描くことができない、隣接する前記ドット間隔にしたものである。
【0134】
また、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光触媒機能を有する光拡散物質粒子としては、金属酸化物及び銀イオンがアパタイト結晶構造中にドープされた光触媒アパタイト組成物の粒子とし、一次粒子の粒径が数nm程度のものを選定して使用した。また、光触媒機能を有する光拡散物質粒子としての混合比率は、透光基板68の上面69及び下面70の両主面を印刷層71として複数のドット72を有する発光部73を形成したものであり、含有量もバインダー樹脂量に対して10%程度で調合して用いた。
【0135】
また、バインダー樹脂と光屈折率が近似する疎水基を結合させた無機物粒子としては、第一実施形態と同じく、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを選定し、バインダー樹脂等の印刷層重量に対して5wt%から35wt%になるように混合して作成した。
【0136】
また、ハウジング66の上開口部64と下開口部65には保護シートも裏板もなく開放されており、直接導光板が外気に当たる状態となっている。尚、その他の部材については先の第一の実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0137】
次に、このようなピクトグラムに利用できる両面が発光する構造の面発光装置61における光の動きと、導光板62としての機能的な特徴を説明する。なお、図示していないが、ピクトグラムとして利用する場合には上面68又は下面69に、情報が描かれた透光性の板やフィルム、又は、液晶パネルや、別途拡散インキで絵柄を付けた導光板パネルを取り付けることが必要である。
【0138】
面発光装置61のLED光源63が点灯すると、光が照射され、入光端面部74から導光板62内に入射光として進入する。入射光は、アクリル樹脂と空気との屈折率の関係から全反射を繰り返すことにより、また、離隔端面部75及び側壁端面部に到達した光は反射テープ76で反射し、導光板62内に跳ね返されることによりアクリル樹脂の導光板62内部に閉じ込められる。
【0139】
しかし、上面69と下面70の両主面全体に形成された複数のドット72の発光部73を有する印刷層71があると、発光部73に存在する光触媒機能を有する光拡散物質粒子に光が当たり、光は粒子表面で拡散及び乱反射し、導光板62の上下にも分散して一部が導光板62面からの出射光として上面69及び下面70から飛び出すことになる。
【0140】
第二実施形態では、導光板62の上面69と下面70の両主面全体に、複数のドット72の発光部73を有する印刷層71が、きめ細かく両主面全体を覆うように形成されているので、入射した光が一つ一つの光触媒機能を有する光拡散物質粒子で拡散及び乱反射により広がることになり、また、発光部73内の光触媒機能を有する光拡散物質粒子に衝突しない光は、バインダー樹脂と空気との界面で全反射することになり、ドット72が存在しない非発光部となる主面素地部77面と同様に、離隔端面部75に向かって進む。
【0141】
しかしながら、光触媒機能を有する光拡散物質粒子の一次粒子の径は数nmとされているが、金属酸化物及び銀イオンがアパタイト結晶構造中にドープされた光触媒アパタイト組成物の粒子となると、多くの一次粒子が凝集したクラスター状態となり数μmの大きさとなっている。また、アパタイトの成分である燐酸カルシウムの光屈折率の値は1.5付近でバインダー樹脂に近似しているが、チタン金属や銀イオンをドープすることで、光屈折率は大きくなり、光拡散物質粒子として使用が可能となる。よって、印刷された発光部73において、光を拡散し乱反射させることで発光すし、ドットのパターン配列を行えば、発光部73が導光板35の両主面全体を占めていても、光拡散物質粒子に衝突しない光は全反射するので、奥へ奥へと光を送る機能があり、均一で安定した面発光体となる。また、光触媒機能を有する光拡散物質粒子であるので、印刷層の発光部の表面では活性化され、抗菌効果を発揮する。
【0142】
なお、本発明の第二実施形態ではピクトグラムを参考にして説明したが、両面での発光を利用する商品としては、光透過型仕切り照明器具などもある。ピクトグラムでは表面を別途光透過性の情報フィルムを貼り付けることにより導光板の表面が保護されることにもなるが、普段は光を透過するオープンな仕切りとして使用し、個々のセキュリティーが必要な時には照明器具として点灯すれば見えなくなる製品も考えられる。このような光透過型仕切り照明器具では、直接人が触れることが多くなり従来の導光板では保護シートが必要であるが、本発明の導光板であれば、汚れ成分を分解し、抗菌効果もあるので保護シートは不要となり、生活空間の衛生環境を向上させる照明器具となる。
【0143】
次に、図11を参照にして、本発明の第三実施形態としてUV光源を付加したもので、より抗菌効果を高めることのできる面発光装置101について説明する。尚、先の第一実施形態と同じ部品で同じ機能のものについては同じ番号を付け説明を省略する。
【0144】
図11は、本発明の第三実施形態による近紫外線UV-LED光源とUV導光板を付加した面発光装置の一例を示す概略断面構成図である。図11に例示する面発光装置101は、ハウジングケース110の中に、第一発光器具105と第二発光器具109とが重ねて組み込まれたものである。第一発光器具105は、第一導光板102と可視光LED光源103と、前記第一導光板102と前記可視光LED光源103とを固定する第一固定治具体104とで構成されている。また、第二発光器具109は、第二導光板106と、近紫外線を出すUV-LED光源107と、前記第二導光板106と前記UV-LED光源107とを固定する第二固定治具体108とで構成されている。
【0145】
第一発光器具105の上面のハウジングケース110には第一導光板102の全上面を開放する開口部111があり、第二発光器具109の下面側には反射シート112が設置され、その下側のハウジングケース110の裏開口部には裏板113が留め金114で取り付けられている。
【0146】
なお、第一導光板102の開口部111に面する上面全体には、所定の条件でパターン配列した複数のドットを発光部とする印刷層115が形成されており、印刷層115は、第二実施形態と同じく、アクリル樹脂等の透光性を有するバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持ち、金属イオンがドーピングされた、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を有する光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた疎水性無機物粒子とを含むもので、スクリーン印刷でのインキ塗布後に乾燥処理して溶剤を揮散させることで形成されている。
【0147】
また、第二導光板106の上面には、近紫外線のUV-LED光源107からの光を拡散させる、通常の酸化チタンを光拡散剤として混ぜたスクリーン印刷用インキで、所定のパターン配列設計されたドットが全面に印刷された拡散層116が形成してある。
【0148】
また、第三形態として示す面発光装置101は、第一導光板102の両側に可視光LED光源103が取り付けられ、また、第二導光板106の両側には近紫外線のUV-LED光源107が取り付けられ、第一の実施形態、第二の実施形態と同じ様に、各導光板のLED光源に面する端面は研磨されてある。尚、コンセント等の、その他の部材については先の第一の実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0149】
次に、このような近紫外線のUV-LED光源107を付加した面発光装置101における光の動きと、第一導光板102と、第二導光板106の機能的な特徴を説明する。
【0150】
面発光装置101の可視光LED光源103が点灯すると、光が照射され、入光端面部から第一導光板102内に入射光として進入する。入射光は、アクリル樹脂と空気との屈折率の関係から全反射を繰り返すことにより、第一導光板102内部に侵入していくが、離隔端面部及び側壁端面部に到達した光は、もう一方の可視光LED光源103の光と側壁の反射テープで反射し、第一導光板102内に跳ね返されることによりアクリル樹脂の透光板内部に閉じ込められる。
【0151】
しかし、第一導光板102の開口部111に面する上面全体には、所定の条件でパターン配列した複数のドットを発光部とする印刷層が形成されており、発光部を有する印刷層があると、発光部に存在する光触媒機能を有する光拡散物質粒子に光が当たり、光は粒子表面で拡散及び乱反射し、第一導光板102の上下にも分散して一部が第一導光板102面からの出射光として上面及び下面から飛び出すことになる。
【0152】
また、面発光装置101の近紫外線UV-LED光源107が点灯すると、350~390nmの近紫外光が照射され、入光端面部から第二導光板106内に入射光として進入する。近紫外線も可視光と同様に入射光は、アクリル樹脂と空気との屈折率の関係から全反射を繰り返すことにより、第二導光板106内部に侵入していくが、離隔端面部及び側壁端面部に到達した光は、もう一方の近紫外線UV-LED光源107の光と側壁の反射テープ112で反射し、第二導光板106内に跳ね返されることによりアクリル樹脂の透光板内部に閉じ込められる。
【0153】
しかし、第二導光板106の上面には、近紫外線のUV-LED光源107からの光を拡散させる、ルチル型の酸化チタンを光拡散剤として混ぜたスクリーン印刷用インキで、所定のパターン配列設計されたドットが全面に印刷されてある。特にドット径やドット間隔についての制限は無く、発光輝度と均一性を重視してパターン配列を設計し、スクリーン印刷を行った。発光部を有する印刷層があると、発光部に存在する酸化チタンの光拡散物質粒子に近紫外光が当たり、近紫外光は光拡散物質粒子表面で拡散及び乱反射し、第二導光板106の上下にも分散し第二導光板106面からの出射光として上面及び下面から飛び出すことになる。
【0154】
第一導光板102と第二導光板106から出射される光のうち、下面側に出射した光は反射シート112に当たりはね返され上面からの出射光として加わることになる。第一導光板の上面には印刷層115が形成してあり、その印刷層115は、アクリル樹脂等の透光性を有するバインダー樹脂と、前記バインダー樹脂より大きな光屈折率を持ち、金属イオンがドーピングされた、又は、金属粒子が担持された光触媒機能を有する光拡散物質粒子と、前記バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた疎水性無機物粒子とを含むもので、スクリーン印刷でのインキ塗布後に乾燥処理して溶剤を揮散させることで形成されている。
【0155】
よって、第一導光板102と第二導光板106から出射してきた可視光と近紫外線の混合の光が光触媒機能を有する光拡散物質粒子に照射されることによって光触媒機能を発揮し、外気にさらされた第一導光板102の外表面に着いた汚れや菌を分解し、抗菌効果を持つものとなる。
【0156】
また、第二の実施形態と同様に、印刷された前記ドット以外の主面素地部には、2mm以上の径寸法となる仮想円を描くことができない、隣接する前記ドット間隔となっているので、光拡散物質粒子にドーピングされた金属イオンが1mm以上の菌の発育阻止帯を形成するので、その主面素地部においても抗菌効果を有するものとなる。
【0157】
また、第二の実施形態と同様に、印刷層115には、印刷層115重量に対して、疎水基を結合させた無機物粒子として疎水性フュームドシリカが5wt%以上の量が含まれており、光触媒機能を有する光拡散物質粒子を包み込むように介在するので、光触媒機能が働いてもバインダー樹脂を直接分解し劣化させることも無い。
【0158】
従来の特許文献2と特許文献3のように、近紫外線を発するUV-LED光源を、同じ導光板に可視光LED光源と組み合わせて端面から照射した場合には、近紫外線の光の屈折率が大きいため、均一な近紫外線強度での面発光が困難であった。しかし、本発明のように近紫外線UV-LED光源専用の可視光LED光源とは別の導光板を使用することで、全面での抗菌効果を可能にするものである。
【0159】
<導光板の製造方法>
次に、本発明の実施形態にかかる導光板35、62の製造方法について図11図12を参考にして説明する。図11は、本発明の複合物インキ(G)80を用いてスクリーン印刷工法で透光基板38、68の印刷層41、71を塗布したインキ状態を示す拡大断面図であり、図12は、本発明の複合物インキ(G)80を用いてスクリーン印刷して複合物インキ(G)80を乾燥して濃縮されインキ固形物からなる印刷層41、71を形成した状態を示す拡大断面図である。
【0160】
まず、透光基板38、68の主面全体の印刷層41、71に形成する発光部42、73のスクリーン印刷用の複合物インキ(G)80を調合する。
【0161】
複合物インキ(G)80は、透光性を有するバインダー樹脂81と、バインダー樹脂81よりも大きな光屈折率を持つ光触媒機能を有する光拡散物質粒子82と、光屈折率がバインダー樹脂と近似し、チキソトロピー特性を有する疎水基を結合させた無機物粒子83と、バインダー樹脂81を溶かす溶剤(バインダー樹脂成分に含まれるため図示せず)とからなるものである。
【0162】
まず、透光性を有するバインダー樹脂81としてはアクリル系の樹脂が多く用いられ、光触媒機能を有する光拡散物質粒子82としては、金属酸化物及び銀イオンがアパタイト結晶構造中にドープされた光触媒アパタイト組成物の粒子で、クラスター化により粒径が1~5μmになったものが用いられる。また、バインダー樹脂81を溶かす溶剤として主にイソホロン溶剤を用い、光屈折率がバインダー樹脂と近似し、チキソトロピー特性を有する疎水基を結合させた無機物粒子83としては、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを使用した。
【0163】
チキソトロピー特性を有する無機物粒子83としては、合成非晶質シリカの乾式法で製造されるフュームドシリカが良く知られているが、そのフュームドシリカの粒子は一次粒子が数nm程度の微粒子であり、水や溶剤の液中に存在する場合には一次粒子から二次粒子を作ろうとする緩い凝集力が働くことでチキソトロピー特性を発揮する。
【0164】
水溶性の塗料やインキには親水性フュームドシリカを利用し、溶剤性の塗料やインキには疎水性フュームドシリカが通常使用されている。フュームドシリカの混合量としては塗料やインキ重量に対して1wt%以下でもチキソトロピー特性は有効に働き、タレの防止効果を発揮する。
【0165】
乾式法で作成された合成非晶質シリカのフュームドシリカは、湿式法で作られる合成非晶質シリカや結晶性の鉱物シリカとは違い、平均一次粒子径が4~40nmで、その比表面積が50~380平方m/gの超微粉末状態で、表面には親水性のシラノール基と疎水性のシロキサンが存在し、特にシラノール基はバインダー樹脂の補強効果とチキソトロピー効果とを有し、液状態に混ぜると増粘性を発揮する。
【0166】
フュームドシリカの中でも、疎水性フュームドシリカはシラノール基をクロロシラン類等のシラン化合物と反応させることにより、(化学式1)から(化学式3)で示す疎水基を結合させ、疎水性を高めたものである。
【0167】
次に、光触媒機能を有する光拡散物質粒子82として選定した、金属酸化物及び銀イオンがアパタイト結晶構造中にドープされた光触媒アパタイト組成物の粒子について説明する。
【0168】
この光触媒アパタイト組成物は光触媒を有する光拡散物質粒子82のひとつであり、一次粒子の径は数nmとされているが、金属酸化物及び銀イオンがアパタイト結晶構造中にドープされた光触媒アパタイト組成物の粒子となると、ゾルゲル法による製法工程において、多くの一次粒子が凝集したクラスター状態となり数μmの大きさとなっている。また、アパタイトの成分である燐酸カルシウムの光屈折率の値は1.5付近でバインダー樹脂に近似しているが、カルシウムからチタンに置換され、銀イオンをドープすることで、光屈折率は大きくなり、バインダー樹脂の光屈折率よりも大きな光屈折率を持つこととなり光拡散物質粒子82として使用が可能となる。よって、印刷された発光部73において、光を拡散し乱反射させることで発光し、ドットのパターン配列を行えば、発光部73が導光板35の両主面全体を占めていても、印刷面積比率が小さければ、光拡散物質粒子82に衝突しない光は全反射するので、奥へ奥へと光を送る機能がのこり、均一で安定した面発光体となる。
【0169】
次に、選定した光触媒機能を有する光拡散物質粒子82を用いてスクリーン印刷に供することができる複合物インキ(G)の製造方法について説明する。
【0170】
まず、透光性を有するバインダー樹脂81に透光性を阻害しない増粘剤や消泡剤や防腐剤等の添加材を混ぜ、さらに溶剤を加え合わせることにより、スクリーン印刷が可能な粘度に調整したスクリーン印刷用クリアーインキ(C)を準備した。
【0171】
次に、第一工程にて、チキソトロピー特性を有し、疎水基を結合させた無機物粒子83を疎水性フュームドシリカとして、イソホロン溶剤に対し約10wt%から約30wt%になるようイソホロン溶剤に混合し、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)と同程度の粘度に調整し、溶液組成物(S)を作成した。この溶液組成物(S)は、疎水性フュームドシリカが緩い凝集性を有するために十分な混練りが必要となり、必要に応じ、三本ロールミルにて所定の条件で溶液組成物(S)を数回通して混練りし、凝集した粒子をほぐす工程が必要である。
【0172】
次に、第二工程として、前記溶液組成物(S)に前記光拡散物質粒子82とを混ぜることにより光拡散物質ペースト(P)を作成する。溶液組成物(S)100部に対し光拡散物質粒子82を20部とを混ぜることにより光拡散物質ペースト(P)とする。混ぜ合わせる方法としては、例えば棒状部材で混合物を混ぜ合わせるなどの、公知の攪拌方法を用いることができるが、光拡散物質粒子82の凝集力で大きくなったクラスターを壊すために、必要に応じては三本ロールミルに所定の条件で光拡散物質ペースト(P)を数回通して混練りし、凝集した粒子をほぐす工程が必要である。
【0173】
次に、第三工程として、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)に、先に準備した光拡散物質ペースト(P)を適量分混合することにより複合物インキ(G)を作成した。光拡散物質ペースト(P)の適量分とは、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)100部に対して、光拡散物質ペースト(P)を50部と、溶剤20部とを混合した。光拡散物質粒子82としては、溶剤分を除くインキ固形分重量に対し10wt%程度になるように計算して混合している。
【0174】
なお、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)は、市販品インキを利用しても差し支えない。例えば、ミノグループ社製のSR930メジウムインキはすでにスクリーン印刷用クリアーインキ(C)として性状を保つもので使用でき、光触媒機能を有する光拡散物質粒子82としては太平化学産業社製の銀イオンをドープした光触媒アパタイトを用いた光拡散物質ペースト(P)を適量分加え複合物インキ(G)として用いても良い。
【0175】
また、三本ロールミルによる混錬作業においての、所定の条件とは、各ロールを1:3:8程度の回転比とし、前ロール回転数を約120rpm、ロール間隔を200μm程度に条件を設定し、3回から5回三本ロールミル通しで、粘度を4000~8000pa'sとなるように調整するのが良い。
【0176】
チキソトロピー特性を有する疎水性フュームドシリカの性質上、イソホロン溶液に対し10wt%から30wt%も混ぜ合わせるとパテ状態となるが、三本ロールミルで、せん断応力がかかると粘度が小さくなり流動化してくる。
【0177】
次に、第四工程として、略矩形のアクリル樹脂の透光基板38、67を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0178】
上記のようにして得られた複合物インキ(G)80を用いて、シルクスクリーン印刷法により、略矩形のアクリル樹脂の透光基板38、67の一方の面に、複数のホール52の非発光部となる主面素地部53と発光部42を有する印刷層41を所定のパターン配列で印刷する。
【0179】
スクリーン印刷では、スクリーンメッシュ(紗)の開口率、乳剤厚さを適宜変更することにより、所望とする複数のホール52を有する印刷層41となる発光部42の厚さ(t)、複数のホールの径(W)、ホールとホールとの距離を考慮してパターン配列した版を得る。通常、スクリーン印刷法で印刷する印刷層の厚みは、溶剤タイプのインキを使用する場合、UV照射型のインキに比べると薄くなるが、特に、上記の様に溶剤を多く含む複合物インキ(G)80の場合、乾燥により膜厚はより薄くなる。それにより、光触媒機能を有する光拡散物質粒子82の一部が印刷層から飛び出すことにより光活性力が維持されるので都合がよい。
【0180】
スクリーンメッシュとしては、スクリーン印刷版におけるメッシュ(紗)の材料として用いられてきた公知のものを用いることができる。例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、およびこれらの金属を含む合金等の金属メッシュ(メタルメッシュ)や、ポリエステル(例えばテトロン(登録商標))等の樹脂製メッシュが挙げられる。スクリーンメッシュとして、例えば、メッシュ数が270のテトロン(登録商標)製のメッシュシートを用いて乳剤としての50μmの厚さを調整することにより、4μm以上6μm以下の厚み(t)の複数のホール52を有する印刷層41としての発光部42を得ることができ、メッシュ数が420のテトロン(登録商標)製のメッシュシートを用いることにより2μm以上3μm以下の厚みの複数のホール52を有する印刷層41の発光部42を得ることができる。
【0181】
次に、第五工程の乾燥工程として、片面にスクリーン印刷で複合物インキ(G)80が塗布された透光基板38、67を80℃で20分間乾燥炉に入れ複合物インキ(G)80内の溶剤を揮発し揮散させて固化させる。この乾燥工程で、複数のホール52を有する印刷層41として発光部42が備わった導光板35,62が得られる。両面発光可能な面発光装置61に取り付ける導光板62の場合は、片面を処理して乾燥後に改めてもう一方の面に同様の方法で複数のホール52を有する印刷層41とした発光部42を形成する。
【0182】
このように、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを使うことにより、溶剤が多く加えられた複合物インキ80でも粘度を保ちスクリーン印刷ができるので、塗布後に乾燥工程で溶剤を揮散させると印刷層は比較的薄く仕上がることになる。すなわち、スクリーン印刷工程で溶剤を多く含む複合物インキ80の塗布膜厚が10~20μmであっても、乾燥工程で溶剤を揮散させると、1μm以上で7μm以下の薄膜を形成することも可能となる。
【0183】
また、乾燥工程での溶剤を揮散される過程においても、疎水性フュームドシリカのチキソトロピー効果で光触媒機能を有する光拡散物質粒子の表面に、無機物粒子の層が形成されるため、バインダー樹脂と光触媒とが直接介在することが少なくなり、バインダー樹脂の光触媒による劣化は抑制できるものである。
【0184】
さらに、乾燥工程により溶剤が揮散されることで、複合物インキ(G)80に含まれる疎水性フュームドシリカが濃縮される。この濃縮により、もともと、複合物インキ(G)80の状態で10wt%濃度の疎水性ヒュームドシリカが含まれていると仮定すると、溶剤が揮散することでインキ固形物樹脂中に含まれる疎水性フュームドシリカの濃度は約20wt%以上の濃度にまで高まることになる。それにより、疎水性フュームドシリカは光触媒機能を有する光拡散物質粒子の周りに介在する量が増えることでバインダー樹脂の劣化を防止する効果がより顕著にみられるようになる。
【0185】
以上のように、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカは、バインダー樹脂成分や溶剤に溶け込み、スクリーン印刷用インキ状態においては増粘剤として、また、チキソトロピー剤として、流動性を阻止することでダレを防止する機能をもつ。そのことは、溶剤を多く含むスクリーン印刷用の拡散インキを提供するので、乾燥後には、溶剤成分が揮散することで、ごく薄い印刷層となり、クラスター状態で含まれている光触媒機能を有する光拡散物質粒子の一部が表面に飛び出すように形成され、光触媒機能を発揮できると共に、バインダー樹脂との接点を少なくすることによる樹脂の劣化を抑制できるものである。
【0186】
本発明の実施形態においては、疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカの混合量は、印刷層重量に対し5wt%から35wt%の量を混入している。従来は、増粘剤や消泡材や防汚剤との添加物を含めて1wt%程度であったのに比べると非常に多くの混合量となっている。
【0187】
通常は印刷層重量に対してチキソトロピー効果を有するフュームドシリカを高濃度で混合することは困難であるが、本発明の複合物インキ80の製法工程の形態によると、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)と溶液組成物(S)と光拡散物質ペースト(P)とを別々に同じ粘度に調合し、その後でブレンドし混ぜ合わせ、スクリーン印刷用の複合物インキ80とすることで目的を達したものである。
【0188】
特に、第二工程として、前記溶液組成物(S)に前記光拡散物質粒子82とを事前に混ぜ、光拡散物質ペースト(P)を作成する工程で、前記光拡散物質粒子82が溶液組成物(S)中の無機物粒子の疎水性フュームドシリカが光触媒機能を有する光拡散物質粒子の表面に接し、無機物粒子の層が形成されるので、バインダー樹脂と光触媒とが直接介在することが少なくなり、バインダー樹脂の光触媒による劣化抑制が強化されるものである。
【0189】
すなわち、図11で示す複合物インキ80は従来のものより数倍多い疎水性フュームドシリカと溶剤を含んでおり、乾燥工程によって溶剤を揮発させることで、図12のように印刷層の膜厚が薄くなり、多量に含まれている疎水性フュームドシリカが発光部の表面に濃縮され、疎水性フュームドシリカに光拡散物質粒子の周囲がコーティングされた状態となり、光触媒機能を発揮しても倍nnDファー樹脂の劣化が抑制される。
【0190】
乾燥によるバインダー樹脂液81の目減りが大きいのは、溶剤の含有量が大きく、通常は20%程度であるのに、本発明の複合インキは50%以上の溶剤が含まれている。その結果、溶剤が揮散することにより光触媒機能を有する光拡散物質粒子82がバインダー樹脂の印刷面から頭を出すことになり、光触媒効果が維持でき抗菌効果も維持できる。
【0191】
なお、本発明の実施形態として使用した光触媒機能を兼ねた光拡散物質として、太平化学産業社の銀イオンをドープした光触媒アパタイトを用いたが、石原産業社製の白金イオンを酸化チタンの光触媒にドープしたフォトペークMPT-623や、銅イオンを酸化チタンにドープしたルミレッシュCT-2、等の可視光応答性の光触媒は市販品として販売されている。
【0192】
また、内製においても製造は可能であり、石原産業社製の光触媒として知られるアナターゼ型酸化チタンST01に、ごく少量の塩化第二銅をイソホロン溶剤中で混ぜ合わせ、フュームドシリカを入れ粘度を調整することにより光拡散物質ペースト(P)を作ることもできる。
【実施例0193】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0194】
まず、透光性を有するバインダー樹脂81として透光基板と同じアクリル樹脂とし、透光性を阻害しない増粘剤や消泡剤や防腐剤等の添加材を混ぜ、さらに溶剤としてイソホロン溶剤を加えることにより、スクリーン印刷が可能な粘度4000~8000pa'sに調整しスクリーン印刷用クリアーインキ(C)を作成した。なお、市販されているミノグループ社製のSR930メジウムインキを用いても良い。
【0195】
次に、チキソトロピー特性を有する無機物粒子83として疎水性フュームドシリカを、イソホロン溶剤に投入し、イソホロン溶液に対し約20wt%になるよう混合して、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)と同程度の粘度に調整した溶液組成物(S)を作成した。この溶液組成物(S)は、疎水性フュームドシリカが緩い凝集性を有するために十分な混練りが必要となり、三本ロールミルによる混錬作業において、各ロールを1:3:8程度の回転比とし、前ロール回転数を約120rpm、ロール間隔を200μm程度に各条件を設定し、3回通しで、粘度を4000~8000pa'sとなるように調整した。
【0196】
なお、今回用いたチキソトロピー特性を有し、バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子83である疎水性フュームドシリカは、日本アエロジル社製のR202を用いて実施した。
【0197】
次に、前記溶液組成物(S)に前記光拡散物質粒子82を混ぜることにより光拡散物質ペースト(P)を作成する。溶液組成物100部に対し光拡散物質粒子82を20部混ぜることにより光拡散物質ペースト(P)とする。混ぜ合わせる方法としては、万能型振動撹拌機AD-MIXで15分間撹拌した。さらに、光拡散物質粒子82の凝集力で大きくなったクラスターを壊すために、3本ロールミルで各ロールを1:3:8程度の回転比とし、前ロール回転数を約120rpm、ロール間隔を200μm程度に各条件を設定し、3回通しで、粘度を4000~8000pa'sとなるように調整した。
【0198】
今回使用した光触媒機能を有する光拡散物質粒子は、太平化学産業社製の銀イオンをドープした光触媒アパタイトを用いた。
【0199】
次に、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)として、ミノグループ社製のSR930メジウムインキ100部と、先に準備した光拡散物質ペースト(P)50部とイソホロン溶剤を20部混合することにより複合物インキ(G)を作成した。光拡散物質粒子82の量としては、溶剤分を除くインキ固形分重量に対し10wt%程度になるように計算して混合している。この混合もより凝集した光拡散物質粒子のクラスターを砕くために、三本ロールミルによる混錬作業を先の条件で行い、粘度が4000~8000pa'sとなるように調整した。
【0200】
次に、上記のようにして得られた複合物インキ(G)80を用いて、シルクスクリーン印刷法により、略矩形のアクリル樹脂の透光基板38、67の一方の面に、160μmの径で、ドットの間隔を600μmとした、複数のドット72の発光部73を有する印刷層71を印刷した。
【0201】
スクリーンメッシュとしては、メッシュ数が420のテトロン(登録商標)製のメッシュシートを用いることにより2μm以上3μm以下の厚みの複数のドットやホール52を有する印刷層41の発光部42を得ることができるが、今回の全面にドット径が160μmで、ドットのピッチが600μmで正方形のパターン配列となる印刷の場合にはトットの厚みは約2μmとなっていた。
【0202】
次に、第五工程の乾燥工程として、片面にスクリーン印刷で複合物インキ(G)80が塗布された透光基板38、67を80℃で20分間乾燥炉に入れ複合物インキ80内の溶剤を揮発し揮散させて固化させた。この乾燥工程で、複数のドットを有する印刷層として発光部42が備わった導光板35,62が得られる。
(評価試験)
【0203】
次に、面発光装置として組立、導光板面全体の照度が均一で、適度な照度が得られたことを確認したうえで、抗菌性の評価を行った。その抗菌性の評価方法と結果について説明する。
【0204】
まず、標準試験液の作成について説明する。実生活空間からの雑菌の採取方法として、台所を選定し、流し台全体を拭き掃除した布巾を無菌液ですすぎ、そのすすぎ液2Lに対して牛乳を20mlを加え撹拌し、室温20℃で24時間培養放置したものを原液として準備した。
【0205】
次に、前記作成した導光板の一端面から可視光LED光源で照射して導光板を面発光させ、約7500lux.の照度となる印刷面上に、前記原液を1000倍に薄めた試験液を5滴(約0.2ml)滴下した。
【0206】
次に、滴下液の上に厚み20μmで40mm角のポリエチレンフィルムを被せ、導光板の端面に設置した可視光LED光源を点灯し所定時間照射した。
【0207】
所定の時間照射後に、フィルムを剥がし、市販のスタンプ培地(ニッスイ社製フードスタンプ標準寒天培地一般性菌用)を圧着し菌を採取した。その後、35℃で24時間培養し菌数状態を比較評価した。
【0208】
図17は可視光白色LED照射し7500luxでの印刷面の菌数の状態を示すが、0時間初期と1時間後では、菌状態として顕著な抗菌効果が見られた。また、光触媒無しでの3時間照射後には、菌数の増加が見られるのに対し、光触媒が存在するとすべての菌が無くなっていた。
【0209】
さらに、別途、近紫外線UV-LED照射では、50μW/cm2の強度の365nmの波長を持つ近紫外線を付加した結果でも、より時間が短い時点で抗菌効果が見られている。
【0210】
以上、説明した実施形態及び実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、当該実施形態及び実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の導光板、面発光装置での構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本実施形態に係る導光板35,62は、例えば、遊技機、及び自動販売機等の照明パネルなどに使用され、保護シートが必要としないので演出効果を高めることができるとともに、意匠性にも優れたものとすることができる。また、水の中でも光るので、例えば、水族館の水槽の一部に本実施形態の導光板35、62を使用することで、水槽における抗菌効果も出すことは可能となり水の浄化装置としても製品化できる。さらに、導光板35,62は、電子機器のディスプレイ用の面発光体(バックライトやフロントライト)や照明装置として使用することもできる。
【符号の説明】
【0212】
31、61、101・・・面発光装置、32・・・不透光な被表示体、33・・・発光器具、34、67・・・固定治具体、35、62・・・導光板、36、63・・・LED光源、37、74・・・入光端面部、38、68・・・透光基板、39、70・・・下面、40、69・・・上面、41、71、115・・・印刷層、42、73・・・発光部、43・・・表開口部、44・・・保護カバー、45・・・裏開口部、46、113・・・裏板、47、114・・・留め金、48・・・電源コード、49・・・ON-OFFスイッチ、50・・・変圧器、51・・・コンセント、52・・・複数のホール、53、77・・・非発光部となる主面素地部、54、75・・・離隔端面部、55、76・・・反射テープ、56、78・・・仮想円、64・・・上開口部、65・・・下開口部、66・・・ハウジング体、72・・・複数のドット、80・・・複合物インキ、81・・・バインダー樹脂液、82・・・光拡散物質粒子、83・・・疎水基を結合させた無機物粒子、102・・・第一導光板、103・・・可視光LED光源、104・・・第一固定治具体、105・・・第一発光器具、106・・・第二導光板、107・・・近紫外線UV-LED、108・・・第二固定治具、109・・・第二発光器具、110・・・ハウジングケース、111・・・開口部、112・・・反射シート、116・・・拡散層



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17